(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037466
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】キャブ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20230308BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20230308BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20230308BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B60H1/34 651
F24F13/068 B
F24F13/02 G
E02F9/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144242
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信吾
(72)【発明者】
【氏名】菊間 智子
(72)【発明者】
【氏名】池田 健
【テーマコード(参考)】
2D015
3L080
3L211
【Fターム(参考)】
2D015EA02
2D015EB01
3L080AC01
3L080BA10
3L080BB01
3L211AA09
3L211BA01
3L211DA12
(57)【要約】
【課題】天窓を遮光するロールブラインドを配置した場合であっても乗務員の頭部を含めた上半身に風を当てることが可能なキャブを提供する。
【解決手段】キャブ1は、天井部15と、ロールブラインド18と、前後ダクト部分42a、42bと、フロントルーバー33と、を備える。天井部15は、天窓24を有する。ロールブラインド18は、スクリーン51と、巻取り装置54と、を有する。スクリーン51は、天窓24の内側に配置される。巻取り装置54は、天窓24の後側であって天井部15の内部空間S2に配置され、スクリーン51を巻き取る。前後ダクト部分42a、42bは、内部空間S2に配置され、巻取り装置54の下方を通る。フロントルーバー33は、天井部15の巻取り装置54よりも前側であって、前後ダクト部分42a、42bの吹き出し口42cに配置されている。
【選択図】
図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天窓を有する天井部と、
前記天窓の内側に配置されるスクリーンと、前記天窓の後側であって前記天井部の内部に配置され、前記スクリーンを巻き取る巻取り装置と、を有するロールブラインドと、
前記天井部の内部に配置され、前記巻取り装置の下方を通る第1ダクトと、
前記巻取り装置よりも前側であって、前記第1ダクトの第1吹き出し口に配置されたルーバーと、を備えた、
キャブ。
【請求項2】
前記巻取り装置から前記天窓の後側までの前記スクリーンが配置される空間の下面は、前方向に向かって下方に傾斜している、
請求項1に記載のキャブ。
【請求項3】
前記第1ダクトは、後方から前方に向かって前記天窓の後側まで配置されている、
請求項1または2に記載のキャブ。
【請求項4】
前記ルーバーは、高さ方向において、前記巻取り装置と重なるように配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のキャブ。
【請求項5】
前記天窓の両端に配置され、前記スクリーンを係止する係止部材を更に備えた、
請求項1~4のいずれか1項に記載のキャブ。
【請求項6】
前記天井部に配置され、後方から前方に向かって前記天窓の側方を通る第2ダクトを更に備え、
前記第2ダクトは、
前記天井部の前端に配置された第2吹き出し口と、
前記第2吹き出し口に繋がり、上面側が前方向に向かって下方に傾斜した傾斜部分と、を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のキャブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械のキャブには、空調装置が設けられている。キャブ内の乗務員の頭部に空調装置からの風を当てるために、天井の内側にダクトが配置された構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、油圧ショベルでは、例えば、掘削作業時に掘削対象をのぞき込みながら操作できるようにキャブの前面ガラスが開閉可能に構成されている場合がある。前面ガラスを開ける際には、前面ガラスは天井の下側に収納される。
