(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037258
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】マイクロホンモジュールおよびマイクロホン装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
H04R3/00 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143899
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 誠
(72)【発明者】
【氏名】米田 晋
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220BC01
(57)【要約】
【課題】広帯域において平坦性を有し且つ接続配線を少なくする。
【解決手段】マイクロホンモジュールは、増幅回路と、ハイパスフィルタと、バッファ回路と、第1ローパスフィルタと、分離回路と、第2ローパスフィルタとを備える。増幅回路は、マイクロホン信号と参照電圧との差を増幅した増幅信号を出力する。ハイパスフィルタは、増幅信号をフィルタリングした高域増幅信号を出力する。バッファ回路は、高域増幅信号をバッファリングした音声信号を出力する。第1ローパスフィルタは、直流電源に重畳された音声信号をフィルタリングした低域通過バイアス電圧を出力する。分離回路は、低域通過バイアス電圧から外部回路の影響を除いた内部バイアス電圧を出力する。第2ローパスフィルタは、内部バイアス電圧をフィルタリングした参照電圧を出力する。ハイパスフィルタから増幅回路までの回路は、オープンループゲインが0dBより小さくなるように設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収音した音声を表すマイクロホン信号を出力するマイクロホン素子と、
少なくとも第1周波数以上、前記第1周波数より高い第2周波数以下の周波数成分を増幅するバンドパス特性を有し、演算増幅器を用いて、前記マイクロホン信号と参照電圧との差を増幅した増幅信号を出力する増幅回路と、
低域を減衰させ、高域を通過させる高域通過特性を有し、前記増幅信号をハイパスフィルタリングした高域増幅信号を出力するハイパスフィルタと、
前記高域増幅信号をバッファリングして、音声信号として出力するバッファ回路と、
高域を減衰させ、低域を通過させる低域通過特性を有し、直流電源に重畳された前記音声信号をローパスフィルタリングした低域通過バイアス電圧を出力する第1ローパスフィルタと、
前記低域通過バイアス電圧を受け取り、前記低域通過バイアス電圧から外部回路の影響を除いた内部バイアス電圧を出力する分離回路と、
高域を減衰させ、低域を通過させる低域通過特性を有し、前記内部バイアス電圧をローパスフィルタリングした電圧を所定の抵抗比で分圧した電圧を、前記参照電圧として出力する第2ローパスフィルタと、
を備え、
前記ハイパスフィルタの入力端子から、前記第1ローパスフィルタおよび前記第2ローパスフィルタを介して、前記増幅回路の出力端子までの回路における前記第1周波数から前記第2周波数までの範囲のオープンループゲインが、0dBより小さくなるように、前記ハイパスフィルタ、前記第1ローパスフィルタ、前記第2ローパスフィルタおよび前記増幅回路のパラメータが設定される
マイクロホンモジュール。
【請求項2】
前記ハイパスフィルタは、抵抗およびキャパシタにより構成される
請求項1に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項3】
前記バッファ回路は、バイポーラトランジスタを用いたエミッタフォロア回路であり、前記直流電源から出力される外部バイアス電圧がバイアスとして供給される
請求項1または2に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項4】
前記第1ローパスフィルタは、抵抗およびキャパシタにより構成される
請求項1から3の何れか一項に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項5】
前記分離回路は、バイポーラトランジスタであって、ベースが前記第1ローパスフィルタの出力端子に接続され、コレクタに前記直流電源が印加され、エミッタから前記内部バイアス電圧を出力する
