(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037312
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】超音波共振体の締結構造及び超音波加工装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20230308BHJP
B28D 5/02 20060101ALI20230308BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
B28D5/02 A
B26F3/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143970
(22)【出願日】2021-09-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000143455
【氏名又は名称】株式会社高田工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】四元 敬一
(72)【発明者】
【氏名】森 伸廣
(72)【発明者】
【氏名】松山 裕宣
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
5D107
【Fターム(参考)】
3C060AA10
3C060CA03
3C069AA01
3C069BA04
3C069BB01
3C069BC02
3C069CA03
3C069CA05
3C069EA01
3C069EA02
3C069EA03
5D107AA03
5D107AA09
5D107AA14
5D107BB01
5D107CC01
5D107CD03
5D107FF03
5D107FF05
5D107FF08
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で寸法精度が高く、組立及び分解が容易でメンテナンス性、耐久性及び動作の安定性に優れる超音波共振体の締結構造及び超音波共振体を安定的に高速回転させて効率的に加工できる静音性及び省エネルギー性に優れる超音波加工装置を提供する。
【解決手段】超音波ホーン13の軸心を通る貫通孔23の全長にわたって雌螺子部24が形成され、第1、第2のブースター14、15の軸心の超音波ホーン13側にそれぞれ形成された第1、第2の雄螺子部25、26が、雌螺子部24に螺合されて超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15が同軸上に締結され、貫通孔23の内部で第1、第2の雄螺子部25、26の先端27、28同士は接触することなく、貫通孔23の内壁と第1、第2の雄螺子部25、26の先端27、28で囲まれた空間部29を有する超音波ホーン13の基部20の外周に切断刃12が取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に切断刃を備えた超音波ホーンと、該超音波ホーンの軸方向の一側及び他側にそれぞれ連結された第1、第2のブースターとを有し、該第1、第2のブースターのいずれか一方の自由端面に連結される超音波振動子を駆動源として発生する超音波の定在波により、R/L変換体である前記超音波ホーンを該超音波ホーンの軸方向と直交する半径方向に振動させながら、該超音波ホーンの軸心を中心に回転して超音波加工を行う超音波共振体の締結構造であって、
前記超音波ホーンは、基部と、該基部の軸方向の一側及び他側にそれぞれ形成された第1、第2の突部と、前記基部及び前記第1、第2の突部の軸心を通って該超音波ホーンを軸方向に貫通する貫通孔と、該貫通孔の両側の開口端からそれぞれ所定の長さ形成された又は該貫通孔の全長にわたって形成された雌螺子部とを有し、前記第1のブースターは、該第1のブースターの軸心の前記超音波ホーン側に形成されて又は取付けられて前記雌螺子部に螺合される第1の雄螺子部を有し、前記第2のブースターは、該第2のブースターの軸心の前記超音波ホーン側に形成されて又は取付けられて前記雌螺子部に螺合される第2の雄螺子部を有し、前記超音波ホーンと前記第1、第2のブースターはそれぞれの軸心を一致させて同軸上に締結されており、前記貫通孔の内部で前記第1、第2の雄螺子部の先端同士は接触することなく、前記超音波ホーンの軸心に、前記貫通孔の内壁と前記第1、第2の雄螺子部の先端で囲まれた空間部が形成され、前記基部の外周に前記切断刃が取り付けられていることを特徴とする超音波共振体の締結構造。
【請求項2】
請求項1記載の超音波共振体の締結構造において、前記第1の雄螺子部の長さは、前記第1の突部の軸方向長さ以下に形成され、前記第2の雄螺子部の長さは、前記第2の突部の軸方向長さ以下に形成されて、前記空間部は、前記基部を軸方向に貫通し、該基部の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有することを特徴とする超音波共振体の締結構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の超音波共振体の締結構造において、前記超音波ホーンの軸方向の長さは、前記定在波の波長の1/2の長さに等しく、前記各第1、第2のブースターの軸方向の長さは、前記定在波の波長の1/2の長さの自然数倍に等しく、前記定在波の節部が前記基部の軸方向中央部に存在することを特徴とする超音波共振体の締結構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1記載の超音波共振体の締結構造において、前記第1、第2の突部はそれぞれ円柱状に形成され、前記第1の突部の直径及び軸方向の長さは、それぞれ前記第2の突部の直径及び軸方向の長さと等しく、前記貫通孔の直径は、前記第1、第2の突部の直径の1/10~1/2の範囲にあることを特徴とする超音波共振体の締結構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1記載の超音波共振体の締結構造を備えたことを特徴とする超音波加工装置。
【請求項6】
請求項5記載の超音波加工装置において、前記超音波振動子が連結される前記第1、第2のブースターのいずれか一方のみを回転可能に保持する軸受部で前記超音波共振体を片持ち支持することを特徴とする超音波加工装置。
【請求項7】
請求項5記載の超音波加工装置において、前記第1、第2のブースターをそれぞれ回転可能に保持する第1、第2の軸受部で前記超音波共振体を両持ち支持することを特徴とする超音波加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体ウエハー等の硬脆性材料(SiCやアルミナ等)の加工に用いられる超音波加工装置における超音波共振体の締結構造及びその締結構造で締結された超音波共振体を備えた超音波加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円盤状の超音波ホーン(R/L変換体)の軸方向の両側に、それぞれ第1、第2のブースターが同軸に螺子締結された超音波共振体を超音波振動させながら、その締結軸を回転させて切断等の超音波加工を行う超音波加工装置が知られている。そして、この超音波ホーンと、第1、第2のブースターを同軸上(同一軸心上)に締結するための様々な方法(構造)が提案されている。例えば、特許文献1では、超音波ホーンと、支持部を有するブースター(第1、第2のブースター)とが中央のねじで同軸な一列状に結合された共振器において、超音波ホーンとブースターとの双方の合せ面に、ねじを中心とする1つの円周上に位置する環状溝と環状溝に嵌め込まれる突起からなる嵌合手段を備えることが提案されている。また、特許文献2では、切削ブレードの基台部に設けられた基台部貫通孔にボルト部材を挿通して、スピンドルの先端部に形成されたねじ孔に螺合し、切削ブレードとスピンドルの先端部を締結固定する際に、ボルト部材と基台部貫通孔の内壁とを非接触状態に保つことが提案されている。また、特許文献2には、切削ブレードとスピンドルの先端部及びスペーサの軸心を合わせて締結するために使用される取付補助治具についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-035695号公報
【特許文献2】特開2007-015095号公報
【特許文献3】実開昭54-35183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、環状溝と環状溝に嵌め込まれる突起からなる嵌合手段により、超音波ホーンと両側のブースター(第1、第2のブースター)との同軸結合の精度を向上させようとするものであるが、超音波ホーンの両側(各ブースターとの合せ面)にそれぞれねじ孔及び環状溝を加工する際に、超音波ホーンの一側と他側を持ち替えて、各面を別個に加工する必要があり、この持ち替えによって、超音波ホーンの両側のねじ孔及び環状溝にそれぞれ位置ずれ(芯ずれ)が発生し、超音波ホーンと両側のブースターの軸心を正確に一致させることが困難であるという課題があった。
特許文献2では、切削ブレードの基台部に基台部貫通孔が設けられているため、基台部の外周面だけでなく、基台部貫通孔の内壁(内周面)も半径方向に拡縮(振動)する。従って、切削ブレードとスピンドルをボルト部材で締結する際に、切削ブレードとスピンドルを精密に位置決め(芯出し)し、基台部貫通孔に対してボルト部材を偏心させることなく挿通して、ボルト部材の外周面と基台部貫通孔の内壁との間に、全周にわたって均等な隙間を形成し、振動発生時でも、ボルト部材の外周面と基台部貫通孔の内壁が非接触状態を保てる(干渉しない)ようにする必要がある。そこで、専用の取付補助治具による位置決めが行われるが、消耗品である切削ブレードを交換する度に、煩雑な軸心合わせの作業を行わなければならず、著しくメンテナンス性に欠けるという課題があった。
