IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-配線基板 図1
  • 特開-配線基板 図2
  • 特開-配線基板 図3
  • 特開-配線基板 図4
  • 特開-配線基板 図5
  • 特開-配線基板 図6A
  • 特開-配線基板 図6B
  • 特開-配線基板 図6C
  • 特開-配線基板 図6D
  • 特開-配線基板 図6E
  • 特開-配線基板 図6F
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037405
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
H05K1/11 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144132
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修平
(72)【発明者】
【氏名】川合 悟
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA06
5E317AA07
5E317BB02
5E317BB03
5E317BB12
5E317BB15
5E317CC32
5E317CC35
5E317CC52
5E317CD25
5E317GG09
(57)【要約】
【課題】配線基板が有する導体パッドの電気特性の向上。
【解決手段】実施形態の配線基板は、第1絶縁層2と、第1絶縁層2上に形成され、第1導体パッド3aを含んでいる第1導体層と、第1絶縁層2上に形成され、第1導体パッド3aの上面及び側面の全体を露出させる開口を有しているソルダーレジスト層4と、を含んでいて、第1面及び第1面の反対面である第2面を有する。第1導体パッド3aは、第1絶縁層2の表面に沿って延在するパッド本体3Bと、パッド本体3Bの上面及び側面を被覆し、パッド本体3Bと異なる材料で形成されている保護層3Pとを有し、パッド本体3Bの周縁部において、パッド本体3Bの下面が第1絶縁層2の上面から離間するノッチ部が形成されており、ノッチ部は保護層3Pで充填されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成され、第1導体パッドを含んでいる第1導体層と、
前記第1絶縁層上に形成され、前記第1導体パッドの上面及び側面の全体を露出させる開口を有しているソルダーレジスト層と、
を含んでいて、第1面及び前記第1面の反対面である第2面を有する配線基板であって、
前記第1導体パッドは、前記第1絶縁層の表面に沿って延在するパッド本体と、前記パッド本体の上面及び側面を被覆し、前記パッド本体と異なる材料で形成されている保護層とを有し、
前記パッド本体の周縁部において、前記パッド本体の下面が前記第1絶縁層の上面から離間するノッチ部が形成されており、
前記ノッチ部は前記保護層で充填されている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記保護層の前記第1絶縁層と接触する部分が、平面視における前記第1導体パッドの外周縁を構成している。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板であって、前記保護層は、前記ノッチ部において、平面視における前記第1導体パッドの外側へ向かって膨らむ拡張部を有している。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記ノッチ部における前記パッド本体の下面と前記第1絶縁層の上面との間隔は、前記第1導体パッドの外周に向かって拡大している。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記ノッチ部は、前記第1絶縁層の上面から前記パッド本体の厚さの1/3以下の領域内に形成されている。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1面は部品が実装される部品実装面であり、前記第1導体層は前記第2面側に形成されている。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1導体パッドは矩形の平面形状を有している。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記パッド本体は銅を含み、前記保護層はニッケルを含んでいる。
