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  • 特開-電動弁駆動装置の異常表示方法 図1
  • 特開-電動弁駆動装置の異常表示方法 図2
  • 特開-電動弁駆動装置の異常表示方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003722
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電動弁駆動装置の異常表示方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
F16K37/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104972
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000228419
【氏名又は名称】日本ギア工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 壮一郎
【テーマコード(参考)】
3H065
【Fターム(参考)】
3H065BA06
3H065BB21
3H065BC04
(57)【要約】
【課題】表示器を大型化せずに、異常状態を遠方から視認可能な電動弁駆動装置の異常表示方法を提供する。
【解決手段】電動弁駆動装置1の制御情報を文字や記号で表示する表示器17において、電動弁駆動装置1に異常が発生すると、文字や記号で異常状態を表示せずに、表示器画面の色彩の変化により異常状態を表示することを特徴とする電動弁駆動装置1の異常表示方法により課題を解決する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動弁駆動装置の制御情報を文字や記号で表示する表示器において、電動弁駆動装置に異常が発生すると、文字や記号で異常状態を表示せずに、表示器画面の色彩の変化により異常状態を表示することを特徴とする電動弁駆動装置の異常表示方法。
【請求項2】
前記表示器画面の色彩が時分割で変化し、色彩の変化パターンに応じて異常の態様を表示することを特徴とする請求項1に記載の電動弁駆動装置の異常表示方法。
【請求項3】
前記表示器画面の色彩を、電動弁駆動装置から離れた位置に設置されたカメラにより視認可能とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動弁駆動装置の異常表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や石油化学工場等の各種プラントに使用される電動弁駆動装置の異常表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や石油化学工場等のプラントでは、配管内を流れる水や蒸気など流体の流れを制御するため、数多くの電動弁駆動装置が使用されている。このような電動弁駆動装置には、バルブの開度情報や負荷情報を表示するための表示器が備えられている。この表示器には、バルブの開度を回転指示針により表示するアナログ式の開度表示器を採用しているものもあるが、電動弁駆動装置の小型化・電子化に伴い、近年ではバルブの開度情報や負荷情報を文字や記号で表示する平面ディスプレイが採用されることが多くなった。平面ディスプレイとしては、液晶表示器や有機EL表示器が採用される。平面ディスプレイを採用することにより、コンパクトな表示画面にも拘わらず、文字や記号等により多くの制御情報を一つの表示器で表示することができる。具体例としては、バルブの開度情報や負荷情報に加え、各種の警報や故障情報をコンパクトな一つの表示器で表示しているものがある(例えば、特許文献1の図1参照)。
【0003】
また、電動弁駆動装置の開度表示器として多色表示器を使用し、電動弁駆動装置に異常が発生すると、多色表示器を開閉動作時の色とは異なる色で点滅させるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-145680号公報
【特許文献2】特開2019-143697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電動弁駆動装置では、操作箱の外面に平面表示器が設けられ、通常状態ではバルブ開度が数字でパーセント表示される。たとえば、全閉状態では0%、全開状態では100%というようにバルブ開度が数字で表示される。他方、何らかの理由によりバルブや電動弁駆動装置に不具合が生じると、表示器の画面が黄色や赤色に変化するとともに、画面上に「エラー」や「異常」という文字が表示されるようになっている。さらに、点検作業者が機側まで接近し、操作箱の外面に設けられた操作スイッチを操作して表示モードを変更すると、発生している異常の具体的内容が文字や記号で表示されるようになっている。たとえば、開度異常、トルク異常、通信異常といったような文字が表示されるようになっている。この文字表示により、異常の具体的内容を認識することができる。
