(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037499
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】支持部跳ね上げ装置及びそれを利用した農作物管理システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/12 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
A01G9/12 Z
A01G9/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144297
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】520470752
【氏名又は名称】AGRIST株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】徳留 将人
(72)【発明者】
【氏名】福山 望
【テーマコード(参考)】
2B023
【Fターム(参考)】
2B023AC02
2B023AC03
2B023AF01
2B023AF02
2B023AF03
2B023AF10
(57)【要約】
【課題】支持部(ワイヤ)に沿って移動する吊り下げ式の農作物管理装置が収穫位置にないときには、支持部(ワイヤ)を跳ね上げて、農作業の邪魔にならないようにする。
【解決手段】第1のワイヤ102Aに沿って移動する吊り下げ式の農作物管理装置のためのワイヤ跳ね上げ装置50は、第1のワイヤ102Aよりも上方に設けられた第2のワイヤ102Bに、第1のワイヤ102Aと交差する位置で固定部54A、54Bによって固定されるとともに、角パイプ状の本体部52と、本体部52の上面及び両側面を覆うように設けられた略コ字状のカバー体60と、カバー体60の両側面に回動可能に設けられており、第1のワイヤ102Aを農作物管理装置の重量に応じて昇降させるための一対のアームと72A、72Bと、前記一対のアーム72A、72Bの先端を上方に付勢する一対の付勢手段と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持部に沿って所定方向に移動する吊り下げ式の農作物管理装置のための支持部跳ね上げ装置であって、
前記支持部跳ね上げ装置は、前記第1の支持部よりも上方に設けられて固定される本体部と、
前記本体部の底面に設けられた固定部と、
前記本体部の上面及び両側面を覆うように設けられた略コ字状のカバー体と、
前記カバー体に回動可能に設けられており、前記第1の支持部を前記農作物管理装置の重量に応じて昇降させる一対のアームと、
前記一対のアームと、前記カバー体の間にそれぞれ設けられており、前記一対のアームの先端を上方に付勢する一対の付勢手段と、を備える支持部跳ね上げ装置。
【請求項2】
前記一対の付勢手段は、巻回部から引き出された一端側が前記カバー体の側面下方に固定され、他端側が前記アームの上方に固定される請求項1記載の支持部跳ね上げ装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の支持部跳ね上げ装置と、
前記支持部跳ね上げ装置によって昇降される第1の支持部と、
前記第1の支持部に沿って移動する吊り下げ式の農作物管理装置と、
前記第1の支持部より上方に設けられており、前記第1の支持部と交差する位置に前記支持部跳ね上げ装置が固定される第2の支持部と、を備える農作物管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ式の農作物管理装置が移動するためのワイヤを上下動させるためのワイヤ跳ね上げ装置と、それを利用した農作物管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物工場にてロボットが農作物を取得することが知られている。例えば、ワイヤー等に吊り下げ式で農作物を収穫できるロボットも知られている(非特許文献1)。今日、植物工場は収穫量を増やすために大型化しており、農作物の背丈が5m以上となる場合もあり、更に、土壌を縦型として水平に農作物を成長させる方法も知られてきた(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】インターネット<https://agrist.co/>