【請求項9】
請求項8記載の配線基板であって、前記保護層は、ニッケル層、パラジウム層、及び金層を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁層(ソルダーレジスト層)の上面上に突出する突起電極(バンプ)が開示されている。突起電極は、絶縁層の上面に延在する突起金属層と、突起金属層を部分的に被覆する表面金属層とを有している。突起金属層の外周には、突起金属層の下面と絶縁層との間に空間を形成する切り欠きが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-82130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている表面金属層は、突起金属層の側面及び上面のみを被覆し、絶縁層の上面と接触しないように形成されている。表面金属層と突起金属層との接合強度は比較的低いものと考えられる。表面金属層と突起金属層とが剥離し、突起電極の電気特性が低下する場合があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に形成され、第1導体パッドを含んでいる第1導体層と、前記第1絶縁層上に形成され、前記第1導体パッドの上面及び側面の全体を露出させる開口を有しているソルダーレジスト層と、を含んでいて、第1面及び前記第1面の反対面である第2面を有している。前記第1導体パッドは、前記第1絶縁層の表面に沿って延在するパッド本体と、前記パッド本体の上面及び側面を被覆し、前記パッド本体と異なる材料で形成されている保護層とを有し、前記パッド本体の周縁部において、前記パッド本体の下面が前記第1絶縁層の上面から離間するノッチ部が形成されており、前記ノッチ部は前記保護層で充填されている。
【0006】
本発明の実施形態によれば、配線基板に設けられる、側面及び上面が露出する形態の導体パッドにおいて保護層とパッド本体との強固な接合が実現され、保護層とパッド本体との剥離などの不良の発生が抑制される、電気特性の向上した導体パッドが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す平面図。
図3図1におけるIII部の拡大図。
図4図3におけるIV部の拡大図。
図5】本発明の一実施形態の配線基板の他の例の、図4に対応する拡大図。
図6A】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程中の状態の一例を示す断面図。
図6B】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程中の状態の一例を示す断面図。
図6C】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程中の状態の一例を示す断面図。
図6D】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程中の状態の一例を示す断面図。
図6E】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程中の状態の一例を示す断面図。
図6F】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程中の状態の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。なお、以下、参照される図面においては、各構成要素の正確な比率を示すことは意図されておらず、本発明の特徴が理解され易いように描かれている。図1には、一実施形態の配線基板の一例である配線基板1の断面図が示されている。また図2には、図1における紙面下側から見た配線基板1の平面図が示されている。図2のI-I線に沿った断面図が図1である。また図3には、図1のIII部の拡大図が示されている。
【0009】
図1に示されるように、配線基板1は、絶縁層20と、絶縁層20の両面それぞれに交互に積層された導体層及び絶縁層とを含んでいる。絶縁層20の一方の面20a上には、3つの導体層31のそれぞれと2つの絶縁層21のそれぞれとが交互に積層され、その上に、さらに絶縁層23(第2絶縁層)が積層されている。そして絶縁層23上に導体層(第2導体層)33が形成されている。
【0010】
