(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037388
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】前立て芯構造体および制帽
(51)【国際特許分類】
A42C 3/02 20060101AFI20230308BHJP
F16B 21/08 20060101ALI20230308BHJP
A42C 5/00 20060101ALI20230308BHJP
A42B 1/00 20210101ALI20230308BHJP
【FI】
A42C3/02
F16B21/08
A42C5/00 B
A42B1/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144098
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】599025651
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴司
(72)【発明者】
【氏名】福原 悠太
(72)【発明者】
【氏名】染谷 和秀
【テーマコード(参考)】
3J037
【Fターム(参考)】
3J037AA02
3J037BA02
3J037BB04
3J037DA01
3J037DB02
(57)【要約】
【課題】帽章を使用することなく、かつ、制帽に容易に着脱可能な前立て芯構造体を提供する。
【解決手段】前立て芯構造体100は、天井部と、環状の腰部と、当該腰部の裏側において当該腰部に沿って設けられる腰芯材と、当該天井部の周縁と当該腰部の周縁とを接続する生地状の襠部と、庇部とを含む制帽において、当該襠部のうち庇部側を立ち上げるための構造であって、前記襠部の裏側において当該襠部を立ち上げる前立て芯材20と、前記腰芯材20に取り付けられ、前記前立て芯材20を保持するための保持部材30とを具備し、前記前立て芯材20は、前記襠部側の面において第1係合部K1を含み、前記保持部材30は、前記腰芯材の裏側に位置し、前記第1係合部に着脱可能に係合する第2係合K2を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部と、環状の腰部と、当該腰部の裏側において当該腰部に沿って設けられる腰芯材と、当該天井部の周縁と当該腰部の周縁とを接続する生地状の襠部と、庇部とを含む制帽において、当該襠部のうち庇部側を立ち上げるための構造であって、
前記襠部の裏側において当該襠部を立ち上げる前立て芯材と、
前記腰芯材に取り付けられ、前記前立て芯材を保持するための保持部材とを具備し、
前記前立て芯材は、前記襠部側の面において第1係合部を含み、
前記保持部材は、前記腰芯材の裏側に位置し、前記第1係合部に着脱可能に係合する第2係合を含む
前立て芯構造体。
【請求項2】
前記保持部材は、前記腰芯材に着脱可能に取り付けられる
請求項1の前立て芯構造体。
【請求項3】
前記第1係合部および前記第2係合部において、一方は突出部であり、他方は前記突出部が嵌合可能な孔部である
請求項1または請求項2の前立て芯構造体。
【請求項4】
前記孔部と前記突出部とは、前記前立て芯材を180°回転させた場合においては相互に嵌合不可能な形状である
請求項3の前立て芯構造体。
【請求項5】
前記孔部と前記突出部とは、前記前立て芯材を180°回転させた場合においても相互に嵌合可能な形状である
請求項3の前立て芯構造体。
【請求項6】
前記第1係合部および前記第2係合部は、面ファスナである
請求項1または請求項2の前立て芯構造体。
【請求項7】
前記前立て芯材は、
前記襠部に対応する第1部分と、
前記腰芯材に対応し、前記第1係合部が設けられる第2部分とを含み、
前記第1部分は、前記第2部分に対して傾斜するように設けられる
請求項1から請求項7の何れかの前立て芯構造体。
【請求項8】
前記前立て芯材は、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分を含み、
前記第3部分は、前記第2部分に対して70°以上110°以下の角度をなすように設けられる
請求項7の前立て芯構造体。
【請求項9】
