(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037321
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】構造評価方法、構造評価プログラム、及び、構造評価装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20230308BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20230308BHJP
G01M 7/02 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G01M7/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143984
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515223662
【氏名又は名称】MHINSエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】首藤 博道
(72)【発明者】
【氏名】高山 義博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恵華
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA02
5B146AA03
5B146DJ02
(57)【要約】
【課題】複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物を精度よく評価する。
【解決手段】構造評価方法は、複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価を行う。この方法は、応答値算出工程と、合成応答算出工程とを備える。応答値算出工程では、(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)カットオフ振動数以上の振動数領域における多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出する。合成応答算出工程では、複数の応答値にそれぞれ比例する時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、複数の応答値の合成応答を算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価方法であって、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出工程と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出工程と、
を備える、構造評価方法。
【請求項2】
前記応答値算出工程では、前記複数の応答値として、前記モーダル応答と、前記高次応答とを算出する、請求項1に記載の構造評価方法。
【請求項3】
前記応答値算出工程では、前記複数の応答値として、前記モーダル応答と、前記変位応答とを算出する、請求項1に記載の構造評価方法。
【請求項4】
前記応答値算出工程では、前記複数の応答値として、前記モーダル応答、前記高次応答、及び、前記変位応答を算出する、請求項1に記載の構造評価方法。
【請求項5】
前記高次応答は、前記多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる前記複数の支持点にそれぞれ対応する複数の時刻歴加速度に基づいて算出される、請求項1から4のいずれか一項に記載の構造評価方法。
【請求項6】
前記変位応答は、前記多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる前記複数の支持点にそれぞれ対応する複数の時刻歴変位に基づいて算出される、請求項1から5のいずれか一項に記載の構造評価方法。
【請求項7】
前記モーダル応答及び前記高次応答に関する前記相関係数は、前記時刻歴応答として、前記多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる時刻歴加速度を用いて算出される、請求項1から6のいずれか一項に記載の構造評価方法。
【請求項8】
前記変位応答に関する前記相関係数は、前記時刻歴応答として、前記多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる時刻歴変位を用いて算出される、請求項1から7のいずれか一項に記載の構造評価方法。
【請求項9】
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価プログラムであって、コンピュータを用いて、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出工程と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する複数の時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出工程と、
を実行可能な、構造評価プログラム。
【請求項10】
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価装置であって、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出部と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する複数の時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出部と、
を備える、構造評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の支持点で支持され、複数の入力振動又は単数の入力振動を受ける多自由度系の構造物の構造評価方法、構造評価プログラム、及び、構造評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプラント設備に用いられる配管系のような構造物は、地震動のような入力振動に対して適切な耐久性を有する耐震設計が求められる。このような構造物の構造評価では、モード解析手法を利用する解析手法として、スペクトルモーダル解析法や時刻歴モーダル解析法が知られている。これらの解析手法では、入力振動に対する振動応答を、各振動モードの合成応答として求め、当該合成応答に基づいて得られる構造物の変位量(変形量)や部材力を許容範囲と比較することで構造評価が行われる。例えば特許文献1には、前述の2つの解析法のうちスペクトルモーダル解析法を用いた構造評価の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなモード解析手法では、所定のカットオフ振動数(例えば33Hz)以上の振動数領域は床応答曲線の応答増幅が無い領域とされており、カットオフ振動数より低い振動数領域を解析対象としている。このようなカットオフ振動数よりも高い振動数領域の高次応答は、例えばミッシングマス法のように、床応答スペクトル解析法で考慮されなかった振動モード(カットオフ振動数よりも高い振動数のモード)の全質量に建屋床面の加速度を乗じることにより求めることができる。また配管系が異なる床面に属する複数の支持点によって支持され、各床面間に相対変位が生じる場合には、構造解析では、このような相対変位に起因する建屋変位応答も考慮する必要がある。
