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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037441
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/12 20060101AFI20230308BHJP
   F16L 33/025 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
F16L19/12
F16L33/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144209
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 竜彦
【テーマコード(参考)】
3H014
3H017
【Fターム(参考)】
3H014BA06
3H014GA13
3H017EA08
3H017EA11
3H017EA13
(57)【要約】
【課題】リングの形状を簡素にして形成し易くすることができると共に、樹脂管の接合強度を上げることができる管継手を提供すること。
【解決手段】管継手10は、樹脂管Pの軸方向一方側内に押し込まれて樹脂管Pの軸方向一方側を拡径するテーパ状外周面4aを有するインコア4と、樹脂管Pの軸方向一方側寄りの外周面Paに嵌められる筒状のリング3と、樹脂管Pの軸方向一方側、及び、リング3の軸方向一方側が挿入される管挿入部1bを有する胴1と、胴1の軸方向他方側の外周面に形成された雄ねじ部1dに、リング3を覆うようにして螺合させる袋ナット2と、を備えている。リング3の胴側端面3aは、袋ナット2の締め付け前の状態のとき、リング3の内周面3dに対する角度θ1が鋭角である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂管の軸方向一方側内に押し込まれて前記樹脂管の軸方向一方側を拡径するテーパ状外周面を有するインコアと、
前記樹脂管の軸方向一方側寄りの外周面に嵌められる筒状のリングと、
前記樹脂管の軸方向一方側、及び、前記リングの軸方向一方側が挿入される管挿入部を有する胴と、
前記胴の軸方向他方側の外周面に形成された雄ねじ部に、前記リングを覆うようにして螺合させる袋ナットと、を備えた管継手であって、
前記リングの胴側端面は、前記袋ナットの締め付け前の状態のとき、前記リングの内周面に対する角度が鋭角であること、
を特徴とする管継手。
【請求項2】
前記リングは、当該リングの胴側端面の外周縁から軸方向他方側に延び、外径が同寸法に形成されたストレート部と、
前記ストレート部の軸方向他方側に連設され、外径が軸方向他方側に向かって拡径した拡径部と、を有していること、
を特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記リングは、当該リングの胴側端面の外周縁から軸方向他方側に延び、外径が軸方向他方側に向かって縮径した縮径部と、
前記縮径部の軸方向他方側に連設され、外径が軸方向他方側に向かって拡径した拡径部と、を有していること、
を特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項4】
前記リングは、当該リングの胴側端面の外周縁から軸方向他方側に延び、外径が軸方向他方側に向かって拡径した拡径部と、
前記拡径部の軸方向他方側に連設され、外径が軸方向他方側に向かって拡径した第2拡径部と、を有していること、
を特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項5】
前記管継手は、前記胴の接続部内に、前記リングを介在して前記樹脂管の先端部を挿入して、前記接続部の雄ねじ部に前記袋ナットの雌ねじ部を螺合させて、前記樹脂管を締め付け完了後に、
前記リングは、前記胴の内側に形成された内側拡径部に押されて、前記胴側端面の前記リングの内周面に対する角度が直角以下となって、前記リングの胴側の内周面が前記樹脂管の外周面に食い込むこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の管継手。