【0005】
また、特許文献2のように、スピンドル(ブースター)を空気軸受で回転可能に支持する片持ち支持構造では、切削ブレード(超音波ホーン)とスピンドルの軸心がずれていると、非支持側で振れ回りが発生し、切削ブレードを高速回転させることができず、加工性能が低下するだけでなく、無理に高速回転させることにより、超音波共振体や軸受が破損するおそれがあった。さらに、切削ブレード(超音波ホーン)をスピンドルの先端部とスペーサで両側から挟み込むようにして貫通ボルトで固定するため、切削ブレードの軸方向に圧縮応力がかかっており、共振状態ではそこに共振により生じる内部応力が加わって、切削ブレードが破損するおそれもあった。
また、超音波ホーンの両側のブースターをそれぞれ空気軸受で回転可能に支持する両持ち支持構造では、超音波ホーンの交換の度に、超音波ホーンと両側のブースターとの軸心のずれに応じて、それぞれの空気軸受と各ブースターとのエアギャップを調整しながら、空気軸受の芯出しを行う必要があり、メンテナンス性に欠けるだけでなく、特に軸心のずれが大きい場合は、それぞれの空気軸受と各ブースターとのエアギャップを調整することができず、超音波ホーン自体を使用できなくなるという課題があった。
以上のことから、超音波ホーンと、第1、第2のブースターを正確かつ簡単に同軸上(同一軸心上)に締結することができる締結構造の実現が要望されていた。
【0006】
ここで、特許文献3に開示された高振幅用ランジュバン型振動子では、前面板に貫設した中央孔に対し、内端側(一端側)から、締付部材となるボルトの雄螺子を螺合するための螺子孔(雌螺子部)を設け、外端側(他端側)から、ホーン等を連結するための螺子孔(雌螺子部)を設けて、一方の螺子孔(雌螺子部)と他方の螺子孔(雌螺子部)との間に、少なくとも5mm以上の雌螺子を設けない部分が存在するようにしている。これにより、前面板の一側に電歪要素及び裏打板をボルトで固定し、前面板の他側にホーン等を螺子止めして取り付けることができる。しかし、この高振幅用ランジュバン型振動子は、電歪要素で発生する振動(変位)を高振幅用ランジュバン型振動子の軸方向に伝達し、他側のホーン等で増幅して出力するための駆動源であり、上述の超音波加工装置で用いられる超音波ホーンのようなR/L変換体とは異なり、軸方向の振動を半径方向の振動に変換して利用するものではない。従って、高振幅用ランジュバン型振動子(前面板)の外周に切断刃(回転刃)を取り付けて使用することはなく、高振幅用ランジュバン型振動子そのものが軸受で回転可能に支持されることもない。そのため、前面板に対し、一側の電歪要素及び裏打板並びに他側のホーン等を精密に同軸上に位置決めする必要性もない。また、ランジュバン型振動子では、円環状の圧電素子で構成された電歪要素に高周波電圧をかけると、電歪要素(圧電素子)が振動し、その厚みが周期的に変化する。これにより、ボルトで締め付けられているランジュバン型振動子に応力変化が起こり、その振動数とランジュバン型振動子の固有振動数が一致した状態、つまり共振した状態で超音波振動が発生する。その結果、ランジュバン型振動子の締結軸方向には、前面板の外端側の面と裏打板の外端側の面の位置を腹部(antinode)とし、電歪要素の位置を節部(node)とする半波長の定在波が存在することとなる。このとき、節部となる電歪要素の振動により、円環状の電歪要素の中央孔の内周面と、電歪要素の中央孔を貫通するボルトが干渉することを防ぐために、電歪要素の中央孔の孔径が、ボルトの外径よりも大きく形成され、電歪要素の中央孔の内周面と、ボルトの外周面との間には隙間が設けられている。このことからも、前面板、電歪要素及び裏打板が、同軸上に位置決めされていないことは明らかである。これに対し、超音波加工装置では、超音波振動子を駆動源として発生する軸方向の振動を、R/L変換体である超音波ホーンで半径方向の振動に変換し、超音波ホーンの外周に取り付けた切断刃を半径方向に振動させながら、超音波共振体を軸心を中心に回転させて超音波加工を行う。そのため、超音波加工装置では、超音波ホーンと、第1、第2のブースターの軸心を精密に位置決めして同軸上に締結するだけでなく、切断刃が効率的に振動するように超音波ホーンの形状及び超音波ホーンに対する切断刃の取付け位置等を適正に設定する必要があるが、切断刃が取り付けられない高振幅用ランジュバン型振動子では、これらについて考慮されていない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡素な構成で、寸法精度が高く、組立及び分解が容易で、メンテナンス性、耐久性及び動作の安定性に優れる超音波共振体の締結構造及び超音波共振体を安定的に高速回転させて効率的に超音波加工を行うことができ、静音性及び省エネルギー性に優れる超音波加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る超音波共振体の締結構造は、外周に切断刃を備えた超音波ホーンと、該超音波ホーンの軸方向の一側及び他側にそれぞれ連結された第1、第2のブースターとを有し、該第1、第2のブースターのいずれか一方の自由端面に連結される超音波振動子を駆動源として発生する超音波の定在波により、R/L変換体である前記超音波ホーンを該超音波ホーンの軸方向と直交する半径方向に振動させながら、該超音波ホーンの軸心を中心に回転して超音波加工を行う超音波共振体の締結構造であって、
前記超音波ホーンは、基部と、該基部の軸方向の一側及び他側にそれぞれ形成された第1、第2の突部と、前記基部及び前記第1、第2の突部の軸心を通って該超音波ホーンを軸方向に貫通する貫通孔と、該貫通孔の両側の開口端からそれぞれ所定の長さ形成された又は該貫通孔の全長にわたって形成された雌螺子部とを有し、前記第1のブースターは、該第1のブースターの軸心の前記超音波ホーン側に形成されて又は取付けられて前記雌螺子部に螺合される第1の雄螺子部を有し、前記第2のブースターは、該第2のブースターの軸心の前記超音波ホーン側に形成されて又は取付けられて前記雌螺子部に螺合される第2の雄螺子部を有し、前記超音波ホーンと前記第1、第2のブースターはそれぞれの軸心を一致させて同軸上に締結されており、前記貫通孔の内部で前記第1、第2の雄螺子部の先端同士は接触することなく、前記超音波ホーンの軸心に、前記貫通孔の内壁と前記第1、第2の雄螺子部の先端で囲まれた空間部が形成され、前記基部の外周に前記切断刃が取り付けられている。
ここで、切断刃(回転刃)は、超音波ホーンの基部に固定された状態で供給されるため、切断刃に摩耗や損傷が発生した場合には、超音波ホーンと第1、第2のブースターとの締結を外し、使用済みの(切断刃に摩耗や損傷が発生した)超音波ホーンを、新しい(切断刃に摩耗や損傷が発生していない)超音波ホーンと交換する。
【0008】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、前記第1の雄螺子部の長さは、前記第1の突部の軸方向長さ以下に形成され、前記第2の雄螺子部の長さは、前記第2の突部の軸方向長さ以下に形成されて、前記空間部は、前記基部を軸方向に貫通し、該基部の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有することが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、前記超音波ホーンの軸方向の長さは、前記定在波の波長の1/2の長さに等しく、前記各第1、第2のブースターの軸方向の長さは、前記定在波の波長の1/2の長さの自然数倍に等しく、定在波の節部が基部の軸方向中央部に存在することが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、前記第1、第2の突部はそれぞれ円柱状に形成され、前記第1の突部の直径及び軸方向の長さは、それぞれ前記第2の突部の直径及び軸方向の長さと等しく、前記貫通孔の直径は、前記第1、第2の突部の直径の1/10~1/2の範囲にあることが好ましい。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る超音波加工装置は、第1の発明に係る超音波共振体の締結構造を備えている。
【0012】
第2の発明に係る超音波加工装置において、前記超音波振動子が連結される前記第1、第2のブースターのいずれか一方のみを回転可能に保持する軸受部で前記超音波共振体を片持ち支持することができる。
ここで、軸受部に気体軸受が好適に用いられる。
【0013】
第2の発明に係る超音波加工装置において、前記第1、第2のブースターをそれぞれ回転可能に保持する第1、第2の軸受部で前記超音波共振体を両持ち支持することもできる。
ここで、第1、第2の軸受部のいずれか一方又は双方に気体軸受が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造は、第1、第2のブースターの軸心に設けられた第1、第2の雄螺子部が螺合される雌螺子部を、超音波ホーンの軸心に設けられた貫通孔に形成することにより、超音波ホーンと第1、第2のブースターの軸心を精密に一致させ、これらを簡単かつ確実に同軸上に締結して、超音波共振体の回転時の振れ回りを防止することができる。そして、貫通孔の内部で第1、第2の雄螺子部の先端同士が接触することなく、超音波ホーンの軸心に、基部を軸方向に貫通する空間部が形成されていることにより、超音波ホーンの基部における半径方向の振幅を増大させ、基部の外周に取り付けられる切断刃で効率的に加工を行うことができ、超音波振動子の発するエネルギーの利用効率を高めると共に、加工時に超音波共振体に発生する振動で第1、第2の雄螺子部が接触、干渉することがなく、異音の発生を防止して、摩耗等による貫通孔及び第1、第2の雄螺子部の破損を効果的に防ぐことができる。
