(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037301
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】錠剤処理装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/06 20060101AFI20230308BHJP
B05B 13/02 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B05B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143954
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】591011384
【氏名又は名称】株式会社パウレック
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩根 弘明
【テーマコード(参考)】
4C047
4F035
【Fターム(参考)】
4C047LL10
4F035AA03
4F035CA02
4F035CA06
4F035CB01
4F035CB29
4F035CC04
(57)【要約】
【課題】生産性の向上と省エネルギー化が可能なコーティング処理と艶出し処理のための錠剤処理装置を提供する。
【解決手段】錠剤処理装置1は、コーティング処理部2と艶出し処理部3と移送部4とを備える。コーティング処理部2は、第1回転ドラム5と、第1回転ドラム5を収容する第1ケーシング6とを有し、第1回転ドラム5内の素錠剤に対してコーティング処理を行ってコーティング錠剤を形成する。艶出し処理部3は、第1回転ドラム5より低位置に配置された第2回転ドラム7と、第2回転ドラム7を収容する第2ケーシング8とを有し、第2回転ドラム7内の前記コーティング錠剤に対して艶出し処理を行う。移送部4は、第1回転ドラム5から排出された前記コーティング錠剤を、第2回転ドラム7内に重力の作用で移送する移送通路4aを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素錠剤が投入され、その軸線の回りに回転駆動される第1回転ドラムと、該第1回転ドラムを収容する第1ケーシングとを有し、前記第1回転ドラム内の前記素錠剤に対してコーティング処理を行ってコーティング錠剤を形成するコーティング処理部と、
前記第1回転ドラムより低位置に配置され、前記コーティング錠剤が投入され、その軸線の回りに回転駆動される第2回転ドラムと、該第2回転ドラムを収容する第2ケーシングとを有し、前記第2回転ドラム内の前記コーティング錠剤に対して艶出し処理を行う艶出し処理部と、
前記コーティング処理部の前記第1回転ドラムから排出された前記コーティング錠剤を、前記艶出し処理部の前記第2回転ドラム内に重力の作用で移送する移送通路を有する移送部とを備えることを特徴とする錠剤処理装置。
【請求項2】
前記コーティング処理部が前記第1回転ドラムを回転駆動する第1駆動部を有すると共に、前記艶出し処理部が前記第2回転ドラムを回転駆動する第2駆動部を有する請求項1に記載の錠剤処理装置。
【請求項3】
前記第2ケーシングが前記第1ケーシングの下方に配置された請求項1又は2に記載の錠剤処理装置。
【請求項4】
前記第2ケーシングが前記第1ケーシングの斜め下方に配置され、前記艶出し処理部にワックスを供給するワックス供給部が前記第2ケーシングの上方に配置された請求項1又は2に記載の錠剤処理装置。
【請求項5】
前記第1回転ドラムに前記素錠剤を供給する錠剤供給部が前記第1ケーシングの上方に配置された請求項1~4の何れか1項に記載の錠剤処理装置。
【請求項6】
前記第1回転ドラム内に給気するための第1給気経路と前記第2回転ドラム内に給気するための第2給気経路が相互に独立して設けられ、
前記第1回転ドラム内を排気するための第1排気経路と前記第2回転ドラム内を排気するための第2排気経路が、排気の下流側で共通の排気ダクトに連通するように設けられている請求項1~5の何れか1項に記載の錠剤処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医薬品、食品、農薬等の錠剤を処理する錠剤処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医薬品等の錠剤については、苦みのマスキング等のために、素錠剤に糖衣コーティングやフィルムコーティング等のコーティング処理を行うことがある。そして、このようなコーティング処理で形成されるコーティング錠剤に対して、更に、艶出し処理(ワックスコート処理)を行うことがある(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-159749号公報