【請求項6】
前記リングの胴側の内周面には、前記胴の接続部の雄ねじ部に前記袋ナットの雌ねじ部を螺合させて、前記樹脂管を締め付けたときに、前記樹脂管の外周面に食い込む食い込み部を有していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
図5Aは、従来の管継手1000を示す図であり、袋ナット200を締め付けたときのリング300の状態を示す概略拡大断面図である。図5Bは、袋ナット200を締め付けたときのリング300の状態を示す要部拡大概略断面図である。
【0003】
従来から水道用のポリエチレン管等の樹脂管800は、樹脂管800同士を接続する箇所に、例えば、図5Aに示すような管継手1000が使用されている。
【0004】
管継手1000は、図5Aまたは図5Bに示すように、胴100の接続部110内に、リング300を介在して樹脂管800の先端部を挿入して、接続部110の雄ねじ部120に袋ナット200の雌ねじ部210を螺合させることで、樹脂管800を接続している。
【0005】
従来のリング300は、袋ナット200の締め付け前の状態のとき、胴側端面310が内周面320に対して垂直(θ100)になっている。そのリング300の胴側端面310の内周面320に対する角度θ100は、袋ナット200をねじ込むと、胴100の接続部110の内側拡径面130に沿うように変形して、鈍角になる。樹脂管800は、この状態で引く抜く方向に引っ張ると、リング300の胴側端面310が更に鈍角になり、樹脂管800への食い込みが弱まって抜け出し易くなる。
【0006】
また、一般に使用されている樹脂管800は、水道用ポリエチレン二層管(JIS K6762、使用材料:PE50)である。水道用の管継手1000において、地震等の発生によって地盤が変動を起こした際には、管継手1000から樹脂管800が抜けてしまい、漏水が発生するおそれがあった。近年、樹脂管800には、水道給水用高密度ポリエチレン管(JP K 001,2、使用材料:PE100)も使用されるようになって来ている。
【0007】
なお、管継手1000で接続された水道給水用高密度ポリエチレン管(PE100)は、管の性能が向上したものの、水道用ポリエチレン二層管(PE50)と比較して固い。このため、水道給水用高密度ポリエチレン管(PE100)は、リング300の樹脂管800への食い込みが浅くなり、樹脂管800が管継手1000から抜け出し易く、水漏れし易いという問題点があった。
【0008】
樹脂管800が管継手1000から抜け出し難く、水漏れしないようにしたものとしては、例えば、特許文献1,2に記載されている管継手が知られている。
【0009】
特許文献1に記載された管継手は、弾性リング(30)の内周に複数の突起(31)を備え、その複数の突起(31)が樹脂管(p)の外周面(b)に食い込むことで、樹脂管(p)の抜け止めをしている。
【0010】
特許文献2に記載された管継手は、締付リング(30)の先端部の内周に、内側へ帯リング状に盛り上がるように形成された複数の帯リング状凸シール部(33)を形成することで、樹脂管(50)の抜け止めをしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011-17356号公報
【特許文献2】特開2019-152296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1,2の管継手は、リング(30)の内周に複数の突起(31)、または、複数の帯リング状凸シール部(33)を形成して、突起(31)、または、帯リング状凸シール部(33)を樹脂管(p,50)に食い込ませて抜け止めを図っている。
【0013】