【0005】
モード解析手法によるモーダル応答に加えて、前述の高次応答や建屋変位応答を考慮する場合、これらを合成することにより構造評価が行われるが、その合成手法の種類によって、評価結果の保守性が影響を受ける可能性がある。例えば合成手法として二乗和平方根(SRSS)法を用いた場合、構造物の条件によっては保守的ではない結果が得られる場合があり、様々な構造物に対して一律に採用することが難しいと考えらえる。また合成手法として絶対値和(ABS)法を用いると、評価結果が保守的になりやすく、過度設計によるコスト増を招くおそれがある。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物を精度よく評価可能な構造評価方法、構造評価プログラム、及び、構造評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の幾つかの実施形態に係る構造評価方法は、上記課題を解決するために、
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価方法であって、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出工程と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する複数の時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出工程と、
を備える。
【0008】
本開示の幾つかの実施形態に係る構造評価プログラムは上記課題を解決するために、
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価プログラムであって、コンピュータを用いて、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出工程と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する複数の時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出工程と、
を実行可能である。
【0009】
本開示の幾つかの実施形態に係る構造評価装置は上記課題を解決するために、
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価装置であって、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出部と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する複数の時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物を精度よく評価可能な構造評価方法、構造評価プログラム、及び、構造評価装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】構造評価対象である構造物の一例を示す模式図である。
【
図3】
図2のメインサーバの内部構成を機能的に示すブロック図である。
【
図4】
図3のメインサーバによって実施される構造評価方法を示すフローチャートである。
【
図5】ステップS500における合成対象となるモーダル応答、高次応答、及び、建屋変位応答をリスト形式でまとめて表示したものである。
【
図6】
図3のモーダル応答算出部の内部構成を機能的に示すブロック図である。
【
図7】
図3のモーダル応答算出部によって実施されるモーダル応答の算出方法を示すフローチャートである。
【
図8】床応答スペクトルの算出に関するメインサーバの機能的構成を示すブロック図である。
【
図9】床応答スペクトルの算出方法を工程毎に示すフローチャートである。
【
図10A】
図9のステップS114で求められる時刻歴応答加速度の一例である。
【
図10B】
図10Aの時刻歴応答加速度から得られる床応答スペクトルの一例である。
【
図11】
図3の高次応答算出部の内部構成を機能的に示すブロック図である。
【
図12】
図3の高次応答算出部によって実施される高次応答の算出方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図3の建屋変位応答算出部の内部構成を機能的に示すブロック図である。
【
図14】
図3の建屋変位応答算出部によって実施される建屋変位応答の算出方法を示すフローチャートである。
【
図15】相関係数の算出に関するメインサーバの機能的構成を示すブロック図である。
【
図16】相関係数の算出方法を工程毎に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
<構造評価対象>
まず
図1を参照して、構造評価対象となる構造物1(多自由度系構造物)について説明する。
図1は構造評価対象である構造物1の一例を示す模式図である。構造物1は、地面2上に立設された建屋4a、4b(以下、建屋4a、4bを総称する場合は、符号4で示す)が有する複数の床面k、lに対応する複数の支持点で支持される。
図1の例では、地面2上に2つの建屋4a、4bが立設されており、建屋4aは3階構造を有し、建屋4bは2階構造を有する。構造物1は、建屋4aの床面k、及び、建屋4bの床面l上にそれぞれ支持される。
【0014】
尚、以下の説明では床面k、lはそれぞれ一つの支持点に対応するとして扱うが、各床面に対して複数の支持点が設けられていてもよい。この場合、各支持点を
図1の床面k、lと同等に扱うことで、後述する構造評価を同様に適用可能である。また地面2上に立設される建屋4の数、各建屋4の階数は任意でよい。
【0015】
尚、建屋4は、例えば原子力発電所のような原子力プラントを構成する建築物であり、構造物1は、例えば原子力プラントに用いられる配管系であるが、これらは一例に過ぎない。
【0016】
<構造評価システム>
続いて上述の構造物1の構造評価を行うための構造評価システムについて説明する。
図2は構造評価システム100の全体構成図である。
【0017】
構造評価システム100は、
図2に示すように、通信ネットワーク200で互いに接続されたメインサーバ300、データサーバ400、及び、ユーザ端末500を備える。通信ネットワーク200は、構造評価システム100の構成要素間において各種データを送受信可能なネットワークであり、有線及び無線を問わない。
【0018】
メインサーバ300は、構造評価システム100における主要な情報処理を行うサーバであり、本開示の少なくとも一実施形態に係る構造評価装置として機能する。メインサーバ300は、例えば、コンピュータのような電子演算装置を含むハードウェア構成を有し、本開示の少なくとも一実施形態に係る構造評価プログラムがインストールされることにより、本開示の少なくとも一実施形態に係る構造評価方法を実施可能に構成される。メインサーバ300は、通信ネットワーク200を介してデータサーバ400にアクセス可能であり、データサーバ400に格納された情報を用いて構造評価を行う。メインサーバ300の構造評価結果は、通信ネットワーク200を介してユーザ端末500に対して出力
