(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000374
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】デッキプレート位置決め具
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
E04B5/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101145
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】521267007
【氏名又は名称】有限会社てんじん
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】杉本 勝理
(57)【要約】
【課題】簡易な装着手順でデッキプレートの位置ずれを防止できるデッキプレート位置決め具を提供することを目的とする。
【解決手段】デッキプレート位置決め具1は、デッキプレート70の端部に係着する係着部10と、係着部10がデッキプレート70に係着した状態で係着部10から下向きに突き出された横方向に弾性変形自在な弾性圧接部20と、を備え、弾性圧接部20は、H鋼60の上にデッキプレート70の端部を載せた状態で、フランジ部61の端部に対して弾接してなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に差し出されたフランジ部を有する梁の上にデッキプレートの端部が載せられた際に当該デッキプレートを当該梁に対して位置決めするデッキプレート位置決め具であって、
前記デッキプレートの端部に係着する係着部と、
前記係着部が前記デッキプレートに係着した状態で当該係着部から下向きに突き出され、かつ前記横方向に弾性変形自在で前記横方向に直交する上下方向には弾性変形不能な弾性圧接部と、
を備え、
前記弾性圧接部は、
前記梁の上にデッキプレートの端部が載せられた状態で、前記横方向に弾性変形して前記フランジ部の先端部に対して弾接してなる
ことを特徴とするデッキプレート位置決め具。
【請求項2】
横方向に差し出されたフランジ部を有する梁の上にデッキプレートの端部が載せられた際に当該デッキプレートを当該梁に対して位置決めするデッキプレート位置決め具であって、
前記デッキプレートに取り付けられた状態で、当該デッキプレートが梁間に上から圧入されて当該デッキプレートの端部が当該梁の上に載置されると、当該デッキプレートが当該梁に対して位置決めされる構成であり、
前記デッキプレートの端部に係着する係着部と、
前記係着部が前記デッキプレートに係着した状態で当該係着部から下向きに突き出された基部と、
前記係着部が前記デッキプレートに係着した状態で、前記基部を基準として当該デッキプレートの中央側から離れる方向に向かって、前記基部の下端部から上向きに突き出され、かつ前記横方向に弾性変形自在で前記横方向に直交する上下方向には弾性変形不能な弾性圧接部と、
を備え、
前記弾性圧接部は、
前記デッキプレートが梁間に上から圧入される際に、前記フランジ部の先端部に当接して前記横方向に弾性変形してなり、前記梁の上に前記デッキプレートの端部が載置されて前記係着部と前記弾性圧接部の先端部との間に前記フランジ部が配置された状態では、弾性変形した状態が解除されてなる
ことを特徴とするデッキプレート位置決め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁の上に載置されるデッキプレートが施工中に位置ずれを起こすことを防止するデッキプレート位置決め具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、隙間に挿入されたデッキプレートの端部を上下方向で挟み付ける挟み片と、フランジの下面に係止させる係止片と、挟み片と係止片とを繋ぐ繋ぎ片とが、ひと続きの鋼材により形成されているデッキプレート繋止具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のデッキプレート繋止具にあっては、前記係止片が梁のフランジの下側に位置するため、デッキプレートを梁の横側から差し入れるか、係止片が梁のフランジに接触しない位置までデッキプレート繋止具をデッキプレートに差し込み、デッキプレートが梁の上に載置された状態で係止片がフランジの下面に位置するようにデッキプレート繋止具を摺動させる必要があった。
【0005】
本発明は、より簡易にデッキプレートの位置決めを実現できるデッキプレート位置決め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、横方向に差し出されたフランジ部を有する梁の上にデッキプレートの端部が載せられた際に当該デッキプレートを当該梁に対して位置決めするデッキプレート位置決め具であって、前記デッキプレートの端部に係着する係着部と、前記係着部が前記デッキプレートに係着した状態で当該係着部から下向きに突き出され、かつ前記横方向に弾性変形自在で前記横方向に直交する上下方向には弾性変形不能な弾性圧接部と、を備え、前記弾性圧接部は、前記梁の上にデッキプレートの端部が載せられた状態で、前記横方向に弾性変形して前記フランジ部の先端部に対して弾接してなることを特徴とするデッキプレート位置決め具である。