【0006】
しかし、電動弁駆動装置は小型軽量化される傾向にあり、それに伴い表示器の画面も小型化している。その結果、表示される文字や記号の大きさも小さくなり、機側から1m程度離れると表示内容の識別が困難になるという問題がある。もちろん、機側に最接近すれば表示内容を読み取ることは可能であるが、バルブや電動弁駆動装置は高所や配管等が複雑に配置された狭隘な場所に設置されることも多く、点検作業者が機側に最接近することが容易でない場所も少なくない。そのような場所に設置された電動弁駆動装置に異常が発生した場合、点検作業者は、表示された文字を視認できる距離および角度位置まで移動しなければ、異常内容を把握することができなかった。
【0007】
また、防爆エリアなど電動弁駆動装置が設置されている場所によっては、点検作業者が立ち入るために煩雑な事前準備を要することがある。さらに、高所に設置された電動弁駆動装置においては、機側まで接近するために屋外に設置された階段を上り下りしなければならないことが多く、階段の昇降に時間を要する上に、雨天の日には滑り易くなり、安全を確保するため慎重な作業を強いられることもある。
【0008】
また、電動弁駆動装置は、駆動対象となるバルブの大きさに対応して適切な型式サイズが選定されるものであり、視認性を上げるためだけに大きなサイズの電動弁駆動装置を選定することは費用面から困難であるし、電動弁駆動装置のサイズを変更することなく、表示器のサイズのみを大きくすることも実際上困難という問題がある。
【0009】
他方、特許文献2に記載の電動弁駆動装置では、機側から10m程度離れた場所からでも警報の発生を視認できるが、異常の具体的内容までは認識できないという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した従来技術が有する問題に鑑み、電動弁駆動装置に異常が発生した場合、点検作業者が機側に接近することなく、遠方から迅速に異常発生を認識できるとともに、如何なる状態の異常が発生しているかを認識できる電動弁駆動装置の異常表示方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、電動弁駆動装置の制御情報を、文字や記号で表示する表示器において、電動弁駆動装置に異常が発生すると、文字や記号で異常状態を表示せずに、表示器画面の色彩の変化により異常状態を表示することを特徴とする電動弁駆動装置の異常表示方法である。
【0012】
請求項2の発明は、表示器画面の色彩が時分割で変化し、色彩の変化パターンに応じて異常の態様を表示することを特徴とする電動弁駆動装置の異常表示方法である。
【0013】
請求項3の発明は、表示器画面の色彩を、電動弁駆動装置から離れた位置に設置されたカメラにより視認可能とすることを特徴とする電動弁駆動装置の異常表示方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表示器を大型化せずに、異常状態を遠方から視認可能な電動弁駆動装置の異常表示方法を提供できる。したがって、点検作業者の接近が困難な場所に設置された電動弁駆動装置であっても、安全かつ迅速に電動弁駆動装置の異常発生および異常内容を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用される電動弁駆動装置の外観斜視図である。
図2】本発明の実施例を示す表示器の正面図である。
図3】異常態様に応じた表示器の色彩の変化を示すパターン図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図1図3を参照しながら説明する。図1は、本発明の異常表示方法が適用される電動弁駆動装置の外観斜視図であり、その一部を断面図として表している。
【0017】
図1に示すように電動弁駆動装置1には、モータ2がその軸をバルブステム(図示省略)と直交する姿勢で装置本体の側面に取り付けられている。多くの場合、モータ2には耐久性や信頼性に優れる三相誘導モータが用いられる。
【0018】
