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  • 特開-駆虫用首輪 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037437
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】駆虫用首輪
(51)【国際特許分類】
   A01K 27/00 20060101AFI20230308BHJP
   B65D 75/36 20060101ALI20230308BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20230308BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20230308BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20230308BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20230308BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A01K27/00 A
B65D75/36
A01M1/20 A
A01P7/02
A01P7/04
A01N53/08 110
A01N43/40 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144203
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】雨田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 明
【テーマコード(参考)】
2B121
3E067
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA16
2B121CA22
2B121CA75
2B121CA81
2B121CC02
2B121EA30
3E067AA18
3E067AA26
3E067AB99
3E067AC01
3E067BA15A
3E067BA33A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC04A
3E067CA04
3E067CA11
3E067EA06
3E067FA01
3E067FB02
3E067FC01
4H011AC01
4H011AC04
4H011BB09
4H011BB15
4H011BC06
4H011BC17
4H011BC18
4H011BC19
4H011BC22
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】
ブリスター包装容器などの密閉容器内では首輪からの害虫駆除成分のブリードがより抑制でき、さらには密閉容器から取り出して使用を開始した直後からは速やかに害虫駆除成分がブリードするとの害虫防除成分の特異な放出挙動に適合する駆虫用首輪を提供することを課題とする。
【解決手段】
塩化ビニル系樹脂成分、フェノトリン、蒸散性可塑剤および二酸化チタンを含有する駆虫用首輪。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂成分、フェノトリン、蒸散性可塑剤および二酸化チタンを含有する駆虫用首輪。
【請求項2】
二酸化チタンの含有量が、フェノトリンおよび蒸散性可塑剤の合計含有量に対し0.03重量%~10.00重量%であることを特徴とする請求項1に記載の駆虫用首輪。
【請求項3】
ブリスター包装容器に収納されてなる請求項1または請求項2に記載の駆虫用首輪。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆虫用首輪に関する。
【0002】
犬や猫等のペットに寄生するノミやダニ等の害虫を駆除するため、害虫駆除成分を樹脂成分に含有させて成型された駆虫用首輪が開発されている。駆虫用首輪は、製造直後に透明ブリスター包装容器などの密閉容器に収納された状態で貯蔵され、輸送後、店頭において陳列がなされる。(特許文献1)
【0003】