【非特許文献2】インターネット<https://ameblo.jp/karurosu2013/entry-12330484812.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吊り下げ式の収穫装置は、当該装置を吊り下げるための支持部(ワイヤやレール等)が必須であるが、収穫装置を動かしていないときや、収穫装置が収穫位置にないときにも、支持部があると農作業の邪魔になり、煩わしいという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、以上のような点に鑑み、支持部に沿って移動する吊り下げ式の農作物管理装置が動いていないときや、前記農作物管理装置が収穫位置にないときには、前記支持部を跳ね上げて、農作業の邪魔にならないようにする跳ね上げ装置と、それを利用した農作物管理システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、第1の支持部に沿って所定方向に移動する吊り下げ式の農作物管理装置のための支持部跳ね上げ装置であって、前記支持部跳ね上げ装置は、前記第1の支持部よりも上方に設けられる本体部と、前記本体部の底面に設けられた固定部と、前記本体部の上面及び両側面を覆うように設けられた略コ字状のカバー体と、前記カバー体の両側面に回動可能に設けられており、前記第1の支持部を前記農作物管理装置の重量に応じて昇降させる一対のアームと、前記一対のアームと、前記カバー体の両側面の間にそれぞれ設けられており、前記一対のアームの先端を上方に付勢する一対の付勢手段と、を備える。
【0007】
第1の発明によれば、第1のワイヤに沿って移動する吊り下げ式の農作物管理装置が動いていないときや、前記農作物管理装置が収穫位置にないときには、前記第1の支持部を跳ね上げて、農作業の邪魔にならないようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、支持部に沿って移動する吊り下げ式の農作物管理装置が動いていないときや、前記農作物管理装置が収穫位置にないときには、前記支持部を跳ね上げて、農作業の邪魔にならないようにする支持部跳ね上げ装置と、それを利用した農作物管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるワイヤ跳ね上げ装置を利用した農作物管理システムの一例である。
【
図2】実施形態のワイヤ跳ね上げ装置を示す外観斜視図であり、(A)はワイヤが下がった状態を示す図、(B)は前記(A)の状態のワイヤに沿って農作物管理装置がワイヤ跳ね上げ装置を通過する様子を示す図である。
【
図3】実施形態のワイヤ跳ね上げ装置を示す図であり、(A)は正面図、(B)は前記(A)の部分拡大部である。
【
図4】実施形態のワイヤ跳ね上げ装置を示す側面図である。
【
図5】実施形態のワイヤ跳ね上げ装置のアームの可動域を示す側面図である。
【
図6】実施形態のワイヤ跳ね上げ装置によるワイヤの昇降を示す図である。
【
図8】実施形態のワイヤ跳ね上げ装置を角材で固定した場合の写真である。
【
図9】実施形態のワイヤ跳ね上げ装置を角材で固定した場合に跳ね上げた際の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。例えば、以下の実施形態では、理解を容易にするために、支持部跳ね上げ装置は、ワイヤ跳ね上げ装置50として説明するが、跳ね上げる対象が、レール等のワイヤ以外であってもよい。加えて、農作物管理装置10とワイヤ跳ね上げ装置50を1台ずつ示しているが、実際には複数台のワイヤ跳ね上げ装置50が設置されてよい。
【0011】
<農作物管理システムの構成>・・・
図1は、本発明の一実施形態によるワイヤ跳ね上げ装置50を利用した農作物管理システムの一例である。本実施形態の農作物管理システム100は、吊り下げ式の農作物管理装置10と、当該農作物管理装置10が所定方向に沿って進行し、農作物Cの条Sが両側に配置される第1のワイヤ(支持部)102Aと、当該第1のワイヤ102Aよりも上方にあって、前記第1のワイヤ102Aと交差する位置の第2のワイヤ102Bに設けられたワイヤ跳ね上げ装置50により構成される。。
【0012】