【0004】
このように開閉可能な前面ガラスが設けられた場合、乗務員の頭部に空調装置からの風を当てるために天井の下側にダクトを配置すると、前窓を天井の下側に収納したときに前窓がダクトと干渉する場合がある。このような天窓との干渉を回避するために、天井の内部にダクトが配置された構成が開示されている(特許文献2の
図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-239005号公報
【特許文献2】特開2007-76535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、油圧ショベルのキャブには、上方を視認するために天窓が設けられている場合があり、天窓には日光を遮るためのロールブラインドが配置される。
【0007】
しかしながら、天井の内部空間が小さいため、ロールブラインドを配置した場合、ロールブラインドとダクトの吹き出し口との干渉が発生し、所望の位置にダクトを配置することが出来なかった。この場合、ダクトの吹き出し口のルーバーが乗務員の頭部を含めた上半身よりも後方に位置することになり、上半身に風を当て難かった。
【0008】
本開示は、天窓を遮光するロールブラインドを配置した場合であっても乗務員の上半身に風を当てることが可能なキャブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様にかかるキャブは、天井部と、ロールブラインドと、第1ダクトと、ルーバーと、を備える。天井部は、天窓を有する。ロールブラインドは、スクリーンと、巻取り装置と、を有する。スクリーンは、天窓の内側に配置される。巻取り装置は、天窓の後側であって天井部の内部に配置され、スクリーンを巻き取る。第1ダクトは、内部に配置され、巻取り装置の下方を通る。ルーバーは、天井部の巻取り装置よりも前側であって、第1ダクトの第1吹き出し口に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示の態様によれば、天窓を遮光するロールブラインドを配置した場合であっても乗務員の上半身に風を当てることが可能なキャブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態にかかる建設機械のキャブの断面図。
【
図2】本開示の実施の形態にかかるキャブの正面図。
【
図3】本開示の実施の形態にかかるキャブの天井部の前部分をキャブの内部から視た斜視図。
【
図4】本開示の実施の形態にかかるキャブの天井部と空調装置を上方から視た斜視図。
【
図5】本開示の実施の形態にかかるキャブの天井部と空調装置を下方から視た斜視図。
【
図6】本開示の実施の形態にかかるキャブの天井部におけるダクトの構造を示す裏面図。
【
図7A】本開示の実施の形態にかかるキャブの天井部の前部分を示す
図2のAA´間の断面図。
【
図7B】本開示の実施の形態にかかるキャブの天井部の後部分を示す
図2のAA´間の断面図。
【
図7C】本開示の実施の形態にかかるキャブの天井部の前部分を示す
図2のBB´間の断面図。
【
図8A】
図2のEE´間の断面を下方から視た斜視図。
【
図8B】
図2のEE´間の断面を上方から視た斜視図。
【
図9】天井部15の前後方向に対して垂直な断面図。
【
図10】デフロスタ用ダクトの吹き出し口を含む側断面図。
【
図11】
図7Aから天窓、ロールブラインド、および前後ダクト部分を抜き出した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示にかかる建設機械のキャブについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0013】
<構成>
(キャブ1の概要)
図1は、本実施の形態の建設機械のキャブ1の断面図である。
図2は、キャブ1の正面図である。
図1は、
図2のAA´間の位置の断面図に相当する。
