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特開2023-37382電気機械式ブレーキ倍力装置およびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037382
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】電気機械式ブレーキ倍力装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20230308BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B60T13/74 D
B60T7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144087
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
【テーマコード(参考)】
3D048
3D124
【Fターム(参考)】
3D048BB09
3D048BB52
3D048BB59
3D048CC41
3D048HH18
3D048HH53
3D048HH66
3D048HH68
3D048PP02
3D048QQ07
3D048RR01
3D048RR11
3D048RR35
3D124BB01
3D124CC14
3D124CC19
3D124CC52
3D124CC56
3D124DD01
3D124DD09
3D124DD52
3D124DD54
3D124DD56
3D124DD69
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブレーキペダルと連動する制御ロッドと、モーター部により作動するスクリュー部材とが互いに独立して直線運動可能である電気機械式ブレーキ倍力装置において、被検出体の位置が位置センサーの検知範囲外に達した際にも、部品の追加を要することなく制御可能とする。
【解決手段】非通電状態から通電状態に移行した場合に限り、制御ロッド40に装着された被検出体220が位置センサー52により検知されなかったとき、モーター部を強制的に駆動させることでブラケット90に装着された前記位置センサー52を前記被検出体220が検出されるまで前進させて、前記被検出体220が前記位置センサー52の検知範囲を超えて前進していた場合に、前記被検出体220の位置を前記位置センサー52の検知範囲内に復帰させる復帰処理を実行する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルに連結された入力ロッドと、
被検出体と、
前記被検出体が装着されており前記入力ロッドと連動してブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、
前記被検出体の位置を検出することで前記制御ロッドの変位を検出する位置センサーと、
前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、
前記位置センサーから得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、
前記制御ロッドの外周に配置され、外周面にねじ条を形成した筒状のスクリュー部材および内周面に前記ねじ条と螺合するねじ溝を形成した回転部材からなり、前記モーター部と連動する前記回転部材の回転運動を前記スクリュー部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、
前記位置センサーが装着されており前記スクリュー部材の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するブラケットと、
前記ブラケットを付勢して移動後に元の位置に戻すための戻しバネと、
前記制御ロッドおよび前記スクリュー部材の先端側に接続され、前記制御ロッドまたは前記スクリュー部材の直線運動によりピストンが進退動作することで液圧を発生させるマスタシリンダと、を備え、
前記制御ロッドおよび前記スクリュー部材は互いに独立して直線運動可能であり、前記制御ロッドが前記ピストンの前進方向に一定以上移動したときに前記被検出体の位置が前記位置センサーの検知範囲を超える電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
前記モーター部および位置センサーが通電していない状態から通電状態に移行した場合に限り、前記制御ロッドに装着された前記被検出体が前記位置センサーにより検知されなかったとき、前記制御部からの駆動指令により前記モーター部を強制的に駆動させることで前記ブラケットに装着された前記位置センサーを前記被検出体が検出されるまで前記ピストンの前進方向に移動させて、
前記被検出体が前記位置センサーの検知範囲を超えて前記ピストンの前進方向に移動していた場合に、前記被検出体の位置を前記位置センサーの検知範囲内に復帰させる復帰処理を実行することを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項2】
前記復帰処理は、前記モーター部および位置センサーが通電していない状態でブレーキペダルが踏み込まれて前記制御ロッドが前記ピストンの前進方向に移動して前記被検出体の位置が前記位置センサーの検知範囲を超えることで検知されなかったときに限り実行することを特徴とする請求項1記載の電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項3】
前記入力ロッドと、前記制御ロッドと、前記モーター部と、前記回転直動変換部と、前記ブラケットと、前記マスタシリンダとが、全て同軸に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項4】
