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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037235
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】マッサージ装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 7/00 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
A61H7/00 322B
A61H7/00 322A
A61H7/00 322E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143863
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】301000239
【氏名又は名称】テスコム電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】中島 広雅
(72)【発明者】
【氏名】内山 美波
【テーマコード(参考)】
4C100
【Fターム(参考)】
4C100AD02
4C100BA01
4C100BB05
4C100BB06
4C100CA05
4C100DA08
4C100EA13
(57)【要約】
【課題】使用時の取り扱い性や非使用時の収納性に優れ、且つ着脱を行いやすいマッサージ装置を提供する。
【解決手段】マッサージ装置(10)において、内面を構成する内周部(14)と外面を構成する外周部(12)がいずれも可撓性を有し、長手方向の一端から内周部の内側の施術空間(15)に腕を挿入可能な筒体(11)と、内周部と外周部との間に配置されて膨張及び収縮が可能なエアバック(30、40、50)と、内周部と前記外周部との間に配置されてエアバックへの給気を制御して膨張及び収縮させる給気制御装置(70)とを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面を構成する内周部と外面を構成する外周部がいずれも可撓性を有し、長手方向の一端から前記内周部の内側の施術空間に腕を挿入可能な筒体と、
前記内周部と前記外周部との間に配置され、膨張及び収縮が可能なエアバックと、
前記内周部と前記外周部との間に配置され、前記エアバックへの給気を制御して膨張及び収縮させる給気制御装置と、
を有することを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
前記エアバックと前記外周部との間に、前記エアバックの膨張及び収縮に伴って変形可能であり、前記外周部よりも硬く伸縮性の低い補強部材を有することを特徴とする、請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項3】
前記エアバックは、前記外周部側に突出する給気用の突出部を有し、
前記補強部材は、前記エアバックと重なる板状であり、前記給気用の突出部に嵌合して前記エアバックに対する位置を定める穴又は切り欠き部を有することを特徴とする、請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
前記給気制御装置は、給気源であるエアポンプを収容するハウジングを有し、
前記ハウジングが、前記エアバックと前記外周部との間に位置して前記補強部材となることを特徴とする、請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項5】
前記エアバックと前記内周部との間に設けた収納部に、施術効果を調整するためのアタッチメントを着脱可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のマッサージ装置。
【請求項6】
前記外周部に、前記筒体の長手方向に沿って配設されたサイズ調整ファスナを有し、
前記サイズ調整ファスナの開度の変更によって前記筒体のサイズ調整を行うことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のマッサージ装置。
【請求項7】
前記外周部に、前記サイズ調整ファスナと交差する位置で前記筒体の周方向に巻回されるサイズ調整ベルトを有し、
前記サイズ調整ベルトの固定位置の変更によって前記筒体のサイズ調整を行うことを特徴とする、請求項6に記載のマッサージ装置。
【請求項8】
前記内周部の内側に、前記筒体に腕を挿入した状態で指を掛けることが可能で、前記筒体に対する長手方向での腕の挿入位置の目安となる指掛け部を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のマッサージ装置。
【請求項9】
前記エアバックは、前記筒体の長手方向に分割された指用エアバック、手用エアバック及び腕用エアバックを有し、
前記給気制御装置は、前記指用エアバック、前記手用エアバック及び前記腕用エアバックに対して個別に給気を行うことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のマッサージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、身体の様々な部位をマッサージするためのマッサージ装置が広く流通している。脚や足を施術対象とするマッサージ装置では、ユーザーが両手を用いて着脱できるため、着脱の作業性に関する制約が少ない。これに対して、腕や手を施術対象とするマッサージ装置では、施術する側の手や腕をマッサージ装置の着脱に使用できない(あるいは使用が難しい)ので、着脱の作業性が課題になりやすい。
【0003】
指や手のひらなどの手先部分を施術の対象とするハンドマッサージ装置では、筒型や箱型の硬質な外殻の内部にエアバックや内布などを取り付け、外殻の内部に手を挿入して使用する形態のものが知られている(例えば、特許文献1、2)。このハンドマッサージ装置のように、硬質な外殻による自己形状維持性を有していると、手先部分を差し込むだけで装着を行えるので、着脱作業を行いやすい。
【0004】
特許文献3に記載されたマッサージ装置は、腕全体を施術対象としており、空気袋(エアバック)を内蔵した平面状のマッサージ具本体を備え、マッサージ具本体の両端に取り付けられているスライドファスナを連結することで、腕を包み込む形状になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-035457号公報
【特許文献2】実用新案登録第3225470号公報
【特許文献3】特許第6783843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手先部分よりも広く腕を含む範囲を施術の対象とするマッサージ装置において、既存のハンドマッサージ装置(特許文献1や特許文献2など)のように硬質な外殻を有する構成にすると、大型で重たいものになってしまい、収納性や取り扱い性が悪くなってしまうという問題がある。
【0007】
特許文献3のマッサージ装置は、平面状のマッサージ具本体を腕に巻き付けてからスライドファスナを連結させるため、片手(施術対象の手とは反対側の手)だけでは着脱を行いにくいという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、腕を施術範囲に含むマッサージ装置であって、使用時の取り扱い性や非使用時の収納性に優れ、且つ着脱を行いやすいマッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマッサージ装置は、内面を構成する内周部と外面を構成する外周部がいずれも可撓性を有し、長手方向の一端から前記内周部の内側の施術空間に腕を挿入可能な筒体と、前記内周部と前記外周部との間に配置され、膨張及び収縮が可能なエアバックと、前記内周部と前記外周部との間に配置され、前記エアバックへの給気を制御して膨張及び収縮させる給気制御装置とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマッサージ装置では、筒体に対して腕を挿入するので着脱を行いやすい。また、筒体は全体的に可撓性を有するので、使用時に取り扱いやすく、非使用時の収納性に優れている。従って、課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態のマッサージ装置の使用状態を示す図である。
図2】(a)はマッサージ装置の表側を示す上面図であり、(b)はマッサージ装置の裏側を示す底面図である。
図3】(a)から(c)は、マッサージ装置に内蔵される各エアバックユニットの展開状態の図である。
図4】(a)はサイズ調整ファスナを閉じて補助ベルトを固定した状態のマッサージ装置の側面図であり、(b)は補助ベルトの固定を解除した状態のマッサージ装置の側面図であり、(c)はさらにサイズ調整ファスナを開いた状態のマッサージ装置の側面図である。
図5】(a)はマッサージ装置に取り付けたアタッチメントの配置を示す上面図であり、(b)はアタッチメント及びアタッチメント収納空間を示す側面図である。
図6】(a)はマッサージ装置に設けた指掛け部の配置を示す上面図であり、(b)は指掛け部の使用状態を示す斜視図である。
図7】(a)はマッサージ装置における給気制御装置の配置を示す上面図であり、(b)は給気制御装置の斜視図である。
図8】(a)は図7(a)のS1-S1線に沿う断面図であり、(b)は図7(a)のS2-S2線に沿う断面図である。
図9】指用エアバックユニットと補強部材、手用エアバックユニットと補強部材のそれぞれの関係を示す斜視図である。
図10】腕用エアバックユニットと補強部材の関係を示す斜視図である。
図11】非使用時の収納形態にしたマッサージ装置を示す側面図である。
図12】(a)は給気制御装置と各エアバックユニットを接続するチューブの配設構造を示す図であり、(b)はチューブの配設構造の一部を拡大した図である。
図13】給気制御装置の内部構造を示す上面図である。
図14】マッサージ装置の制御系を示す概念図である。
図15】マッサージ装置の動作の制御例を示す図である。
図16】マッサージ装置の動作の制御例を示す図である。
図17】マッサージ装置の動作の制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用したマッサージ装置の一実施形態であるマッサージ装置10について説明する。図1に示すように、マッサージ装置10は、ユーザーの手の指から腕にかけての範囲に装着されてマッサージを行うものである。より詳しくは、マッサージ装置10は、後述する指掛け部23、24に手の親指をかけた場合に、おおよそ成人の指から前腕までを包んで施術可能なサイズを有している。なお、この施術範囲は一例であり、異なっていてもよい。例えば、上腕(二の腕)までを施術範囲に含む、より大型のマッサージ装置に適用することも可能である。
【0013】
マッサージ装置10は、腕に沿う細長い筒状であり、腕に装着していない自由状態では、やや扁平な形状をしている。以下の説明では、マッサージ装置10の長手方向をZ軸方向とする。Z軸方向のうち、ユーザーの腕の先端(指先)側に対応する向きを先端側、腕の付け根(肩)側に対応する向きを基端側とする。Z軸方向に延びる仮想線を中心とする円周方向を、マッサージ装置10の周方向とする。
【0014】
自由状態でやや扁平な形状であるマッサージ装置10の横幅方向をX軸方向とし、厚み方向をY軸方向とする。X軸方向及びY軸方向は、Z軸方向に対して垂直である。Y軸方向のうち、図2(a)に表れている側を表側、図2(b)に表れている側を裏側とする。マッサージ装置10は、表側が手の甲に位置し、裏側が手のひらに位置する向きで使用されることを想定して設計されている。
【0015】
図8(a)及び図8(b)に示すように、マッサージ装置10は、外生地12、中生地13、内生地14を積層して構成された筒体11を有する。外生地12、中生地13及び内生地14はいずれも、柔軟な布などの材質で形成されていて、可撓性を有する。外生地12は筒体11の外面(外殻)を構成しており、筒体11における外周部となる。内生地14は筒体11の内面を構成しており、筒体11における内周部となる。外生地12には、強度や耐水性などが高い生地材が選択される。中生地13及び内生地14には、外生地12よりも柔軟性が高い生地材が選択される。
