(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037246
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】衝撃吸収装置
(51)【国際特許分類】
B60R 19/18 20060101AFI20230308BHJP
B60R 19/24 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B60R19/18 P
B60R19/24 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143877
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板倉 太一
(72)【発明者】
【氏名】開米 和裕
(72)【発明者】
【氏名】北 恭一
(72)【発明者】
【氏名】正保 順
(57)【要約】 (修正有)
【課題】衝撃吸収性能を向上させた衝撃吸収装置を提供する。
【解決手段】衝撃吸収装置1は、車幅方向に延設された筒状の車両高さ方向の寸法が、サイドメンバの車両高さ方向の寸法よりも小さいバンパーリインフォースメント10と、バンパーリインフォースメント10の車幅方向における端部を補強する補強部材20と、サイドメンバとバンパーリインフォースメント10との間に設けられたクラッシュボックス30と、を備える。クラッシュボックス30は、サイドメンバの前方に配置され、サイドメンバの前端から前方へ向かって延設された第1衝撃吸収部31と、バンパーリインフォースメント10の車幅方向における端部及び補強部材20と、サイドメンバの前端との間に配置され、サイドメンバの前端から前方且つ車幅方向における外側へ向かって延設された第2衝撃吸収部32と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延設されたサイドメンバの前方に設けられる衝撃吸収装置であって、
車幅方向に延設された筒状のバンパーリインフォースメントであって、その車両高さ方向の寸法が、前記サイドメンバの車両高さ方向の寸法よりも小さいバンパーリインフォースメントと、
前記バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部の上側面又は下側面に取り付けられ、前記バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部を補強する補強部材と、
前記サイドメンバと前記バンパーリインフォースメントとの間に設けられ、前記バンパーリインフォースメント及び前記補強部材を支持し、前記バンパーリインフォースメントに対し後方への荷重が作用したとき変形して衝撃を吸収するクラッシュボックスと、
を備え、
前記クラッシュボックスは、
前記サイドメンバの前方に配置され、前記サイドメンバの前端から前方へ向かって延設された第1衝撃吸収部と、
前記バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部及び前記補強部材と、前記サイドメンバの前端との間に配置され、前記サイドメンバの前端から前方且つ車幅方向における外側へ向かって延設された第2衝撃吸収部と、
を備える、衝撃吸収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃吸収装置において、
前記第1衝撃吸収部と前記第2衝撃吸収部とが一体的に形成されている、衝撃吸収装置。
【請求項3】
請求項2に記載の衝撃吸収装置において、
前記第1衝撃吸収部及び前記第2衝撃吸収部は、車両高さ方向に延びる筒状部から構成されている、衝撃吸収部材。
【請求項4】
請求項3に記載の衝撃吸収装置において、
前記クラッシュボックスは押し出し成型体であり、その押し出し方向が車両高さ方向に相当する、衝撃吸収装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1つに記載の衝撃吸収装置において、
前記バンパーリインフォースメントのうち、前記第1衝撃吸収部が接続された部位よりも車幅方向における中央部側に位置する部分に、貫通孔が設けられている、衝撃吸収装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちのいずれか1つに記載の衝撃吸収装置において、
前記補強部材は、前記バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部の延設方向に対して平行に延びる筒状部材である、衝撃吸収装置。
【請求項7】
請求項6に記載の衝撃吸収装置において、
前記補強部材が、前記バンパーリインフォースメントよりも細い、衝撃吸収装置。
【請求項8】