前記保持部材は、当該腰芯材を把持可能なクリップ型である
請求項2の前立て芯構造体。
【請求項10】
天井部と、環状の腰部と、当該腰部の裏側において当該腰部に沿って設けられる腰芯材と、当該天井部の周縁と当該腰部の周縁とを接続する生地状の襠部と、庇部とを含む制帽であって、
請求項1から請求項9の何れかの前立て芯構造体が取り付けられた制帽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制帽における前立て芯構造体の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
警察官、自衛官や警備員等が業務上着用する制帽において、襠部における前面(庇部側)の傾斜部分は、制帽の裏側において前立て芯材により、傾斜した状態で高さ(深さ)をだすように維持されている。しかし、前立て芯材により傾斜を維持された状態の制帽は、体積が大きく、かさばるという問題がある。すなわち、前立て芯材が取り付けられた状態の制帽は、保管する際に大きい空間が必要になる。
【0003】
そこで、制帽に着脱可能に取り付けられる前立て芯材が提案されている。保管する際には前立て芯材を取り外することで、襠部をつぶした状態にする。一方で、着用時には前立て芯材を取り付けることで、襠部に高さを出す。
【0004】
例えば、特許文献1には、帽章を制帽に取り付けるためのネジを利用して前立て芯材を制帽に取り付ける構成が開示されている。また、特許文献2には、外側に腰部が取り付けられる芯材(いわゆる腰芯材)に前立て芯材の一部が差し込み可能な差込枠体を設ける構成が開示されている。たしかに、特許文献1および特許文献2の技術においても前立て芯材の着脱は可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-344236号公報
【特許文献2】実用新案登録第3080735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、前立て芯材を取り付けるのには帽章が必須であり、さらに帽章を取り付ける位置も制限されるという問題がある。また、特許文献2の技術では、天井部側から前立て芯材を差し込む必要があり、前立て芯材の着脱が非常にしにくいという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明では、帽章を使用することなく、かつ、制帽に容易に着脱可能な前立て芯構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る前立て芯構造体は、天井部と、環状の腰部と、当該腰部の裏側において当該腰部に沿って設けられる腰芯材と、当該天井部の周縁と当該腰部の周縁とを接続する生地状の襠部と、庇部とを含む制帽において、当該襠部のうち庇部側を立ち上げるための構造であって、前記襠部の裏側において当該襠部を立ち上げる前立て芯材と、前記腰芯材に取り付けられ、前記前立て芯材を保持するための保持部材とを具備し、前記前立て芯材は、前記襠部側の面において第1係合部を含み、前記保持部材は、前記腰芯材の裏側に位置し、前記第1係合部に着脱可能に係合する第2係合を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る前立て芯構造体によれば、帽章を使用することなく、かつ、制帽に容易に着脱可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る前立て芯構造体の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る前立て芯構造体が装着された状態の制帽を表す図である。
【
図3】第1実施形態に係る前立て芯構造体が取り外された状態の制帽を表す図である。
【
図4】第1実施形態に係る前立て芯材の正面図である。
【
図5】第1実施形態に係る前立て芯材の上面図である。
【
図6】第1実施形態に係る前立て芯材の側面図である。
【
図7】第1実施形態に係る保持部材の斜視図である。
【
図8】第1実施形態に係る保持部材の正面図である。
【
図9】第1実施形態に係る保持部材の側面図である。
【