絶縁層20の一方の面20aの反対面である他方の面20b上には、3つの導体層32のそれぞれと2つの絶縁層22のそれぞれとが交互に積層され、その上に、さらに絶縁層(第1絶縁層)2が積層されている。そして絶縁層2の表面(上面)2a上に導体層(第1導体層)3が形成されている。すなわち、導体層3の背面(下面)3a3が絶縁層2と接して形成されている。
【0011】
絶縁層23及び導体層33上には、ソルダーレジスト層40が形成されている。絶縁層2の上にはソルダーレジスト層4が形成されている。実施形態の配線基板1は、絶縁層2と、絶縁層2の表面2a上に形成されている導体層3と、絶縁層2の表面2a上に形成されているソルダーレジスト層4と、を少なくとも含んでいる。
【0012】
配線基板1は、配線基板1の厚さ方向と直交する方向に広がる2つの表面として第1面11、及び第1面11の反対面である第2面12を有している。配線基板1において、絶縁層23、導体層33、及びソルダーレジスト層40は配線基板1の第1面11側に形成されており、配線基板1の第1面11側の表層部を形成している。第1面11は、導体層33、及びソルダーレジスト層40それぞれにおける露出面によって構成されている。また、絶縁層2、導体層3、及びソルダーレジスト層4は、配線基板1の第2面12側に形成されており、配線基板1の第2面12側の表層部を形成している。第2面12は、絶縁層2、導体層3、及びソルダーレジスト層4それぞれにおける露出面によって構成されている。詳しくは後述するように、第1面11は外部の部品E1が実装され得る部品実装面を構成し、第2面12は外部要素E2と接続される接続面を構成し得る。
【0013】
なお、配線基板1の説明においては、配線基板1を構成する各要素における、絶縁層20から遠い側を、「上」、「上側」、「外側」、又は「外」と称し、絶縁層20に近い側を、「下」、「下側」、「内側」、又は「内」と称する。各絶縁層2、21、22、23、及び、各導体層3、31、32、33の説明において、絶縁層20を向く面は「下面」と称され絶縁層20と反対側を向く面は「上面」とも称される。従って、実施形態の配線基板において、第1絶縁層2の第1導体層3を向く面(表面)2aは第1絶縁層2の上面2aとも称される。第1導体層3の第1絶縁層2を向く面(背面)3a3は、第1導体層3の下面3a3とも称される。第1導体層3の下面3a3と反対側の表面3a1は、第1導体層3の上面3a1とも称される。
【0014】
絶縁層20には、導体層31と導体層32とを接続するスルーホール導体20cが形成されている。絶縁層20、その一方の面20a上の導体層31及び他方の面20b上の導体層32は、配線基板1のコア基板を構成している。絶縁層2、21、22、23それぞれには、絶縁層2、21、22、23それぞれを挟む導体層同士を接続するビア導体2vが形成されている。
【0015】
絶縁層2、20、21、22、23は、それぞれ、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成される。各絶縁層は、ガラス繊維などの補強材(芯材)及び/又はシリカなどの無機フィラーを含んでいてもよい。
【0016】
ソルダーレジスト層4、40は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などの任意の絶縁性樹脂を用いて形成されている。ソルダーレジスト層40は、導体層33の一部又は全部を露出させる開口40aを有している。図1の例では、開口40aは、導体層33を部分的に露出させている。ソルダーレジスト層4は、導体層3を露出させる開口4aを有している。
【0017】
導体層3、31、32、33、ビア導体2v、及びスルーホール導体20cは、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成され、例えば、銅箔などの金属箔、及び/又は、めっき若しくはスパッタリングなどで形成される金属膜によって構成される。導体層3、31、32、33、ビア導体2v、及びスルーホール導体20cは、図1では見易さのために簡略化され単層構造で示されているが、2つ以上の金属層を有する多層構造を有し得る。しかし、導体層3及び導体層31、32、33、ビア導体2v、及びスルーホール導体20cは、単一の金属層だけを含む単層構造を有していてもよい。
【0018】