請求項7に記載の衝撃吸収装置において、
前記補強部材の前端面が前記バンパーリインフォースメントの前端面よりも後方に位置している、衝撃吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時に変形して衝撃を吸収する衝撃吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部に搭載され、車両の衝突時に変形して衝撃を吸収する衝撃吸収装置(以下、「従来装置」と称呼する。)が知られている(例えば、下記特許文献1を参照。)。この従来装置は、車両前後方向に延設された左右一対のサイドメンバ(車両の骨格部材)の前方に配置される。従来装置は、バンパーリインフォースメント及びクラッシュボックスを含む。バンパーリインフォースメントは、車幅方向に延設されている。クラッシュボックスは車両前後方向に延設され、その後端部がサイドメンバの前端部に接続され、その前端部がバンパーリインフォースメントの車幅方向端部よりも少し内側(中央部側)に位置する車幅方向中間部に接続されている。車両の前端に物体が衝突したとき、クラッシュボックスが変形することにより、衝撃(衝突エネルギー)が吸収される。
【0003】
このクラッシュボックスは、第1衝撃吸収部及び第2衝撃吸収部を含む。第1衝撃吸収部は、サイドメンバの前方にて車両前後方向に延設されている。第2衝撃吸収部は、サイドメンバの前端部における側面部から、バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部へ向かって延設されている。第1衝撃吸収部及び第2衝撃吸収部は、ブラケットを介してサイドメンバに接続されている。車両の前端部における車幅方向端部(例えば、左側(又は右側)のサイドメンバの前方領域よりも左方(又は右方))に対し、前方から物体が衝突(微少ラップ衝突)した場合、第1衝撃吸収部及び第2衝撃吸収部が変形して、衝撃が吸収される。つまり、第2衝撃吸収部が設けられていない衝撃吸収装置に比べて、上記従来装置の衝撃吸収性能が高い(衝突エネルギー吸収量が多い)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
上記のように、従来装置の第2衝撃吸収部は、サイドメンバの前端部における側面部から前方且つ車幅方向における外方へ向かって延設されている。すなわち、第2衝撃吸収部の延設方向は、サイドメンバの延設方向に対して傾斜している。微少ラップ衝突においてバンパーリインフォースメントの端部に作用した荷重が、第2衝撃吸収部を介して、サイドメンバの前端部に作用するが、その荷重の方向は、サイドメンバの延設方向に対して傾斜した方向である。サイドメンバは、その延設方向に作用する荷重に対する強度が最も大きくなるように設計されている。そのため、サイドメンバの前端部において、サイドメンバの延設方向に対して傾斜した方向に荷重が作用すると、サイドメンバ(サイドメンバと第2衝撃吸収部との接続部)が変形又は破損する虞がある。この場合、第2衝撃吸収部が安定的に支持されなくなる。そのため、微少ラップ衝突において、物体が車両の前端部を破壊しながら車体内へ進入していく過程において、第2衝撃吸収部が意図通りに変形せず、第2衝撃吸収部が衝撃をあまり吸収しない。よって、従来装置の衝撃吸収性能をあまり向上させることができない虞がある。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、衝撃吸収性能を向上させた衝撃吸収装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の衝撃吸収装置は、車両前後方向に延設されたサイドメンバの前方に設けられる。
この衝撃吸収装置は、
車幅方向に延設された筒状のバンパーリインフォースメントであって、その車両高さ方向の寸法が、前記サイドメンバの車両高さ方向の寸法よりも小さいバンパーリインフォースメントと、
前記バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部の上側面又は下側面に取り付けられ、前記バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部を補強する補強部材と、
前記サイドメンバと前記バンパーリインフォースメントとの間に設けられ、前記バンパーリインフォースメント及び前記補強部材を支持し、前記バンパーリインフォースメントに対し後方への荷重が作用したとき変形して衝撃を吸収するクラッシュボックスと、
を備える。
前記クラッシュボックスは、
前記サイドメンバの前方に配置され、前記サイドメンバの前端から前方へ向かって延設された第1衝撃吸収部と、