【0015】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、超音波ホーンの軸方向の長さが、定在波の波長の1/2の長さに等しく、各第1、第2のブースターの軸方向の長さが、定在波の波長の1/2の長さの自然数倍に等しく、定在波の節部が基部の軸方向中央部に存在する場合、節部の位置を切断刃の取付け位置に一致させることができ、超音波共振体に発生する超音波振動を有効利用して、切断刃の半径方向の振動を効率的に発生させることができる。
【0016】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、第1、第2の突部はそれぞれ円柱状に形成され、前記第1の突部の直径及び軸方向の長さは、それぞれ前記第2の突部の直径及び軸方向の長さと等しく、貫通孔の直径が、第1、第2の突部の直径の1/10~1/2の範囲にある場合、貫通孔の内壁は十分な耐久性を有し、空間部を形成できると共に、貫通孔に沿って雌螺子部が形成されても、第1、第2の突部の直径(外径)と、雌螺子部の外径(谷の径)との間に十分な肉厚を確保して、第1、第2の突部の破損(割れ)を防止することができる。
【0017】
第2の発明に係る超音波加工装置は、第1の発明に係る超音波共振体の締結構造を備えることにより、超音波振動を有効利用して超音波ホーン(基部)の外周に取り付けられた切断刃で効率的に加工を行うことができ、静音性及び省エネルギー性に優れる。
【0018】
第2の発明に係る超音波加工装置において、超音波振動子が連結される第1、第2のブースターのいずれか一方のみが軸受部で回転可能に保持され、超音波共振体が片持ち支持される場合でも、超音波ホーンと第1、第2のブースターが同軸上に精密に位置決めされて締結されていることにより、非支持側で振れ回りが発生することがなく、超音波共振体を高速回転させることができ、加工性能の低下を防ぐことができる。
【0019】
第2の発明に係る超音波加工装置において、第1又は第2のブースターがそれぞれ第1、第2の軸受部で回転可能に保持され、超音波共振体が両持ち支持される場合でも、超音波ホーンと第1、第2のブースターが貫通孔により同軸上に精密に位置決めされて締結されるので、超音波共振体(第1、第2のブースター)と、第1、第2の軸受部との芯出しを改めて行う必要がなく、組立作業性及びメンテナンス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る超音波共振体の締結構造を備えた超音波加工装置の要部を示す部分断面正面図である。
【
図2】同超音波加工装置の超音波共振体内に発生する定在波の状態を示す説明図である。
【
図3】(A)は同超音波共振体の締結構造の第1の変形例を示す要部断面正面図であり、(B)は同超音波共振体の締結構造の第2の変形例を示す要部断面正面図であり、(C)は同超音波共振体の締結構造の第3の変形例を示す要部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示す本発明の一実施の形態に係る超音波共振体の締結構造10を備えた
図1の超音波加工装置11は、半径方向に超音波振動を行いながら回転する切断刃(加工具の一種)12で、例えば、SiCやアルミナ等の硬脆性材料の加工(切断、切削、研削等)を行うものである。
【0022】
図1、
図2に示すように、超音波共振体の締結構造10では、外周に切断刃12が取付けられた超音波ホーン13の軸方向の一側及び他側に、円柱状の第1、第2のブースター14、15がそれぞれ連結されて超音波共振体16が構成される。この超音波共振体16は、第1のブースター14の自由端面17(ここでは上端面)に連結される超音波振動子(例えば、電歪振動子)18を駆動源として発生する超音波の定在波SW(軸方向の振動)により、R/L変換体である超音波ホーン13を超音波ホーン13の軸方向と直交する半径方向(
図2の矢印aの方向)に振動させながら、超音波ホーン13の軸心を中心に回転して超音波加工を行う。そして、超音波ホーン13は、円盤状の基部20と、基部20の軸方向の一側及び他側にそれぞれ突出し、基部20より小径の円柱状に形成された第1、第2の突部21、22と、基部20及び第1、第2の突部21、22の軸心を通って超音波ホーン13を軸方向に貫通する貫通孔23と、貫通孔23の全長にわたって形成された雌螺子部24とを有している。
【0023】
このとき、第1の突部21の直径及び軸方向の長さは、それぞれ第2の突部22の直径及び軸方向の長さと等しく(第1の突部21と第2の突部22は同一形状であり)、基部20と第1、第2の突部21、22は、軸心が一致しており、同軸上に配置されている。尚、第1、第2の突部21、22の直径は、使用される超音波が超音波ホーン13を伝播するときの波長λの1/4以下であることが好ましいが、これに限定されず、適宜、選択される。また、第1のブースター14は、第1のブースター14の軸心の超音波ホーン13側に形成されて第1の突部21の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第1の雄螺子部25を有し、第2のブースター15は、第2のブースター15の軸心の超音波ホーン13側に形成されて第2の突部22の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第2の雄螺子部26を有している。
【0024】
従って、この超音波共振体の締結構造10では、超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15は、貫通孔23に形成された雌螺子部24に第1、第2の雄螺子部25、26を螺合するだけで、それぞれの軸心を精密に一致させて同軸上に締結され、貫通孔23の内部で第1、第2の雄螺子部25、26の先端27、28同士は接触することなく、超音波ホーン13の軸心に、貫通孔23の内壁と第1、第2の雄螺子部25、26の先端27、28で囲まれた空間部29が形成される。この空間部29は、基部20を軸方向に貫通し、基部20の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有する。そして、基部20の外周に切断刃12が取り付けられる。尚、第1、第2の雄螺子部の長さは、第1、第2の突部の軸方向の長さによっても異なるが、超音波ホーンと第1、第2のブースターを確実に締結して保持(固定)できる範囲で、適宜、選択される。
【0025】
ここで、貫通孔23の直径は、第1、第2の突部21、22の直径の1/10~1/2の範囲にあることが好ましい。貫通孔23の直径が第1、第2の突部21、22の直径の1/10以上であることにより、貫通孔23に形成される雌螺子部24に対して第1、第2の雄螺子部25、26を螺着し、超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15を強固に固定すると共に、基部20に十分な空間部29を形成して、超音波ホーン13における振動効率を高めることができる。また、貫通孔23の直径が第1、第2の突部21、22の直径の1/2以下であることにより、貫通孔23の内壁(周壁)は十分な耐久性を有し、空間部29を形成することができる。そして、貫通孔23に沿って雌螺子部24が形成されても、第1、第2の突部21、22の直径(外径)と、雌螺子部24の外径(谷の径)との間に十分な肉厚を確保して、第1、第2の突部21、22の破損(割れ)を防止することができる。
【0026】
また、
図2に示すように、超音波ホーン13の軸方向の長さは、超音波共振体16に発生する定在波SWの波長Tの1/2の長さ(T/2)に等しく、各第1、第2のブースター14、15の軸方向の長さは、定在波の波長Tの1/2の長さ(T/2)に等しくなっている。ここで、超音波ホーン13及び第1、第2のブースター14、15は、超音波の伝搬性を同一にするために、同一材質で作製してもよいし、異なる材質で作製してもよく、その組合せは適宜、選択することができる。尚、超音波ホーンにおける基部の軸方向の長さと、第1、第2の突部のそれぞれの軸方向の長さとの比は、適宜、選択される。
【0027】
超音波加工装置11は、
図1に示すように、ホルダー30に対して第1、第2のブースター14、15をそれぞれ回転可能に保持する第1、第2の軸受部31、32を有し、超音波共振体16を両持ち支持している。ここで、第1、第2の軸受部31、32は空気(気体)軸受であり、第1のブースター14の外周にはスラスト空気軸受として鍔状の支持部33が形成されているが、第1、第2の軸受部(空気軸受)31、32の構造は、適宜、選択される。また、支持部33は、第1のブースター14と一体に形成されることが好ましいが、別部材で形成したものを取付けてもよい。
【0028】
第1、第2の雄螺子部25、26が螺合される雌螺子部24が、1つの貫通孔23に沿って形成されているので、雌螺子部24に第1、第2の雄螺子部25、26を螺合した際に、第1、第2の雄螺子部25、26の軸心が、超音波ホーン13(貫通孔23)の軸方向の一側と他側でずれることがなく、超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15を精度良く同軸上に締結することができる。その結果、超音波共振体16(第1、第2のブースター14、15)を第1、第2の軸受部31、32で支持(保持)する際の芯出し作業は必要ない。つまり、消耗品である超音波ホーン13を交換する度に、手間のかかる芯出し作業(位置調整)を行う必要がないため、メンテナンス性が向上する。
【0029】
超音波加工装置11では、
図1に示すように、超音波振動子18の一側(ここでは、上端側)に、その軸心が、超音波共振体16の軸心と一致するように回転軸36が連結されている。そして、回転軸36の軸方向(長手方向)の中間位置にはスリップリング37が設けられ、このスリップリング37を介して高周波発振器38からの駆動用信号が超音波共振体16に入力される構成となっている。高周波発振器38からスリップリング37を介して入力される駆動用信号は、回転軸36の内部を貫通する信号線(図示せず)により超音波共振体16に伝達される。