ブレーキペダルに連結された入力ロッドと、
被検出体と、
前記被検出体が装着されており前記入力ロッドと連動してブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、
前記被検出体の位置を検出することで前記制御ロッドの変位を検出する位置センサーと、
前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、
前記位置センサーから得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、
前記制御ロッドの外周に配置され、外周面にねじ条を形成した筒状のスクリュー部材および内周面に前記ねじ条と螺合するねじ溝を形成した回転部材からなり、前記モーター部と連動する前記回転部材の回転運動を前記スクリュー部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、
前記位置センサーが装着されており前記スクリュー部材の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するブラケットと、
前記ブラケットを付勢して移動後に元の位置に戻すための戻しバネと、
前記制御ロッドおよび前記スクリュー部材の先端側に接続され、前記制御ロッドまたは前記スクリュー部材の直線運動によりピストンが進退動作することで液圧を発生させるマスタシリンダと、を備え、
前記制御ロッドおよび前記スクリュー部材は互いに独立して直線運動可能であり、前記制御ロッドが前記ピストンの前進方向に一定以上移動したときに前記被検出体の位置が前記位置センサーの検知範囲を超える電気機械式ブレーキ倍力装置の制御方法であって、
前記モーター部および位置センサーが通電していない状態から通電状態に移行した場合に限り、ブレーキペダルが踏み込まれていることで前記制御ロッドが前進しており、前記制御ロッドに装着された前記被検出体が前記位置センサーにより検知されなかったとき、前記制御部からの駆動指令により前記モーター部を強制的に駆動させることで前記ブラケットに装着された前記位置センサーを前記被検出体が検出されるまで前記ピストンの前進方向に移動させて、
前記被検出体が前記位置センサーの検知範囲を超えて前記ピストンの前進方向に移動していた場合に、前記被検出体の位置を前記位置センサーの検知範囲内に復帰させる復帰処理を実行することを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置の制御方法。
【請求項5】
前記復帰処理において前記モーター部の駆動開始から一定時間内に前記被検出体が前記位置センサーにより検知されなかった場合、故障判定処理を実行することを特徴とする請求項4記載の電気機械式ブレーキ倍力装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車においてブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅するための電気機械式ブレーキ倍力装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のブレーキ操作を補助するために、ブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅させるブレーキ倍力装置が知られており、例えば特開昭54-90459号公報(特許文献1)に記載された発明のように、エンジンの負圧を利用した真空式ブレーキ倍力装置が一般的に用いられていた。
【0003】
ところで近年、世界各国においてカーボンニュートラルの動きが活発化しており、脱化石燃料の目標を果たすために、電気自動車や燃料電池自動車といったエンジンを動力源として備えない自動車への移行が今後の自動車業界における重要な課題となっている。
【0004】
そうなると、従来のエンジン搭載車と、電気自動車のようなエンジン非搭載車との相違点の一つとして、エンジンを有しないことにより、従来システムで用いられていたエンジンの負圧(吸気管負圧)が発生しないため、負圧を用いた各パーツが使用できなくなる問題が生じる。
【0005】
従って、真空式ブレーキ倍力装置に代わり、且つ自動ブレーキでも使用可能な高い制動力を得ることのできるブレーキ倍力装置が必要とされ、例えば特開2018-199448号公報(特許文献2)、再表2018/097278号公報(特許文献3)に記載された発明のように動力源としてモーター部を備えた電気機械式のブレーキ倍力装置が知られている。
【0006】
これら従来の電気機械式ブレーキ倍力装置によれば、エンジンを有しない車であっても、電力により駆動するモーター部を用いることによってブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅することを可能とすることができる。
【0007】
この電気機械式ブレーキ倍力装置は、ブレーキペダルに連結された入力ロッドと連動する制御ロッドに装着された被検出体の変位を、スクリュー部材と一体に動作するブラケットに装着された位置センサーにより検出することで、ブレーキペダルを踏んだ際にそれを検出してモーター部を駆動させ、モーター部の回転運動をスクリュー部材の直線運動に変換する回転直動変換部によって、ブレーキペダルを踏んだ際の踏力とモーター部の駆動による出力を合わせて、増幅した力によってマスタシリンダのピストンを前進させて液圧を発生させるものであり、且つ、モーター部に通電しない状態(電源OFF時)でもブレーキペダルを踏んだ際の踏力のみでマスタシリンダのピストンを進行可能にするのが一般的である。
【0008】
