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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037307
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】貨幣処理装置及び貨幣処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/24 20190101AFI20230308BHJP
   G07D 11/12 20190101ALI20230308BHJP
   G07D 11/00 20190101ALI20230308BHJP
   G07D 11/50 20190101ALI20230308BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/12
G07D11/00
G07D11/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143962
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 楊
(72)【発明者】
【氏名】土井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】田頭 健一
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA06
3E141CA16
3E141FC05
3E141FC07
3E141FG01
3E141FG11
(57)【要約】
【課題】第1収納部の最大収納量に関係なく、かつ、貨幣処理装置の大型化を招くことなく、第1収納部の精査処理を適切に行うことができる貨幣処理装置を提供すること。
【解決手段】貨幣処理装置は、貨幣を収納するとともに、収納された貨幣を排出する第1収納部と、貨幣を搬送する搬送部と、貨幣を識別する識別部と、第1収納部から排出されて搬送部により搬送される前記第1収納部内の貨幣を前記識別部で識別することにより、前記第1収納部内の貨幣の収納量を確定する精査処理を行う制御部と、を備える貨幣処理装置であって、前記制御部は、前記第1収納部に収納されていると見なされる貨幣の量である見なし収納量が所定条件を満たす場合、前記精査処理を行い、前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記貨幣処理装置内の前記第1収納部以外の場所に同時に位置させることが可能な前記貨幣の量以下であることである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を収納するとともに、収納された貨幣を排出する第1収納部と、
貨幣を搬送する搬送部と、
貨幣を識別する識別部と、
前記第1収納部から排出されて前記搬送部により搬送される貨幣を前記識別部で識別することにより、前記第1収納部内の貨幣の収納量を確定する精査処理を行う制御部と、を備える貨幣処理装置であって、
前記制御部は、前記第1収納部に収納されていると見なされる貨幣の量である見なし収納量が所定条件を満たす場合、前記精査処理を行い、
前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記貨幣処理装置内の前記第1収納部以外の場所に同時に位置させることが可能な前記貨幣の量以下であることである、
貨幣処理装置。
【請求項2】
前記搬送部は、
前記貨幣を搬送する搬送路と、
複数の貨幣を一時的に保持し、当該保持された貨幣を1枚ずつ繰り出す繰出部と、を備える、
請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記搬送部において同時に支持可能な貨幣の量以下であることである、
請求項1又は2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記識別部で識別された前記貨幣を前記第1収納部へ戻すように、前記搬送部を制御する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記識別部で識別された前記貨幣を収納する第2収納部を更に備え、
前記制御部は、前記識別部で識別された貨幣が前記第2収納部に収納する対象の貨幣の場合、当該貨幣を前記第2収納部へ搬送するように、前記搬送部を制御する、
請求項1又は2に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記第2収納部は、前記貨幣を金種別に収納する複数の金種別収納部を備え、
前記制御部は、前記識別部で識別された貨幣を、当該貨幣の金種に対応する前記金種別収納部へ搬送するように、前記搬送部を制御する、
請求項5に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記見なし収納量が前記所定条件を満たすか否かの判定時点において前記第2収納部に収納可能な貨幣の量以下であることである、
請求項5又は6に記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記搬送部において同時に支持可能な貨幣の量と、前記見なし収納量が前記所定条件を満たすか否かの判定時点において前記第2収納部に収納可能な貨幣の量との合計量以下であることである、
請求項5又は6に記載の貨幣処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記識別部で識別された貨幣を前記第2収納部に収納できない場合、前記第1収納部へ戻すように、前記搬送部を制御する、
請求項5から8のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1収納部内の全ての前記貨幣が無くなる前に、前記識別部で識別された前記貨幣が前記第1収納部に戻ってきた場合、前記精査処理を完了できなかったと判定する、
請求項4又は9に記載の貨幣処理装置。
【請求項11】
前記見なし収納量が前記所定条件を満たすことを報知する報知部を更に備える、
請求項1から10のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項12】
前記精査処理を開始する旨の指示を入力可能な入力部を更に備え、
前記制御部は、前記入力部から前記指示を受け付けると、前記精査処理を開始する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第1収納部に収納されている前記貨幣の金種に基づいて、前記見なし収納量が前記所定条件を満たすか否かを判定する、
請求項1から12のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項14】
貨幣を収納するとともに、収納された貨幣を排出する第1収納部、及び、貨幣を識別する識別部を備える貨幣処理装置が行う貨幣処理方法であって、
前記貨幣処理装置が、
前記第1収納部に収納されていると見なされる貨幣の量である見なし収納量が所定条件を満たす場合、前記第1収納部から排出された貨幣を前記識別部で識別することにより前記第1収納部内の貨幣の収納量を確定する精査処理を行い、
前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記貨幣処理装置内の前記第1収納部以外の場所に同時に位置させることが可能な前記貨幣の量以下であることである、
貨幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、貨幣処理装置及び貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨の入金処理及び出金処理を行う貨幣処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の貨幣処理装置は、硬貨収納カセットを着脱できるように構成されている。このような貨幣処理装置において、硬貨収納カセットの精査処理を行う場合、硬貨収納カセット内の全ての硬貨を搬送路に放出し、硬貨識別部で識別した後、再び硬貨収納カセットに戻す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-326542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された貨幣処理装置における精査処理では、硬貨収納カセットから放出されて硬貨識別部で識別された硬貨が、再び硬貨収納カセットに戻ってくる前に、硬貨収納カセット内の全ての硬貨を搬送路に放出する必要がある。このため、硬貨収納カセットの最大収納量(容量)を、搬送路で同時に搬送できる硬貨の枚数以下にする必要がある。一方、このような硬貨収納カセットの最大収納量の制限を無くすために、搬送路で同時に搬送できる硬貨の枚数を増やすことが考えられるが、この場合、貨幣処理装置を大きくする必要がある。
【0005】
本開示は、第1収納部の最大収納量に関係なく、かつ、貨幣処理装置の大型化を招くことなく、第1収納部の精査処理を適切に行うことができる貨幣処理装置及び貨幣処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る貨幣処理装置は、貨幣を収納するとともに、収納された貨幣を排出する第1収納部と、貨幣を搬送する搬送部と、貨幣を識別する識別部と、前記第1収納部から排出されて前記搬送部により搬送される貨幣を前記識別部で識別することにより、前記第1収納部内の貨幣の収納量を確定する精査処理を行う制御部と、を備える貨幣処理装置であって、前記制御部は、前記第1収納部に収納されていると見なされる貨幣の量である見なし収納量が所定条件を満たす場合、前記精査処理を行い、前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記貨幣処理装置内の前記第1収納部以外の場所に同時に位置させることが可能な前記貨幣の量以下であることである。