各導体層は、所定の導体パッド及び/又は配線パターンを有するようにパターニングされている。図1の例の配線基板1では、導体層33は複数の導体パッド(部品実装パッド)33aを有するようにパターニングされている。すなわち配線基板1は第1面11に形成されている複数の部品実装パッド33aを含んでいる。図1の例では、各部品実装パッド33aは、所謂SMDパッド(Solder Mask Defined)タイプの導体パッドである。すなわち、各部品実装パッド33aの周縁部がソルダーレジスト層40に覆われており、各部品実装パッド33aの周縁部以外の部分がソルダーレジスト層40の開口40aに露出している。
【0019】
各部品実装パッド33aは、配線基板1の使用時に配線基板1に実装される部品E1がその表面に載置される導体パッド(第2導体パッド)である。すなわち第1面11は配線基板1の部品実装面である。部品実装パッド33aには、例えばはんだなどの接合材(図示せず)を介して部品E1の電極E11が電気的及び機械的に接続される。部品E1としては、例えば、半導体集積回路装置やトランジスタなどの能動部品、及び、電気抵抗などの受動部品のような電子部品が例示される。部品E1は、半導体基板上に形成された微細配線を含む配線材であってもよい。しかし、部品E1はこれらに限定されない。
【0020】
本実施形態では、導体層3は導体パッド(第1導体パッド)3aを含んでいる。導体パッド3aは、ソルダーレジスト層4の開口4aによって露出されている。具体的には、導体パッド3aにおける絶縁層2と反対側を向く上面3a1、及び導体パッド3aの側面3a2全体がソルダーレジスト層4に覆われずに露出している。すなわち、導体パッド3aは、その平面視における外周縁がソルダーレジスト層の開口によって画定されない、所謂NSMDパッド(Non-Solder Mask Defined)タイプの導体パッドである。なお導体パッド3aの側面3a2は、導体パッド3aにおける絶縁層2を向く下面3a3と上面3a1との間の表面であって、図2に示されるように、平面視において導体パッド3aの外周縁を構成する表面である。なお「平面視」は、導体パッド3aなどの対象物を配線基板1の厚さ方向(Z方向)と平行な視線で見ることを意味しており、図2は、配線基板1の導体パッド3aが形成されている第2面12側からの平面視における平面図を示している。
【0021】
導体パッド3aが露出する第2面12は、外部の配線基板、例えば任意の電気機器のマザーボードなどの外部要素E2に配線基板1自体が実装される場合に、外部要素E2に接続される接続面であり得る。また、図1の例の配線基板1において、第2面12は、第1面11と同様に半導体集積回路装置のような電子部品が実装される部品実装面であってもよい。
【0022】
第2面12が外部要素E2との接続面である場合、第2面12は外部要素E2との接続部を備え得る。図1の例の配線基板1は導体パッド3aにおいて外部要素E2と接続される。従って図1の例の導体パッド3aは、配線基板1において外部要素E2に接続される接続パッドであり、図1の配線基板1における外部要素E2との接続パッドは導体パッド3aからなる。前述したように、導体パッド3aの上面3a1の全体及び側面3a2の全体がソルダーレジスト層4に覆われずに開口4a内に露出している。従って、配線基板1と外部要素E2とが大きな面積で強固に接続され得る。
【0023】
図2に示されるように、導体パッド3aは、矩形の平面形状を有し得る。「平面形状」は、導体パッド3aのような対象物の平面視における形状である。ここで「矩形」は、互いに略平行な2つの辺(線分)と、その2つの辺に略直交する互いに平行な2つの辺(線分)とによって囲まれる形状を意味している。この「矩形」において、互いに隣接すると共に直交する二辺は、必ずしもその交点において直角の交角をなすように互いに接していなくてもよく、曲線を介して結合されていてもよい。導体パッド3aは、例えば、はんだなどの接合材によって外部要素E2の電極E21に電気的及び機械的に接続され得る。外部要素E2は、前述したように、任意の電気機器を構成するマザーボードであってもよく、配線基板1よりも大きなパッケージサイズを有する任意の電子部品であってもよい。導体パッド3aは、これらに限定されない任意の基板、電気部品、又は機構部品などと接続され得る。
【0024】
