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特開2023-37383ランタノイド又は/及びマイナーアクチノイドを吸着した無機吸着剤の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037383
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】ランタノイド又は/及びマイナーアクチノイドを吸着した無機吸着剤の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/16 20060101AFI20230308BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
G21F9/16 541D
G21F9/12 501B
G21F9/12 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144089
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】柿木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰介
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 洋
(57)【要約】
【課題】ランタノイド又は/及びマイナーアクチノイドを吸着した無機吸着剤を良好にガラス固化できる処理方法を提供する。
【解決手段】ランタノイド又は/及びマイナーアクチノイドを吸着した無機吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合するステップと、前記ガラス原料を混合するステップにより得た混合物をガラス固化するステップと、を有し、前記混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量が、前記混合物の総質量に対して20~95質量%である、ランタノイド又は/及びマイナーアクチノイドを吸着した無機吸着剤の処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタノイド又は/及びマイナーアクチノイドを吸着した無機吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合するステップと、
前記ガラス原料を混合するステップにより得た混合物をガラス固化するステップと、
を有し、
前記混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量が、前記混合物の総質量に対して20~95質量%である、ランタノイド又は/及びマイナーアクチノイドを吸着した無機吸着剤の処理方法。
【請求項2】
前記ガラス原料中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量が、前記ガラス原料の総質量に対して20~95質量%である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記ガラス原料がホウ素を含み、
前記混合物中のホウ素の酸化ホウ素換算での含有量が、前記混合物の総質量に対して5~60質量%である、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記無機吸着剤がケイ素を含み、
前記無機吸着剤中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量が、前記無機吸着剤の総質量に対して20~90質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記混合物中のアルカリ金属のアルカリ金属酸化物換算での含有量が、前記混合物の総質量に対して40質量%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記無機吸着剤がアルカリ金属を含む請求項1~5のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記混合物中のチタンの二酸化チタン換算での含有量が、前記混合物の総質量に対して50質量%以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項8】
前記無機吸着剤がチタンを含む請求項1~7のいずれか一項に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ランタノイド又は/及びマイナーアクチノイドを吸着した無機吸着剤の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽水炉等から排出される使用済み核燃料の再処理においては、使用済み核燃料の溶液からU(ウラン)及びPu(プルトニウム)が回収される。U及びPuを回収した後に残る高レベル放射性廃棄物(Highly Active Liquid Waste)(以下、「HALW」とも記す。)には、核分裂生成物(Fission Products)(以下、「FP」とも記す。)のほか、Np(ネプツニウム)、Am(アメリシウム)、Cm(キュリウム)等のマイナーアクチノイド(Minor Actinide)(以下、「MA」とも記す。);La(ランタン)、Ce(セリウム)、Eu(ユウロピウム)等のランタノイド(以下、「Ln」とも記す。)等が含まれる。HALWは、濃縮工程を経てガラス固化体とされ、地層処分される計画となっている。
【0003】
MAは、1万年オーダの長半減期を持つ核種があり、HALWの処分における負荷増大の要因となっている。そこで、HALWからMAを回収し、回収したMAを高速増殖炉等で燃焼させることが検討されている。
LnはMAと化学的性質が似ていることから、HALWからMAを回収する際にLnが同伴しやすい。そのため、MA回収工程後に、MAとLnとを分離するMA精製工程が行われる。MA回収工程及びMA精製工程の代表的な方法として、MAを抽出するための溶媒(抽出剤溶液)を用いた溶媒抽出法及び抽出クロマト法が知られている。
【0004】
図5に、MAの回収から燃焼までのプロセスの一例を示す。この例では、まず、HALWからMAを回収する(MA回収工程)。MA回収工程では、HALWからMAを溶媒抽出し、抽出液からMAを水相へ逆抽出する。MA回収工程では、一部のLnがMAに同伴する。次いで、逆抽出液を濃縮した後、MAとLnとを分離する(MA精製工程)。MA精製工程では、濃縮液からMAを溶媒抽出し、抽出液からMAを水相へ逆抽出することで、Lnが分離されたMA含有溶液を得る。その後、得られたMA含有溶液を濃縮し、その濃縮液を用いてMA燃料を製造し、MA燃料を燃焼させる。HALWからMAを抽出した後の廃液(FP含有)は、濃縮し、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。濃縮液からMAを抽出した後の廃液(Ln含有)は、濃縮し、ガラス固化して廃棄する。
【0005】
MA回収工程から発生する廃液は、MA回収を行わない現状の再処理工程におけるHALWと同程度であるので、現状と同様の濃縮工程を経てガラス固化を行うことが可能である。一方、MA精製工程から発生する廃液についても同様にガラス固化を行うことになるが、この際、MA精製工程において逆抽出のために加えた量の水を濃縮工程によって蒸発させる必要がある。また、溶媒抽出及び逆抽出を経て得られた逆抽出液中の抽出対象物質の濃度は、もともとの溶液中の濃度より低くなるのが通常である。そのため、MA精製工程から発生する廃液の処理のための濃縮工程には、現状のHALWの処理のための濃縮工程よりも大きな設備規模が必要で、建設費が増加するとともに、運転において大きなエネルギーを消費するのでランニングコストも増加する。
このような問題に対し、特許文献1には、放射性溶液中のLnを、ガラス固化可能な吸着剤で吸着し、Lnを吸着した吸着剤をガラス固化する方法が提案されている。ガラス固化可能な吸着剤としては無機吸着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-204518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らの検討によれば、LnやMAを吸着した無機吸着剤をガラス固化すると、ガラス固化体内で無機吸着剤成分の偏析や気泡が生じ、均一なガラス固化体が得られないことがある。ガラス固化体の均一性が低いと、長期保管時や地層処分時において、物理的及び化学的安定性が損なわれ、放射性物質が漏洩する等の懸念がある。
