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  • 特開-液式鉛蓄電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037324
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】液式鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/56 20060101AFI20230308BHJP
   H01M 4/14 20060101ALI20230308BHJP
   H01M 10/06 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
H01M4/56
H01M4/14 Q
H01M10/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143988
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明尋
【テーマコード(参考)】
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA06
5H028EE02
5H028EE04
5H028HH00
5H028HH03
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050EA01
5H050EA10
5H050EA23
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】正極活物質を含む正極合剤が集電板に保持された正極板を有する液式鉛蓄電池において、正極合剤の耐久性を損なうことなく正極利用率を向上できる新しい技術を提供する。
【解決手段】本発明の液式鉛蓄電池は、セル室を有する電槽41と、セル室に収納された極板群1と、セル室に注入された電解液と、を備え、電解液は希硫酸であり、極板群は、交互に配置された複数枚の正極板10および負極板20と、正極板10と負極板20との間に配置されたセパレータと、を有し、正極板10は、正極活物質を含む正極合剤が集電板に保持されたものであり、正極活物質は正方晶系二酸化鉛を含み、正方晶系二酸化鉛のc軸方向の格子定数cとa軸方向の格子定数aとが0.6822≦c/a≦0.6830の関係を満たし、正方晶系二酸化鉛の格子体積が83.25Å3以上83.38Å3以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル室を有する電槽と、前記セル室に収納された極板群と、前記セル室に注入された電解液と、を備え、前記電解液は希硫酸であり、
前記極板群は、交互に配置された複数枚の正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、を有し、
前記正極板は、正極活物質を含む正極合剤が集電板に保持されたものであり、
前記正極活物質は正方晶系二酸化鉛を含み、
前記正方晶系二酸化鉛のc軸方向の格子定数cとa軸方向の格子定数aとが0.6822≦c/a≦0.6830の関係を満たし、前記正方晶系二酸化鉛の格子体積が83.25Å3以上83.38Å3以下である液式鉛蓄電池。
【請求項2】
前記正方晶系二酸化鉛のc軸方向の格子定数cとa軸方向の格子定数aとが0.6824≦c/a≦0.6827の関係を満たす請求項1に記載の液式鉛畜電池。
【請求項3】
前記電解液は、希硫酸に20mmol/L以上200mmol/L以下のアルミニウムイオンまたは25mmol/L以上250mmol/L以下のマグネシウムイオンを含むものである請求項1または2に記載の液式鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液式鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な液式鉛蓄電池は、セル室を有する電槽と、セル室に収納された極板群と、セル室に注入された電解液と、を備えている。極板群は、交互に配置された複数枚の正極板および負極板と、正極板と負極板との間に配置されたセパレータと、を有する。正極板は、正極活物質を含む正極合剤が集電板に保持されたものであり、負極板は、負極活物質を含む負極合剤が集電板に保持されたものである。電解液としては希硫酸が使用されている。このような液式鉛蓄電池は自動車用バッテリーなどとして広く使用されている。
【0003】
近年、アイドリングストップ車の普及に伴い、液式鉛蓄電池の更なる高性能化が求められている。特に、正極活物質の利用率(以下、「正極利用率」とも称する)を高めることは、放電容量を高くすることだけでなく、鉛の使用量の削減することも可能になるため、軽量化及びコスト削減の効果も得られることから、当業者による様々なアプローチからの研究開発が進められている。
正極利用率を高くする方法としては、正極活物質を含む正極合剤の密度を下げる方法が知られている。正極合剤の密度を下げることで、正極合剤の細孔体積が増加することにより、活物質と電解液の接触を増やすことができるため、正極利用率が向上する。
【0004】