図1における矢印は、風の向きを示す。
【0014】
キャブ1は、オペレータが運転時に着座する運転席として建設機械に配置される。キャブ1が用いられる建設機械としては油圧ショベルが挙げられる。
【0015】
キャブ1は、底面部11と、前面部12と、左右の側面部13と、後面部14と、天井部15と、シート16と、空調装置17と、ロールブラインド18と、を備える。
【0016】
底面部11と、前面部12と、左右の側面部13と、後面部14と、天井部15によって囲まれた空間S1が、運転室を形成する。
【0017】
底面部11は、運転室の床を形成する。前面部12は、底面部11の前端から上方に向かって配置されている。前面部12は、その上部が後方に向かって傾斜している。左右の側面部13は、底面部11の左側の端と右側の端から上方に向かって配置されている。後面部14は、底面部11の後端から上方に向かって配置されている。天井部15は、前面部12と左右の側面部13と後面部14の上端を繋ぐように配置されている。天井部15は、前後方向における中央よりも前端が下方に位置するように前下がりに湾曲している。
【0018】
シート16は、乗務員が着座する。シート16は、空間S1内に配置されている。空調装置17は、空間S1の温度を調整する。ロールブラインド18は、天井部15に配置されている天窓24を遮光または開放する。
【0019】
なお、キャブ1において、シート16に着座した乗務員を基準に前後左右が決められる。図において前方向が矢印Xfで示され、後方向が矢印Xbで示されている。また、
図2に示すように、右方向が矢印Yrで示され、左方向が矢印Ylで示されている。
【0020】
(前面部12)
前面部12は、
図2に示すように、下部ガラス21と、上部ガラス22と、を有する。下部ガラス21は、前面部12の下部に配置されている。上部ガラス22は、下部ガラス21の上側であって、前面部12の上部に配置されている。
【0021】
左右の側面部13の内側面には、
図1に示すように、水平方向に沿ってガイドレール23が配置されている(後述する
図8Aも参照)。上部ガラス22の幅方向の端には、図示しないローラが配置されている。このローラが、ガイドレール23の内面に沿って案内されることで、上部ガラス22は、その上端側が矢印Cに示すように、後方向Xbにスライドし、上部ガラス22の下端側は矢印Dに示すように、上方向にスライドする。移動中の上部ガラス22が、
図1において二点鎖線で示されている。これによって、全開時には、上部ガラス22は天井部15の下側に、天井部15と平行に収納される。
【0022】
(天井部15)
図3は、天井部15の前部分をキャブ1の内部から視た斜視図である。
図3に示すように、天井部15は、天窓24を有する。天窓24は、天井部15の前部分に配置されている。油圧ショベル等において、天窓24を通して乗務員が上方を視認することができる。
【0023】
天窓24は、後端を中心にして前端が上方に回動可能である。天窓24の後端には、ヒンジ25(後述する
図7Aの矢印F参照)が配置されており、ヒンジ25を中心に前端を持ち上げることができる。
図3に示すように、天窓24の前端と、天窓24の前側における天井部15の縁部分15aの間には、ロック部26が配置されており、天窓24を閉じた状態でロックすることができる。天窓24の下面には、天窓24を開閉する際に乗務員によって把持される把手24aが設けられている。
【0024】
天井部15は、
図1に示すように、空間S1に面する化粧パネル27と、外側に面する外面パネル28と、を有する。化粧パネル27と外面パネル28の間の内部空間S2に、空調装置17の前後ダクト部分42a、42b(後述する)およびロールブラインド18の巻取り装置54が配置される。
【0025】
図3に示すように、天井部15の天窓24の後側であって、左右方向における略中央には、キャブ1内を照らすランプ29が配置されている。ランプ29は、前後方向においても略中央に配置されている。
【0026】
(空調装置17)
図4は、天井部15と空調装置17を上方から視た斜視図である。
図5は、天井部15と空調装置17を下方から視た斜視図である。
図6は、天井部15におけるダクトの構造を示すための裏面図である。なお、
図4~