図10】第1実施形態に係る前立て芯構造体が装着された状態の制帽の前側付近の拡大図である。
【
図11】第2実施形態に係る前立て芯材の第2部分の正面図である。
【
図12】第2実施形態に係る保持部材の正面図である。
【
図13】第3実施形態に係る前立て芯材の正面図である。
【
図14】第3実施形態に係る前立て芯材の側面図である。
【
図15】第3実施形態に係る前立て芯構造体が装着された状態の制帽の前側付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る前立て芯構造体100の斜視図である。本発明に係る前立て芯構造体100は、警察官、自衛官や警備員等が業務上着用する制帽500に用いられる芯に関する構造体である。
図2は、前立て芯構造体100が装着された状態の制帽500を表す図であり、
図3は、前立て芯構造体100が取り外された状態の制帽500を表す図である。
【0011】
図2および
図3に例示される通り、第1実施形態の制帽500は、天井部51と腰部53と腰芯材55と襠部57と庇部59とを具備する。天井部51は、制帽500における天井に位置する略円形の部分である。腰部53は、利用者の頭囲に応じた環状の部分である。腰芯材55は、腰部53を整形するための部材である。具体的には、腰芯材55は、腰部53の裏側において、当該腰部53に沿って設けられる帯状の部材である。腰芯材55の形状は、腰部53と同様に環状である。
【0012】
襠部57は、天井部51の周縁と当該腰部53の周縁とを接続する生地状の部分である。庇部59は、着用者の正面(前方)側に突出する部分である。なお、実際には、帽章(前章)や帯章(帽帯)等の各種の部品が用途に応じて適宜に制帽500に含まれ得る。
【0013】
図2に例示される通り、襠部57における前面側(庇部59側)は、前立て芯構造体100が制帽500に装着されることで、傾斜した状態で高さ(深さ)をだすように維持される。第1実施形態の前立て芯構造体100は、制帽500の裏側において着脱可能に装着される。そして、
図3に例示される通り、前立て芯構造体100が取り外されると、襠部57における高さがなくなり、天井部51の前面側が腰部53に近づいた状態になる。前立て芯構造体100が装着された状態では、天井部51が傾斜する状態にあり、前立て芯構造体100が取り外された状態では、水平面に平行な状態に天井部51が近づいた状態にあるとも換言できる。
【0014】
ここで、前立て芯構造体100が装着された状態では、
図2に例示される通り、高さが維持されるため、制帽500の体積が大きくなる。また、天井部51が傾斜した状態で高さが維持されるため、複数の制帽500を重ねて保管することも困難である。したがって、制帽500を保管する際には大きい空間が必要になる。以上の事情を考慮して、本発明に係る前立て芯構造体100は、制帽500に着脱可能に取り付けられる。したがって、装着時には前立て芯構造体100を制帽500に取り付け、保管時には前立て芯構造体100を取り外すことで天井部51が水平面に略平行な状態になり制帽500の体積を小さくすることが可能になる。
【0015】
以下、第1実施形態に係る前立て芯構造体100の構成について詳述する。
【0016】
図1に例示される通り、第1実施形態の前立て芯構造体100は、前立て芯材20と保持部材30とを具備する。前立て芯構造体100は、例えば樹脂で形成される。
図4は、前立て芯材20の正面図であり、
図5は、前立て芯材20の上面図であり、
図6は、前立て芯材20の側面図である。
【0017】
図2に例示される通り、前立て芯材20は、襠部57の裏側において当該襠部57を立ち上げる芯となる部材である。
図4から
図6に例示される通り、第1実施形態の前立て芯材20は、第1部分21と第2部分22とを含む。
【0018】
第1部分21は、前立て芯材20のうち襠部57に対応するプレート状の部分である。
図2に例示される通り、襠部57の裏側において配置される部分が第1部分21である。
図4および
図5に例示される通り、第1部分21は、襠部57における周方向に沿うように長尺状に形成される。
【0019】
第1部分21の幅W1(
図4)と、第1部分21の高さL1(
図6)とは、襠部57における庇部59側の形状に応じて適宜に設定される。
