(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037427
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】モータ付き減速機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20230308BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20230308BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/173 A
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144184
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】591218307
【氏名又は名称】株式会社ニッセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】可児 旭弘
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
5H605BB05
5H605CC04
5H605CC05
5H605CC08
5H605DD09
5H605EB10
5H605EB28
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE31
5H607GG08
5H607GG28
(57)【要約】
【課題】コストアップを抑えつつ、オイルシールのずれによるグリス漏れを効果的に防止可能とする。
【解決手段】減速部3を収容する減速機ケース2に、モータ5を収容するモータケース4が、筒状の連結部6を介して固定されて、モータ5の回転軸22の先端が、連結部6を貫通して減速機ケース2内に突出しており、連結部6内に、回転軸22を支持するボールベアリング30と、ボールベアリング30より前側で連結部6と回転軸22との間をシールするオイルシール34とが配置されるモータ付き減速機1であって、ボールベアリング30とオイルシール34との間で連結部6の内周面に、オイルシール34がボールベアリング30の内輪31に当接することを防止するカラー35が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速部を収容する減速機ケースに、モータを収容するモータケースが、筒状の連結部を介して固定されて、前記モータの回転軸の先端が、前記連結部を貫通して前記減速機ケース内に突出しており、
前記連結部内に、前記回転軸を支持する転がり軸受と、前記転がり軸受より前記減速機ケース側で前記連結部と前記回転軸との間をシールするオイルシールとが配置されるモータ付き減速機であって、
前記転がり軸受と前記オイルシールとの間で前記連結部の内周面に、前記オイルシールが前記転がり軸受の内輪に当接することを防止する当接防止部材が設けられていることを特徴とするモータ付き減速機。
【請求項2】
前記当接防止部材は、前記オイルシールに当接していることを特徴とする請求項1に記載のモータ付き減速機。
【請求項3】
前記当接防止部材は、前記転がり軸受の外輪に当接していることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ付き減速機。
【請求項4】
前記当接防止部材は、内径が前記オイルシールの外径よりも小さいリング状のカラーであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のモータ付き減速機。
【請求項5】
前記カラーの内径は、前記内輪の外径よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載のモータ付き減速機。
【請求項6】
前記カラーの内径は、前記内輪の外径よりも小さくなっており、前記カラーにおける前記転がり軸受側の端面で内周側には、外径が前記内輪の外径よりも大きくなるリング状の切欠部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のモータ付き減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータを一体に取り付けてなるモータ付き減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ付き減速機は、出力軸及びギヤを含む減速部を収容した減速機ケースに、モータを収容したモータケースを取り付けてなる。モータの回転軸は、減速機ケースとモータケースとの一方に設けられた連結部を貫通して減速機ケース内に突出し、減速部のギヤと噛合している。
回転軸は、特許文献1に開示されるように、連結部内でボールベアリングによって支持されている。連結部内でボールベアリングよりも減速機ケース側には、連結部と回転軸との間をシールするオイルシールが隣接して配置されている。このオイルシールは、減速機ケース内のグリスがモータケース側へ浸入することを防止するために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のモータ付き減速機においては、温度上昇等によって減速機ケースの内圧が上がると、オイルシールがボールベアリング側に押圧され、ボールベアリングに接触してしまうおそれがある。ボールベアリングの内輪は回転軸と共に回転しているため、オイルシールが内輪と接触すると損傷が生じ、シール性が低下してグリスをモータケース側へ漏洩させてしまう。回転軸にオイルシールの止め輪を設けることも考えられるが、回転軸に止め輪用の溝を加工する必要が新たに生じ、コストアップに繋がる。
【0005】