正極活物質は、充電状態の二酸化鉛と放電状態の硫酸鉛とで一分子当たりの体積が異なるため、充放電の度に膨張と収縮を繰り返す。正極合剤は、このような膨張と収縮の繰り返しに伴い、徐々に粒子同士の結合が破壊されて流動性を帯び(軟化し)、最終的に正極板から脱落する。そして、正極合剤の密度が低下すると、この現象(正極合剤の軟化・脱落)が進行しやすくなり、液式鉛蓄電池の寿命性能を著しく低下させることがある。そのため、このような正極合剤の軟化・脱落を抑制して耐久性を保持しながら、正極利用率を向上させる方法が提案されている。
【0005】
特許文献1には、液式鉛蓄電池用正極の未化成活物質中の三塩基性硫酸鉛量を25~30質量%、金属鉛量を5質量%未満、活物質密度を3.8×103kg/m3以下とすることが記載されている。
特許文献2には、10~20重量%の鉛丹を含む鉛粉と、水と、希硫酸とを練合してペーストを作製し、次いで、ペーストを4.3~5.3g/mLの充填密度で格子体に塗着することが記載されている。
特許文献3には、未化成状態でのペースト式正極板の活物質層内に、結晶粒径の大きな四塩基性硫酸鉛を生成させた後、化成することによって長寿命化をはかるとともに、炭素粉末を含有させて活物質の利用率を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4376514号公報
【特許文献2】特開2002-198041号公報
【特許文献3】特開2001-229920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、正極合剤の密度を下げて正極利用率を高くする方法では、密度を下げることが耐久性を低くすることに繋がるため、添加剤を使用するなどの対応が必須であり、正極合剤の耐久性と正極利用率向上とを両立させる方法には改善の余地がある。
本発明の課題は、正極活物質を含む正極合剤が集電板に保持された正極板を有する液式鉛蓄電池において、正極合剤の耐久性を損なうことなく正極利用率を向上できる新しい技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、下記の構成(a)~(c)を備えた液式鉛蓄電池を提供する。
(a)セル室を有する電槽と、前記セル室に収納された極板群と、前記セル室に注入された電解液と、を備えている。前記電解液は希硫酸である。前記極板群は、交互に配置された複数枚の正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、を有する。前記正極板は、正極活物質を含む正極合剤が集電板に保持されたものである。
(b)前記正極活物質は正方晶系二酸化鉛を含む。
(c)前記正方晶系二酸化鉛のc軸方向の格子定数cとa軸方向の格子定数aとが0.6822≦c/a≦0.6830の関係を満たし、前記正方晶系二酸化鉛の格子体積が83.25Å3以上83.38Å3以下である。
なお、正方晶系二酸化鉛の空間群はP42/mnmであり、格子定数はa=b≠cと定義した。本明細書ではc/a値と記載しているが、格子定数aとbの値は同じであるため、c/bと捉えても良い。また、構成体積はa×b×cで表される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正極活物質に含まれる正方晶系二酸化鉛の格子定数比と格子体積を特定の範囲のものとすることにより、正極合剤の耐久性を損なうことなく正極利用率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の液式鉛蓄電池の構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0012】
本実施形態の液式鉛蓄電池は、図1に示すように、正極板10と負極板20とがリブ付きのセパレータ30を介して複数枚交互に積層された極板群1を備えている。極板群1は、その積層方向が水平方向に沿うように(すなわち、正極板10及び負極板20の板面が鉛直方向に沿うように)、図示しない電解液とともに電槽41のセル室内に収容され、電槽41のセル室内で電解液に浸漬されている。
すなわち、本実施形態の液式鉛蓄電池は、極板群1と、極板群1を電解液とともに収容するセル室を備えた電槽41と、を有し、一つのセル室に一つの極板群1が収容され、極板群1を構成する正極板10の枚数は負極板20の枚数以下となっている。なお、正極板10の枚数は、負極板20の枚数と同じにしても良いし、負極板20の枚数より多くしても良い。
【0013】
正極板10は、正極集電板と正極活物質を含む正極合剤とを有する。正極集電板は、長方形の格子状部と格子状部に連続する耳部11とを有し、格子状部に正極合剤が保持されたものである。正極活物質は正方晶系二酸化鉛を含み、この正方晶系二酸化鉛のc軸方向の格子定数cとa軸方向の格子定数aとが0.6822≦c/a≦0.6830の関係を満たし、この正方晶系二酸化鉛の格子体積は83.25Å3以上83.38Å3以下である。
負極板20は、負極集電板と負極活物質を含む負極合剤とを有し、負極活物質は金属鉛を含有する。負極集電板は、長方形の格子状部と格子状部に連続する耳部21とを有し、格子状部に負極合剤が保持されたものである。
正極合剤および負極合剤は、それぞれの格子状部の開口部内に充填されているとともに、格子状部の両板面に存在する。
【0014】