【0007】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記搬送部は、前記貨幣を搬送する搬送路と、複数の貨幣を一時的に保持し、当該保持された貨幣を1枚ずつ繰り出す繰出部と、を備えてもよい。
【0008】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記搬送部において同時に支持可能な貨幣の量以下であることであってもよい。
【0009】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、前記識別部で識別された前記貨幣を前記第1収納部へ戻すように、前記搬送部を制御してもよい。
【0010】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記識別部で識別された前記貨幣を収納する第2収納部を更に備え、前記制御部は、前記識別部で識別された貨幣が前記第2収納部に収納する対象の貨幣の場合、当該貨幣を前記第2収納部へ搬送するように、前記搬送部を制御してもよい。
【0011】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記第2収納部は、前記貨幣を金種別に収納する複数の金種別収納部を備え、前記制御部は、前記識別部で識別された貨幣を、当該貨幣の金種に対応する前記金種別収納部へ搬送するように、前記搬送部を制御してもよい。
【0012】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記見なし収納量が前記所定条件を満たすか否かの判定時点において前記第2収納部に収納可能な貨幣の量以下であることであってもよい。
【0013】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記搬送部において同時に支持可能な貨幣の量と、前記見なし収納量が前記所定条件を満たすか否かの判定時点において前記第2収納部に収納可能な貨幣の量との合計量以下であることであってもよい。
【0014】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、前記識別部で識別された貨幣を前記第2収納部に収納できない場合、前記第1収納部へ戻すように、前記搬送部を制御してもよい。
【0015】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、前記第1収納部内の全ての前記貨幣が無くなる前に、前記識別部で識別された前記貨幣が前記第1収納部に戻ってきた場合、前記精査処理を完了できなかったと判定してもよい。
【0016】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記見なし収納量が前記所定条件を満たすことを報知する報知部を更に備えてもよい。
【0017】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記精査処理を開始する旨の指示を入力可能な入力部を更に備え、前記制御部は、前記入力部から前記指示を受け付けると、前記精査処理を開始してもよい。
【0018】
本開示に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、前記第1収納部に収納されている前記貨幣の金種に基づいて、前記見なし収納量が前記所定条件を満たすか否かを判定してもよい。
【0019】
本開示に係る貨幣処理方法は、貨幣を収納するとともに、収納された貨幣を排出する第1収納部、及び、貨幣を識別する識別部を備える貨幣処理装置が行う貨幣処理方法であって、前記貨幣処理装置が、前記第1収納部に収納されていると見なされる貨幣の量である見なし収納量が所定条件を満たす場合、前記第1収納部から排出された貨幣を前記識別部で識別することにより前記第1収納部内の貨幣の収納量を確定する精査処理を行い、前記所定条件は、前記見なし収納量が、前記貨幣処理装置内の前記第1収納部以外の場所に同時に位置させることが可能な前記貨幣の量以下であることである。
【発明の効果】
【0020】
本開示の貨幣処理装置及び貨幣処理方法によれば、第1収納部の最大収納量に関係なく、かつ、貨幣処理装置の大型化を招くことなく、第1収納部の精査処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る貨幣処理装置のブロック図
図2】第2実施形態に係る貨幣処理装置のブロック図
図3】第3実施形態に係る貨幣処理装置のブロック図
図4】第4実施形態に係る硬貨処理装置の内部構成を示す模式図
図5A】第4実施形態に係る第1精査処理の説明図
図5B】第4実施形態に係る第2精査処理の説明図
図6】第4実施形態に係る精査処理のフローチャート
図7】第4実施形態に係る精査処理のフローチャート
図8】第5実施形態に係る紙幣処理装置の内部構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
<貨幣処理装置の構成>
まず、貨幣処理装置の構成について説明する。図1は、貨幣処理装置のブロック図である。なお、本明細書において、貨幣、硬貨又は紙幣の量とは、貨幣、硬貨又は紙幣に関して大小を比較することができるものであり、例えば、枚数、質量、又は、体積である。単一の貨幣、例えば1ユーロ硬貨のみが貨幣処理装置で取り扱われる場合、額も硬貨の量に含まれ得る。
【0024】
図1に示される貨幣処理装置1は、貨幣に関する処理を行う。貨幣に関する処理は、例えば、店舗における精算処理である。貨幣に関する処理は、精算処理以外の入金や出金を伴う処理であってもよい。貨幣処理装置1が取り扱う貨幣は、硬貨であっても良いし、紙幣であっても良い。貨幣処理装置1は、第1収納部10と、搬送部11と、識別部12と、制御部13と、を備える。
【0025】
第1収納部10は、貨幣を収納する。第1収納部10は、当該第1収納部10に収納された貨幣を排出する機構を有する。第1収納部10としては、精算に用いる貨幣を収納するリサイクル収納部、リサイクル収納部が満杯のために当該リサイクル収納部に収納することができない貨幣を収納するオーバーフロー収納部、リサイクル収納部に貨幣を補充するための補充収納部等を適用することができる。また、第1収納部10としては、オーバーフロー収納部及び補充収納部として機能する収納部を適用しても良い。第1収納部10内の貨幣は、例えば、精算又は店員の手作業による装填等により、増えたり減ったりする。第1収納部10の見なし収納量を示す情報は、貨幣処理装置1の図示されない記憶部に記憶されても良いし、貨幣処理装置1を管理する管理装置に記憶されても良い。第1収納部10の見なし収納量とは、第1収納部10に収納されていると見なされる貨幣の量である。第1収納部10の見なし収納量を示す情報は、識別部12の識別結果に基づいて更新されるようにしても良いし、店員の図示されない入力部に対する入力操作により更新されるようにしても良いし、図示されないセンサの検知結果に基づいて更新されるようにしても良い。
【0026】
搬送部11は、第1収納部10内の貨幣を搬送する。搬送部11は、貨幣と貨幣とを離して、貨幣を1枚ずつ搬送する。
【0027】
識別部12は、搬送部11により搬送される貨幣の金種、真偽、正損等を識別して、貨幣を計数する。
【0028】
制御部13は、第1収納部10内の貨幣を識別部12で識別することにより、第1収納部10内の貨幣の収納量を確定する精査処理を行うように、搬送部11を制御する。制御部13は、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合、第1収納部10に対する精査処理を行う。第1実施形態における所定条件は、第1収納部10の見なし収納量が、精査処理を行う際に、貨幣処理装置1内の第1収納部10以外の場所に同時に位置させることが可能な貨幣の量以下であることである。制御部13は、第1収納部10の見なし収納量及び所定条件を示す情報を、記憶部又は管理装置から取得しても良い。制御部13は、精査処理を行う場合、第1収納部10内の全ての貨幣を1枚ずつ識別部12へ搬送するように、搬送部11を制御する。制御部13は、識別部12での識別結果に基づいて、第1収納部10内の貨幣の収納量を確定する。制御部13は、精査結果を記憶部に記憶させたり、管理装置に送信したりする。
【0029】
<貨幣処理装置の動作>
次に、貨幣処理装置1の動作について説明する。
【0030】
制御部13は、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判定する。この判定処理を行うタイミングとしては、設定時間毎、設定時刻になったとき、店員の指示があったとき、第1収納部10の在高(貨幣の収納量)を確定することができない状況になったとき等を例示することができる。制御部13は、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たすと判断した場合、第1収納部10に対する精査処理を行う。一方、制御部13は、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たさないと判断した場合、第1収納部10に対する精査処理を行わない。なお、制御部13は、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合であっても、店員の入力操作に基づく入力部からの精査処理を開始する旨の指示を受け付けるまで、精査処理を開始しなくても良い。
【0031】