【0008】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、Ln又は/及びMAを吸着した無機吸着剤を良好にガラス固化できる処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示に係る処理方法は、Ln又は/及びMAを吸着した無機吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合するステップと、前記ガラス原料を混合するステップにより得た混合物をガラス固化するステップと、を有し、前記混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量が、前記混合物の総質量に対して20~95質量%である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の処理方法によれば、Ln又は/及びMAを吸着した無機吸着剤を良好にガラス固化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第一実施形態に係る処理方法を説明するフロー図である。
図2】本開示の第二実施形態に係る処理方法を説明するフロー図である。
図3】本開示の第三実施形態に係る処理方法を説明するフロー図である。
図4】本開示の第四実施形態に係る処理方法を説明するフロー図である。
図5】比較例に係るプロセスを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「Ln(ランタノイド)」とは、原子番号57から71までの元素の総称である。
「MA(マイナーアクチノイド)」とは、アクチノイドに属する超ウラン元素のうちPuを除いた元素である。
「アクチノイド」とは、原子番号89から103までの元素の総称である。
【0013】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る処理方法について、図1を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る処理方法は、
HALWからMAをLnとともに分離する分離処理を行うことで、MA及びLnを含む溶液(以下、「MA・Ln含有溶液」とも記す。)を得るステップS1-1と、
MA・Ln含有溶液を固化する固化処理を行うことで、MA及びLnを含む固化体を得るステップS1-2と、
ステップS1-2によって得た固化体を保管するステップS1-3と、
ステップS1-3によって保管した後の固化体を溶解するステップS1-4と、
ステップS1-4によって得た固化体溶液のLnを無機吸着剤に吸着させ、Lnを吸着した無機吸着剤(以下、「廃吸着剤」とも記す。)と固化体溶液とを分離することによって、MA精製(MAとLnとを分離)するステップS1-5と、
ステップS1-5によって固化体溶液と分離された廃吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合するステップS1-6と、
ステップS1-6によって得た混合物をガラス固化するステップS1-7と、
を有する。
本実施形態に係る処理方法は、必要に応じて、ステップS1-2の後、ステップS1-3の前に、固化体に対し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去する安定化処理を行うステップを更に有していてもよい。
【0014】
ステップS1-1によってMA及びLnが分離された後に残る廃液(FP含有溶液)は、濃縮し、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
ステップS1-5によって廃吸着剤と分離された、Lnを無機吸着剤に吸着させた後の固化体溶液は、MAを含む溶液(MA含有溶液)である。MA含有溶液は、必要に応じて高発熱性のMAを分離した後、燃料製造に用いる。例えば、MA含有溶液をU、Puと混合し、混合酸化物を得ることにより、燃料を製造する。得られた燃料は、高速増殖炉等で燃焼する。
ステップS1-7によって得たガラス固化体は、例えば、保管し、地層処分する。
【0015】
(HALW)
HALWは、使用済み核燃料の溶液からU及びPuを分離した廃液である。HALWは、FP、MA、Ln等を含み、U及びPuを含まない。HALWは、典型的には、MAとして少なくとも、Np、Am及びCmを含み、Lnとして少なくとも、La及びCeを含む。
【0016】
HALWとしては、例えば、ピューレックス(PUREX:Plutonium Uranium Redox EXtraction)法による再処理で生成する廃液が挙げられる。ピューレックス法では、UやPuを含む硝酸溶液と、トリブチルリン酸(TBP)と、ドデカン等の有機溶媒とを接触混合する。これにより、硝酸溶液中のUやPuがTBPと錯体を形成して有機溶媒側へ移動する。一方、FP、MA、Lnは硝酸溶液(廃液)側に残る。
【0017】
(ステップS1-1:分離処理)
分離処理としては、例えば、HALWからMAをLnとともに溶媒抽出法により抽出する処理(以下、「抽出処理」とも記す。)を含む処理、又はHALWのMA及びLnを吸着剤に吸着させ、前記吸着剤に吸着したMA及びLnを溶離させる処理(以下、「吸着-溶離処理」とも記す。)を含む処理が挙げられる。
分離処理が抽出処理を含む場合、抽出処理の後に、抽出処理により得られた抽出液からMA及びLnを逆抽出する処理(以下、「逆抽出処理」とも記す。)を更に含んでいてもよい。
【0018】
抽出処理では、例えば、HALWと、抽出剤を含む有機溶媒溶液(抽出剤溶液)とを接触させる。HALWと抽出剤溶液とを接触させると、MAやLnが抽出剤溶液側に移行する。
抽出処理で得た抽出液はそのままMA・Ln含有溶液としてステップS1-2に供してもよく、更に逆抽出処理を行ってもよい。工程数や廃液量をより低減できる点では、抽出処理で得た抽出液をMA・Ln含有溶液としてステップS1-2に供することが好ましい。
【0019】
抽出剤としては、例えば、MA及びLnと錯体を形成する錯化剤が挙げられる。かかる錯化剤は、選択的にMAと錯体を形成する錯化剤に比べて安価であることから好ましい。錯化剤の具体例としては、n-オクチル(フェニル)-N,N’-ジイソブチルカルバモイルメチルフォスフィンオキシド-トリブチルリン酸混合物(CMPO-TBP混合物)、ジイソデシルリン酸、6,6’-ビス(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1,2,4-ベンゾトリアジン-3-イル)-2,2’-ビピリジン(BTBP)、N,N’-ジブチル-N,N’-ジメチルテトラデシルマロナミド(DMDBTDMA)、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(TODGA)等が挙げられる。抽出剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
有機溶媒は、使用する抽出剤に応じて適宜選定できる。有機溶媒は、再利用可能であること、安価であること、放射線劣化に耐性があることが望ましい。有機溶媒の具体例としては、例えばn-ドデカンが挙げられる。有機溶媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
逆抽出処理では、例えば、抽出液と、硝酸を含む水溶液(ストリッピング剤)とを接触させる。これにより、抽出液中のMAとLnが水溶液側に移行する。一方、抽出液中の有機溶媒は水溶液側に移行せずに抽出液側に残るので、再利用できる。
逆抽出処理で得た逆抽出液は典型的にはそのまま、MA・Ln含有溶液としてステップS1-2に供する。
【0022】
吸着-溶離処理に用いる吸着剤は、MA及びLnを吸着可能であればよい。
HALWのMA及びLnを吸着剤に吸着させる方法としては、HALWと吸着剤とを接触させる方法が挙げられる。HALWと吸着剤とを接触させる方法としては、カラム式、バッチ式等が挙げられる。
吸着剤に吸着したMA及びLnは、吸着剤と溶離液とを接触させることにより溶離させることができる。
吸着-溶離処理で得られた溶離液、つまり吸着剤と接触させた後の溶離液は、MA及びLnを含む。典型的には、この溶離液をそのままMA・Ln含有溶液としてステップS1-2に供する。
【0023】
(ステップS1-2:固化処理)
固化処理としては、例えば、分解処理、水熱処理、ガラス固化処理が挙げられる。
ガラス固化処理を行う場合、ガラス固化処理の前に、MA・Ln含有溶液を濃縮する濃縮処理を行うことが好ましい。