図6では、天井部15における複数のダクトを仕切る壁は化粧パネル27および外面パネル28によって隠れるため視認できないが、説明のために実線で示している。
【0027】
空調装置17は、空調装置本体31と、フロント用ダクト32と、フロントルーバー33と、リア用ダクト34と、リアルーバー35と、デフロスタ用ダクト36と、を有する。
【0028】
空調装置本体31は、
図1に示すように、シート16の後側に配置されている。空調装置本体31には、ファンや熱交換器等が収納されている。
【0029】
フロント用ダクト32は、空調装置本体31から天井部15の前後方向における中央付近まで空気を供給する。フロント用ダクト32は、上下ダクト部分41(
図5参照)と、前後ダクト部分42a、42b(第1ダクトの一例)(
図4参照)を有している。
【0030】
上下ダクト部分41は、空調装置本体31から天井部15まで伸びている。上下ダクト部分41は、右側の側面部13と後面部14の間の角に配置されている。上下ダクト部分41は、天井部15の化粧パネル27の開口27a(
図6参照)に繋がっている。開口27aは、天井部15の右後部に形成されている。
【0031】
図4に示す前後ダクト部分42aと前後ダクト部分42bは、天井部15の内部空間S2に配置されている。前記ダクト部分42aと前後ダクト部分42bは、
図6に示すように、開口27aから左右方向に分かれて前方向に伸びている。
【0032】
前後ダクト部分42aは、
図6に示すように、開口27aから前方向Xfに向かって天窓24の後端部分15bまで伸びている。前後ダクト部分42bは、
図6に示すように、開口27aから左前方に向かって斜め方向に伸びてから前方に向かって天窓24の後端部分15bまで伸びている。
【0033】
前後ダクト部分42aと前後ダクト部分42bは、左右方向においてランプ29を挟むように配置されている。
【0034】
図7Aは、天井部15の前部分を示す
図2のAA´間の断面図である。
図7Bは、天井部15の後部分を示す
図2のAA´間の断面図である。
図7Aおよび
図7Bは、前後ダクト部分42aの断面を示す。
図7Cは、天井部15の前部分を示す
図2のBB´間の断面図である。
図7Cは、左右方向の中央における天井部15の前部分の断面図である。
図7Aおよび
図7Bには、前後ダクト部分42aにおける空気の流れを矢印で示す。
【0035】
前後ダクト部分42aは、
図7Aおよび
図7Bに示すように、化粧パネル27に形成された2つの吹き出し口42c(第1吹き出し口の一例)に繋がり、キャブ1の空間S1に開口している。吹き出し口42cは、
図6に示すように、左右方向に細長く形成されている。2つの吹き出し口42cは、前後方向に並んで配置されている。フロントルーバー33は、
図7Aに示すように、2つの吹き出し口42cの各々に配置されている。
【0036】
【0037】
前後ダクト部分42bは、
図6、
図8Aおよび
図8Bに示すように、化粧パネル27に形成された2つの吹き出し口42cに繋がり、キャブ1の空間S1に開口している。吹き出し口42cは、左右方向に細長く形成されている。2つの吹き出し口42cは、前後方向に並んで配置されている。フロントルーバー33は、
図8Aに示すように、2つの吹き出し口42cの各々に配置されている。
【0038】
フロントルーバー33は、左右方向を中心軸として回転可能に吹き出し口42cに取り付けられている。フロントルーバー33を回転させることによって、風向きを変更することができる。
【0039】
なお、このように前後方向に2つのフロントルーバー33を並べて配置することによって、頭部だけに集中して風を当てる、頭部と上半身の頭部以外の部分に風を分散して当てる、または一部を閉じて送付域を調整するというように乗務員の要望に応じて送風を自由に変更することができる。
【0040】
また、天井部15の内部空間S2が狭いため、小さいサイズのフロントルーバー33が用いられているが、2つを前後方向に並べて配置することによって、吹き出し風量を確保することができる。
【0041】
また、
図7Aおよび
図7Bに示すように、前後ダクト部分42aは、フロントルーバー33の後側において、高さ方向の厚みが狭くなっている狭窄部42dを有している。また、
図8Aに示すように、前後ダクト部分42bにもフロントルーバー33の後側に、狭窄部42dが形成されている。これら狭窄部42dの上側に、後述するロールブラインド18の巻取り装置54が配置される。