請求項1から4の何れか一項に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項6】
前記第2ローパスフィルタは、抵抗およびキャパシタにより構成される
請求項1から5の何れか一項に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項7】
前記演算増幅器は、反転入力端子に前記マイクロホン信号が入力され、非反転入力端子に前記参照電圧が印加される
請求項1から6の何れか一項に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項8】
前記マイクロホン素子および前記演算増幅器は、前記内部バイアス電圧により駆動される
請求項1から7の何れか一項に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項9】
正側モジュール出力端子から正側の前記音声信号を出力し、負側モジュール出力端子から負側の前記音声信号を出力する請求項1から8の何れか一項に記載のマイクロホンモジュールと、
前記正側モジュール出力端子と、正側音声出力端子との間に接続される正側キャパシタと、
前記負側モジュール出力端子と、負側音声出力端子との間に接続される負側キャパシタと、
前記正側モジュール出力端子と、前記直流電源の正側端子との間に接続される正側抵抗と、
前記負側モジュール出力端子と、前記直流電源の負側端子との間に接続される負側抵抗と、
を備えるマイクロホン装置。
【請求項10】
正側モジュール出力端子から前記音声信号を出力する請求項1から8の何れか一項に記載のマイクロホンモジュールと、
前記正側モジュール出力端子と、正側音声出力端子との間に接続される正側キャパシタと、
前記正側モジュール出力端子と、前記直流電源の正側端子との間に接続される正側抵抗と、
を備えるマイクロホン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロホンモジュールおよびマイクロホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車室内に搭載されるマイクロホンモジュールは、例えば、ハンズフリー通話および音声認識等のために用いられたり、車室内の騒音を低減するActive Noise Cancellation(ANC)のために用いられたりする。ハンズフリー通話用のマイクロホンモジュールは、ITU-T(International Telecommunication Union - Telecommunication sector) P.1120およびITU-T P.1130等の規格に代表されるように、近年、10kHzを超える周波数特性が規定されている。ANC用のマイクロホンモジュールは、約30Hzから200Hzまでの低周波領域の振幅および位相の平坦性が要求される。このように、ハンズフリー通話用のマイクロホンモジュールとANC用のマイクロホンモジュールとは、カバーする周波数帯域が異なっている。このため、従来、ハンズフリー通話用のマイクロホンモジュールおよびANC用のマイクロホンモジュールは、それぞれ別々の装置として車両に搭載されていた。
【0003】
また、車室内に搭載されるマイクロホンモジュールは、後段機器との親和性を考慮して接続配線の本数が少ないことが要求される。このため、車室内に搭載されるマイクロホンモジュールは、外部の電源から直流電力を受け取る電力線と、音声信号の出力線とが共用化された2線式であることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-208128号公報
【特許文献2】特表2015-507877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、ハンズフリー通話およびANCに共用可能な低域から高域までの広帯域において振幅の平坦性を有する2線式のマイクロホンモジュールを設計することは困難であった。
【0006】