次に、図1における、導体パッド3aを含むIII部の拡大図である図3を参照して、導体パッド3aについて詳述される。図1では、配線基板1において導体パッド3aは見易さのために簡略化されて単層で示されているが、図3に示されるように、導体層3に含まれる導体パッド3aは、金属膜30a及びめっき膜30bを含むパッド本体3Bと、パッド本体3Bの上面及び側面を被覆する保護層3Pとを有している。金属膜30aは絶縁層2の上面2a上に形成されており、めっき膜30bは、金属膜30aにおける絶縁層2と反対側の表面上に形成されている。金属膜30aは、例えば無電解めっき又はスパッタリングなどで形成される。めっき膜30bは、例えば金属膜30aを給電層として用いる電解めっきによって形成される。なお、図3には示されていないが、図1に示される配線基板1の導体層33、絶縁層21又は絶縁層22上に形成されている導体層31及び導体層32、ビア導体2v、並びにスルーホール導体20cも、図3に示されるパッド本体3Bと同様に、金属膜及びめっき膜を含む構造を有し得る。
【0025】
保護層3Pは、例えばパッド本体3Bの上面及び側面などの露出部分の防食及び/又は防錆のために形成される被膜である。保護層3Pはパッド本体3Bとは異なる材料を含む被膜である。パッド本体3Bが銅で形成されている場合、保護層3Pは、ニッケル、パラジウム、銀、金、若しくはこれらの合金によって形成され得る。図示される例では、保護層3Pは、パッド本体3B側に形成されている下層3p1と下層3p1を被覆する中間層3p2と、中間層3p2上に形成されている上層3p3とを含む3層構造を有している。例えば、下層3p1はニッケルを含み、中間層3p2はパラジウムを含み、上層3p3は金を含む。
【0026】
次いで、図3において一点鎖線で囲われるパッド本体3Bの周縁近傍のIV部の拡大図である図4を参照して、導体パッド3aについてさらに詳述される。導体パッド3aを構成するパッド本体3Bの下面3buは、パッド本体3Bの平面方向(絶縁層2の上面2aの延在方向)における周縁部において、絶縁層2の上面2aから離間している。パッド本体3Bの下面3buと絶縁層2の上面2aとが離間することによって、図3において2点鎖線で囲われる、パッド本体3Bの下面3buと絶縁層2の上面2aとの間の領域である、ノッチ部Nが形成されている。ノッチ部Nは、後述されるように、導体層3のパターン形成時(すなわちパッド本体3Bの形成時)において、絶縁層2の上面2aから金属膜30aを部分的に除去する工程において形成され得る。
【0027】
パッド本体3Bの絶縁層2と接する部分以外の表面の全域は保護層3Pによって被覆される。特に、ノッチ部Nを構成する、絶縁層2から離間するパッド本体3Bの下面3buも保護層3Pによって被覆される。従って、保護層3Pとパッド本体3Bとの接合面積は、パッド本体の側面及び上面のみが保護層で被覆される場合と比較すると、比較的接合面積が広く確保され得る。パッド本体3Bと保護層3Pとの界面における剥離などの不良の発生が抑制される場合があると考えられる。
【0028】
さらに、保護層3Pはノッチ部Nを構成する絶縁層2の上面2aをも被覆し、ノッチ部Nを完全に充填している。このような形態を有することに因り、パッド本体3Bと保護層3Pとの界面に掛かり得る応力が、絶縁層2へと効果的に分散される場合がある。具体的には、配線基板1を外部要素に接続する場合などにおける導体パッド3aの上面3a1に対する外力に起因してパッド本体3Bと保護層3Pとの界面に掛かり得る応力は、保護層3Pの絶縁層2との接触部を介して絶縁層2へと効果的に分散され得る。パッド本体3Bと保護層3Pとの界面における剥離などの不良の発生がさらに効果的に抑制され得ると考えられる。保護層3Pの絶縁層2の上面2aと接触する部分の最も外側は、平面視における導体パッド3aの外周縁を構成している。
【0029】
特に、本実施形態における導体パッド3aにおいては、パッド本体3Bと保護層3Pとの界面は、保護層3Pと絶縁層2との界面と連続している。従って、パッド本体3Bと保護層3Pとの界面は、特にその端部において応力が集中する部分が形成されにくく、効果的に界面の剥離が抑制され得ると考えられる。
【0030】
図示される例では、互いに離間しているパッド本体3Bの下面3buと絶縁層2の表面2aとの間隔はパッド本体3Bの周縁に向かうに従って拡大している。換言すると、パッド本体3Bの周縁部を表面2aから離間させているノッチ部Nの幅(表面2aとパッド本体3Bとの離間距離)は、導体パッド3aの外周に向かうほど大きくなっている。すなわち、ノッチ部Nの幅はパッド本体3Bの周縁で最大となる。ノッチ部Nがこのような形状を有することにより、例えばめっき液を用いるノッチ部N内への保護層3Pの形成においてボイドなどの不良の発生が抑制されて、比較的良好に保護層3Pが形成されている。