図2に例示される通り、第1部分21が襠部57の裏側に配置されることで、襠部57における前面側(庇部59側)が傾斜した状態で高さ(深さ)をだすように維持される。
【0020】
第1部分21における天井部51側の端部(
図6におけるZ方向の正側の端部)は、天井部51の周縁に当接するように曲面を含む。
図4に例示される通り、第1部分21には、帽章を取り付けるための複数の取付孔Sが設けられる。
【0021】
第2部分22は、前立て芯材20のうち腰芯材55に対応するプレート状の部分である。具体的には、第2部分22は、前立て芯材20を腰芯材55に取り付けるために使用される部分である。
図2に例示される通り、腰芯材55の裏側に配置される部分が第2部分22である。第1実施形態の第2部分22は、第1部分21のうち長手方向における周縁の一部から突出するように設けられる部分である。なお、第1部分21と第2部分22とは、直接的に接合されてもよい、連結部材等を介して間接的に接合されてもよい。
【0022】
第2部分22の幅W2(
図4)は、第1部分21の幅W1よりも小さい。第2部分22の高さ(
図6のL2)は、腰芯材55の高さに応じて適宜に設定される。前立て芯材20が全体としてT字型になるように第2部分22が設けられる。
【0023】
図6に例示される通り、第1部分21は、第2部分22に対して所定の角度θ1で傾斜するように設けられる。角度θ1は、制帽500の襠部57における前側の形状に応じて適宜に設定され、例えば100°以上170°以下であり、好適には120°以上165°以下である。
【0024】
第2部分22には、第1係合部K1が設けられる。具体的には、第2部分22のうち第1部分21と角度θ1をなす側の表面(第1部分21に近い側の表面)に第1係合部K1が設けられる。なお、第1係合部K1の詳細については後述する。
【0025】
図1の保持部材30は、前立て芯材20を保持するための部材である。
図7は、第1実施形態に係る保持部材30の斜視図であり、
図8は、保持部材30の正面図であり、
図9は、保持部材30の側面図である。なお、
図7には、相異なる方向からみた2つの斜視図を図示する。
【0026】
保持部材30は、腰芯材55に取り付けられる。第1実施形態では、着脱可能に腰芯材55に取り付けられる保持部材30を例示する。第1実施形態の保持部材30は、クリップ型である。
【0027】
具体的には、保持部材30は、第1把持部31と第2把持部32と連結部33とを含む。第1把持部31と第2把持部32との間で腰芯材55を把持可能なように、当該第1把持部31と当該第2把持部32とが設けられる。第1実施形態では、第1把持部31と第2把持部32とがU字型の形状である構成を例示する。第1把持部31と第2把持部32とは、所定の間隔(腰芯材55の厚さに応じた間隔)をあけて相互に対向するように位置する。第1把持部31と第2把持部32とは、上部を連結部33により連結される。
【0028】
なお、腰芯材55を強固に把持可能なように、第1把持部31のうち第2把持部32側の表面に突起部35を設けてもよい。また、第1把持部31の表面に利用者の指が接触できるように凹部37を設けてもよい。第1把持部31と第2把持部32との形状は、腰芯材55を着脱可能に把持できれば、以上の例示に限定されない。
【0029】
第1把持部31は、前立て芯材20の第1係合部K1に着脱可能に係合する第2係合部K2を含む。第1係合部K1と第2係合部K2とを係合させることで、前立て芯材20が保持部材30に取り付けられ、第1係合部K1と第2係合部K2との係合を解除することで、前立て芯材20が保持部材30から取り外される。
【0030】
図4から
図6に例示される通り、前立て芯材20(第2部分22)における第1係合部K1は、当該第1部分21の表面から突出する突出部である。一方で、
図7および
図8に例示される通り、保持部材30(第1把持部31)における第2係合部K2は、第1係合部K1が嵌合可能な孔部(貫通孔)である。
【0031】
図4から
図6に例示される通り、第1実施形態の第1係合部K1は、第2部分22が第1部分21から突出する方向(腰芯材55の幅方向)に沿って長尺な形状である。第2実施形態の第2係合部K2も、第1係合部K1と同様に、長尺な形状である。