そのため、前記ブレーキペダルと連動する制御ロッドと前記モーター部により駆動するスクリュー部材は基本的に互いに独立して動作するものであることから、モーター部が通電されていない始動時などにブレーキペダルを踏み込むと、前記制御ロッドは軸方向に直線運動するが、前記スクリュー部材はモーター部が駆動せず移動しないため、前記制御ロッドに装着された被検出体と前記ブラケットに装着された位置センサーの位置関係が大きく離れることになる。
【0009】
ここで、前記スクリュー部材を作動させるモーター部は、前記制御ロッドに装着された被検出体と前記ブラケットに装着された位置センサーの位置関係を一定にするように制御するものであり、被検出体の位置が位置センサーの検知範囲外に達した際にはモーター部の制御を行うことができない事態が生じることになる。
【0010】
そこで、前記制御ロッドに装着された被検出体と前記ブラケットに装着された位置センサーの位置の乖離に規制が必要になり、例えば、特開2010-184699号公報(特許文献4)に記載されたような、係脱可能なクラッチ機構による入力部材と出力部材の係合を行う構造が知られているほか、例えば、図10の概略図に示したようなリンク部材により移動を規制する構造も知られている。
【0011】
この構造は、図10(a)に示したように、制御ロッド40に装着された被検出体46と、スクリュー部材81と一体に直線運動するブラケット90に装着されて前記被検出体46を検知する位置センサー54とを備える電気機械式ブレーキ倍力装置において、前記ブラケット90と一体に動作するリンク部材95を有する構造である。
【0012】
ブレーキペダルが踏み込まれて図10(a)に示した黒矢印の方向に前記制御ロッド40が直線運動すると、図10(b)に示したように前記リンク部材95の当接片96に接することで前記被検出体46と前記位置センサー54の位置関係は所定の範囲内、すなわち前記被検出体46と前記位置センサー54の位置関係は前記制御ロッド40と前記当接片96との隙間が上限の移動範囲になるように規制され、前記被検出体46が検知範囲外へ逸脱してしまう事態を回避することができる。
【0013】
しかしながら、前記従来の電気機械式ブレーキ倍力装置における前記被検出体46と前記位置センサー54の位置の乖離を規制する手段は、構造上の自由度が制限されるとともに、リンク部材を増設する必要があり、特に、モーター部を駆動しないときの前記制御ロッドによるブレーキの範囲が制限されたり、不要な負荷が上乗せさせてしまうなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭54-90459号公報
【特許文献2】特開2018-199448号公報
【特許文献3】再表2018/097278号公報
【特許文献4】特開2010-184699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ブレーキペダルと連動する制御ロッドと、モーター部により作動するスクリュー部材とが互いに独立して直線運動可能である電気機械式ブレーキ倍力装置において、前記被検出体の位置が位置センサーの検知範囲外に達した際にも、部品の追加を要することなく制御可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置は、
ブレーキペダルに連結された入力ロッドと、
被検出体と、
前記被検出体が装着されており前記入力ロッドと連動してブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、
前記被検出体の位置を検出することで前記制御ロッドの変位を検出する位置センサーと、
前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、
前記位置センサーから得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、
前記制御ロッドの外周に配置され、外周面にねじ条を形成した筒状のスクリュー部材および内周面に前記ねじ条と螺合するねじ溝を形成した回転部材からなり、前記モーター部と連動する前記回転部材の回転運動を前記スクリュー部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、
前記位置センサーが装着されており前記スクリュー部材の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するブラケットと、
前記ブラケットを付勢して移動後に元の位置に戻すための戻しバネと、
前記制御ロッドおよび前記スクリュー部材の先端側に接続され、前記制御ロッドまたは前記スクリュー部材の直線運動によりピストンが進退動作することで液圧を発生させるマスタシリンダと、を備え、
前記制御ロッドおよび前記スクリュー部材は互いに独立して直線運動可能であり、前記制御ロッドが前記ピストンの前進方向に一定以上移動したときに前記被検出体の位置が前記位置センサーの検知範囲を超える電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
前記モーター部および位置センサーが通電していない状態から通電状態に移行した場合に限り、前記制御ロッドに装着された前記被検出体が前記位置センサーにより検知されなかったとき、前記制御部からの駆動指令により前記モーター部を強制的に駆動させることで前記ブラケットに装着された前記位置センサーを前記被検出体が検出されるまで前記ピストンの前進方向に移動させて、