そこで、本開示は、コストアップを抑えつつ、オイルシールのずれによるグリス漏れを効果的に防止可能なモータ付き減速機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、減速部を収容する減速機ケースに、モータを収容するモータケースが、筒状の連結部を介して固定されて、モータの回転軸の先端が、連結部を貫通して減速機ケース内に突出しており、
連結部内に、回転軸を支持する転がり軸受と、転がり軸受より減速機ケース側で連結部と回転軸との間をシールするオイルシールとが配置されるモータ付き減速機であって、
転がり軸受とオイルシールとの間で連結部の内周面に、オイルシールが転がり軸受の内輪に当接することを防止する当接防止部材が設けられていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、当接防止部材は、オイルシールに当接していることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、当接防止部材は、転がり軸受の外輪に当接していることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、当接防止部材は、内径がオイルシールの外径よりも小さいリング状のカラーであることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、カラーの内径は、内輪の外径よりも大きいことを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、カラーの内径は、内輪の外径よりも小さくなっており、カラーにおける転がり軸受側の端面で内周側には、外径が内輪の外径よりも大きくなるリング状の切欠部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、当接防止部材によってオイルシールが転がり軸受の内輪に当接することがなくなる。よって、コストアップを抑えつつ、オイルシールのずれによるグリス漏れを効果的に防止可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、当接防止部材は、オイルシールに当接しているので、オイルシールのずれ防止効果が向上する。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、当接防止部材は、転がり軸受の外輪に当接しているので、当接防止部材の位置決めが容易となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、当接防止部材を、内径がオイルシールの外径よりも小さいリング状のカラーとしているため、オイルシールへ確実に当接可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、カラーの内径は、内輪の外径よりも大きいので、カラーが内輪に当接することを確実に防止することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、カラーの内径は、内輪の外径よりも小さくなっており、カラーにおける転がり軸受側の端面で内周側には、外径が内輪の外径よりも大きくなるリング状の切欠部が形成されているので、内輪との接触を回避しつつカラーの内径を小さくでき、オイルシールとの当接面積を大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】モータ付き減速機の変更例を示す連結部部分の拡大縦断面図である。
【
図3】モータ付き減速機の他の変更例を示す連結部部分の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、モータ付き減速機の一例を示す縦断面図である。便宜上、
図1の左側を前方として説明する。
モータ付き減速機(以下単に「減速機」という。)1は、減速部3を収容する四角箱状の減速機ケース2に、モータ5を収容する筒状のモータケース4を、連結部6を介して連結してなる。連結部6は、減速機ケース2の後面から後方へ突出し、前後に貫通する貫通孔7を有する筒状となっている。
減速部3は、入力ピニオン10と、中間ギアセット11と、出力ギアセット12とを備えている。
入力ピニオン10は、連結部6を貫通して減速機ケース2内に突出している。
中間ギアセット11は、入力ピニオン10と直交方向に支持される中間軸13と、中間軸13へ一体に結合される大径のギア14と、ギア14と同軸で中間軸13に形成され、ギア14より小径となるピニオン15とを備えている。入力ピニオン10は、ギア14と噛合している。
出力ギアセット12は、入力ピニオン10と直交方向に支持されて両端が減速機ケース2から突出する中空の出力軸16と、出力軸16へ一体に結合されてピニオン15が噛合する大径の出力ギア17とを備えている。
【0010】
モータ5は、モータケース4内に固定されるステータ20と、ステータ20を貫通して軸心に回転軸22を備えたロータ21とを有する。回転軸22の後部は、モータケース4の後部でボールベアリング23を介して支持される。モータケース4の前端には、連結部6の後端に嵌合するリング状の受け部24が設けられている。受け部24は、連結部6の後端に、複数のボルト25,25・・によって組み付けられる。回転軸22の前部は、連結部6を同軸で貫通しており、回転軸22の前端に、入力ピニオン10が同軸で一体に設けられている。
連結部6の貫通孔7は、前方から、小径孔26、中径孔27、大径孔28となり、後方へ向かうに従って段階的に拡開している。
大径孔28内には、回転軸22の前部を支持するボールベアリング30が設けられている。ボールベアリング30は、回転軸22と一体の内輪31と、大径孔28に保持される外輪32と、内輪31と外輪32との間に配置される複数のボール33,33・・とを備えている。
ボールベアリング30の前方で中径孔27には、回転軸22と連結部6との間をシールするオイルシール34が設けられている。
【0011】