このように、貨幣処理装置1において第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合のみ精査処理を行うため、第1収納部10の最大収納量に関係なく、第1収納部10内に収納されていた全て貨幣を、第1収納部10以外の場所に同時に位置させることができる。したがって、識別部12により識別された貨幣(以下、「識別済み貨幣」と言う場合がある)と、識別部12により識別されていない貨幣(以下、「未識別貨幣」と言う場合がある)とが第1収納部10内で混在することを防止することができる。また、第1収納部10の最大収納量の制限を無くすために、搬送部11で同時に搬送できる貨幣の枚数を増やさなくても、精査処理時に、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在することを防止することができるため、貨幣処理装置1を大きくする必要がない。したがって、貨幣処理装置1は、第1収納部10の最大収納量に関係なく、かつ、貨幣処理装置1の大型化を招くことなく、第1収納部10の精査処理を適切に行うことができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
<貨幣処理装置の構成>
まず、貨幣処理装置の構成について説明する。図2は、貨幣処理装置のブロック図である。なお、第1実施形態の貨幣処理装置1と同様の構成については、同一名称及び同一符号を付し、説明を簡略にする、又は、省略する。
【0034】
図2に示される貨幣処理装置1Aは、第1収納部10と、搬送部11Aと、識別部12と、制御部13Aと、を備える。搬送部11Aは、第1搬送部14Aと、第2搬送部15Aと、を備える。第1搬送部14Aは、第1収納部10内の全ての未識別貨幣を識別部12へ搬送する。第2搬送部15Aは、識別済み貨幣を第1収納部10へ搬送する。第1搬送部14A及び第2搬送部15Aは、貨幣と貨幣とを離して、貨幣を1枚ずつ搬送する。
【0035】
制御部13Aは、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合、第1収納部10に対する精査処理を行う。制御部13Aは、精査処理を行う場合、第1収納部10内の未識別貨幣を1枚ずつ識別部12へ搬送するように、第1搬送部14Aを制御する。制御部13Aは、識別部12での識別結果に基づいて、第1収納部10内の貨幣の収納量を確定する。制御部13Aは、識別済み貨幣を第1収納部10へ戻すように、第2搬送部15Aを制御する。
【0036】
第2実施形態の所定条件は、第1収納部10の見なし収納量が、貨幣の搬送時に搬送部11Aが同時に支持可能な(搬送部11Aに同時に位置させることが可能な)貨幣の量(支持可能量)以下であることである。つまり、所定条件は、第1収納部10の見なし収納量が、第1搬送部14Aにおける未識別貨幣の支持可能量と、第2搬送部15Aにおける識別済み貨幣の支持可能量との合計量以下であることである。第1収納部10の見なし収納量が貨幣の枚数の場合、搬送部11Aの支持可能量は、貨幣の搬送時に搬送部11Aが同時に支持することができる貨幣の枚数であっても良い。第1収納部10の見なし収納量が貨幣の質量の場合、搬送部11Aの支持可能量は、貨幣の搬送時に搬送部11Aが同時に支持することができる貨幣の質量の合計値であっても良い。第1収納部10の見なし収納量が貨幣の体積の場合、搬送部11Aの支持可能量は、貨幣の搬送時に搬送部11Aが同時に支持することができる貨幣の体積の合計値であっても良い。
【0037】
<貨幣処理装置の動作>
次に、貨幣処理装置1Aの動作について説明する。
【0038】
制御部13Aは、例えば、第1実施形態で例示されたタイミングで、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判定する。制御部13Aは、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たすと判定した場合、第1収納部10に対する精査処理を行う。一方、制御部13Aは、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たさない場合、第1収納部10に対する精査処理を行わない。なお、制御部13Aは、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合であっても、店員の入力操作に基づく入力部からの精査処理を開始する旨の指示を受け付けるまで、精査処理を開始しなくても良い。
【0039】
ここで、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合、搬送部11Aは、第1収納部10内に収納されていた全ての貨幣を、識別済み貨幣又は未識別貨幣として、同時に支持(搬送)することができる。したがって、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合に精査処理を行っても、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在しない。一方、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たさない場合、搬送部11Aは、第1収納部10内に収納されていた全ての貨幣を、識別済み貨幣又は未識別貨幣として、同時に支持(搬送)することができない。したがって、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たさない場合に精査処理を行うと、未識別貨幣が第1収納部10に残っている状態で、識別済み貨幣が第1収納部10に戻ってきてしまい、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在してしまう。
【0040】
上述されたように、貨幣処理装置1Aにおいて第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合のみ精査処理を行うため、第1収納部10の最大収納量に関係なく、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在することを防止することができる。また、第1収納部10の最大収納量の制限を無くすために、搬送部11Aで同時に搬送できる貨幣の枚数を増やさなくても、精査処理時に、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在することを防止することができるため、貨幣処理装置1Aを大きくする必要がない。したがって、貨幣処理装置1Aは、第1収納部10の最大収納量に関係なく、かつ、貨幣処理装置1Aの大型化を招くことなく、第1収納部10の精査処理を適切に行うことができる。
【0041】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0042】
<貨幣処理装置の構成>
まず、貨幣処理装置の構成について説明する。図3は、貨幣処理装置のブロック図である。なお、第1,第2実施形態の貨幣処理装置1,1Aと同様の構成については、同一名称及び同一符号を付し、説明を簡略にする、又は、省略する。
【0043】
図3に示される貨幣処理装置1Bは、第1収納部10と、第2収納部16Bと、搬送部11Aと、第2収納部用搬送部17Bと、識別部12と、制御部13Bと、を備える。
【0044】
第2収納部16Bは、貨幣を収納する。第2収納部16Bは、当該第2収納部16Bに収納された貨幣を排出する機構を有する。第2収納部16Bとしては、リサイクル収納部、精算に用いる貨幣を金種別に収納する金種別収納部等を適用することができる。第2収納部16B内の貨幣は、例えば、精算等により、増えたり減ったりする。第2収納部16B内の見なし収納量(第2収納部16B内に収納されていると見なされる貨幣の量)を示す情報は、図示されない記憶部に記憶されても良いし、貨幣処理装置1Bの管理装置に記憶されても良い。第2収納部16Bの見なし収納量を示す情報は、識別部12の識別結果に基づいて更新されるようにしても良いし、店員の図示されない入力部に対する入力操作により更新されるようにしても良いし、図示されないセンサの検知結果に基づいて更新されるようにしても良い。
【0045】
第2収納部用搬送部17Bは、第2搬送部15Aの途中から分岐している。第2収納部用搬送部17Bは、第2収納部用搬送部17Bへ搬送する対象の識別済み貨幣を、第2収納部16Bへ搬送する。
【0046】
制御部13Bは、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合、第1収納部10に対する精査処理を行う。制御部13Bは、精査処理を行う場合、第1収納部10内の未識別貨幣を1枚ずつ識別部12へ搬送するように、第1搬送部14Aを制御する。制御部13Bは、識別部12での識別結果に基づいて、第1収納部10内の貨幣の収納量を確定する。制御部13Bは、識別部12での識別結果に基づいて、識別済み貨幣を第1収納部10又は第2収納部16Bへ搬送するように、第2搬送部15A及び第2収納部用搬送部17Bを制御する。例えば、制御部13Bは、第2収納部16Bが満杯になるまで識別済み貨幣を第2収納部16Bへ搬送し、第2収納部16Bが満杯になった後、識別済み貨幣を第1収納部10へ搬送するように、第2搬送部15A及び第2収納部用搬送部17Bを制御する。
【0047】
第3実施形態の所定条件は、第1収納部10の見なし収納量が、搬送部11Aの支持可能量以下であることであっても良い。所定条件は、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たすか否かの判定時点において、第1収納部10の見なし収納量が、第2収納部16Bに収納することができる貨幣の量(収納可能量)以下であることであっても良い。第2収納部16Bの収納可能量は、第2収納部16Bの最大収納量から第2収納部16Bの見なし収納量を減じることにより算出されても良い。所定条件は、第1収納部10の見なし収納量が、搬送部11Aの支持可能量と第2収納部16Bの収納可能量との合計量以下であることであっても良い。第2実施形態と同様に、第1収納部10の見なし収納量、搬送部11Aの支持可能量及び第2収納部16Bの収納可能量は、貨幣の枚数、質量、又は、質量により表されても良い。