【0042】
リア用ダクト34は、
図4に示すように、空調装置本体31から後面部14の上端まで空気を供給する。リア用ダクト34は、上下ダクト部分43と、左右ダクト部分44を有している。
【0043】
上下ダクト部分43は、空調装置本体31から天井部15の下側まで後面部14に沿って伸びている。上下ダクト部分43は、右側の側面部13と後面部14の間の角に上下ダクト部分41と並んで配置されている。左右ダクト部分44は、上下ダクト部分43の上端から天井部15の下側に沿って左方向に伸びている。左右ダクト部分44には、左右に並んで吹き出し口が形成されており、
図5および
図8Aに示すように、各々の吹き出し口にリアルーバー35が配置されている。
【0044】
デフロスタ用ダクト36は、空調装置本体31から天井部15の前端まで空気を供給する。デフロスタ用ダクト36は、
図4および
図5に示すように、上下ダクト部分45と、前後ダクト部分46a、46b(第2ダクトの一例)を有している。
【0045】
上下ダクト部分45は、空調装置本体31から天井部15まで伸びている。上下ダクト部分45は、右側の側面部13と後面部14の間の角に、上下ダクト部分41、43と並んで配置されている。上下ダクト部分45は、
図4に示すように天井部15の化粧パネル27の開口27b(
図6参照)に繋がっている。開口27bは、天井部15の右後部に形成されている。開口27bは、開口27aよりも外側に形成されている。
【0046】
前後ダクト部分46aと前後ダクト部分46bは、天井部15の内部空間S2に配置されている。前後ダクト部分46aと前後ダクト部分46bは、
図6に示すように、開口27bから左右方向に分かれて前方向に伸びている。
【0047】
前後ダクト部分46aは、
図6に示すように、開口27bから前方向Xfに向かって天井部15の前端まで伸びている。前後ダクト部分46bは、
図6に示すように、開口27bから左前方に向かって斜め方向に伸びてから前方向Xfに向かって天井部15の前端まで伸びている。前後ダクト部分46aと前後ダクト部分46bは、天窓24の左右方向の外側に配置されている。
【0048】
図9は、天井部15の前後方向に対して垂直な断面図である。
図9では、後述する係止部材61、62、63は省略している。
図9に示すように、前後ダクト部分46aは、前後ダクト部分42aよりも右方向Yr側に配置され、前後ダクト部分46bは、前後ダクト部分42bよりも左方向Yl側に配置されている。前後ダクト部分46aと前後ダクト部分46bは、左右方向において、前後ダクト部分42a、42bを挟むように配置されている。
【0049】
前後ダクト部分46aは、
図6に示すように、化粧パネル27に形成された吹き出し口46cに繋がり、キャブ1の空間S1に開口している。
図10は、吹き出し口46cを含む側断面図である。
図10に示すように、前後ダクト部分46aは、吹き出し口46cに繋がる傾斜部分46dを有している。傾斜部分46dは、前下がりに傾斜している。具体的には、傾斜部分46dの上面46daが、前方に向かうに従って下方に向かうように傾斜している。上面46daは、上方に凸に湾曲している。
【0050】
このような構成によって、吹き出し口46cが下方に向かって開口しているにもかかわらず、風を前方に向かって吐出し、上部ガラス22に当てることができる。
【0051】
(ロールブラインド18)
ロールブラインド18は、天窓24を塞ぐために設けられている。ロールブラインド18は、天井部15に取り付けられている。
【0052】
ロールブラインド18は、
図8Aに示すように、スクリーン51と、先端部52と、把持部53と、巻取り装置54と、を有する。
【0053】
スクリーン51は、巻取り装置54から引き出される。スクリーン51は、巻取り装置54に巻き取られる方向に付勢されている。スクリーン51は、天窓24の後端部分15bから引き出され、天窓24の前端まで覆う。スクリーン51は、遮光のために黒色のもの用いることができるが、特に限定されるものではない。スクリーン51は、乗務員からスクリーン51の上側が透けて見えるように構成されていてもよいが、透けて見えなくてもよい。スクリーン51は、天窓24の左右方向を覆う幅と、前後方向を覆う長さがある方が好ましいが、天窓24の一部が覆えなくてもよい。