ボールベアリング30とオイルシール34との間で大径孔28内には、リング状のカラー35が設けられている。カラー35の前面は、中径孔27と大径孔28との間の段部36に当接している。カラー35の後面は、ボールベアリング30の外輪32に当接している。外輪32は、モータケース4の受け部24に当接して後方への移動が規制されている。よって、カラー35は、段部36と外輪32との間で前後方向に位置決めされる。
カラー35の内径は、オイルシール34の外径よりも小さく設定されて、カラー35の前面をオイルシール34の後面に当接させている。
カラー35の内径は、ボールベアリング30の内輪31の外径よりも大きく設定されている。
【0012】
以上の如く構成された減速機1において、連結部6にモータケース4を組み付ける際、前方からオイルシール34、カラー35、ボールベアリング30の順に組み付けた回転軸22の前部を貫通孔7に後方から差し込み、オイルシール34を中径孔27に、カラー35及びボールベアリング30を大径孔28にそれぞれ嵌合させる。
そして、受け部24をボルト25によって連結部6に連結すれば、
図1のようにオイルシール34とボールベアリング30との間にカラー35が介在された状態となる。この状態で、カラー35は内輪31に当接せず、オイルシール34も内輪31と非接触となる。
このように、カラー35は、ボールベアリング30と共に大径孔28に入れるだけで簡単に組み付けできる。よって、回転軸22に止め輪用の溝加工等が必要なくなり、コストアップが抑えられる。
【0013】
この減速機1を使用してモータ5を駆動させても、カラー35は、内輪31と干渉しないため、回転軸22の回転に支障を及ぼすことがない。
そして、減速機1の使用に伴う温度上昇等により、減速機ケース2の内圧が上がると、連結部6内でオイルシール34が後方(モータ5側)へ押圧される。しかし、オイルシール34は、カラー35によって後方への移動が規制されているため、オイルシール34が後方へ移動して内輪31に当接するおそれがなくなる。
【0014】
このように、上記形態の減速機1によれば、減速部3を収容する減速機ケース2に、モータ5を収容するモータケース4が、筒状の連結部6を介して固定されて、モータ5の回転軸22の先端が、連結部6を貫通して減速機ケース2内に突出しており、連結部6内に、回転軸22を支持するボールベアリング30(転がり軸受)と、ボールベアリング30より前側(減速機ケース2側)で連結部6と回転軸22との間をシールするオイルシール34とが配置される構造であって、ボールベアリング30とオイルシール34との間で連結部6の内周面に、オイルシール34がボールベアリング30の内輪31に当接することを防止するカラー35(当接防止部材)が設けられている。
この構成によれば、コストアップを抑えつつ、オイルシール34のずれによるグリス漏れを効果的に防止可能となる。
【0015】
特に、カラー35は、オイルシール34に当接しているので、オイルシール34のずれ防止効果が向上する。
カラー35は、ボールベアリング30の外輪32に当接しているので、カラー35の位置決めが容易となる。
当接防止部材として、内径がオイルシール34の外径よりも小さいリング状のカラー35を採用しているため、オイルシール34へ確実に当接可能となる。
カラー35の内径は、内輪31の外径よりも大きいので、カラー35が内輪31に当接することを確実に防止することができる。
【0016】
なお、カラーは、上記形態のように前後の厚みが半径方向で変化しない構造に限らない。
図2は、カラーの構造が異なる減速機1の連結部6部分を示す。ここでのカラー35Aは、内径がオイルシール34の外径及び内輪31の外径よりも小さくなっている。
しかし、カラー35Aの後面内周側には、外径が内輪31の外径よりも大きくなるリング状の切欠部37が、半径方向に同じ厚みで形成されている。よって、カラー35Aの後面は内輪31に接触しない。
この減速機1においても、内輪31に当接しないカラー35Aによってオイルシール34が内輪31と非接触となる。よって、コストアップを抑えつつ、オイルシール34のずれによるグリス漏れを効果的に防止可能となる。
特にここでは、カラー35Aの後面で内周側に、外径が内輪31の外径よりも大きくなるリング状の切欠部37が形成されているので、内輪31との接触を回避しつつカラー35Aの内径を小さくでき、オイルシール34との当接面積を大きく確保することができる。
但し、切欠部は、半径方向に同じ厚みとする構造に限らず、
図3に示す減速機1のカラー35Bのように、内輪31の外径よりも大きくなる外径から、半径方向中心側へ向かうに従って徐々に前方へ厚くなるテーパ状の切欠部38としてもよい。
【0017】
その他、当接防止部材は、カラーに限らず、内径がオイルシールの外径よりも小さいリング状のシムプレートやワッシャーを軸方向に複数枚重ねて用いてもよい。この場合、全てのシムプレート等は、内径が内輪の外径より大きいものであってもよいし、内輪側の1又は複数枚のシムプレート等のみの内径が内輪の外径より大きいものであってもよい。
当接防止部材は、オイルシールと外輪との一方又は双方と非接触であってもよい。
転がり軸受は、ボールベアリングに限らず、ローラ(ころ)を用いたものであってもよい。
減速部も上記形態に限らない。例えば中間ギアセットが2段以上あるものや、中間ギアセットがなく、入力ピニオンが出力ギアセットの出力ギアに噛合しているもの等であってもよい。
連結部は、減速機ケースでなくモータケース側へ一体に設けられていてもよいし、減速機ケースとモータケースとにそれぞれ設けた筒部同士を付き合わせて連結部を形成してもよい。別体の連結部を減速機ケースとモータケースとにそれぞれ結合してもよい。
【符号の説明】
【0018】
1・・モータ付き減速機、2・・減速機ケース、3・・減速部、4・・モータケース、5・・モータ、6・・連結部、10・・入力ピニオン、11・・中間ギアセット、12・・出力ギアセット、16・・出力軸、22・・回転軸、23,30・・ボールベアリング、24・・受け部、28・・大径孔、31・・内輪、32・・外輪、33・・ボール、34・・オイルシール、35,35A,35B・・カラー、36・・段部、37,38・・切欠部。