(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037226
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】衝撃吸収機構の製作方法および衝撃吸収機構
(51)【国際特許分類】
F16F 7/12 20060101AFI20230308BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20230308BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
F16F7/12
F16F7/00 J
B62D21/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143848
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 豪軌
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池田 貴恭
【テーマコード(参考)】
3D203
3J066
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203CA25
3D203CA40
3J066AA01
3J066AA23
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC01
3J066BF01
(57)【要約】
【課題】好適に衝撃吸収を行う衝撃吸収機構を提供でき、開発コストも抑えることができる衝撃吸収機構の製作方法等を提供する。
【解決手段】衝撃吸収機構2は、柱状の木材を含む複数の衝撃吸収部5を、その軸方向と直交する方向に配列したものである。衝撃吸収機構2の製作時は、ポール6が衝撃吸収部5の軸方向Cに対して所定の衝突角φ(deg)で衝撃吸収部5に衝突するとし、衝撃吸収部5の軸方向の長さL(mm)と幅w(mm)の比w/Lを、衝突角φと下式を用いて、下式を満たすように定める。
w/L≧5.50×10
-5φ
2+4.05×10
-3φ+4.10×10
-1
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の木材を含む衝撃吸収部を、その軸方向と直交する方向に複数配列することで、車両の衝撃吸収機構を製作する衝撃吸収機構の製作方法であって、
衝突物が、前記衝撃吸収部の軸方向に対して所定の衝突角φ(deg)で前記衝撃吸収部に衝突するとし、
前記衝撃吸収部の軸方向の長さL(mm)と幅w(mm)の比w/Lを、前記衝突角φと下式を用いて、下式を満たすように定めることを特徴とする衝撃吸収機構の製作方法。
w/L≧5.50×10-5φ2+4.05×10-3φ+4.10×10-1
【請求項2】
前記衝撃吸収部が、前記木材の側面を囲う筒状の枠体を含むことを特徴とする請求項1記載の衝撃吸収機構の製作方法。
【請求項3】
前記複数の衝撃吸収部の軸方向の長さLと幅wが一定であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の衝撃吸収機構の製作方法。
【請求項4】
前記衝撃吸収部の内側の端部が、車両の構成部材に形成された取付穴に嵌め込まれて固定されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の衝撃吸収機構の製作方法。
【請求項5】
柱状の木材を含む衝撃吸収部が、その軸方向と直交する方向に複数配列された、車両の衝撃吸収機構であって、
前記衝撃吸収部の軸方向の長さL(mm)と幅w(mm)の比w/Lが、下式を満たすことを特徴とする衝撃吸収機構。
w/L≧0.483