【特許文献2】特開昭63-27423号公報
【特許文献3】特開平1-165530号公報
【特許文献4】特開2017-6862号公報
【特許文献5】特開2011-136331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、素錠剤に対してコーティング処理を行った後に艶出し処理を行う場合、一般的に、その軸線の回りに回転駆動される回転ドラムを有するコーティング装置を使用する。このコーティング装置の回転する回転ドラム内の素錠剤に対してコーティング処理を行ってコーティング錠剤を形成した後に、粉末状のワックスや溶剤に溶かしたワックスを回転ドラムに投入し、回転ドラムを回転させることによって回転ドラム内のコーティング錠剤に対して艶出し処理を行う。
【0005】
このように素錠剤に対してコーティング処理を行った後に艶出し処理を行う場合、コーティング処理の後、コーティング錠剤を冷却してから艶出し処理を行うか、あるいは、艶出し処理を行ってからコーティング錠剤を冷却する。
【0006】
しかしながら、従来のコーティング装置では、冷却を行う場合、処理気体の降温時間が必要であり、また、回転ドラムも温まっているのでコーティング錠剤の冷却時間もかかる。更には、次バッチのコーティング処理のための加熱を行う場合、処理気体の昇温時間が必要であり、また、回転ドラムが冷めているので素錠剤の加熱時間もかかる。これらの時間は生産性向上の妨げとなる。また、これらの冷却や加熱に伴うエネルギーは省エネルギー化の妨げとなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、生産性の向上と省エネルギー化が可能なコーティング処理と艶出し処理のための錠剤処理装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る錠剤処理装置は、素錠剤が投入され、その軸線の回りに回転駆動される第1回転ドラムと、該第1回転ドラムを収容する第1ケーシングとを有し、前記第1回転ドラム内の前記素錠剤に対してコーティング処理を行ってコーティング錠剤を形成するコーティング処理部と、前記第1回転ドラムより低位置に配置され、前記コーティング錠剤が投入され、その軸線の回りに回転駆動される第2回転ドラムと、該第2回転ドラムを収容する第2ケーシングとを有し、前記第2回転ドラム内の前記コーティング錠剤に対して艶出し処理を行う艶出し処理部と、前記コーティング処理部の前記第1回転ドラムから排出された前記コーティング錠剤を、前記艶出し処理部の前記第2回転ドラム内に重力の作用で移送する移送通路を有する移送部とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1回転ドラム内でコーティング処理を行い、第2回転ドラム内で艶出し処理を行う。また、コーティング錠剤を第1回転ドラムから第2回転ドラムに移送する。そのため、コーティング錠剤を第2回転ドラムに移送してから冷却を行うことが可能である。これにより、第2回転ドラムに給気する処理気体を冷却専用とすることが可能である。これにより、冷却を行う場合、処理気体の降温時間を不要にすることが可能である。また、艶出し処理の前に冷却する場合には、第2回転ドラムを予め冷却した状態にすることにより、コーティング錠剤の冷却時間を短くすることが可能である。一方、第1回転ドラムに給気する処理気体を加熱専用とすることが可能である。これにより、次バッチのコーティング処理のための加熱を行う場合、処理気体の昇温時間を不要にすることが可能である。また、第1回転ドラムを予め加熱した状態にすることにより、素錠剤の加熱時間を短くすることが可能である。このように、処理気体の昇温・降温時間を不要とし、加熱・冷却時間を短くすることが可能であるので、生産性を向上させることが可能である。また、これにより、従来のコーティング装置に比較して、冷却や加熱に伴うエネルギーを削減することが可能である。すなわち、本発明に係る錠剤処理装置によれば、生産性の向上と省エネルギー化が可能なコーティング処理と艶出し処理のための錠剤処理装置を提供することが可能である。