このため、特許文献1,2の管継手は、複数の突起(31)、または、複数の帯リング状凸シール部(33)を金型で樹脂成形する際に、ピンを用いたり、複数の金型を用いたりして、突起(31)、または、帯リング状凸シール部(33)をリング内周側に形成しなければならない。その結果、アンダーカット部に当たる突起(31)、または、帯リング状凸シール部(33)を高精度で樹脂成形するための金型が複雑で、部品点数が多くなり、コストアップになるという問題点があった。
【0014】
本発明は、リングの形状を簡素にして形成し易くすることができると共に、樹脂管の接合強度を上げることができる管継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は、樹脂管の軸方向一方側内に押し込まれて前記樹脂管の軸方向一方側を拡径するテーパ状外周面を有するインコアと、前記樹脂管の軸方向一方側寄りの外周面に嵌められる筒状のリングと、前記樹脂管の軸方向一方側、及び、前記リングの軸方向一方側が挿入される管挿入部を有する胴と、前記胴の軸方向他方側の外周面に形成された雄ねじ部に、前記リングを覆うようにして螺合させる袋ナットと、を備えた管継手であって、前記リングの胴側端面は、前記袋ナットの締め付け前の状態のとき、前記リングの内周面に対する角度が鋭角であることを特徴とする。前記リングの胴側端面は、前記袋ナットの締め付け完了後の状態のとき、前記リングの内周面に対する角度が直角以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、リングの形状を簡素にして形成し易くすることができると共に、樹脂管の接合強度を上げることができる管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明に係る管継手の一例を示す図であり、袋ナットを軽度の締付力で締め付けたときの状態を示す概略断面図である。
図1B】袋ナットを軽度の締付力で締め付けたときのリングの状態を示す要部拡大概略断面図である。
図2A】袋ナットを標準の締付力で締め付けたときの状態を示す管継手の概略断面図である。
図2B】袋ナットを標準の締付力で締め付けたときのリングの状態を示す要部拡大概略断面図である。
図3A】リングの一部を断面とした正面図である。
図3B図3AのA部拡大図である。
図3C】リングの左側面図である。
図3D】リングの右側面図である。
図4A】本発明に係る管継手の第1変形例を示す図であり、リングの胴側端部を示す要部拡大正面図である。
図4B】本発明に係る管継手の第2変形例を示す図であり、リングの胴側端部を示す要部拡大正面図である。
図5A】従来の管継手を示す図であり、袋ナットを締め付けたときの状態を示す概略断面図である。
図5B】袋ナットを締め付けたときのリングの状態を示す要部拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る管継手10を、図1A図4Bを参照して説明する。
なお、方向を説明する際は、図1に示す胴1側を前(一方側)、袋ナット2側を後(他方側)として説明する。また、同じ構成のものは、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0019】
<管継手>
図1Aに示すように、管継手10は、例えば、水道用の樹脂管P同士を繋ぐための配管継手である。管継手10は、胴1と、袋ナット2と、リング3と、インコア4と、を備えて構成されている。管継手10は、胴1の接続部1c内に、リング3を介在して樹脂管Pの先端部を挿入し、接続部1cの雄ねじ部1dに袋ナット2の雌ねじ部2aを螺合させて、樹脂管Pを締め付けて接続する継手である。
【0020】
なお、本発明の実施形態に係る管継手10は、水道水等の液体用を供給する配管の継手として利用されるものに限定されることはなく、気体のシールを必要とする場合を含め、流体の管路体の接続用として利用することができる。以下、本発明の管継手10の一例として、水道用の樹脂管Pから成る配管を接続する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
<樹脂管>