【0031】
なお、ノッチ部Nの幅はパッド本体3Bの厚さの1/3以下であることが好ましい。すなわち、ノッチ部Nは絶縁層2の上面2aから、パッド本体3Bの厚さの1/3以内の領域に形成され得る。このような態様により、ノッチ部Nは、パッド本体3Bの中心部に向かって比較的鋭利な形状を有し得る。従って、保護層3Pが、アンカー効果によってパッド本体3B及び絶縁層2と比較的強固に結合され得る。導体パッド3aに掛かる外力に対して、保護層3Pとパッド本体3Bとの界面が剥離する虞がさらに低減される場合がある。
【0032】
保護層3Pとパッド本体3Bとの界面に掛かり得る応力を、さらに効果的に絶縁層2へと分散させる観点から、保護層3Pと絶縁層2との接触面積は拡大され得る。図5には、パッド本体3Bのノッチ部Nの近傍において、保護層3Pの絶縁層2との接触部が、平面視における導体パッド3aの外側へ向かって拡張(膨張)する、拡張部EXが形成されている例が示される。
【0033】
拡張部EXは、保護層3Pの形成において、パッド本体3Bのノッチ部近傍における、めっき析出用の触媒の付与状態の調整によって、形成され得る。拡張部EXが形成されていることによって、導体パッド3aと絶縁層2との接触面積が増大する。特に、パッド本体3Bと保護層3Pとの界面と連続する、保護層3Pと絶縁層2との界面の面積が拡張され得る。従って、上述した、パッド本体3Bと保護層3Pとの界面に掛かり得る応力が、さらに効果的に、絶縁層2に分散され得ると考えられる。パッド本体3Bと保護層3Pとの界面の剥離は、より効果的に抑制されると考えられる。
【0034】
実施形態の配線基板は、任意の一般的な配線基板の製造方法によって製造され得る。図6A図6Fを参照して、図1に示される配線基板1が製造される場合を例に、製造方法の一例が概説される。
【0035】
図6Aに示されるように、コア基板10が用意され、コア基板10の一面10a側に絶縁層21が積層され、その絶縁層21上に導体層31が形成される。同様に、コア基板10の他面10b側に、絶縁層22が積層され、その絶縁層22上に導体層32が形成される。そしてコア基板10の両面において、各絶縁層の積層と導体層の形成とが繰り返され、コア基板10の一面10a側及び他面10b側に、最表層の絶縁層23及び最表層の絶縁層2が形成される。
【0036】
コア基板10の用意では、例えば、絶縁層20を含む両面銅張積層板が用意される。そしてサブトラクティブ法などによって所定の導体パターンを含む導体層31、32を絶縁層20の両面に形成すると共にスルーホール導体20cを絶縁層20内に形成することによってコア基板10が用意される。絶縁層21、22、及び、絶縁層21又は絶縁層22上の導体層31、32は、例えば一般的なビルドアップ基板の製造方法によって、それぞれ形成される。例えば各絶縁層は、フィルム上のエポキシ樹脂を、コア基板10又は先に形成されている各絶縁層及び各導体層上に熱圧着することによって形成される。また、各導体層は、例えば、めっきレジストの形成及びパターンめっきなどを含むセミアディティブ法やフルアディティブ法などの導体パターンの任意の形成方法を用いて形成される。セミアディティブ法などの導体パターンの形成方法を用いる各導体層の形成では、ビア導体2vが各絶縁層内に形成され得る。
【0037】
次いで図6Bに示されるように、導体層3、33が絶縁層上に形成される。導体層3、33は、導体層31、32と同様に、例えばセミアディティブ法を用いて形成される。絶縁層2の表面2a上、及びレーザー光の照射などによって形成された絶縁層2の貫通孔内に無電解めっき又はスパッタリングなどによって金属膜が形成される。コア基板10の一面10a側の絶縁層23上にも同様に金属膜が形成される。絶縁層2に形成された金属膜上への、パッド本体3Bが形成されるべき位置に対応する開口パターンが形成されためっきレジストの形成、及び、開口内へのめっき膜の形成、並びに、めっきレジスト剥離後の金属膜の除去により、パッド本体3Bが形成される。絶縁層23上でも同様の工程で、導体パッド33aが形成される。
【0038】