【0048】
<貨幣処理装置の動作>
次に、貨幣処理装置1Bの動作について説明する。以下において、所定条件が、第1収納部10の見なし収納量が、搬送部11Aの支持可能量と第2収納部16Bの収納可能量との合計量以下であることである場合について説明する。なお、所定条件が、第1収納部10の見なし収納量が、搬送部11Aの支持可能量以下であることである場合、又は、第2収納部16Bの収納可能量以下であることである場合も、貨幣処理装置1Bは、以下の説明と同様の処理を行う。
【0049】
制御部13Bは、例えば、第1実施形態で例示されたタイミングで、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判定する。制御部13Bは、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たすと判定した場合、第1収納部10に対する精査処理を行う。一方、制御部13Bは、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たさない場合、第1収納部10に対する精査処理を行わない。なお、制御部13Bは、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合であっても、店員の入力操作に基づく入力部からの精査処理を開始する旨の指示を受け付けるまで、精査処理を開始しなくても良い。
【0050】
ここで、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合、搬送部11Aは、第2収納部16Bへの識別済み貨幣の搬送により第2収納部16Bが満杯になった場合でも、第1収納部10が空の状態で、識別済み貨幣又は未識別貨幣を、同時に支持(搬送)することができる。したがって、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合に精査処理を行っても、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在しない。一方、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たさない場合、搬送部11Aは、第2収納部16Bが満杯になった後、第1収納部10が空の状態で、識別済み貨幣又は未識別貨幣を、同時に支持(搬送)することができない。したがって、第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たさない場合に精査処理を行うと、未識別貨幣が第1収納部10に残っている状態で、識別済み貨幣が第1収納部10に戻ってきてしまい、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在してしまう。
【0051】
上述されたように、貨幣処理装置1Bにおいて第1収納部10の見なし収納量が所定条件を満たす場合のみ精査処理を行うため、第1収納部10の最大収納量に関係なく、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在することを防止することができる。また、第1収納部10の最大収納量の制限を無くすために、搬送部11Aで同時に搬送できる貨幣の枚数を増やさなくても、精査処理時に、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1収納部10内で混在することを防止することができるため、貨幣処理装置1Bを大きくする必要がない。したがって、貨幣処理装置1Bは、第1収納部10の最大収納量に関係なく、かつ、貨幣処理装置1Bの大型化を招くことなく、第1収納部10の精査処理を適切に行うことができる。
【0052】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第4実施形態では、貨幣処理装置の一例である硬貨処理装置について説明する。例えば、硬貨処理装置は、店舗に設置される精算機として使用される。
【0053】
<硬貨処理装置の構成>
まず、硬貨処理装置の構成について説明する。図4は、硬貨処理装置の内部構成を示す模式図である。図5Aは、第1精査処理の説明図である。図5Bは、第2精査処理の説明図である。なお、以下において、前側とは、硬貨処理装置が設置されている店舗の店員又は顧客が対面する側であり、後側とは、前側の逆側である。また、右側とは、店員又は顧客から見て右側であり、左側とは右側の逆側である。上側とは、店員又は顧客から見て上側であり、下側とは上側の逆側である。
【0054】
図4に示される硬貨処理装置2は、貨幣の一例である硬貨の処理を行う。硬貨の処理としては、入金処理、出金処理、精査処理を例示することができる。硬貨処理装置2は、筐体20と、入金部21と、出金部22と、装着部23と、リサイクル収納部24と、搬送部25と、識別部26と、複数のシュート27と、操作表示部28と、制御部29と、を備える。
【0055】
入金部21は、筐体20の上面部における前方に設けられている。入金部21は、硬貨を硬貨処理装置2に入金できるように構成されている。出金部22は、筐体20の前面部における上方に設けられている。出金部22は、硬貨を硬貨処理装置2から出金できるように構成されている。
【0056】
装着部23には、カセット30が着脱自在に装着される。カセット30は、本開示の第1収納部の一例である。装着部23は、カセット30が装着されていないときには、カバーで隠されており、図示されないカバーが開かれると露出する。カセット30は、当該カセット30内に硬貨を収納するための受入口301と、カセット30内の硬貨を排出するための排出口302と、図示されない開閉扉と、図示されないコネクタと、を備える。カセット30は、カセット30内の硬貨を排出口302に搬送するカセット搬送部を更に備えても良い。カセット30は、店員が開閉扉を開けて、カセット30に硬貨を手作業で入れる(手装填する)ことができるように構成されている。店員がカセット30を装着部23に装着すると、カセット30のコネクタと、装着部23の図示されないコネクタと、が接続され、制御部29でカセット30を制御できる状態になる。
【0057】
カセット30には、釣銭準備金をリサイクル収納部24に補充するための硬貨が収納される。カセット30には、リサイクル収納部24の後述される第1,第2金種別収納部241,242が満杯になった場合、第1,第2金種別収納部241,242に入れることができなかった硬貨が、オーバーフロー硬貨として収納される。つまり、カセット30は、補充収納部及びオーバーフロー収納部として機能する。カセット30内の硬貨は、例えば、精算又は釣銭準備金の補充により、増えたり減ったりする。また、カセット30内の硬貨は、店員の手作業による硬貨の装填又は回収により、増えたり減ったりする。また、カセット30内の硬貨は、図示されない装填装置による硬貨の装填や回収により、増えたり減ったりする。カセット30の見なし収納量(カセット30内に収納されていると見なされる硬貨の量)を示す情報は、硬貨処理装置2を管理する管理装置に記憶される。なお、カセット30の見なし収納量を示す情報を、硬貨処理装置2の図示されない記憶部に記憶しても良い。カセット30の見なし収納量を示す情報は、店員の操作表示部28に対する入力操作、カセット30に設けられた図示されないセンサの検知結果、装填装置における硬貨の装填結果又は回収結果に基づいて、更新される。
【0058】
リサイクル収納部24は、本開示の第2収納部の一例である。リサイクル収納部24は、複数(第4実施形態では2個)の金種別収納部241,242(以下、第1金種別収納部241、第2金種別収納部242と言う場合がある)を備える。第1,第2金種別収納部241,242は、硬貨を収納したり、収納した硬貨を繰り出したりできるように構成されている。第1,第2金種別収納部241,242の見なし収納量(第1,第2金種別収納部241,242内に収納されていると見なされる硬貨の量)を示す情報は、管理装置に記憶される。なお、リサイクル収納部24の見なし収納量を示す情報を、硬貨処理装置2の図示されない記憶部に記憶しても良い。第1,第2金種別収納部241,242の見なし収納量を示す情報は、第1,第2金種別収納部241,242に設けられた図示されないセンサの検知結果等に基づいて、更新される。第1,第2金種別収納部241,242にそれぞれ収納される硬貨の金種は、予め設定されている。以下において、第1金種別収納部241に収納される硬貨の金種を「第1金種」、第2金種別収納部242に収納される硬貨の金種を「第2金種」と言う場合がある。
【0059】
搬送部25は、繰出部31と、入金搬送路32と、出金搬送路33と、を備える。
【0060】
繰出部31は、入金部21から入金された硬貨を受け入れて1枚ずつ繰り出したり、出金部22に落下させたりできるように構成されている。繰出部31は、複数の硬貨を一時的に保持するホッパ311と、ホッパ311内の硬貨を1枚ずつ繰り出す図示されない繰出機構と、を備える。繰出機構としては、傾斜した状態で回転する回転円盤を用い、回転円盤表面の外側領域にある複数の突起部材によって硬貨を1枚ずつ拾い上げて繰り出す機構が例示できる。
【0061】
入金搬送路32は、繰出部31から繰り出された硬貨を搬送する。入金搬送路32は、硬貨と硬貨とを離して、硬貨を1枚ずつ搬送する。入金搬送路32は、硬貨を後側へ搬送した後、繰出部31に戻すことができるようなループ状に構成されている。入金搬送路32は、ローラ、ローラに巻かれたベルト、ローラを駆動するモータ、側壁等の組み合わせにより構成されている。