【0007】
かかる構成にあっては、前記デッキプレートに前記デッキプレート位置決め具を取り付けてから当該デッキプレートを前記梁の上に載置して施工完了状態となるまで、当該デッキプレート位置決め具をデッキプレートに対して位置を替えたり、向きを替えたりなどする必要がなく、従来通りの施工方法に準じてデッキプレートが梁に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。なお、前記弾性圧接部は、前記フランジ部に横方向から弾接してなるため、例えば敷設したデッキプレートを梁から外す必要が生じた際にも、当該弾性圧接部の弾性力に抗してデッキプレートを引き上げることで取り外すことができる。
【0008】
また本発明は、横方向に差し出されたフランジ部を有する梁の上にデッキプレートの端部が載せられた際に当該デッキプレートを当該梁に対して位置決めするデッキプレート位置決め具であって、前記デッキプレートに取り付けられた状態で、当該デッキプレートが梁間に上から圧入されて当該デッキプレートの端部が当該梁の上に載置されると、当該デッキプレートが当該梁に対して位置決めされる構成であり、前記デッキプレートの端部に係着する係着部と、前記係着部が前記デッキプレートに係着した状態で当該係着部から下向きに突き出された基部と、前記係着部が前記デッキプレートに係着した状態で、前記基部を基準として当該デッキプレートの中央側から離れる方向に向かって、前記基部の下端部から上向きに突き出され、かつ前記横方向に弾性変形自在で前記横方向に直交する上下方向には弾性変形不能な弾性圧接部と、を備え、前記弾性圧接部は、前記デッキプレートが梁間に上から圧入される際に、前記フランジ部の先端部に当接して前記横方向に弾性変形してなり、前記梁の上に前記デッキプレートの端部が載置されて前記係着部と前記弾性圧接部の先端部との間に前記フランジ部が配置された状態では、弾性変形した状態が解除されてなることを特徴とするデッキプレート位置決め具である。
【0009】
かかる構成にあっても、前記デッキプレートに前記デッキプレート位置決め具を取り付けてから当該デッキプレートを前記梁の上に載置して施工完了状態となるまで、当該デッキプレート位置決め具をデッキプレートに対して位置を替えたり、向きを替えたりなどする必要がなく、従来通りの施工方法に準じてデッキプレートが梁に対して位置ずれしてしまうことを防止できる。なお、施工完了状態では、前記係着部と前記弾性圧接部の先端部との間に前記フランジ部が配置されることになるため、デッキプレートが梁に対して抜脱しにくい構造となり、安全性が向上する利点がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、簡素な装着手順でデッキプレートの位置ずれを防止することのできる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1にかかるデッキプレート位置決め具の斜視図である。
【
図2】実施例1にかかるデッキプレートの載置手順を示す説明図である。
【
図3】
図2から続くデッキプレートの載置手順を示す説明図である。
【
図4】実施例1における施工完了状態を示す説明図である。
【
図5】実施例2にかかるデッキプレート位置決め具の斜視図である。
【
図6】実施例2にかかるデッキプレートの載置手順を示す説明図である。
【
図7】
図6から続くプレートの載置手順を示す説明図である。
【
図8】実施例2における施工完了状態を示す説明図である。
【
図9】その他の実施例にかかるデッキプレート位置決め具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかるデッキプレート位置決め具を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0013】
〔実施例1〕
例えば
図4に示すように、鉄骨の構造体にあっては、梁であるH鋼60の上にデッキプレート70が配置され、その後、デッキプレート70の上にコンクリート80が流し込まれることで、下階と上階とを区画する床部が形成される。なお、H鋼60は、一般的な構成が好適であり、横方向に差し出されたフランジ部61を有している。
【0014】
一方、本発明にかかるデッキプレート位置決め具1は、
図1等に示すように、金属製の板材を所定形状に曲げて形成されてなる。具体的に、デッキプレート位置決め具1の最上位置には、側面視U字状に折り曲げられた係着部10が配置されている。この係着部10は、デッキプレート70の端部を上下から挟んでデッキプレート70に係着する機能を有している。
【0015】