【0016】
外生地12と中生地13と内生地14を縫製によって繋ぎ合わせて、筒体11が形成される。図8(a)及び図8(b)に示すように、筒体11には、施術対象である腕を挿入する施術空間15が、内生地14の内側(内生地14によって囲まれる領域)に形成される。施術空間15はZ軸方向に貫通している。すなわち、筒体11は、Z軸方向の先端側と基端側のそれぞれ(両端)に、施術空間15が外部に通じる開口を有する。
【0017】
図2(a)及び図2(b)に示すように、筒体11は、長手方向で先端側から基端側へ進むにつれて幅が拡大しており、施術空間15が外部に通じる開口は、先端側よりも基端側の方が大きくなっている。この構成によって、筒体11の施術空間15に対して、基端側からの手や腕の挿入を行いやすくしている。
【0018】
図8(a)及び図8(b)に示すように、筒体11の内部には、中生地13と内生地14の間に内側収納空間16が形成され、外生地12と中生地13の間に外側収納空間17が形成される。内側収納空間16と外側収納空間17は、Z軸方向の先端側と基端側の両方で塞がれている(外生地12と中生地13と内生地14が互いに縫い閉じられている)。
【0019】
図5(b)に示すように、筒体11の内部にはさらに、アタッチメント収納部18が形成される。アタッチメント収納部18は、内生地14と内側収納空間16との間を別の生地で仕切ってポケット状に形成されており、後述する手のひら用エアバック42と内生地14との間に位置している。
【0020】
内側収納空間16、外側収納空間17及びアタッチメント収納部18の内部に収納される構成要素については後述する。
【0021】
図4(a)から図4(c)に示すように、筒体11(外生地12)の側部の外面には、サイズ調整ファスナ20が設けられている。サイズ調整ファスナ20は、筒体11の基端側からZ軸方向に延びており、筒体11の長さの半分強の範囲に亘って配設されている。スライダ20aを基端側に移動するとサイズ調整ファスナ20が閉じられ(図4(a)、図4(b))、スライダ20aを先端側に移動するとサイズ調整ファスナ20が開かれる(図4(c))。
【0022】
筒体11には、サイズ調整ファスナ20で開閉される部分の内側に折り込み部11aがある(図4(c))。サイズ調整ファスナ20を開くことで、折り込み部11aの分だけ筒体11の周方向のサイズを拡大させることが可能になり、施術空間15への腕の挿入を行いやすくなる。サイズ調整ファスナ20の開度を大きくするほど、筒体11を拡げることが可能なZ軸方向の範囲が拡がる。
【0023】
施術空間15に腕を挿入してからサイズ調整ファスナ20を閉じると、折り込み部11aによる拡がりがなくなり、筒体11が腕にフィットするようになる。このように、サイズ調整ファスナ20の開度の変更によって筒体11のサイズ調整を行って、筒体11の着脱作業性を向上させることができる。
【0024】
図5(b)に示すように、アタッチメント収納部18は、折り込み部11aに対してZ軸方向に隣接する位置(サイズ調整ファスナ20の先端付近と重なる位置)に設けられている。アタッチメント収納部18はX軸方向の片側に開口しており、サイズ調整ファスナ20を開くことによってアタッチメント収納部18が開放され、サイズ調整ファスナ20を閉じることによってアタッチメント収納部18が閉塞される。
【0025】
図2(a)及び図2(b)に示すように、筒体11の外面にはサイズ調整ベルト21が設けられている。サイズ調整ベルト21は、筒体11の周方向に沿って配設されており、その一部が外生地12に対して縫製などで固定されている。サイズ調整ベルト21は、一端に設けたリング21aを通してから折り返して、面ファスナ21bによる固定(面ファスナ21bを構成するフック面とループ面を貼り合わせる)を行うことで、筒体11を周方向に巻回した状態になり、施術空間15に挿入した腕の保持性を向上させる。面ファスナ21bの範囲は周方向に長く設定されており、ユーザーがサイズ調整ベルト21の固定位置を任意に選択して、筒体11の周方向でのサイズ調整を行うことができる。サイズ調整ベルト21は、Z軸方向において中央よりもやや基端側の位置に設けられている。従って、サイズ調整ファスナ20の一部と交差するようにサイズ調整ベルト21が巻回される。
【0026】
筒体11は、施術空間15への腕の挿入を行いやすくするために、先端側の開口に比して基端側の開口が大きく設定されている。そして、サイズ調整ファスナ20を閉じた状態でも、ユーザーの腕への筒体11のフィット感には個人差がある。サイズ調整ベルト21は、Z軸方向で筒体11の中央よりも基端寄り(先端よりも基端に近い位置)に設けられている。従って、サイズ調整ベルト21を用いることによって、開口が大きい筒体11の基端側における保持性を向上させることができる。特に、Z軸方向への筒体11のずれ防止に寄与する。
【0027】
図6(a)及び図6(b)に示すように、施術空間15内には、一対の指掛け部23、24が設けられている。指掛け部23、24は、Z軸方向で筒体11の先端近くに位置しており、X軸方向で施術空間15の両縁近くに設けられている。指掛け部23、24はそれぞれ、概ねZ軸方向に延びる輪状(筒状)の形状をなしており、その両端が貫通している。
【0028】
指掛け部23、24は、施術空間15にユーザーの腕を挿入した際に、親指を挿入するのに適した位置に設けられている。指掛け部23は、左腕の挿入時に左手の親指に対応することを想定した位置に設けられ(図6(b)参照)、指掛け部24は、右腕の挿入時に右手の親指に対応することを想定した位置に設けられている。
【0029】
指掛け部23や指掛け部24に指を掛けることによって、筒体11の位置ずれを防ぐ効果が得られる。例えば、指掛け部23や指掛け部24の内面に指が接触することによって、X軸方向やY軸方向への筒体11の位置ずれが規制される。また、指掛け部23や指掛け部24の端部が指の股部分に接触することによって、Z軸方向の筒体11の位置ずれが規制される。
【0030】
図2(b)などに示すように、筒体11におけるZ軸方向の基端側には、外面ポケット25が形成されている。外面ポケット25は、外生地12の一部を袋状にして形成されており、Z軸方向の先端側に向けて開放されている。外面ポケット25は、筒体11の外面のうちY軸方向の裏面側に配されており、X軸方向で筒体11の横幅のほぼ全体を占める範囲に設けられている。
【0031】
以上のように構成されたマッサージ装置10の筒体11は、次のようにしてユーザーの腕に着脱される。筒体11の装着時には、サイズ調整ファスナ20を開くことで、周方向への筒体11の拡がりが可能になり、施術空間15への腕の挿入を行いやすくなる。特に、サイズ調整ファスナ20がZ軸方向の基端側を始点として開く構造であるため、筒体11の基端側の拡がり幅が大きく、基端側からの腕の挿入を行いやすい。
【0032】
そして、筒体11の基端側から施術空間15の内部に、指先を先頭にして腕を挿入する。この挿入の際に、筒体11へ挿入する側と反対側の手によって、外面ポケット25を把持してもよい。反対側の手を外面ポケット25に差し入れて筒体11を保持することで、挿入する腕との間の摩擦によって筒体11が追随移動してしまう(つまり、筒体11にスムーズに腕が入らなくなる)こと防ぐことができる。あるいは、反対側の手を外面ポケット25に差し入れて、挿入する腕の根元(肩)側に筒体11を引く力を付与してもよい。このようにして外面ポケット25を用いることで、施術空間15へのスムーズな腕の挿入を実現できる。なお、施術空間15への腕の挿入の際に、外面ポケット25に対して、挿入する側と反対側の手ではなく、別の器具や固定物を係合させてもよい。
【0033】
Z軸方向において筒体11のどの位置まで腕を挿入するかは、ユーザーが任意に選択することができる。一例として、指掛け部23や指掛け部24に親指が挿入される(引っかかる)位置(図6(b)参照)を、挿入位置の目安とすることが可能である。この状態で、多くのユーザーにとって、筒体11の先端部が指先付近に位置し、筒体11の基端部が肘の付近に位置するように、筒体11の寸法が設定されている。つまり、指、手(手のひら及び手の甲)、前腕にかけての範囲を概ねカバーするように筒体11が設計されている。
【0034】
Z軸方向への腕の挿入位置を定めたら、スライダ20aを基端側に引いてサイズ調整ファスナ20を閉じ、続いてサイズ調整ベルト21を面ファスナ21bで固定する。サイズ調整ベルト21の締め付けの程度は、面ファスナ21bの合わせ位置によって調節が可能であり、ユーザーが好みの状態を選択できる。
【0035】
以上のようにして、ユーザーの腕へのマッサージ装置10の装着が完了する。マッサージ装置10では、予め筒状に構成された筒体11に対して片方の腕を挿入し、筒体11の外面に配したサイズ調整ファスナ20とサイズ調整ベルト21を用いて最終的な固定を行うという形態である。そのため、両手を用いた複雑な操作を要さずに、ユーザー自身が挿入しない側の手を用いて、あるいは介助者の簡単な操作によって、腕へのマッサージ装置10(筒体11)の装着を行うことができる。
【0036】
サイズ調整ファスナ20は、筒体11の筒形状を維持したまま、外生地12のうちZ軸方向の一部領域を開閉する構成であるため、片手で無理なく操作が可能である。特に、サイズ調整ファスナ20を閉じる際のスライダ20aの動作は、Z軸方向の途中位置から基端側に引く方向への移動であるため、スライダ20aに力を伝えやすく操作性に優れている。
【0037】
サイズ調整ベルト21は、リング21aに通して周方向に引きながら面ファスナ21bの合わせ位置を選択する構成であるため、片手で無理なく操作が可能である。
【0038】
マッサージ装置10の取り外し時には、サイズ調整ベルト21の固定を解除(面ファスナ21bの貼り付けを解除)して緩め、サイズ調整ファスナ20を開く。装着時と同様に、これらの動作は、ユーザー自身が挿入しない側の手を用いて、あるいは介助者の簡単な操作によって、簡単に実行できる。そして、施術空間15から腕を引き抜くことで、筒体11を容易に取り外すことができる。筒体11が周方向に拡がった状態になるため、引き抜き時の抵抗は小さい。
【0039】
マッサージ装置10の取り外し後には、図11に示すように、筒体11の先端側を外面ポケット25に挿入して、筒体11をZ軸方向で二つ折りの状態にしてもよい。外生地12を含む筒体11の全体を可撓性のある材質(布など)で構成したことにより、このようなコンパクトな収納状態(非使用状態)にさせることができる。
【0040】
なお、以上に述べたマッサージ装置10の着脱の手順は一例であり、フィット感の好みや腕のサイズなどに応じてユーザーが適宜変更してもよい。
【0041】
また、マッサージ装置10の着脱に際してのサイズ調整ファスナ20の開度も任意である。例えば、サイズ調整ファスナ20を図4(c)に示す全開位置まで開かずに、マッサージ装置10の着脱を行ってもよい。あるいは、施術空間15に腕を挿入した状態で、図4(a)や図4(b)に示す全閉位置までサイズ調整ファスナ20を閉じなくてもよい。
【0042】
続いて、マッサージ装置10において筒体11の内部に配される構成要素について説明する。
【0043】
図3(a)から図3(c)は、内側収納空間16内に収納される指用エアバックユニット30と、手用エアバックユニット40と、腕用エアバックユニット50とを示している。内側収納空間16は、各エアバックユニット30、40及び50を個別に収納するように、縫製などによってZ軸方向で3つに区画分けされている。この区画分けは、図2(a)及び図2(b)に示すように、Z軸方向の先端側に指用エアバックユニット30、中間に手用エアバックユニット40、基端側に腕用エアバックユニット50が位置するように設定されている。
【0044】