図1A及び図2Aに示すように、樹脂管Pは、管継手10によって接続される配管である。樹脂管Pは、例えば、耐震性及び長期静水圧強度が優れている水道給水用高密度ポリエチレン管(日本ポリエチレンパイプシステム協会規格:JP K 001,2、使用材料:PE100)等の樹脂製のものが使用されている。樹脂管Pの接続側の開口端(前端部)内には、インコア4が圧入されている。インコア4及び樹脂管Pの前端部は、胴1の接続部1c内に挿入されている。
【0022】
なお、樹脂管Pは、水道給水用高密度ポリエチレン管、水道用ポリエチレン管、水道用ポリエチレン二層管等の樹脂製の配管に限定されない。樹脂管Pは、例えば、アルミニウム管状の内側と外側を樹脂等で被覆したアルミニウム三層管であってもよい。
【0023】
<インコア>
図1A及び図2Aに示すように、インコア4は、樹脂管Pの軸方向一方側内に押し込まれて挿着される部材である。インコア4は、樹脂管Pの軸方向一方側内に押し込まれることで、樹脂管Pの前端部をテーパ状に拡径した状態に保持されると共に、樹脂管Pを内側から補強して、樹脂管Pが縮径変形するのを防止している。インコア4は、例えば、円筒形状の金属製部材によって形成されている。インコア4は、テーパ状外周面4aと、環状凹凸部4bと、鍔部4cと、を有している。
【0024】
テーパ状外周面4aは、インコア4を樹脂管Pの軸方向一方側(前端部)内に圧入した場合に、樹脂管Pの軸方向一方側を拡径するためのテーパ部位である。テーパ状外周面4aは、インコア4の後端から前端側に亘って拡径して形成されている。
【0025】
環状凹凸部4bは、樹脂管Pの内周面Pbに食い込むようにしてインコア4を樹脂管Pに固定するための複数の環状突起である。環状凹凸部4bは、テーパ状外周面4aに形成された断面視して略鋸刃形状に形成されている。
【0026】
鍔部4cは、インコア4の軸方向一方側端部に形成された環状のフランジ部である。鍔部4cは、樹脂管Pの前端面に配置されている。
【0027】
<胴>
図1A及び図2Aに示すように、胴1は、軸方向に延設された筒状の継手本体から成る。胴1は、例えば、銅合金等の金属製の鋳造品から成る。胴1には、通水孔1a、管挿入部1b、接続部1c、雄ねじ部1d、内側拡径部1e、小径雄ねじ部1f、工具係合部1gが形成されている。胴1には、軸心線上に前側から後側に向かって水道水が流れる通水孔1aが形成されている。その通水孔1aの後側寄りの接続部1cの内周面には、円筒形状の管挿入部1b及び内側拡径部1eが形成されている。胴1の外周部には、前側から順に、小径雄ねじ部1f、工具係合部1g、雄ねじ部1dが形成されている。
【0028】
管挿入部1bは、インコア4を装着してリング3を嵌めた樹脂管Pが挿入される箇所である。つまり、管挿入部1bには、樹脂管Pの軸方向一方側、及び、リング3の軸方向一方側が挿入される。管挿入部1bは、略ストレートに形成された円筒部の内壁から成る。管挿入部1bの後側寄りの部位には、内側拡径部1eが連続して形成されている。
【0029】
内側拡径部1eは、樹脂管Pの外周面Paに嵌めたリング3が挿入配置される箇所である。内側拡径部1eは、管挿入部1bの後端から接続部1cの開口端に向かって拡径するようにテーパ状に形成されている。
【0030】
前記した接続部1cの外周面には、袋ナット2の雌ねじ部2aが螺合する雄ねじ部1dが形成されている。雄ねじ部1dは、袋ナット2を標準の締付力で締め付ける(強く締め付ける)ことで、内側拡径部1eによってリング3が縮径して樹脂管Pを締め付けるように構成されている。
【0031】
小径雄ねじ部1fは、管継手10の胴1を他の配管(図示省略)に接続するための螺合部位である。小径雄ねじ部1fの後側には、工具係合部1gが形成されている。
工具係合部1gは、小径雄ねじ部1fを取付部材(図示省略)のねじ部に螺合させたり、雄ねじ部1dに袋ナット2を螺合させたりする際に、スパナ等の工具を係合させる箇所である。工具係合部1gは、六角形のナット状に形成されている。
【0032】
<袋ナット>
図1A及び図1Bに示すように、袋ナット2は、胴1の軸方向他方側の外周面に形成された雄ねじ部1dに、リング3を覆うようにして螺合させるナットである。袋ナット2は、雌ねじ部2aと、縮開傾斜面2bと、を有している。袋ナット2は、リング3を内包するように配置された胴1の雄ねじ部1dに、雌ねじ部2aを螺合して、樹脂管Pと胴1とのシール及び抜け止めを行うように、リング3を締め付けるように設けられている。