前記被検出体が前記位置センサーの検知範囲を超えて前記ピストンの前進方向に移動していた場合に、前記被検出体の位置を前記位置センサーの検知範囲内に復帰させる復帰処理を実行することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、制御ロッドとスクリュー部材とが互いに独立して直線運動する構造であっても追加部品を要することなく、例えば車両等の始動時(電源OFF)などの非通電状態においてブレーキペダルを踏み込むことで前記制御ロッドに装着された前記被検出体が前記位置センサーの検知範囲外である状態で、電源ON操作によって通電状態に移行したとき、復帰処理が実行されるため、非常に効果的かつ確実に前記被検出体の位置を前記位置センサーの検知範囲内に復帰させて通常制御に移行することができる。
【0018】
また、前記復帰処理は、前記モーター部および位置センサーが通電していない状態でブレーキペダルが踏み込まれて前記制御ロッドが前記ピストンの前進方向に移動して前記被検出体の位置が前記位置センサーの検知範囲を超えることで検知されなかったときに限り実行するものとすることができる。
【0019】
更に、前記入力ロッドと、前記制御ロッドと、前記モーター部と、前記回転直動変換部と、前記ブラケットと、前記マスタシリンダとが、全て同軸に配置されている場合、全体としてコンパクトに構成することができるため特に望ましい。
【0020】
本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置の制御方法は、
ブレーキペダルに連結された入力ロッドと、
被検出体と、
前記被検出体が装着されており前記入力ロッドと連動してブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、
前記被検出体の位置を検出することで前記制御ロッドの変位を検出する位置センサーと、
前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、
前記位置センサーから得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、
前記制御ロッドの外周に配置され、外周面にねじ条を形成した筒状のスクリュー部材および内周面に前記ねじ条と螺合するねじ溝を形成した回転部材からなり、前記モーター部と連動する前記回転部材の回転運動を前記スクリュー部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、
前記位置センサーが装着されており前記スクリュー部材の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するブラケットと、
前記ブラケットを付勢して移動後に元の位置に戻すための戻しバネと、
前記制御ロッドおよび前記スクリュー部材の先端側に接続され、前記制御ロッドまたは前記スクリュー部材の直線運動によりピストンが進退動作することで液圧を発生させるマスタシリンダと、を備え、
前記制御ロッドおよび前記スクリュー部材は互いに独立して直線運動可能であり、前記制御ロッドが前記ピストンの前進方向に一定以上移動したときに前記被検出体の位置が前記位置センサーの検知範囲を超える電気機械式ブレーキ倍力装置の制御方法であって、
前記モーター部および位置センサーが通電していない状態から通電状態に移行した場合に限り、ブレーキペダルが踏み込まれていることで前記制御ロッドが前進しており、前記制御ロッドに装着された前記被検出体が前記位置センサーにより検知されなかったとき、前記制御部からの駆動指令により前記モーター部を強制的に駆動させることで前記ブラケットに装着された前記位置センサーを前記被検出体が検出されるまで前記ピストンの前進方向に移動させて、
前記被検出体が前記位置センサーの検知範囲を超えて前記ピストンの前進方向に移動していた場合に、前記被検出体の位置を前記位置センサーの検知範囲内に復帰させる復帰処理を実行することを特徴とする。
【0021】
加えて、前記復帰処理において前記モーター部の駆動開始から一定時間内に前記被検出体が前記位置センサーにより検知されなかった場合、故障判定処理を実行するものとすれば、仮に被検出体が破損・脱落などの故障を発生したとしても速やかに判別することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、制御ロッドとスクリュー部材とが互いに独立して直線運動する構造であっても、追加部品を要することなく前記被検出体の位置を検知範囲内に復帰させて通常制御に移行することができ、省スペースで装置が小型化できるとともに経済的にも有利であるほか、設計自由度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置の好ましい実施の形態を示す斜視図。
図2図1に示した実施の形態の平面図。
図3図1に示した実施の形態においてカバーを外した状態の平面図。
図4図2に示したA-A線断面図。
図5図2に示したB-B線断面図。
図6図1に示した実施の形態の要部断面図。
図7図1に示した実施の形態における入力ロッド、付勢部材および制御ロッドを示す分解斜視図。
図8図1に示した実施の形態の要部を示す概略図であり、(a)は作動前の状態を示す図、(b)は被検出体が移動して検知範囲外にある状態を示す図、(c)は作動後の状態を示す図。
図9図1に示した実施の形態における復帰処理の工程を示すフロー図。
図10】従来例の要部を示す概略図であり、(a)は作動前の状態を示す図、(b)は作動後の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1乃至図7は本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置の好ましい実施の形態を示す図であり、この電気機械式ブレーキ倍力装置1は、ケーシング10と、入力ロッド20と、付勢部材30と、制御ロッド40と、センサー部50と、モーター部60と、制御部70と、回転直動変換部80と、ブラケット90と、支柱100と、戻しバネ110と、マスタシリンダ120と、を有する。
【0026】