可能である。
【0019】
尚、構造評価プログラムは、例えば所定の記憶媒体に記録されていてもよい。この場合、メインサーバ300は、記憶媒体を読み取ることにより構造評価プログラムをインストールすることで構成される。このような構造評価プログラムが記録された記憶媒体もまた、本開示の一実施形態に含まれる。
【0020】
データサーバ400は、構造評価システム100の動作に関する各種データを格納するサーバであり、格納されるデータの種類に対応する少なくとも一つのデータベースを含む。
図2では、データサーバ400は、解析モデルデータベース410、床応答スペクトルデータベース420、床面時刻歴加速度データベース422、床面時刻歴変位データベース424、及び、相関係数データベース430を備える(各データベースの詳細については後述する)。
【0021】
またデータサーバ400は、通信ネットワーク200を介してアクセスすることにより、メインサーバ300における演算結果を適宜格納可能に構成されてもよい。またデータサーバ400は、不図示の入力インターフェースを介して、データサーバ400に格納される各種情報を入力可能に構成されてもよい。
【0022】
ユーザ端末500は、構造評価結果の提供先であるユーザが使用可能な端末である。ユーザ端末500は、通信ネットワーク200を介してメインサーバ300から出力される構造評価結果を受信可能に構成され、任意のデバイスを採用可能である。
【0023】
<構造評価装置>
続いて本開示の一実施形態に係る構造評価装置として機能するメインサーバ300の詳細について説明する。
図3は
図2のメインサーバ300の内部構成を機能的に示すブロック図である。尚、
図3に示す各機能ブロックは、後述する構造評価方法の各工程に対応するように規定した一例に過ぎず、幾つかの機能ブロックが統合されていてもよいし、複数の機能ブロックに更に細分化されていてもよい。
【0024】
メインサーバ300は、モーダル応答算出部302と、高次応答算出部304と、建屋変位応答算出部306と、相関係数取得部308と、応答合成部310と、出力部312とを備える。モーダル応答算出部302はモーダル応答qRikを算出するための構成であり、高次応答算出部304は高次応答qR(n+1)kを算出するための構成であり、建屋変位応答算出部306は建屋変位応答qR(n+2)kを算出するための構成である。相関係数取得部308は相関係数ρikjlを取得するための構成であり、応答合成部310は相関係数ρikjlを用いて、モーダル応答qRik、高次応答qR(n+1)k、及び、建屋変位応答qR(n+2)kを合成することにより応答合成qRを算出するための構成である。出力部312は、応答合成qRを出力するための構成である。
【0025】
上記構成を有するメインサーバ300は、以下に示す構造評価方法を実施可能に構成される。
図4は
図3のメインサーバ300によって実施される構造評価方法を示すフローチャートである。
【0026】
まずモーダル応答算出部302は、モーダル応答qRikを算出する(ステップS100)。モーダル応答qRikは、カットオフ振動数(例えば33Hz)未満の振動数領域における構造物1の各振動モードに対応する応答である。尚、モーダル応答qRikの具体的な算出方法については後述する。
【0027】
続いて高次応答算出部304は高次応答qR(n+1)kを算出する(ステップS200)。高次応答qR(n+1)kは、カットオフ振動数(例えば33Hz)以上の振動数領域における構造物1の振動モードに対応する応答である。尚、高次応答qR(n+1)kの具体的な算出方法については後述する。またステップS200における高次応答qR(n+1)kの算出は、高次応答qR(n+1)kがモーダル応答qRikに対して十分に小さい場合には省略することもできる。
【0028】
続いて建屋変位応答算出部306は建屋変位応答
qR
(n+2)kを算出する(ステップS300)。
図1を参照して前述したように構造物1は、複数の支持点を介して複数の床面k、lに支持されており、建屋変位応答
qR
(n+2)kは、これら複数の支持点間における変位に対応する静的応答である。尚、建屋変位応答
qR
(n+2)kの具体的な算出方法については後述する。またステップS300における建屋変位応答
qR
(n+2)kの算出は、建屋変位応答
qR
(n+2)kがモーダル応答
qR
ikに対して十分に小さい場合には省略することもできる。
【0029】
尚、ステップS100~S300では、モーダル応答qRik、高次応答qR(n+1)k、及び、建屋変位応答qR(n+2)kがそれぞれ順に算出されるが、これらの各応答の算出は異なる順で実施されてもよいし、同時に実施されてもよい。
【0030】
続いて相関係数取得部308は相関係数ρikjlを取得する(ステップS400)。相関係数データベース430には、ステップS100~S300で求められる応答値を合成する際に用いられる相関係数ρikjlが予め格納されているが、これらの相関係数ρikjlは、予めメインサーバ300によって算出してもよい。尚、相関係数ρikjlの具体的な算出方法については、後述する。
【0031】
続いて応答合成部310は相関係数ρ
ikjlを用いて、モーダル応答
qR
ikと、高次応答
qR
(n+1)k又は建屋変位応答
qR
(n+2)kの少なくとも一方を合成することにより応答合成
qRを算出する(ステップS500)。ここで
図5は、ステップS500における合成対象となるモーダル応答
qR
ik、高次応答
qR
(n+1)k、及び、建屋変位応答
qR
(n+2)kをリスト形式でまとめて表示したものである。
【0032】
図5では、構造物1が各支持点から受ける入力の総数m、及び、構造物1の応答スペクトル解析におけるカットオフ振動数までのモード次数nを用いて、構造物1には各入力に対してモード毎に動的応答が生じ、合計m×n個のモーダル応答
qR
ikが示されている。尚、基準振動により建屋床面に複数の方向の応答が生じる可能性があり、その複数の方向の数をm
dとすると(m
dは3以下の整数)、入力の総数mは建屋床面の総数のm
d倍となる。また、各入力に対して合計m個の高次応答
qR
(n+1)kが示されている。更に各入力に建屋変位があるため、これらの建屋変位による静的応答として、合計m個の建屋変位応答
qR
(n+2)kが示されている。
【0033】
図5において、m個の入力に対して、動的応答であるモーダル応答
qR
ikがn個、高次応答
qR
(n+1)kが1個、また静的応答である建屋解析応答
qR
(n+2)kが1個あることから、マトリクスは(n+2)×mのマトリクスとなる。このマトリクスで、i行目k列の応答の最大値をR
ikとする。R
ikにはモーダル応答、高次応答および静的応答のすべてが含まれる。ここで、1≦i≦n+2、1≦k≦mである。
【0034】
他の態様では、応答合成部310は相関係数ρ
ikjlを用いて、モーダル応答
qR
ikと高次応答
qR
(n+1)kとを合成することにより応答合成
qRを算出する。この場合、応答合成
qRは次式により算出される。
この場合、相関係数ρ
ikjlによって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答
qR
ikに加えて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答
qR
(n+1)kが含まれる。このようにモーダル応答