【0024】
MA・Ln含有溶液が、抽出処理により得られた抽出液である場合、固化処理としては、蒸留・分解処理が好ましい。
抽出液に対して蒸留・分解処理を行うことにより、抽出液の有機溶媒が除去されるとともにMAが酸化される。これにより、MA酸化物を含む固化体が得られる。
蒸留・分解処理としては、例えば、蒸留、熱分解、焼却が挙げられる。蒸留は、回分式、連続式(棚段塔や充填塔)等の公知の蒸発方式を用いて実施できる。
【0025】
MA・Ln含有溶液が、逆抽出処理で得られた逆抽出液、又は吸着-溶離処理で得られた溶離液である場合、固化処理としては、水熱処理、又はMA・Ln含有溶液を濃縮し、得られた濃縮液をガラス固化する処理(濃縮-ガラス固化処理)が好ましい。
MA・Ln含有溶液を水熱処理することにより、MA・Ln含有溶液に含まれるMAが酸化され、MA酸化物を含む固化体が析出する。固化体は固液分離により液状媒体(水)と分離される。これにより、MA酸化物を含む固化体が得られる。
MA・Ln含有溶液の濃縮、濃縮液のガラス固化はそれぞれ常法により実施できる。
【0026】
(安定化処理)
固化体には、抽出剤、抽出剤の放射線分解物等の有機物が含まれることがある。固化体に有機物が含まれていると、保管時にガスが発生し、放射性物質の閉じ込め機能を損なう、不具合が発生するおそれがある。固化体に対し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去する安定化処理を行うことで、このような不具合の発生を抑制できる。
安定化処理としては、例えば、か焼、焼結が挙げられる。
【0027】
(ステップS1-3:保管)
ステップS1-3では、固化体を一時的に保管する。
固化体の保管方法としては、放射性廃棄物の乾式保管方法として公知の方法を利用でき、例えば、固化体を複数のキャニスタに格納し、これら複数のキャニスタをキャスクに収納し、保管施設で保管する方法が挙げられる。
【0028】
固化体を保管する期間は、適宜設定できる。
Cm等の高発熱性のMAは燃料製造に適さないため、固化体が高発熱性のMAを含む場合、ステップS1-4では、固化体を、固化体に含まれる高発熱性のMAが十分に減衰するまで保管することが好ましい。これにより、ステップS1-5で廃吸着剤と分離されたMA含有溶液をMA燃料製造に用いる場合に、MA含有溶液からのCm等の高発熱性のMAの分離を不要にすることができる。なお、HALWに含まれるCmは主に、半減期が約18年と比較的短い244Cmである。
【0029】
(ステップS1-4:固化体溶解)
固化体を溶解するには、例えば、MA酸化物を含む固化体であれば硝酸水溶液を加えればよい。固化体がガラス固化体である場合は、固化体を酸溶液等で溶解した後、得られた溶液からガラス成分を分離する。
固化体を溶解して得られる溶液は、MA及びLnを含む。
【0030】
(ステップS1-5:MA精製(吸着処理))
ステップS1-5では無機吸着剤を用いる。無機吸着剤は、有機物を含まないので、廃吸着剤をそのままステップS1-6に供することができる。
無機吸着剤については後で詳しく説明する。
【0031】
ステップS1-4で得た固化体溶液(MA及びLnを含む放射性溶液)のLnを無機吸着剤に吸着させる方法としては、固化体溶液と無機吸着剤とを接触させる方法が挙げられる。
固化体溶液と無機吸着剤とを接触させる方法としては、カラム式、バッチ式等が挙げられる。吸着と分離を連続的に行うことができる点で、カラム式が好ましい。
カラム式では、無機吸着剤が充填されたカラムに固化体溶液を通液する。カラムへの固化体溶液の通液条件は、例えば空間速度SV=0.1~20h-1である。
バッチ式の場合、固化体溶液と無機吸着剤との接触時間は、例えば8~24時間である。
固化体溶液とLn吸着剤とを接触させる際の温度は、例えば10~40℃である。
【0032】
廃吸着剤と固化体溶液との分離方法は特に限定されず、公知の固液分離方法を用いることができる。
固化体溶液と無機吸着剤とをカラム式により接触させる場合、無機吸着剤が充填されたカラムに固化体溶液を通液すると、カラム内で無機吸着剤と接触した固化体溶液(MA含有溶液)がカラムから流出する一方、廃吸着剤はカラム内に留まる。これにより、廃吸着剤と固化体溶液とを分離できる。
【0033】
<無機吸着剤>
無機吸着剤は典型的には、イオン半径の違いによって、つまり分子ふるい効果によって、MA及びLnのうちLnを吸着する。
Lnは、「ランタノイド収縮」と言われる現象に従い、原子番号が大きくなるほどイオン半径が小さくなることが知られている。
表1にLn及びMAの水和イオン半径(水素原子の大きさを無視した値)を示す。表1中、Am及びCm以外の他の元素はLnである。
【0034】
【表1】
【0035】
したがって、ステップS1-5では典型的には、Lnと分離しようとするMAを吸着しにくく、該MAよりもイオン半径の小さいLnを吸着しやすい無機吸着剤を選択する。例えば、MAとしてCm及びCmよりもイオン半径の大きいMA(Am等)をLnと分離しようとする場合、水和イオン半径が4.91Å以上のイオンを吸着しにくく、水和イオン半径が4.91Å未満(例えば4.85Å以下)のLnを吸着しやすい吸着剤を選択する。
【0036】
無機吸着剤としては、例えば、アルミノケイ酸塩(ゼオライト等)、ボロシリケート、シリコチタン酸塩、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムが挙げられる。アルミノケイ酸塩、ボロシリケート及びシリコチタン酸塩において塩を形成するカチオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンが挙げられる。
【0037】
無機吸着剤は、ケイ素を含むことが好ましい。ガラスは一般的にケイ素を含むので、無機吸着剤がケイ素を含むと、ガラス原料との親和性に優れ、均一なガラス固化体が得られやすい傾向がある。
ケイ素を含む無機吸着剤としては、例えば、アルミノケイ酸塩、ボロシリケート、シリコチタン酸塩、二酸化ケイ素が挙げられる。
【0038】
無機吸着剤中のケイ素の二酸化ケイ素(SiO)換算での含有量は、無機吸着剤の総質量に対して20~90質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。無機吸着剤中のケイ素の含有量が20~90質量%であれば、ガラス原料と無機吸着剤との親和性が良好となり、得られるガラス固化体の均一性がより優れる。
廃吸着剤中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量の好ましい範囲も上記と同様である。
【0039】
無機吸着剤は、アルカリ金属を含んでいてもよい。無機吸着剤がアルカリ金属を含むと、ガラス固化しやすくなる。
アルカリ金属を含む無機吸着剤としては、例えば、塩を形成するカチオンの少なくとも一部がアルカリ金属イオンである、アルミノケイ酸塩、ボロシリケート、シリコチタン酸塩が挙げられる。
【0040】
無機吸着剤は、チタンを含んでいてもよい。チタンを含む無機吸着剤は、後述する無機吸着剤の製造方法によって容易にペレット状のものを製造することができ、吸着処理において廃吸着剤の分離が容易である。
チタンを含む無機吸着剤としては、例えば、シリコチタン酸塩が挙げられる。
【0041】
無機吸着剤の好ましい一例として、ケイ素を含む結晶性金属酸化物(以下、「Si系結晶性金属酸化物」とも記す。)が挙げられる。
「結晶性金属酸化物」とは、X線回折(以下、「XRD」とも記す。)法においてピーク強度が認められる金属酸化物を示す。
ケイ素は典型的には酸素とともにSi系結晶性金属酸化物の結晶骨格を構成する。
Si系結晶性金属酸化物は、ケイ素及び酸素以外の他の元素の1種以上を更に含んでいてもよい。
Si系結晶性金属酸化物としては、例えば、結晶性シリコチタン酸塩、ゼオライト、ボロシリケート、二酸化ケイ素が挙げられる。
【0042】
Si系結晶性金属酸化物は、アルカリ金属を含んでいてもよい。
アルカリ金属を含むSi系結晶性金属酸化物においてアルカリ金属は、典型的には、Si系結晶性金属酸化物の結晶骨格の間にイオンの形態で存在し、Ln吸着の際にLnとイオン交換される。アルカリ金属としてはナトリウムが好ましい。
アルカリ金属を含むSi系結晶性金属酸化物としては、例えば、塩を形成するカチオンの少なくとも一部がアルカリ金属イオンである、結晶性シリコチタン酸塩、ゼオライト、ボロシリケートが挙げられる。
【0043】
Si系結晶性金属酸化物は、チタンを含んでいてもよい。