図3(a)に示すように、指用エアバックユニット30は、指表用エアバック31と指裏用エアバック32を帯状の接続部33で接続した構成である。指表用エアバック31と指裏用エアバック32は、指用エアバックを構成する。指表用エアバック31は、一つのメイン気室31aと一つのサブ気室31bをY軸方向に積層した二重(二層)気室構造であり、メイン気室31aとサブ気室31bが連通路31cを通して空気流通可能に接続されている。指裏用エアバック32は、一つの気室からなる構造であり、気室の一部で表裏を接続する仕切り部32aが設けられている。
【0045】
指用エアバックユニット30は、指表用エアバック31と指裏用エアバック32の間で空気を流通させる構造ではなく、指表用エアバック31側の気室と指裏用エアバック32側の気室は互いに独立している。指表用エアバック31に対して空気を供給するためのノズル突起34(給気用の突出部)と、指裏用エアバック32に対して空気を供給するためのノズル突起35(給気用の突出部)が設けられている。
【0046】
指用エアバックユニット30は、筒体11に取り付ける前の状態では、図3(a)に示す平坦な展開形状である。そして、図8(a)に示すように、指用エアバックユニット30は、Y軸方向で指表用エアバック31と指裏用エアバック32が施術空間15を挟んで位置する(Y軸方向で対向する)ようにして、二つ折りにして内側収納空間16内に配置される。指表用エアバック31は、施術空間15に対してY軸方向の表側に位置し、メイン気室31aが外側(外生地12及び中生地13側)を向き、サブ気室31bが内側(内生地14側)を向く。指裏用エアバック32は、施術空間15に対してY軸方向の裏側に位置する。ノズル突起34とノズル突起35はそれぞれ、内側収納空間16内で外側(外生地12及び中生地13側)に向けて突出する。
【0047】
図3(b)に示すように、手用エアバックユニット40は、手の甲用エアバック41と手のひら用エアバック42を帯状の接続部43で接続した構成である。手の甲用エアバック41と手のひら用エアバック42は、手用エアバックを構成する。手の甲用エアバック41は、一つのメイン気室41aと二つのサブ気室41bをY軸方向に積層した二重(二層)気室構造であり、メイン気室41aと各サブ気室41bが連通部41cを通して空気流通可能に接続されている。手のひら用エアバック42も同様に、一つのメイン気室42aと二つのサブ気室42bをY軸方向に積層した二重(二層)気室構造であり、メイン気室42aと各サブ気室42bが連通路42cを通して空気流通可能に接続されている。メイン気室41aとメイン気室42aの内部にはそれぞれ、気室の一部で表裏を接続する仕切り部41dと仕切り部42dが設けられている。
【0048】
手用エアバックユニット40に対して空気を供給するためのノズル突起44(給気用の突出部)が設けられている。ノズル突起44は、手の甲用エアバック41のメイン気室41aに通じる箇所に設けられている。メイン気室41aとメイン気室42aは、接続部43内の連通路43aを通じて空気流通可能に接続されている。そのため、手用エアバックユニット40の全体に対して、ノズル突起44を通じて空気を供給することができる。
【0049】
手用エアバックユニット40は、筒体11に取り付ける前の状態では、図3(b)に示す平坦な展開形状である。そして、手用エアバックユニット40は、Y軸方向で手の甲用エアバック41と手のひら用エアバック42が施術空間15を挟んで位置する(Y軸方向で対向する)ようにして、二つ折りにして内側収納空間16内に配置される。手の甲用エアバック41は、施術空間15に対してY軸方向の表側に位置し、手のひら用エアバック42は、施術空間15に対してY軸方向の裏側に位置する。手の甲用エアバック41と手のひら用エアバック42のそれぞれにおいて、メイン気室41aとメイン気室42aが外側(外生地12及び中生地13側)を向き、サブ気室41bとサブ気室42bが内側(内生地14側)を向く配置となる。ノズル突起44は、内側収納空間16内で外側(外生地12及び中生地13側)に向けて突出する。
【0050】
図3(c)に示すように、腕用エアバックユニット50は、Z軸方向に並ぶ2つのパートで構成されている。腕用エアバックユニット50のうち、Z軸方向の先端側に位置する第1パートは、前腕表用エアバック51と前腕裏用エアバック52を帯状の接続部53で接続した構成である。前腕表用エアバック51と前腕裏用エアバック52は、腕用エアバックを構成する。前腕表用エアバック51は、一つのメイン気室51aと一つのサブ気室51bをY軸方向に積層した二重(二層)気室構造であり、メイン気室51aとサブ気室51bが連通部51cを通して空気流通可能に接続されている。
【0051】
前腕表用エアバック51と前腕裏用エアバック52に対して空気を供給するためのノズル突起54(給気用の突出部)が設けられている。ノズル突起54は、前腕表用エアバック51のメイン気室51aに通じる箇所に設けられている。メイン気室51aとメイン気室52aは、接続部53内の連通路53aを通じて空気流通可能に接続されている。そのため、前腕表用エアバック51と前腕裏用エアバック52の全体に対して、ノズル突起54を通じて空気を供給することができる。
【0052】
腕用エアバックユニット50のうち、Z軸方向の基端側に位置する第2パートは、前腕表用エアバック55と前腕裏用エアバック56を接続部57で接続した構成である。前腕表用エアバック55と前腕裏用エアバック56は、腕用エアバックを構成する。前腕裏用エアバック56は、一つのメイン気室56aと二つのサブ気室56bをY軸方向に積層した二重(二層)気室構造であり、メイン気室56aと各サブ気室56bが連通路56cを通して空気流通可能に接続されている。前腕表用エアバック55の内部と前腕裏用エアバック56のメイン気室56aの内部にはそれぞれ、気室の一部で表裏を接続する仕切り部55aと仕切り部56dが設けられている。
【0053】
前腕表用エアバック55と前腕裏用エアバック56に対して空気を供給するためのノズル突起58(給気用の突出部)が設けられている。ノズル突起58は、前腕表用エアバック55に通じる箇所に設けられている。前腕表用エアバック55と前腕裏用エアバック56(メイン気室56a)は、接続部57内の連通路57aを通じて空気流通可能に接続されている。そのため、前腕表用エアバック55と前腕裏用エアバック56の全体に対して、ノズル突起58を通じて空気を供給することができる。
【0054】
腕用エアバックユニット50は、筒体11に取り付ける前の状態では、図3(c)に示す平坦な展開形状である。そして、腕用エアバックユニット50は、Y軸方向で前腕表用エアバック51と前腕裏用エアバック52が施術空間15を挟んで位置し(Y軸方向で対向し)、Y軸方向で前腕表用エアバック55と前腕裏用エアバック56が施術空間15を挟んで位置する(Y軸方向で対向する)ようにして、二つ折りにして内側収納空間16内に配置される。前腕表用エアバック51及び前腕表用エアバック55は、施術空間15に対してY軸方向の表側に位置し、前腕裏用エアバック52及び前腕裏用エアバック56は、施術空間15に対してY軸方向の裏側に位置する。前腕表用エアバック51と前腕裏用エアバック56のそれぞれにおいて、メイン気室51a、56aが外側(外生地12及び中生地13側)を向き、サブ気室51b、56bが内側(内生地14側)を向く配置となる。ノズル突起54、58は、内側収納空間16内で外側(外生地12及び中生地13側)に向けて突出する。
【0055】
マッサージ装置10を腕に装着した状態で、指用エアバックユニット30は、概ね手の指を施術の対象とする位置(Z軸方向の範囲)にあり、手用エアバックユニット40は、概ね手のひら及び手の甲を施術の対象とする位置(Z軸方向の範囲)にあり、腕用エアバックユニット50は、概ね前腕を施術の対象とする位置(Z軸方向の範囲)にある。より詳しくは、指用エアバックユニット30においては、指表用エアバック31が指の表側(手の甲側)に対向して位置し、指裏用エアバック32が指の裏側(手のひら側)に対向して位置する。手用エアバックユニット40においては、手の甲用エアバック41が手の甲に対向して位置し、手のひら用エアバック42が手のひらに対向して位置する。腕用エアバックユニット50においては、前腕表用エアバック51及び前腕表用エアバック55が前腕の表側(手の甲側)に対向して位置し、前腕裏用エアバック52及び前腕裏用エアバック56が前腕の表側(手のひら側)に対向して位置する。
【0056】
後述する給気制御装置70を用いて、各エアバックユニット30、40及び50の内圧調整を行うことによって、それぞれの気室が膨張や収縮を行い、マッサージ装置10を装着した腕(指、手、前腕を含む範囲)に対する施術(マッサージ)が実行される。気室がメインとサブの二重構造になっているエアバック(31、41、42、51及び56)では、メイン気室(31a、41a、42a、51a及び56a)の膨張や収縮に加えて、施術空間15内の腕に向く内側に配したサブ気室(31b、41b、42b、51b及び56b)が同時に膨張や収縮を行うことによって、マッサージの効果を高めることができる。
【0057】
図5(b)に示すように、筒体11のアタッチメント収納部18内に、施術効果を調整するためのアタッチメント60を着脱可能である。アタッチメント60は、板状のベース61上に突起部62を取り付けた構造である。アタッチメント収納部18は、ベース61を安定した位置で収納可能な内部形状を有している。サイズ調整ファスナ20を開いた状態で、外部からアタッチメント収納部18内へのアクセスが可能になり、アタッチメント60を着脱させることができる。
【0058】
図5(a)に示すように、アタッチメント収納部18内に収納されたアタッチメント60は、Z軸方向において中央からやや先端寄りに位置する。このアタッチメント60の位置は、手用エアバックユニット40に対応する位置にある。より詳しくは、アタッチメント収納部18は、Y軸方向において、手のひら用エアバック42が収納される箇所と内生地14との間に形成されている。換言すれば、アタッチメント収納部18に挿入したアタッチメント60は、施術空間15内の手のひらに(内生地14を挟んで)対向して位置される。そして、アタッチメント60は、突起部62が内側(内生地14側)を向くようにアタッチメント収納部18に挿入される。この構成によって、手のひら用エアバック42が膨張したときには、アタッチメント60が内側に押し込まれて、突起部62が手のひらを押す。その結果、突起部62を介して手のひらに対する施術効果を高めることができる。
【0059】
なお、アタッチメント60では、突起部62の位置や形状を異ならせて、施術効果に変化を持たせることも可能である。例えば、ベース61に対して突起部62を面ファスナなどで着脱可能にしてもよい。この構成では、ユーザーの好みに応じて、ベース61上での突起部62の位置を変更できる。また、形状の異なる複数の突起部62を準備しておき、好みの形状の突起部62を選択して付け替えることができる。
【0060】
あるいは、ベース61と突起部62が予め一体化されたタイプのアタッチメント60を複数種準備して、アタッチメント60全体を交換する構成にしてもよい。それぞれのアタッチメント60には、突起部62の位置や形状にバリエーションを持たせておく。
【0061】
筒体11の外側収納空間17内には、給気制御装置70が収納される。図7(b)は給気制御装置70の外観を示しており、図7(a)は外側収納空間17内に収めた状態での給気制御装置70の配置を示している。
【0062】
図7(b)及び図13に示すように、給気制御装置70は、外殻となるハウジング71を有する。ハウジング71は、上部ハウジング71aと下部ハウジング71bを組み合わせて構成されている。下部ハウジング71bの底面側は、腕に沿うように凹状に湾曲した形状を有している。
【0063】
図13に示すように、下部ハウジング71b上に、エアポンプ72と電池73と電磁弁ユニット74が支持される。下部ハウジング71bに上部ハウジング71aを取り付けることによって、下部ハウジング71b上に支持された各部品が覆われて、図7(b)に示す完成状態になる。
【0064】