本開示の目的は、広帯域における振幅の平坦性を有する接続配線の少ないマイクロホンモジュール、およびマイクロホン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るマイクロホンモジュールは、マイクロホン素子と、増幅回路と、ハイパスフィルタと、バッファ回路と、第1ローパスフィルタと、分離回路と、第2ローパスフィルタと、を備える。前記マイクロホン素子は、収音した音声を表すマイクロホン信号を出力する。前記増幅回路は、少なくとも第1周波数以上、前記第1周波数より高い第2周波数以下の周波数成分を増幅するバンドパス特性を有し、演算増幅器を用いて、前記マイクロホン信号と参照電圧との差を増幅した増幅信号を出力する。前記ハイパスフィルタは、低域を減衰させ、高域を通過させる高域通過特性を有し、前記増幅信号をハイパスフィルタリングした高域増幅信号を出力する。前記バッファ回路は、前記高域増幅信号をバッファリングして、音声信号として出力する。前記第1ローパスフィルタは、高域を減衰させ、低域を通過させる低域通過特性を有し、直流電源に重畳された前記音声信号をローパスフィルタリングした低域通過バイアス電圧を出力する。前記分離回路は、前記低域通過バイアス電圧を受け取り、前記低域通過バイアス電圧から外部回路の影響を除いた内部バイアス電圧を出力する。前記第2ローパスフィルタは、高域を減衰させ、低域を通過させる低域通過特性を有し、前記内部バイアス電圧をローパスフィルタリングした電圧を所定の抵抗比で分圧した電圧を、前記参照電圧として出力する。前記ハイパスフィルタの入力端子から、前記第1ローパスフィルタおよび前記第2ローパスフィルタを介して、前記増幅回路の出力端子までの回路における第1周波数から第2周波数までの範囲のオープンループゲインが、0dBより小さくなるように、前記ハイパスフィルタ、前記第1ローパスフィルタ、前記第2ローパスフィルタおよび前記増幅回路のパラメータが設定される。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るマイクロホンモジュールおよびマイクロホン装置によれば、広帯域おける振幅の平坦性を有するとともに接続配線を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るマイクロホン装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、マイクロホンモジュールにおける、ハイパスフィルタから増幅回路までのオープンループゲインを説明するための図である。
【
図3】
図3は、ハイパスフィルタの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、ハイパスフィルタの周波数特性を示す図である。
【
図5】
図5は、第1ローパスフィルタの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第1ローパスフィルタの周波数特性を示す図である。
【
図7】
図7は、第2ローパスフィルタの構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第2ローパスフィルタの周波数特性を示す図である。
【
図11】
図11は、ハイパスフィルタから増幅回路までのオープンループゲインの周波数特性を示す図である。
【
図12】
図12は、マイクロホンモジュールの周波数特性を示す図である。
【
図13】
図13は、マイクロホン装置の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係るマイクロホン装置10の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るマイクロホン装置10の構成を示す図である。実施形態に係るマイクロホン装置10は、車両の車室内に搭載され、ハンズフリー通話およびANCに共用して用いられる音声信号を出力する。なお、マイクロホン装置10は、このような用途に限らず、他の用途に用いられてもよい。
【0012】
マイクロホン装置10は、マイクロホンモジュール20と、直流電源21と、正側キャパシタ22と、負側キャパシタ23と、正側抵抗24と、負側抵抗25とを備える。
【0013】
マイクロホンモジュール20は、周囲の音声を収音し、収音した音声を表す音声信号を出力する。本実施形態において、マイクロホンモジュール20は、差動の音声信号を出力する。より詳しくは、マイクロホンモジュール20は、正側モジュール出力端子31から正側の音声信号を出力し、負側モジュール出力端子32から負側の音声信号を出力する。負側の音声信号は、正側の音声信号に対して位相が反転した信号である。