チタンを含むSi系結晶性金属酸化物においてチタンは、典型的には、ケイ素、酸素とともにSi系結晶性金属酸化物の結晶骨格を構成する。チタンを含むSi系結晶性金属酸化物は、ケイ素、チタン及び酸素以外の元素を更に含んでいてもよい。
【0044】
チタンを含むSi系結晶性金属酸化物において、ケイ素/チタンの原子比は、0.5以上が好ましい。ケイ素/チタンの原子比が0.5以上であれば、チタンを含むSi系結晶性金属酸化物が形成されやすい。
ケイ素/チタンの原子比は、50以下が好ましく、2以下が特に好ましい。
【0045】
チタンを含むSi系結晶性金属酸化物において、ケイ素の一部がホウ素に置換されていてもよい。
ケイ素の一部がホウ素に置換されている場合、ホウ素の酸化ホウ素(B)換算での含有量は、ガラス原料との親和性の点から、チタンを含むSi系結晶性金属酸化物の総質量に対して50質量%以下が好ましい。
(ケイ素+ホウ素)/チタンの原子比の好ましい範囲は、上述のケイ素/チタンの原子比の好ましい範囲と同様である。
【0046】
チタンを含むSi系結晶性金属酸化物は、アルカリ金属を含むことが好ましい。
チタンを含むSi系結晶性金属酸化物がアルカリ金属を含む場合、アルカリ金属の酸化物換算での含有量は、ガラス固化しやすさの点から、チタンを含むSi系結晶性金属酸化物の総質量に対して、5~30質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
アルカリ金属/チタンの原子比は、1以上が好ましい。アルカリ金属/チタンの原子比が1以上であれば、吸着容量がより優れる。
【0047】
チタンを含むSi系結晶性金属酸化物としては、例えば、結晶性シリコチタン酸塩が挙げられる。結晶性シリコチタン酸塩としては、例えば、Natisite[NaTiSiO](正方晶)、ETS-4[NaTiSi1238(OH)・12HO](斜方晶)、AM-1(JDF-L1)[NaTiSi22・4HO](正方晶)等が挙げられる。
ここで、ETS-4は、米国のEngelhard社に由来する名称で、Engelhard TitanoSilicate-4ともいう。AM-1は、ポルトガルのAveiro大学とイギリスのManchester大学に由来する名称で、Aveiro-Manchester material number 1ともいう。JDF-L1は、中国の吉林大学(Jilin University)と英国王立研究所のDavy-Faraday研究室に由来する名称で、Jilin-Davy-Faraday,Layered solid no.1ともいう。
【0048】
Si系結晶性金属酸化物は、(i)結晶子サイズが500nm以下であること、及び(ii)イオン交換を行う結晶面の他の結晶面に対するアスペクト比が1以上であること、のいずれか一方又は両方を満たすことが好ましい。(i)及び(ii)のいずれか一方又は両方を満たすSi系結晶性金属酸化物は、吸着容量が高い。吸着容量が高い吸着剤を用いることで、装置規模の低減が可能となる。
なお、上記(i)及び(ii)のいずれか一方又は両方を満たすSi系結晶性金属酸化物を用いるほか、H水でのエッチング処理等によって無機吸着剤の表面積を大きくすることによっても、吸着容量を高めることができる。
【0049】
(i)の結晶子サイズは、200nm以下が好ましい。結晶子サイズの下限は、例えば10nmである。結晶子サイズは、例えば、XRD法により測定される。
後述するドライゲルコンバージョン法を用いてSi系結晶性金属酸化物を製造すると、水熱合成法を用いて製造する場合に比べて、結晶子サイズが小さくなる傾向がある。また、ケイ素/チタンの原子比やナトリウム/チタンの原子比を調整することによっても結晶子サイズを調整できる。
【0050】
(ii)のアスペクト比(ac面,bc面に対するab面の比率)は、1.5以上が好ましい。アスペクト比は、例えば、XRD法により測定される。
Si系結晶性金属酸化物の製造時に媒晶剤を添加する(フッ化物イオン等のアニオンを共存させる)ことで、結晶成長方向の制御が可能である。例えば、Natisiteであれば、媒晶剤を用いてab軸方向に成長させるか、c軸方向の成長を抑制することで、イオン交換を行う結晶面であるab面の他の結晶面(ac面、bc面)に対するアスペクト比を大きくすることができる。
【0051】
無機吸着剤の形状は特に限定されないが、ペレット状であることが好ましい。無機吸着剤がペレット状であれば、カラムに充填して使用できる。また、粉末状である場合に比べ、ハンドリング性が良好である。ペレットの大きさは特に限定されないが、例えば円形の場合、直径5~50mm、厚さ1~10mm程度が好ましい。
【0052】
無機吸着剤は市販のものを用いてもよく、製造したものを用いてもよい。
チタンを含むSi系結晶性金属酸化物(以下、「Si-Ti系結晶性金属酸化物」とも記す。)の好ましい一例として、以下のステップS5-1~S5-3を有する製造方法が挙げられる。
ステップS5-1:少なくとも、ケイ素を含む第1の結晶性物質と、チタンを含む第2の結晶性物質とを含む2種以上の原料を乾式で混合するステップ。
ステップS5-2:ステップS5-1によって前記2種以上の原料が混合された混合物を成形するステップ。
ステップS5-3:ステップS5-2によって成形された前記混合物(以下、「成形体」とも記す。)をドライゲルコンバージョン法により処理するステップ。
【0053】
「ステップS5-1」
第1の結晶性物質は、Si-Ti系結晶性金属酸化物のケイ素源であり、ケイ素以外の元素を含んでいてもよい。第1の結晶性物質としては、例えば、結晶性ケイ酸ナトリウム(例えば[δ-NaSi])が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
第2の結晶性物質は、Si-Ti系結晶性金属酸化物のチタン源であり、チタン以外の元素を含んでいてもよい。第2の結晶性物質として例えば、結晶性チタン酸ナトリウム(例えば[NaTi14])が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0054】
第1の結晶性物質と第2の結晶性物質の混合比は、ステップS5-1で得られる混合物におけるケイ素/チタンの原子比が0.5~50となるように設定することが好ましい。ケイ素/チタンの原子比が0.5以上であれば、Si系結晶性金属酸化物が形成されやすく、50以下であれば、局所的な二酸化ケイ素の形成を抑制出来る。
ケイ素/チタンの原子比は、0.5~2がより好ましい。
なお、過剰なケイ素は過剰部で局所的に二酸化ケイ素の構造となるため、吸着性能を阻害しないと考えられる。
【0055】
必要に応じて、第1の結晶性物質及び第2の結晶性物質とともに、他の原料を混合してもよい。他の原料としては、例えば媒晶剤が挙げられる。
媒晶剤としては、例えばフッ化ナトリウム等のアルカリ金属のハロゲン化物、塩化バリウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物、亜硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム等が挙げられる。
【0056】
2種以上の原料は、乾式で、つまり水等の液状媒体を加えずに混合する。これにより、Si-Ti系結晶性金属酸化物を得る過程で液状媒体の蒸発乾固処理等を行う必要がなく、無機吸着剤の製造に要する時間を短縮できる。
混合方法は、公知の乾式混合方法を用いることができる。例えば第1の結晶性物質及び第2の結晶性物質がそれぞれ粉末状である場合、それらを粉体混合すればよい。
【0057】
「ステップS5-2」
ステップS5-1で得られた混合物は、例えばプレス成形により成形できる。
プレス成形における圧力は、例えば20~50MPaである。
プレス成形時の温度は、例えば10~40℃である。
【0058】
混合物を成形した成形体の形状は特に限定されないが、ペレット状であることが好ましい。成形体がペレット状であれば、ペレット状の無機吸着剤が得られる。無機吸着剤がペレット状であれば、カラムに充填して使用できる。また、粉末状である場合に比べ、ハンドリング性が良好である。ペレットの大きさは特に限定されないが、例えば円形の場合、直径5~50mm、厚さ1~10mm程度が好ましい。
【0059】
「ステップS5-3」
ドライゲルコンバージョン法とは、水蒸気、例えば加圧水蒸気を用いて、気相で結晶化を促す手法のことを示す。
成形体をドライゲルコンバージョン法により処理すると、Si-Ti系結晶性金属酸化物が生成する。
成形体をドライゲルコンバージョン法により処理するには、例えば、耐圧容器に水と成形体とをそれらが接触しないように入れ、加熱する。