図13に示すように、X軸方向に並列して2つのエアポンプ72を備えており、各エアポンプ72は、保持ブラケット75を介して下部ハウジング71bに支持される。より詳しくは、保持ブラケット75は、Z軸方向に所定の間隔を開けて配した二つのパートで構成されている。保持ブラケット75の各パートは、エアポンプ72を挿入する筒状部分からX軸方向の両側に向けて一対の支持脚75aを突出させている。すなわち、X軸方向の一方と他方の側でZ軸方向に位置を異ならせて二つずつの、計4つの支持脚75aが設けられている。
【0065】
下部ハウジング71bには、2つのエアポンプ72の周囲を囲む枠状の立壁部71cが形成されている。立壁部71cに被さる形状の内カバー76が、下部ハウジング71bに対して固定される。立壁部71cと内カバー76においてY軸方向に対向する互いの端面上には、Y軸方向へ凹む凹部(溝)が形成されており、この凹部内に各支持脚75aを嵌合させることによって、Y軸方向及びZ軸方向での保持ブラケット75の位置が定まる。各支持脚75aは、凹部に嵌合する位置を挟んだ両側に大径のフランジを一対有しており、一対のフランジが立壁部71c及び内カバー76の側部を両側から挟むことによって、X軸方向への保持ブラケット75の移動が規制される。
【0066】
下部ハウジング71bの底面と立壁部71cと内カバー76とによって囲まれる空間にエアポンプ72を収めることによって、エアポンプ72が駆動する際の動作音がハウジング71の外部に漏れにくくなっている。これにより、マッサージ装置10の使用時に、給気制御装置70が発する振動や動作音がユーザーに感知されにくくなり、使用感を向上させることができる。
【0067】
図13に示すように、電池73と電磁弁ユニット74は、2つのエアポンプ72に対してZ軸方向に位置をずらして配置されている。各エアポンプ72と電池73はいずれも円筒状の形状を有し、その軸線(長手方向)をZ軸方向に向けて配置されている。電磁弁ユニット74は、後述する第1電磁弁84、第2電磁弁85及び第3電磁弁86(図14)を備えており、これら3つの電磁弁84、85及び86が、Z軸方向に並んで配置されている。そして、片方のエアポンプ72と電池73とがZ軸方向に並び、他方のエアポンプ72と電磁弁ユニット74とがZ軸方向に並んでいる。この部品レイアウトによって、ハウジング71内でのスペース効率が良く、X軸方向やY軸方向の寸法を抑えた薄型の給気制御装置70が実現されている。そのため、筒体11を大型化させたり、筒体11の一部がX軸方向やY軸方向へ大きく膨らんだりすることなく、外側収納空間17内に無駄なく給気制御装置70を収めることができる。
【0068】
図13に示すように、各エアポンプ72と電磁弁ユニット74は、内部管路72aで接続されている。電磁弁ユニット74からは、Z軸方向に並べて3本のノズル突起74a、74b及び74cが突出している。ノズル突起74a、74b及び74cは、ハウジング71に形成した開口を通して、給気制御装置70の外側に露出している(図7(b)参照)。
【0069】
図12(a)は、外側収納空間17の内部構造を示している。なお、図12(a)は、マッサージ装置10の製造時やメンテナンス時の状態を示しており、マッサージ装置10の使用時には、同図のように外側収納空間17の内部が露出することはない。外側収納空間17内には、ノズル突起74aに接続するチューブ77と、ノズル突起74bに接続するチューブ78と、ノズル突起74aに接続するチューブ79とが配設される。各チューブ77、78及び79は、外生地12の内側に取り付けた複数のループ状のチューブガイド27により支持されて(図12(b)参照)、それぞれが適切に方向づけられる。
【0070】
チューブ77は、指用エアバックユニット30に設けたノズル突起34及びノズル突起35と、腕用エアバックユニット50に設けたノズル突起54とに接続される。チューブ78は、手用エアバックユニット40に設けたノズル突起44に接続される。チューブ79は、腕用エアバックユニット50に設けたノズル突起58に接続される。これにより、指用エアバックユニット30と手用エアバックユニット40と腕用エアバックユニット50の各部を膨張及び収縮させることが可能な給気システムが構成される。
【0071】
マッサージ装置10の操作や制御を行う手段は、給気制御装置70に搭載されている。給気制御装置70には、ハウジング71(上部ハウジング71a)上に突出する箱型の操作部80が設けられている。外生地12には操作部80を貫通させる矩形状の開口部が形成されており(図8(b)参照)、給気制御装置70を外側収納空間17内に収納した状態で、操作部80は当該開口部を通して筒体11の外側(表側)に露出する。
【0072】
操作部80上には複数(3つ)の操作ボタン81が配置されている。ユーザーが各操作ボタン81を操作することで、電源のオンオフや、動作モード(マッサージのパターン)の選択などを行う。操作部80にはさらに給電ポート82が設けられている。給電ポート82を通じて、給気制御装置70内の電池73への充電を行うことができる。
【0073】
図14は、給気制御装置70に搭載された制御系の構成を概念的に示したものである。制御部83は、給気制御装置70の動作を統括的に制御するものであり、プログラムを実行させるプロセッサや、プログラムを記憶したメモリなどを回路基板上に実装して構成されている。
【0074】
電磁弁ユニット74に設けた第1電磁弁84、第2電磁弁85及び第3電磁弁86は、制御部83の制御によって個別に開閉される。第1電磁弁84は、エアポンプ72とノズル突起74aとの間の空気流通を制御する。第2電磁弁85は、エアポンプ72とノズル突起74bとの間の空気流通を制御する。第3電磁弁86は、エアポンプ72とノズル突起74cとの間の空気流通を制御する。
【0075】
エアポンプ72が駆動する状態で各電磁弁84、85及び86を開くことにより、対応する各ノズル突起74a、74b及び74cへの空気の供給が行われ、各チューブ77、78及び79を経由して、対応するエアバックを膨らませることができる。各電磁弁84、85及び86を閉じると、空気の供給が停止された各エアバックから徐々に空気が抜けて、膨らみを解消する(収縮する)。より詳しくは、第1電磁弁84の動作によって、指表用エアバック31、指裏用エアバック32、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52の膨張、収縮が制御される。第2電磁弁85の動作によって、手の甲用エアバック41と手のひら用エアバック42の膨張、収縮が制御される。第3電磁弁86の動作によって、前腕表用エアバック55と前腕裏用エアバック56の膨張、収縮が制御される。
【0076】
ユーザーが操作ボタン81を操作すると、操作信号が制御部83に入力され、記憶されたプログラムに基づいて、操作信号に応じた制御を制御部83が各部に実行させる。具体的には、電源回路のオンオフ、エアポンプ72の駆動、各電磁弁84、85及び86の開閉動作などが、制御部83による制御内容に含まれる。
【0077】
以上に説明したように、マッサージ装置10は、予め筒形状に構成した筒体11に対して腕を挿入して使用する構成であるため、挿入する腕自体を着脱に使用することができない状況でも、容易に着脱を行うことができる。筒体11には、装着状態での周方向のサイズ調整を可能にするサイズ調整ファスナ20やサイズ調整ベルト21が設けられている。これらのサイズ調整手段は、片手で無理なく操作できる構造が選択されている。
【0078】
筒体11は、外周部を構成する外生地12と、内周部を構成する内生地14と、その間に位置する中生地13を含めて、全体が可撓性のある材質で構成されており、硬質な外殻を有していない。そのため、軽量且つ小型で取り扱いやすいという利点がある。例えば、図11のように、マッサージ装置10の非使用に折り畳んで収納することも可能である。
【0079】
マッサージ装置10では、各エアバックユニット30、40及び50だけでなく、給気制御装置70を含む全ての構成要素が、筒体11内に収納されており、単体のマッサージ装置として完結している。そのため、外部の給気源や電源に接続する必要がなく、使用時の取り回し性において優れている。例えば、外部に接続するケーブルやチューブを気にすることなく、マッサージ装置10の使用中にユーザーが自由に移動することが可能である。
【0080】
ところで、エアバック方式のマッサージ装置では、内蔵したエアバックを動作(膨張や収縮)させる際に、外側への変形をできるだけ抑制して、内側の施術対象(腕など)に効率的に力を伝えることが求められる。外側への変形量が大きいと、施術対象を押すための力が外側に逃げてしまい、効率が悪くなってしまうためである。
【0081】
本実施の形態のマッサージ装置10では、筒体11を可撓性のある材質で構成したことにより、上述した効果が得られる。その一方で、硬質な外殻を有するタイプのマッサージ装置に比べて、各エアバック31、32、41、42、55及び56が外側に大きく変形して動力ロスを生じないように考慮する必要がある。
【0082】
まず、マッサージ装置10では、外生地12に用いる生地材を、中生地13や内生地14に用いる生地材に比して、厚手で伸縮性が低いものにして、外生地12自体が外側に拡がりにくくしている。施術空間15内に挿入したユーザーの腕が触れる内生地14については、肌触りの良さや、各エアバック31、32、41、42、55及び56の変形への追従性の良さが要求されるため、比較的薄手で柔軟な生地材を用いる必要がある。これに対して、外生地12については、施術対象である腕に直接触れる部分がほとんどないため、基本的な可撓性は備えつつ、厚みや堅さ(伸縮のしにくさ)をある程度大きくさせるという選択が可能である。
【0083】
図9及び図10に示すように、マッサージ装置10はさらに、補強部材90、91、92、93、94及び95を備えている。各補強部材90、91、92、93、94及び95は、各エアバック31、32、41、42、51、52、55及び56と重ねられて、内側収納空間16内で各エアバック31、32、41、42、51、52、55及び56と外生地12との間に配置されている。各補強部材90、91、92、93、94及び95はそれぞれ、外生地12の生地材よりも硬くて伸縮性が低い樹脂製の板状材であり、重ねられる各エアバック31、32、41、42、51、52、55及び56に合わせた形状に設定されている。
【0084】
各エアバック31、32、41、51及び55に設けた各ノズル突起34、35、44、54及び58はそれぞれ、箱型の基部の側面から円筒状のノズルが突出する構造である。
【0085】
補強部材90は、Y軸方向で指表用エアバック31(より詳しくは、メイン気室31a)の外側に重ねて配置される。補強部材90に形成した矩形状の位置決め穴90aに対して、ノズル突起34の箱型の基部が挿入及び嵌合することによって、指表用エアバック31に対する補強部材90の位置が定まる。
【0086】
補強部材91は、Y軸方向で指裏用エアバック32の外側に重ねて配置される。補強部材91に形成した矩形状の位置決め穴91aに対して、ノズル突起35の箱型の基部が挿入及び嵌合することによって、指裏用エアバック32に対する補強部材91の位置が定まる。
【0087】
補強部材92は、Y軸方向で手の甲用エアバック41(より詳しくは、メイン気室41a)の外側に重ねて配置される。補強部材92に形成した矩形状の位置決め穴92aに対して、ノズル突起44の箱型の基部が挿入及び嵌合することによって、手の甲用エアバック41に対する補強部材92の位置が定まる。
【0088】
補強部材93は、Y軸方向で手のひら用エアバック42(より詳しくは、メイン気室42a)の外側に重ねて配置される。手のひら用エアバック42にはノズル突起が設けられていないことから、補強部材93にはノズル突起に対応する位置決め穴が形成されていない。
【0089】
補強部材94は、Y軸方向で前腕表用エアバック51(より詳しくは、メイン気室51a)及び前腕表用エアバック55の外側に重ねて配置される。補強部材94に形成した二つの矩形状の位置決め穴94a、94bに対して、ノズル突起54、58の箱型の基部がそれぞれ挿入及び嵌合することによって、前腕表用エアバック51及び前腕表用エアバック55に対する補強部材94の位置が定まる。
【0090】
補強部材95は、Y軸方向で前腕裏用エアバック52及び前腕裏用エアバック56(より詳しくは、メイン気室56a)の外側に重ねて配置される。前腕裏用エアバック52及び前腕裏用エアバック56にはノズル突起が設けられていないことから、補強部材95にはノズル突起に対応する位置決め穴が形成されていない。