【0062】
出金搬送路33は、繰出部31の下方に設けられている。出金搬送路33は、第1,第2金種別収納部241,242から繰り出された硬貨を繰出部31に搬送する。出金搬送路33は、カセット30から排出されて落下した硬貨を繰出部31に搬送する。
【0063】
識別部26は、入金搬送路32に設けられている。識別部26は、入金搬送路32により搬送される硬貨の金種、真偽、正損等を識別して、硬貨を金種別に計数する。
【0064】
複数のシュート27は、入金搬送路32における識別部26よりも、硬貨の搬送方向下流に設けられている。複数のシュート27は、硬貨の搬送方向に一列に並んで設けられている。複数のシュート27のうち2個のシュート271は、第1,第2金種別収納部241,242にそれぞれ硬貨を案内できるように構成されている。1個のシュート272は、出金部22に硬貨を案内できるように構成されている。残り1個のシュート273は、カセット30に硬貨を案内できるように構成されている。シュート27は、図示しないゲートによって通常閉じられており、当該ゲートを開くことによって、硬貨を上記各部に案内する。
【0065】
操作表示部28は、タッチパネル式の表示装置で構成され、硬貨処理装置2における硬貨処理に関する情報を入力するための操作部、及び、硬貨処理に関する情報を表示する表示部として機能する。なお、操作表示部28は、硬貨処理装置2とは別体で構成されていてもよいし、硬貨処理装置2と一体的に構成されていてもよい。操作表示部28は、操作部と表示部とが独立して設けられる構成であってもよい。
【0066】
制御部29は、硬貨処理装置2全体の動作を制御する。制御部29は、商品の精算時に、顧客が支払う硬貨の入金処理を制御する。入金処理を制御する際、例えば、制御部29は、入金部21から受け入れられてホッパ311に落下した硬貨を1枚ずつ繰り出して搬送するように、繰出部31及び入金搬送路32を制御する。搬送される硬貨は、識別部26によって、金種、真偽、正損等が識別される。制御部29は、入金不可能な硬貨をリジェクト硬貨として出金部22から排出するように、識別部26における識別結果に基づいて、入金搬送路32及びゲートを制御する。制御部29は、入金可能な硬貨を第1,第2金種別収納部241,242に金種別に収納するように、入金搬送路32及びシュート27を制御する。制御部29は、第1,第2金種別収納部241,242が満杯になった場合、オーバーフロー硬貨をカセット30に収納するように、入金搬送路32及びシュート27を制御する。
【0067】
制御部29は、商品の精算時に、硬貨の出金処理を制御する。出金処理を制御する際、例えば、制御部29は、出金対象の硬貨を収納している第1,第2金種別収納部241,242から繰り出されて落下した硬貨を、1枚ずつホッパ311に搬送するように、第1,第2金種別収納部241,242及び出金搬送路33を制御する。制御部29は、ホッパ311の底部312を開くことで、硬貨を出金部22に排出するように、繰出部31を制御する。
【0068】
制御部29は、店舗の営業中に、カセット30に収納された硬貨をリサイクル収納部24に補充する制御を行う。なお、制御部29は、例えば店舗の開店前に、カセット30に収納された硬貨を、釣銭準備金としてリサイクル収納部24に初期補充する制御を行ってもよい。
【0069】
制御部29は、例えば、カセット30の在高を確定することができない状況になった場合、カセット30内の硬貨を識別部26で識別することにより、カセット30の在高を確定する精査処理を行う。カセット30の在高を確定することができない状況としては、硬貨の詰まり(ジャム)が発生した状況、カセット30が装着部23から取り外されて再装着された状況を例示することができる。制御部29は、図5Aに示される第1精査処理、又は、図5Bに示される第2精査処理を行うことができる。
【0070】
第1精査処理は、カセット30の精査処理を行いつつ、一部の識別済み硬貨(識別部26で識別された硬貨)をリサイクル収納部24(第1,第2金種別収納部241,242)に釣銭準備金として収納する処理である。
【0071】
第1精査処理において、制御部29は、受入口301及び排出口302を開いて、図5Aの矢印C1に示されるように、カセット30内の未識別硬貨(識別部26で識別されていない硬貨)を排出口302から落下させるように、カセット30を制御する。制御部29は、矢印C2に示されるように、未識別硬貨を1枚ずつ繰出部31に搬送するように、出金搬送路33を制御する。制御部29は、複数の未識別硬貨をホッパ311で一時的に保持し、矢印C3に示されるように、ホッパ311で保持された未識別硬貨を1枚ずつ入金搬送路32へ繰り出すように、繰出部31を制御する。制御部29は、矢印C4に示されるように、一列に並んだ未識別硬貨を後方へ搬送して識別部26で識別し、識別結果に基づいて、識別済み硬貨をカセット30、第1金種別収納部241又は第2金種別収納部242へ搬送するように、入金搬送路32及びシュート271,273を制御する。このとき、制御部29は、第1,第2金種別収納部241,242への収納対象の識別済み硬貨を、第1,第2金種別収納部241,242が満杯になるまで第1,第2金種別収納部241,242へ搬送するように、入金搬送路32及びシュート271を制御する。制御部29は、第1,第2金種別収納部241,242が満杯になったら、識別済み硬貨をカセット30へ戻すように、入金搬送路32及びシュート273を制御する。そして、制御部29は、識別部26での識別結果に基づいて、カセット30の在高を確定する。このように、第1精査処理では、第1収納部10に対する精査処理と、リサイクル収納部24に対する釣銭準備金の補充処理とが同時に行われる。
【0072】
一方、第2精査処理は、カセット30の精査処理を行い、全ての識別済み硬貨をカセット30に戻し、リサイクル収納部24(第1,第2金種別収納部241,242)に識別済み硬貨を収納しない処理である。
【0073】
第2精査処理において、制御部29は、第1精査処理時と同様に、カセット30内の未識別硬貨が、図5Bの矢印C1,C2,C3に示されるように搬送されるように、カセット30、出金搬送路33及び繰出部31を制御する。制御部29は、矢印C5に示されるように、一列に並んだ未識別硬貨を後方へ搬送して識別部26で識別し、識別済み硬貨をカセット30へ搬送するように、入金搬送路32及びシュート273を制御する。そして、制御部29は、識別部26での識別結果に基づいて、カセット30の在高を確定する。このように、第2精査処理では、第1収納部10に対する精査処理のみが同時に行われる。
【0074】
<硬貨処理装置の動作>
次に、硬貨処理装置2の動作として、カセット30の在高を確定することができない状況が発生した場合の精査処理について説明する。図6及び図7は、精査処理のフローチャートである。
【0075】
図6に示されるように、制御部29は、通常運用に基づく処理を行う(ステップS1)。ステップS1における通常運用に基づく処理としては、商品の精算に伴う入金処理、出金処理、釣銭準備金の補充処理を例示することができる。制御部29は、例えば、カセット30のコネクタと装着部23のコネクタとの接続状態に基づいて、カセット30が装着部23に対して着脱されたか否かを判定する(ステップS2)。
【0076】
制御部29は、カセット30が着脱されていないと判定した場合(ステップS2:NO)、カセット30の在高に影響を及ぼすジャムが発生したか否かを判定する(ステップS3)。具体的に、ステップS3において、制御部29は、入金処理のときにカセット30へ搬送する硬貨のジャム、又は、カセット30から排出された硬貨のジャムが発生したか否かを判定する。制御部29は、カセット30の在高に影響を及ぼすジャムが発生していないと判定した場合(ステップS3:NO)、通常運用に基づく処理を行う(ステップS1)。
【0077】
一方、制御部29は、カセット30が着脱されたと判定した場合(ステップS2:YES)、店員による装填金額の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS4)。この装填金額の入力は、店員が手作業によりカセット30に硬貨を装填した(硬貨を手装填した)際に行われる。店員は、操作表示部28を用いて、装填金額として、硬貨の金種及び枚数を入力する。店員が装填金額を入力した場合、管理装置に記憶されたカセット30の見なし収納量は、店員により入力された装填金額を加算した値に更新される。
【0078】
制御部29は、装填金額の入力を受け付けたと判定した場合(ステップS4:YES)、手装填された硬貨の量と、カセット30が着脱される直前のカセット30の見なし収納量とを加算した硬貨の量を、カセット30の見なし収納量として管理装置から取得する(ステップS5)。
【0079】
一方、制御部29は、カセット30の在高に影響を及ぼすジャムが発生したと判定した場合(ステップS3:YES)、又は、装填金額の入力を受け付けていないと判定した場合(ステップS4:NO)、直前の判定処理(ステップS3又はステップS4)の実施時点におけるカセット30の見なし収納量を、カセット30の見なし収納量として管理装置から取得する(ステップS6)。制御部29は、ステップS5又はステップS6の処理の後、精査フラグを立てる(ステップS7)。
【0080】
制御部29は、ステップS7の処理の後、図7に示されるように、第1精査処理(精査処理時にカセット30の硬貨をリサイクル収納部24(第1,第2金種別収納部241,242)に収納する処理)を行うか否かを判定する(ステップS8)。第1精査処理又は第2精査処理を行う旨の設定は、例えば、硬貨処理装置2の出荷時、店舗への設置時、又は、営業開始時における人による設定操作に基づいて行われても良い。制御部29は、第1精査処理を行うと判定した場合(ステップS8:YES)、カセット30の見なし収納量が第1所定条件を満たすか否かを判定する(ステップS9)。