【0030】
回転軸36の一側には、超音波振動子18と共に超音波共振体16(第1のブースター14、超音波ホーン13及び第2のブースター15の連結構造体)を回転させる回転駆動源39(例えば、電動機)の出力軸40が、非接触継手の一例である非接触式磁気継手41を介して連結されている。この非接触式磁気継手41は、回転駆動源39の出力軸40の他端部に取付けられる駆動側磁力部42と、回転軸36の一端部に取付けられて駆動側磁力部42と対向する従動側磁力部43とを備えている。非接触式磁気継手41(駆動側磁力部42と従動側磁力部43)の構造は、従来公知のものが好適に用いられ、互いに逆極性の磁極面同士が対向するように配置される駆動側磁力部42の永久磁石(図示せず)と従動側磁力部43の永久磁石(図示せず)との間に発生する引力により、駆動側磁力部42と従動側磁力部43が非接触で連結されるものである。これにより、回転駆動源39からの回転動力が、出力軸40から非接触式磁気継手41を介して回転軸36に伝達され、超音波振動子18と共に超音波共振体16を回転させることができる。このように、回転軸36と、回転駆動源39の出力軸40との間が非接触式磁気継手41を介して連結されているので、出力軸40の軸心に対して、超音波共振体16(回転軸36)の軸心の位置がずれたり、軸心が傾いたりしても、互いに干渉することなくスムーズな回転状態を維持することができる。
【0031】
以上のように構成された超音波加工装置11で加工(切断、切削、研削等)を行う際には、回転駆動源39で超音波共振体16を回転させることにより、超音波ホーン13(基部20の外周)に取付けられた切断刃12を回転させる。同時に、超音波振動子18の発する振動により、
図2に示すように、超音波共振体16内に超音波振動の定在波(定常波)SW(軸方向の振動)を発生させて、切断刃12を超音波ホーン(R/L変換体)13により半径方向(矢印aの方向)に超音波振動させる。ここで、先に説明したように、超音波ホーン13の軸方向の長さが、超音波共振体16に発生する定在波SWの波長Tの1/2の長さ(T/2)に等しく、各第1、第2のブースター14、15の軸方向の長さが、超音波共振体16に発生する定在波SWの波長Tの1/2の長さ(T/2)に等しいことにより、超音波共振体16をコンパクト化(最短化)できると共に、超音波共振体16内での定在波SWの減衰を少なくして、定在波SWを効率的に形成することができる。
【0032】
このとき、第1のブースター14の一側(超音波ホーン13と反対側)の自由端面17、超音波ホーン13の両端面(超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15との接続端面)及び第2のブースター15の他側(超音波ホーン13と反対側)の自由端面46の位置は、定在波SWの腹部(アンチノード、Antinode、AN)となり、第1のブースター14、超音波ホーン13及び第2のブースター15の軸方向(長手方向)のそれぞれの中央部の位置は、定在波SWの節部(ノード、Node)となる。よって、超音波ホーン13の基部20の軸方向中央部及び支持部33の位置をそれぞれ定在波SWの節部の位置に対応させることにより、超音波振動を有効利用して、R/L変換体である超音波ホーン13の基部20を超音波ホーン13の軸方向と直交する半径方向(矢印aの方向)に振動させることができる。そして、基部20の軸方向中央部(定在波SWの節部の位置)に合わせて、基部20の外周に切断刃12を取付けることにより、切断刃12を基部20と共に半径方向に振動させることができる。このとき、円盤状の基部20の外周面の幅方向中央部に、外周面に沿って設けた環状突起部(図示せず)に切断刃12を取付けることもできる。
【0033】
特に、超音波ホーン13の軸心に、基部20を軸方向に貫通する空間部29が形成されていることにより、基部20の外周が半径方向外側に振動するだけでなく、空間部29の内壁47が半径方向内側(空間部29の内側)に振動し、振動の自由度が増し、超音波ホーン13(基部20)の半径方向に大きな振幅が得られ、基部20の外周に取り付けられる切断刃12を半径方向(矢印aの方向)に振動させて効率的に加工を行うことができ、超音波振動子18の発するエネルギーの利用効率を高めることができる。また、加工時に超音波共振体16(基部20)に発生する振動で、空間部29の内壁47が半径方向内側(空間部29の内側)に振動しても、空間部29では内壁47と第1、第2の雄螺子部25、26が接触、干渉することがないので、異音の発生を防止できるだけでなく、摩耗等による貫通孔23及び第1、第2の雄螺子部25、26の破損を効果的に防ぐことができ、超音波共振体16の長寿命化を図ることができる。そして、空間部29が基部20の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有して基部20を軸方向に貫通しているので、超音波ホーン13の各部の寸法誤差等の影響で定在波SWの節部の位置が基部20の軸方向(
図2の左右方向)にずれても、定在波SWの節部の位置は空間部29と重なることになり、基部20の振動によって内壁47と第1、第2の雄螺子部25、26が接触、干渉することはなく、超音波ホーン13に発生する振動エネルギーを有効に利用することができる。
【0034】
尚、第1、第2のブースターの軸方向長さが、超音波共振体に発生する定在波の波長Tの1/2の長さ(T/2)の自然数倍に等しければ、第1のブースターの一側の自由端面及び第2のブースターの他側の自由端面の位置は定在波の腹部となり、前述と同様の作用、効果が得られる。従って、使用する超音波の振動数に基づいて、超音波ホーン及び第1、第2のブースターのそれぞれの軸方向長さを上記の関係を満たす範囲で調節(選択)することにより、定在波を容易に発生させることができる。
【0035】
次に、超音波共振体の締結構造の変形例について説明する。
図3(A)に示す第1の変形例の超音波共振体の締結構造48が超音波共振体の締結構造10と異なる点は、第1のブースター49が、第1のブースター49の軸心の超音波ホーン13側に連結用雌螺子部50を介して取付けられて第1の突部21の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第1の雄螺子部(無頭螺子)51を有する点である。
図3(B)に示す第2の変形例の超音波共振体の締結構造52が超音波共振体の締結構造10と異なる点は、第2のブースター53が、第2のブースター53の軸心の超音波ホーン13側に連結用雌螺子部54を介して取付けられて第2の突部22の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第2の雄螺子部(無頭螺子)55を有する点である。
図3(C)に示す第3の変形例の超音波共振体の締結構造56が超音波共振体の締結構造10と異なる点は、第1のブースター49が、第1のブースター49の軸心の超音波ホーン13側に連結用雌螺子部50を介して取付けられて第1の突部21の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第1の雄螺子部(無頭螺子)51を有し、第2のブースター53が、第2のブースター53の軸心の超音波ホーン13側に連結用雌螺子部54を介して取付けられて第2の突部22の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第2の雄螺子部(無頭螺子)55を有する点である。いずれの変形例も、超音波共振体の締結構造10と同様の作用、効果を得ることができる。
【0036】
尚、本実施の形態及びその変形例では、貫通孔23の全長にわたって雌螺子部24を形成したが、第1、第2の雄螺子部の長さに合わせて、貫通孔の両側(長手方向の一側及び他側)の各開口端からそれぞれ所定の長さだけ雌螺子部が形成されていれば、超音波ホーンの軸方向の一側及び他側に第1、第2のブースターを締結して、基部を軸方向に貫通する空間部を形成することができ、超音波共振体の締結構造10と同様の作用、効果を得ることができる。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、上記実施の形態では、第1、第2の軸受部に空気(気体)軸受を用いたが、超音波共振体を両持ち支持する場合、第1、第2の軸受部は、第1、第2のブースターをそれぞれ回転可能に保持できればよく、第1の軸受部に機械軸受(例えば玉軸受等の転がり軸受)を用い、第2の軸受部に空気(気体)軸受を用いてもよいし、第1、第2の軸受部に機械軸受(例えば玉軸受等の転がり軸受)を用いてもよい。尚、第1及び/又は第2の軸受部に機械軸受を用いる場合は、第1及び/又は第2のブースター内の定在波の節部(ノード)の位置に設けた支持部を、第1及び/又は第2のブースターを同心状に内部に固定し、超音波共振体と共に回転する円筒状の内殻に固定し、その内殻を機械軸受で回転可能に支持することが望ましい。
【0038】
上記実施の形態では、第1のブースターに超音波振動子を取付けたが、第2のブースターに超音波振動子を取付けてもよい。また、上記実施の形態のように、第1、第2のブースターをそれぞれ回転可能に保持する第1、第2の軸受部で超音波共振体を両持ち支持する構成の代わりに、超音波振動子が連結される第1、第2のブースターのいずれか一方のみを回転可能に保持する軸受部で超音波共振体を片持ち支持する構成としてもよい。そして、超音波振動子には回転駆動源が接続される。このときの軸受部には、空気(気体)軸受を用いてもよいし、機械軸受(例えば玉軸受等の転がり軸受)を用いてもよい