【0010】
また、移送部の移送通路により、第1回転ドラムから排出されたコーティング錠剤を、第2回転ドラム内に重力の作用で移送するので、コーティング錠剤の移送のための複雑な機構を不要とすることができる。
【0011】
上記の構成において、前記コーティング処理部が前記第1回転ドラムを回転駆動する第1駆動部を有すると共に、前記艶出し処理部が前記第2回転ドラムを回転駆動する第2駆動部を有してもよい。
【0012】
この構成であれば、第1回転ドラムと第2回転ドラムの回転・停止のタイミングや回転速度を異ならせることができ、生産性を向上させることができる。
【0013】
上記の構成において、前記第2ケーシングが前記第1ケーシングの下方に配置されていてもよい。
【0014】
上記の構成において、前記第2ケーシングが前記第1ケーシングの斜め下方に配置され、前記艶出し処理部にワックスを供給するワックス供給部が前記第2ケーシングの上方に配置されていてもよい。
【0015】
この構成であれば、ワックス供給部用に設置スペースを別途用意する必要が無い。
【0016】
上記の構成において、前記第1回転ドラムに前記素錠剤を供給する錠剤供給部が前記第1ケーシングの上方に配置されていてもよい。
【0017】
上記の構成において、前記第1回転ドラム内に給気するための第1給気経路と前記第2回転ドラム内に給気するための第2給気経路が相互に独立して設けられ、前記第1回転ドラム内を排気するための第1排気経路と前記第2回転ドラム内を排気するための第2排気経路が、排気の下流側で共通の排気ダクトに連通するように設けられていてもよい。
【0018】
この構成であれば、第1回転ドラム内と第2回転ドラム内に異なる温度の気体を給気したり、第1回転ドラム内と第2回転ドラム内に異なる速度で給気したりすることができる。また、排気経路全体について省スペース化や製造コスト削減ができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生産性の向上と省エネルギー化が可能なコーティング処理と艶出し処理のための錠剤処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略左側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る錠剤処理装置の概略フロー図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る第1回転ドラムのコーティング処理時の状態を示す概略縦断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る第1回転ドラムの排出時の状態を示す概略縦断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略正面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略左側面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略右側面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る錠剤処理装置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1~
図4は、本発明の第1実施形態に係る錠剤処理装置1を示す概略図である。
図5は、本発明の第1実施形態に係る錠剤処理装置1の概略フロー図である。錠剤処理装置1は、例えば医薬品等の素錠剤に対してコーティング処理と艶出し処理を行う。錠剤処理装置1は、コーティング処理部2と艶出し処理部3と移送部4とを主要な構成要素とする。
【0023】
コーティング処理部2は、第1回転ドラム5と、第1回転ドラム5を収容する第1ケーシング6とを有する。第1回転ドラム5は、素錠剤が投入され、その軸線の回りに回転駆動される。コーティング処理部2は、第1回転ドラム5内の素錠剤に対してコーティング処理を行ってコーティング錠剤を形成する。
【0024】
第1ケーシング6の内部は、第1回転ドラム5と第1隔壁6a及び第2隔壁6bによって3つの空間(第1空間S1a、第2空間S2a、第3空間S3a)に区画されている。
【0025】