qR
ikだけでなく、高次応答
qR
(n+1)kを考慮した合成応答
qRを求めることで、例えば構造物1が剛的に支持されている場合のように高次応答
qR
(n+1)kによる影響が大きな場合においても優れた解析精度を得ることができる。
【0035】
他の態様では、応答合成部310は相関係数ρ
ikjlを用いて、モーダル応答
qR
ikと建屋変位応答
qR
(n+2)kとを合成することにより応答合成
qRを算出する。この場合、応答合成
qRは次式により算出される。
この場合、相関係数ρ
ikjlによって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答
qR
ikに加えて、静的応答である変位応答
qR
(n+2)kが含まれる。このようにモーダル応答
qR
ikだけでなく、変位応答
qR
(n+2)kを考慮した合成応答
qRを求めることで、例えば構造物1を支持する複数の支持点間に相対的な変位が生じる場合のように変位応答
qR
(n+2)kによる影響が大きな場合においても優れた解析精度を得ることができる。
【0036】
他の態様として、応答合成部310は相関係数ρ
ikjlを用いて、モーダル応答
qR
ik、高次応答
qR
(n+1)k、及び、建屋変位応答
qR
(n+2)kを合成することにより応答合成
qRを算出する。この場合、応答合成
qRは次式により算出される。
この場合、相関係数ρ
ikjlによって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答
qR
ikに加えて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答
qR
(n+1)k、及び、静的応答である変位応答
qR
(n+2)kの両方が含まれる。このようにモーダル応答
qR
ikだけでなく、高次応答
qR
(n+1)kや静的応答
qR
(n+2)kを考慮した合成応答
qRを求めることで、より優れた解析精度を得ることができる。
【0037】
続いて出力部312は、ステップS500で算出された応答合成qRを構造解析結果として出力する(ステップS600)。ステップS600における出力形式は任意でよい。
【0038】
(モーダル応答の算出方法)
続いてモーダル応答算出部302によるモーダル応答
qR
ikの算出について、具体的に説明する。
図6は
図3のモーダル応答算出部302の内部構成を機能的に示すブロック図であり、
図7は
図3のモーダル応答算出部302によって実施されるモーダル応答
qR
ikの算出方法を示すフローチャートである。
【0039】
図6に示すように、モーダル応答算出部302は、構造モデル取得部320と、固有値解析部322と、床応答スペクトル取得部324と、応答算出部326とを備える。構造モデル取得部320は、解析モデルデータベース410から構造物1に対応する構造モデルを取得する。固有値解析部322は、構造モデル取得部320で取得された構造モデルに基づいて構造物1の固有値解析を行う。床応答スペクトル取得部324は、床応答スペクトルデータベース420から床応答スペクトルを取得する。応答算出部326は、床応答スペクトル取得部324で取得された床応答スペクトルを用いて、構造物1の振動モードのそれぞれに対応する応答値を支持点への入力毎に求める。
【0040】
図7に示すように、まず構造モデル取得部320は、構造物1に対応する構造モデル412を取得する(ステップS101)。具体的には、構造モデル取得部320は、解析モデルデータベース410にアクセスし、解析モデルデータベース410に予め格納された各解析モデルから、構造評価対象となる構造物1に対応する構造モデルを検索して取得する。
【0041】
続いて固有値解析部322は、ステップS101で取得された構造モデル412について固有値解析を行う(ステップS102)。ステップS102では、例えば構造モデル412を解析することにより、構造物1の各振動モードを特定するための固有振動数や固有ベクトルが求められる。
【0042】
ここで
図1の構造物1を例に、具体的に説明する。複数の支持点(床面k、l)によって支持される構造物1の運動方程式は、一般的に(4)式で表される。
構造物1において、床面から支持されている節点の拘束方向を拘束節点自由度、床面から支持されていないフリーな節点の方向を非拘束節点自由度と称する。(4)式の上段は非拘束節点自由度の運動方程式を、下段は拘束節点自由度の運動方程式を表している。
ここで、M
Pは構造物1の非拘束節点自由度の質量マトリクス、C
Pは構造物1の非拘束節点自由度の減衰マトリクス、K
Pは構造物1の非拘束節点自由度の剛性マトリクス、C
Bは構造物1の拘束節点自由度の減衰マトリクス、K
Bは構造物1の拘束節点自由度の剛性マトリクス、C
PB又はC
BPは構造物1の非拘束節点自由度-拘束節点自由度間の結合減衰マトリクス、K
PB又はK
BPは構造物1の非拘束節点自由度―拘束節点自由度間の結合剛性マトリクス、F
Bは構造物1の拘束節点自由度の反力ベクトル、Xは構造物1の非拘束節点自由度の応答ベクトル、Zは構造物1の拘束節点自由度の変位ベクトルである。
【0043】
(4)式における構造物1の応答を、(5)式に示すように、動的応答{X
D}と静的応答{X
S}の和として表すこととする。
静的応答{X
S}は静的なつり合いに基づいて(6)式により求められる。
(6)式を(4)式の上段の方程式に代入し、構造物1の拘束節点自由度の減衰項を無視することにより、(7)式が得られる。
このように得られた(7)式は、複数の支持点によって支持される構造物1の動的応答を求める基礎式である。
【0044】
ここで、動的応答{X
D}はモーダルマトリクス[Φ]とモーダル応答ベクトル{q}を用いて(8)式で表すことができる。
(8)式を(7)式に代入することにより、(7)式の運動方程式はモード座標系で(9)式により表される。
ここで、ξ
iはモーダル減衰定数、ω
iはモーダル角振動数である。
【0045】
(9)式において,右辺の係数は多入力系の振動応答における刺激係数を表している。床面kの入力振動によるi次振動モードの刺激係数β
ikは
となり、床面kの入力振動によるi次振動モードの運動方程式は下式で表される。
(11)式がモード座標系で表した複数の支持点から多入力を受ける構造物1の動的応答を求める基礎式となる。尚、β
ikは修正刺激係数である。
【0046】
続いて床応答スペクトル取得部306は、床応答スペクトルデータベース420から各床面k、lに対応する床応答スペクトルをそれぞれ取得する(ステップS103)。床応答スペクトルデータベース420には、床面k、lに関連付けられた床応答スペクトルが予め格納されているが、これらの床応答スペクトルは、予めメインサーバ300によって算出してもよい。
【0047】
ここで床応答スペクトルの具体的内容について、メインサーバ300によって床応答スペクトルを算出する手順を踏まえて説明する。
図8は床応答スペクトルの算出に関するメインサーバ300の機能的構成を示すブロック図であり、
図9は床応答スペクトルの算出方法を工程毎に示すフローチャートである。
尚、
図8及び
図9では、床面kに関する床応答スペクトルを算出するための構成及び方法が示されるが、床面lについても同様である。
【0048】
図8に示すように、床応答スペクトルの算出に関するメインサーバ300の構成は、基準振動取得部330と、建屋モデル取得部332と、床面時刻歴加速度算出部334と、一自由度系振動子モデル取得部336と、床応答スペクトル演算部338と、を備える。