さらに、上記実施の形態では、非接触継手の一例である非接触式磁気継手を介して回転軸に回転駆動源を間接的に連結したが、回転駆動源は、超音波共振体を回転させることができればよく、回転軸に回転駆動源を直接、連結してもよいし、回転軸にフレキシブル継手を介して回転駆動源を連結することもできる。
尚、上記実施の形態では、超音波振動子が連結されていない第2のブースター側が鉛直下向きとなるように、超音波共振体の軸心を鉛直方向に向けて配置したが、第2のブースター側が斜め下向きとなるように、超音波共振体の軸心を傾斜させて配置してもよいし、超音波共振体の軸心を水平方向に向けて配置してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:超音波共振体の締結構造、11:超音波加工装置、12:切断刃、13:超音波ホーン、14:第1のブースター、15:第2のブースター、16:超音波共振体、17:自由端面、18:超音波振動子、20:基部、21:第1の突部、22:第2の突部、23:貫通孔、24:雌螺子部、25:第1の雄螺子部、26:第2の雄螺子部、27、28:先端、29:空間部、30:ホルダー、31:第1の軸受部、32:第2の軸受部、33:支持部、36:回転軸、37:スリップリング、38:高周波発振器、39:回転駆動源、40:出力軸、41:非接触式磁気継手、42:駆動側磁力部、43:従動側磁力部、46:自由端面、47:内壁、48:超音波共振体の締結構造、49:第1のブースター、50:連結用雌螺子部、51:第1の雄螺子部(無頭螺子)、52:超音波共振体の締結構造、53:第2のブースター、54:連結用雌螺子部、55:第2の雄螺子部(無頭螺子)、56:超音波共振体の締結構造
【手続補正書】
【提出日】2022-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に切断刃を備えた超音波ホーンと、該超音波ホーンの軸方向の一側及び他側にそれぞれ連結された第1、第2のブースターとを有し、該第1、第2のブースターのいずれか一方の自由端面に連結される超音波振動子を駆動源として発生する超音波の定在波により、R/L変換体である前記超音波ホーンを該超音波ホーンの軸方向と直交する半径方向に振動させながら、該超音波ホーンの軸心を中心に回転して超音波加工を行う超音波共振体の締結構造であって、
前記超音波ホーンは、基部と、該基部の軸方向の一側及び他側にそれぞれ形成された第1、第2の突部と、前記基部及び前記第1、第2の突部の軸心を通って該超音波ホーンを軸方向に貫通する貫通孔と、該貫通孔の両側の開口端からそれぞれ所定の長さ形成された又は該貫通孔の全長にわたって形成された雌螺子部とを有し、前記第1のブースターは、該第1のブースターの軸心の前記超音波ホーン側に形成されて又は取付けられて前記雌螺子部に螺合される第1の雄螺子部を有し、前記第2のブースターは、該第2のブースターの軸心の前記超音波ホーン側に形成されて又は取付けられて前記雌螺子部に螺合される第2の雄螺子部を有し、前記超音波ホーンと前記第1、第2のブースターはそれぞれの軸心を一致させて同軸上に締結されており、前記貫通孔の内部で前記第1、第2の雄螺子部の先端同士は接触することなく、前記超音波ホーンの軸心に、前記貫通孔の内壁と前記第1、第2の雄螺子部の先端で囲まれた空間部が形成され、前記定在波の節部の位置は前記基部の軸方向中央部で前記空間部と重なり、前記基部の外周に前記切断刃が取り付けられていることを特徴とする超音波共振体の締結構造。
【請求項2】
請求項1記載の超音波共振体の締結構造において、前記第1の雄螺子部の長さは、前記第1の突部の軸方向長さ以下に形成され、前記第2の雄螺子部の長さは、前記第2の突部の軸方向長さ以下に形成されて、前記空間部は、前記基部を軸方向に貫通し、該基部の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有することを特徴とする超音波共振体の締結構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の超音波共振体の締結構造において、前記超音波ホーンの軸方向の長さは、前記定在波の波長の1/2の長さに等しく、前記各第1、第2のブースターの軸方向の長さは、前記定在波の波長の1/2の長さの自然数倍に等しいことを特徴とする超音波共振体の締結構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1記載の超音波共振体の締結構造において、前記第1、第2の突部はそれぞれ円柱状に形成され、前記第1の突部の直径及び軸方向の長さは、それぞれ前記第2の突部の直径及び軸方向の長さと等しく、前記貫通孔の直径は、前記第1、第2の突部の直径の1/10~1/2の範囲にあることを特徴とする超音波共振体の締結構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1記載の超音波共振体の締結構造を備えたことを特徴とする超音波加工装置。
【請求項6】
請求項5記載の超音波加工装置において、前記超音波振動子が連結される前記第1、第2のブースターのいずれか一方のみを回転可能に保持する軸受部で前記超音波共振体を片持ち支持することを特徴とする超音波加工装置。
【請求項7】
請求項5記載の超音波加工装置において、前記第1、第2のブースターをそれぞれ回転可能に保持する第1、第2の軸受部で前記超音波共振体を両持ち支持することを特徴とする超音波加工装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体ウエハー等の硬脆性材料(SiCやアルミナ等)の加工に用いられる超音波加工装置における超音波共振体の締結構造及びその締結構造で締結された超音波共振体を備えた超音波加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円盤状の超音波ホーン(R/L変換体)の軸方向の両側に、それぞれ第1、第2のブースターが同軸に螺子締結された超音波共振体を超音波振動させながら、その締結軸を回転させて切断等の超音波加工を行う超音波加工装置が知られている。そして、この超音波ホーンと、第1、第2のブースターを同軸上(同一軸心上)に締結するための様々な方法(構造)が提案されている。例えば、特許文献1では、超音波ホーンと、支持部を有するブースター(第1、第2のブースター)とが中央のねじで同軸な一列状に結合された共振器において、超音波ホーンとブースターとの双方の合せ面に、ねじを中心とする1つの円周上に位置する環状溝と環状溝に嵌め込まれる突起からなる嵌合手段を備えることが提案されている。また、特許文献2では、切削ブレードの基台部に設けられた基台部貫通孔にボルト部材を挿通して、スピンドルの先端部に形成されたねじ孔に螺合し、切削ブレードとスピンドルの先端部を締結固定する際に、ボルト部材と基台部貫通孔の内壁とを非接触状態に保つことが提案されている。また、特許文献2には、切削ブレードとスピンドルの先端部及びスペーサの軸心を合わせて締結するために使用される取付補助治具についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-035695号公報
【特許文献2】特開2007-015095号公報
【特許文献3】実開昭54-35183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、環状溝と環状溝に嵌め込まれる突起からなる嵌合手段により、超音波ホーンと両側のブースター(第1、第2のブースター)との同軸結合の精度を向上させようとするものであるが、超音波ホーンの両側(各ブースターとの合せ面)にそれぞれねじ孔及び環状溝を加工する際に、超音波ホーンの一側と他側を持ち替えて、各面を別個に加工する必要があり、この持ち替えによって、超音波ホーンの両側のねじ孔及び環状溝にそれぞれ位置ずれ(芯ずれ)が発生し、超音波ホーンと両側のブースターの軸心を正確に一致させることが困難であるという課題があった。
特許文献2では、切削ブレードの基台部に基台部貫通孔が設けられているため、基台部の外周面だけでなく、基台部貫通孔の内壁(内周面)も半径方向に拡縮(振動)する。従って、切削ブレードとスピンドルをボルト部材で締結する際に、切削ブレードとスピンドルを精密に位置決め(芯出し)し、基台部貫通孔に対してボルト部材を偏心させることなく挿通して、ボルト部材の外周面と基台部貫通孔の内壁との間に、全周にわたって均等な隙間を形成し、振動発生時でも、ボルト部材の外周面と基台部貫通孔の内壁が非接触状態を保てる(干渉しない)ようにする必要がある。そこで、専用の取付補助治具による位置決めが行われるが、消耗品である切削ブレードを交換する度に、煩雑な軸心合わせの作業を行わなければならず、著しくメンテナンス性に欠けるという課題があった。
【0005】
また、特許文献2のように、スピンドル(ブースター)を空気軸受で回転可能に支持する片持ち支持構造では、切削ブレード(超音波ホーン)とスピンドルの軸心がずれていると、非支持側で振れ回りが発生し、切削ブレードを高速回転させることができず、加工性能が低下するだけでなく、無理に高速回転させることにより、超音波共振体や軸受が破損するおそれがあった。さらに、切削ブレード(超音波ホーン)をスピンドルの先端部とスペーサで両側から挟み込むようにして貫通ボルトで固定するため、切削ブレードの軸方向に圧縮応力がかかっており、共振状態ではそこに共振により生じる内部応力が加わって、切削ブレードが破損するおそれもあった。
また、超音波ホーンの両側のブースターをそれぞれ空気軸受で回転可能に支持する両持ち支持構造では、超音波ホーンの交換の度に、超音波ホーンと両側のブースターとの軸心のずれに応じて、それぞれの空気軸受と各ブースターとのエアギャップを調整しながら、空気軸受の芯出しを行う必要があり、メンテナンス性に欠けるだけでなく、特に軸心のずれが大きい場合は、それぞれの空気軸受と各ブースターとのエアギャップを調整することができず、超音波ホーン自体を使用できなくなるという課題があった。