前記バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部及び前記補強部材と、前記サイドメンバの前端との間に配置され、前記サイドメンバの前端から前方且つ車幅方向における外側へ向かって延設された第2衝撃吸収部と、
を備える。
【0008】
例えば、本発明に係る衝撃吸収装置が適用された車両の前端部であって、左側のサイドメンバの前方に位置する部分よりも左方の領域に物体が衝突すると、当該物体は、バンパーリインフォースメント、補強部材及びクラッシュボックスを変形させながら車室内側へ進入していく。その過程において、バンパーリインフォースメントの車幅方向左端部の後面が第2衝撃吸収部によって支持される。バンパーリインフォースメントの左端部に作用した荷重は、主に、第2衝撃吸収部を介して、サイドメンバの前端面に印加(伝達)される。そして、サイドメンバに、その軸線方向に荷重(衝撃荷重の分力)が作用する。上記のように、サイドメンバは、その軸線方向への荷重に対する強度が高くなるように設計されている。よって、第2衝撃吸収部を介してサイドメンバの前端面に荷重が印加されたとしても、サイドメンバは、ほとんど変形又は破損することなく、第2衝撃吸収部を支持し続ける。この状態において、第1衝撃吸収部が、左方へ少し倒れ込むように変形しつつ、第2衝撃吸収部が後方へ押し曲げられるように変形していく。すなわち、衝突エネルギーが第1衝撃吸収部及び第2衝撃吸収部の変形エネルギーに変換されて吸収される。よって、本発明によれば、衝撃吸収性能を向上させた衝撃吸収装置を提供できる。
【0009】
本発明の一態様に係る衝撃吸収装置において、前記第1衝撃吸収部と前記第2衝撃吸収部とが一体的に形成されている。
【0010】
例えば、前記第1衝撃吸収部及び前記第2衝撃吸収部は、車両高さ方向に延びる筒状部から構成されている。
【0011】
例えば、前記クラッシュボックスは押し出し成型体であり、その押し出し方向が車両高さ方向に相当する。
【0012】
これによれば、第1衝撃吸収部と第2衝撃吸収部とを別体とした場合に比べて、部品点数が少なく、部品管理コスト、製造コストなどを低減できる。
【0013】
本発明の他の態様に係る衝撃吸収装置において、前記バンパーリインフォースメントのうち、前記第1衝撃吸収部が接続された部位よりも車幅方向における中央部側に位置する部分に、貫通孔が設けられている。
【0014】
これによれば、衝突初期断簡において、車両(サイドメンバ)に作用する荷重の増大速度が過大になることを防止できる。
【0015】
本発明の他の態様に係る衝撃吸収装置において、前記補強部材は、前記バンパーリインフォースメントの車幅方向における端部の延設方向に対して平行に延びる筒状部材である。
【0016】
これによれば、補強部材を、例えば、押し出し成型法を用いて一体的に形成できる。よって、補強部材を複数の部品から形成する場合に比べて部品点数が少なく、部品管理コスト、製造コストなどを低減できる。
【0017】
本発明の他の態様に係る衝撃吸収装置において、前記補強部材が、前記バンパーリインフォースメントよりも細い。
【0018】
例えば、前記補強部材の前端面が前記バンパーリインフォースメントの前端面よりも後方に位置している。
【0019】
これによれば、衝突初期断簡において、車両(サイドメンバ)に作用する荷重の増大速度が過大になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る衝撃吸収装置が適用された車両の概略を示す平面図である。
【
図4】
図1の衝撃吸収装置の背面図(車両後方から見た図)である。
【
図5】
図1の衝撃吸収装置の左端部を拡大した平面図である。
【
図6】バンパーリインフォースメントの断面図である。
【
図7】微少ラップ衝突において
図1の衝撃吸収装置が変形していく過程を示す平面図である。
【
図8】微少ラップ衝突においてサイドメンバの前端に作用する荷重の変化を表すグラフである。
【
図9】本発明の変形例に係る衝撃吸収装置の斜視図である。
【
図12】
図9の衝撃吸収装置の左端部を拡大した平面図である。
【
図13】微少ラップ衝突において
図9の衝撃吸収装置が変形していく過程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(概略)
本発明の一実施形態に係る衝撃吸収装置1について説明する。まず、
図1を参照して、衝撃吸収装置1が適用された車両Vの前部の構成について簡単に説明しておく。この車両Vは、左右一対のサイドメンバSL,SRを備えている。サイドメンバSL,SRは、車両前後方向に延びる筒状部材である。その長手方向に垂直な断面は、矩形を呈する。サイドメンバSL,SRの前端面は、略板状のブラケットで塞がれている。サイドメンバSL,SRは、車幅方向に間隔をおいて配置され、車両前後方向にそれぞれ延設されている。サイドメンバSL,SRは、車両Vの車幅方向における左端及び右端からの車幅方向の距離が車幅の1/4程度になるような位置にそれぞれ配置されている。