ケーシング10は、円筒状のカバー11とドーナツ状の底板12とからなる。なお、符号13は前記カバー11に形成した外部接続コネクタ装着用の窓、符号14は前記カバー11と前記底板12を固定するための固定ネジ、符号15は前記ケーシング10を自動車の車体に固定するための固定部材である。
【0027】
入力ロッド20は、全体として棒状を呈し、軸方向に移動可能かつ一定角度範囲で揺動可能であり、一方端側(制御ロッド40側)にはその端面において前記入力ロッド20の軸方向に伸びる接続穴21と、前記軸方向に伸びて前記接続穴21よりも小径であるバネ保持穴22とが連続して形成されており、他端側には周方向に回転自在でブレーキペダルBPと接続するためのブレーキペダル接続具23が取り付けられている。
【0028】
付勢部材30は、反発力を発揮するコイルバネ31と、リテーナー32とからなり、リテーナー32は全体として円錐形を呈し、内側にはすり鉢状の受け面33を有する。
【0029】
制御ロッド40は、全体として棒状を呈し、軸方向に移動可能であり、一方端側(入力ロッド20側)にはフランジ部213によって位置検出用のマグネットである円筒状の被検出体220を脱落不能に外装した状態でボールスタッド210が固定されており、他端側にはプレート41と係合するための段部42と、コイルバネ43を外装するための小径の先端部44とが形成されている。
【0030】
前記入力ロッド20の前記接続穴21には前記リテーナー32が前記受け面33を外側に向けた状態で配置され、前記バネ保持穴22と前記リテーナー32との間には前記コイルバネ31が配置されており、前記入力ロッド20と前記制御ロッド40が、前記制御ロッド40に取り付けられたボールスタッド210の球状の頭部212に前記入力ロッド20の接続穴21を差し込んで前記リテーナー32の受け面33が前記ボールスタッド210に接触した状態で前記接続穴21の外側端縁を縮径するように変形させてカシメ接続されており、ボールジョイント機構が形成されている。
【0031】
このとき、前記リテーナー32を介して伝わる前記コイルバネ31の付勢力が前記ボールスタッド210と前記入力ロッド20とを互いに離間する方向に作用することで、従来のロッド位置保持用のバネと同じ効果を発揮し、前記入力ロッド20が自重で倒れてしまうことや、前記入力ロッド20と前記制御ロッド40との間に間隙が生じて異音の発生や挙動の乱れが起きることを防ぐことができる。
【0032】
センサー部50は、センサー基盤51と、位置センサー52とからなり、前記位置センサー52によって検出した前記被検出体220の変位量が信号として前記センサー基盤51を介して出力される。
【0033】
モーター部60は、固定子61と、回転子62と、前記回転子62と同期して回転する回転軸63と、前記回転軸63を周方向に回転可能に支持する2つの軸受64,65からなる。なお、符号66,67は回転数検知のための検出歯車であり、符号68は前記底板12から立設するように取り付けられて前記モーター部60を覆うモーターカバーである。
【0034】
制御部70は、電源ケーブル(図示せず)を介して外部から供給される電力を制御してモーター部60を駆動するためのモータードライバーの機能を有する制御基板71であって、前記制御基板71は前記位置センサー52およびモーター回転位置センサー72とケーブル73,74を介して接続されており、各センサーからの信号を利用して前記モーター部60を駆動させるものである。
【0035】
特に、本実施の形態においては、各センサーから得た情報を電子制御ユニット(ECU)を経由させてのモーターのフィードバック制御を行うことなく、各センサーから得た情報は前記制御基板71に直接送信されて前記制御基板71が直にモーター部60を制御可能であるため機能を独立させて複雑な制御を必要としない利点を有する。
【0036】
なお、本実施の形態において前記モーター回転位置センサー72および対応する検出歯車66,67は2組設けられており、異なる性能のモーター回転位置センサーを用いることで、モーター制御の高精度化と高速化を両立させることが可能であるが、回転位置センサーおよび対応する検出歯車を1組のみ設けるものであってもよい。
【0037】
また、回転位置センサーは前記モーター部60(前記回転軸63)の回転位置を検出するためのものであるが、例えば前記モーター部60(前記回転軸63)の回転速度や回転数を検出するための回転速度センサーや回転数センサーであってもよい。
【0038】
回転直動変換部80は、前記モーター部60の回転運動を直線運動に変換するための機構であって、外周面にネジ条を形成した円筒状のスクリュー部材81と、内周面にネジ溝を形成しており前記スクリュー部材81とネジ嵌合されたナット状の回転部材82と、前記回転部材82と前記回転軸63とを連結する円筒状の連結部材83とからなる送りねじ機構により構成されている。本実施の形態において、前記回転部材82と前記連結部材83は別体で形成して一体に結合したものであるが、一体成型したものであってもよい。
【0039】
ブラケット90は、平面視略正三角形で中心位置および各頂点付近に通孔91,92が形成されている。中心位置の前記通孔91に前記スクリュー部材81を挿入して固定するとともに、前記各頂点付近の通孔92にそれぞれ取り付けられたフランジブッシュ93を介して3本の支柱100に装着されることで軸回転不能且つ軸方向に移動可能に構成されており、前記スクリュー部材81の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するものである。
【0040】
支柱100は、前記カバー11と前記底板12の間に3本が架設されており、一方端付近に形成された小径部101を前記底板12に形成した取付孔16に挿入するとともに前記小径部101と隣接して形成された大径部102が前記底板12に接地することで位置決めを行い、且つ前記カバー11に形成した取付孔17から突出した支柱の先端部103にナット104を装着することで固定されている。