装置本体を構成するハウジング3の機構部品収納部4には、モータ軸に連結されたウォーム軸5と、該ウォーム軸5のウォームと噛み合うウォームホイール6と、該ウォームホイール6に内嵌されたドライブスリーブ(図示省略)が収納され、ハウジング3の下部には、ドライブスリーブの回転をバルブステムの往復動作に変換するスラストユニット7が備えられている。したがって、モータ軸の回転によりバルブステムを往復動作させることができる。
【0019】
また、ハウジング3の機構部品収納部4には、ウォームホイール6の回転量からバルブステムの移動量、すなわちバルブの開度を検出するロータリーエンコーダ8が設けられるとともに、ウォーム軸5に作用するスラストを検出するスラストセンサ9が設けられている。このスラストセンサ9は、直接的にはウォーム軸5に作用するスラストを検出するものであるが、ウォーム軸5のスラストはウォーム軸と噛み合うウォームホイール6の回転トルクに対応することから、スラストセンサ9の出力はバルブステムに作用する負荷情報として用いられる。
【0020】
さらに、ハウジング3の上部には、バルブを手動操作するためのハンドホイール11が設けられ、ハンドホイール11はクラッチ12を介してドライブスリーブに結合されている。このことにより、手動でバルブを操作する必要があるときは、クラッチ12を脱状態にした後、ハンドホイール11を回転させてバルブを手動操作することができる。
【0021】
モータ2が取り付けられたハウジング3の反対側の側面には、制御回路基板13などを収納する電気電子部品収納部14が設けられている。図1に示す実施例では機構部品収納部4と電気電子部品収納部14とが一部品として構成されているが、これらを別々の部品として構成することもある。
【0022】
電気電子部品収納部14にはCPUが搭載された制御回路基板13のほか、制御電源としての直流電源装置やモータへの三相電源を開閉する電磁開閉器15が収納されている。また、仕様によってはモータの回転数を可変制御するインバータ装置が収納されることもある。制御回路基板13には前述したロータリーエンコーダ8およびスラストセンサ9の出力信号線が接続され、バルブステムの開度情報およびバルブステムに作用する負荷情報として入力される。
【0023】
電気電子部品収納部14の開口部には操作箱16が取り付けられ、操作箱16の外面には、図2に示すような表示器17が設けられている。表示器17では、制御回路基板13からの信号によりバルブの開度情報や制御情報が表示される。この表示器17の型式や動作原理に制約はないが、入手容易性や価格の点から液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の平面表示器が好適である。液晶ディスプレイや有機ELディスプレイを用いることにより、バルブの開度や制御情報を文字や記号で表示できるほか、ディスプレイ17の画面全体を異なる色彩パターンで表示することができる。
【0024】
また、操作箱16の外面には、電動弁駆動装置の操作をローカルモード、またはリモートモードに切り替えを行う操作スイッチ18とともに、ディスプレイ17の表示状態を切り替え操作する操作スイッチ18が設けられている。これらの操作スイッチ18は制御値の設定変更機能をも有しており、設定変更モードに移行することで制御値を変更することができる。これらの表示器17やスイッチ18は、信号線により制御回路基板13に接続されている。
【0025】
制御回路基板13には、前述したセンサやスイッチの入出力信号のほか、電動弁駆動装置をリモートモードで操作するための遠隔入力信号が接続可能とされている。また、CPUが搭載された制御回路基板13はバルブの開度情報である全開状態や全閉状態をリレー出力信号として生成し、中央制御室など外部へも送信可能とされている。これらの遠隔入力信号やリレー出力信号は、制御回路基板13から端子台収納部19に設けられた外部端子台20を経由して外部と接続されている。このような構成は、従来の電動弁駆動装置と同じである。
【0026】
つぎに、本発明の特徴的構成について説明する。本発明の異常表示方法では、図3に示すように、電動弁駆動装置に異常が発生すると、異常の態様に応じてディスプレイの画面の色彩パターンが時分割で変化する。その際、ディスプレイの画面には文字や記号は表示されず、全体として単一色が最大面積で表示され、所定時間を経過する毎に、順次異なる単一色で変化するようにされている。したがって、ディスプレイの画面は同時刻において複数の色彩で表示されることはなく、画面全体が単一色で大きく表示されることから遠方からでも色彩の変化パターンを容易に認識することができる。このようにしたのは、ディスプレイの画面は全体としても小さいため、複数の色彩が同時に表示されないようにして遠方からの色彩の視認性を向上させるためである。
【0027】