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に加わる衝突荷重を軽減するための衝撃吸収機構の製作方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時の衝撃吸収機構として、柱状の木材からなる衝撃吸収部を複数本平行に配置し、衝突時に木材が軸圧縮されて潰れることにより衝撃を吸収するものがある。特許文献1には、複数本の衝撃吸収部の長さを、衝突時に生じる圧縮荷重変動波が所定の位相差となるように調節することが記載されており、これにより衝撃吸収機構の衝撃吸収性能を安定化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では衝撃吸収部の軸方向に衝突物が衝突することを想定しているが、衝撃吸収部の軸方向に対して斜めに衝突荷重が加わると、衝撃吸収部に曲げや折れが発生し、軸圧縮とならないことがある。この場合、木材の持つ本来の衝撃吸収性能を発揮できず、期待した衝撃吸収効果が得られないという問題がある。
【0005】
これを防止するためには、衝撃吸収機構の設計や開発に当たって多数回の実験を行い衝撃吸収部の性能を評価する必要があるが、試行錯誤を繰り返すことにより開発コストが嵩んでしまう。
【0006】
本発明は前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、好適に衝撃吸収を行う衝撃吸収機構を提供でき、開発コストも抑えることができる衝撃吸収機構の製作方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、柱状の木材を含む衝撃吸収部を、その軸方向と直交する方向に複数配列することで、車両の衝撃吸収機構を製作する衝撃吸収機構の製作方法であって、衝突物が、前記衝撃吸収部の軸方向に対して所定の衝突角φ(deg)で前記衝撃吸収部に衝突するとし、前記衝撃吸収部の軸方向の長さL(mm)と幅w(mm)の比w/Lを、前記衝突角φと下式を用いて、下式を満たすように定めることを特徴とする衝撃吸収機構の製作方法である。
w/L≧5.50×10-5φ2+4.05×10-3φ+4.10×10-1
【0008】
本発明者は前記の問題について鋭意検討、実験を行い、衝撃吸収部の軸方向の長さLと幅wの関係を上記のように定めることで、衝突物が衝撃吸収部に衝突したときに、斜め方向の荷重入力となっても衝撃吸収部が曲がったり折れたりせずに軸方向に圧縮変形して木材本来の衝撃吸収性能を発揮することを見出した。衝撃吸収部の軸方向の長さLと幅wを上記のように定め、衝撃吸収部を複数配列して衝撃吸収機構を構成することで、衝撃吸収部の曲げ等を抑制し、確実に衝撃吸収効果の得られる衝撃吸収機構を提供できる。また上記のように衝突角φを変数としたw/Lの定式化を行うことで、衝撃吸収機構の設計や開発に当たって試行錯誤を減らし、開発コストを低減できる。
【0009】
前記衝撃吸収部が、前記木材の側面を囲う筒状の枠体を含むことが望ましい。また前記複数の衝撃吸収部の軸方向の長さLと幅wが一定であることが望ましい。さらに、前記衝撃吸収部の内側の端部が、車両の構成部材に形成された取付穴に嵌め込まれて固定されることが望ましい。
上記の枠体により、衝撃吸収部の木材を拘束して衝撃吸収性能を高めることができる。また衝撃吸収部の軸方向の長さLと幅wを一定とすることで、同形状の木材を用いて衝撃吸収機構を容易且つ低コストで製作できる。さらに、衝撃吸収部の内側の端部を、車両の構成部材に形成された取付穴に嵌め込んで固定することで、衝撃吸収部を確実に固定し、衝突時の衝撃吸収性能を確保できる。
【0010】
第2の発明は、柱状の木材を含む衝撃吸収部が、その軸方向と直交する方向に複数配列された、車両の衝撃吸収機構であって、前記衝撃吸収部の軸方向の長さL(mm)と幅w(mm)の比w/Lが、下式を満たすことを特徴とする衝撃吸収機構である。
w/L≧0.483
【0011】
第2の発明では、前記の衝突角φを、「道路運送車両の保安基準(国土交通省)」で定められた試験における衝突角である15(deg)とし、第1の発明に基づいてw/Lの値を上記のように定め、衝撃吸収部を複数配列して衝撃吸収機構を構成する。これにより、斜め方向の荷重入力に対する衝撃吸収部の曲げ等を抑制し、高い衝撃吸収効果の得られる衝撃吸収機構を容易に製作できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、好適に衝撃吸収を行う衝撃吸収機構を提供でき、開発コストも抑えることができる衝撃吸収機構の製作方法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両1の衝撃吸収機構2の配置を示す概略図。