【0041】
戻しバネ110は、前記ブラケット90を付勢して移動後に元の位置に戻すためのものであって、前記カバー11と前記底板12の間に掛設された3本の補強用の支柱100にそれぞれ外装されており、一方端は前記底板12に接し、他端は前記フランジブッシュ93に接している。
【0042】
マスタシリンダ120は、有底筒状で第1出力ポート122と第2出力ポート123を側面に形成したシリンダボア121と、前記シリンダボア121内に配置された第1ピストン130と、前記シリンダボア121内において前記第1ピストン130よりも底面側に配置された第2ピストン140とからなり、前記シリンダボア121の開口部を前記ケーシング10下方の開口部に向かい合わせて閉塞するように配置し、前記シリンダボア121の取付孔124および前記底板12の取付孔18を連通させた状態で挿通したボルト125およびナット126によって固定されている。
【0043】
第1ピストン130の両端部は、それぞれカップ状に形成され、隔壁131によって区画された断面H字状に形成されている。前記隔壁131の基端側(前記制御ロッド40側)に形成された凹部132にはリアクションディスクである弾性体133が嵌入されており、前記弾性体133に前記制御ロッド40の先端部45が接する。
【0044】
第2ピストン140の両端部は、それぞれカップ状に形成され、隔壁141によって区画された断面H字状に形成されている。前記隔壁141の基端側(前記第1ピストン130側)には凹部142が形成されており、前記凹部142に後述するリテーナロッド148が接する。
【0045】
マスタシリンダ120のシリンダボア121内には、第1ピストン130と第2ピストン140との間にプライマリ室127が形成され、シリンダボア121の底部と第2ピストン140との間にセカンダリ室128が形成される。また、前記プライマリ室127およびセカンダリ室128を含むシリンダボア121内は作動流体であるブレーキ液で満たされており、前記ブレーキ液は図示しないリザーバから供給されている。
【0046】
このとき、前記第1ピストン130の外周と前記シリンダボア121の内周の間に装着されたシール部材151,152および前記第2ピストン140の外周と前記シリンダボア121の内周の間に装着されたシール部材161,12によって、ブレーキ液は所定の区画外へ漏出することがない。
【0047】
マスタシリンダ120のプライマリ室127及びセカンダリ室128は、それぞれ、シリンダボア121の側面に形成された第1出力ポート122及び第2出力ポート123と接続されており、各出力ポートから別系統で出力されたブレーキ液の液圧を各車輪のブレーキ(図示せず)に供給して制動力を発生させるものである。
【0048】
第1ピストン130と第2ピストン140との間には、コイルバネ134が介装されており、コイルバネ134により、第1ピストン130と第2ピストン140とを互いに離間する方向に付勢している。コイルバネ134の内部には、第1ピストン130と第2ピストン140との間を所定の間隔に保つためのリテーナガイド136とリテーナロッド138とからなる伸縮部材135が配置されている。
【0049】
リテーナガイド136は、円筒状を呈し、先端には内方に突設されたストッパ部137が形成されている。リテーナロッド138は、棒状を呈し、基端には径方向外方に突設した鍔部139が形成されている。そして、リテーナガイド136内にリテーナロッド138を挿入することで、軸方向に沿う両者の相対移動が可能になり、リテーナガイド136のストッパ部137とリテーナロッド138の鍔部139とが干渉した時点で、伸縮部材135が所定の伸長となる。
【0050】
前記第2ピストン140と前記シリンダボア121の底部との間には、コイルバネ144が介装されており、コイルバネ144により、第2ピストン140と前記シリンダボア121の底部とを互いに離間する方向に付勢している。コイルバネ144の内部には、第2ピストン140と前記シリンダボア121の底部との間を所定の間隔に保つためのリテーナガイド146とリテーナロッド148とからなる伸縮部材145が配置されている。
【0051】
リテーナガイド146は、円筒状を呈し、先端には内方に突設されたストッパ部147が形成されている。リテーナロッド148は、中空棒状を呈し、基端には径方向外方に突設した鍔部149が形成されている。そして、リテーナガイド146内にリテーナロッド148を挿入することで、軸方向に沿う両者の相対移動が可能になり、リテーナガイド146のストッパ部147とリテーナロッド148の鍔部149とが干渉した時点で、伸縮部材145が所定の伸長となる。
【0052】
本実施の形態では前記入力ロッド20の外周部のスペースを活用し、前記被検出体220と対応させて前記ブラケット90の上面に前記センサー部50のセンサー基盤51および位置センサー52を配置しており、省スペースに前記被検出体220の位置検出を行うことを可能としている。
【0053】
そして、マグネットである前記円筒状の被検出体220の軸線に一致して形成された通孔221に前記ボールスタッド210の軸部211を挿通し、前記軸部211と前記頭部212の間に突出形成されたフランジ部213によって前記被検出体220の一方端222を保持するとともに、前記制御ロッド40の端部によって前記被検出体220の他端223を保持することで、前記被検出体220を脱落不能に前記制御ロッド40に外装している。
【0054】
また、前記図6に示すように、ブレーキペダルBPにはブレーキペダル踏込時にON信号、ブレーキペダル非踏込時にOFF信号を発信するON-OFFセンサー230が装着されており、前記ON-OFFセンサー230は前記制御部70に接続されている。