また、デッキプレート位置決め具1は、係着部10がデッキプレート70に係着した状態で係着部10から下向きに突き出され、かつ側面視でくの字状に折り曲げられてなる弾性圧接部20を備えている。
【0016】
この弾性圧接部20は、その形状に基づき、横方向に弾性変形自在で、前記横方向に直交する上下方向には相対的に弾性変形不能な構造となっている。
【0017】
次に、デッキプレート位置決め具1の使用状態について説明をする。
図4に示すように、デッキプレート70がH鋼60の上に載置された施工完了状態では、デッキプレート70の両端部に、デッキプレート位置決め具1が係着部10によって係着する。
【0018】
具体的な手順としては、
図2に示すように、まずデッキプレート70の一側の端部がH鋼60の上に載り、その後、デッキプレート70の他側の端部がH鋼60の上に載る。このとき、
図3に示すように、弾性圧接部20が、H鋼60のフランジ部61の先端に当接して弾性変形しながら、デッキプレート70が降ろされてH鋼60間に圧入される。
【0019】
そして、デッキプレート70がH鋼60の上に完全に載置された状態では、
図4に示すように、弾性圧接部20がフランジ部61の端部にフランジ部61の差し出し方向(横方向)に沿って当該フランジ部61に弾接した状態が維持される。
【0020】
そうすると、一対のデッキプレート位置決め具1の弾性圧接部20がそれぞれ一対のH鋼60に係着されるため、デッキプレート70は、H鋼60に対して交わる方向の移動が規制されて、位置ずれが防止される。
【0021】
ところで、もしH鋼60の上に載置されたデッキプレート70を外す場合には、弾性圧接部20の弾性力に抗してデッキプレート70を引き上げれば、デッキプレート70をH鋼60から取り外すことが可能である。
【0022】
〔実施例2〕
次に、実施例2の構成について説明する。なお、実施例1と同様の構成については、説明を簡略もしくは省略する。
【0023】
デッキプレート位置決め具2は、
図5等に示すように、金属製の板材を所定形状に曲げて形成されている。
【0024】
具体的には、側面視U字状に折り曲げられた係着部30を備え、この係着部30がデッキプレート70の端部を上下から挟んでデッキプレート70に係着する機能を有している。
【0025】
また、係着部30からは、当該係着部30がデッキプレート70に係着した状態で下向きに突き出される基部40が設けられている。
【0026】
さらに、基部40の下端部からは、係着部30がデッキプレート70に係着した状態で斜め上向きに突き出される弾性圧接部50が設けられている。なお、弾性圧接部50の突き出し方向は、使用状態においてデッキプレート70の中央側から離れる方向に向かって突き出される。
【0027】
次に、使用状態について説明する。
図8に示すように、デッキプレート位置決め具2が、係着部30によってデッキプレート70の両端部に係着された状態で、デッキプレート70がH鋼60の上に載置されることとなる。
【0028】
さらに詳述すると、
図6に示すように、まずデッキプレート70の一側の端部がH鋼60の上に載置される。その後、デッキプレート70の他側の端部がH鋼60の上に載置される。
【0029】
このとき、
図7に示すように、基部40及び弾性圧接部50がH鋼60のフランジ部61の差し出し方向(横方向)に沿って弾性変形しながらデッキプレート70が降ろされ、一対のH鋼60の間に当該デッキプレート70が圧入される。
【0030】
そして、デッキプレート70がH鋼60の上に完全に載置された状態となったときには、
図8に示すように、弾性圧接部50の弾接状態が解除され、かつ係着部30と弾性圧接部50の先端部との間隙にフランジ部61が配置されることとなる。
【0031】
この状態にあっては、デッキプレート70は一対のデッキプレート位置決め具2の基部40によって一対のH鋼60間に係着され、位置ずれが防止されている。
【0032】
なお、実施例2の構成にあっては、H鋼60のフランジ部61がデッキプレート位置決め具2の係着部30と弾性圧接部50とに間に配置されて、上下方向において挟み込まれているため、デッキプレート70がH鋼60から外れにくいという利点がある。また、弾性圧接部50の弾性変形が解除された状態が維持されるため、金属疲労の問題が起こりにくい利点がある。
【0033】
上記した実施例1,2において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【0034】
また、実施例2において、弾性圧接部50の形状は特に限定されず、例えば
図9(a)に示すように、湾曲部を含む形状であってもよいし、
図9(b)に示すように、複数の段差部を含む形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0035】
1,2 デッキプレート位置決め具
10,30 係着部
20,50 弾性圧接部
40 基部
60 H鋼
61 フランジ部
70 デッキプレート
80 コンクリート