【0014】
直流電源21は、直流電圧を発生する。直流電源21は、マイクロホンモジュール20へと駆動電力を供給する。本実施形態において、直流電源21の負側端子は、グランドに接続される。
【0015】
正側キャパシタ22は、マイクロホンモジュール20の正側モジュール出力端子31と、正側音声出力端子33との間に接続される。正側キャパシタ22は、マイクロホンモジュール20から出力された正側の音声信号の直流成分をカットし、直流成分がカットされた正側の音声信号を正側音声出力端子33から出力させる。
【0016】
負側キャパシタ23は、マイクロホンモジュール20の負側モジュール出力端子32と、負側音声出力端子34との間に接続される。負側キャパシタ23は、マイクロホンモジュール20から出力された負側の音声信号の直流成分をカットし、直流成分がカットされた負側の音声信号を負側音声出力端子34から出力させる。
【0017】
正側抵抗24は、正側モジュール出力端子31と、直流電源21の正側端子との間に接続される。負側抵抗25は、負側モジュール出力端子32と、直流電源21の負側端子との間に接続される。これにより、マイクロホンモジュール20は、正側モジュール出力端子31と負側モジュール出力端子32との間は、直流電源21から発生される直流電圧が印加される。さらに、マイクロホンモジュール20の負側モジュール出力端子32は、負側抵抗25を介してグランドに接続される。
【0018】
このようなマイクロホン装置10は、マイクロホンモジュール20の正側モジュール出力端子31および負側モジュール出力端子32から、差動の音声信号を出力することができる。具体的には、マイクロホン装置10は、正側モジュール出力端子31から直流成分がカットされた正側の音声信号を出力し、負側モジュール出力端子32から、直流成分がカットされた負側の音声信号を出力することができる。
【0019】
また、このようなマイクロホン装置10は、マイクロホンモジュール20の正側モジュール出力端子31と負側モジュール出力端子32との間に、直流電源21から発生された直流電圧が、外部バイアス電圧として供給される。これにより、マイクロホン装置10は、直流電源21から発生された直流電圧を駆動源として動作することができる。さらに、このようなマイクロホン装置10は、マイクロホンモジュール20から出力される音声信号の出力線と、マイクロホンモジュール20へと駆動電力を供給する電力線とを共通化し、マイクロホンモジュール20の接続配線を少なくすることができる。
【0020】
マイクロホンモジュール20は、マイクロホン素子50と、増幅回路51と、ハイパスフィルタ52と、バイアス抵抗53と、バッファ回路54と、第1ローパスフィルタ55と、分離回路56と、第2ローパスフィルタ57と、参照入力抵抗58とを備える。
【0021】
マイクロホン素子50は、周囲の音声を収音し、収音した音声を表すマイクロホン信号を出力する。マイクロホン素子50は、少なくとも第1周波数以上、第1周波数より高い第2周波数以下の周波数成分の音声を集音する。マイクロホン装置10が車両の車室内に搭載され、ハンズフリー通話およびANCに用いる音声信号を出力する場合、第1周波数は、ANCを実行するために必要となる最低の周波数である例えば約30Hzである。また、この場合、第2周波数は、ハンズフリー通話を実行するために必要となる最高の周波数である例えば10kHzである。
【0022】
増幅回路51は、演算増幅器101を含む。増幅回路51は、マイクロホン素子50からマイクロホン信号を取得する。増幅回路51は、少なくとも第1周波数以上、第2周波数以下の周波数成分の振幅および位相を平坦に増幅するバンドパス特性を有し、演算増幅器101を用いて、マイクロホン信号と参照電圧との差を増幅した増幅信号を出力する。
【0023】
一例として、増幅回路51は、演算増幅器101と、第1抵抗102と、第1キャパシタ103と、第2抵抗104と、第3抵抗105と、第2キャパシタ106とを含む。第1抵抗102、第1キャパシタ103および第2抵抗104は、増幅回路51の入力端子51aと、演算増幅器101の反転入力端子との間に直列に接続される。第1抵抗102、第1キャパシタ103および第2抵抗104は、増幅回路51の入力端子51aの側から、第1抵抗102、第1キャパシタ103および第2抵抗104の順で接続される。第3抵抗105は、演算増幅器101の反転入力端子と、演算増幅器101の出力端子との間に接続される。第2キャパシタ106は、演算増幅器101の反転入力端子と、演算増幅器101の出力端子との間に接続される。