以上のことから、超音波ホーンと、第1、第2のブースターを正確かつ簡単に同軸上(同一軸心上)に締結することができる締結構造の実現が要望されていた。
【0006】
ここで、特許文献3に開示された高振幅用ランジュバン型振動子では、前面板に貫設した中央孔に対し、内端側(一端側)から、締付部材となるボルトの雄螺子を螺合するための螺子孔(雌螺子部)を設け、外端側(他端側)から、ホーン等を連結するための螺子孔(雌螺子部)を設けて、一方の螺子孔(雌螺子部)と他方の螺子孔(雌螺子部)との間に、少なくとも5mm以上の雌螺子を設けない部分が存在するようにしている。これにより、前面板の一側に電歪要素及び裏打板をボルトで固定し、前面板の他側にホーン等を螺子止めして取り付けることができる。しかし、この高振幅用ランジュバン型振動子は、電歪要素で発生する振動(変位)を高振幅用ランジュバン型振動子の軸方向に伝達し、他側のホーン等で増幅して出力するための駆動源であり、上述の超音波加工装置で用いられる超音波ホーンのようなR/L変換体とは異なり、軸方向の振動を半径方向の振動に変換して利用するものではない。従って、高振幅用ランジュバン型振動子(前面板)の外周に切断刃(回転刃)を取り付けて使用することはなく、高振幅用ランジュバン型振動子そのものが軸受で回転可能に支持されることもない。そのため、前面板に対し、一側の電歪要素及び裏打板並びに他側のホーン等を精密に同軸上に位置決めする必要性もない。また、ランジュバン型振動子では、円環状の圧電素子で構成された電歪要素に高周波電圧をかけると、電歪要素(圧電素子)が振動し、その厚みが周期的に変化する。これにより、ボルトで締め付けられているランジュバン型振動子に応力変化が起こり、その振動数とランジュバン型振動子の固有振動数が一致した状態、つまり共振した状態で超音波振動が発生する。その結果、ランジュバン型振動子の締結軸方向には、前面板の外端側の面と裏打板の外端側の面の位置を腹部(antinode)とし、電歪要素の位置を節部(node)とする半波長の定在波が存在することとなる。このとき、節部となる電歪要素の振動により、円環状の電歪要素の中央孔の内周面と、電歪要素の中央孔を貫通するボルトが干渉することを防ぐために、電歪要素の中央孔の孔径が、ボルトの外径よりも大きく形成され、電歪要素の中央孔の内周面と、ボルトの外周面との間には隙間が設けられている。このことからも、前面板、電歪要素及び裏打板が、同軸上に位置決めされていないことは明らかである。これに対し、超音波加工装置では、超音波振動子を駆動源として発生する軸方向の振動を、R/L変換体である超音波ホーンで半径方向の振動に変換し、超音波ホーンの外周に取り付けた切断刃を半径方向に振動させながら、超音波共振体を軸心を中心に回転させて超音波加工を行う。そのため、超音波加工装置では、超音波ホーンと、第1、第2のブースターの軸心を精密に位置決めして同軸上に締結するだけでなく、切断刃が効率的に振動するように超音波ホーンの形状及び超音波ホーンに対する切断刃の取付け位置等を適正に設定する必要があるが、切断刃が取り付けられない高振幅用ランジュバン型振動子では、これらについて考慮されていない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡素な構成で、寸法精度が高く、組立及び分解が容易で、メンテナンス性、耐久性及び動作の安定性に優れる超音波共振体の締結構造及び超音波共振体を安定的に高速回転させて効率的に超音波加工を行うことができ、静音性及び省エネルギー性に優れる超音波加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る超音波共振体の締結構造は、外周に切断刃を備えた超音波ホーンと、該超音波ホーンの軸方向の一側及び他側にそれぞれ連結された第1、第2のブースターとを有し、該第1、第2のブースターのいずれか一方の自由端面に連結される超音波振動子を駆動源として発生する超音波の定在波により、R/L変換体である前記超音波ホーンを該超音波ホーンの軸方向と直交する半径方向に振動させながら、該超音波ホーンの軸心を中心に回転して超音波加工を行う超音波共振体の締結構造であって、
前記超音波ホーンは、基部と、該基部の軸方向の一側及び他側にそれぞれ形成された第1、第2の突部と、前記基部及び前記第1、第2の突部の軸心を通って該超音波ホーンを軸方向に貫通する貫通孔と、該貫通孔の両側の開口端からそれぞれ所定の長さ形成された又は該貫通孔の全長にわたって形成された雌螺子部とを有し、前記第1のブースターは、該第1のブースターの軸心の前記超音波ホーン側に形成されて又は取付けられて前記雌螺子部に螺合される第1の雄螺子部を有し、前記第2のブースターは、該第2のブースターの軸心の前記超音波ホーン側に形成されて又は取付けられて前記雌螺子部に螺合される第2の雄螺子部を有し、前記超音波ホーンと前記第1、第2のブースターはそれぞれの軸心を一致させて同軸上に締結されており、前記貫通孔の内部で前記第1、第2の雄螺子部の先端同士は接触することなく、前記超音波ホーンの軸心に、前記貫通孔の内壁と前記第1、第2の雄螺子部の先端で囲まれた空間部が形成され、前記定在波の節部の位置は前記基部の軸方向中央部で前記空間部と重なり、前記基部の外周に前記切断刃が取り付けられている。
ここで、切断刃(回転刃)は、超音波ホーンの基部に固定された状態で供給されるため、切断刃に摩耗や損傷が発生した場合には、超音波ホーンと第1、第2のブースターとの締結を外し、使用済みの(切断刃に摩耗や損傷が発生した)超音波ホーンを、新しい(切断刃に摩耗や損傷が発生していない)超音波ホーンと交換する。
【0008】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、前記第1の雄螺子部の長さは、前記第1の突部の軸方向長さ以下に形成され、前記第2の雄螺子部の長さは、前記第2の突部の軸方向長さ以下に形成されて、前記空間部は、前記基部を軸方向に貫通し、該基部の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有することが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、前記超音波ホーンの軸方向の長さは、前記定在波の波長の1/2の長さに等しく、前記各第1、第2のブースターの軸方向の長さは、前記定在波の波長の1/2の長さの自然数倍に等しいことが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、前記第1、第2の突部はそれぞれ円柱状に形成され、前記第1の突部の直径及び軸方向の長さは、それぞれ前記第2の突部の直径及び軸方向の長さと等しく、前記貫通孔の直径は、前記第1、第2の突部の直径の1/10~1/2の範囲にあることが好ましい。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る超音波加工装置は、第1の発明に係る超音波共振体の締結構造を備えている。
【0012】
第2の発明に係る超音波加工装置において、前記超音波振動子が連結される前記第1、第2のブースターのいずれか一方のみを回転可能に保持する軸受部で前記超音波共振体を片持ち支持することができる。
ここで、軸受部に気体軸受が好適に用いられる。
【0013】
第2の発明に係る超音波加工装置において、前記第1、第2のブースターをそれぞれ回転可能に保持する第1、第2の軸受部で前記超音波共振体を両持ち支持することもできる。
ここで、第1、第2の軸受部のいずれか一方又は双方に気体軸受が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造は、第1、第2のブースターの軸心に設けられた第1、第2の雄螺子部が螺合される雌螺子部を、超音波ホーンの軸心に設けられた貫通孔に形成することにより、超音波ホーンと第1、第2のブースターの軸心を精密に一致させ、これらを簡単かつ確実に同軸上に締結して、超音波共振体の回転時の振れ回りを防止することができる。そして、貫通孔の内部で第1、第2の雄螺子部の先端同士が接触することなく、超音波ホーンの軸心に、基部を軸方向に貫通する空間部が形成されていることにより、超音波ホーンの基部における半径方向の振幅を増大させ、基部の外周に取り付けられる切断刃で効率的に加工を行うことができ、超音波振動子の発するエネルギーの利用効率を高めると共に、加工時に超音波共振体に発生する振動で第1、第2の雄螺子部が接触、干渉することがなく、異音の発生を防止して、摩耗等による貫通孔及び第1、第2の雄螺子部の破損を効果的に防ぐことができる。
【0015】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、超音波ホーンの軸方向の長さが、定在波の波長の1/2の長さに等しく、各第1、第2のブースターの軸方向の長さが、定在波の波長の1/2の長さの自然数倍に等しく、定在波の節部が基部の軸方向中央部に存在する場合、節部の位置を切断刃の取付け位置に一致させることができ、超音波共振体に発生する超音波振動を有効利用して、切断刃の半径方向の振動を効率的に発生させることができる。
【0016】
第1の発明に係る超音波共振体の締結構造において、第1、第2の突部はそれぞれ円柱状に形成され、前記第1の突部の直径及び軸方向の長さは、それぞれ前記第2の突部の直径及び軸方向の長さと等しく、貫通孔の直径が、第1、第2の突部の直径の1/10~1/2の範囲にある場合、貫通孔の内壁は十分な耐久性を有し、空間部を形成できると共に、貫通孔に沿って雌螺子部が形成されても、第1、第2の突部の直径(外径)と、雌螺子部の外径(谷の径)との間に十分な肉厚を確保して、第1、第2の突部の破損(割れ)を防止することができる。
【0017】
第2の発明に係る超音波加工装置は、第1の発明に係る超音波共振体の締結構造を備えることにより、超音波振動を有効利用して超音波ホーン(基部)の外周に取り付けられた切断刃で効率的に加工を行うことができ、静音性及び省エネルギー性に優れる。