正極板10を構成する正極集電板は、Pb-Sn系合金を用い重力鋳造法で形成されたものである。負極板20を構成する負極集電板は、Pb-Ca系合金を用い連続鋳造法で形成されたものである。正極集電板および負極集電板のその他の製造方法としては、鉛合金製圧延板に対する打抜法、鉛合金製圧延板を用いたエキスパンド法が挙げられる。セパレータ30は、例えば、樹脂、ガラス繊維等からなる多孔質の膜状体であり、平板状のベース(膜状体)に、ベース面に対して垂直な方向に突出する襞状のリブが形成されていてもよい。
【0015】
複数枚の正極板10の耳部11は正極ストラップ13で連結され、複数枚の負極板20の耳部21は負極ストラップ23で連結されている。そして、正極ストラップ13は正極端子15の一端に接続され、負極ストラップ23は負極端子25の一端に接続されており、正極端子15の他端及び負極端子25の他端が、電槽41の開口部を閉塞する蓋43を貫通して、電槽41と蓋43からなる液式鉛蓄電池のケース体の外部に露出している。
電解液は希硫酸に20mmol/L以上200mmol/L以下のアルミニウムイオンまたは25mmol/L以上250mmol/L以下のマグネシウムイオンを含むものであり、電解液の硫酸濃度は1280g/L以上1300g/L以下(20℃換算の比重は1.28以上1.30以下)である。
【0016】
この実施形態の液式鉛蓄電池は、正極活物質に含まれる正方晶系二酸化鉛の格子定数比と格子体積が、上記特定の範囲のものとされていることにより、正極合剤の耐久性と正極利用率の両方に優れたものとなる。また、電解液は希硫酸に20mmol/L以上200mmol/L以下のアルミニウムイオンまたは25mmol/L以上250mmol/L以下のマグネシウムイオンを含むことにより、これらのイオンを含まない場合と比較して、充電受入れ性が向上するという効果が得られるため、正極板および負極板の劣化要因となるサルフェーションを抑制することができる。
【実施例0017】
<試験電池の作製>
実施形態の液式鉛蓄電池と同じ構造の液式鉛蓄電池として、サンプルNo.1~No.10の液式鉛蓄電池を二体ずつ作製した。
具体的には、JIS規格B20サイズの電槽を構成するセル室を一つだけ有する電槽を用意し、そのセル室に一つの極板群を収納して、セル室を一つだけ有する液式鉛蓄電池(動作電圧:2V、定格容量:32Ah)を作製した。また、サンプルNo.1~No.10の液式鉛蓄電池は、使用する正極ペーストを変えた以外は全て同じ構成とした。
先ず、正極集電板および負極集電板として、Pb-Sn系合金製のJIS規格B20サイズ用集電板を作製した。
次に、正極集電板の格子状部には、サンプル毎に下記の方法で作製した正極ペーストを充填した後、乾燥、熟成工程を行って、化成前の正極板を得た。
【0018】
No.1で使用した正極ペーストは、以下の方法で作製したものである。先ず、一酸化鉛を主成分とする鉛粉2000gに、水325gと比重1.37の硫酸150gを添加して練り合わせる。次に、得られた水練り物に従来と同様の必要な添加剤を添加して練り合わせることにより、正極合剤ペーストを得た。
No.2で使用した正極ペーストは、水の添加量を350g、硫酸の添加量を175gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
No.3で使用した正極ペーストは、水の添加量を275gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
No.4で使用した正極ペーストは、硫酸の添加量を200gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
No.5で使用した正極ペーストは、硫酸の添加量を225gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
【0019】
No.6で使用した正極ペーストは、水の添加量を300g、硫酸の添加量を175gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
No.7で使用した正極ペーストは、硫酸の添加量を175gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
No.8で使用した正極ペーストは、水の添加量を300g、硫酸の添加量を200gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
No.9で使用した正極ペーストは、水の添加量を275g、硫酸の添加量を200gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
No.10で使用した正極ペーストは、水の添加量を275g、硫酸の添加量を225gとした以外はNo.1と同じ方法で作製したものである。
【0020】
負極集電板の格子状部には、下記の組成物を用い通常の方法で作製した鉛ペーストを充填した。負極活物質ペースト用の組成物は、鉛粉、ポリエステル繊維からなるカットファイバー、カーボンブラック、リグニン、硫酸バリウムを混合した組成物である。充填後に通常の処理を行って、化成前の負極板を得た。
次に、化成前の負極板をポリエチレン製の袋状セパレータに入れ、化成前の負極板が入ったセパレータ7枚と化成前の正極板6枚を交互に積層して、サンプル毎に二つの積層体を得た。次に、積層体の化成前の正極板の耳部同士および負極板の耳部同士をそれぞれガスバーナーで溶接して、サンプル毎に二つの極板群を得た。