【0033】
図2A及び図2Bに示すように、縮開傾斜面2bは、袋ナット2を締め付けた場合に、リング3の後端に形成された縮径テーパ面3gに接する部位である。この縮開傾斜面2bは、締付方向(前方向)へ徐々に拡径するように袋ナット2の内面にテーパ状に形成されている。縮開傾斜面2bは、袋ナット2が締め付けられて軸方向へ変位すると、リング3の縮径テーパ面3gを押圧して樹脂管Pの挿入方向へ締め付けるようになっている。
【0034】
<リング>
図1A図1B、あるいは、図3A図3Dに示すように、リング3は、樹脂管Pの軸方向一方側寄りの外周面Paに嵌められる管継手用抜け止め筒状体である。リング3は、例えば、ポリアセタール(POM)等の樹脂製の円筒部材から成る。リング3は、胴側端面3aと、ストレート部3bと、拡径部3cと、内周面3dと、食い込み部3eと、切欠溝3fと、縮径テーパ面3gと、を有している。
【0035】
図2Bに示すように、リング3は、袋ナット2をねじ込むと、胴1の内側に形成された内側拡径部1eに押されて、胴側端面3aのリング3の内周面3dに対する角度θ1が直角以下となって、リング3の胴側の内周面3dと食い込み部3eが樹脂管Pの外周面Paに食い込むように構成されている。
【0036】
図3Bに示すように、胴側端面3aは、袋ナット2の締め付け前の状態のとき、リング3の内周面3dに対する角度θ1が鋭角になるように形成されている。このため、胴側端面3aは、径方向に対して角度θ2傾いたテーパ状の端面になっている。角度θ2は、1°~45°である。胴側端面3aの軸方向の長さL1は、0.5~4.0mmである。
【0037】
図1Bに示すように、胴側端面3aは、袋ナット2を軽度の締付力で締め付けたときも、リング3の内周面3dに対する角度θ1が鋭角になっている。
図2Bに示すように、胴側端面3aは、袋ナット2を標準の締付力で締め付けたとき、袋ナット2によって押圧されて、リング3の内周面3dに対する角度θ1が直角~鋭角の状態になる。
【0038】
図3Bに示すように、ストレート部3bは、リング3の胴側端面3aの外周縁から軸方向他方側に、外径が同寸法で延びて形成された部位である。ストレート部3bの軸方向の長さL2は、0.5~4.0mmである。図1Bに示すように、ストレート部3bは、袋ナット2を軽度の締付力で締め付けたときも、外径が、リング3の胴側端面3aの外周縁から軸方向他方側に、同寸法で延びた状態になっている。図2Bに示すように、ストレート部3bは、袋ナット2を標準の締付力で締め付けたとき、袋ナット2と、接続部1cの内側拡径部1eとによって押圧されて、テーパ状に拡径した状態になる。
【0039】
このため、リング3は、袋ナット2を標準の締付力で締め付けると、ストレート部3bの外周面に接続部1cの内側拡径部1eが密着した状態になるので、水漏れするのを防止することができる。
【0040】
図3Bに示すように、拡径部3cは、ストレート部3bの軸方向他方側に連設され、外径が軸方向他方側に向かって拡径して形成されている。拡径部3cの傾斜角度θ3は、5°~15°である。図1Bに示すように、拡径部3cは、袋ナット2を軽度の締付力で締め付けたとき、拡径部3cの外周面に、接続部1cの内側拡径部1eが当接しないため、元の形状の状態になっている。図2Bに示すように、拡径部3cは、袋ナット2を標準の締付力で締め付けたとき、リング3が袋ナット2と、接続部1cの内側拡径部1eとによって押圧されることで、内側拡径部1eに当接した状態になる。
【0041】
図2Bに示すように、リング3の胴側の内周面3dには、胴1の接続部1cの雄ねじ部1dに袋ナット2の雌ねじ部2aを螺合させて、樹脂管Pを締め付けたときに、樹脂管Pの外周面Paに食い込む食い込み部3eを有している。
【0042】