【0032】
第1実施形態では、第1係合部K1(突出部)と第2係合部K2(孔部)とは、前立て芯材20を180°回転させて場合においては、相互に嵌合不可能な形状である。
図1の前立て芯材20は、第1係合部K1が第2係合部K2に嵌合する状態である。
図1の状態から、前立て芯材20を180°回転させた場合には、第1係合部K1と第2係合部K2とが嵌合が不可能な形状にする。したがって、前立て芯材20において上下方向を間違えた状態(すなわち第1部分21が腰芯材55を挟んで天井部51とは反対側に位置する状態)で、第1係合部K1と第2係合部K2とが嵌合すること防ぐことができる。
【0033】
図4に例示される通り、第1係合部K1において、長手方向における2つの周縁(R11,R12)は、相互に平行な直線状である(すなわち相互に鏡像対称である)。一方で、第1係合部K1において、短手方向における第1部分21側の周縁R13と、短手方向における第1部分21とは反対側の周縁R14とは、相互に非対称である。具体的には、周縁R13は直線状の部分を含み、周縁R14は曲線状である。第1係合部K1の平面形状(第1係合部K1の外周縁で確定される平面形状)が、点対称な図形ではないとも換言できる。
【0034】
なお、第1係合部K1は、第1部分21に形成された貫通孔の周囲に沿って突出する環状の壁部である場合を例示する。そして、平面視において当該壁部における外周縁で確定される形状が、前立て芯材20を180°回転させた場合に第2係合部K2と嵌合不可能な形状になるようにする。また、第1係合部K1は、周方向における一部(
図4ではR13,R14の一部)に切り欠き部を含んでもよい。
【0035】
図8に例示される通り、第2係合部K2は、第1係合部K1に応じた形状に形成される。具体的には、第2係合部K2において、長手方向における2つの周縁(R21,R22)は、相互に平行な直線状である(すなわち相互に鏡像対称である)。一方で、第1係合部K1において、短手方向における連結部33側の周縁R23と、短手方向における連結部33とは反対側の周縁R24とは、相互に非対称である。具体的には、周縁R23は直線状の部分を含み、周縁R24は曲線状である。第2係合部K2の平面形状が点対称な図形ではないとも換言できる。
【0036】
なお、第1係合部K1(突出部)と第2係合部K2(孔部)とは、前立て芯材20を180°回転させて場合において、相互に嵌合不可能な形状であれば、第1係合部K1と第2係合部K2の具体的な形状は任意である。
【0037】
図10は、前立て芯構造体100を制帽500に取り付けた状態の制帽500の前側部分の模式図である。なお、腰芯材55は便宜的に網掛けで図示する。
【0038】
図10に例示される通り、保持部材30は、第1把持部31が裏側(腰芯材55を挟んで腰部53とは反対側)にくるように、腰芯材55に取り付ける。そして、第1把持部31の第2係合部K2に前立て芯材20の第1係合部K1が嵌合するように、前立て芯材20を保持部材30に取り付けることで、襠部57の前側が傾斜した状態で高さが維持される。そして、前立て芯材20を取り外して天井部51を水平にする場合には、第1係合部K1と第2係合部K2との嵌合を解除する。
【0039】
第1係合部K1と第2係合部K2とは、前立て芯材20(第1部分21)と保持部材30とにおいて相互に対向する面に設けられる。第1係合部K1は、前立て芯材20(第2部分22)のうち襠部57側の面に位置する。第2係合部K2は、腰芯材55の裏側に位置する。具体的には、腰芯材55からみて腰部53とは反対側に位置する部分(第1実施形態では第1把持部31)に第2係合部K2が位置する。
【0040】
以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、前立て芯材20が保持部材30に対して着脱可能であるから、着用時には前立て芯材20を制帽500に取り付けて、保管時には前立て芯材20を簡単に取り外すことが可能になる。
図3に例示される通り、前立て芯材20を取り外すことで、天井部51が水平に維持され、制帽500の体積を小さくすることが可能である。したがって、複数の制帽500を重ねて保管することも可能である。
【0041】