【0081】
第1所定条件は、カセット30の見なし収納量が、第1精査処理を行う際にカセット30以外の場所に同時に位置させることが可能な硬貨の量以下であることである。
【0082】
例えば、第4実施形態の第1所定条件は、カセット30の見なし収納量が、搬送部25の支持可能量以下であること(条件A)であっても良い。搬送部25の支持可能量は、識別済み硬貨と未識別硬貨とを、カセット30内で混在させることなく、当該搬送部25で同時に支持可能な硬貨の量であっても良い。例えば、搬送部25の支持可能量は、出金搬送路33における図5Aに実線で囲まれかつハッチが付された第1部分路331と、入金搬送路32における図5Aに実線で囲まれかつハッチが付された第2部分路321と、で同時に支持可能な硬貨の量であっても良い(条件A1)。第1部分路331は、カセット30から排出された未識別硬貨の落下位置(搬送開始位置)P1から、繰出部31に至るまでの部位である。第2部分路321は、繰出部31から繰り出された未識別硬貨の搬送開始位置から、カセット30に繋がるシュート273に至るまでの部位である。また、搬送部25の支持可能量は、繰出部31で保持可能な硬貨の量であっても良い(条件A2)。更に、搬送部25の支持可能量は、条件A1の硬貨の量と条件A2の硬貨の量との合計量であっても良い(条件A3)。
【0083】
例えば、第1所定条件は、第1所定条件を満たすか否かの判定時点において、カセット30の見なし収納量が、第1,第2金種別収納部241,242に収納することができる貨幣の量(収納可能量)以下であること(条件B)であっても良い。第1,第2金種別収納部241,242の収納可能量は、第1,第2金種別収納部241,242の最大収納量から第1,第2金種別収納部241,242の見なし収納量を減じることにより算出されても良い。
【0084】
例えば、第1所定条件は、カセット30の見なし収納量が、搬送部25の支持可能量(条件A1~A3のうちいずれか1つの硬貨の量)と第1,第2金種別収納部241,242の収納可能量との合計量以下であること(条件C)であっても良い。
【0085】
なお、第1所定条件として、条件A(条件A1~A3の位置のいずれか1つ),B,Cのうちいずれかを適用する旨の設定は、例えば、硬貨処理装置2の出荷時、店舗への設置時、又は、営業開始時における人による設定操作に基づいて行われても良い。
【0086】
制御部29は、カセット30の見なし収納量が第1所定条件を満たさないと判定した場合(ステップS9:NO)、所定時間経過後に、ステップS9の処理を行う。ここで、一旦、カセット30の見なし収納量が第1所定条件を満たさないと判定された場合であっても、その後に、カセット30の見なし収納量が第1所定条件を満たすようになる場合がある。例えば、釣銭準備金の補充処理により、カセット30の見なし収納量が減ったり、出金処理により、第1,第2金種別収納部241,242の収納可能量が増えたりした場合である。このような状況に対応するために、制御部29は、ステップS9において、カセット30の見なし収納量が第1所定条件を満たさないと判定した場合、所定時間経過後に、再度、ステップS9の処理を行う。
【0087】
一方、制御部29は、カセット30の見なし収納量が第1所定条件を満たすと判定した場合(ステップS9:YES)、第1精査処理を行う(ステップS10)。この後、制御部29は、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる前に、カセット30が空になったか否かを判定する(ステップS11)。
【0088】
第1精査処理は、カセット30の見なし収納量が第1所定条件を満たすと判定された場合にのみ行われる。このため、基本的には、カセット30が空になる前に、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくることはない。例えば、カセット30に収納されている硬貨が1つの金種(例えば、第1金種)の場合、カセット30が空になる前に、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくることはない。
【0089】
しかし、例えば、ステップS6における装填金額の入力ミスがあったために、カセット30の実際の硬貨の収納量が第1所定条件を満たしていなかった場合、つまり、カセット30の見なし収納量が正しくなかった場合、カセット30が空になる前に、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる。
【0090】
また、カセット30の実際の硬貨の収納量が第1所定条件を満たしている場合でも、カセット30から排出される硬貨の順序によっては、カセット30が空になる前に、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる場合もある。例えば、搬送部25の支持可能量が、硬貨の金種に関係なく50枚であり、第1,第2金種別収納部241,242のそれぞれの収納可能量が、50枚ずつであり、カセット30に、第1,第2金種の硬貨がそれぞれ75枚ずつ収納されている場合について考える。この場合、カセット30の見なし収納量は、第1所定条件(例えば、条件A)を満たす。そして、第1精査処理が行われると、例えば、第1金種別収納部241が満杯になった後、第2金種別収納部242が満杯になるまで、残りの第1金種の硬貨が識別部26で識別されない場合、カセット30が空になる前に、カセット30に識別済み硬貨が戻ってこない。しかし、第1金種別収納部241が満杯になった後、第2金種別収納部242が満杯になるまでの間に、残りの第1金種の硬貨が識別部26で識別された場合、カセット30が空になる前に、カセット30に第1金種の硬貨が戻ってきてしまう。
【0091】
カセット30が空になる前にカセット30に識別済み硬貨が戻ってくると、カセット30内で識別済み硬貨と未識別硬貨が混在して、カセット30の在高を確定することができない。そこで、カセット30内で識別済み硬貨と未識別硬貨が混在する状況の場合、第1精査処理を未完了のまま終了するために、制御部29は、ステップS11において、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる前に、カセット30が空になったか否かを判定する。
【0092】
制御部29は、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる前に、カセット30が空になったと判定した場合(ステップS11:YES)、第1精査処理が完了したと判定する(ステップS12)。そして、制御部29は、第1精査処理を終了して、精査結果を管理装置に記憶させる。また、制御部29は、精査フラグを消す(ステップS13)。
【0093】
一方、制御部29は、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる前に、カセット30が空にならなかったと判定した場合(ステップS11:NO)、つまり識別済み硬貨と未識別硬貨とがカセット30内で混在した場合、第1精査処理が未完了であると判定する(ステップS14)。この場合、制御部29は、カセット30の見なし収納量が、第1精査処理開始前の見なし収納量と同じになるように、搬送部25上の硬貨及び第1,第2金種別収納部241,242内の硬貨をカセット30に戻しても良い。そして、制御部29は、例えば、所定時間経過後に、第1精査処理を行うか否かを判定するステップS8の処理を行う。
【0094】
また、制御部29は、第1精査処理を行わないと判定した場合(ステップS8:NO)、つまり第2精算処理を行うと判定した場合、カセット30の見なし収納量が第2所定条件を満たすか否かを判定する(ステップS15)。
【0095】
第2所定条件は、カセット30の見なし収納量が、第2精査処理を行う際にカセット30以外の場所に同時に位置させることが可能な硬貨の量以下であることである。
【0096】
例えば、第4実施形態の第2所定条件は、カセット30の見なし収納量が、搬送部25の支持可能量以下であること(上述された条件A)であっても良い。搬送部25の支持可能量は、それぞれ上述された、条件A1の硬貨の量(第1部分路331と第2部分路321とで同時に支持可能な量)、条件A2の硬貨の量(繰出部31で保持可能な硬貨の量)、条件A3の硬貨の量(条件A1の硬貨の量と条件A2の硬貨の量との合計量)のうち、いずれか1つである。
【0097】
なお、第2所定条件として、条件A1~A3のうちいずれかを適用する旨の設定は、例えば、硬貨処理装置2の出荷時、店舗への設置時、又は、営業開始時における人による設定操作に基づいて行われても良い。
【0098】
制御部29は、カセット30の見なし収納量が第2所定条件を満たさないと判定した場合(ステップS15:NO)、所定時間経過後に、再度、カセット30の見なし収納量が第2所定条件を満たすか否かを判定する(ステップS15)。ここで、一旦、見なし収納量が第2所定条件を満たさないと判定された場合であっても、その後に、見なし収納量が第2所定条件を満たすようになる場合がある。例えば、釣銭準備金の補充処理により、カセット30の見なし収納量が減ったり、出金処理により、第1,第2金種別収納部241,242の収納可能量が増えたりした場合である。このような状況に対応するために、制御部29は、ステップS15において、カセット30の見なし収納量が第2所定条件を満たさないと判定した場合、所定時間経過後に、再度、ステップS15の処理を行う。
【0099】
一方、制御部29は、カセット30の見なし収納量が第2所定条件を満たすと判定した場合(ステップS15:YES)、第2精査処理を行う(ステップS16)。この後、制御部29は、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる前に、カセット30が空になったか否かを判定する(ステップS11)。