【0024】
演算増幅器101は、反転入力端子に、マイクロホン素子50から出力されたマイクロホン信号が、第1抵抗102、第1キャパシタ103および第2抵抗104を介して入力される。また、演算増幅器101は、非反転入力端子に、第2ローパスフィルタ57から出力された参照電圧が参照入力抵抗58を介して入力される。このような構成の増幅回路51は、バンドパス特性を有し、マイクロホン信号と参照電圧との差を増幅した増幅信号を、出力端子51bから出力することができる。
【0025】
ハイパスフィルタ52は、増幅回路51から出力された増幅信号を取得する。ハイパスフィルタ52は、低域を減衰させ、高域を通過させる高域通過特性を有し、増幅信号をハイパスフィルタリングした高域増幅信号を出力する。
【0026】
ハイパスフィルタ52は、抵抗およびキャパシタにより構成されるフィルタ回路である。一例として、ハイパスフィルタ52は、第3キャパシタ109と、第4抵抗110とを含む。第3キャパシタ109は、ハイパスフィルタ52の入力端子52aと、ハイパスフィルタ52の出力端子52bとの間に接続される。第4抵抗110は、ハイパスフィルタ52の出力端子52bと、マイクロホンモジュール20の負側モジュール出力端子32との間に接続される。このような構成のハイパスフィルタ52は、入力端子52aに、増幅回路51から出力された増幅信号が入力される。そして、このような構成のハイパスフィルタ52は、出力端子52bから、増幅信号をハイパスフィルタリングした高域増幅信号を出力することができる。
【0027】
バッファ回路54は、ハイパスフィルタ52から出力された高域増幅信号を取得する。バッファ回路54は、高域増幅信号をバッファリングして、音声信号として出力する。本実施形態においては、バッファ回路54は、正側モジュール出力端子31から差動の音声信号のうちの正側の音声信号を出力し、負側モジュール出力端子32から差動の音声信号のうちの負側の音声信号を出力する。
【0028】
一例として、バッファ回路54は、バイポーラトランジスタを用いたエミッタフォロア回路であり、直流電源21から発生された外部バイアス電圧がバイアスとして供給される。例えば、バッファ回路54は、pnp型のバイポーラトランジスタである。この場合、バッファ回路54として機能するバイポーラトランジスタは、ベースにハイパスフィルタ52の出力端子52bが接続され、エミッタに正側モジュール出力端子31が接続され、コレクタに負側モジュール出力端子32が接続される。また、バッファ回路54として機能するバイポーラトランジスタのベースは、バイアス抵抗53を介して、正側モジュール出力端子31に接続される。このような構成のバッファ回路54は、高域増幅信号をバッファリングした音声信号を出力することができる。
【0029】
第1ローパスフィルタ55は、直流電源21に重畳された音声信号を、正側モジュール出力端子31および負側モジュール出力端子32を介して取得する。第1ローパスフィルタ55は、高域を減衰させ、低域を通過させる低域通過特性を有し、直流電源21に重畳された音声信号をローパスフィルタリングした低域通過バイアス電圧を出力する。
【0030】
第1ローパスフィルタ55は、抵抗およびキャパシタにより構成されるフィルタ回路である。一例として、第1ローパスフィルタ55は、第5抵抗113と、第6抵抗114と、第4キャパシタ115とを含む。第5抵抗113は、第1ローパスフィルタ55の入力端子55aと、第1ローパスフィルタ55の出力端子55bとの間に接続される。第6抵抗114は、第1ローパスフィルタ55の出力端子55bと、マイクロホンモジュール20の負側モジュール出力端子32との間に接続される。第4キャパシタ115は、第1ローパスフィルタ55の出力端子55bと、マイクロホンモジュール20の負側モジュール出力端子32との間に接続される。このような構成の第1ローパスフィルタ55は、入力端子55aに、直流電源21に重畳された音声信号が供給される。そして、このような構成の第1ローパスフィルタ55は、出力端子55bから、直流電源21に重畳された音声信号をローパスフィルタリングした低域通過バイアス電圧を出力することができる。
【0031】