駆虫用首輪は、密閉容器に収納された状態では、害虫駆除成分が首輪表面からブリードすることがない一方、密閉容器を開封し実用に供されるや否や遅滞なく充分量の害虫駆除成分が首輪表面からブリードされ、害虫駆除効果を発揮するという言わば、害虫駆除成分に関する相反する特異な放出挙動が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-69591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、駆虫用首輪に要求される前記の害虫駆除成分の特異な放出挙動に提供する駆虫用首輪が開発されていている。しかしながら、保管状態によっては密閉容器内においても害虫駆除成分のブリードが起こる場合があった。
【0006】
ブリスター包装容器は透明なため、被包装体である駆虫用首輪を容易に目視できる利点がある一方、駆虫用首輪の表面に害虫駆除成分のブリードに起因する液滴が認められると、商品価値の低下につながる場合があった。
【0007】
本発明は、ブリスター包装容器などの密閉容器内では首輪からの害虫駆除成分のブリードがより抑制でき、さらには密閉容器から取り出して使用を開始した直後からは速やかに害虫駆除成分がブリードするとの害虫防除成分の特異な放出挙動に適合する駆虫用首輪を提供することを課題とする。
【解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、
〔1〕 塩化ビニル系樹脂成分、フェノトリン、蒸散性可塑剤および二酸化チタンを含有する駆虫用首輪。
〔2〕 二酸化チタンの含有量が、フェノトリンおよび蒸散性可塑剤の合計含有量に対し0.03重量%~10.00重量%であることを特徴とする前記駆虫用首輪。
〔3〕 ブリスター包装容器に収納されてなる前記駆虫用首輪。
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブリスター包装容器などの密閉容器内では首輪からの害虫駆除成分のブリードがより抑制でき、さらには密閉容器から取り出して使用を開始した直後からは速やかに害虫駆除成分がブリードするとの害虫防除成分の特異な放出挙動に適合する駆虫用首輪を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の駆虫用首輪に使用される塩化ビニル系樹脂成分は、フェノトリンと相溶性が良好であり、柔軟性にも優れるZEST(登録商標) 1300Z(新第一塩ビ株式会社製)を使用することが好ましい。
【0011】
本発明の駆虫用首輪に使用される害虫防除成分は、フェノトリンである。フェノトリンは塩化ビニル系樹脂成分に対して飽和溶解量以上となるように配合され、その含有量は、通常、塩化ビニル系樹脂に対して20~60重量%以上の範囲である。
【0012】
本発明の駆虫用首輪に使用される蒸散性可塑剤としては、常温で液体状のエステル類、アルコール類、ケトン類、動植物性精油などがあげられる、液体状のエステル類としては、例えば、フタル酸エステル類、直鎖二塩基酸エステル類、リン酸エステル類などが挙げられ、このうち、リン酸トリエチル、リン酸トリブチルなどのリン酸エステル類が好ましい。
【0013】
本発明の駆虫用首輪に使用される二酸化チタンとしては、ルチル型の二酸化チタンおよびアナタース型の二酸化チタンが挙げられ、このうちルチル型の二酸化チタンを使用することが好ましい。使用される二酸化チタンの平均粒子径は、通常、0.1~1.0μmの範囲である。ここで平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320-X100」、日機装株式会社)を用いてレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)を意味する。
【0014】
二酸化チタンの含有量は、フェノトリンおよび蒸散性可塑剤の合計含有量に対し0.03重量%~10.00重量%である。該範囲とすることにより、ブリスター包装容器などの密閉容器内では首輪からの害虫駆除成分のブリードがより抑制できる一方、密閉容器から取り出して使用を開始した直後からは速やかに害虫駆除成分がブリードする。さらに二酸化チタンの含有量を、フェノトリンおよび蒸散性可塑剤の合計含有量に対し0.30重量%~3.00重量%とすることにより、使用を開始した直後からの害虫駆除成分のブリードがより速やかになる。
【0015】
本発明の駆虫用首輪には、フェノトリン以外の有効成分として昆虫成長制御剤を含有することができる。昆虫成長制御剤としては、例えば、ピリプロキシフェン、ビストリフルロンなどが挙げられる。
【0016】
本発明の駆虫用首輪には、さらにピペロニルブトキサイド、MGK-264などのフェノトリンの効力増強剤を含有することができる。
【0017】
また本発明の駆虫用首輪には、ブリード促進剤、蒸散性可塑剤以外の可塑剤、安定化剤、染料などを含有することができる。
【0018】