【0018】
第2の発明に係る超音波加工装置において、超音波振動子が連結される第1、第2のブースターのいずれか一方のみが軸受部で回転可能に保持され、超音波共振体が片持ち支持される場合でも、超音波ホーンと第1、第2のブースターが同軸上に精密に位置決めされて締結されていることにより、非支持側で振れ回りが発生することがなく、超音波共振体を高速回転させることができ、加工性能の低下を防ぐことができる。
【0019】
第2の発明に係る超音波加工装置において、第1又は第2のブースターがそれぞれ第1、第2の軸受部で回転可能に保持され、超音波共振体が両持ち支持される場合でも、超音波ホーンと第1、第2のブースターが貫通孔により同軸上に精密に位置決めされて締結されるので、超音波共振体(第1、第2のブースター)と、第1、第2の軸受部との芯出しを改めて行う必要がなく、組立作業性及びメンテナンス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る超音波共振体の締結構造を備えた超音波加工装置の要部を示す部分断面正面図である。
【
図2】同超音波加工装置の超音波共振体内に発生する定在波の状態を示す説明図である。
【
図3】(A)は同超音波共振体の締結構造の第1の変形例を示す要部断面正面図であり、(B)は同超音波共振体の締結構造の第2の変形例を示す要部断面正面図であり、(C)は同超音波共振体の締結構造の第3の変形例を示す要部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示す本発明の一実施の形態に係る超音波共振体の締結構造10を備えた
図1の超音波加工装置11は、半径方向に超音波振動を行いながら回転する切断刃(加工具の一種)12で、例えば、SiCやアルミナ等の硬脆性材料の加工(切断、切削、研削等)を行うものである。
【0022】
図1、
図2に示すように、超音波共振体の締結構造10では、外周に切断刃12が取付けられた超音波ホーン13の軸方向の一側及び他側に、円柱状の第1、第2のブースター14、15がそれぞれ連結されて超音波共振体16が構成される。この超音波共振体16は、第1のブースター14の自由端面17(ここでは上端面)に連結される超音波振動子(例えば、電歪振動子)18を駆動源として発生する超音波の定在波SW(軸方向の振動)により、R/L変換体である超音波ホーン13を超音波ホーン13の軸方向と直交する半径方向(
図2の矢印aの方向)に振動させながら、超音波ホーン13の軸心を中心に回転して超音波加工を行う。そして、超音波ホーン13は、円盤状の基部20と、基部20の軸方向の一側及び他側にそれぞれ突出し、基部20より小径の円柱状に形成された第1、第2の突部21、22と、基部20及び第1、第2の突部21、22の軸心を通って超音波ホーン13を軸方向に貫通する貫通孔23と、貫通孔23の全長にわたって形成された雌螺子部24とを有している。
【0023】
このとき、第1の突部21の直径及び軸方向の長さは、それぞれ第2の突部22の直径及び軸方向の長さと等しく(第1の突部21と第2の突部22は同一形状であり)、基部20と第1、第2の突部21、22は、軸心が一致しており、同軸上に配置されている。尚、第1、第2の突部21、22の直径は、使用される超音波が超音波ホーン13を伝播するときの波長λの1/4以下であることが好ましいが、これに限定されず、適宜、選択される。また、第1のブースター14は、第1のブースター14の軸心の超音波ホーン13側に形成されて第1の突部21の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第1の雄螺子部25を有し、第2のブースター15は、第2のブースター15の軸心の超音波ホーン13側に形成されて第2の突部22の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第2の雄螺子部26を有している。
【0024】
従って、この超音波共振体の締結構造10では、超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15は、貫通孔23に形成された雌螺子部24に第1、第2の雄螺子部25、26を螺合するだけで、それぞれの軸心を精密に一致させて同軸上に締結され、貫通孔23の内部で第1、第2の雄螺子部25、26の先端27、28同士は接触することなく、超音波ホーン13の軸心に、貫通孔23の内壁と第1、第2の雄螺子部25、26の先端27、28で囲まれた空間部29が形成される。この空間部29は、基部20を軸方向に貫通し、基部20の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有する。そして、基部20の外周に切断刃12が取り付けられる。尚、第1、第2の雄螺子部の長さは、第1、第2の突部の軸方向の長さによっても異なるが、超音波ホーンと第1、第2のブースターを確実に締結して保持(固定)できる範囲で、適宜、選択される。
【0025】
ここで、貫通孔23の直径は、第1、第2の突部21、22の直径の1/10~1/2の範囲にあることが好ましい。貫通孔23の直径が第1、第2の突部21、22の直径の1/10以上であることにより、貫通孔23に形成される雌螺子部24に対して第1、第2の雄螺子部25、26を螺着し、超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15を強固に固定すると共に、基部20に十分な空間部29を形成して、超音波ホーン13における振動効率を高めることができる。また、貫通孔23の直径が第1、第2の突部21、22の直径の1/2以下であることにより、貫通孔23の内壁(周壁)は十分な耐久性を有し、空間部29を形成することができる。そして、貫通孔23に沿って雌螺子部24が形成されても、第1、第2の突部21、22の直径(外径)と、雌螺子部24の外径(谷の径)との間に十分な肉厚を確保して、第1、第2の突部21、22の破損(割れ)を防止することができる。
【0026】
また、
図2に示すように、超音波ホーン13の軸方向の長さは、超音波共振体16に発生する定在波SWの波長Tの1/2の長さ(T/2)に等しく、各第1、第2のブースター14、15の軸方向の長さは、定在波の波長Tの1/2の長さ(T/2)に等しくなっている。ここで、超音波ホーン13及び第1、第2のブースター14、15は、超音波の伝搬性を同一にするために、同一材質で作製してもよいし、異なる材質で作製してもよく、その組合せは適宜、選択することができる。尚、超音波ホーンにおける基部の軸方向の長さと、第1、第2の突部のそれぞれの軸方向の長さとの比は、適宜、選択される。
【0027】
超音波加工装置11は、
図1に示すように、ホルダー30に対して第1、第2のブースター14、15をそれぞれ回転可能に保持する第1、第2の軸受部31、32を有し、超音波共振体16を両持ち支持している。ここで、第1、第2の軸受部31、32は空気(気体)軸受であり、第1のブースター14の外周にはスラスト空気軸受として鍔状の支持部33が形成されているが、第1、第2の軸受部(空気軸受)31、32の構造は、適宜、選択される。また、支持部33は、第1のブースター14と一体に形成されることが好ましいが、別部材で形成したものを取付けてもよい。
【0028】
第1、第2の雄螺子部25、26が螺合される雌螺子部24が、1つの貫通孔23に沿って形成されているので、雌螺子部24に第1、第2の雄螺子部25、26を螺合した際に、第1、第2の雄螺子部25、26の軸心が、超音波ホーン13(貫通孔23)の軸方向の一側と他側でずれることがなく、超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15を精度良く同軸上に締結することができる。その結果、超音波共振体16(第1、第2のブースター14、15)を第1、第2の軸受部31、32で支持(保持)する際の芯出し作業は必要ない。つまり、消耗品である超音波ホーン13を交換する度に、手間のかかる芯出し作業(位置調整)を行う必要がないため、メンテナンス性が向上する。
【0029】
超音波加工装置11では、
図1に示すように、超音波振動子18の一側(ここでは、上端側)に、その軸心が、超音波共振体16の軸心と一致するように回転軸36が連結されている。そして、回転軸36の軸方向(長手方向)の中間位置にはスリップリング37が設けられ、このスリップリング37を介して高周波発振器38からの駆動用信号が超音波共振体16に入力される構成となっている。高周波発振器38からスリップリング37を介して入力される駆動用信号は、回転軸36の内部を貫通する信号線(図示せず)により超音波共振体16に伝達される。
【0030】
回転軸36の一側には、超音波振動子18と共に超音波共振体16(第1のブースター14、超音波ホーン13及び第2のブースター15の連結構造体)を回転させる回転駆動源39(例えば、電動機)の出力軸40が、非接触継手の一例である非接触式磁気継手41を介して連結されている。この非接触式磁気継手41は、回転駆動源39の出力軸40の他端部に取付けられる駆動側磁力部42と、回転軸36の一端部に取付けられて駆動側磁力部42と対向する従動側磁力部43とを備えている。非接触式磁気継手41(駆動側磁力部42と従動側磁力部43)の構造は、従来公知のものが好適に用いられ、互いに逆極性の磁極面同士が対向するように配置される駆動側磁力部42の永久磁石(図示せず)と従動側磁力部43の永久磁石(図示せず)との間に発生する引力により、駆動側磁力部42と従動側磁力部43が非接触で連結されるものである。これにより、回転駆動源39からの回転動力が、出力軸40から非接触式磁気継手41を介して回転軸36に伝達され、超音波振動子18と共に超音波共振体16を回転させることができる。このように、回転軸36と、回転駆動源39の出力軸40との間が非接触式磁気継手41を介して連結されているので、出力軸40の軸心に対して、超音波共振体16(回転軸36)の軸心の位置がずれたり、軸心が傾いたりしても、互いに干渉することなくスムーズな回転状態を維持することができる。