【0091】
マッサージ装置10の製造時に、各補強部材90、91、92、93、94及び95は、各エアバックユニット30、40及び50と共に、筒体11の内側収納空間16内へ配置される。各補強部材90、91、92、93、94及び95は、重ねて配された各エアバック31、32、41、42、51、52、55及び56の膨張及び縮小に対応して、ある程度まで湾曲などの変形をすることが可能である(可撓性を有する)が、伸縮性は極めて小さい。従って、各エアバック31、32、41、42、51、52、55及び56が膨張したときに、各補強部材90、91、92、93、94及び95は、外側に大きく膨らまずに外側への変形を抑制し、各エアバック31、32、41、42、51、52、55及び56を内側へ支配的に膨張させるように作用する。これにより、給気源であるエアポンプ72の動力ロスを抑制して、各エアバック31、32、41、42、51、52、55及び56の動作を、施術空間15内での施術に効率的に用いることが可能になる。
【0092】
なお、給気制御装置70におけるハウジング71を、補強部材として利用することも可能である。ハウジング71は、エアポンプ72や電池73や電磁弁ユニット74を外部から保護して安定的に支持するために、硬質の樹脂材などで形成されている。図7(a)に示すように、給気制御装置70は、概ね前腕表用エアバック51、55と重なる領域に設けられており、当該領域では、前腕表用エアバック51、55の外側への膨張が、ハウジング71(特に、下部ハウジング71b)によって制限される。
【0093】
このハウジング71の効果に基づいて、前腕表用エアバック51、55の外側では、補強部材94の設置を省略する(つまり、補強部材94に代えてハウジング71のみを補強部材として用いる)という選択も可能である。
【0094】
さらに、前腕表用エアバック51、55に対して裏側に位置する前腕裏用エアバック52、56の外側に、補強部材95を設けないという選択も可能である。上述のように、給気制御装置70のハウジング71によって、前腕表用エアバック51、55に対して外側への変形抑制効果が得られる。そのため、前腕裏用エアバック52、56の外側を補強しない場合でも、マッサージ装置10における前腕施術部分全体としては、各エアバックの膨張時に、外側への過大な変形がある程度は抑えられる。この点に着目して、補強部材94だけでなく、補強部材95も省略した構成を選択することが可能である。
【0095】
補強部材94や補強部材95は、他の補強部材90、91、92及び93よりも大きいため、これらを設けないことにより、軽量化、マッサージ装置10の取り回し性の向上、コストダウンなどの点で大きな効果が見込める。
【0096】
このように、補強効果(外側へのエアバックの変形抑制効果)と、補強以外の効果(軽量化、取り回し性の向上、コストダウン)とは、トレードオフの関係になるが、本実施形態のように複数のエアバックを備える場合には、どの部分のエアバックにおいてどの効果を重視するかに応じて、補強部材を設ける対象のエアバックを適宜選択することができる。つまり、複数のエアバックを有する場合に、全てのエアバックに対応して補強部材を設けてもよいし、一部のエアバックだけに対応して補強部材を設けてもよい。
【0097】
図15から図17は、マッサージ装置10における動作の制御を示している。この動作の制御は、給気制御装置70の制御部83がプログラムに基づいて実行させる。プログラムには複数の動作モード(マッサージのパターン)の制御内容が含まれており、ユーザーが操作部80の操作ボタン81を操作することで動作モードが選択される。以下に説明する各エアバックに対する給気について、制御の主体が明記されていない場合は、給気制御装置70の制御部83が制御しているものとする。
【0098】
図15は第1の動作モード、図16は第2の動作モード、図17は第3の動作モードを表している。図15から図17では、横軸が時間経過を示しており、第1電磁弁84、第2電磁弁85及び第3電磁弁86のそれぞれのオンとオフ(制御部83からの信号変化)を縦軸方向に表している。オンは各電磁弁84、85及び86の開状態、オフは各電磁弁84、85及び86の閉状態に対応する。エアポンプ72が駆動した状態で第1電磁弁84を開くと、指表用エアバック31、指裏用エアバック32、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52への給気が行われる。エアポンプ72が駆動した状態で第2電磁弁85を開くと、手の甲用エアバック41と手のひら用エアバック42への給気が行われる。エアポンプ72が駆動した状態で第3電磁弁86を開くと、前腕表用エアバック55と前腕裏用エアバック56への給気が行われる。各電磁弁84、85及び86を閉じると、対応する各エアバックへの給気が停止され、各エアバック内の空気が自然に排気される。
【0099】
図15から図17に示す各動作モードには、ユーザーに装着した状態のマッサージ装置10の位置ずれを防ぐための制御内容が含まれている。より詳しくは、指用エアバックユニット30における指表用エアバック31と指裏用エアバック32を膨張させて指を施術する際の、マッサージ装置10の位置ずれを防ぐことを目的とした制御内容である。
【0100】
この位置ずれ防止は、指を施術対象とする第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)が膨張する際に、手と腕の少なくとも一方を施術対象とする第2のエアバック(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42と、腕用エアバックである前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の少なくとも一方)が膨張した状態にあれば、第2のエアバックから内側に向けて働く押圧力によって手や腕に対する保持圧を高めて、筒体11の移動(特にZ軸方向の移動)を制限できるという着眼によるものである。従って、第1のエアバックに給気して膨張させる際に、第2のエアバックが所定以上の内圧で膨張しているように給気を制御する。
【0101】
本実施形態では、第2のエアバックとして、手を施術対象とする手用エアバック(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42)と、腕を施術対象とする腕用エアバック(前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56)とを含んでいる。第2のエアバックにおける手用エアバック(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42)への給気と、腕用エアバック(前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56)への給気を、給気制御装置70が個別に制御する。
【0102】
また、第2のエアバックとは別に、腕を施術対象とする第3のエアバック(前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52)を有する。給気制御装置70は、第1のエアバックと第3のエアバックへの給気を同時に行わせる。
【0103】
なお、図15から図17は、直接的には第1電磁弁84、第2電磁弁85及び第3電磁弁86の動作を表しているが、各エアバックへの給気量は、各電磁弁84、85及び86の開放継続時間である給気期間の長さに比例する。後述するそれぞれの給気期間では、初期において、対応する各エアバックが徐々に膨張して内圧が高くなり、終期に至ると、対応する各エアバックから空気が抜けて徐々に収縮する。そのため、各エアバックの内圧をグラフにすると、給気期間の一部を欠いた山形又は台形のような形状になる。
【0104】
図15を参照して、第1の動作モードを説明する。第1の動作モードでは、第1電磁弁84をオンにして指表用エアバック31、指裏用エアバック32、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52への給気を行っている期間を給気期間T10、第2電磁弁85をオンにして手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気を行っている期間を給気期間T20、第3電磁弁86をオンにして前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56への給気を行っている期間を給気期間T30とする。
【0105】
図15に示すように、給気期間T10の開始よりも前に、給気期間T20が開始される。つまり、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32の膨張開始に先立って、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42の膨張が開始される。そして、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32の膨張開始(給気期間T10の開始)時点では、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が所定以上の内圧で膨張した状態にある。換言すれば、第2のエアバック(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42)に給気して膨張させている状態で、第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)に給気して膨張させるように制御する。
【0106】
より詳しくは、給気期間T10が開始されるのは、給気期間T20のうち半分以上(3分の2程度)が経過した段階であり、この時点で手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42は、ほぼ最大に膨張した状態になっている。
【0107】
続いて、給気期間T10の途中で、給気期間T20が終了し、これとほぼ同時に給気期間T30が開始される。つまり、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32が膨張を維持している間に、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が膨張から収縮に転じると共に、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56が膨張を開始する。換言すれば、第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)への給気継続中に、2つある第2のエアバックの一方(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42)への給気終了と、他方(前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56)への給気開始とを、ほぼ同時に行うように制御する。
【0108】
給気期間T20の終了時点では、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42に空気が残存しており、この残存空気が徐々に抜けていく。これと同時に、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56が徐々に膨張していく。そのため、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアは、収縮と膨張を入れ替わりで行いながら、その少なくとも一方が、所定以上の内圧で膨張した状態を維持する。そして、給気期間T30の途中で、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56がほぼ最大に膨張した状態になる。
【0109】
