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  • 特開-車両構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037290
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 41/24 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
F16H41/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143943
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597044391
【氏名又は名称】ナミコー株式會社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】山口 悟
(72)【発明者】
【氏名】八木 三郎
(72)【発明者】
【氏名】日高 寛文
(72)【発明者】
【氏名】松岡 美千代
(57)【要約】
【課題】品質や生産性の低下を生じさせることなく、複数種類のインペラシェルやインペラプレートに対して、これに固定するリングギヤに関する共用化を図ることのできる車両構造の提供。
【解決手段】インペラプレート2にリングギヤ4を溶接固定してドライブプレート1を構成する。リングギヤ4を、内周側が歯幅方向に突出する断面L形に形成する。リングギヤ4のL形の内側角部にスパッタカバーを嵌めて歯部6を覆う。リングギヤ4の突出先端部に設定した複数の溶接位置7をインペラプレート2に溶接する。リングギヤ4のバランス穴8を突出部位に形成して長くし、バランス穴8を小径にしつつ穴数を減らす。インペラプレート2の外周径を大きくする際に底板5を薄くすることができ、リングギヤ4を所定の外周径に維持できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラシェル又は該インペラシェルと一体に回転する別部品にリングギヤが溶接固定された車両構造において、
前記リングギヤは、内周側が歯幅方向に突出する断面L形に形成され、その突出先端部の少なくとも一部が前記インペラシェル又は前記別部品に溶接されたことを特徴とする車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラシェル又は該インペラシェルと一体に回転する別部品にリングギヤが溶接固定された車両構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両構造の一部を構成するトルクコンバータは、そのインペラシェルの外周部やインペラシェルと一体に回転するインペラプレートの外周部などに、エンジン始動用のリングギヤを溶接固定した構造とされている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図4に示すように、リングギヤ101は、リング状の底板102から径方向外向きに歯部104が突出する構造とされ、その底板102の底面付近の複数個所に設定された溶接位置103がインペラシェルなどに溶接されている。
【0004】
リングギヤ101は、全体の高さ(H)を大きく設定することにより、底板102を十分に厚く設定されており、溶接位置103から歯部104までの距離が遠く、溶接の際のスパッタ107が歯部104に付着し難くなっている。また、通常、底板102には、バランスを取るためのバランス穴108が形成されるが、底板102を厚く設定することにより、バランス穴108の穴径を十分に大きくすることができ、その分、バランス穴108の穴数を抑えて、生産性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-258265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、外周径の異なる複数種類のインペラシェルなどに対し、これに固定するリングギヤの外周径を同一にして共通の歯部形状に設定することにより、リングギヤに関する加工設備や各種部品の共用化を図ることが考えられる。
【0007】
ただ、リングギヤをその外周径を一定にして共通の歯部形状にしたまま、インペラシェルなどの外周径を大きくすると、その分、リングギヤの底板を薄肉にする必要がある。
【0008】
図5に示すように、リングギヤ101の全体の高さ(h)を小さく設定するよう底板102を薄肉にした場合、底板102の底面付近に設定した溶接位置103が歯部104に近接するので、溶接の際にスパッタ107が歯部104に付着しやすくなる。これに対して、スパッタカバー105で歯部104を覆うことが考えられるが、スパッタカバー105の位置がずれやすいことから、歯部104を十分に覆うことができず、溶接の際にスパッタカバー105の隙間106から侵入したスパッタ107が歯部104に付着するおそれがある。しかも、溶接位置103が歯部104に近接することにより、歯部104が熱影響を受けて、その強度を低下させるおそれがある。
【0009】
また、底板102を薄肉にすることにより、バランス穴108の穴径を小さくする必要があり、その分、バランス穴108の穴数を増加させることになって、生産性を低下させるおそれがある。
【0010】