農作物管理システム100は、農作物のうち、特に、地表より上方に延び、地表より上に収穫物を付ける、例えば、ピーマン、トマト、ミカン、イチゴ、ナス、キュウリ等の野菜や果物の取得に用いられる。
【0013】
農作物管理システム100は、前記農作物管理装置10を吊り下げるための第1のワイヤ102Aを備えている。第1のワイヤ102Aは、地表から立設する支柱や、ビニールハウスの構造体やこの構造体に取り付けられた部材に支持され、農作物の収穫物より高い位置に配置されており、農作物Cが植えられた所定方向に沿って延びている。
【0014】
同じく、ワイヤ跳ね上げ装置50を固定するための第2のワイヤ102Bは、地表から立設する支柱や、ビニールハウスの構造体やこの構造体に取り付けられた部材に支持され、前記第1のワイヤ102Aよりも高い位置に配置されており、前記第1のワイヤ102Aと交差するように延びている。
【0015】
<農作物管理装置の全体構成>・・・次に、本実施形態の農作物管理装置10の全体構成を説明する。農作物管理装置10は、
図1に示すように、前記第1のワイヤ102Aに沿って所定の進行方向に移動する吊り下げ式の農作物管理装置10であって、前記第1のワイヤ102Aに係合する係合部14と、前記第1のワイヤ102Aの直下に配置された図示しない回転軸を有しており、前記係合部14に対して回転可能な回転部18と、前記回転部18が上面に設けられるとともに、前記進行方向側に設けられた可動スペース20に、収穫物Cを取得する取得部30が設けられた本体部12と、前記取得部30に設けられたカメラとを備える。
【0016】
前記係合部14には、
図2(B)に示すように、第1のワイヤ102Aが挿通するワイヤ挿通部16が、進行方向に沿って設けられている。また、係合部14は、第1のワイヤ102Aに係合するローラと、図示しない制御部に制御され、ローラを、第1のワイヤ102Aが延びる方向と直交する方向に延びる回転軸を中心に回転させるワイヤ移動モータと、これらの部材を支持する支持部材と、を備える。
【0017】
係合部14は、その両端側に、第1のワイヤ102A上に2つのローラを配置しているが、これに限らず、例えば、4つのローラを配置してもよいし、第1のワイヤ102Aの下にもローラを配置し、第1のワイヤ102Aをローラで挟むようにしてもよい。
【0018】
回転部18は、係合部14の支持部材に連結されたベース部と、ベース部に固定され、制御部に制御され、第1のワイヤ102Aの直下に配置された図示しない回転軸を中心に回転させる回転モータと、前記回転軸の下端が接続され、前記回転モータの回転を回転部18に伝達する伝達部と、を備える。
【0019】
前記本体部12の前方には、前記取得部30が、昇降、回動、水平移動(前後移動)するための可動スペース20が設けられている。可動スペース20は、図示の例では。農作物取得装置10の前方左半分程度を本体カバーで覆わないことで形成される。前記可動スペース20の底面22側には、取得部30によって取得した収穫物Fを収容する収容部40が設けられている。収容部40が収穫物Fでいっぱいになると、本体部12の底面12Bの背面12D側に設けられた蓋が開き、一対のレールに沿って、収穫物Fが収容された容器が搬送される。
【0020】
前記取得部30は、本体部12の内部に垂直方向に延びる長尺体である垂直部材と、前記取得部30を、前記可動スペース20内で昇降させる昇降機構と、前記取得部30を、前記可動スペース20内で水平方向に前後移動させる水平移動機構と、前記取得部30を、前記可動スペース20の水平面内で回転させる回転機構を備える。
【0021】
前記垂直部材に、当該垂直部材に対して昇降する昇降部材が設けられ、当該昇降部材に水平移動(前後移動)可能に水平部材が支持されている。そして、前記水平部材の先端に、垂直方向に立設するように垂直ブラケットが設けられて、当該垂直ブラケットの上端に、ベース部が設けられている。
【0022】
ベース部の上面には一対の回転モータが設けられるとともに、これら一対の回転モータの回転を図示しないプーリや、モータ歯車などを介して、一対の無端ベルトを、取得部30の先端の一対の把持部の対向面において、先端側から基端側に移動させるように、制御部によって制御する。
【0023】
また、前記ベース部の上面であって、前記一対の回転モータの間には、カメラが設けられている。更に、前記水平部材の先端側であって、前記垂直ブラケットの間には、LEDライトが設けられている。