分離回路56は、第1ローパスフィルタ55から出力された低域通過バイアス電圧を取得する。分離回路56は、低域通過バイアス電圧から外部回路の影響を除いた内部バイアス電圧を出力する。外部回路は、マイクロホンモジュール20の外部に設けられた回路であり、正側モジュール出力端子31および負側モジュール出力端子32に接続された回路である。すなわち、分離回路56は、低域通過バイアス電圧をバッファリングした内部バイアス電圧を出力する。
【0032】
分離回路56は、バイポーラトランジスタにより構成される。一例として、分離回路56は、npn型のバイポーラトランジスタであって、ベースが第1ローパスフィルタ55の出力端子55bに接続され、コレクタに外部バイアス電圧が印加され、エミッタから内部バイアス電圧を出力する。このような構成の分離回路56は、直流電源21から発生された外部バイアス電圧がバイアスとして供給される。そして、このような構成の分離回路56は、低域通過バイアス電圧をバッファリングした内部バイアス電圧として出力することができる。
【0033】
第2ローパスフィルタ57は、分離回路56から出力された内部バイアス電圧を取得する。第2ローパスフィルタ57は、高域を減衰させ、低域を通過させる低域通過特性を有し、分離回路56から出力された内部バイアス電圧をローパスフィルタリングした電圧を所定の抵抗比で分圧した電圧を、参照電圧として出力する。例えば、参照電圧は、内部バイアス電圧の中点を表す電圧である。例えば、参照電圧は、内部バイアス電圧を1/2にした電圧である。
【0034】
第2ローパスフィルタ57は、抵抗およびキャパシタにより構成されるフィルタ回路である。一例として、第2ローパスフィルタ57は、第7抵抗117と、第8抵抗118と、第5キャパシタ119とを含む。第7抵抗117は、第2ローパスフィルタ57の入力端子57aと、第2ローパスフィルタ57の出力端子57bとの間に接続される。第8抵抗118は、第2ローパスフィルタ57の出力端子57bと、マイクロホンモジュール20の負側モジュール出力端子32との間に接続される。第5キャパシタ119は、第2ローパスフィルタ57の出力端子57bと、マイクロホンモジュール20の負側モジュール出力端子32との間に接続される。このような構成の第2ローパスフィルタ57は、入力端子57aに、分離回路56から出力された内部バイアス電圧が供給される。そして、このような構成の第2ローパスフィルタ57は、出力端子57bから、直流電源21から供給された内部バイアス電圧をローパスフィルタリングした電圧を、第7抵抗117と第8抵抗118との抵抗比により分圧した参照電圧を出力することができる。なお、参照電圧が内部バイアス電圧を1/2にした電圧である場合、第7抵抗117と第8抵抗118とは、同一の抵抗値である。
【0035】
そして、このような第2ローパスフィルタ57から出力された参照電圧は、参照入力抵抗58を介して、増幅回路51内の演算増幅器101の非反転入力端子に入力される。これにより、増幅回路51は、演算増幅器101を用いて、マイクロホン信号と参照電圧との差を増幅した増幅信号を出力することができる。
【0036】
さらに、マイクロホン素子50、および、増幅回路51内の演算増幅器101は、分離回路56から出力された内部バイアス電圧により駆動される。すなわち、マイクロホン素子50および演算増幅器101は、電源電圧として内部バイアス電圧が印加される。内部バイアス電圧は、分離回路56によって外部回路による影響が除かれている。従って、マイクロホン素子50および演算増幅器101は、外部回路、すなわち、直流電源21等のマイクロホンモジュール20の外部に設けられた回路によるインピーダンスの変動およびノイズ等の影響を受けずに、動作をすることができる。
【0037】
図2は、マイクロホンモジュール20における、ハイパスフィルタ52から増幅回路51までのオープンループゲインを説明するための図である。
【0038】
マイクロホンモジュール20は、第1周波数から第2周波数までの周波数範囲において、発振が生じないようにパラメータが設定される。具体的には、マイクロホンモジュール20は、ハイパスフィルタ52の入力端子52aから、第1ローパスフィルタ55および第2ローパスフィルタ57を介して、増幅回路51の出力端子51bまでの回路における第1周波数から第2周波数までの範囲のオープンループゲインが、0dBより小さくなるように、ハイパスフィルタ52、第1ローパスフィルタ55、第2ローパスフィルタ57および増幅回路51のパラメータが設定される。すなわち、ハイパスフィルタ52、第1ローパスフィルタ55、第2ローパスフィルタ57および増幅回路51は、ハイパスフィルタ52の入力端子52aから、第1ローパスフィルタ55および第2ローパスフィルタ57を介して、増幅回路51の出力端子51bまでの回路における第1周波数から第2周波数までの範囲のオープンループゲインが0dBより小さくなるように、抵抗値およびキャパシタンスが設定される。