【0100】
第2精査処理は、カセット30の見なし収納量が第2所定条件を満たすと判定された場合にのみ行われる。このため、基本的には、カセット30が空になる前に、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくることはない。
【0101】
しかし、例えば、ステップS6における装填金額の入力ミスがあったために、カセット30の実際の硬貨の収納量が第2所定条件を満たしていなかった場合、カセット30が空になる前に、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる。
【0102】
上述されたように、カセット30が空になる前にカセット30に識別済み硬貨が戻ってくると、カセット30の在高を確定することができない。そこで、カセット30内で識別済み硬貨と未識別硬貨が混在する状況の場合、第2精算処理を未完了のまま終了するために、制御部29は、ステップS11において、カセット30に識別済み硬貨が戻ってくる前に、カセット30が空になったか否かを判定する。その後、制御部29は、上述されたステップS12~S16の処理を行う。なお、ステップS14において、第2精査処理が未完了であると判定した場合、制御部29は、カセット30の見なし収納量が、第2精査処理開始前の見なし収納量と同じになるように、搬送部25上の硬貨をカセット30に戻しても良い。
【0103】
上述されたように、硬貨処理装置2は、カセット30の見なし収納量が第1所定条件を満たす場合、第1精査処理を行う。また、硬貨処理装置2は、カセット30の見なし収納量が第2所定条件を満たす場合、第2精査処理を行う。このため、第1,第2精査処理を行う際に、カセット30の最大収納量に関係なく、識別済み貨幣と未識別貨幣とがカセット30内で混在することを防止することができる。また、カセット30の最大収納量の制限を無くすために、搬送部25で同時に搬送できる貨幣の枚数を増やさなくても、第1,第2精査処理時に、識別済み貨幣と未識別貨幣とがカセット30内で混在することを防止することができるため、硬貨処理装置2を大きくする必要がない。したがって、硬貨処理装置2は、カセット30の最大収納量に関係なく、かつ、硬貨処理装置2の大型化を招くことなく、カセット30の第1,第2精査処理を適切に行うことができる。
【0104】
なお、第4実施形態において、例えば第1金種別収納部241の見なし収納量が、所定条件を満たしたときに、第1金種別収納部241の精査処理を行うようにしても良い。この場合、第1金種別収納部241が本開示の第1収納部に該当する。この場合の所定条件は、第1金種別収納部241の見なし収納量が、搬送部25の支持可能量以下であることであっても良い。
【0105】
搬送部25の支持可能量は、出金搬送路33における第3部分路と、入金搬送路32における第4部分路とで同時に支持可能な硬貨の量であっても良い(条件A4)。第3部分路は、第1金種別収納部241から排出された未識別硬貨の落下位置(搬送開始位置)から、繰出部31に至るまでの部位である。第4部分路は、繰出部31から繰り出された未識別硬貨の搬送開始位置から、第1金種別収納部241に繋がるシュート271に至るまでの部位である。また、搬送部25の支持可能量は、繰出部31で保持可能な硬貨の量であっても良い(上述された条件A2)。更に、搬送部25の支持可能量は、条件A4の硬貨の量と条件A2の硬貨の量との合計量であっても良い(条件A5)。この場合も上述のカセット30の精査処理と同様に、精査処理の際に、識別済み貨幣と未識別貨幣とが第1金種別収納部241内で混在することを防止することができる。
【0106】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第5実施形態では、貨幣処理装置の一例である紙幣処理装置について説明する。例えば、紙幣処理装置は、店舗に設置される精算機として使用される。
【0107】
<紙幣処理装置の構成>
まず、紙幣処理装置の構成について説明する。図8は、紙幣処理装置の内部構成を示す模式図である。なお、以下において、前側とは、紙幣処理装置が設置されている店舗の店員又は顧客が対面する側であり、後側とは、前側の逆側である。また、右側とは、店員又は顧客から見て右側であり、左側とは右側の逆側である。上側とは、店員又は顧客から見て上側であり、下側とは上側の逆側である。
【0108】
図8に示される紙幣処理装置4は、貨幣の一例である紙幣の処理を行う。紙幣の処理としては、入金処理、出金処理、精査処理を例示することができる。紙幣処理装置4は、上部の処理部41と、下部の金庫部42と、上側搬送部43と、下側搬送部44と、制御部45と、を備える。処理部41は、上部筐体46を備える。上部筐体46には、入金部47と、出金部48と、リジェクト部49と、一時保留部50と、識別部51と、が配置されている。
【0109】
金庫部42は、金庫筐体52と、装着部53と、リサイクル収納部54と、を含んで構成される。
【0110】
入金部47は、紙幣を紙幣処理装置4に入金できるように構成されている。出金部48は、紙幣を紙幣処理装置4から出金できるように構成されている。リジェクト部49は、入金不可能な紙幣をリジェクト紙幣として排出できるように構成されている。
【0111】
一時保留部50は、例えば入金処理の際に、入金対象の紙幣を一時的に収納する。一時保留部50は、収納した紙幣を繰り出すことができる。一時保留部50は、テープ式の収納ユニットである。一時保留部50は、紙幣を、テープと共にドラムに巻き取ることによって、紙幣を収納する。
【0112】
識別部51は、後述される第1搬送路431に配置されている。識別部51は、第1搬送路431により搬送される紙幣の金種、真偽、正損等を識別して、紙幣を金種別に計数する。
【0113】
装着部53は、例えば、金庫筐体52の内部における前側の部位に設けられている。装着部53には、カセット55が着脱自在に装着される。カセット55は、本開示の第1収納部の一例である。カセット55は、図示されない搬送機構を有する。搬送機構は、カセット55の外から中へ紙幣を投入し、カセット55の中から外へ紙幣を繰り出すことにより、紙幣をリサイクルできるように構成されている。カセット55に収納される紙幣としては、リサイクル収納部54が満杯のために当該リサイクル収納部54に収納することができない紙幣(オーバーフロー紙幣)、リサイクル収納部54に補充される釣銭準備金を例示することができる。カセット55の見なし収納量(カセット55内に収納されていると見なされる紙幣の量)を示す情報は、紙幣処理装置4を管理する管理装置に記憶される。なお、カセット55の見なし収納量を示す情報を、紙幣処理装置4の図示されない記憶部に記憶しても良い。カセット55の見なし収納量を示す情報は、カセット55に設けられた図示されないセンサの検知結果、カセット55に紙幣を装填する装填装置における紙幣の装填結果に基づいて、更新される。
【0114】
リサイクル収納部54は、例えば、金庫筐体52の内部における装着部53よりも後側の部位に設けられている。リサイクル収納部54は、本開示の第2収納部の一例である。リサイクル収納部54は、複数(第5実施形態では2個)の金種別収納部541,542(以下、第1金種別収納部541、第2金種別収納部542と言う場合がある)を備える。第1,第2金種別収納部541,542は、カセット55と同様に、第1,第2金種別収納部541,542に対して紙幣を出し入れする図示されない搬送機構を有する。第1,第2金種別収納部541,542の見なし収納量(第1,第2金種別収納部541,542内に収納されていると見なされる紙幣の量)を示す情報は、管理装置に記憶される。なお、第1,第2金種別収納部541,542の見なし収納量を示す情報を、紙幣処理装置4の図示されない記憶部に記憶しても良い。第1,第2金種別収納部541,542の見なし収納量を示す情報は、第1,第2金種別収納部541,542に設けられた図示されないセンサの検知結果等に基づいて、更新される。第1,第2金種別収納部541,542にそれぞれ収納される紙幣の金種は、予め設定されている。
【0115】
上側搬送部43及び下側搬送部44は、紙幣処理装置4内で、紙幣と紙幣とを離して、紙幣を1枚ずつ搬送する。
【0116】
上側搬送部43は、第1搬送路431と、第2搬送路432と、第3搬送路433と、第4搬送路434と、第5搬送路435と、を有する。
【0117】
第1搬送路431は、ループ状に構成されている。第1搬送路431は、紙幣を、図8における時計回り方向及び反時計回り方向のそれぞれに搬送することができる。第2搬送路432は、入金部47と第1搬送路431とを接続し、入金部47から第1搬送路431へ向かって、紙幣を搬送する。第3搬送路433は、出金部48と第1搬送路431とを接続し、第1搬送路431から出金部48へ向かって、紙幣を搬送する。第4搬送路434は、リジェクト部49と第1搬送路431とを接続し、第1搬送路431からリジェクト部49へ向かって、紙幣を搬送する。第5搬送路435は、一時保留部50と第1搬送路431とを接続し、第1搬送路431から一時保留部50へ向かって、紙幣を搬送すると共に、一時保留部50から第1搬送路431へ向かって、紙幣を搬送する。
【0118】
下側搬送部44は、第6搬送路441と、第7搬送路442と、第8搬送路443と、を有する。
【0119】
第6搬送路441は、装着部53に装着されたカセット55と第1搬送路431とを接続し、第1搬送路431からカセット55へ向かって、紙幣を搬送すると共に、カセット55から第1搬送路431へ向かって、紙幣を搬送する。第7搬送路442は、第1金種別収納部541と第1搬送路431とを接続し、第1搬送路431から第1金種別収納部541へ向かって、紙幣を搬送すると共に、第1金種別収納部541から第1搬送路431へ向かって、紙幣を搬送する。第8搬送路443は、第2金種別収納部542と第7搬送路442とを接続し、第7搬送路442から第2金種別収納部542へ向かって、紙幣を搬送すると共に、第1金種別収納部541から第7搬送路442を介して第1搬送路431へ向かって、紙幣を搬送する。