【0024】
前記取得部30は、ベース部と、一対の把持部と、図示しない切断刃と、を備える。一対の把持部は、農作物Cの収穫物F近傍の果梗FS又は収穫物Fそのものを掴む。詳細には、一対の把持部は、制御部に制御され、前記把持部を駆動する回転モータと、を備える。
【0025】
上述したように、一対の無端ベルトを、取得部30の先端の一対の把持部の対向面において、先端側から基端側に移動させるように、制御部によって制御するすることによって、一対の把持部の間に、果梗FS(収穫物F近傍)を掴み、図示しない切断刃によって切断する。例えば、切断刃は、一対の把持部の先端側に設けられ、必要に応じて、前記一対の把持部の基端側にも設けられる。
【0026】
カメラは、前記ベース部に固定されており、制御部に制御され、条S、農作物C、収穫物Fを撮像する。前記カメラは、本体部12についていると、本体部12が回転すると取得位置を適切に撮影して収穫することができないが、本発明によれば、カメラは、本体部12ではなく取得部30に設けられているため、本体部12が回転しても撮影や収穫に支障がない。また、LEDライトを設けているため、取得位置を明るい状態で撮影することができる。
【0027】
次に、収容部40は、可動スペース20の下方に設けられており、取得部30で取得された収穫物Fを収容する。収容部40は、例えば、容器部と、固定底と、移動底と、駆動部と、を備える。容器部は、少なくとも上方が開放された箱形状に形成されている。そして、例えば、容器部の内部が一杯になった場合には、制御部の制御により駆動し、移動底が固定底の下に移動し、本体部12の背面の底側の蓋が解放され、開口部から収穫物Fが収容された容器が搬送される。
【0028】
また、農作物管理装置10は、後述するように、図示しない制御部のほかに、農作物管理装置10を駆動するための電源となる図示しないバッテリを備える。
【0029】
<農作物管理装置の制御部の機能>・・・次に、本実施形態の農作物管理装置10の制御部の機能を説明する。農作物管理装置10は、制御部と、解析手段と、移動位置特定手段と、水平位置特定手段と、取得部制御手段と、送受信手段と、を備え、農作物管理装置10の動作を制御する。また、制御部には、カメラと、ワイヤ移動モータと、回転モータと、昇降モータと、水平移動モータと、一対の回転モータと、収容部モータと、が通信可能に接続されている。
【0030】
解析手段は、カメラで撮像された条S、農作物C、収穫物Fの画像を解析し、収穫物Fがなっているか否かを判定する。詳細には、解析手段は、カメラで撮像された画像に対し、例えば、公知の技術であるディープラーニングとパターンマッチングを併用し、検出確度が、所定の閾値を超えたか否かにより、収穫物Fがなっているか否かを判定する。
【0031】
移動位置特定手段は、解析手段により、収穫物Fがなっていると判定された場合、当該収穫物Fを目標とし、カメラで撮像可能な画角のうち、所定の画角内に、目標が入るように、取得部30を移動させる。詳細には、移動位置特定手段は、ワイヤ移動モータの駆動を制御することで、第1のワイヤ102Aが延びる方向に、農作物管理装置10を移動させ、目標に対する取得部30の水平方向(左右方向)の位置を合わせる。また、移動位置特定手段は、昇降モータの駆動を制御することで、垂直方向に、取得部30を移動させ、目標に対する取得部30の垂直方向(上下方向)の位置を合わせる。
【0032】
水平位置特定手段は、移動位置特定手段により、目標に対する取得部30の水平方向(左右方向)及び垂直方向(上下方向)の位置合わせが行われたら、カメラにより収穫物Fを撮像し、収穫物Fの画像を点群データとして取得し、目標である収穫物Fの大きさと、収穫物Fまでの距離を計測する。
【0033】
そして、水平位置特定手段は、計測した収穫物Fの大きさが、予め設定された大きさ(例えば、収穫物Fの種類に応じて予め設定されるSサイズ、Mサイズ、Lサイズ等)であれば、水平移動モータの駆動を制御することで、計測した距離に基づき、目標に対する取得部30の水平方向(前後方向)の位置を合わせる。
【0034】
また、水平位置特定手段は、カメラにより、収穫物Fとともに、一対の把持部の先端に把持された画像を取得し、収穫物Fの位置との差を検出し、ワイヤ移動モータ、回転モータ、昇降モータ又は水平移動モータの駆動を制御することで、収穫物F近傍の果梗FSが、一対の把持部の間に入るように、取得部30の位置補正を行う。