【0021】
次に、用意した電槽のセル室(空間体積:706.86cm3)内に一つの極板群を収納した後、比重1.23の希硫酸に硫酸アルミニウムを32g/Lの割合で含有させた電解液を、370mL(極板群が全て浸漬状態となる量)入れた。この電解液中のアルミニウムイオン濃度は、93.5mmol/L(=32/342.14=0.0935mol/L)である。
次に、正極理論容量の230%の充電電気量で電槽化成を行うことで、No.1~No.10の液式鉛蓄電池を二体ずつ得た。
【0022】
<正極活物質の結晶構造の特定>
得られた各液式鉛蓄電池の(満充電状態)の各一体をすぐに解体して、先ず、積層体の中央部に配置されていた正極板を水洗、乾燥した後、正極合剤を格子状部から剥離した。次に、剥離した正極合剤を乳鉢で粒径3μm以下に粉砕して粉末試料を得た。得られた粉末試料をバナジウム製の試料ホルダーに充填した。この試料ホルダーを、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCの測定室まで運び、ビームラインBL20(iMATERIA)にセットし、測定最大d値5Åで、最大回折強度が少なくとも10000countsを超えるようにして中性子回折測定を行った。
【0023】
得られた回折データに対し、z-Rietveldソフトウェアを用いたリートベルト解析を行うことにより、正極活物質に含まれる正方晶系二酸化鉛の格子定数の比(c/a)と格子体積(V)を調べた。この解析は、正極活物質に正方晶系と斜方晶系の2相の二酸化鉛が混在していることを想定して、解析値と実測値の差を表す信頼度因子Rwpが10%以下となるまで行った。
なお、回折データの取得は、一般的に使用される粉末X線回折装置を用いることができるが、サンプルホルダーへの充填性や結晶の選択配向の影響が出ないように、デバイシェラー光学系による透過法での測定や、配向等の影響を受けにくい中性子線を利用した測定が望ましい。
【0024】
<正極利用率(正極活物質の利用率)を調べる試験>
得られた各液式鉛蓄電池の別の一体を用いて、以下の方法で正極利用率を調べる試験を行った。
JIS D 5301に則り、各液式鉛蓄電池を25℃の水槽内に設置し、5時間率電流で、終止電圧が10.5Vに到達するまで定電流放電した。この10.5Vに到達した時の放電容量を理論容量で除算して100倍した値を、各液式鉛蓄電池の正極利用率(%)とした。
【0025】
<耐久性を調べる試験>
JIS D 5301 9.5 (b)に記載の重負荷寿命試験に準拠し、満充電の液式鉛蓄電池に対し、周囲温度40℃の環境で放電深度40%まで1時間で放電した後、10時間率電流で放電容量の125%となるまで充電するサイクルを24サイクル繰り返した。25サイクル目の放電は判定放電として、終止電圧である10.2Vに達するまで放電し、その後10時間率電流で放電容量の140%となるまで充電をした。25サイクル経過後、液式鉛蓄電池を取り出し、25サイクルで減水した分の電解液を補水した。この充放電サイクル試験を、25サイクル目の放電時の容量が各液式鉛蓄電池の5時間率容量の50%未満となるまで行った。それまでのサイクル数を寿命とした。
【0026】
これらの試験結果を、各液式鉛蓄電池の正極の構成(ペースト中の水と硫酸の配合、正方晶系二酸化鉛の格子定数比c/aおよび格子体積V)とともに表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1の結果から以下のことが分かる。
正極活物質に含まれる正方晶系二酸化鉛の格子定数比c/aが0.6822以上0.6830以下と、格子体積Vが83.25Å3以上83.38Å3以下の両方を満たすNo.2,No.4,No.6~No.9の液式鉛蓄電池は、正極利用率が44.0%以上で寿命が120サイクル以上であり、正極合剤の耐久性および正極利用率の両方が高いものとなった。
また、格子定数比c/aが0.6824以上0.6827以下と、格子体積Vが83.25Å3以上83.38Å3以下の両方を満たすNo.4,No.6~No.8の液式鉛蓄電池は、正極利用率が45.0%以上で寿命が123サイクル以上であり、正極合剤の耐久性および正極利用率の両方がより高いものとなった。
【0029】
これに対して、格子定数比c/aが0.6822以上0.6830以下と、格子体積Vが83.25Å3以上83.38Å3以下のいずれかを満たさないNo.1,No.3,No.5,No.10の液式鉛蓄電池は、正極利用率44.0%以上と寿命120サイクル以上のいずれかを満たさず、正極合剤の耐久性と正極利用率のどちらかの性能が劣るものであった。
以上のことから、格子定数比c/aが0.6822以上0.6830以下と、格子体積Vが83.25Å3以上83.38Å3以下の両方を満たす正方晶系二酸化鉛を含む正極活物質を使用することで、正極合剤の耐久性を損なうことなく正極利用率を向上できることが確認できた。
【符号の説明】
【0030】
1 極板群
10 正極板
11 正極集電体の耳部
13 正極ストラップ
15 正極端子
20 負極板
21 負極集電体の耳部
23 負極ストラップ
25 負極端子
30 セパレータ
41 電槽
43 蓋
図1