尚、
図8に示す各機能ブロックは、以下に説明する床応答スペクトルの算出方法の各工程に対応するように規定した一例であり、複数の機能ブロックが統合されていてもよいし、複数の機能ブロックに更に細分化されていてもよい。
【0049】
図9に示すように、まず基準振動取得部330は、基準振動を取得する(ステップS110)。基準振動は、地面2(
図1を参照)への入力振動に対応する振動であり、時間に対して振動振幅が変動し、複数の振動数成分を含む時刻歴波である。このような基準振動は、例えば、地震動を模擬する時刻歴波である。
【0050】
続いて建屋モデル取得部332は、解析モデルデータベース410から建屋4に対応する建屋モデル414を取得する(ステップS111)。本実施形態では、
図1に示すように、地面2上に立設された2つの建屋4a、4bに対応する建屋モデル414が取得される。
【0051】
続いて床面時刻歴加速度算出部334は、ステップS110で取得された基準振動を、ステップS111で取得された建屋モデル414に入力することにより、床面kにおける床面時刻歴加速度Ak(t)を算出する(ステップS112)。これにより、基準振動が建屋モデル4に入力された際における床面kの加速度挙動が、床面時刻歴加速度Ak(t)として得られる。
尚、ステップS112で算出された床面時刻歴加速度Ak(t)は、床面時刻歴加速度データベース422に適宜読み出し可能に格納される。
【0052】
続いて一自由度系振動子モデル取得部336は、解析モデルデータベース410から一自由度系振動子モデルを取得する(ステップS113)。一自由度系振動子モデルは、例えば、構造評価対象の特性に対応する任意の固有振動数を有する一自由度振動系モデルであり、解析モデルデータベース410に予め格納されている。例えば地震動に対する構造評価を行う場合、地震動に含まれる主成分である1~数10Hzの帯域に含まれる固有振動数をそれぞれ有する複数の一自由度系振動子モデルが取得される。
【0053】
続いて床応答スペクトル演算部338は、ステップS112で算出した各床面kに対応する床面時刻歴加速度Ak(t)を、ステップS113で取得した所定帯域に含まれる様々な固有振動数を有する一自由度系振動子モデルに入力することにより、各一自由度系振動子モデルの固有振動数にそれぞれ対応する複数の時刻歴応答加速度RAk(t)を求める(ステップS114)。そしてステップS114で求められた複数の時刻歴応答加速度RAk(t)の各々において、最大加速度RAkmax(絶対値が最大の加速度)を特定する(ステップS115)。そしてステップS115で特定された最大加速度RAkmaxを、固有振動数fに対してプロットすることにより、床面kの床応答スペクトルが作成される(ステップS116)。
【0054】
図10Aは
図9のステップS114で求められる時刻歴応答加速度RA
k(t)の一例であり、
図10Bは
図10Aの時刻歴応答加速度RA
k(t)から得られる床応答スペクトルの一例である。
図10Aでは、様々な固有振動数fに対応する時刻歴応答加速度RA
k(t)のうち、固有振動数f1に対応する時刻歴応答加速度RA
k1(t)と、固有振動数f2に対応する時刻歴応答加速度RA
k2(t)と、が代表的に示されている。時刻歴応答加速度RA
k1(t)では最大加速度RA
k1maxが特定され、時刻歴応答加速度RA
k2(t)では最大加速度RA
k2maxが特定される。このように特定された最大加速度RA
kmaxは、対応する固有振動数fに対してプロットされることにより、
図10Bに示される床応答スペクトルが得られる。
【0055】
このような床応答スペクトルは、各床面k、lについてそれぞれ算出され(ステップS117:YES)、各床面k、lに関連付けて床応答スペクトルデータベースに格納される(ステップS118)。
【0056】
再び
図7に戻って、
図6の応答算出部326は、ステップS103で床応答スペクトル取得部324によって取得された床応答スペクトルを用いて、構造物1の各振動モードのそれぞれに対応する応答値を支持点への入力毎に求める(ステップS104)。すなわち、ステップS102の固有値解析によって特定される固有振動数に対応する各振動モードについて、構造物1が支持される各床面k、lからの加振に対する応答値が、モーダル応答
qR
ikとしてそれぞれ求められる。
【0057】
(高次応答
qR
(n+1)kの算出方法)
続いて高次応答算出部304による高次応答
qR
(n+1)kの算出について、具体的に説明する。
図11は
図3の高次応答算出部304の内部構成を機能的に示すブロック図であり、
図12は
図3の高次応答算出部304によって実施される高次応答
qR
(n+1)kの算出方法を示すフローチャートである。
【0058】
図11に示すように、高次応答算出部304は、構造モデル取得部340と、固有値解析部341と、基準振動取得部342と、建屋モデル取得部343と、床面時刻歴加速度算出部344と、応答算出部345とを備える。構造モデル算出部340は、前述の構造モデル取得部320(
図6を参照)と同様に、解析モデルデータベース410から構造物1に対応する構造モデルを取得する。固有値解析部341は、前述の固有値解析部322(
図6を参照)と同様に、構造モデル取得部340で取得された構造モデルに基づいて構造物1の固有値解析を行う。基準振動取得部342は、前述の基準振動取得部330(
図8を参照)と同様に、基準振動を取得する。建屋モデル取得部343は、前述の建屋モデル取得部332(
図8を参照)と同様に、建屋モデル414を取得する。床面時刻歴加速度算出部344は、前述の床面時刻歴加速度算出部334(
図8を参照)と同様に、床面時刻歴加速度A
k(t)を算出する。応答算出部345は、各入力に対応する計m個の高次応答
qR
(n+1)kを算出する。
【0059】
図12に示すように、まず構造モデル取得部340は、構造物1に対応する構造モデル412を取得する(ステップS201)。具体的には、構造モデル取得部340は、解析モデルデータベース410にアクセスし、解析モデルデータベース410に予め格納された各解析モデルから、構造評価対象となる構造物1に対応する構造モデルを検索して取得する。
【0060】
続いて固有値解析部341は、ステップS201で取得された構造モデル412について固有値解析を行う(ステップS202)。ステップS202では、例えば構造モデル412を解析することにより、構造物1の各振動モードを特定するための固有振動数や固有ベクトルが求められる。
【0061】
一方で、基準振動取得部342は、基準振動を取得する(ステップS203)。基準振動は、地面2(
図1を参照)への入力振動に対応する振動であり、時間に対して振動振幅が変動し、複数の振動数成分を含む時刻歴波である。このような基準振動は、例えば、地震動を模擬する時刻歴波である。
【0062】
続いて建屋モデル取得部343は、解析モデルデータベース410から建屋4に対応する建屋モデル414を取得する(ステップS204)。本実施形態では、
図1に示すように、地面2上に立設された2つの建屋4a、4bに対応する建屋モデル414が取得される。
【0063】