【0035】
取得部制御手段は、水平位置特定手段により、収穫物F近傍の果梗FSが、一対の把持部の間に挟まれるように取得部30の位置補正を行ったら、一対の回転モータの駆動を制御することで、先端側から基端側に移動する図示しない一対の無端ベルトに収穫物F近傍の果梗FSを挟ませる。
【0036】
そして、取得部制御手段は、収穫物F近傍の果梗FSを一対の把持部に掴ませたら、切断刃モータの駆動を制御することで、切断刃を回動させ、一対の把持部に軸に掴ませた果梗を切断する。あるいは、前記無端ベルトの回転に従動して回転する一対の回転刃によって、果梗FSを切断してもよい。
【0037】
また、水平位置特定手段は、取得部制御手段が果梗FSを切断したら、水平移動モータの駆動を制御することで、収穫物Fを掴んだ取得部30を、水平方向(前後方向)において、農作物Cから離れる方向(垂直部材に近接する方向)に移動させ、収容部40の上方に配置する。
【0038】
そして、取得部制御手段は、水平位置特定手段が、収穫物Fを掴んだ取得部30を収容部40の上方に配置したら、上述したように果梗FSを切断し、収穫物Fを収容部40内に落下させる。
【0039】
送受信手段は、外部装置(例えば、ユーザに操作される端末等)に、例えば、所定のタイミングで、取得した収穫物Fの数や、農作物管理装置10位置情報(例えば、初期位置に対し、ワイヤ移動モータの駆動に基づく移動距離から算出した位置情報等)等を送信してもよい。また、送受信手段は、外部装置から、取得する収穫物Fの大きさを示す設定や、農作物管理装置10の駆動動タイミングを示す情報(例えば、前記収穫ルール・スケジュール)や、解析手段や水平位置特定手段の判定時に参照される基準データ等を受信してもよい。
【0040】
制御部は、図示しないプロセッサ、メモリ、ストレージ、通信部を備え、これらはバスにより接続されている。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)により構成され、メモリに記憶された各種プログラムを読み出して実行することで、各種処理を行う。メモリは、CPUにより実行されるプログラムを記憶するものであり、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)により構成される。
【0041】
<ワイヤ跳ね上げ装置の構成>・・・次に、
図2~
図5を参照して、ワイヤ跳ね上げ装置50の構成を説明する。
図2は、本実施形態のワイヤ跳ね上げ装置を示す外観斜視図であり、(A)はワイヤが下がった状態を示す図、(B)は前記(A)の状態のワイヤに沿って農作物管理装置がワイヤ跳ね上げ装置を通過する様子を示す図である。
図3は、本実施形態のワイヤ跳ね上げ装置を示す図であり、(A)は正面図、(B)は前記(A)の部分拡大部である。
図4は、本実施形態のワイヤ跳ね上げ装置を示す側面図、
図5は、本実施形態のワイヤ跳ね上げ装置のアームの可動域を示す側面図である。
【0042】
これらの図に示すように、ワイヤ跳ね上げ装置50は、前記第1のワイヤ102Aに沿って所定方向に移動する吊り下げ式の農作物管理装置10のためのワイヤ跳ね上げ装置であって、前記ワイヤ跳ね上げ装置50は、前記第1のワイヤ102Aよりも上方に設けられた第2のワイヤ102Bに、前記第1のワイヤ102Aと交差する位置に設置される。
【0043】
前記ワイヤ跳ね上げ装置50は、前記第2のワイヤ102Bに底面52Dが固定される角パイプ状の本体部52と、前記本体部52の底面52Dに設けられており、前記第2のワイヤ102Bに固定する固定部54A、54Bと、前記本体部52の上面52C及び両側面52E、52Fを覆うように設けられた略コ字状のカバー体60と、前記カバー体60の両側面60B、60Cに回動可能に設けられており、前記第1のワイヤ102Aを前記農作物管理装置10の重量に応じて昇降させる一対のアーム72A、72Bと、前記一対のアームと72A、72Bと前記カバー体60の両側面60B、60Cの間にそれぞれ設けられており、前記一対のアーム72A、72Bの先端74A、74Bを上方に付勢する一対の付勢機構70A、70Bと、を備える。
【0044】
前記角パイプ状の本体部52の幅W1は(
図2(B)参照)は、例えば50mmであり、高さも同じく50mmである。また、本体部52の厚みT1(