【0054】
先端部52は、スクリーン51の先端に配置されている。先端部52は、棒状であり、左右方向に沿って配置されている。先端部52は、巻取り装置54から引き伸ばしたスクリーン51の位置を保持するために係止部材61、62、63(
図3参照)に係止される。
【0055】
図3に示すように、天窓24には、一対の係止部材61と、一対の係止部材62と、一対の係止部材63が固定されている。一対の係止部材61は、天窓24の後部に配置されている。一対の係止部材61は、左右方向に並んで配置されている。一対の係止部材61は、天窓24の両端近傍に配置されている。左方向Yl側の係止部材61は、天窓24の左端近傍に配置されており、右方向Yr側の係止部材61は、天窓24の右端近傍に配置されている。
【0056】
図11は、
図7Aから天窓24、ロールブラインド18、および前後ダクト部分42aを抜き出した図である。
図11に示すように、各々の係止部材61は、フック部64と、固定部65と、を有する。フック部64は、天窓24から下方に向かって延び、前方に向かって湾曲して上方に向かって折り返されている。フック部64の湾曲部分は、下方に凸に形成され、その内側に先端部52を配置することができる。固定部65は、フック部64を天窓24に固定する。一対のフック部64の湾曲部分に先端部52を係止することによって、スクリーン51の位置を保持することができる。
【0057】
一対の係止部材62は、天窓24の前後方向における略中央部に配置されている。一対の係止部材62は、左右方向に並んで配置されている。一対の係止部材62は、天窓24の両端近傍に配置されている。左方向Yl側の係止部材62は、天窓24の左端近傍に配置されており、右方向Yr側の係止部材62は、天窓24の右端近傍に配置されている。係止部材62は、係止部材61と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0058】
一対の係止部材63は、天窓24の前部に配置されている。一対の係止部材63は、左右方向に並んで配置されている。一対の係止部材63は、天窓24の両端近傍に配置されている。左方向Yl側の係止部材63は、天窓24の左端近傍に配置されており、右方向Yr側の係止部材63は、天窓24の右端近傍に配置されている。各々の係止部材63は、フック部66と、固定部65と、を有する。フック部66は、天窓24から下方に向かって延び、前方に向かって湾曲して上方に向かって折り返されている。フック部66の湾曲部分は、下方に凸に形成され、その内側に先端部52を配置することができる。固定部65は、フック部66を天窓24に固定する。係止部材63は、
図3に示すように、左右方向においてロック部26の外側に配置されている。そのため、
図7Cに示すように、スクリーン51が、ロック部26と干渉することを避けるように、フック部66は、ロック部26よりも下方に長く伸びて形成されている。一対のフック部64の湾曲部分に先端部52を係止することによって、スクリーン51の位置を保持することができる。
【0059】
なお、
図7Cでは、係止部材63でロールブラインド18の先端部52が係止されている状態が実線で示されており、係止部材62でロールブラインド18の先端部52が係止されている状態が二点鎖線で示されており、係止部材61でロールブラインド18の先端部52が係止されている状態が二点鎖線で示されており、
図7Aも同様である。
図8Aは、係止部材63で先端部52の係止を行いスクリーン51で天窓24の全体を覆った状態を示している。なお、
図7Cでは、把手24aが示されており、スクリーン51と重なって示されているが、実際には、引き出されたスクリーン51は、把手24aの下側に位置することになる。
【0060】
把持部53は、スクリーン51を引き出す際に、乗務員によって把持される。
図8Aに示すように、把持部53は、先端部52の左右方向における中央に配置されている。把持部53は、略板状の部材である。把持部53は、先端部52よりも下方に突出している。係止部材61、62、63のいずれかに先端部52が係止されていない状態では、付勢力によって、スクリーン51が巻取り装置54に巻き取られ、把持部53(二点鎖線で示す)は、