続いて床面時刻歴加速度算出部344は、ステップS203で取得された基準振動を、ステップS204で取得された建屋モデル414に入力することにより、床面kにおける床面時刻歴加速度Ak(t)を算出する(ステップS205)。これにより、基準振動が建屋モデル4に入力された際における床面kの加速度挙動が、床面時刻歴加速度Ak(t)として得られる。
【0064】
尚、
図12ではステップS201~S202の後に、ステップS203~S205が実施されるように述べたが、ステップS201~S202の前に、ステップS203~S205を実施してもよいし、ステップS201~S202とステップS203~S205とを同時に(並行して)実施してもよい。
【0065】
続いて応答算出部345は、床面k上の機器・配管系の最大応答(全節点の変位、部材力等)を、高次応答qR(n+1)kとして算出する(ステップS206)。このような高次応答qR(n+1)kの算出は、例えば、ミッシングマス解析により行うことができる。
【0066】
このように高次応答算出部304では、構造物1に対応する構造モデルである建屋モデル414に基準振動を入力して得られる床面時刻歴加速度Ak(t)に基づいて高次応答qR(n+1)kを好適に算出できる。
【0067】
(建屋変位応答
qR
(n+2)kの算出方法)
続いて建屋変位応答算出部306による建屋変位応答
qR
(n+2)kの算出について、具体的に説明する。
図13は
図3の建屋変位応答算出部306の内部構成を機能的に示すブロック図であり、
図14は
図3の建屋変位応答算出部306によって実施される建屋変位応答
qR
(n+2)kの算出方法を示すフローチャートである。
【0068】
図13に示すように、建屋変位応答算出部306は、基準振動取得部350と、建屋モデル取得部351と、床面時刻歴変位算出部352と、応答算出部353と、構造モデル取得部354とを備える。基準振動取得部350は、前述の基準振動取得部330(
図8を参照)、342(
図11を参照)と同様に、基準振動を取得する。建屋モデル取得部351は、前述の建屋モデル取得部332(
図8を参照)、343(
図11を参照)と同様に、建屋モデル414を取得する。床面時刻歴変位算出部352は、基準振動取得部350で取得された基準振動、及び、建屋モデル取得部351で取得された建屋モデルに基づいて、床面時刻歴変位D
k(t)を算出する。応答算出部353は、各入力に対応する計m個の建屋変位応答
qR
(n+2)kを算出する。
【0069】
図14に示すように、まず基準振動取得部350は、基準振動を取得する(ステップS301)。基準振動は、地面2(
図1を参照)への入力振動に対応する振動であり、時間に対して振動振幅が変動し、複数の振動数成分を含む時刻歴波である。このような基準振動は、例えば、地震動を模擬する時刻歴波である。
【0070】
続いて建屋モデル取得部351は、解析モデルデータベース410から建屋4に対応する建屋モデル414を取得する(ステップS302)。本実施形態では、
図1に示すように、地面2上に立設された2つの建屋4a、4bに対応する建屋モデル414が取得される。
【0071】
続いて床面時刻歴変位算出部352は、ステップS301で取得された基準振動を、ステップS302で取得された建屋モデル414に入力することにより、床面kにおける床面時刻歴変位Dk(t)を算出する(ステップS303)。これにより、基準振動が建屋モデル4に入力された際における床面kの変位挙動が、床面時刻歴変位Dk(t)として得られる。
尚、ステップS303で算出された床面時刻歴変位Dk(t)は、床面時刻歴変位データベース424に適宜読み出し可能に格納される。
【0072】
続いて構造モデル取得部354は、構造モデルを取得し(ステップS304)、応答算出部353は、ステップS303で算出された床面時刻歴変位Dk(t)を、ステップS304で取得された構造モデルに入力することにより、床面k上の機器・配管系の建屋変位入力解析による最大応答(全節点の変位、部材力等)を、建屋変位応答qR(n+2)kとして算出する(ステップS305)。
【0073】
このように建屋変位応答算出部306では、構造物1に対応する構造モデルである建屋モデル414に基準振動を入力して得られる床面時刻歴変位Dk(t)に基づいて建屋変位応答qR(n+2)kを好適に算出できる。
【0074】
(相関係数ρ
ikjlの算出方法)
次に相関係数ρ
ikjlの具体的内容について、メインサーバ300によって相関係数ρ
ikjlを算出する場合を例に説明する。
図15は相関係数の算出に関するメインサーバ300の機能的構成を示すブロック図であり、
図16は相関係数ρ
ikjlの算出方法を工程毎に示すフローチャートである。
【0075】
メインサーバ300は、
図15に示すように、基準振動取得部360と、建屋モデル取得部361と、床面時刻歴加速度算出部362と、床面時刻歴変位算出部363と、固有値解析部364と、一自由度系振動子モデル取得部365と、動的応答算出部366と、相関係数演算部367と、を備える。基準振動取得部360は、前述の基準振動取得部330(
図8を参照)、342(
図11を参照)、350(
図13を参照)と同様に、基準振動を取得する。建屋モデル取得部361は、前述の建屋モデル取得部332(
図8を参照)、343(
図11を参照)、351(
図13を参照)と同様に、建屋モデル414を取得する。床面時刻歴加速度算出部362は、前述の床面時刻歴加速度算出部344(
図11を参照)と同様に、床面時刻歴加速度A
k(t)を算出する。床面時刻歴変位算出部363は、前述の床面時刻歴変位算出部352(
図13を参照)と同様に、床面時刻歴変位D
k(t)を算出する。固有値解析部364は、前述の固有値解析部322(
図6を参照)、341(
図11を参照)と同様に、構造モデル取得部340で取得された構造モデルに基づいて構造物1の固有値解析を行う。一自由度系振動子モデル取得部365は、前述の一自由度系振動子モデル取得部336(
図8を参照)と同様に、解析モデルデータベース410から一自由度系振動子モデルを取得する。動的応答算出部366は、固有値解析部364の解析結果、一自由度系振動子モデル取得部365で取得された一自由度系振動子モデル、及び、床面時刻歴加速度算出部362で算出された床面時刻歴加速度に基づいて動的応答を算出する。相関係数演算部367は、床面時刻歴加速度算出部362で算出された床面時刻歴加速度A
k(t)、床面時刻歴変位算出部363で算出された床面時刻歴変位D
k(t)、及び、動的応答算出部366で算出された動的応答に基づいて、相関係数ρ
ikjlを演算する。
尚、
図15に示す各機能ブロックは、以下に説明する相関係数の算出方法の各工程に対応するように規定した一例であり、各機能ブロックが統合されていてもよいし、更に細分化されていてもよい。
【0076】
図16に示すように、まず基準振動取得部360は、基準振動を取得する(ステップS401)。基準振動は、地面2(
図1を参照)への入力振動に対応する振動であり、時間に対して振動振幅が変動し、複数の振動数成分を含む時刻歴波である。このような基準振動は、例えば、地震動を模擬する時刻歴波である。
【0077】
続いて建屋モデル取得部361は、解析モデルデータベース410から建屋4に対応する建屋モデル414を取得する(ステップS402)。本実施形態では、
図1に示すように、地面2上に立設された2つの建屋4a、4bに対応する建屋モデル414が取得される。
【0078】