その食い込み部3eは、袋ナット2を締め付けたときに、インコア4によって拡径した樹脂管Pの外周面Paに食い込んで、リング3を樹脂管Pの外周面Paに固定させるための部位である。食い込み部3eは、リング3の内周面3dの先端(開口端)に形成されている。このため、リング3は、樹脂管Pを後方向に引っ張って引き抜こうとすると、食い込み部3eが更に樹脂管Pの外周面Paに食い込み、樹脂管Pが管継手10から抜けるのを防止することができる。
【0043】
このように、リング3は、外周面にストレート部3bと拡径部3cしか形成されておらず、更に、内周面3dは軸方向に断面視して直線状(内周面全体が同一の内径)をしているため、リング3の全体形状が簡素で容易に金型で樹脂成形することができる。このため、リング3は、樹脂成形するための金型を簡素化し、金型の部品点数を削減して、コストダウンを図ることができる。
【0044】
図3A図3C及び図3Dに示すように、切欠溝3fは、リング3の後端から先端方向へ向けて切り込むように切欠形成されたスリットである。切欠溝3fは、例えば、リング3の円周等分位置に4つ形成されている。切欠溝3fは、その数、大きさ等は樹脂管Pのサイズ等に応じて適宜変更してもよい。
【0045】
縮径テーパ面3gは、袋ナット2を締め付けたとき、縮径テーパ面3gに対向して配置された袋ナット2の後端部の縮開傾斜面2bに徐々に締付方向へ押圧される押圧面である。
【0046】
[作用]
次に、図1A図3Dを参照して、本発明の実施形態に係る管継手10の作用を組付順に説明する。
【0047】
図1Aに示すように、予め樹脂管Pには、袋ナット2及びリング3を嵌めておく。また、インコア4は、予め樹脂管Pの前端部の開口内に圧入させて、樹脂管Pの前端部を拡径させる。このため、袋ナット2及びリング3は、樹脂管Pの前端側から外すことが不可能になっている。
【0048】
次に、樹脂管Pの前端部を管挿入部1bに挿入すると共に、リング3を内側拡径部1e内に挿入する。続いて、袋ナット2の雌ねじ部2aを胴1の雄ねじ部1dに螺合させて軽くねじ込む。すると、図1A及び図1Bに示すように、袋ナット2の縮開傾斜面2bが、リング3の縮径テーパ面3gを押圧して、リング3を内側拡径部1eの前側に押し込む。
【0049】
更に、袋ナット2を標準の締付力(更に強い締付力)で締め付けると、図2A及び図2Bに示すように、袋ナット2の縮開傾斜面2bが、リング3の縮径テーパ面3gを押圧して、リング3を更に内側拡径部1eの前側に押し込む。すると、リング3のストレート部3bは、内側拡径部1eに押し当てられてテーパ状に変形して、内側拡径部1eに圧接する。また、袋ナット2の締め付け前のとき、リング3の内周面3dに対する角度θ1が鋭角であった胴側端面3aは、袋ナット2を締め付けたときの押圧力で、変形して直角~鋭角な状態に変形する。
このため、リング3の食い込み部3eは、その押圧力で樹脂管Pに食い込んで、胴1と樹脂管Pとを抜け止めを抑制することができる。
【0050】
例えば、地震等によって、樹脂管Pに後方向に引っ張る引張力がかかった場合、リング3の食い込み部3eが更に樹脂管Pの外周面Paに食い込むので、樹脂管Pの抜け止め防止することができる。
これにより、管継手10は、樹脂管Pの接合強度が向上されて、耐震性及び長期静水圧強度が優れている水道給水用高密度ポリエチレン管を強固に接続することができる。
【0051】
このように、本発明は、図1Aまたは図1Bに示すように、樹脂管Pの軸方向一方側内に押し込まれて樹脂管Pの軸方向一方側を拡径するテーパ状外周面4aを有するインコア4と、樹脂管Pの軸方向一方側寄りの外周面Paに嵌められる筒状のリング3と、樹脂管Pの軸方向一方側、及び、リング3の軸方向一方側が挿入される管挿入部1bを有する胴1と、胴1の軸方向他方側の外周面に形成された雄ねじ部1dに、リング3を覆うようにして螺合させる袋ナット2と、を備えた管継手10であって、リング3の胴側端面3aは、袋ナット2の締め付け前の状態のとき、リング3の内周面3dに対する角度θ1が鋭角である。
【0052】
かかる構成によれば、本発明の管継手10のリング3の胴側端面3aは、袋ナット2の締め付け前のとき、リング3の内周面3dに対する角度θ1が鋭角であることで、袋ナット2を締め付けると、変形して直角~鋭角な状態になる。