【
図3】ポール6が衝突角φで衝突した状態を示す図。
【
図4】衝撃吸収部5に対する試験方法を説明する図。
【
図6】衝撃吸収部5の幅wと長さLの比と衝突角φとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る車両1の衝撃吸収機構2の配置を示す概略図である。衝撃吸収機構2は、車両1の側面衝突時に車両1に加わる衝撃を吸収して衝突荷重を軽減するためのものである。車両1の種類は特に限定されない。
【0016】
衝撃吸収機構2は、車両1の構成部材である外側構成部材3と内側構成部材4の間で、車両前後方向に配置される。これらの構成部材は車両1の側部の金属製のボディを構成するものであるが、車両1を構成する部材であれば特に限定されない。なお、車両前後方向は
図1の上下方向に対応する。
図1の左右方向は車両幅方向であり、車両前後方向と平面において直交する。また「外側」とは車両1の外部側をいい、「内側」とは車両1の内部側をいうものとする。
【0017】
図2(a)は衝撃吸収機構2を上から見た図であり、衝撃吸収機構2の水平方向の断面を部分的に示している。
図2(b)は衝撃吸収機構2の斜視図であり、外側構成部材3を省略して示したものである。
【0018】
図2に示すように、衝撃吸収機構2では、複数の衝撃吸収部5が車両前後方向に等間隔に並べて平行に配列される。車両前後方向は、
図2(a)の上下方向、
図2(b)の奥行方向に対応する。
【0019】
衝撃吸収部5は、木材51と枠体52を含む略直方体状の柱状部材である。
【0020】
木材51は柱状の木製部材であり、例えばスギが好適であるが、これに限ることはない。また木材51は切欠き、くり抜き等による欠損の無い中実の部材であり、その軸方向と直交する断面は正方形となっている。しかしながら、木材51の形状もこれに限ることはなく、例えば断面を長方形状としてもよいし、円形としてもよい。
【0021】
枠体52は、木材51の側面(軸方向に沿った面)を囲うように設けられる筒状の金属部材である。枠体52は、木材51の軸方向の全長に亘って配置される。
【0022】
衝撃吸収部5は、その軸方向を車両幅方向に合わせて配置される。すなわち、衝撃吸収部5の軸方向は、衝撃吸収部5の配列方向(車両前後方向)と平面において直交する。衝撃吸収部5の軸方向の長さは、衝撃吸収機構2を構成する全ての衝撃吸収部5について一定である。衝撃吸収部5の幅や、衝撃吸収部5間の隙間7の幅についても同様である。なお「幅」とは、衝撃吸収部5の配列方向における長さをいうものとする。
【0023】
衝撃吸収部5は、外側の端部が車両1の外側構成部材3に面接触する。内側の端部は、車両1の内側構成部材4に形成された取付穴41に嵌め込まれて接着固定される。外側構成部材3と内側構成部材4は平面において直線状である。なお、衝撃吸収部5の内側構成部材4への固定方法はこれに限らない。例えば、枠体52から外側に張り出すように固定用のブラケット(不図示)を設け、このブラケットを内側構成部材4に固定してもよい。
【0024】
図3は、衝撃吸収機構2にポール6が衝突角φで衝突した状態を示す図である。ポール6は車両1に対する衝突物である。ポール6は円柱状であり、衝撃吸収部5の軸方向および配列方向に沿った面(
図3に示す面)において円形である。
【0025】
本実施形態では、車両1のポール6への側面衝突時、ポール6が衝撃吸収部5の軸方向Cに対して斜め(矢印A参照)に車両1と衝突すると仮定し、以下この方向を荷重入力方向という。そして、荷重入力方向Aと衝撃吸収部5の軸方向Cとが成す角度のうち小さい方を衝突角φとする。衝突角φは、0より大きく90より小さい値とする。
【0026】