図3(B)参照)は、例えば、2mmに設定されている。
【0045】
体60の上面60Aの幅は(
図2(B)参照)は、例えば、64mmに設定され、前記カバー体60の両側面60B、60Cの高さH1(
図2(A))は、例えば、43.5mmに設定されている。また、本実施形態では、前記本体部50の内側に、補強用の丸パイプ56(
図2(A)、
図3(A)参照)が設けられており、当該丸パイプ56のφは、例えば、48.9mmに設定されている。また、
図3(B)に示すように、前記本体部52と前記丸パイプ56が重なる部分の厚みT2は、例えば、1.45mmに設定されている。
【0046】
前記一対のアーム72A、72Bは、
図3(A)に示すように、一方の端部74A、74Bのやや上方に、前記第1のワイヤ102Aを受ける受け部76A、76Bが、前記アーム72A、72Bと略直交するように設けられている。更に前記一対のアーム72、72Bのうち、後述するボルト80A、80Bの中心から、前記受け部76A、76Bまでの高さH2は、例えば、90mm程度に設定されている。また、図示されていないが、前記一対のアーム72A、72Bのガタ最大値は、更に、アーム72A、72Bが傾いたときの受け部76A、76Bのラップ量は、例えば、1.5mm程度に設定されている。
【0047】
また、
図4(A)に示すように、アーム72Aと、農作物管理装置10の係合部14との間の幅W4は、例えば、15mmに設定されている。更に、アーム72Aの先端74A側と、農作物管理装置10の係合部14の縦の間隔(高さH3)は、例えば、8mm程度に設定されている。他方のアーム72B側についても同様である。また、
図4(B)に示すように、アーム72の先端74Aには、カバー(係合部14)逃がし用のために曲面状のカバー逃がし部75が設けられている。
【0048】
<付勢機構の構造及び作用>・・・次に、アーム72Aの付勢機構70Aについて説明する。
図3(B)に拡大して示すように、付勢機構70Aは、付勢手段としてスプリング90Aを含み、その巻回部から引き出された一方の端部92Aが、前記カバー体60の側面60Bの下方に設けられた貫通孔65に通して固定され、他方の端部92Bが、
図4(A)に示すように、前記アーム72Aの上端77Aに形成されたフック78Aに引っ掛けて固定される。
【0049】
前記アーム72Aの外側には、ワッシャ86Aが重ねられ、これらの開口部78A、88Aをボルト80Aの軸部84Bが通るように固定される。ボルト80Aの頭部82Aは、ワッシャ86Aの開口部88Aの縁に係合する。前記軸部84Bの他端側は、カバー体60の側面60Bの開口部64と、カバー体60の内側に設けられたワッシャ66の開口部68を貫通し、ナット69により固定する。ナット69が本体部52に当たる部分は、内側に丸パイプ56を設けることで補強されている。
【0050】
他方の付勢機構70Bについても、基本的に同様の構成であるが、スプリング90Bの巻き方向は、スプリング90Aの巻き方向と逆になっている。
【0051】
図5には、アーム72Aの可動域が示されている。同図に示すように、例えば、スプリング90Aの初期たわみ角度α1は、41°であり、使用限界角度α2は、116°であり、無負荷角度α3は、135°である。また、無負荷状態におけるアーム72Aの先端の高さH4は、例えば、8.13mmに設定される。更に、無負荷状態と使用限界状態におけるアーム72Aの飛び出し量(高さH5)は、例えば、18.7mmに設定されている。他方のアーム72Bについても同様である。
【0052】
図6には、本実施形態のワイヤ跳ね上げ装置50による第1のワイヤ102Aの昇降の様子が示されている。
図6(A)に示す状態は、農作物管理装置10がまだ近づいておらず、第1のワイヤ102Aがアーム72A、72Bに設けられたスプリング90A、90Bの付勢力によって上方に持ち上げられている(無負荷状態)。このとき、第1のワイヤ102Aは、アーム72A、72Bの先端の受け部76A、76Bによって上から押さえられた状態である。
【0053】
次に、農作物管理装置10が徐々に近づいてくると、当該農作物管理装置10の自重によって負荷がかかり、前記スプリング90A、90Bが縮まり始め、
図6(B)に矢印で示すように、一対のアーム72A、72Bが徐々に下がり、第1のワイヤ102Aを前記支持部76A、76Bが押し下げるようになる。更に、農作物管理装置10が完全に近づくと、前記スプリング90A、90Bに最大の負荷がかかり、アーム72A、72Bが