図7Cに示すように、天井部15における天窓24の後端部分15bに当接する。なお、
図7Cは、
図7Aと断面の位置が異なるため、把持部53が図示されている。
【0061】
図7Cに示すように、先端部52を係止部材63で係止することによって、天窓24を完全に塞ぐことができる。また、先端部52を係止部材62または係止部材61で係止することによって、天窓24の開放状態を変更することができる。また、把持部53から手を離すことによって、スクリーン51が巻取り装置54に自動的に巻き取られ、
図3および
図7Cに示すように、把持部53が、天井部15における天窓24の後端部分15bに当接する。
【0062】
巻取り装置54は、ロール状であり、左右方向を中心軸として回転可能であり、スクリーン51を巻き取る。または、巻取り装置54からスクリーン51が引き出される。
巻取り装置54は、
図7Aに示すように、天井部15の内部空間S2に配置されている。巻取り装置54は、左右方向に沿って配置されている。
図6に、巻取り装置54が点線で模式的に示されている。
【0063】
巻取り装置54は、
図6の点線に示すように、複数のフロントルーバー33の後方向Xb側に配置されている。巻取り装置54は、左右方向において、前後ダクト部分46aの略中央から、前後ダクト部分42a、42bを跨いで、前後ダクト部分46bの略中央まで配置される。
【0064】
図7Aおよび
図7Bに示すように、巻取り装置54の下方に、フロントルーバー33に空気を送る前後ダクト部分42aが前後方向に通っている。
図7Aの狭窄部42dに示すように、巻取り装置54の下方の前後ダクト部分42aの厚みは薄くなっている。
【0065】
また、
図8A~
図8Cに示すように、巻取り装置54の下方に、フロントルーバー33に空気を送る前後ダクト部分42bが前後方向に通っている。
図8Cの狭窄部42dに示すように、巻取り装置54の下方の前後ダクト部分42bの厚みは薄くなっている。
【0066】
また、
図7Cに示すように、巻取り装置54は、ランプ29の後方向Xb側に配置されている。
【0067】
このように巻取り装置54をフロントルーバー33の後方Xb側に配置することによって、フロントルーバー33を乗務員の頭上に配置することができる。
【0068】
また、
図7Aに示すように、巻取り装置54の一部分は、鉛直方向においてフロントルーバー33と重なっている。すなわち、巻取り装置54の下端からの水平線が、フロントルーバー33に当たり、フロントルーバー33の上端からの水平線が、巻取り装置54に当たる。この2本の水平線の間(図中g参照)に位置する巻取り装置54の部分と、フロントルーバー33の部分が高さ方向(鉛直方向)において重なっていることになる。これにより、天井部15の厚みを抑えることができる。
【0069】
図7A、
図7Cおよび
図11に示すように、巻取り装置54から天窓24の後端部分15bまでスクリーン51が配置される空間S3が形成されている。空間S3は、前後ダクト部分42a、42bおよびランプ29の上方であって、外面パネル28の下側に形成されている。空間S3の下面71は、
図7Aおよび
図7Cに示すように、前下方に向かって斜めに傾斜して形成されている。そのため、空間S3に配置されるスクリーン51も、前下方に向かって斜めに傾斜して配置されている。このよに、巻取り装置54からスクリーン51を引き出すための空間S3を前下がりに形成することによって、巻取り装置54を内部空間S2において出来るだけ上方に位置することが出来、巻取り装置54の下側にダクトを形成する空間を確保することができる。
【0070】
(特徴)
(1)
本実施の形態のキャブ1は、天井部15と、ロールブラインド18と、前後ダクト部分42a、42b(第1ダクトの一例)と、フロントルーバー33(ルーバーの一例)と、を備える。天井部15は、天窓24を有する。ロールブラインド18は、スクリーン51と、巻取り装置54と、を有する。スクリーン51は、天窓24の内側に配置される。巻取り装置54は、天窓24の後側であって天井部15の内部空間S2(天井部の内部の一例)に配置され、スクリーン51を巻き取る。前後ダクト部分42a、42bは、内部空間S2に配置され、巻取り装置54の下方を通る。フロントルーバー33は、天井部15の巻取り装置54よりも前側であって、前後ダクト部分42a、42bの吹き出し口42c(第1吹き出し口の一例)に配置されている。