耐圧容器としては、例えば水熱合成用容器を使用できる。耐圧容器は、耐熱性に優れる点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製が好ましい。
水と成形体とが接触しないようにするには、例えば、耐圧容器内に、上面が水面から突出するように台座を配置し、台座の上面に成形体を載置する。台座は、耐熱性に優れる点から、PTFE製が好ましい。
加熱温度は、150℃以上、耐圧容器の耐熱温度以下が好ましい。耐圧容器の耐熱温度は、例えばPTFE製の場合は260℃程度である。
加熱時間は、加熱温度によっても異なるが、12時間以上が好ましい。
【0060】
ステップS5-3後、必要に応じて、得られたSi-Ti系結晶性金属酸化物を水で洗浄し、乾燥してもよい。
【0061】
このようにして、Si-Ti系結晶性金属酸化物を含み、ステップS5-2で成形した成形体と同様の形状を有する無機吸着剤が得られる。
Si-Ti系結晶性金属酸化物におけるケイ素/チタンの原子比は、ステップS5-1で得られる混合物におけるケイ素/チタンの原子比と同様である。
【0062】
(ステップS1-6:混合)
ステップS1-6で廃吸着剤に混合するガラス原料は、ケイ素を含む。
ケイ素を含むガラス原料は通常、ケイ素を含む酸化物を含む。
ガラス原料は、ケイ素及び酸素以外の他の元素を更に含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、ホウ素、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)、その他の金属元素(アルミニウム、亜鉛、鉛等)が挙げられる。
ガラス原料は、ホウ素を含むことが好ましい。ガラス原料がホウ素を含むことで、混合物、ひいてはガラス固化体にホウ素を含有させることができる。ガラス固化体においてホウ素は中性子吸収剤として機能する。
ガラス原料は公知のガラス原料のなかから適宜選択して使用できる。ガラス原料は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ガラス原料の組成は、無機吸着剤の組成と、ステップS1-6によって得ようとする混合物の組成を勘案して設定される。
【0063】
ガラス原料中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量は、ガラス原料の総質量に対して20~95質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましい。ガラス原料中のケイ素の含有量が20~95質量%であれば、混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量を20~95質量%としやすい。
【0064】
ガラス原料中のホウ素の酸化ホウ素換算での含有量は、ガラス原料の総質量に対して5~60質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。ガラス原料中のホウ素の含有量が5~60質量%であれば、混合物中のホウ素の酸化ホウ素換算での含有量を5~60質量%としやすい。
【0065】
ガラス原料の好ましい組成の一例を以下に示す。各成分の含有量は、ガラス原料の総質量(2種以上を組み合わせる場合は2種以上のガラス原料の合計質量)に対する割合である。ただし、本発明で用いられるガラス原料の組成はこれに限定されるものではない。
SiO:20~95質量%(更には50~70質量%)、
:5~60質量%(更には10~30質量%)、
NaO:0~20質量%(更には0~10質量%)、
TiO:0質量%、
その他の酸化物:0~25質量%(更には0~20質量%)。
【0066】
廃吸着剤へのガラス原料の混合量は、無機吸着剤の組成と、ステップS1-6によって得ようとする混合物の組成を勘案して設定され、特に限定されないが、例えば、ガラス原料/廃吸着剤で表される質量比で、0.1/1~3/1が好ましく、0.5/1~2/1がより好ましい。ガラス原料の混合量が多いほど、ガラス固化体の均一性に優れる傾向があり、ガラス原料の混合量が少ないほど、廃棄物の減容性に優れる傾向がある。
【0067】
ステップS1-6によって得られる混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量は、混合物の総質量に対して20~95質量%であり、30~60質量%が好ましく、40~55質量%がより好ましい。混合物中のケイ素の含有量が20~95質量%であれば、混合物を良好にガラス固化でき、得られるガラス固化体の均一性に優れる。
【0068】
混合物中のホウ素の酸化ホウ素(B)換算での含有量は、混合物の総質量に対して5~60質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましく、10~20質量%が更に好ましい。混合物中のホウ素の含有量が5質量%以上であれば、中性子吸収剤としての機能が十分に発現し、60質量%以下であれば、ガラス固化への親和性が良好で、得られるガラス固化体の均一性がより優れる。
【0069】
混合物中のアルカリ金属のアルカリ金属酸化物換算での含有量は、混合物の総質量に対して40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。混合物中のアルカリ金属の含有量が40質量%以下であれば、ガラス固化への親和性が良好で、得られるガラス固化体の均一性がより優れる。
【0070】
混合物中のチタンの二酸化チタン(TiO)換算での含有量は、混合物の総質量に対して50質量%以下が好ましく、20質量%がより好ましい。混合物中のチタンの含有量が50質量%以下であれば、ガラス固化への親和性が良好で、得られるガラス固化体の均一性がより優れる。
【0071】
混合物の好ましい組成の一例を以下に示す。各成分の含有量は、混合物の総質量に対する割合である。
SiO:20~95質量%(更には30~60質量%、更には40~55質量%)、
:5~60質量%(更には10~30質量%、更には10~20質量%)、
NaO:0~40質量%(更には0~20質量%)、
TiO:0~50質量%(更には0~20質量%、)、
その他の酸化物:0~35質量%(更には0~20質量%)。
【0072】
(ステップS1-7:ガラス固化)
混合物をガラス固化する方法としては、例えば溶融炉を用いて混合物を溶融し、溶融体を冷却固化する方法等が挙げられる。
【0073】
(作用効果)
上記構成の処理方法では、廃吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合し、得られる混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量を20~95質量%としているので、廃吸着剤を良好にガラス固化でき、得られるガラス固化体の均一性に優れる。
【0074】
また、上記構成の処理方法では、廃吸着剤を、Lnを溶離させることなくガラス固化するので、図5に示す比較例に係るプロセスに比べて、MA精製工程で発生する廃液量を低減でき、廃液濃縮の負荷、濃縮を行うための設備規模を低減できる。
図5に示す比較例に係るプロセスでは、MA精製工程で溶媒抽出及び逆抽出を行うので、MA含有溶液のMA濃度が低く、これを濃縮する必要があるが、上記構成の処理方法では、廃吸着剤と分離されたMA含有溶液がMAを高濃度に含むので、これを濃縮することなくMA燃料製造に供することができ、濃縮する場合でも濃縮負荷が少ない。
また、図5に示す比較例に係るプロセスでは、MA精製工程で溶媒抽出及び逆抽出を行うので、低濃度のLn含有溶液が発生し、これを濃縮する必要があるが、上記構成の処理方法では、低濃度のLn含有溶液が発生せず、廃液濃縮の負荷をより低減できる。
【0075】
また、上記構成の処理方法では、固化体を溶解することでLnとMAとを含む溶液を得るので、図5に示す比較例に係るプロセスのように濃縮工程を行わなくても、MA及びLnを高濃度に含む放射性溶液が得られる。
【0076】
また、上記構成の処理方法では、HALWからMAを分離するので、HALWの処分負荷を低減できる。HALWからMAを分離した後の廃液をガラス固化した固化体は、HALWの全量をガラス固化した固化体に比べ、量が少なく、閉じ込め期間も短いので、地層処分の負荷が少ない。また、分離したMAを固化体として保管するので、溶液形態で保管する場合に比べて、保管の負荷が少ない。固化体を、固化体に含まれる高発熱性のMAが十分に減衰するまで保管することで、MA含有溶液からの高発熱性のMAの分離を不要にすることもできる。
【0077】
<第二実施形態>
以下、本開示の第二実施形態に係る処理方法について、図2を参照して説明する。