図6(C)に矢印で示すように完全に下がる。このとき、アーム72A、72Bの先端74A、74Bの受け部76A、76Bは、第1のワイヤ102Aの下側を受けるようになる。この状態で、農作物管理装置10がワイヤ跳ね上げ装置50の下を通る様子が、
図2(B)に相当する。
【0054】
図7には、本実施例の作用が示されている。
図7(A)に示す状態は、農作物管理装置10がワイヤ跳ね上げ装置50に十分に近づき、その自重がスプリング90A、90Bの付勢力に抗し、一対のアーム72A、72Bを下げた状態であり、第1のワイヤ102Aも下降位置にある。ついで、この下がった一対のアーム72A、72Bに保持された第1のワイヤ102Aを、
図7(B)に示すように、農作物管理装置10の係合部14が通りすぎる。そして、農作物管理装置10が、ワイヤ跳ね上げ装置50の下を完全に通過すると、スプリング90A、90Bの付勢力により、
図7(C)に矢印で示す方向に一対のアーム72A、72Bが上昇し、これらアーム72A、72Bに保持された第1のワイヤ102Aも上昇する。完全に上昇した状態が、
図6(A)に示す状態である。
【0055】
図7、
図8に示すように、第2のワイヤ102Bの代わりに、角材120でワイヤ吊り下げ装置50を固定してもよい。この場合、ワイヤ吊り下げ装置50のフレーム60は、第2のワイヤ102Bのように、固定のために、第2のワイヤ102Bの延長方向に所定の長さを有する必要が無く、角材120の上方から逆凹部を角材の凸部に嵌めて、コンパクトに固定することができる。
加えて、ワイヤ吊り下げ装置50のアーム72A,Bが跳ね上がった状態では、角材120の高さ方向にアーム72A,Bが収納されて、収納時にアーム72A,Bが上部及び下部に飛び出ることがなく、第1のワイヤ102Aが角材120の底面に固定される。
【0056】
<効果>・・・以上、本実施形態のワイヤ跳ね上げ装置50は、第1のワイヤ102Aに沿って移動する吊り下げ式の農作物管理装置10が動いていないときや、前記農作物管理装置10が収穫位置にないときには、前記第1のワイヤ102Aを跳ね上げて、農作業の邪魔にならないようにするワイヤ跳ね上げ装置50と、それを利用した農作物管理システム100を提供することができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。前記実施形態で示した農作物管理装置10の形態は一例であり、第1のワイヤ102Aを通過できる構造のものであれば、どのようなものであってもよい。また、前記実施形態で示したワイヤ跳ね上げ装置50の形状等も一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更してよい。例えば、前記実施形態では、一対のアーム72A、72Bの先端74A、74B側に設けた受け部76A、76Bによって、第1のワイヤ102Aを保持することとしたが、これも一例であり、例えば、前記受け部76A、76Bの代わりに、フックを利用するなど、同様の効果を奏する範囲内で適宜設計変更が可能である。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
10:農作物管理装置
12:本体部
14:係合部
16:ワイヤ挿通部
18:回転部
20:可動スペース
30:取得部
40:収容部
50:ワイヤ跳ね上げ装置
52:本体部
52A:先端
52B:後端
52C:上面
52D:底面
52E、52F:側面
54A、54B:固定部
56:円パイプ
60:フレーム
62A:上面
62B、62C:側面
64:開口部
65:貫通孔
66:ワッシャ
68:開口部
69:ナット
70A、70B:付勢機構
72A、72B:アーム
74A、74B:端部
75:カバー逃がし部
76A、76B:受け部
77A、77B:上端
78A、78B:フック
80A、80B:ボルト
82A、82B:頭部
84A、84B:軸部
86A、86B:ワッシャ
88A、88B:開口部
90A、90B:スプリング
92A、92B:端部
100:農作物管理システム
102A:第1のワイヤ
102B:第2のワイヤ
120:角材
C:農作物
F:収穫物
FS:果梗
S:条
T1、T2:厚み
W1~W4:幅
H1~H5:高さ
α1~α3:角度