ブリード促進剤としては、エルカ酸、カルボン酸などが挙げられる。カルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪酸、安息香酸などの芳香族カルボン酸、酒石酸、フマル酸などのジカルボン酸、クエン酸などのトリカルボン酸が挙げられる。
【0019】
蒸散性可塑剤以外の可塑剤とは、20℃における蒸気圧が0.0001mmHg未満の可塑剤であり、例えば、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸、2-エチルヘキシル、セバシン酸などが挙げられる。
【0020】
安定化剤としては、エポキシ化大豆油、バリウム/亜鉛系液状安定剤、ステアリン酸バリウムなどが挙げられる。
【0021】
本発明の駆虫用首輪およびブリスター包装容器の調整は、前記特許文献1などに記載の公知の手法が適用される。例えば、駆虫用首輪を上述した各種成分をプラストグラフミル、バンバリーミキサー、スーパーミキサーなど公知の混練機にて溶融混練し、射出成型、押出成形、プレス成型などの公知の射出成形機にて所定の形状に成形した後、必要に応じて裁断し、バックルなどの留め具を付するなどして製造することができる。
【0022】
また、本発明の駆虫用首輪は、製造直後、図1に示すような台紙3および透明ブリスター部材4から構成されるブリスター包装容器1に収納されて貯蔵、輸送等がなされ店頭に陳列される。
【0023】
台紙3は、紙基材5、ガスバリヤー層6およびポリオレフィン層7をこの順に積層した3層構造となっている。紙基材としては、例えば、コートボール紙、カート紙、マニラボール紙などが挙げられる。ガスバリヤー層としては、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン層としては、L-LDPEが挙げられる。紙基材とガスバリヤー層ならびにガスバリヤー層とポリオレフィン層とは、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂などを主成分とする接着剤により接着され3層構造の台紙が構成される。
【0024】
ブリスター部材4は、駆虫用首輪を収納するための収納部4aと、該収納部の外周縁に沿って形成された平面上のつば部4bとで構成される。このつば部4bは、収納部4aを密閉状態とするために台紙と圧着可能とする接着部4dと、台紙とは接着することなくブリスター部材を台紙から剥がすための把手部4cとからなる。
【0025】
ブリスター部材4は、ガスバリヤー性を有しかつ光透過性を有する熱可塑性樹脂からなり、フィルム層8とPET層9とが接着され積層された構造となっている。
フィルム層は、台紙におけるポリオレフィン層に対する剥がし易さを付与するための層であり、例えば、東セロ株式会社製のTAF610Cを使用することができる。また最外層のPET層は、ガスバリヤー性を付与するための層であり、例えば、ポリテック株式会社のPT-700を使用することができる。
【0026】
本発明の駆虫用首輪はブリスター部材の収納部4aに収納された後、つば部が加熱圧着されることにより、ブリスター部材4におけるフィルム層8と台紙3におけるポリオレフィン層7が熱接着される。これにより、駆虫用首輪はブリスター包装容器内にて密閉状態で保管することができる。
【0027】
本発明の駆虫用首輪が駆除対象とする害虫としては、例えば、ネコノミ、イヌノミ、ヒトノミ等の隠翅目害虫、フタトゲチマダニ、キチマダニ、ヤマトマダニ、シュルツマダニ等のマダニ類のダニ目害虫、ヒトスジシマカ、アカイエカ、ネッタイシマカ、チカイエカ等の双翅目害虫が挙げられる。
【実施例0028】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
以下に記載の使用原料、表1に示す処方および後述する駆虫用首輪の製造手順に従い駆虫用首輪を各13本ずつ作製した。なお表1に示す数値は重量%である。
【0030】
〔使用原料〕
原料成分(A)フェノトリン(住友化学株式会社製、商品名:スミスリン)
原料成分(B)ピリプロキシフェン(住友化学株式会社製、商品名:スミラブ)
原料成分(C)リン酸トリエチル(黒金化成株式会社、商品名:TEP)
原料成分(D)アジピン酸ジイソデシル(田岡化学工業株式会社、商品名:DIDA)
原料成分(E)イソステアリン酸(日産化学工業株式会社)
原料成分(F)エポキシ化大豆油(株式会社ADEKA、商品名:アデカイザーO-130P)
原料成分(G)バリウム/亜鉛系液状安定剤(堺化学工業、商品名:LBZ-793K)
原料成分(H)ルチル型二酸化チタン(テイカ株式会社製、商品名JR800 平均粒子径0.27μm)