図2に示すように、本発明の第二実施形態に係る処理方法は、
HALWからMAをLnとともに分離する分離処理を行うことで、MA・Ln含有溶液を得るステップS2-1と、
MA・Ln含有溶液を固化する固化処理を行うことで、MA及びLnを含む固化体を得るステップS2-2と、
ステップS2-2によって得た固化体を保管するステップS2-3と、
ステップS2-3によって保管した後の固化体を溶解するステップS2-4と、
ステップS1-4によって得た固化体溶液に、MAに選択的に配位する配位子を加え、MAの見かけのイオン半径をLnのイオン半径よりも大きくするステップS2-5と、
ステップS2-5によってMAの見かけのイオン半径を大きくした固化体溶液のLnを、無機吸着剤に吸着させ、Lnを吸着した無機吸着剤(廃吸着剤)と固化体溶液とを分離することによって、MA精製(MAとLnとを分離)するステップS2-6と、
ステップS2-6によって固化体溶液と分離された廃吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合するステップS2-7と、
ステップS2-7によって得た混合物をガラス固化するステップS2-8と、
を有する。
本実施形態に係る処理方法は、必要に応じて、ステップS2-2の後、ステップS2-3の前に、固化体に対し、前記した安定化処理を行うステップを更に有していてもよい。
【0078】
ステップS2-1によってMA及びLnが分離された後に残る廃液(FP含有溶液)は、濃縮し、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
ステップS2-6によって廃吸着剤と分離された、Lnを無機吸着剤に吸着させた後の固化体溶液は、MAを含む溶液(MA含有溶液)である。MA含有溶液は、必要に応じて高発熱性のMAを分離した後、燃料製造に用いる。例えば、MA含有溶液をU、Puと混合し、混合酸化物を得ることにより、燃料を製造する。得られた燃料は、高速増殖炉等で燃焼する。
ステップS2-8によって得たガラス固化体は、例えば、保管し、地層処分する。
【0079】
(ステップS2-1:分離処理)
ステップS2-1は、ステップS1-1と同様である。
【0080】
(ステップS2-2:固化処理)
ステップS2-2は、ステップS1-2と同様である。
【0081】
(ステップS2-3:保管)
ステップS2-3は、ステップS1-3と同様である。
【0082】
(ステップS2-4:固化体溶解)
ステップS2-4は、ステップS1-4と同様である。
【0083】
(ステップS2-5:配位子添加)
前記した表1に示すように、LnのなかにはMAよりもイオン半径が大きいものがある。前記した第一実施形態では、このようなLnはLn吸着剤に吸着しにくく、MA含有溶液に残りやすい。そこで、固化体溶液に、MAに選択的に配位する配位子を加え、MAの見かけのイオン半径をLnのイオン半径よりも大きくすることで、MAよりもイオン半径が大きいLnもLn吸着剤に吸着させることができる。
【0084】
HASB(Hard and Soft Acids and Bases)理論において、MAのカチオンは、NやS等のソフトな塩基と錯形成しやすく、Lnのカチオンは、Oのようにハードな塩基と錯形成しやすい。したがって、MAに選択的に配位する配位子としては、ソフトな塩基が用いられる。
MAに選択的に配位する配位子の具体例としては、C2-BTP(2,6-bis(5,6-dietyl-1,2,4-triazin-3-yl))、ADAAM(アルキルジアミドアミン)等が挙げられる。
【0085】
MAの見かけのイオン半径は、表1に示したLnと分離しやすい点で、5.5Å以上が好ましく、10Å以上がより好ましい。
MAの見かけのイオン半径は、使用する配位子によって調整できる。
【0086】
(ステップS2-6:MA精製(吸着処理))
ステップS2-6は、ステップS1-5と同様である。
ただし、ステップS2-6では、無機吸着剤として、ステップS2-5で見かけのイオン半径を大きくしたMAを吸着しにくく、該MAよりもイオン半径の小さいLnを吸着しやすい吸着剤が選択される。例えば、MAの見かけの水和イオン半径が10Å以上の場合、水和イオン半径が10Å以上のイオンを吸着しにくく、水和イオン半径が10Å未満(例えば5.20Å以下)のLnを吸着しやすい吸着剤が選択される。
【0087】
(ステップS2-7:混合)
ステップS2-7は、ステップS1-6と同様である。
【0088】
(ステップS2-8:ガラス固化)
ステップS2-8は、ステップS1-7と同様である。
【0089】
(作用効果)
上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、廃吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合し、得られる混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量を20~95質量%としているので、廃吸着剤を良好にガラス固化でき、得られるガラス固化体の均一性に優れる。
【0090】
また、上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、廃吸着剤を、Lnを溶離させることなくガラス固化するので、図5に示す比較例に係るプロセスに比べて、MA精製工程で発生する廃液量を低減でき、廃液濃縮の負荷、濃縮を行うための設備規模を低減できる。
また、上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、固化体を溶解することでLnとMAとを含む溶液を得るので、図5に示す比較例に係るプロセスのように濃縮工程を行わなくても、MA及びLnを高濃度に含む放射性溶液が得られる。
また、上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、HALWからMAを分離するので、HALWの処分負荷を低減できる。
【0091】
また、上記構成の処理方法では、MA・Ln含有溶液のLnを吸着剤により吸着する前に、MAの見かけのイオン半径をLnのイオン半径よりも大きくするので、MAよりもイオン半径が大きいLnもLn吸着剤で吸着でき、MAをより選択的に分離できる。
【0092】
<第三実施形態>
以下、本開示の第三実施形態に係る処理方法について、図3を参照して説明する。
図3に示すように、本発明の第三実施形態に係る処理方法は、
HALWからMAをLnとともに分離する分離処理を行うことで、MA・Ln含有溶液を得るステップS3-1と、
MA・Ln含有溶液を固化する固化処理を行うことで、MA及びLnを含む固化体を得るステップS3-2と、
ステップS3-2によって得た固化体を保管するステップS3-3と、
ステップS3-3によって保管した後の固化体を溶解するステップS3-4と、
ステップS3-4によって得た固化体溶液に対して抽出処理(溶媒抽出及び逆抽出)を行うことによって、MA精製(MAとLnとを分離)するステップS3-5と、
ステップS3-5によってMAと分離されたLnを含む溶液(Ln含有溶液)のLnを無機吸着剤に吸着させ、Lnを吸着した無機吸着剤(廃吸着剤)と溶液とを分離するステップS3-6と、
ステップS3-6によって溶液と分離された廃吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合するステップS3-7と、
ステップS3-7によって得た混合物をガラス固化するステップS3-8と、
を有する。
本実施形態に係る処理方法は、必要に応じて、ステップS3-2の後、ステップS3-3の前に、固化体に対し、前記した安定化処理を行うステップを更に有していてもよい。
【0093】
ステップS3-1によってMA及びLnが分離された後に残る廃液(FP含有溶液)は、濃縮し、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
ステップS3-5によってLnと分離されたMAを含む溶液(MA含有溶液)は、必要に応じて高発熱性のMAを分離した後、燃料製造に用いる。例えば、MA含有溶液をU、Puと混合し、混合酸化物を得ることにより、燃料を製造する。得られた燃料は、高速増殖炉等で燃焼する。
ステップS3-8によって得たガラス固化体は、例えば、保管し、地層処分する。
【0094】
(ステップS3-1:分離処理)
ステップS3-1は、ステップS1-1と同様である。
【0095】
(ステップS3-2:固化処理)
ステップS3-2は、ステップS1-2と同様である。
【0096】
(ステップS3-3:保管)