【0031】
以上のように構成された超音波加工装置11で加工(切断、切削、研削等)を行う際には、回転駆動源39で超音波共振体16を回転させることにより、超音波ホーン13(基部20の外周)に取付けられた切断刃12を回転させる。同時に、超音波振動子18の発する振動により、
図2に示すように、超音波共振体16内に超音波振動の定在波(定常波)SW(軸方向の振動)を発生させて、切断刃12を超音波ホーン(R/L変換体)13により半径方向(矢印aの方向)に超音波振動させる。ここで、先に説明したように、超音波ホーン13の軸方向の長さが、超音波共振体16に発生する定在波SWの波長Tの1/2の長さ(T/2)に等しく、各第1、第2のブースター14、15の軸方向の長さが、超音波共振体16に発生する定在波SWの波長Tの1/2の長さ(T/2)に等しいことにより、超音波共振体16をコンパクト化(最短化)できると共に、超音波共振体16内での定在波SWの減衰を少なくして、定在波SWを効率的に形成することができる。
【0032】
このとき、第1のブースター14の一側(超音波ホーン13と反対側)の自由端面17、超音波ホーン13の両端面(超音波ホーン13と第1、第2のブースター14、15との接続端面)及び第2のブースター15の他側(超音波ホーン13と反対側)の自由端面46の位置は、定在波SWの腹部(アンチノード、Antinode、AN)となり、第1のブースター14、超音波ホーン13及び第2のブースター15の軸方向(長手方向)のそれぞれの中央部の位置は、定在波SWの節部(ノード、Node)となる。よって、超音波ホーン13の基部20の軸方向中央部及び支持部33の位置をそれぞれ定在波SWの節部の位置に対応させることにより、超音波振動を有効利用して、R/L変換体である超音波ホーン13の基部20を超音波ホーン13の軸方向と直交する半径方向(矢印aの方向)に振動させることができる。そして、基部20の軸方向中央部(定在波SWの節部の位置)に合わせて、基部20の外周に切断刃12を取付けることにより、切断刃12を基部20と共に半径方向に振動させることができる。このとき、円盤状の基部20の外周面の幅方向中央部に、外周面に沿って設けた環状突起部(図示せず)に切断刃12を取付けることもできる。
【0033】
特に、超音波ホーン13の軸心に、基部20を軸方向に貫通する空間部29が形成されていることにより、基部20の外周が半径方向外側に振動するだけでなく、空間部29の内壁47が半径方向内側(空間部29の内側)に振動し、振動の自由度が増し、超音波ホーン13(基部20)の半径方向に大きな振幅が得られ、基部20の外周に取り付けられる切断刃12を半径方向(矢印aの方向)に振動させて効率的に加工を行うことができ、超音波振動子18の発するエネルギーの利用効率を高めることができる。また、加工時に超音波共振体16(基部20)に発生する振動で、空間部29の内壁47が半径方向内側(空間部29の内側)に振動しても、空間部29では内壁47と第1、第2の雄螺子部25、26が接触、干渉することがないので、異音の発生を防止できるだけでなく、摩耗等による貫通孔23及び第1、第2の雄螺子部25、26の破損を効果的に防ぐことができ、超音波共振体16の長寿命化を図ることができる。そして、空間部29が基部20の軸方向長さと同等以上の軸方向長さを有して基部20を軸方向に貫通しているので、超音波ホーン13の各部の寸法誤差等の影響で定在波SWの節部の位置が基部20の軸方向(
図2の左右方向)にずれても、定在波SWの節部の位置は空間部29と重なることになり、基部20の振動によって内壁47と第1、第2の雄螺子部25、26が接触、干渉することはなく、超音波ホーン13に発生する振動エネルギーを有効に利用することができる。
【0034】
尚、第1、第2のブースターの軸方向長さが、超音波共振体に発生する定在波の波長Tの1/2の長さ(T/2)の自然数倍に等しければ、第1のブースターの一側の自由端面及び第2のブースターの他側の自由端面の位置は定在波の腹部となり、前述と同様の作用、効果が得られる。従って、使用する超音波の振動数に基づいて、超音波ホーン及び第1、第2のブースターのそれぞれの軸方向長さを上記の関係を満たす範囲で調節(選択)することにより、定在波を容易に発生させることができる。
【0035】
次に、超音波共振体の締結構造の変形例について説明する。
図3(A)に示す第1の変形例の超音波共振体の締結構造48が超音波共振体の締結構造10と異なる点は、第1のブースター49が、第1のブースター49の軸心の超音波ホーン13側に連結用雌螺子部50を介して取付けられて第1の突部21の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第1の雄螺子部(無頭螺子)51を有する点である。
図3(B)に示す第2の変形例の超音波共振体の締結構造52が超音波共振体の締結構造10と異なる点は、第2のブースター53が、第2のブースター53の軸心の超音波ホーン13側に連結用雌螺子部54を介して取付けられて第2の突部22の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第2の雄螺子部(無頭螺子)55を有する点である。
図3(C)に示す第3の変形例の超音波共振体の締結構造56が超音波共振体の締結構造10と異なる点は、第1のブースター49が、第1のブースター49の軸心の超音波ホーン13側に連結用雌螺子部50を介して取付けられて第1の突部21の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第1の雄螺子部(無頭螺子)51を有し、第2のブースター53が、第2のブースター53の軸心の超音波ホーン13側に連結用雌螺子部54を介して取付けられて第2の突部22の軸方向長さ以下で雌螺子部24に螺合される第2の雄螺子部(無頭螺子)55を有する点である。いずれの変形例も、超音波共振体の締結構造10と同様の作用、効果を得ることができる。
【0036】
尚、本実施の形態及びその変形例では、貫通孔23の全長にわたって雌螺子部24を形成したが、第1、第2の雄螺子部の長さに合わせて、貫通孔の両側(長手方向の一側及び他側)の各開口端からそれぞれ所定の長さだけ雌螺子部が形成されていれば、超音波ホーンの軸方向の一側及び他側に第1、第2のブースターを締結して、基部を軸方向に貫通する空間部を形成することができ、超音波共振体の締結構造10と同様の作用、効果を得ることができる。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、上記実施の形態では、第1、第2の軸受部に空気(気体)軸受を用いたが、超音波共振体を両持ち支持する場合、第1、第2の軸受部は、第1、第2のブースターをそれぞれ回転可能に保持できればよく、第1の軸受部に機械軸受(例えば玉軸受等の転がり軸受)を用い、第2の軸受部に空気(気体)軸受を用いてもよいし、第1、第2の軸受部に機械軸受(例えば玉軸受等の転がり軸受)を用いてもよい。尚、第1及び/又は第2の軸受部に機械軸受を用いる場合は、第1及び/又は第2のブースター内の定在波の節部(ノード)の位置に設けた支持部を、第1及び/又は第2のブースターを同心状に内部に固定し、超音波共振体と共に回転する円筒状の内殻に固定し、その内殻を機械軸受で回転可能に支持することが望ましい。
【0038】
上記実施の形態では、第1のブースターに超音波振動子を取付けたが、第2のブースターに超音波振動子を取付けてもよい。また、上記実施の形態のように、第1、第2のブースターをそれぞれ回転可能に保持する第1、第2の軸受部で超音波共振体を両持ち支持する構成の代わりに、超音波振動子が連結される第1、第2のブースターのいずれか一方のみを回転可能に保持する軸受部で超音波共振体を片持ち支持する構成としてもよい。そして、超音波振動子には回転駆動源が接続される。このときの軸受部には、空気(気体)軸受を用いてもよいし、機械軸受(例えば玉軸受等の転がり軸受)を用いてもよい
さらに、上記実施の形態では、非接触継手の一例である非接触式磁気継手を介して回転軸に回転駆動源を間接的に連結したが、回転駆動源は、超音波共振体を回転させることができればよく、回転軸に回転駆動源を直接、連結してもよいし、回転軸にフレキシブル継手を介して回転駆動源を連結することもできる。
尚、上記実施の形態では、超音波振動子が連結されていない第2のブースター側が鉛直下向きとなるように、超音波共振体の軸心を鉛直方向に向けて配置したが、第2のブースター側が斜め下向きとなるように、超音波共振体の軸心を傾斜させて配置してもよいし、超音波共振体の軸心を水平方向に向けて配置してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:超音波共振体の締結構造、11:超音波加工装置、12:切断刃、13:超音波ホーン、14:第1のブースター、15:第2のブースター、16:超音波共振体、17:自由端面、18:超音波振動子、20:基部、21:第1の突部、22:第2の突部、23:貫通孔、24:雌螺子部、25:第1の雄螺子部、26:第2の雄螺子部、27、28:先端、29:空間部、30:ホルダー、31:第1の軸受部、32:第2の軸受部、33:支持部、36:回転軸、37:スリップリング、38:高周波発振器、39:回転駆動源、40:出力軸、41:非接触式磁気継手、42:駆動側磁力部、43:従動側磁力部、46:自由端面、47:内壁、48:超音波共振体の締結構造、49:第1のブースター、50:連結用雌螺子部、51:第1の雄螺子部(無頭螺子)、52:超音波共振体の締結構造、53:第2のブースター、54:連結用雌螺子部、55:第2の雄螺子部(無頭螺子)、56:超音波共振体の締結構造