また、管継手10は、地震等によって管継手10から樹脂管Pが抜ける(引張)荷重が発生した際に、締め付け兼止水兼抜け止め用のリング3により樹脂管Pの抜け出し防止性(接合強度)を向上させて、抜け出しによる漏水を抑制することができる。
このため、リング3は、樹脂管Pの軸方向の抜け出し防止性(引張性能)が向上されるので、PE100から成る樹脂管Pであっても、引っ張り荷重に対して抜け難くすることができる。
リング3は、袋ナット2の締め付け前のときの胴側端面3aのリング3の内周面3dに対する角度θ1を鋭角にしたことで、樹脂管Pを抜け難くすることができるので、前記特許文献1,2のリングと比較して、形状が簡素で形成し易い抜け防止構造を提供することができる。
その結果、本発明のリング3は、樹脂成形するための金型が簡素で、複雑な構造の金型が不要なため、部品点数を削減して製造コストの低減を図ることができる。
【0053】
また、図1Bに示すように、リング3は、当該リング3の胴側端面3aの外周縁から軸方向他方側に延び、外径が同寸法に形成されたストレート部3bと、ストレート部3bの軸方向他方側に連設され、外径が軸方向他方側に向かって拡径した拡径部3cと、を有している。
【0054】
かかる構成によれば、リング3は、胴側端面3aの外周縁から軸方向他方側に延びるストレート部3bから軸方向他方側に連設された拡径部3cを有することで、袋ナット2を締め付けたときに、内周面3dが樹脂管Pの外周面Paに食い込んで、しっかりと固定することができる。
【0055】
また、図1A図1B図2Bあるいは図3Bに示すように、管継手10は、胴1の接続部1c内に、リング3を介在して樹脂管Pの先端部を挿入して、接続部1cの雄ねじ部1dに袋ナット2の雌ねじ部2aを螺合させて、樹脂管Pを締め付け完了後に、リング3は、胴1の内側に形成された内側拡径部1eに押されて、胴側端面3aのリング3の内周面3dに対する角度θ1が直角以下となって、リング3の胴側の内周面3dが樹脂管Pの外周面Paに食い込む。
【0056】
かかる構成によれば、リング3は、胴1の内側拡径部1eに押されて、胴側端面3aのリング3の内周面3dに対する角度θ1が直角以下となって、リング3の胴側の内周面3dが樹脂管Pの外周面Paに食い込むため、樹脂管Pを強く保持することができる。
【0057】
また、図1A図1B図2B図3Bに示すように、リング3の胴側の内周面3dには、胴1の接続部1cの雄ねじ部1dに袋ナット2の雌ねじ部2aを螺合させて、樹脂管Pを締め付けたときに、樹脂管Pの外周面Paに食い込む食い込み部3eを有している。
【0058】
かかる構成によれば、リング3は、胴側の内周面3dに、樹脂管Pを締め付けたときに、樹脂管Pの外周面Paに食い込む食い込み部3eを有していることで、樹脂管Pを強固に保持することができる。
【0059】
[第1変形例]
以上、本実施形態に係る管継手10について、図1A図3Dを参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図4Aは、本発明に係る管継手10の第1変形例を示す図であり、リング3Aの胴側端部を示す要部拡大正面図である。
【0060】
また、図4Aに示すように、リング3Aは、当該リング3Aの胴側端面3Aaの外周縁から軸方向他方側に延び、外径が軸方向他方側に向かって縮径した縮径部3Abと、縮径部3Abの軸方向他方側に連設され、外径が軸方向他方側に向かって拡径した拡径部3Acと、を有しているものであってもよい。
【0061】
この場合、縮径部3Abは、胴側端面3Aaの外周縁から拡径部3Acの前端に亘って徐々に縮径するようにテーパ状に形成されている。縮径部3Abは、テーパ角度θA3が1°~20°で、軸方向の長さLA2が0.5~4.0mmである。
胴側端面3Aaは、テーパ角度θA2が1°~45°で、軸方向の長さLA1が0.5~4.0mmである。
拡径部3Acは、テーパ角度θA4が5°~15°である。
【0062】