【0071】
このように風が吹き出すフロントルーバー33を巻取り装置54よりも前側に配置することによって、フロントルーバー33の位置を乗務員の頭上に配置することができるため、頭部含む上半身に風を当てることが可能となる。
【0072】
(2)
本実施の形態のキャブ1では、巻取り装置54から天窓24の後側までのスクリーン51が配置される空間S3の下面71は、前方向Xfに向かって下方に傾斜している。
【0073】
キャブ1の天井部15は、前後方向において中央よりも前端の方が低くなるように湾曲して形成されており、この湾曲に合わせて前下がりにスクリーン51が配置される空間S3を形成することによって巻取り装置54を天井部15の内部空間S2の上部に配置できるため、巻取り装置54の下方に前後ダクト部分42a、42bを配置する空間を確保しやすくなる。
【0074】
(3)
本実施の形態のキャブ1では、前後ダクト部分42a、42bは、後方から前方に向かって天窓24の後側まで配置されている。
【0075】
これにより、フロントルーバー33の位置を天窓24の後方近傍に配置できるため、乗務員の頭上にルーバーを配置しやすくなり、上半身に風を当てやすくできる。
【0076】
(4)
本実施の形態のキャブ1では、高さ方向において、巻取り装置54と重なるように配置されている。
【0077】
これにより、天井部15の厚みを薄くできるため、キャブ1の高さが高くなることを抑えるとともに、乗務員の頭上における天井部15までの空間を確保することできる。
【0078】
(5)
本実施の形態のキャブ1は、係止部材61、62、63を更に備える。係止部材61、62、63は、天窓24の両端に配置され、スクリーン51を係止する。
【0079】
これにより、容易に天窓24の内側にスクリーン51を保持することができる。
【0080】
(6)
本実施の形態のキャブ1は、前後ダクト部分46a、46b(第2ダクトの一例)を更に備える。前後ダクト部分46a、46bは、天井部15に配置され、後方から前方に向かって天窓24の側方を通る。前後ダクト部分46a、46bは、吹き出し口46c(第2吹き出し口の一例)と、傾斜部分46dと、を有する。吹き出し口46cは、天井部15の前端に配置されている。傾斜部分46dは、吹き出し口46cに繋がり、上面46da側が前方向Xfに向かって下方に傾斜している。
【0081】
このように傾斜部分46dを設けることによって、吹き出し口46cを前方に向けることなく、風を上部ガラス22に当てることが可能となる。吹き出し口46cを前方に向ける必要がないため、天井部15の厚みを薄くすることができる。
【0082】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
(A)
上記実施の形態では、ランプ29が左右方向の中央に配置されているが、中央に限らなくてもよい。また、ランプ29の位置に合わせてフロントルーバー33の位置も適宜変更してもよい。
【0084】
(B)
上記実施の形態では、フロントルーバー33は、前後方向に沿って2つ並んで配置されているが、2つに限らなくてもよく。1つ若しくは3つ以上であってもよい。
【0085】
(C)
上記実施の形態では、前窓ガラスの上部が移動可能な構成のキャブ1を例に挙げて説明したが、前窓ガラスが移動できない構成のキャブであってもよい。
【0086】
(D)
上記実施の形態では、天窓24が開閉可能に構成されているが、開閉できない構成であってもよい。
(E)
上記実施の形態では、キャブ1を建設機械の一例である油圧ショベルに配置すると述べたが、油圧ショベルに限らなくてもよく、クレーンまたは林業機械等に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示のキャブは、天窓を遮光するロールブラインドを配置した場合であっても乗務員の頭部を含めた上半身に風を当てることが可能な効果を有し、建設機械等に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 :キャブ
15 :天井部
18 :ロールブラインド
24 :天窓
33 :フロントルーバー
42a、42b :前後ダクト部分
42c :吹き出し口
51 :スクリーン
54 :巻取り装置