衝撃吸収機構2では、外側構成部材3にポール6が接触して衝突荷重が入力されると、衝撃吸収部5の木材51が枠体52によって拘束されつつ軸圧縮されることにより高い衝撃吸収効果が得られる。木材51が持つ衝撃吸収性能を良好に発揮させるためには、木材51の年輪の軸心方向(木材51の繊維方向)を荷重入力方向すなわち衝撃吸収部5の軸方向Cに対応させることが望ましい。
【0027】
さらに本実施形態では、斜め方向に荷重が入力された場合の衝撃吸収部5の曲げや折れを抑制して衝撃吸収機構2の衝撃吸収性能を好適に発揮させるため、所定の衝突角φ(deg)を設定したうえで、衝撃吸収部5の軸方向Cの長さL(mm)と幅w(mm)の比w/Lを、当該衝突角φと下式(1)を用い、下式(1)を満たすように定める。
w/L≧f(φ)…(1)
【0028】
f(φ)は、ポール6の衝突荷重が衝突角φで入力された時、衝撃吸収部5に曲げや折れが生じず、衝撃吸収部5が軸圧縮して衝撃吸収性能を発揮できるか否かを左右する関数として、後述するように定められる。w/Lの値が式(1)を満たさない場合、衝撃吸収部5が曲げたり折れたりして軸圧縮による衝撃吸収効果が得られない恐れがある。
【0029】
f(φ)は、衝撃吸収部5に対する衝撃試験や静圧壊試験を事前に行うことで定められる。f(φ)を事前に定めることで、前記の式(1)により衝撃吸収機構2の設計を行うことができる。本発明者は実際に衝撃試験や静圧壊試験を行い、その結果からf(φ)を定めているので、以下その例を説明する。なお、本発明が以下の例に限られることはない。
【0030】
衝撃試験や静圧壊試験では、
図4に示すように、衝撃吸収部5をその軸方向Cが荷重入力方向A’に対して角度φだけ傾斜するように固定し、その状態で荷重入力方向A’の荷重を加えた。衝撃吸収部5は、40mm角の木材51を厚さ0.5mmの枠体52で覆ったものとし、その幅wは41mmとなる。衝撃試験は既知の落錘試験機を用いて実施し、静圧壊試験は既知の万能試験機を用いて実施した。
【0031】
図5(a)は、軸方向の長さLが80、90、100(mm)の衝撃吸収部5について、角度φ(衝突角)を0、10(deg)として衝撃試験を実施した結果である。衝撃吸収性能の評価は、角度φが0(deg)の場合に比べて衝撃吸収性能が低下するかどうかにより、一例として、衝撃試験では、衝撃吸収部5の長さLが100(mm)、角度φが10(deg)の場合、角度φが0(deg)の場合に比べて衝突時に衝撃吸収部5が負担する荷重の低下が早く、また衝撃吸収部5の変位も大きいため、衝撃吸収性能が低下すると評価した。
【0032】
図5(b)は、軸方向の長さLが80、90、100(mm)の衝撃吸収部5について、角度φを0、10(deg)として衝撃試験を実施した場合に衝撃吸収性能を発揮できるかどうかを評価したものである。
【0033】
図5(b)の「〇」は角度φが0(deg)の場合に比べて衝撃吸収性能が低下しないことを表し、「×」は角度φが0(deg)の場合に比べて衝撃吸収性能が低下することを表す。なお角度φが0(deg)の場合の評価は全て「〇」とした。
【0034】
一方、
図5(c)は、静圧壊試験の結果から、軸方向の長さLが80、90、100、110(mm)の衝撃吸収部5について、角度φを0、10、20(deg)とした場合に衝撃吸収性能を発揮できるかどうかを上記と同様に評価したものである。
【0035】
ここで、
図5(b)に示すように、衝撃試験では角度φが20(deg)の場合の試験をしていないが、
図5(c)に示すように、静圧壊試験によれば、φが0→10→20(deg)と1段階ずつ増加するごとに、評価が「〇」となる長さLの最大値が、110→100→90(mm)と1段階ずつ減っていくという関係にある。
【0036】
図6(a)は、上記の関係から、衝撃試験において角度φを20(deg)とした場合の評価を、L=80(mm)の場合に「〇」、Lがそれより大きい場合に「×」としたものであり、
図6(a)の破線は、各長さLの衝撃吸収部5について、評価が「〇」である最も大きな角度φを直線で結んだ線分である。
【0037】
図6(b)は、上記線分を、横軸を角度φ(衝突角)、縦軸をw/Lとして示したものであり、前記の式(1)において、衝撃吸収部5が曲がったり折れたりせずに軸圧縮して衝撃吸収性能を発揮できるか否かを左右する関数f(φ)が、以下の式(2)として導出され、前記の式(1)は以下の式(3)のように表すことができる。