【0055】
このON-OFFセンサー230は、ブレーキペダルBPの踏込を判定するために使用可能であることは勿論、車両等の始動後に前記ON-OFFセンサー230からOFF信号が発信された際の前記被検出体220の位置を初期位置として補正するために使用することも可能である。
【0056】
本実施の形態においては、ブレーキ倍力装置としての動作に直接関係する、前記入力ロッド20,前記制御ロッド40,前記モーター部60,前記回転直動変換部80,前記ブラケット90および前記マスタシリンダ120がすべて同軸に配置されている(図4図5参照)ため、全体として省スペースに構成することを可能としたものである。
【0057】
以下、本実施の形態である電気機械式ブレーキ倍力装置1の動作について説明する。
【0058】
電気機械式ブレーキ倍力装置1を自動車に取り付けた状態において、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだ際、ブレーキペダルBPに接続された入力ロッド20が軸方向に移動し、制御ロッド40が前記入力ロッド20に同期して直線運動する。
【0059】
このとき、前記制御ロッド40と前記スクリュー部材81は同期しておらず、別個に軸方向に移動可能であるため、前記スクリュー部材81の位置は変化せずに前記制御ロッド40のみが移動する。
【0060】
そして、前記制御ロッド40が前記コイルバネ43,134,144の付勢力に抗して前記第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる。
【0061】
また、前記制御ロッド40が移動すると、その変位を検知した位置センサー52から制御部70へ送られる信号を利用して前記制御部70がモーター部60へ電力および作動信号を供給する制御を行い、モーター部60が作動して回転する。
【0062】
加えて、回転軸63に装着された検出歯車66,67の回転数を検出することでモーター回転数を検出するモーター回転位置センサー72を別途備えており、前記制御部70がモーター部60へ電力および作動信号を供給する制御を行う際に、前記モーター回転位置センサー72からケーブル74を介して制御部70に送られる信号を利用することができる。
【0063】
前記モーター部60が回転する際、前記回転軸63と同期して前記連結部材83を介して前記回転部材82が回転するが、前記スクリュー部材81は前記ブラケット90により軸回転が規制されているため、ねじ勘合している前記回転部材82の回転動作を直線動作に変換して軸線上の前記第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる方向に移動することとなる。
【0064】
このとき、前記ブラケット90も前記スクリュー部材81と同期して前記戻しバネ110を圧縮しつつ軸線上の前記第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる方向に移動するが、前記フランジブッシュ93を介して前記支柱100により案内されながら摺動するためスムーズな動作を可能としている。
【0065】
そして、前記スクリュー部材81がプレート42を介して前記コイルバネ134,144の付勢力に抗して前記第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる。
【0066】
このように、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだ際の踏力が前記入力ロッド20,前記制御ロッド40を介して直接マスタシリンダ120の第1ピストン130、第2ピストン140に与えられ、それに加えて前記モーター部60の回転動作をスクリュー部材81の直線動作に変換した押圧力が前記スクリュー部材81を介してマスタシリンダ120の第1ピストン130、第2ピストン140に与えられることによって、電力により駆動するモーターを用いることによってブレーキペダルBPを踏んだ際の踏力を増幅することができる。
【0067】
そして、運転者によるブレーキペダルBPの踏み込みが解除されてブレーキペダルBPが元の位置に戻るにつれ、ブレーキペダルBPと連結された入力ロッド20および制御ロッド40も元の位置に復帰し、前記制御ロッド40が移動することで、その変位を検知した位置センサー52からの信号に応じて制御部70がモーター部60へ電力および作動信号を供給する制御を行い、前記モーター部60が作動して逆回転する。
【0068】
前記モーター部60が逆回転する際、前記回転軸63と同期して前記連結部材83を介して前記回転部材82が逆回転するが、前記スクリュー部材81は前記ブラケット90により軸回転が規制されているため、ねじ勘合している前記回転部材82の回転動作を直線動作に変換して軸線上の前記第1ピストン130および第2ピストン140を後退させる方向に移動することとなる。
【0069】
なお、仮に前記モーター部60または制御部70の不良によって前記モーター部60が正常に逆回転できなかったとしても、前記コイルバネ134,144および戻しバネ110の付勢力によって前記スクリュー部材81およびマスタシリンダ120の第1ピストン130、第2ピストン140が後退して作動前の元の位置へと復帰させることができる。
【0070】
以下、本発明の要点について、前記図1に示した実施の形態の概略図である図8、および図10に示した従来例の概略図を比較しつつ、図9に示した本実施の形態における被検出体の位置を検知範囲内に復帰させる復帰処理の工程を示すチャートを参照して説明する。なお、各要素を示す符号は前記図1乃至図7に示したものと同一の符号を付した。
【0071】