給気期間T10が終了するよりも僅かに前のタイミングで、給気期間T30が終了する。また、給気期間T10が終了するのとほぼ同時に、給気期間T20が開始される。つまり、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32が膨張から収縮に転じるタイミングで、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56も膨張から収縮に転じ、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が膨張を開始する。
【0110】
第1の動作モードは、以上の動作サイクルを繰り返す。指表用エアバック31及び指裏用エアバック32を膨張させる給気期間T10の開始時点では、給気期間T10よりも開始が早い給気期間T20により、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42を事前に膨張させている。
【0111】
続いて、給気期間T10の途中で、給気期間T20を終了させると同時に給気期間T30を開始させ、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42と入れ替わりに、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56を膨張させている。このとき、給気期間T20から間をおかずに給気期間T30を設定することで、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42の膨張状態から前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張状態へと、移行させている。
【0112】
つまり、指を施術対象とする位置の指表用エアバック31及び指裏用エアバック32を膨張させる際に、手(手のひら、手の甲)を施術対象とする位置の手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42と、腕(前腕)を施術対象とする位置の前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のいずれかを必ず所定以上の内圧で膨張させている。
【0113】
手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42の膨張や前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張によって、内側(施術空間15側)の手や腕に向けて押し付ける力が働き、マッサージ装置10の位置ずれを抑制する効果が得られる。マッサージ装置10では、筒体11が腕を外側から包む構成であるため、X軸方向やY軸方向には安定しやすいが、筒体11が貫通しているZ軸方向には位置がずれる可能性がある。特に、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32が構成する指用エアバックユニット30が担当する施術範囲は、手用エアバックユニット40と腕用エアバックユニット50が担当する施術範囲よりも狭いため、指用エアバックユニット30を単独で膨張させると、Z軸方向で局所的に偏って押圧力が作用する状態になり、マッサージ装置10がZ軸方向で不安定になるおそれがある。
【0114】
ここで、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32の膨張に伴って、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42や前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56を膨張させることで、Z軸方向の広い範囲で保持力を得て、Z軸方向の位置を安定させる効果が得られる。
【0115】
指表用エアバック31及び指裏用エアバック32を膨張させる給気期間T10において、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアは、それぞれの給気期間T20、T30の途中でほぼ最大に膨張した状態になり、内側(施術空間15側)に向けて高い保持力を付与することができる。また、給気期間T20の終了と給気期間T30の開始とを間をおかずに行うため、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42の収縮と、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張とが、時間的に重なって行われ、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアのいずれかにおいて、位置ずれ防止用の膨張状態が保たれている。従って、給気期間T10では常に、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアの膨張、又は前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアの膨張を利用した位置ずれ防止効果を得ることができる。
【0116】
また、給気期間T10では、チューブ77を介して接続先が共用されている第1電磁弁84の動作により、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32と同時に、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52にも給気して膨張させている。前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52の膨張は、内側(施術空間15側)に向けて押し付けて保持力を付与する。換言すれば、第2のエアバック(前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56)とは別に、腕を施術対象とする第3のエアバック(前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52)を有し、第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)と第3のエアバック(前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52)への給気を同時に行わせるように制御する。
【0117】
これにより、給気期間T10においては、上述した手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42の膨張や、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張に加えて、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52の膨張による位置ずれ防止効果も得ることができる。
【0118】
図16を参照して、第2の動作モードを説明する。第2の動作モードでは、第1電磁弁84をオンにして指表用エアバック31、指裏用エアバック32、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52への給気を行う給気期間T40、T41及びT42が設定されている。給気期間T41は、給気期間T40、T42よりも長い期間である。また、第2電磁弁85をオンにして手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気を行う給気期間T50、T51及びT52が設定されている。また、第3電磁弁86をオンにして前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56への給気を行う給気期間T60、T61及びT62が設定されている。
【0119】
図16に示すように、給気期間T40の開始よりも前に、給気期間T60が開始される。つまり、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32の膨張開始に先立って、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張が開始される。そして、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32の膨張開始(給気期間T40の開始)時点では、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56が所定の内圧以上に膨張した状態にある。換言すれば、第2のエアバック(前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56)に給気して膨張させている状態で、第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)に給気して膨張させるように制御する。
【0120】
より詳しくは、給気期間T40が開始されるのは、給気期間T60のうち半分以上が経過した段階であり、この時点で前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56は、ほぼ最大に膨張した状態になっている。
【0121】
給気期間T40が終了するのとほぼ同時に、給気期間T60も終了される。つまり、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32が膨張から収縮に転じるタイミングで、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56も膨張から収縮に転じる。
【0122】
給気期間T40の全体に亘って給気期間T60が重なっており、給気期間T60の開始は給気期間T40の開始よりも早い。そのため、給気期間T40で指表用エアバック31及び指裏用エアバック32が膨張した状態では、常に前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56が膨張した状態にある。その結果、前腕の箇所で保持力(前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56で内側に押圧する力)を与えながら、指を押圧する施術(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32で指を押圧する動作)を実行することになり、マッサージ装置10の位置ずれ(特に、Z軸方向の位置ずれ)を防ぐ効果が得られる。
【0123】
給気期間T40が終了するのとほぼ同時に、給気期間T50が開始される。つまり、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32が膨張から収縮に転じるタイミングで、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が膨張を開始する。
【0124】
また、給気期間T50の途中で、給気期間T61が開始される。つまり、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42の膨張開始から時間差をおいて、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56も膨張される。
【0125】
給気期間T50と給気期間T61は、ほぼ同時に終了される。この給気終了の直後に、給気期間T41が開始される。つまり、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアへの給気停止と、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアへの給気停止の直後に、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32への給気による膨張が開始される。換言すれば、第2のエアバック(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56)への給気停止直後に、第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)に給気して膨張させるように制御する。さらに換言すれば、第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)への給気を開始する直前で、第2のエアバック(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56)への給気を終了させている。