続いて床面時刻歴加速度算出部362及び床面時刻歴変位算出部363は、ステップS401で取得された基準振動を、ステップS402で取得された建屋モデル414に入力することにより、床面kにおける床面時刻歴加速度Ak(t)、及び、床面時刻歴変位Dk(t)をそれぞれ算出する(ステップS403,404)。これにより、基準振動が建屋モデル414に入力された際における床面kの加速度挙動が、床面時刻歴加速度Ak(t)及び、床面時刻歴変位Dk(t)として得られる。
【0079】
続いて固有値解析部364は構造モデルについて固有値解析を行うことによって、固有値解析結果を取得する(ステップS405)。ステップS405では、例えば構造モデルを解析することにより、構造物1の各振動モードを特定するための固有振動数や固有ベクトルが求められる。そして一自由度系振動子モデル取得部365は解析モデルデータベース410から一自由度系振動子モデルを取得し(ステップS406)、動的応答算出部366は、固有値解析部364の解析結果、一自由度系振動子モデル取得部365で取得された一自由度系振動子モデル、及び、床面時刻歴加速度算出部362で算出された床面時刻歴加速度に基づいて振動モード床面毎の動的応答を算出する(ステップS407)。
【0080】
続いて相関係数算出部367は、構造物1の動的応答及び静的応答間の相関を示す相関係数ρ
ikjlを算出する(ステップS408)。モーダル応答の時刻歴応答は動的応答算出部366で算出される時刻歴応答に比例し、高次応答の時刻歴応答は応答の増幅が無いため床面時刻歴加速度算出部362で算出される床面時刻歴加速度に比例し、建屋変位応答の時刻歴応答は静的な応答であることから床面時刻歴変位算出部363で算出される床面時刻歴変位に比例する。従って、i次振動モード及び床面kの入力振動に対応する時刻歴応答(モーダル応答に比例)をX
ik(t)(ここで1≦i≦n)とし、床面kにおける床面時刻歴加速度(高次応答に比例)をX
(n+1)k(t)、床面kにおける床面時刻歴変位(建屋変位応答に比例)をX
(n+2)k(t)とすると、1≦i≦n+2において、X
ik(t)とX
jl(t)の相関係数ρ
ikjlは次式により求められる。
【0081】
このような相関係数ρikjlの算出は、総数mの全入力(全床面の全加速度・全変位)による総数(n+2)の動的応答、高次応答、建屋変位応答からなる総数m×(n+2)の全応答間について繰り返し行われた後(ステップS409:YES)、相関係数ρikjlの各々を、各振動モード、及び、床面k、lに関連付けて相関係数データベース430に格納する(ステップS410)。
【0082】
以上説明したように上述の実施形態によれば、構造物1に単一又は複数の入力振動が入力された際の応答値として、カットオフ振動数未満の振動数領域における振動モードに対応するモーダル応答qRikに加えて、高次応答qR(n+1)k又は変位応答qR(n+2)kの少なくとも一方が算出される。これらの応答値は相関係数を用いて合成され、合成応答に基づいた構造解析が行われる。相関係数によって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答qRikに加えて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答qR(n+1)k、又は、静的応答である変位応答qR(n+2)kの少なくとも一方が含まれる。このようにモーダル応答qRikだけでなく、高次応答qR(n+1)kや変位応答qR(n+2)kを考慮した合成応答を求めることで、優れた解析精度を得ることができる。また、これらの応答値を合成する際に用いられる相関係数を、各応答値に比例する複数の時刻歴応答同士の相関として求めることで、従来のSRSS法やABS法による合成に比べて、評価が過大又は過小となることを効果的に抑えることができる。
【0083】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0084】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0085】
(1)本開示の一実施形態に係る構造評価方法は、
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価方法であって、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出工程と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する複数の時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出工程と、
を備える。
【0086】
上記(1)の態様によれば、多自由度系構造物に単一又は複数の入力振動が入力された際の応答値として、カットオフ振動数未満の振動数領域における振動モードに対応するモーダル応答に加えて、高次応答又は変位応答の少なくとも一方が算出される。これらの応答値は相関係数を用いて合成され、合成応答に基づいた構造解析が行われる。相関係数によって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答に加えて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答、又は、静的応答である変位応答の少なくとも一方が含まれる。このようにモーダル応答だけでなく、高次応答や変位応答を考慮した合成応答を求めることで、優れた解析精度を得ることができる。また、これらの応答値を合成する際に用いられる相関係数を、各応答値に比例する複数の時刻歴応答同士の相関として求めることで、従来のSRSS法やABS法による合成に比べて、評価が過大又は過小となることを効果的に抑えることができる。
【0087】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記応答値算出工程では、前記複数の応答値として、前記モーダル応答と、前記高次応答とを算出する。
【0088】
上記(2)の態様によれば、相関係数によって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答に加えて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答が含まれる。このようにモーダル応答だけでなく、高次応答を考慮した合成応答を求めることで、例えば多自由度系構造物が剛的に支持されている場合のように高次応答による影響が大きな場合においても優れた解析精度を得ることができる。
【0089】
(3)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記応答値算出工程では、前記複数の応答値として、前記モーダル応答と、前記変位応答とを算出する。
【0090】
上記(3)の態様によれば、相関係数によって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答に加えて、静的応答である変位応答が含まれる。このようにモーダル応答だけでなく、変位応答を考慮した合成応答を求めることで、例えば多自由度系構造物を支持する複数の支持点間に相対的な変位が生じる場合のように変位応答による影響が大きな場合においても優れた解析精度を得ることができる。
【0091】
(4)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記応答値算出工程では、前記複数の応答値として、前記モーダル応答、前記高次応答、及び、前記変位応答を算出する。