かかる構成によれば、リング3Aは、当該リング3Aの胴側端面3Aaの外周縁から軸方向他方側に延びる縮径部3Abを有していることで、袋ナット2をねじ込んだ際に、縮径部3Abの前端部寄りの部位が、接続部1cの内側拡径部1eに圧接して変形する(図1A参照)。このため、リング3Aは、縮径部3Abの内側の内周面3Adが樹脂管Pの外周面Paに食い込むため、しっかりと樹脂管Pを接続することができ、樹脂管Pの接合強度を上げることができる。
また、リング3Aは、外周面に縮径部3Abと、拡径部3Acと、を有する簡素な形状であるので、金型で樹脂成形し易い形状にすることができるため、金型で樹脂成形するときの製造コストの低減を図ることができる。
【0063】
[第2変形例]
図4Bは、本発明に係る管継手10の第2変形例を示す図であり、リング3Bの胴側端部を示す要部拡大正面図である。
【0064】
また、図4Bに示すように、リング3Bは、当該リング3Bの胴側端面3Baの外周縁から軸方向他方側に延び、外径が軸方向他方側に向かって拡径した拡径部3Bbと、拡径部3Bbの軸方向他方側に連設され、外径が軸方向他方側に向かって拡径した第2拡径部3Bcと、を有しているものであってもよい。
【0065】
この場合、拡径部3Bbは、胴側端面3Baの外周縁から第2拡径部3Bcの前端に亘って徐々に拡径するようにテーパ状に形成されている。拡径部3Bbは、テーパ角度θB3が1°~14°で、軸方向の長さLB2が0.5~4.0mmである。
胴側端面3Baは、テーパ角度θB2が1°~45°で、軸方向の長さLB1が0.5~4.0mmである。
第2拡径部3Bcは、テーパ角度θB4が5°~15°である。
【0066】
かかる構成によれば、リング3Bは、当該リング3Bの胴側端面3Baの外周縁から軸方向他方側に延びる拡径部3Bbを有していることで、袋ナット2をねじ込んだ際に、拡径部3Bbの後端部寄りの部位が、接続部1cの内側拡径部1eに圧接して変形する。このため、リング3Bは、拡径部3Bbの内側の内周面3Bdが樹脂管Pの外周面Paに食い込むため、しっかりと樹脂管Pを接続することができ、樹脂管Pの接合強度を上げることができ、樹脂管Pの接合強度を上げることができる。
また、リング3Bは、外周面に拡径部3Bbと、第2拡径部3Bcと、を有する簡素な形状であるので、金型で樹脂成形し易い形状にすることができるため、金型で樹脂成形するときの製造コストの低減を図ることができる。
【0067】
[その他の変形例]
また、実施形態、第1変形例及び第2変形例の食い込み部3e,3Ae,3Beは、図3B図4A及び図4Bに示すように、その一例として、リング3の軸方向に断面視して直線状の内周面3d,3Ad,3Bdの前端部から成る場合を説明したが、これに限定されるものではない。食い込み部3e,3Ae,3Beは、軸方向に断面視して直線状の内周面3d,3Ad,3Bdの前端部に、開口端に向かって縮径するように形成した一つの膨らみ部(あるいは、テーパ状突起)であってもよい。
【0068】
かかる構成によれば、食い込み部3e,3Ae,3Beは、内周面3d,3Ad,3Bdの前端部に、開口端に向かって縮径するように形成された膨らみ部から成るので、袋ナット2を締めたときに、さらに、食い込むようにすることができる。このため、樹脂管Pを更に抜け難くすることができる。食い込み部3e,3Ae,3Beは、このように形成しても、簡素な形状であるため、金型で樹脂成形し易く、複雑な構造の金型が不要であるため、金型の部品点数を削減して製造コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 胴
1a 通水孔
1b 管挿入部
1c 接続部
1d 雄ねじ部
1e 内側拡径部
2 袋ナット
2a 雌ねじ部
3,3A,3B リング
3a,3Aa,3Ba 胴側端面
3Ab 縮径部
3b ストレート部
3Bc 第2拡径部
3c,3Ac,3Bb 拡径部
3d、3Ad,3Bd 内周面
3e,3Ae,3Be 食い込み部
4 インコア
4a テーパ状外周面
10 管継手
P 樹脂管
Pa 外周面
θ1 リングの胴側端面の内周面に対する角度
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B