【0022】
(構成)
図2乃至
図5に示したように、衝撃吸収装置1は、バンパーリインフォースメント10、補強部材20、及びクラッシュボックス30を含む。なお、
図5は、車両Vの前部における車幅方向左半部を示している。以下の説明において、衝撃吸収装置1の車幅方向右半部は車幅方向左半部と左右対称であるので、その説明を省略する。
【0023】
バンパーリインフォースメント10は、サイドメンバSL,SRの前方にて、車幅方向に延設された筒状部材である。バンパーリインフォースメント10は、平面視において車幅方向内方側よりも車幅方向外方側が少し後方に位置するように湾曲している。
図6に示したように、バンパーリインフォースメント10の延設方向に垂直な断面は、略五角形を呈する。すなわち、バンパーリインフォースメント10は、前壁部11、後壁部12、上壁部13、第1下壁部14及び第2下壁部15を備える。前壁部11の一方の側面が前方へ向けられている。後壁部12は、前壁部11の後方にて、前壁部11に対して平行に配置されている。後壁部12の一方の側面が後方へ向けられている。前壁部11の車両高さ方向の寸法が、後壁部12の車両高さ方向の寸法より少し小さい。前壁部11の上端の高さ位置と後壁部12の高さ位置とが同一である。上壁部13の一方の側面が上方へ向けられている。上壁部13の前端が前壁部11の上端に接続され、上壁部13の後端が後壁部12の上端に接続されている。第1下壁部14の一方の側面が下方へ向けられている。第1下壁部14は、上壁部13の下方にて、上壁部13に対して平行に配置されている。第1下壁部14の車両前後方向の寸法が、上壁部13の車両前後方向の寸法よりも少し小さい。第1下壁部14の後端が、後壁部12の下端に接続されている。第2下壁部15は、前方且つ下方へ向けられている。第2下壁部15は、前壁部11及び第1下壁部14に対して傾斜している。第2下壁部15の一端が第1下壁部14の前端に接続され、第2下壁部15の他端が前壁部11の下端に接続されている。
【0024】
なお、例えば、前壁部11、後壁部12、上壁部13、第1下壁部14及び第2下壁部15の壁厚は、それぞれ。「6mm」、「2.7mm」、「5mm」、「5mm」、「4mm」である。
【0025】
バンパーリインフォースメント10の車両高さ方向の寸法は、サイドメンバSL,SRの車両高さ方向の寸法より小さい。
【0026】
また、
図3に示したように、上壁部13の長手方向における中間部には、円形の貫通孔THが設けられている。
【0027】
補強部材20は、バンパーリインフォースメント10の長手方向における端部の上面に配置され、バンパーリインフォースメント10の端部を補強する。補強部材20は、バンパーリインフォースメント10の端部の延設方向に略平行な筒状部材である。補強部材20の長手方向に垂直な断面は矩形を呈する。
図5に示したように、平面視において、補強部材20の幅W
20とバンパーリインフォースメント10の幅W
10とが略同一である。補強部材20の長手方向における一端は、バンパーリインフォースメント10の左端に位置し、補強部材20の他端は、サイドメンバSLの前方の領域より左方に位置している。補強部材20は、一組のボルト及びナットを用いて、バンパーリインフォースメント10の上壁部13に締結されている。
【0028】
クラッシュボックス30は、
図2に示したように、第1衝撃吸収部31と第2衝撃吸収部32を含み。これらが一体的に形成されている。具体的には、クラッシュボックス30は、押し出し加工法を用いて一体的に形成されている。その押し出し方向は、クラッシュボックス30が車両に組み付けられた状態における車両高さ方向に相当する。したがって、クラッシュボックス30の車両高さ方向に垂直な断面の形状は、その切断位置に関わらず同一である。クラッシュボックス30の車両高さ方向の寸法は、サイドメンバSLの車両高さ方向の寸法と略同一である。すなわち、クラッシュボックス30の車両高さ方向の寸法は、バンパーリインフォースメント10の車両高さ方向の寸法より大きい。なお、上記のように、バンパーリインフォースメント10の端部の上面に補強部材20が組付けられるのであるが、当該部位の車両高さ方向の寸法が、クラッシュボックス30の車両高さ方向の寸法と略同一である。
【0029】
第1衝撃吸収部31は、その平面視において、車両前後方向に延びる略長方形を呈する。第1衝撃吸収部31の後端部は、サイドメンバSLの前端に締結される。第1衝撃吸収部31の前端部は、バンパーリインフォースメント10の車幅方向中間部(サイドメンバSLの前方に位置する部分)に接続される。クラッシュボックス30が車両Vに組み付けられた状態では第1衝撃吸収部31の軸線(第1衝撃吸収部31の平面視における車幅方向の中心線)が車両前後方向に一致している。