本実施の形態は、図8(a)に示したように、制御ロッド40とスクリュー部材81とが完全に独立しており、前記図10に示した従来例のようなリンク部材94などを有していないため、モーター部60が駆動しない場合はスクリュー部材81が制御ロッド40に追従せずに互いに軸方向に直線運動可能であり、前記制御ロッド40がマスタシリンダ120の第1ピストン130および第2ピストン140の前進方向に一定以上移動したときに前記被検出体220の位置が前記位置センサー52の検知範囲を超える構造である。
【0072】
まず、図9に示したモーター部材60および位置センサー52に通電していない車両等の始動時などの電源OFF状態から(工程S1)、ブレーキペダルBPを踏み込むと(工程S2)、図8(a)の黒矢印の方向に前記制御ロッド40が直線運動して先端方向に移動するため(工程S3)、踏力のみによってマスタシリンダ120の第1ピストン130および第2ピストン140を前進させることによりブレーキ液の液圧を発生させ、ブレーキ(図示せず)を作動させることができる。
【0073】
このとき、制御ロッド40のみが図8(a)の黒矢印の方向に前記制御ロッド40が直線運動して先端方向に移動するので、図8(b)に示すように制御ロッド40に装着した被検出体220は位置センサー52の検知範囲外に位置する状態となってしまう。
【0074】
その後車両等の電源ON操作を行い、モーター部材60および位置センサー52に通電した状態となり(工程S4)、位置センサー52によって被検出体220が検知不能である場合(工程S5)、制御部70からモーター部60へ強制的な駆動指令を行い、モーター部60を駆動させることによって、回転部材82を介してスクリュー部81およびブラケット90をマスタシリンダ120の第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる方向である図8(b)の黒矢印の方向に直線運動させる。
【0075】
ブラケット90を図8(b)の黒矢印の方向に直線運動させることによって、ブラケット90に装着された位置センサー52も伴って同方向に移動するため、前記位置センサー52の検知範囲内に前記被検出体220の位置を復帰させることを試みることができる。
【0076】
このとき、図8(c)に示すように被検出体220の位置が前記位置センサー52の検知範囲内に復帰し、被検出体220の検知が成功した場合には(行程S8a)、通常制御に移行することができ(行程S9a)、復帰処理を完了する。
【0077】
しかしながら、モーター部60の駆動開始から一定時間内に被検出体220を検知できない場合には(行程S8b)、故障判定処理を実行する(行程S9b)。なお、故障判定がなされたことを例えばランプやブザーなどの出力手段(図示せず)によってドライバー等が認知可能に通知するものとしてもよい。
【0078】
被検出体220が位置センサー52の検知範囲外に達する条件は、ブレーキペダルBPの踏み込みによって被検出体220を装着した制御ロッド40が先行しており踏力のみでブレーキを作動させているか、被検出体220が破損・脱落などの故障を発生しているかの2通り考えられるが、被検出体220に問題がなければ被検出体220の位置を復帰させて通常制御に移行し、もし被検出体220に問題があれば故障判定を行うことができる。
【0079】
以上のとおり、本発明によれば、制御ロッドとスクリュー部材とが互いに独立して直線運動する構造であっても、追加部品を要することなく前記被検出体の位置を検知範囲内に復帰させて通常制御に移行することができ、省スペースで装置が小型化できるとともに経済的にも有利であるほか、設計自由度も向上させることができる。また、仮に被検出体が破損・脱落などの故障を発生したとしても速やかに判別することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 電気機械式ブレーキ倍力装置、10 ケーシング、11 カバー、12 底板、13 窓、14 固定ネジ、15 固定部材、16 取付孔、17 取付孔、18 取付孔、20 入力ロッド、21 接続穴、22 バネ保持穴、23 ブレーキ接続具、30 付勢部材、31 コイルバネ、32 リテーナー、33 受け面、40 制御ロッド、41 プレート、42 段部、43 コイルバネ、44 先端部、50 センサー部、51 センサー基盤、52 位置センサー、60 モーター部、61 固定子、62 回転子、63 回転軸、64 軸受、65 軸受、66 検出歯車、67 検出歯車、68 モーターカバー、70 制御部、71 制御基板、72 モーター回転位置センサー、73 ケーブル、74 ケーブル、80 回転直動変換部、81 スクリュー部材、82 回転部材、83 連結部材、90 ブラケット、91 通孔、92 通孔、93 フランジブッシュ、100 支柱、101 小径部、102 大径部、103 先端部、104 ナット、110 戻しバネ、120 マスタシリンダ、121 シリンダボア、122 第1出力ポート、123 第2出力ポート、124 取付孔、125 ボルト、126 ナット、127 プライマリ室、128 セカンダリ室、130 第1ピストン、131 隔壁、132 凹部、133 弾性体、134 コイルバネ、135 伸縮部材、136 リテーナガイド、137 ストッパ部、138 リテーナロッド、139 鍔部、140 第2ピストン、141 隔壁、142 凹部、143 、144 コイルバネ、145 伸縮部材、146 リテーナガイド、147 ストッパ部、148 リテーナロッド、149 鍔部、151 シール部材、152 シール部材、161 シール部材、162 シール部材、210 ボールスタッド、211 軸部、212 頭部、213 フランジ部、220 被検出体、221 通孔、222 一方端、223 他端、230 ON-OFFセンサー、BP ブレーキペダル
図1
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図10