f(φ)=5.50×10
-5φ
2+4.05×10
-3φ+4.10×10
-1…(2)
w/L≧5.50×10
-5φ
2+4.05×10
-3φ+4.10×10
-1…(3)
【0038】
ここで、式(3)のφを、例えば「道路運送車両の保安基準(国土交通省)」で定められた側突試験におけるポール6の衝突角である15(deg)とすることで、式(3)から下記の式(4)が得られ、これにより衝撃吸収部5の軸方向の長さLと幅wの比w/Lを具体的に定めることができる。
w/L≧0.483…(4)
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、衝撃吸収部5の軸方向の長さLと幅wの関係を上記の式(3)のように定めることで、衝突物が衝撃吸収部5に衝突したときに、斜め方向の荷重入力となっても、衝撃吸収部5が曲がったり折れたりせずに軸方向に圧縮変形して木材本来の衝撃吸収性能を発揮することができる。また衝撃吸収部5を複数配列することで、確実に衝撃吸収効果の得られる衝撃吸収機構2を提供できる。
【0040】
また本実施形態では、斜め方向の荷重入力に対して衝撃吸収部5の軸圧縮による衝撃吸収効果が得られる衝撃吸収機構2の寸法関係が、式(3)のように衝突角φを変数とした関係式として定式化されているので、係る関係式より、想定される衝突角φに対する式(3)の右辺の演算を行って適切に衝撃吸収機構2を製作することで、衝撃吸収機構2の設計や開発に当たって目標性能を満たす衝撃吸収部5を選定するための試行錯誤を減らすことができ、設計や開発の当初から衝撃吸収部5の寸法を高い精度で適切に決定することで開発コストを低減できる。
【0041】
例えば衝突角φを、前記のように「道路運送車両の保安基準(国土交通省)」で定められた側突試験における衝突角である15(deg)とし、式(3)に基づいてw/Lの値を式(4)のように定めることにより、衝撃吸収部5の曲げ等を抑制し、高い衝撃吸収効果の得られる衝撃吸収機構2を容易に製作できる。
【0042】
また本実施形態の衝撃吸収部5は木材51の側面を囲う筒状の枠体52を含むので、枠体52で木材51を拘束して衝撃吸収性能を高めることができる。さらに、衝撃吸収部5の軸方向の長さLと幅wを一定とすることで、同形状の木材を用いて衝撃吸収機構2を容易且つ低コストで製作できる。加えて、衝撃吸収部5の内側の端部を、車両1の内側構成部材4に形成された取付穴41に嵌め込んで固定することで、衝撃吸収部5を確実に固定し、衝突時の衝撃吸収性能を確保できる。
【0043】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限らない。例えば、上記の式(4)では衝突角φを15(deg)としているが、別の適宜の値としてもよい。また車両1に対する衝突物も、ポール6に限ることはなく、その形状等も限定されない。
【0044】
衝撃吸収部5の枠体52の材料も金属に限らず、必要な強度が得られれば樹脂等であってもよい。また場合によっては枠体52を省略することも可能である。さらに、前記の式(3)または(4)を満たす限りにおいて、衝撃吸収機構2の複数の衝撃吸収部5の間で軸方向の長さLあるいは幅wを変えることも可能である。また場合によっては衝撃吸収部5間の隙間7の幅を変えることもできる。
【0045】
さらに、本実施形態では車両1の側面衝突を想定して車両1の側部に前記したように衝撃吸収機構2を配置したが、衝撃吸収機構2はこれに限らず、衝突荷重の入力が想定される車両1の各部において適切な配置で取付けることが可能である。例えば衝突時の荷重入力方向として車両前後方向を想定する場合、車両1の前部や後部に衝撃吸収機構2を固定することができ、衝撃吸収部5は軸方向を車両前後方向として配置することができる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0047】
1:車両
2:衝撃吸収機構
3:外側構成部材
4:内側構成部材
5:衝撃吸収部
6:ポール
7:隙間
51:木材
52:枠体