艶出し処理部3は、第2回転ドラム7と、第2回転ドラム7を収容する第2ケーシング8とを有する。第2回転ドラム7は、第1回転ドラム5より低位置に配置され、コーティング処理部2で形成されたコーティング錠剤が投入され、その軸線の回りに回転駆動される。艶出し処理部3は、第2回転ドラム7内のコーティング錠剤に対して艶出し処理を行う。
【0026】
第2ケーシング8の内部は、第1ケーシング6の内部と同様に、第2回転ドラム7と第1隔壁8a及び第2隔壁8bによって3つの空間(第1空間S1b、第2空間S2b、第3空間S3b)に区画されている。
【0027】
図1~
図4に示すように、第2ケーシング8は第1ケーシング6の下方に配置されている。第1回転ドラム5に素錠剤を供給する錠剤供給部としての錠剤ホッパ部9aが第1ケーシング6の上方に配置されている。
図5に示すように、錠剤ホッパ部9aの下端から錠剤供給通路9bが供給バルブ9cを介して第1回転ドラム5内まで延びている。
【0028】
また、艶出し処理部3にワックスを供給するワックス供給部としての定量供給機10aが第2ケーシング8の側方に配置されている。定量供給機10aからワックス噴霧器10bにワックスが供給され、ワックス噴霧器10bのワックス噴霧部10cから第2回転ドラム7内のコーティング錠剤にワックスが噴霧される。なお、本実施形態では、定量供給機10aから艶出し処理部3に供給されるワックスは粉状のものである。
【0029】
なお、定量供給機10aの上下方向の位置は任意に設定できる。例えば、定量供給機10aを載置台等の上方に設置することにより、定量供給機10aを第1ケーシング6の側方に配置してもよい。
【0030】
図5に示すように、第1回転ドラム5内に給気するための第1給気経路11aと第2回転ドラム7内に給気するための第2給気経路11bは相互に独立して設けられている。また、第1回転ドラム5内を排気するための第1排気経路12aと第2回転ドラム7内を排気するための第2排気経路12bが、排気の下流側で共通の排気ダクト12cに連通するように設けられている。
【0031】
第1給気経路11aには、給気の上流側に給気ファン11c(給気手段)が設置されている。一方、第2給気経路11bには、給気ファンが設置されていない。排気ダクト12cには、集塵機12d(集塵手段)が設置されており、集塵機12dより排気の下流側に排気ファン12e(排気手段)が設置されている。第1給気経路11aを通る処理気体(空気)は加熱されたものだが、第2給気経路11bを通る処理気体(空気)は加熱されていないものである。
【0032】
第1回転ドラム5と第2回転ドラム7は、特許文献4に記載された回転ドラムと同様の基本構成を有する。以下、
図6及び
図7に基づいて第1回転ドラム5について説明するが、第2回転ドラム7については、第1回転ドラム5と同様の構成なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
図6に示すように、第1回転ドラム5は、水平線に対して傾斜した軸線Aに沿って傾斜上方側に位置する一端部13aと、傾斜下方側に位置する他端部13bと、一端部13aと他端部13bを連続させる周壁部13cとを有している。周壁部13cには給排気用の通気部(多孔部)は設けられておらず、第1回転ドラム5の一端部13aに設けられた開口部13dと、他端部13bに設けられた通気部13eとを介して、第1回転ドラム5に対する給排気が行われる。
【0034】
周壁部13cは、その径が最大となる大径部13fと、大径部13fから一端部13aに向かって縮径する第1縮径部13gと、大径部13fから他端部13bに向かって縮径する第2縮径部13hとで構成される。大径部13fの外周には、環状部材13iが設けられている。大径部13fは、横断面(径方向断面)が例えば9角形等の多角形状をなす。
【0035】
図6及び
図7に示すように、第1回転ドラム5は、分割部13jで一対の分割体(第1分割体13k、第2分割体13l)に分割可能である。分割部13jは、軸線Aに交差する面に沿って形成されている。第1分割体13kと第2分割体13lは、相対移動により、合体状態と分割状態とに切り換え可能である。
【0036】
詳述すれば、分割部13jは、大径部13f及び環状部材13iにおける軸線Aの方向の中央に、軸線Aに垂直な面に沿って形成されている。環状部材13iは、分割部13jで、第1環状部材13i1と第2環状部材13i2に分割可能である。
【0037】
第2環状部材13i2には、周方向等間隔で複数のシリンダ13mが取り付けられている。これらのシリンダ13mのロッド13m1の先端は、第1環状部材13i1に取り付けられている。
【0038】