【0039】
ループ回路は、オープンループゲインが0dB以上となると、自己発振を引き起こす。従って、本実施形態に係るマイクロホンモジュール20は、ハイパスフィルタ52の入力端子52aから、第1ローパスフィルタ55および第2ローパスフィルタ57を介して、増幅回路51の出力端子51bまでのループ回路のオープンループゲインを0dBより小さくすることにより、自己発振を発生させないようにすることができる。これにより、本実施形態に係るマイクロホンモジュール20は、第1周波数から第2周波数までの周波数範囲において、振幅が平坦な音声信号を出力することができる。
【0040】
図3は、ハイパスフィルタ52の構成を示す図である。ハイパスフィルタ52は、
図3に示すように構成される。第3キャパシタ109のキャパシタンスをC
3とし、第4抵抗110の抵抗値をR
4とした場合、ハイパスフィルタ52の入力端子51aから出力端子51bまでの間の伝達関数は、式(1)のように表される。
【0041】
【0042】
図4は、ハイパスフィルタ52の減衰量の周波数特性を示す図である。ハイパスフィルタ52は、
図4に示すように、所定のカットオフ周波数より低い周波数範囲である低域を減衰させ、所定のカットオフ周波数以上の周波数範囲である高域を通過させる周波数特性を有する。
【0043】
図5は、第1ローパスフィルタ55の構成を示す図である。第1ローパスフィルタ55は、
図5に示すように構成される。第5抵抗113の抵抗値をR
5とし、第6抵抗114の抵抗値をR
6とし、第4キャパシタ115のキャパシタンスをC
4とした場合、第1ローパスフィルタ55の入力端子55aから出力端子55bの伝達関数は、式(2)のように表される。
【数2】
【0044】
図6は、第1ローパスフィルタ55の減衰量の周波数特性を示す図である。第1ローパスフィルタ55は、
図6に示すように、所定のカットオフ周波数以上の周波数範囲である高域を減衰させ、所定のカットオフ周波数より低い周波数範囲である低域を通過させる周波数特性を有する。
【0045】
図7は、第2ローパスフィルタ57の構成を示す図である。第2ローパスフィルタ57は、
図7に示すように構成される。第7抵抗117の抵抗値をR
7とし、第8抵抗118の抵抗値をR
8とし、第5キャパシタ119のキャパシタンスをC
5とした場合、第2ローパスフィルタ57の入力端子57aから出力端子57bの伝達関数は、式(3)のように表される。
【数3】
【0046】
図8は、第2ローパスフィルタ57の減衰量の周波数特性を示す図である。第2ローパスフィルタ57は、
図8に示すように、所定のカットオフ周波数以上の周波数範囲である高域を減衰させ、所定のカットオフ周波数より低い周波数範囲である低域を通過させる周波数特性を有する。
【0047】
図9は、増幅回路51の構成を示す図である。増幅回路51は、
図9に示すように構成される。第1抵抗102の抵抗値をR
1とし、第1キャパシタ103のキャパシタンスをC
1とし、第2抵抗104の抵抗値をR
2とし、第3抵抗105の抵抗値をR
3とし、第2キャパシタ106のキャパシタンスをC
2とした場合、増幅回路51の入力端子51aから出力端子51bの伝達関数は、式(4)のように表される。
【数4】
【0048】
図10は、増幅回路51の増幅量の周波数特性を示す図である。増幅回路51は、
図10に示すように、第1周波数から第2周波数までの範囲を所定の増幅率で平坦に増幅し、第1周波数より低い低域の増幅率を周波数が低くなるほど低下させ、第2周波数より高い高域の増幅率を周波数が高くなるほど低下させる周波数特性を有する。すなわち、増幅回路51は、バンドパス特性を有する。
【0049】
図11は、ハイパスフィルタ52から増幅回路51までのオープンループゲインの周波数特性を示す図である。
【0050】