図6Cには、図6Bにおけるパッド本体3Bの周縁部であるC部の、パッド本体3Bの形成において、めっきレジストが剥離された後、金属膜30aがエッチングにより除去される前の状態における拡大図が示されている。上述しためっきレジスト剥離後に露出する金属膜30aは、強塩基溶液を使用するクイックエッチングにより除去され得る。このエッチングにおいては、エッチング液の回り込みの差異により、パッド本体30Bを構成するめっき膜30bの上面と金属膜30aの側面とが接する隅部において、局所的に速度の大きいエッチングが実現され得る。その結果、図6Dに示されるように、めっき膜30bの直下に位置する金属膜30aが楔状にエッチングされ得る。また、図示されるように、エッチングにおいてめっき膜30bの金属膜30aとの接触部近傍も部分的にエッチングされる場合がある。周縁部にノッチ部Nを有するパッド本体3Bが形成される。
【0039】
次いで、図6Eに示されるように、ソルダーレジスト層40が絶縁層23及び導体層33上に形成され、ソルダーレジスト層4が絶縁層2及び導体層3上に形成される。ソルダーレジスト層4、40それぞれには、開口4a又は開口40aが設けられる。ソルダーレジスト層4、40は、それぞれ、例えば感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを塗布したり噴霧したりフィルム状で積層したりすることによって形成される。そして、例えば露光及び現像、又はレーザー加工などによって、開口4a、40aが、それぞれ形成される。開口4aからは、パッド本体3Bが完全に露出する。開口40aからは、導体層33の一部が露出する。
【0040】
次いで、配線基板1の表面に露出するパッド本体3Bの表面に保護層3Pが形成される。パッド本体3Bの周縁部の拡大図である図6Fに示されるように、開口4a内に露出するパッド本体3Bの表面に保護層3Pが形成される。先ず、例えば、ニッケル化合物及びヒドラジンなどを含む無電解ニッケルめっき液が用いられ、無電解ニッケルめっき層が下層3p1としてパッド本体3Bの露出面全体を被覆するように形成される。保護層3Pを構成する下層3p1はパッド本体3Bのノッチ部Nを完全に充填するように形成される。なお、下層3p1の析出に先立って、パラジウムなどのめっき析出用の触媒が、ノッチ部N近傍の絶縁層2の上面に付与され得る。
【0041】
続いて、下層3p1の表面に、中間層3p2として無電解パラジウムめっき層が形成される。例えば、パラジウム化合物及び次亜リン酸化合物などを含む還元型無電解パラジウムめっき液を使用して、無電解パラジウムめっき層が形成される。続いて、中間層3p2上に、上層3p3として、例えば無電解金めっき層が形成される。例えば、金化合物及びヘキサメチレンテトラミンなどを含む還元型無電解金メッキ液を使用して、無電解金メッキ層が形成される。パッド本体3Bと保護層3Pとによって構成される導体パッド3aの形成が完了する。下層3p1、中間層3p2、上層3p3夫々の層厚は、めっき液の濃度、温度、浸漬時間などによって調整され得る。パッド本体3B表面への保護層3Pの形成と同時に、配線基板1において導体パッド3aと反対側に露出する導体パッド33aの表面にも保護膜が形成されてよい。以上の工程を経ることによって図1の例の配線基板1が完成する。
【0042】
なお、図5に示される形態の、拡張部EXを有する保護層3Pが形成される場合には、下層3p1形成時の、ノッチ部N近傍の絶縁層2の上面へのめっき析出用の触媒の付与状態、及び、下層3p1を析出させる無電解めっきにおける、めっき液の濃度、温度、浸漬時間などの調整によって、平面方向に拡張する下層3p1が形成され得る。
【0043】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。実施形態の配線基板は所謂両面基板であってもよく、片面基板であってもよい。縁部において下層の絶縁層の表面から離間する導体パッドのパッド本体は、配線基板の両方の表面に設けられていてもよく、いずれか一方の表面だけに設けられていてもよい。ソルダーレジスト層4は、開口4a内に導体パッド3aの全体を露出させながら、導体層3における導体パッド3a以外の部分を覆っていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 配線基板
2 絶縁層(第1絶縁層)
2a 上面
3 導体層(第1導体層)
3a 導体パッド(第1導体パッド)
3B パッド本体
3P 保護層
3p1 下層
3p2 中間層
3p3 上層
4、40 ソルダーレジスト層
4a、40a 開口
11 第1面
12 第2面
30a 金属膜
30b めっき膜
20、21、22、23 絶縁層
31、32、33 導体層
E2 外部要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F