このシリンダ13mが縮退している場合には、分割部13jは当接しており、第1分割体13kと第2分割体13lは、合体状態である(
図6に示す状態)。このシリンダ13mが伸長すると、第1分割体13kが、軸線Aの方向に沿って直線移動で、第2分割体13lから離反する。この時、分割部13jは離反し、第1分割体13kと第2分割体13lは、分割状態となる(
図7に示す状態)。
【0039】
図5に示すように、第1回転ドラム5の他端部13bには、第2隔壁6bに回転自在に支持された第1駆動軸5aが連結されている。第1駆動軸5aを介して第1回転ドラム5を回転駆動する第1駆動部は、第1ケーシング6の第3空間S3a内に配設されている(不図示)。なお、第1回転ドラム5の第2環状部材13i2は、第1ケーシング6の第1隔壁6aとの間で、ラビリンスシールを形成する。
【0040】
第1ケーシング6には、その上壁部に接続され、第1空間S1aに連通する第1給気経路11aが設けられている。また、第1ケーシング6には、その上壁部を貫通し、第1回転ドラム5の他端部13bの通気部13eを介して、第1回転ドラム5内に連通する第1排気経路12aが設けられている。このように、第1ケーシング6は、処理気体を給排気する対象となる第1空間S1aや第1回転ドラム5を他の空間から区画する機能を有する。
【0041】
また、第1ケーシング6には、第1空間S1aに連通する第1排出シュート6cが第1空間S1aの下方に設けられている。第1排出シュート6cの下端部には、移送部4が設けられている。
【0042】
移送部4は、移送通路4aと、移送通路4aの途中に配置された第1排出バルブ4bとを有する。移送通路4aは、コーティング処理部2の第1回転ドラム5から排出されたコーティング錠剤を、艶出し処理部3の第2回転ドラム7内に重力の作用で移送する。移送通路4aの上端は、第1ケーシング6の第1排出シュート6cに連通し、移送通路4aの下端は、第2回転ドラム7内に連通する。
図1~
図4の図示例では、移送通路4aは、第1排出シュート6cの下端から第1排出バルブ4bまで下方に延び、更に第1排出バルブ4bから第2ケーシング8まで下方に延びている。
【0043】
図5に示すように、第2回転ドラム7の他端部13bには、第2隔壁8bに回転自在に支持された第2駆動軸7aが連結されている。第2駆動軸7aを介して第2回転ドラム7を回転駆動する第2駆動部は、第2ケーシング8の第3空間S3b内に配設されている(不図示)。なお、第2回転ドラム7の第2環状部材13i2は、第2ケーシング8の第1隔壁8aとの間で、ラビリンスシールを形成する。
【0044】
第2ケーシング8には、その上壁部に接続され、第1空間S1bに連通する第2給気経路11bが設けられている。また、第2ケーシング8には、その上壁部を貫通し、第2回転ドラム7の他端部13bの通気部13eを介して、第2回転ドラム7内に連通する第2排気経路12bが設けられている。このように、第2ケーシング8は、処理気体を給排気する対象となる第1空間S1bや第2回転ドラム7を他の空間から区画する機能を有する。
【0045】
また、第2ケーシング8には、第1空間S1bに連通する第2排出シュート8cが第1空間S1bの下方に設けられている。第2排出シュート8cの下端部には、斜め下方に延びる排出通路8dが設けられ、この排出通路8dの下端部には第2排出バルブ8eが設置されている。
【0046】
本実施形態の錠剤処理装置1において、コーティング処理と艶出し処理は次のように行われる。
【0047】
素錠剤のコーティング処理の開始前には、予め、第1回転ドラム5は、
図5及び
図6に示すように、シリンダ13mを縮退させ、第1分割体13kと第2分割体13lを、合体状態にする。この状態で、錠剤ホッパ部9aから錠剤供給通路9b(錠剤供給時は供給バルブ9cは開状態)を介して、第1回転ドラム5内に素錠剤を投入する。
【0048】
そして、素錠剤を収容した第1回転ドラム5を回転させる。また、第1給気経路11aから処理気体を第1ケーシング6内の第1空間S1aに給気する。この処理気体は、一端部13aの開口部13dを介して第1回転ドラム5内に流入し、素錠剤層内を通過した後、他端部13bの通気部13eを介して第1回転ドラム5内から流出する。そして、この処理気体は、第1排気経路12aを介して第1ケーシング6外に排気される。第1給気経路11aから給気される処理気体は加熱されたものなので、これにより、第1回転ドラム5内の素錠剤が加熱される(予熱処理)。
【0049】