ステップS3-3は、ステップS1-3と同様である。
【0097】
(ステップS3-4:固化体溶解)
ステップS3-4は、ステップS1-4と同様である。
ステップS3-4~S3-6を複数回繰り返す場合、ステップS3-6において廃吸着剤を分離した後に残った溶媒を回収し、この溶媒を、ステップS3-4において固化体を溶解する溶媒として用いることができる。
同様に、ステップS3-5においてMA及びLnを溶媒抽出した後に残った廃液を回収し、ステップS3-4において固化体を溶解する溶媒として用いることができる。
【0098】
(ステップS3-5:MA精製(抽出処理))
ステップS3-4では、まず、溶媒抽出を行う。ステップS3-4で得た溶液と、抽出剤を含む有機溶媒溶液(抽出剤溶液)とを接触させると、MA及びLnが抽出剤溶液側に移行する。その後、得られた抽出液に対し、MAとLnとが分離されるように逆抽出を行うことで、Ln含有溶液とMA含有溶液とが得られる。
【0099】
溶媒抽出には、Ln及びMAを抽出可能な抽出剤を用いる。このような抽出剤としては、例えば、ステップS1-1で挙げた抽出剤が挙げられる。
なお、溶媒抽出に、Ln及びMAのうちMAを選択的に抽出する抽出剤を用いてもよい。このような抽出剤としては、選択的にMAと錯体を形成する錯化剤が挙げられ、具体例としては、DIDPA、CMPO等のリン含有抽出剤、TDDGA(テトラデシルDGA)やTDdDGA(テトラドデシルDGA)等のDGA(ジグリコールアミド)系抽出剤、HONTA(ヘキサオクチルニトリロトリアセトアミド)やADAAM(EH)(アルキルジアミドアミン)等が挙げられる。
抽出剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
有機溶媒は、使用する抽出剤に応じて適宜選定できる。有機溶媒は、再利用可能であること、安価であること、放射線劣化に耐性があることが望ましい。有機溶媒の具体例としては、例えばn-ドデカンが挙げられる。有機溶媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
逆抽出処理では、例えば、抽出液と、硝酸を含む水溶液(ストリッピング剤)とを接触させる。これにより、抽出液中のMAとLnが水溶液側に移行する。この際、硝酸濃度等の変更やジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等の添加剤の添加を行うことで、MAとLnとを別々に水溶液側に移行させることができる。一方、抽出液中の有機溶媒は水溶液側に移行せずに抽出液側に残るので、再利用できる。
【0102】
ステップS3-5では、前記したように、ステップS3-4で得た溶液からMA及びLnを抽出した後に残った廃液を回収し、ステップS3-4に用いることができる。
【0103】
(ステップS3-6:吸着処理)
ステップS3-6は、固化体溶液の代わりにステップS3-5によって得たLn含有溶液を用いる以外は、ステップS1-5と同様である。
【0104】
本実施形態では、ステップS2-5でMAとLnがすでに分離されているので、ステップS2-6で用いる無機吸着剤は、Ln及びMAを非選択的に吸着するものでもよい。かかる無機吸着剤は、選択的にLnを吸着するものに比べて機能が少なくてよいため、安価である。
【0105】
ステップS3-6では、前記したように、Ln含有溶液からLnを分離した後に残った溶媒を回収し、ステップS3-4に用いることができる。
【0106】
(ステップS3-7:混合)
ステップS3-7は、ステップS1-6と同様である。
【0107】
(ステップS3-8:ガラス固化)
ステップS3-8は、ステップS1-7と同様である。
【0108】
(作用効果)
上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、廃吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合し、得られる混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量を20~95質量%としているので、廃吸着剤を良好にガラス固化でき、得られるガラス固化体の均一性に優れる。
【0109】
MA精製工程で溶媒抽出及び逆抽出を行うプロセスでは、低濃度のLn含有溶液が発生する。図5に示す比較例に係るプロセスでは、このLn含有溶液をガラス固化する前に濃縮する必要がある。
上記構成の処理方法では、Ln含有溶液からLnを固体(廃吸着剤)として分離できるので、低濃度のLn含有溶液を濃縮する必要がない。また、溶媒抽出後及び吸着処理後の廃液をステップS3-4に再利用できる。したがって、図5に示す比較例に係るプロセスに比べて、廃液濃縮の負荷、濃縮を行うための設備規模を低減できる。
また、上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、廃吸着剤を、Lnを溶離させることなくガラス固化するので、図5に示す比較例に係るプロセスに比べて、MA精製工程で発生する廃液量を低減でき、廃液濃縮の負荷、濃縮を行うための設備規模を低減できる。
また、上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、固化体を溶解することでLnとMAとを含む溶液を得るので、図5に示す比較例に係るプロセスのように濃縮工程を行わなくても、MA及びLnを高濃度に含む放射性溶液が得られる。
また、上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、HALWからMAを分離するので、HALWの処分負荷を低減できる。
【0110】
<第四実施形態>
以下、本開示の第四実施形態に係る処理方法について、図4を参照して説明する。
図4に示すように、本発明の第四実施形態に係る処理方法は、
HALWからMAをLnとともに分離する分離処理を行うことで、MA・Ln含有溶液を得るステップS4-1と、
ステップS4-1によって得たMA・Ln含有溶液を濃縮するステップS4-2と、
ステップS4-2によって得た濃縮液のLnを無機吸着剤に吸着させ、Lnを吸着した無機吸着剤(廃吸着剤)と濃縮液とを分離することによって、MA精製(MAとLnとを分離)するステップS4-3と、
ステップS4-3によって濃縮液と分離された廃吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合するステップS4-4と、
ステップS4-4によって得た混合物をガラス固化するステップS4-5と、
を有する。
【0111】
ステップS4-1によってMA及びLnが分離された後に残る廃液(FP含有溶液)は、濃縮し、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
ステップS4-3によってLnと分離されたMAを含む溶液(MA含有溶液)は、更に濃縮し、必要に応じて高発熱性のMAを分離した後、燃料製造に用いる。例えば、MA含有溶液をU、Puと混合し、混合酸化物を得ることにより、燃料を製造する。得られた燃料は、高速増殖炉等で燃焼する。
ステップS4-5によって得たガラス固化体は、例えば、保管し、地層処分する。
【0112】
(ステップS4-1:分離処理)
ステップS4-1は、ステップS1-1と同様である。
【0113】
(ステップS4-2:濃縮)
濃縮方法としては、蒸発濃縮法等の公知の濃縮方法を利用できる。ステップS4-2では、ステップS4-2で濃縮した後のMA・Ln含有溶液がHALWと同程度の濃度となるようにMA・Ln含有溶液濃縮すればよい。
MA含有溶液の濃縮も同様である。
【0114】
(ステップS4-3:MA精製(吸着処理))
ステップS4-3は、ステップS1-5と同様である。
【0115】
(ステップS4-4:混合)
ステップS4-4は、ステップS1-6と同様である。
【0116】
(ステップS4-6:ガラス固化)
ステップS4-6は、ステップS1-7と同様である。
【0117】
(作用効果)
上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、廃吸着剤に、ケイ素を含むガラス原料を混合し、得られる混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量を20~95質量%としているので、廃吸着剤を良好にガラス固化でき、得られるガラス固化体の均一性に優れる。
【0118】
また、上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、廃吸着剤を、Lnを溶離させることなくガラス固化するので、図5に示す比較例に係るプロセスに比べて、MA精製工程で発生する廃液量を低減でき、廃液濃縮の負荷、濃縮を行うための設備規模を低減できる。