【0030】
さらに具体的には、第1衝撃吸収部31は、
図5に示したように、内壁部311、外壁部312、後壁部313及び前壁部314を備える。内壁部311及び外壁部312は、車両前後方向に延設されている。外壁部312は、内壁部311から見て車幅方向外方(
図2において左方)に配置されている。内壁部311の後端位置と、外壁部312の後端位置は同一である。バンパーリインフォースメント10は上記のように湾曲しているので、外壁部312の前端は、内壁部311の前端よりも少し後方に位置している。後壁部313は、前壁部314及び外壁部312に対して垂直である。前壁部314は、バンパーリインフォースメント10のうち、サイドメンバSLの前方に位置する領域の後面に沿っている。内壁部311の後端と外壁部312の後端が後壁部313に接続され、内壁部311の前端と外壁部312の前端とが前壁部314に接続されている。後壁部313には、その前面から後面へ貫通する貫通孔が形成されている。また、内壁部311の前端には、バンパーリインフォースメント10の後面に沿って車幅方向内方(
図5において右方)へ延びるフランジ部315が形成されている。フランジ部315には、その前面から後面へ貫通する貫通孔が形成されている。
【0031】
内壁部311、外壁部312、後壁部313及び前壁部314によって囲まれた空間に、リブR1が形成されている。リブR1は、内壁部311の前後方向中央部から車幅方向外方へ延設され、外壁部312に接続されている。
【0032】
第2衝撃吸収部32は、第1衝撃吸収部31の外壁部312の車幅方向外方側(
図5において左側)に形成されている。第2衝撃吸収部32は、その平面視において略三角形を呈する。第2衝撃吸収部32の前端部は、バンパーリインフォースメント10の車幅方向左端部に締結される。第2衝撃吸収部32は、バンパーリインフォースメント10の車幅方向左端部を支持する。なお、第2衝撃吸収部32の前端部は補強部材20には接続されていない。
【0033】
さらに具体的には、第2衝撃吸収部32は、外壁部321及び前壁部314を備える。外壁部321は、第1衝撃吸収部31の外壁部312の後端部から前方且つ車幅方向外方(左方)へ向かって延設されている。外壁部321の先端(前端)の前後方向位置は、外壁部312の前端の前後方向位置よりも後方である。前壁部322は、外壁部312の前端からバンパーリインフォースメント10の左端部の後面に沿うように延設されている。外壁部321の先端が前壁部322の左端部に接続されている。
【0034】
外壁部312、外壁部321、及び前壁部322によって囲まれた空間には、リブR2が形成されている。リブR2は、外壁部312と外壁部321との接続部から前方且つ車幅方向外方へ延設され、前壁部322の略中央部に接続されている。また、外壁部321の前端には、バンパーリインフォースメント10の後面に沿って車幅方向外方(
図5において左方)へ延びるフランジ部323が形成されている。フランジ部323には、その前面から後面へ貫通する貫通孔が形成されている。
【0035】
フランジ部315に形成された貫通孔及びフランジ部323に形成された貫通孔にボルトが挿入され、このボルトによって、クラッシュボックス30の前端部がバンパーリインフォースメント10に締結される。また、後壁部313に形成された貫通孔にボルトが挿入され、このボルトによって、クラッシュボックス30の後端部がサイドメンバSLの前端面に締結される。なお、バンパーリインフォースメント10の下面と、クラッシュボックス30の下面とが略同一平面内に位置している。また、補強部材20の上面とクラッシュボックス30の上面とが略同一平面内に位置している。第2衝撃吸収部32の前壁部322の前面の左半部に、バンパーリインフォースメント10の左端部及び補強部材20がオーバーラップしている。すなわち、車両Vの前方から前壁部322の前面のうち、車幅方向端部側の略半分の領域を視認できないが、前壁部322のその他の領域は露出している。一方、第1衝撃吸収部31の前壁部314の前面の下部に、バンパーリインフォースメント10がパーバーラップしている。すなわち、車両Vの前方から前壁部314の下部を視認できないが、それよりも上方の部分が露出している。
【0036】
(作用・効果)
車両Vの前端部であって、サイドメンバSLの前方に位置する部分よりも左方の領域に物体OBが衝突すると、物体OBは、
図7(A)乃至