【0092】
上記(4)の態様によれば、相関係数によって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答に加えて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答、及び、静的応答である変位応答の両方が含まれる。このようにモーダル応答だけでなく、高次応答や静的応答を考慮した合成応答を求めることで、より優れた解析精度を得ることができる。
【0093】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記高次応答は、前記多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる前記複数の支持点にそれぞれ対応する複数の時刻歴加速度に基づいて算出される。
【0094】
上記(5)の態様によれば、多自由度系構造物の構造モデルに対してカットオフ振動数以上の振動数領域を含む基準振動を入力して得られる時刻歴加速度に基づいて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答を適切に算出できる。
【0095】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記変位応答は、前記多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる前記複数の支持点にそれぞれ対応する複数の時刻歴変位に基づいて算出される。
【0096】
上記(6)の態様によれば、多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる時刻歴変位に基づいて、静的応答である変位応答を適切に算出できる。
【0097】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記モーダル応答及び前記高次応答に関する前記相関係数は、前記時刻歴応答として、前記多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる時刻歴加速度を用いて算出される。
【0098】
上記(7)の態様によれば、各応答値を合成するための相関係数のうちモーダル応答や高次応答に関する相関係数は、これらが動的応答であることから、多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる時刻歴加速度に基づいて算出できる。
【0099】
(8)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記変位応答に関する前記相関係数は、前記時刻歴応答として、前記多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる時刻歴変位を用いて算出される。
【0100】
上記(8)の態様によれば、各応答値を合成するための相関係数のうち変位応答に関する相関係数は、変位応答が静的応答であることから、多自由度系構造物の構造モデルに基準振動を入力して得られる時刻歴変位に基づいて算出できる。
【0101】
(9)一態様に係る構造評価プログラムは、
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価プログラムであって、コンピュータを用いて、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出工程と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する複数の時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出工程と、
を実行可能である。
【0102】
上記(9)の態様によれば、多自由度系構造物に単一又は複数の入力振動が入力された際の応答値として、カットオフ振動数未満の振動数領域における振動モードに対応するモーダル応答に加えて、高次応答又は変位応答の少なくとも一方が算出される。これらの応答値は相関係数を用いて合成され、合成応答に基づいた構造解析が行われる。相関係数によって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答に加えて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答、又は、静的応答である変位応答の少なくとも一方が含まれる。このようにモーダル応答だけでなく、高次応答や変位応答を考慮した合成応答を求めることで、優れた解析精度を得ることができる。また、これらの応答値を合成する際に用いられる相関係数を、各応答値に比例する複数の時刻歴応答同士の相関として求めることで、従来のSRSS法やABS法による合成に比べて、評価が過大又は過小となることを効果的に抑えることができる。
【0103】
(10)一態様に係る構造評価装置は、
複数の支持点から異なる入力振動又は単一の入力振動を受ける多自由度系構造物の構造評価装置であって、
(i)カットオフ振動数未満の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応するモーダル応答と、(ii)前記カットオフ振動数以上の振動数領域における前記多自由度系構造物の振動モードに対応する高次応答、又は、前記複数の支持点間の変位応答の少なくとも一方とを含む複数の応答値を算出するための応答値算出部と、
前記複数の応答値にそれぞれ比例する複数の時刻歴応答同士の相関を示す相関係数を用いて、前記複数の応答値の合成応答を算出するための合成応答算出部と、
を備える。
【0104】
上記(10)の態様によれば、多自由度系構造物に単一又は複数の入力振動が入力された際の応答値として、カットオフ振動数未満の振動数領域における振動モードに対応するモーダル応答に加えて、高次応答又は変位応答の少なくとも一方が算出される。これらの応答値は相関係数を用いて合成され、合成応答に基づいた構造解析が行われる。相関係数によって合成される複数の応答値には、カットオフ振動数未満の振動数領域における動的応答であるモーダル応答に加えて、カットオフ振動数以上の振動数領域における動的応答である高次応答、又は、静的応答である変位応答の少なくとも一方が含まれる。このようにモーダル応答だけでなく、高次応答や変位応答を考慮した合成応答を求めることで、優れた解析精度を得ることができる。また、これらの応答値を合成する際に用いられる相関係数を、各応答値に比例する複数の時刻歴応答同士の相関として求めることで、従来のSRSS法やABS法による合成に比べて、評価が過大又は過小となることを効果的に抑えることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 構造物
2 地面
4 建屋
100 構造評価システム
200 通信ネットワーク
300 メインサーバ
302 モーダル応答算出部
304 高次応答算出部
306 建屋変位応答算出部
308 相関係数取得部
310 応答合成部
312 出力部
400 データサーバ
410 解析モデルデータベース
420 床応答スペクトルデータベース
422 床面時刻歴加速度データベース
424 床面時刻歴変位データベース
430 相関係数データベース
500 ユーザ端末