原料成分(I)ステアリン酸バリウム(日油株式会社、商品名:バリウムステアレート)
原料成分(J)塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ株式会社製、商品名:ZEST 1300Z)
【0031】
〔表1〕
【0032】
〔駆虫用首輪の製造手順〕
1.予め原料成分(F)および(G)を60℃に加温した後、原料成分(A)~(G)の全てをポリカップ内で混合し混合液を得た。
2.原料成分(H)、(I)および(J)を、別途ポリカップ内で均一になるまで混合し、混合粉体を得た。
3.プラストグラフミル(株式会社東洋精機製作所社製)を140℃に加温し、ローターを10rpmで回転させながら前記混合粉体を投入した後、さらに前記混合液を投入し、ローターの回転数を50rpmに変更して5分間溶融混練して混練物を得た。
4.前記で得られた混練物をプラストグラフミルから取出し、2枚のアルミ板で挟み込み、卓上用テストプレス機(神籐金属工業所株式会社製)にて、前記混錬物を圧力50kg/cmで1分間プレスし、さらに圧力100kg/cmで1分間プレスした。
5.前記で得られたプレス物27gを縦15cm、横5cm、厚み3mmの成形枠に入れ、前記卓上用テストプレス機にて温度160℃、圧力100kg/cmの条件で1分間プレスし成形体を得た。
6.前記で得られた成形体を卓上用テストプレス機の水冷部に移し、圧力100kg/cmの条件で成形体が35℃に冷えるまで冷却し、該成形体を縦15cm、横1cm、厚み3mmに裁断し駆虫用首輪を得た。
【0033】
上記で得られた各駆虫用首輪のうちそれぞれ10本を図1に示す形状を有するブリスター部材の収納部に収納した後、該ブリスター部材に台紙を載置し、該台紙のつば部を加熱圧着することで駆虫用首輪を収納したブリスター包装容器を作製した。
前記台紙は、コートボール紙からなる膜厚500μmの紙基材、ポリエチレンテレフタレートからなる膜厚25μmのガスバリヤー層、およびL-LDPEからなる膜厚30μmのポリオレフィン層の3層構造の台紙を用いた。また、前記ブリスター部材は、TAF610Cからなる膜厚25μmのフィルム層および膜厚350μmのPET層の2層構造のブリスター部材を用いた。
【0034】
〔ブリードの有無確認〕
前記で得られた駆虫用首輪を収納したブリスター包装容器を60℃の恒温槽内に入れ、2か月後に取り出して駆虫用首輪の表面におけるブリードの有無を確認した。
ブリスター包装容器内の駆虫用首輪表面を観察し、駆虫用首輪表面に液滴が認められる場合をブリード有、液滴が認められない場合をブリード無とした。以下表2に、ブリードが発生した駆虫用首輪の本数を示す。
【0035】
〔表2〕
【0036】
[ブリード量の測定]
前述のようにして調整した各駆虫用首輪のそれぞれ3本を、35℃の恒温機内に16日間にわたり放置し、経時的に駆虫用首輪の表面にブリードしたフェノトリンおよびピリプロキシフェンを紙ウエス(エリエール&reg; プロワイプ ソフトワイパーS200、大王製紙株式会社製)で拭き取った。
経過時間毎の前記拭き取り後の夫々の紙ウエスとアセトン50mlを60ml容スクリュー管に入れて超音波を30分照射しフェノトリンおよびピリプロキシフェンを抽出して抽出液を得た。このうち、該抽出液に含まれるフェノトリンを以下の測定条件に基づいて液体クロマトグラフィーで測定し、フェノトリン量(μg/cm/日)を夫々求めその平均を算出した。表3に結果を示す。
なお、液体クロマトグラフィー測定条件は以下の通りである。
移動相:アセトニトリル/蒸留水混液(80:20)
抽出液打ち込み量:5μL
流量:1.0mL/min
分離管:住化分析センター社製 ODS-A212
検出器:紫外線吸光光度計(株式会社島津製作所社製)
検出波長:272nm
【0037】
〔表3〕
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】ブリスター包装容器および該容器に収納された本発明の駆虫用首輪を示す斜視図である。
図2図1に示すブリスター包装容器において、ブリスター部材のつば部を台紙から剥がしブリスター包装容器に収納されている駆虫用首輪を取り出す途中の説明図である。
図3図1に示すブリスター包装容器において、ブリスター部材と台紙との接着部分の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ブリスター包装容器
2 駆虫用首輪
3 台紙
4 ブリスター部材
4a 収容部
4b つば部
4c 把手部
4d 接着部
5 紙基材
6 ガスバリヤー層
7 ポリオレフィン層
8 フィルム層
9 PET層


図1
図2
図3