また、上記構成の処理方法では、第一実施形態と同様に、HALWからMAを分離するので、HALWの処分負荷を低減できる。
【0119】
<その他の実施形態>
以上、本開示の処理方法の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0120】
上記第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態それぞれにおいて、HALWの分離処理によって得たMA・Ln含有溶液を濃縮して固化処理に供してもよい。
上記第四実施形態において、ステップS4-2を省略し、MA・Ln含有溶液を濃縮することなくステップS4-3に供してもよい。
【0121】
上記第三実施形態において、ステップS3-6の前に、ステップS3-5によって得たLn含有溶液に、MAに選択的に配位する配位子を加え、MAの見かけのイオン半径をLnのイオン半径よりも大きくするステップを有していてもよい。
上記第四実施形態において、ステップS4-3の前に、ステップS4-2によって得た濃縮液に、MAに選択的に配位する配位子を加え、MAの見かけのイオン半径をLnのイオン半径よりも大きくするステップを有していてもよい。
【0122】
本開示の処理方法によって処理される廃吸着剤は、Ln及びMAのうちLnのみを吸着していてもよく、MAのみを吸着していてもよく、Ln及びMAの両方を吸着していてもよい。
上記第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態それぞれにおいて、HALWの分離処理によって得たMA・Ln含有溶液のLn及びMAを無機吸着剤に吸着させ、Ln及びMAを吸着した無機吸着剤をMA・Ln含有溶液から分離し、ガラス固化してもよい。
【0123】
<付記>
各実施形態に記載の処理方法は、例えば以下のように把握される。
(1)上記第一実施形態~第四実施形態に係る処理方法は、廃吸着剤(Ln又は/及びMAを吸着した無機吸着剤)に、ケイ素を含むガラス原料を混合するステップ(S1-6、S2-7、S3-7、S4-4)と、前記ガラス原料を混合するステップにより得た混合物をガラス固化するステップ(S1-7、S2-8、S3-8、S4-5)と、を有し、混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量が、混合物の総質量に対して20~95質量%である。
【0124】
この処理方法では、廃吸着剤にケイ素を含むガラス原料を混合し、ケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量を20~95質量%としているので、廃吸着剤を良好にガラス固化でき、得られるガラス固化体の均一性に優れる。
【0125】
(2)上記第一実施形態~第四実施形態に係る処理方法においては、ガラス原料中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量が、ガラス原料の総質量に対して20~95質量%であることが好ましい。
かかるガラス原料を用いることで、混合物中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量を、混合物の総質量に対して20~95質量%としやすい。
【0126】
(3)上記第一実施形態~第四実施形態に係る処理方法においては、ガラス原料がホウ素を含み、混合物中のホウ素の酸化ホウ素換算での含有量が、混合物の総質量に対して5~60質量%であることが好ましい。
ガラス原料がホウ素を含むことで、ガラス固化体にホウ素を含有させることができる。ガラス固化体においてホウ素は中性子吸収剤として機能する。
混合物中のホウ素の含有量が5質量%以上であることで、中性子吸収剤としての機能が十分に発現し、60質量%以下であることで、得られるガラス固化体の均一性がより優れる。
【0127】
(4)上記第一実施形態~第四実施形態に係る処理方法においては、廃吸着剤がケイ素を含み、廃吸着剤中のケイ素の二酸化ケイ素換算での含有量が、廃吸着剤の総質量に対して20~90質量%であることが好ましい。
かかる廃吸着剤は、ガラス原料との親和性が良好で、得られるガラス固化体の均一性がより優れる。
【0128】
(5)上記第一実施形態~第四実施形態に係る処理方法においては、混合物中のアルカリ金属のアルカリ金属酸化物換算での含有量が、混合物の総質量に対して40質量%以下であることが好ましい。
混合物中のアルカリ金属の含有量が40質量%以下であることで、ガラス固化との親和性が良好となり、得られるガラス固化体の均一性がより優れる。
混合物がアルカリ金属を含む場合、アルカリ金属は、廃吸着剤に由来するものでもよく、ガラス原料に由来するものでもよく、それらの両方に由来するものでもよい。
【0129】
(6)上記第一実施形態~第四実施形態に係る処理方法においては、廃吸着剤がアルカリ金属を含むことが好ましい。
廃吸着剤がアルカリ金属を含むことで、混合物をガラス固化しやすくなる。
【0130】
(7)上記第一実施形態~第四実施形態に係る処理方法においては、混合物中のチタンの二酸化チタン換算での含有量が、混合物の総質量に対して50質量%以下であることが好ましい。
混合物中のチタンの含有量が50質量%以下であることで、ガラス固化との親和性が良好となり、得られるガラス固化体の均一性がより優れる。
混合物がチタンを含む場合、チタンは、廃吸着剤に由来するものでもよく、ガラス原料に由来するものでもよく、それらの両方に由来するものでもよいが、典型的には、廃吸着剤に由来する。
【0131】
(8)上記第一実施形態~第四実施形態に係る処理方法においては、廃吸着剤がチタンを含むことが好ましい。
チタンを含む無機吸着剤は、上述のドライゲルコンバージョン法を用いた製造方法によって容易にペレット状のものを製造することができ、吸着処理において廃吸着剤の分離が容易である。
【実施例0132】
以下に、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0133】
〔試験例1〕
(無機吸着剤の製造)
結晶性チタン酸ナトリウム([NaTi14])と結晶性ケイ酸ナトリウム([δ-NaSi])をケイ素/チタンの原子比が1となるように秤量し、混合した。得られた混合物を成型器に入れ、圧力400kgf/cm、で加圧成形し、直径20mm、厚さ5mmの円形状の成形体を得た。
水熱合成用PTFE容器内に水を入れた。また、成形体と水が接触しないようにPTFE製の台座を入れ、台座の上に成形体をセットした。次いで、200℃で20時間加熱した。その後、容器内の成形体を取出し、水で洗浄し、80℃で5時間乾燥して無機吸着剤を得た。
【0134】
製造例1で製造された無機吸着剤と、水熱合成法で製造されたNatisiteをXRDにより分析し比較した。その結果、製造例1で得られた無機吸着剤と従来法で製造されたNatisiteとは、XRDスペクトルチャートのピークが同様であることが観察された。このことから、製造例1で製造された無機吸着剤がNatisite[NaTiSiO]を含むことが確認された。
得られた無機吸着剤の組成を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
(ガラス原料の調製)
各種の酸化物を混合し、表3に示す組成のガラス原料粉体を調製した。
その他の酸化物としてはAl、CaO、ZnO及びLiOが含まれていた。
【0137】
【表3】
【0138】
(ガラス原料及び無機吸着剤の混合)
上記ガラス原料粉体及び上記無機吸着剤を、ガラス原料/無機吸着剤=2/1の質量比で混合した。得られた混合物の組成を表4に示す。
【0139】
【表4】
【0140】
(混合物のガラス固化)
上記混合物をるつぼ(内径φ:30~40mm、高さ:30mm、材質:インコネル)に収容し、このるつぼを管状炉に入れ、1200℃で2~3時間熱処理した。その後、急速空冷したところ、ガラス固化体が得られた。
【0141】
(評価)
外観観察によりガラス固化体の表面及び断面の気泡や偏析の有無を評価した。その結果、顕著な気泡は確認されず,固化体の呈色も均一であり,偏析等は生じていなかった。
また、EPMA(電子プローブマイクロアナライザ)によりガラス固化体の断面の元素分布を分析した。その結果、ガラス原料の主要成分であるSiやB、無機吸着剤の主要成分であるTiやNaが均一に分布していることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5