【0126】
給気期間T41の開始時点では、給気停止直後の状態にある手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアに多くの空気が残存しており、この残存空気によって所定以上の内圧での膨張が維持されている。つまり、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアが残存空気によってある程度膨張している状態で、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32の膨張を開始させている。これにより、マッサージ装置10の位置ずれ(特に、Z軸方向の位置ずれ)を防ぐ効果が得られる。
【0127】
給気期間T41の途中で、給気期間T51が開始される。換言すれば、給気期間T41での第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)の膨張が継続している途中で、第2のエアバック(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42)に給気して膨張させるように制御する。
【0128】
先の給気期間T50と給気期間T61のそれぞれの終了後に、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアから残存空気が徐々に抜けていく。しかし、給気期間T51で手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気を再度行うことにより、残存空気が無くなる前に手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42を膨張させ、マッサージ装置10の位置ずれ(特に、Z軸方向の位置ずれ)を防ぐ効果を維持できる。
【0129】
給気期間T42については、上述した給気期間T40と同様の制御によって、マッサージ装置10の位置ずれ(特に、Z軸方向の位置ずれ)を防ぐ。つまり、給気期間T42よりも先に、給気期間T62を開始させて前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56を膨張させている。これにより、給気期間T42で指表用エアバック31及び指裏用エアバック32を膨張させる段階では、先に給気して膨張させた状態の前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56により、保持力を付与している。
【0130】
給気期間T42の終了とほぼ同時に、給気期間T62が終了し、給気期間T52が開始される。
【0131】
以上のように、第2の動作モードでは、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32を膨張させる給気期間T40、T42において、それよりも開始が早い給気期間T60、T62により前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56をほぼ最大に膨張させており、マッサージ装置10に位置ずれ防止用の保持力を与えることができる。
【0132】
また、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32を膨張させる給気期間T41(特に、給気期間T41の前半)では、その直前(給気期間T50、T61)まで給気されていた手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアにおける残存空気による膨張状態と、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアにおける残存空気による膨張状態を利用して、マッサージ装置10に位置ずれ防止用の保持力を与えることができる。
【0133】
さらに、給気期間T41の途中で給気期間T51を開始して、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42に給気して膨張させることで、給気期間T41の後半においても、マッサージ装置10に位置ずれ防止用の保持力を継続して与えることができる。
【0134】
また、給気期間T40、T41及びT42では、チューブ77を介して接続先が共用されている第1電磁弁84の動作により、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32(第1のエアバック)と同時に、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52(第3のエアバック)にも給気して膨張させている。前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52の膨張は、内側(施術空間15側)に向けて押し付けて保持力を付与する。従って、給気期間T40、T41及びT42においては、上述した手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42(第2のエアバック)の膨張や、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56(第2のエアバック)の膨張に加えて、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52(第3のエアバック)の膨張による位置ずれ防止効果も得ることができる。
【0135】
まとめると、第1のエアバック(指表用エアバック31及び指裏用エアバック32)を膨張させる際に、筒体11の長手方向で異なる位置に配した第2のエアバック(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56)の膨張を利用してマッサージ装置10の位置ずれを防ぐ方法として、第1の方法と第2方法がある。第1の動作モード(図15)では第1の方法を用いており、第2の動作モード(図16)では第1の方法と第2の方法を併用している。
【0136】
第1の方法では、第2のエアバックへの給気開始を、第1のエアバックへの給気開始よりも早くさせ、先に給気開始された第2のエアバックが膨張している状態で、第1のエアバックに給気して膨張させている。換言すれば、第2のエアバックへの給気期間が、第1のエアバックへの給気期間(特に給気開始段階)をカバーするように重複させている。
【0137】
第2の方法では、第2のエアバックへの給気期間を、第1のエアバックへの給気期間からずらした上で、第2のエアバックへの給気停止直後に第1のエアバックに給気して膨張させ(第1のエアバックへの給気の直前まで第2にエアバックへの給気を行い)、第2のエアバックの残存空気による膨張を利用している。
【0138】
図17を参照して、第3の動作モードを説明する。第3の動作モードは、第1電磁弁84をオンにして指表用エアバック31、指裏用エアバック32、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52への給気を行う給気期間T70~T75が設定されている。また、第2電磁弁85をオンにして手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気を行う給気期間T80~T86が設定されている。また、第3電磁弁86をオンにして前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56への給気を行う給気期間T90、T91及びT92が設定されている。
【0139】
第3の動作モードでは、第2の動作モードと同様に、上記の第1の方法と第2の方法を併用して、マッサージ装置10の位置ずれ防止を実現している。
【0140】
図17に示すように、給気期間T70の開始よりも前に、給気期間T80が開始される。つまり、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32の膨張開始に先立って、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42の膨張が開始される。
【0141】
給気期間T70と給気期間T80の両方の継続中に、給気期間T90が開始されて前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56が膨張される。給気期間T70の途中で給気期間T80が終了して、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気が一旦中断される。このときに給気期間T90が継続しており、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張による保持力が得られる。
【0142】
給気期間T70の継続中に、給気期間T81が開始されて、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が再び膨張する。そして、給気期間T70の終了時点では、給気期間T81、T90が継続される。
【0143】
次の給気期間T71で指表用エアバック31及び指裏用エアバック32への給気を開始する段階では、給気期間T81、T90が継続されており、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアがいずれも膨張している。
【0144】
給気期間T71の途中で給気期間T81が終了して、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気が一旦中断されるが、このとき給気期間T90が継続しており、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張による保持力が得られる。
【0145】
給気期間T71の継続中に、給気期間T82が開始されて、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が再び膨張する。そして、給気期間T71の終了時点では、給気期間T82、T90が継続される。
【0146】
次の給気期間T72で指表用エアバック31及び指裏用エアバック32への給気を開始する段階では、給気期間T82、T90が継続されており、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアがいずれも膨張している。
【0147】
給気期間T72の途中で給気期間T82が終了して、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気が一旦中断されるが、このとき給気期間T90が継続しており、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張による保持力が得られる。
【0148】
さらに、給気期間T72の途中で給気期間T83が開始されて、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が再び膨張する。給気期間T83の開始後に、給気期間T90が終了するが、この段階で給気期間T83が継続しており、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42の膨張による保持力が得られる。
【0149】