保持部材30が腰芯材55に着脱可能に取り付けられる第1実施形態の構成によれば、既存の各種の制帽500の腰芯材55に保持部材30を取り付けることで、前立て芯材20を簡便に後付けすることが可能になる。また、第1実施形態では、第1係合部K1が突出部であり、第2係合部K2が孔部であるから、保持部材30と前立て芯材20との着脱が容易である。
【0042】
第1実施形態の構成によれば、腰芯材55に取り付けられる保持部材30が前立て芯材20の取り付けに利用されるから、帽章を取り付けるためのネジ等の留め具を使用することなく前立て芯材20の取り付けが可能である。
【0043】
例えば、腰芯材に前立て芯材の第1部分を差し込み可能な差込枠体を設ける構成(「以下「比較例」という)を想定する。比較例は、例えば特許文献2の構成である。比較例では、天井部側から前立て芯材を着脱する必要があり、前立て芯材の着脱が非常にしにくいという問題がある。
【0044】
それに対して、第1実施形態の構成によれば、保持部材30における腰芯材55の裏側に位置する部分(第1把持部31)において第2係合部K2が設けられ、前立て芯材20における襠部57側の面に第1係合部K1が設けられる。したがって、腰芯材55の裏面に対して垂直方向に前立て芯材20を着脱することが可能になる。すなわち、前立て芯材20の着脱が容易である。
【0045】
また、比較例では、単に、前立て芯材を差込枠体に差し込むことで腰芯材に取り付けているから、前立て芯材を安定して取り付けられないという問題がある。それに対して、第1実施形態の構成によれば、前立て芯材20の第1係合部K1と保持部材30の第2係合部K2とが係合することで前立て芯材20が取り付けられるから、腰芯材55に安定して前立て芯材20を取り付けられるという利点がある。
【0046】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0047】
図11は、第2実施形態に係る前立て芯材20の第2部分22の正面図であり、
図12は、第2実施形態に係る保持部材30の正面図である。第2実施形態では、第1係合部K1および第2係合部K2の形状が第1実施形態とは相違する。
【0048】
具体的には、第1実施形態では、第1係合部K1(突出部)と第2係合部K2(孔部)とが前立て芯材20を180°回転させて場合においては、相互に嵌合不可能な形状である構成を例示した。それに対して、第2実施形態では、第1係合部K1(突出部)と第2係合部K2(孔部)とが前立て芯材20を180°回転させて場合においても、相互に嵌合可能な形状である構成を例示する。
【0049】
図11および
図12に例示される通り、第1係合部K1および第2係合部K2は、第1実施形態と同様に、長尺な形状である。
図11に例示される通り、第2実施形態の第1係合部K1は、第1実施形態と同様に、長手方向における2つの周縁(R11,R12)は、相互に平行な直線状である(すなわち相互に鏡像対称である)。
【0050】
第2実施形態においては、第1係合部K1のうち短手方向における第1部分21側の周縁R13と、短手方向における第1部分21とは反対側の周縁R14とが、相互に鏡像対称である。
図11では、周縁R13と周縁R14とが曲線状である構成を例示する。第1係合部K1の形状が、点対称な図形であるとも換言できる。
【0051】
なお、第1係合部K1(突出部)と第2係合部K2(孔部)とは、前立て芯材20を180°回転させて場合において、相互に嵌合可能な形状であれば、第1係合部K1と第2係合部K2の具体的な形状は任意である。
【0052】
第1係合部K1と第2係合部K2とが前立て芯材20を180°回転させて場合においも相互に嵌合可能な形状である第2実施形態の構成によれば、保持部材30に第1部分21が上下逆転する状態(すなわち第1部分21が腰芯材55を挟んで天井部51とは反対側に位置する状態)でも前立て芯材20を保持部材30に取り付けることが可能である。すなわち、天井部51が水平に維持され、制帽500の体積を小さくした状態においても、前立て芯材20を制帽500(保持部材30)に取り付けた状態で前立て芯材20を保管することができる。
【0053】
<第3実施形態>
図13は、第3実施形態に係る前立て芯材20の正面図であり、