本発明は、品質や生産性の低下を生じさせることなく、複数種類のインペラシェルなどに対して、これに固定するリングギヤに関する共用化を図ることのできる車両構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両構造は、インペラシェル又はこのインペラシェルと一体に回転する別部品にリングギヤを溶接固定したものであり、リングギヤを、内周側が歯幅方向に突出する断面L形に形成し、その突出先端部の少なくとも一部をインペラシェル又は別部品に溶接したものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によると、リングギヤを断面L形に形成するので、その突出先端部に設定した溶接位置から歯部までの距離を遠くすることができ、溶接の際に、歯部にスパッタが付着し難くすることができる。さらに、スパッタカバーを用いる場合には、リングギヤのL形の内側角部にスパッタカバーを嵌めるようにして、位置ずれを生じさせることなく歯部を確実に覆うことができ、溶接の際のスパッタが歯部に付着するのを防止することができる。しかも、溶接位置を歯部から離すことができる分、熱影響による歯部の強度低下を防止することができる。
【0013】
また、リングギヤを断面L形に形成して内周側を歯幅方向に突出させる分、この部位に形成するバランス穴の長さを長く設定することができ、バランス穴を小径に設定しつつ、バランス穴の穴数の増加を不要にすることができる。これにより、バランス穴の穴数の増加による生産性の低下を生じさせることなく、バランス穴を小径に設定して底板を薄くすることができ、インペラシェルなどの外周径を大きくする際にもリングギヤを所定の外周径に維持することができる。
【0014】
このように、リングギヤを断面L形に形成することにより、品質や生産性の低下を生じさせることなく、外周径の異なる複数種類のインペラシェルなどに対して、これに固定するリングギヤの外周径を同一にすることができ、リングギヤを共通の歯部形状に設定して、リングギヤに関する加工設備や各種部品の共用化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る車両構造に装備されるドライブプレートを示す図で、(a)は正面図、(b)はA-A断面図、(c)はB部拡大図
図2】リングギヤをスパッタカバーで覆った状態を示す要部断面図
図3】スパッタカバーを省略したリングギヤの要部断面図
図4】従来のリングギヤの要部断面図
図5】従来のリングギヤの底板を薄肉にしてスパッタカバーで覆った状態を示す要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両構造を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
本発明に係る車両構造は、トルクコンバータのインペラシェルと一体に回転するエンジン始動用のドライブプレート1を装備したものである。
【0018】
図1に示すように、ドライブプレート1は、円板状のインペラプレート2の外周部3を背面側に向けてフランジ状に折曲し、このフランジ状の外周部3にリングギヤ4を外嵌して溶接固定した構造とされる。
【0019】
リングギヤ4は、リング状の底板5から径方向外向きに歯部6を突出させると共に、内周側の底板5を歯部6よりも歯幅方向で正面側に突出させた断面L形に形成され、周方向の複数個所において、底板5の正面側の突出先端部の底面付近に設定した溶接位置7でインペラプレート2に溶接されている。ここで、リングギヤ4を断面L形に形成するには、底板5を正面側に延設したり、歯部6を切削したりして形成することができ、特に、切削による場合には、歯部6の幅を縮小しても噛み合いに影響が出ないように、歯部6の幅やL形の大きさを設定しておけばよい。
【0020】
底板5の背面には、例えば4つ程度の複数のバランス穴8が凹設され、このバランス穴8によってバランスを取るようにしている。なお、バランス穴8は、底板5の背面に形成するだけでなく、底板5の正面に、溶接位置7からずらした位置に凹設するようにしてもよい。
【0021】
上記構成によれば、図2に示すように、リングギヤ4を断面L形に形成するので、全体の高さ(h)を小さく設定するよう底板5を薄肉に設定する場合であっても、そのL形の内側角部にスパッタカバー9を嵌めるようにして、歯部6を確実に覆うことができ、溶接の際のスパッタ10が歯部6に付着するのを防止することができる。しかも、底板5の突出先端部に溶接位置7を設定するので、溶接位置7から歯部6までの距離を長くして、熱影響による歯部6の強度低下を防止することができる。
【0022】
また、底板5を歯幅方向に突出させるので、バランス穴8の長さを長く設定することができ、バランス穴8を小径に設定して底板5を薄くしつつ、バランス穴8の穴数を抑えて、生産性を向上させることができる。
【0023】
このように、リングギヤ4を断面L形に形成することにより、スパッタ10の付着やバランス穴8の穴数の増加を生じさせることなく、底板5を薄く設定することができ、リングギヤ4を外周径が共通の歯部形状に維持したまま、必要に応じて、インペラプレート2の外周径を大きくすることができる。
【0024】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、図3に示すように、スパッタカバー9を省略して溶接することもでき、リングギヤ4を断面L形に形成することにより、底板5の突出先端部の溶接位置7から歯部6までの距離が長くなっているので、スパッタカバー9を省略したとしても、歯部6にスパッタ10が付着するのを抑えることができる。また、リングギヤ4は、インペラプレート2に溶接固定して、これをインペラシェルに締結してもよいし、インペラシェルに直接に溶接固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 ドライブプレート
2 インペラプレート
3 外周部
4 リングギヤ
5 底板
6 歯部
7 溶接位置
8 バランス穴
9 スパッタカバー
10 スパッタ
図1
図2
図3
図4
図5