ハイパスフィルタ52から増幅回路51までの回路の伝達特性は、ハイパスフィルタ52、第1ローパスフィルタ55、第2ローパスフィルタ57および増幅回路51の伝達特性を加算した特性となる。従って、ハイパスフィルタ52から増幅回路51までのオープンループゲインの周波数特性は、
図4、
図6、
図8および
図10の周波数特性を加算した
図11に示すような特性となる。
【0051】
図11に示すように、ハイパスフィルタ52から増幅回路51までの回路のオープンループゲインの周波数特性は、全ての周波数範囲において0dBより小さい。例えば、
図11に示す周波数特性は、1H近傍において最も高くなっているが、-10dB程度である。従って、マイクロホンモジュール20は、内部に形成されたループ回路において自己発振をしないようにパラメータが設定される。
【0052】
図12は、マイクロホンモジュール20における、増幅回路51の入力端子51aから、ハイパスフィルタ52の出力端子52bまでの周波数特性を示す図である。
【0053】
マイクロホンモジュール20の全体の周波数特性は、
図12に示す周波数特性に、マイクロホン素子50の周波数特性を加算した特性となる。
図12に示すように、マイクロホンモジュール20は、10Hzから10kHzまでの増幅率が平坦となる周波数特性を有する。これにより、マイクロホンモジュール20は、第1周波数(例えば30Hz)から第2周波数(10kHz)まで、自己発振が生じず、振幅が平坦であって、少ない歪で精度の良い音声信号を出力することができる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係るマイクロホン装置10は、広帯域における振幅の平坦性および低域における位相の平坦性を有し、且つ、マイクロホンモジュール20と外部装置との接続配線を少なくすることができる。
【0055】
図13は、変形例に係るマイクロホン装置10の構成を示す図である。
【0056】
変形例に係るマイクロホンモジュール20は、差動の音声信号に代えて、シングルエンドの音声信号を出力する。変形例に係るマイクロホン装置10は、マイクロホンモジュール20と、直流電源21と、正側キャパシタ22と、正側抵抗24とを備える。変形例に係るマイクロホンモジュール20は、負側モジュール出力端子32が直接グランドに接続される。正側キャパシタ22および正側抵抗24のそれぞれは、
図1の接続関係と同一である。
【0057】
このような変形例に係るマイクロホン装置10は、マイクロホンモジュール20の正側モジュール出力端子31から、音声信号を出力することができる。具体的には、変形例に係るマイクロホン装置10は、正側モジュール出力端子31から直流成分がカットされた音声信号を出力する。
【0058】
さらに、変形例に係るマイクロホン装置10は、マイクロホンモジュール20の正側モジュール出力端子31と負側モジュール出力端子32との間に、直流電源21から発生された直流電圧を、外部バイアス電圧として印加することができる。従って、このようなマイクロホン装置10は、マイクロホンモジュール20から出力される音声信号の出力線と、マイクロホンモジュール20へと駆動電力を供給する電力線とを共通化し、マイクロホンモジュール20の接続配線を少なくすることができる。
【0059】
そして、マイクロホンモジュール20は、
図1の構成と同一である。従って、このような構成の変形例に係るマイクロホン装置10も、広帯域における振幅の平坦性および低域における位相の平坦性を有し、且つ、マイクロホンモジュール20と外部装置との接続配線を少なくすることができる。
【0060】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 マイクロホン装置、20 マイクロホンモジュール、21 直流電源、22 正側キャパシタ、23 負側キャパシタ、24 正側抵抗、25 負側抵抗、31 正側モジュール出力端子、32 負側モジュール出力端子、33 正側音声出力端子、34 負側音声出力端子、50 マイクロホン素子、51 増幅回路、52 ハイパスフィルタ、53 バイアス抵抗、54 バッファ回路、55 第1ローパスフィルタ、56 分離回路、57 第2ローパスフィルタ、58 参照入力抵抗、101 演算増幅器、102 第1抵抗、103 第1キャパシタ、104 第2抵抗、105 第3抵抗、106 第2キャパシタ、109 第3キャパシタ、110 第4抵抗、113 第5抵抗、114 第6抵抗、115 第4キャパシタ、117 第7抵抗、118 第8抵抗、119 第5キャパシタ