なお、ここで単一色とはディスプレイの画面全体を観察した場合に、肉眼で単一色として認識されることを意味し、ディスプレイの画面を微視的(たとえば画素ごと)に観察した場合にまで単一色であることを意味するものではない。既述したように表示器には、入手容易性や価格の点から液晶ディスプレイや有機ELディスプレイが用いられる場合が多い。液晶ディスプレイと有機ELディスプレイとでは、反射光か自発光かという光源の違いはあるものの、本発明の表示器として用いる場合には特段の差異は無い。液晶ディスプレイの場合には、バックライトの光源として複数の色の発光素子を用い、有機ELディスプレイの場合には、画素単位で複数の色で発光させて画面全体として単一色で認識できるようにする。さらに、表示器として電子ペーパーを用いる場合であっても、表示器の画面全体として単一色で認識できるようにする点で異なるところはない。
【0028】
図3では異常の態様として、開度異常、トルク異常、通信異常という三つの異常態様を例示している。
【0029】
ここで、開度異常とは、ロータリーエンコーダにより検出された実際のバルブ開度が、開度指示値に対して所定の偏差を超えた場合と定義される。例えば、所定の偏差が指示値±3%以内である場合において、開度指示値がバルブ開度60%であるときに、検出された実際のバルブ開度が64%である場合には偏差が3%を超えるので開度異常と判断され、ディスプレイ画面には図3に示すような色彩パターンが表示される。この例では開度異常が発生すると、ディスプレイ画面は、白色(2秒)→黄色(5秒)→白色(2秒)→黄色(5秒)というように色彩パターンが時分割で繰り返し変化する。
【0030】
また、トルク異常とは、電動弁駆動装置の検出トルク値が規定値に対して所定の偏差を超えた場合と定義される。例えば、所定の偏差が規定値±5%以内である場合において、検出トルク値が規定値に対して±5%を超えた場合にはトルク異常と判断され、ディスプレイ画面には図3で示すような色彩パターンが表示される。この例ではトルク異常が発生すると、ディスプレイ画面は、白色(2秒)→赤色(5秒)→白色(2秒)→赤色(5秒)というように色彩パターンが時分割で繰り返し変化する。
【0031】
また、通信異常とは、電動弁駆動装置と中央操作室との間に通信異常が発生し、制御情報の伝送ができなくなった場合と定義される。例えば、電動弁駆動装置に備えられたディスプレイには、バルブ開度やトルク値等の制御情報は正常に表示されるが、これらの制御情報が中央操作室に送信できない場合には通信異常と判断される。この例では、通信異常が発生すると、ディスプレイ画面は、白色(2秒)→青色(5秒)→白色(2秒)→青色(5秒)というように色彩パターンが時分割で繰り返し変化する。
【0032】
上述した異常発生時のディスプレイ画面の色彩の変化パターンは、具体例として示したものにすぎず、色彩変化の組み合わせパターンや時分割の時間インターバルは、電動弁駆動装置が設置される周囲条件に応じて適宜変更することができる。色彩変化の組み合わせパターンや時分割の時間インターバルを設定変更する場合は、操作箱の外面に備えられた一対の操作スイッチ18を用いて行うことができる。
【0033】
従来、プラントにおける電動弁駆動装置の異常発生の点検作業は、点検作業者が機側に接近して確認していたが、本発明によれば機側から離れた遠方からでも発生した異常内容を把握することができる。また、監視カメラを設置するか、カメラ付き情報端末を使用し、ディスプレイに表示される色彩の変化パターンを特定するアプリケーションソフトを組み合わせることで、遠隔地や情報端末からでも異常情報を把握することができる。
【0034】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施をすることができる。例えば、上述した実施例では、表示器が電動弁駆動装置に一体的に組み込まれたものについて説明したが、視認性の悪い場所に設置される電動弁駆動装置においては、表示器を電動弁駆動装置から離れた見易い場所に分離して設けてもよい。また、電動弁駆動装置に一体的に組み込まれた既存の表示器より大きな表示器を併設し、より一層遠方から視認可能とすることもできる。さらに、表示器には平面ディスプレイに限らず、可撓性を有し曲面上に開度情報等を表示可能な曲面ディスプレイを採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る電動弁駆動装置の異常表示方法は、各種プラントに設置される電動弁駆動装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 電動弁駆動装置
17 表示器(ディスプレイ)
図1
図2
図3