給気期間T72が終了し、僅かな間をおいて、次の給気期間T73で指表用エアバック31及び指裏用エアバック32への給気を開始する。給気期間T83は、給気期間T73の開始直前で終了する。給気期間T73の開始直前まで、給気期間T83での手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気が行われている(手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42への給気停止直後に、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32への給気を開始する)ため、給気期間T73の開始時点では、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が残存空気によって所定以上の内圧での膨張を維持している。また、給気期間T90の終了から給気期間T73の開始までの間隔が短いため、給気期間T73の開始時点では、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56も残存空気によってある程度膨張を維持している。
【0150】
給気期間T73の途中で、給気期間T91が開始され、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56が再び膨張する。給気期間T73の後半では、給気期間T91が継続しており、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張による保持力が得られる。
【0151】
給気期間T73の終了とほぼ同時に、給気期間T84が開始され、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が膨張する。この段階で給気期間T91は継続しており、腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56は膨張を維持している。
【0152】
給気期間T74で指表用エアバック31及び指裏用エアバック32への給気を開始する。給気期間T74の開始時点で、給気期間T91は継続しており、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張による保持力が得られる。また、給気期間T74の開始直前に給気期間T84が終了し、給気期間T74の開始時点では、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が残存空気によって所定以上の内圧での膨張を維持しており、保持力が得られる。
【0153】
給気期間T74の開始後に給気期間T91が終了する。この段階からしばらく(給気期間T74の中盤)は、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアと、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアのそれぞれの残存空気を利用して保持力を得る。そして、給気期間T74が終了する少し前に、給気期間T85が開始されて、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が膨張に転ずる。
【0154】
給気期間T74が終了した段階で、給気期間T85は継続している。続いて、給気期間T92が開始されて前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56が膨張を開始する。給気期間T92の継続中に給気期間T85が終了する。
【0155】
給気期間T75で指表用エアバック31及び指裏用エアバック32への給気を開始する。給気期間T75の開始時点で、給気期間T92は継続しており、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張による保持力が得られる。また、給気期間T85の終了から給気期間T75の開始までの時間は短く、給気期間T75の開始時点では、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42に残存空気があって保持力が得られる。
【0156】
給気期間T92の開始は給気期間T75の開始よりも早く、給気期間T92の終了は給気期間T75の終了よりも遅い。従って、給気期間T75では、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56の膨張による保持力が継続して得られる。
【0157】
給気期間T75の終了とほぼ同時に給気期間T86が開始されて、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42が膨張する。給気期間T86の開始後に給気期間T92が終了する。そして、給気期間T86が終了して、第3の動作モードの1サイクルが完了する。
【0158】
以上のように、第3の動作モードでは、給気期間T70、T71、T72、T74及びT75については、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアの少なくとも一方(第2のエアバック)を事前に膨張させた状態で、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32(第1のエアバック)の膨張を開始させるという第1の方法を用いている。
【0159】
給気期間T73については、手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42のペアと、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56のペアの少なくとも一方(第2のエアバック)への給気停止直後に、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32(第1のエアバック)に給気して膨張させるという第2の方法を用いている。
【0160】
また、給気期間T70~T75では、チューブ77を介して接続先が共用されている第1電磁弁84の動作により、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32(第1のエアバック)と同時に、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52(第3のエアバック)にも給気して膨張させている。前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52の膨張は、内側(施術空間15側)に向けて押し付けて保持力を付与する。従って、給気期間T70~T75においては、上述した手の甲用エアバック41及び手のひら用エアバック42(第2のエアバック)の膨張や、前腕表用エアバック55及び前腕裏用エアバック56(第2のエアバック)の膨張に加えて、前腕表用エアバック51及び前腕裏用エアバック52(第3のエアバック)の膨張による位置ずれ防止効果も得ることができる。
【0161】
以上の各動作モードでは、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32以外の各エアバックの膨張や収縮の動作について、マッサージ装置10の位置ずれ防止という観点から、主に指表用エアバック31及び指裏用エアバック32との動作タイミングの関係に着目して説明した。但し、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32以外の各エアバックは、位置ずれ防止用の専用装備ではなく、その基本的な役割は、手(手のひら、手の甲)や腕(前腕)への施術である。そのため、図15から図17を参照して上述した指表用エアバック31及び指裏用エアバック32以外の各エアバックの動作は、手や腕への施術効果を含む動作である。そして、その動作タイミングの設定によって、位置ずれ防止の効果を得ている。
【0162】
例えば、図17に示す第3の動作モードは、3つの電磁弁84、85及び86が全てオンになっている期間が多く含まれており、この期間では、指から前腕までの全体を同時に押圧する強モードの施術が実行されている。
【0163】
以上に説明したように、図15から図17に示す各動作モードでは、指表用エアバック31及び指裏用エアバック32の動作によって指を施術する際におけるマッサージ装置10の位置ずれを効果的に防ぐ制御を実現している。特に、腕の長手方向であるZ軸方向へのマッサージ装置10の位置ずれ防止効果を得ることができる。
【0164】
手と腕を施術するための各エアバック41、42、51、52、55及び56の膨張タイミングの選択によって位置ずれ防止を実現しているため、位置ずれ防止専用のエアバックやストッパなどを設ける必要がなく、マッサージ装置10における構成の簡略化、小型軽量化、低コスト化に寄与する。
【0165】
上述したように、マッサージ装置10では、装着時の安定性に寄与する構成として、サイズ調整ファスナ20、サイズ調整ベルト21、指掛け部23、24などを備えている。これに加えて、給気制御装置70による各エアバックへの給気制御を用いることで、制御的にもマッサージ装置10の位置安定性の向上を実現できる。
【0166】
以上に説明したマッサージ装置10とは異なる変形例を適用することも可能である。例えば、筒体11の先端側で施術空間15が開口せずに閉じられている構成にしてもよい。
【0167】
筒体11の内部を、内側収納空間16と外側収納空間17に分けずに、外生地12と内生地14の間に仕切り(中生地13)が存在しない内部構造にすることも可能である。
【0168】
各補強部材90、91、92及び94に設ける位置決め用の構成として、位置決め穴90a、91a、92a及び94aのような貫通穴ではなく、外縁の一部を凹ませた切り欠き部を用いてもよい。
【0169】
以上、図示の形態に基づいて説明したが、本発明の技術は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0170】
10 :マッサージ装置
11 :筒体
12 :外生地(外周部)
13 :中生地
14 :内生地(内周部)
15 :施術空間
16 :内側収納空間
17 :外側収納空間
18 :アタッチメント収納部
20 :サイズ調整ファスナ
21 :サイズ調整ベルト
23 :指掛け部
24 :指掛け部
25 :外面ポケット
27 :チューブガイド
30 :指用エアバックユニット(指用エアバック)
31 :指表用エアバック(指用エアバック)
32 :指裏用エアバック(指用エアバック)
34 :ノズル突起(給気用の突出部)
35 :ノズル突起(給気用の突出部)
40 :手用エアバックユニット(手用エアバック)
41 :手の甲用エアバック(手用エアバック)
42 :手のひら用エアバック(手用エアバック)
44 :ノズル突起(給気用の突出部)
50 :腕用エアバックユニット(腕用エアバック)
51 :前腕表用エアバック(腕用エアバック)
52 :前腕裏用エアバック(腕用エアバック)
54 :ノズル突起(給気用の突出部)
55 :前腕表用エアバック(腕用エアバック)
56 :前腕裏用エアバック(腕用エアバック)
58 :ノズル突起(給気用の突出部)
60 :アタッチメント
61 :ベース
62 :突起部
70 :給気制御装置
71 :ハウジング(補強部材)
72 :エアポンプ
73 :電池
74 :電磁弁ユニット
74a~74c :ノズル突起
75 :保持ブラケット
76 :内カバー
77~79 :チューブ
80 :操作部
81 :操作ボタン
82 :給電ポート
83 :制御部
84 :第1電磁弁
85 :第2電磁弁
86 :第3電磁弁
90~95 :補強部材
90a、91a、92a、94a、94b :位置決め穴
T10 :給気期間
T20 :給気期間
T30 :給気期間
T40~T42 :給気期間
T50~T52 :給気期間
T60~T62 :給気期間
T70~T75 :給気期間
T80~T86 :給気期間
T90~T92 :給気期間
図1
図2
図3
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図5
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図17