図14は、第3実施形態に係る前立て芯材20の側面図である。第3実施形態の前立て芯材20は、第1部分21と第2部分22とに加えて、第3部分23を具備する。
【0054】
図13および
図14に例示される通り、第3部分23は、第1部分21と第2部分22との間に位置する部分である。なお、第3部分23と、第1部分21および第2部分22とは、直接的に接合されてもよい、連結部材等を介して間接的に接合されてもよい。
【0055】
第3部分23の幅W3は、例えば、第2部分22の幅W2と同程度である。第3部分23の長さL1は、
図9における保持部材30の厚さTに応じて設定され、例えば0.5~1.5cmである。
【0056】
図14に例示される通り、側面視において、第3部分23における相互に反対側の端部において第1部分21と第2部分22とが接続される。第1実施形態と同様に、第1部分21は第2部分22に対して傾斜するように設けられる。
【0057】
第3部分23は、第2部分22に対して所定の角度θ2をなすように設けられる。角度θ2は、例えば、70°以上110°以下であり、好適には80°以上100°以下であり、さらに好適には85°以上95°以下である。
【0058】
図15は、前立て芯構造体100を制帽500に取り付けた状態の制帽500の前側部分の模式図(
図10に対応)である。
図15に例示される通り、第3実施形態では、前立て芯材20が保持部材30の厚さを加味した第3部分23を含むから、第3部分23を含まない構成と比較して、襠部57を適切に傾斜(前立て芯材20の第1部分21を適切に襠部57に当接)させることができる。
【0059】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0060】
(1)前述の各形態では、第1係合部K1を突出部として、第2係合部K2を孔部としたが、第1係合部K1を孔部として、第2係合部K2を突出部としてもよい。また、第1係合部K1と第2係合部K2とは、相互に係合可能であれば、突出部と孔部とには限定されない。例えば、第1係合部K1と第2係合部K2とは、面ファスナー(オスおよびメス)であってもよい。
【0061】
また、例えば、前立て芯材20を保持部材30にネジ等の留め具を利用して着脱可能に取り付ける構成も採用される。以上の構成では、例えば、前立て芯材20(第1部分21)と、保持部材30(第1把持部31)との双方に、留め具が挿通される孔部が設けられる。すなわち、前立て芯材20と保持部材30とは留め具を介して相互に嵌合する構成も包含される。以上の構成では、前立て芯材20のうち保持部材30に対向および当接する部分が第1係合部K1であり、保持部材30のうち前立て芯材20に対向および当接する部分が第2係合部K2である。
【0062】
(2)前述の各形態では、クリップ型の保持部材30を例示したが、保持部材30は腰芯材55に着脱可能であればクリップ型に限定されない。例えば、面ファスナーやネジ等の留め具を利用して保持部材30を腰芯材55に着脱可能に取り付けてもよい。
【0063】
(3)前述の各形態では、腰芯材55に着脱可能な保持部材30を例示したが、保持部材30を腰芯材55に着脱可能にする構成は、必須ではない。すなわち、腰芯材55に固着された状態の保持部材30や、腰芯材55と一体型の保持部材30も採用できる。すなわち、腰芯材55の裏側(腰部53とは反対側)の表面に第2係合部K2を設けてもよい。
【0064】
(4)第1部分21の形状は、取付対象となる制帽500の形状に応じて適宜に変更可能であり、襠部57における前方側を立ち上げることが可能であれば任意である。例えば、
図16に例示される通り、第1部分21における第2部分22側の周縁が、当該第2部分22を挟んで相互に反対側において下方に突出するような形状を採用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
20 :前立て芯材
21 :第1部分
22 :第2部分
23 :第3部分
30 :保持部材
31 :第1把持部
32 :第2把持部
33 :連結部
35 :突起部
37 :凹部
51 :天井部
53 :腰部
55 :腰芯材
57 :襠部
59 :庇部
100 :前立て芯構造体
500 :制帽
K1 :第1係合部
K2 :第2係合部