【0120】
制御部45は、紙幣処理装置4全体の動作を制御する。制御部45は、商品の精算時に、顧客が支払う紙幣の入金処理を制御する。制御部45は、商品の精算時に、硬貨の出金処理を制御する。
【0121】
また、制御部45は、カセット55の見なし収納量が所定条件を満たす場合、カセット55内の紙幣を識別部51で識別することにより、カセット55の在高を確定する精査処理を行う。所定条件は、カセット55の見なし収納量が、精査処理を行う際にカセット55以外の場所に同時に位置させることが可能な硬貨の量以下であることである。第5実施形態の所定条件は、カセット55の見なし収納量が、第1搬送路431で同時に搬送できる紙幣の量(支持可能量)以下であること(条件D)であっても良い。所定条件は、カセット55の見なし収納量が、一時保留部50(第2収納部)に収納することができる紙幣の量(収納可能量)以下であること(条件E)であっても良い。所定条件は、カセット55の見なし収納量が、第1搬送路431の支持可能量と一時保留部50の収納可能量との合計量以下であること(条件F)であっても良い。
【0122】
なお、カセット55の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判断するタイミングとしては、設定時間毎、設定時刻になったとき、店員の指示があったとき、カセット55の在高を確定することができない状況になったとき等を例示することができる。カセット55の在高を確定することができない状況としては、第4実施形態と同様に、カセット55が着脱された状況、入金処理のときにカセット55へ搬送する紙幣のジャム、又は、カセット55から排出された紙幣のジャムが発生した状況を例示することかできる。
【0123】
<紙幣処理装置の動作>
次に、紙幣処理装置4の動作として、カセット55の精査処理について説明する。
【0124】
制御部45は、上述されたタイミングでカセット55の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判定する。制御部45は、カセット55の見なし収納量が所定条件を満たすと判断した場合、例えば、以下のように、上側搬送部43、下側搬送部44、一時保留部50及びカセット55を制御して、カセット55の精査処理を行う。
【0125】
まず、制御部45は、カセット55内の紙幣を排出し、第1搬送路431により図8における反時計回り方向に搬送して、一時保留部50の収納可能量の紙幣を識別済み紙幣として一時保留部50に搬送するとともに、残りの紙幣を第1搬送路431上に位置させるように、上側搬送部43、下側搬送部44、一時保留部50及びカセット55を制御する。ここで、このような制御をカセット55の見なし収納量が所定条件を満たしていない状態で行うと、カセット55を空にした状態で、カセット55に収納されていた全ての紙幣を一時保留部50内又は第1搬送路431上に位置させることができない場合がある。第5実施形態では、上述のような制御をカセット55の見なし収納量が所定条件を満たす場合に行うため、所定条件が上述の条件D,E,Fのいずれの場合でも、カセット55を空にした状態で、カセット55に収納されていた全ての紙幣を一時保留部50内又は第1搬送路431上に位置させることができる。
【0126】
そして、制御部45は、一時保留部50内又は第1搬送路431上に位置する紙幣を、カセット55から排出される前の収納順序となるように、カセット55へ戻す。例えば、第1搬送路431上の紙幣を、図8における時計回り方向に搬送して識別部51で識別した後、識別済み紙幣として、カセット55に収納するように、上側搬送部43、下側搬送部44及びカセット55を制御する。制御部45は、例えば、第1搬送路431上の紙幣を、図8における時計回り方向に搬送して識別部51で識別した後、識別済み紙幣として、カセット55に収納するように、上側搬送部43、下側搬送部44及びカセット55を制御する。第1搬送路431上の全ての紙幣をカセット55に収納したら、制御部45は、一時保留部50内の紙幣を、第1搬送路431により図8における時計回り方向に搬送して識別部51で識別した後、識別済み紙幣として、カセット55に収納するように、一時保留部50、上側搬送部43、下側搬送部44及びカセット55を制御する。そして、制御部45は、精査結果を管理装置に記憶させる。
【0127】
上述されたように、紙幣処理装置4は、カセット55の見なし収納量が所定条件を満たす場合、精査処理を行う。このため、精査処理を行う際に、カセット55の最大収納量に関係なく、カセット55を空にした状態で、カセット55に収納されていた全ての紙幣を一時保留部50内又は第1搬送路431上に位置させることができる。また、カセット55の最大収納量の制限を無くすために、第1搬送路431で同時に搬送できる紙幣の枚数を増やさなくても、カセット55を空にした状態で、カセット55に収納されていた紙幣を一時保留部50内又は第1搬送路431上に位置させることができるため、紙幣処理装置4を大きくする必要がない。したがって、紙幣処理装置4は、カセット55の最大収納量に関係なく、かつ、紙幣処理装置4の大型化を招くことなく、カセット55の精査処理を適切に行うことができる。
【0128】
なお、第5実施形態において、例えば第1金種別収納部541の見なし収納量が、所定条件(条件D~Fのうちいずれか1つ)を満たしたときに、第1金種別収納部541の精査処理を行うようにしても良い。この場合、第1金種別収納部541が本開示の第1収納部に該当する。この場合も上述のカセット55の精査処理と同様に、第1金種別収納部541を空にした状態で、第1金種別収納部541に収納されていた紙幣を、一旦一時保留部50内又は第1搬送路431上に位置させた後、これらの紙幣を識別部51により順次識別すれば良い。
【0129】
[実施形態の変形例]
本開示は、これまでに説明した実施形態に示されたものに限られないことは言うまでも無く、その趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の変形を加えることができる。上記実施形態及び以下に示す変形例を、適用可能な範囲において、どのように組み合わせてもよい。
【0130】
例えば、第4実施形態において、制御部29が、カセット30の見なし収納量が所定条件(第1所定条件又は第2所定条件)を満たすことを報知部で報知しても良い。報知方法としては、文字、記号、色又はこれらの組み合わせにより操作表示部28で表示する方法、図示されないスピーカにより音で報知する方法を例示することができる。また、この場合、制御部29は、操作表示部28による精査処理(第1精査処理又は第2精査処理)を開始する旨の指示を受け付けた場合、精査処理を開始するようにしても良い。このような構成にすれば、店員は、カセット30の見なし収納量が所定条件を満たした後、当該店員が望むタイミングでカセット30の精査処理を行うことができる。なお、第1~第3,第5実施形態においても同様に、第1収納部10、カセット55の見なし収納量が所定条件を満たすことを報知部で報知しても良いし、入力部から指示を受け付けたときに精査処理を開始するようにしても良い。
【0131】
第4実施形態において、制御部29は、カセット30に収納されている硬貨の金種に基づいて、カセット30の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判定しても良い。例えば、制御部29は、カセット30に収納されている硬貨の金種に対応する硬貨のサイズに基づいて、カセット30の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判定しても良い。硬貨のサイズに基づきカセット30の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判定する場合。例えば、搬送部25の支持可能量は、硬貨のサイズが大きくなるほど少なくなる。なお、第1~第3,第5実施形態においても同様に、第1収納部10、カセット55に収納されている貨幣の金種に基づいて、第1収納部10、カセット55の見なし収納量が所定条件を満たすか否かを判定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本開示は、貨幣処理装置及び貨幣処理方法に適用できる。
【符号の説明】
【0133】
1,1A,1B 貨幣処理装置
2 硬貨処理装置
4 紙幣処理装置
10 第1収納部
11,11A,25 搬送部
12,26,51 識別部
13,13A,13B,29,45 制御部
14A 第1搬送部
15A 第2搬送部
16B 第2収納部
17B 第2収納部用搬送部
20 筐体
21,47 入金部
22,48 出金部
23,53 装着部
24 リサイクル収納部
27,271,272,273 シュート
28 操作表示部
30,55 カセット
31 繰出部
32 入金搬送路
33 出金搬送路
41 処理部
42 金庫部
43 上側搬送部
44 下側搬送部
46 上部筐体
49 リジェクト部
50 一時保留部
52 金庫筐体
54 リサイクル収納部
241,541 (第1)金種別収納部
242,542 (第2)金種別収納部
301 受入口
302 排出口
311 ホッパ
312 底部
321 第2部分路
331 第1部分路
431 第1搬送路
432 第2搬送路
433 第3搬送路
434 第4搬送路
435 第5搬送路
441 第6搬送路
442 第7搬送路
443 第8搬送路
P1 落下位置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8