次に、この状態のまま、噴霧ノズル14から素錠剤への処理液の噴霧を開始する。これにより、素錠剤への処理液の付着と乾燥が行われ、素錠剤のコーティング処理が行われる。
【0050】
その後、噴霧ノズル14から処理液の噴霧を停止し、吸排気を行った状態で第1回転ドラム5を回転させる。これにより、コーティング処理で形成されたコーティング錠剤の乾燥処理が行われる。
【0051】
コーティング錠剤の艶出し処理の開始前には、予め、第2回転ドラム7は、
図5及び
図6に示すように、シリンダ13mを縮退させ、第1分割体13kと第2分割体13lを、合体状態にする。この状態で、第1回転ドラムから排出されたコーティング錠剤を、移送通路4aを介して第2回転ドラム7に投入する。
【0052】
詳述すると、コーティング錠剤の乾燥処理の後、第1回転ドラム5について、
図7に示すように、シリンダ13mを伸長させ、第1分割体13kと第2分割体13lを、分割状態とする。すると、
図7(軸線Aを含む鉛直面による断面)で、第1回転ドラム5の第1縮径部13gの下側と、第2縮径部13hの下側が、水平線に対して傾斜しているので、第1回転ドラム5内に収容されているコーティング錠剤は、重力の作用により分割部13jの方に移動する。そして、コーティング錠剤は、分割部13jから第1回転ドラム5外へ、重力の作用により排出される。そして、コーティング錠剤は、重力の作用により、第1排出シュート6c内を通過し、移送通路4aに入り、第1排出バルブ4b(コーティング錠剤の排出時には開状態)を経由して第2回転ドラム7内に投入される。
【0053】
そして、コーティング錠剤を収容した第2回転ドラム7を回転させる。また、第2給気経路11bから処理気体を第2ケーシング8内の第1空間S1bに給気する。この処理気体は、一端部13aの開口部13dを介して第2回転ドラム7内に流入し、コーティング錠剤層内を通過した後、他端部13bの通気部13eを介して第2回転ドラム7内から流出する。そして、この処理気体は、第2排気経路12bを介して第2ケーシング8外に排気される。第2給気経路11bから給気される処理気体は加熱されていないものなので、これにより、コーティング錠剤が冷却される(冷却処理)。
【0054】
次に、このままの状態で、ワックス噴霧器10bのワックス噴霧部10cから粉状ワックスをコーティング錠剤に所定時間噴霧した後、ワックス噴霧部10cからの粉状ワックスの噴霧を停止すると共に、第1給気経路11aからの第1ケーシング6内の第1空間S1aへの給気を停止する。すると、第2回転ドラム内でのコーティング錠剤の転動運動により、コーティング錠剤がワックスでコートされ、コーティング錠剤に艶出し処理が行われる。
【0055】
その後、第2回転ドラムを回転させたままの状態で、再び、第1給気経路11aからの第1ケーシング6内の第1空間S1aへの処理気体の給気を行う。これにより、コーティング錠剤に付着しなかった余分な粉状ワックスが取り除かれる(余分な粉状ワックスの除去処理)。詳述すると、この余分な粉状ワックスは、処理気体により、他端部13bの通気部13eを介して第2回転ドラム7内から流出した後、第2排気経路12bを介して共通の排気ダクト12cまで運ばれ、集塵機12dに捕捉される。
【0056】
余分な粉状ワックスの除去処理の後、第2回転ドラム7について、
図7に示すように、シリンダ13mを伸長させ、第1分割体13kと第2分割体13lを、分割状態とする。すると、
図7(軸線Aを含む鉛直面による断面)で、第2回転ドラム7の第1縮径部13gの下側と、第2縮径部13hの下側が、水平線に対して傾斜しているので、第2回転ドラム7内に収容されている(艶出し処理された)コーティング錠剤は、重力の作用により分割部13jの方に移動する。そして、コーティング錠剤は、分割部13jから第1回転ドラム5外へ、重力の作用により排出される。そして、コーティング錠剤は、重力の作用により、第2排出シュート8c内、排出通路8dを通過し、第2排出バルブ8e(コーティング錠剤の排出時には開状態)から第2ケーシング8の外に排出される。そして、製品回収容器15内に回収される。
【0057】
なお、第1回転ドラム5に関して、特許文献5に記載されているように、他端部13bの内壁の中央領域に、ガラス等の透光部材とNIR(近赤外)センサ等の光学センサを設置してもよい。
【0058】