図7(D)に示したように、バンパーリインフォースメント10、補強部材20及びクラッシュボックス30を変形させながら車室内側へ進入していく。その過程において、バンパーリインフォースメント10の車幅方向左端部の後面が第2衝撃吸収部32によって支持される。バンパーリインフォースメント10の左端部に作用した荷重は、主に、第2衝撃吸収部32の外壁部321及びリブR2を介して、サイドメンバSLの前端面に印加(伝達)される。そして、サイドメンバSLに、その軸線方向に荷重(衝撃荷重の分力)が作用する。上記のように、サイドメンバSLは、その軸線方向への荷重に対する強度が高くなるように設計されている。よって、第2衝撃吸収部32を介してサイドメンバSLの前端面に荷重が印加されたとしても、サイドメンバSLは、ほとんど変形又は破損することなく、第2衝撃吸収部32を支持し続ける。この状態において、第1衝撃吸収部31が、左方へ少し倒れ込むように変形しつつ、第2衝撃吸収部32が後方へ押し曲げられるように変形していく。すなわち、物体OBの衝突エネルギーが第1衝撃吸収部31及び第2衝撃吸収部32の変形エネルギーに変換されて吸収される。
【0037】
サイドメンバSLの全端面に印加される荷重(サイドメンバSLの軸線方向の荷重)は、8に実戦で示したように変化する。すなわち、物体OBが衝突した直後の段階において荷重が比較的急激に増大する。すなわち、物体OBの進入量(ストローク)の増大に伴い、荷重が比較的急速に増大してピークに達する。そして、さらにストロークが増大していくと、荷重が少し低下するが、ある程度の荷重が保持される。ここで、衝撃吸収量は、同図における荷重の積分値に相当する。本実施形態では、衝突の初期段階にて荷重が比較的急速に増大し、その後、荷重があまり低下することなく保持される。よって、本実施形態によれば、衝撃を効率的に吸収できる。
【0038】
なお、本実施形態では、上壁部13に貫通孔THが設けられている。加えて、バンパーリインフォースメント10の各壁部の壁厚が従来のバンパーリインフォースメントの壁厚よりも少し小さく設定されている。これにより、車両Vの車幅方向における中央部に物体が衝突した場合に、サイドメンバSL,SRに印加される荷重のピーク値、及び衝突初期段階における荷重の増大速度が過大になることを防止している。
【0039】
また、クラッシュボックス30を、押し出し成形法を用いて一体的に形成した。よって、第1衝撃吸収部31と第2衝撃吸収部32とをそれぞれ別々に製造し、その後両者を接合してクラッシュボックス30を形成する場合に比べて、部品の管理コストを削減できる。また、製造工程数を低減できる。したがって、衝撃吸収装置1の製造コストが安い。
【0040】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、上記の補強部材20に代えて、
図9乃至
図12に示したように、補強部材40を採用してもよい。補強部材40は、補強部材20に比べて少し細長い。すなわち、補強部材40の幅W40は、バンパーリインフォースメント10の幅W
10よりも小さい。補強部材40が上壁部13に取り付けられた状態において、補強部材40のうち前方へ向けられた壁面は、バンパーリインフォースメント10の前壁部11の壁面よりも後方に位置している。また、補強部材20を用いた例では、補強部材20の一端が前壁部322の車幅方向における中央部の前方に位置しているのに対し、補強部材40の一端は、前壁部322の右端の前方に位置している。なお、補強部材40の一端面は、補強部材40の長手方向に対して傾斜している。
【0042】
補強部材40を採用すれば、車両Vの車幅方向における中央部に物体が衝突した場合に、サイドメンバSL,SRに印加される荷重のピーク値、及び衝突初期段階における荷重の増大速度が過大になることをより効果的に防止できる。
【0043】
また、補強部材40を採用した場合、物体OBが車両Vの左端部に衝突した際、第1衝撃吸収部31及び第2衝撃吸収部32は、
図12に示したように変形していく。その際、サイドメンバSLに作用する荷重は、
図8に破線で示したように変化する。すなわち、この場合、補強部材20を採用した場合に比べて、衝突初期段階における荷重の増大速度が小さい。また、荷重がピークに達した時点の物体OBの進入ストロークが、補強部材20を採用した場合よりも大きい。このように、補強部材40を採用した場合には、衝突初期段階における荷重の変化が緩やかであるので、車両Vの乗員へ与える影響を低減できる。
【0044】
また、上記実施形態は、バンパーリインフォースメント10の上壁部13の上面に補強部材20(補強部材40)が取り付けられた例であるが、例えば、補強部材20(補強部材40)が、バンパーリインフォースメント10の第1下壁部14の下面に取り付けられていてもよい。すなわち、車両Vの前方から見て、バンパーリインフォースメント10の端部と補強部材20とによって、前壁部322の全体(少なくとも半分程度)が覆われるように構成すればよい。
【符号の説明】
【0045】
1…衝撃吸収装置、10…バンパーリインフォースメント、20…補強部材、30…クラッシュボックス、40…補強部材、OB…物体、SL,SR…サイドメンバ、TH…貫通孔、V…車両