この場合、コーティング処理時に、透光部材の表面と接触する錠剤の物性(被膜厚み、水分、コーティング性能、不純物等)に関する情報を透光部材を介してNIRセンサによりモニターすることが可能になる。そして、その結果に応じて、フィードバック制御又は手動操作でコーティング操作条件(給気風量、給気温度、スプレー条件、第1回転ドラム5の回転数等)を適宜調整することにより、高い品質のコーティング処理を行うことが可能となる。
【0059】
以上のように構成された錠剤処理装置1では、第1回転ドラム5内でコーティング処理を行い、第2回転ドラム7内で艶出し処理を行う。また、コーティング錠剤を第1回転ドラム5から第2回転ドラム7に移送する。そのため、コーティング錠剤を第2回転ドラム7に移送してから冷却を行うことが可能である。これにより、第2回転ドラム7に給気する処理気体を冷却専用とすることが可能である。これにより、冷却を行う場合、処理気体の降温時間を不要にすることが可能である。また、第2回転ドラム7を予め冷却した状態にすることにより、コーティング錠剤の冷却時間を短くすることが可能である。一方、第1回転ドラム5に給気する処理気体を加熱専用とすることが可能である。これにより、次バッチのコーティング処理のための加熱を行う場合、処理気体の昇温時間を不要にすることが可能である。また、第1回転ドラム5を予め加熱した状態にすることにより、素錠剤の加熱時間を短くすることが可能である。このように、処理気体の昇温・降温時間を不要とし、加熱・冷却時間を短くすることが可能であるので、生産性を向上させることが可能である。また、これにより、従来のコーティング装置に比較して、冷却や加熱に伴うエネルギーを削減することが可能である。すなわち、本実施形態に係る錠剤処理装置1によれば、生産性の向上と省エネルギー化が可能なコーティング処理と艶出し処理のための錠剤処理装置を提供することが可能である。
【0060】
また、移送部4の移送通路4aにより、第1回転ドラム5から排出されたコーティング錠剤を、第2回転ドラム7内に重力の作用で移送するので、コーティング錠剤の移送のための複雑な機構を不要とすることができる。
【0061】
次に、
図8~
図12を参照して、本発明の第2実施形態の錠剤処理装置1について説明する。
【0062】
第1実施形態と大きく相違する点は、第2ケーシング8が第1ケーシング6の斜め下方に配置され、ワックス供給部としての定量供給機10aが第2ケーシング8の上方に配置されている点である。この構成により、定量供給機10a用に設置スペースを別途用意する必要が無いという効果が得られる。なお、定量供給機10aの下方には、ワックス噴霧器10bが配置されている。
【0063】
第2実施形態では、第1ケーシング6は、第1ケーシング6のためのハウジング16の上部に配置されている。第2ケーシングは、ハウジング16の下部の側方に配置されている。
【0064】
また、図示例では、移送通路4aは、少し傾斜した第1排出シュート6cの下端から第1排出バルブ4bまで斜め下方に延び、更に第1排出バルブ4bから斜め下方に延びた後、下方に延び第2ケーシング8に到達している。
【0065】
その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、艶出し処理のために粉状ワックスを噴霧していたが、艶出し処理のために溶剤に溶解したワックスを噴霧してもよい。この場合には、艶出し処理の際に、溶剤を蒸発させるために吸排気(通気)を行う場合がある。
【0067】
また、上記実施形態では、第1回転ドラム5と第2回転ドラム7は1個ずつであったが、これに限定されず、例えば、処理能力を向上させるために、第1回転ドラム5を複数個とすると共に第2回転ドラムを1個にしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、第1回転ドラム5と第2回転ドラム7として分割可能な回転ドラムを使用していたが、分割可能でない回転ドラムを使用してもよい。また、上記実施形態では、第1回転ドラム5と第2回転ドラム7として軸線が水平線に対して傾斜したものを使用したが、軸線が水平線に対して平行なものを使用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 錠剤処理装置
2 コーティング処理部
3 艶出し処理部
4 移送部
4a 移送通路
5 第1回転ドラム
6 第1ケーシング
7 第2回転ドラム
8 第2ケーシング
9a 錠剤ホッパ部(錠剤供給部)
10a 定量供給機(ワックス供給部)
11a 第1給気経路
11b 第2給気経路
12a 第1排気経路
12b 第2排気経路
12c 共通の排気ダクト
A 軸線