(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037530
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】衣類及び心電計測用衣類
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20230308BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20230308BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20230308BHJP
A61B 5/27 20210101ALI20230308BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A61B5/332
A61B5/33 200
A61B5/27
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144344
(22)【出願日】2021-09-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ベルクロ
(71)【出願人】
【識別番号】516294001
【氏名又は名称】株式会社Xenoma
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】天野 信一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 夏美
(72)【発明者】
【氏名】中島 正雄
(72)【発明者】
【氏名】網盛 一郎
(72)【発明者】
【氏名】武藤 拓也
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB03
4C127JJ03
4C127LL13
4C127LL15
4C127LL22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】受診者が特別な知識を必要とすることなく心電計測の電極を自ら装着できることで、来院の必要がなく、途中で風呂に入ることも可能で、かつ低ノイズで高度な診断を可能とする2乃至5誘導の心電計測用衣類を提供する。
【解決手段】本発明は、計測電極又は計測電極取付部と、心電を計測する心電計測デバイスが、衣類の任意の位置に固定又は着脱機構を介して配置された2乃至5誘導の心電計測用衣類において、該衣類が首の周囲を囲う襟ぐりを有し、該襟ぐりの左右の頂点を直線で結び、その線分の中央点から下方に7.5乃至15cmの位置を中心に半径5cmの円内に第1の計測電極もしくは計測電極取付部が配置されており、全ての該計測電極又は該計測電極取付部と該心電計測デバイスとが、絶縁層を有する伸縮性配線で接続されており、該伸縮性配線の20%伸張時の電気抵抗率上昇が0乃至30%であって、導電部の周囲が絶縁性材料で絶縁されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測電極又は計測電極取付部と、心電を計測する心電計測デバイスが、衣類の任意の位置に固定又は着脱機構を介して配置された2乃至5誘導の心電計測用衣類において、
該衣類が首の周囲を囲う襟ぐりを有し、該襟ぐりの左右の頂点を直線で結び、その線分の中央点から下方に7.5乃至15cmの位置を中心に半径5cmの円内に第1の計測電極もしくは計測電極取付部が配置されており、
全ての該計測電極又は該計測電極取付部と該心電計測デバイスとが、絶縁層を有する伸縮性配線で接続されており、
該伸縮性配線の20%伸張時の電気抵抗率上昇が0乃至30%であって、導電部の周囲が絶縁性材料で絶縁されていることを特徴とする衣類。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮性配線が伸縮性を備える芯材を含んでおり、少なくとも1つの繊維に導電材料を被覆した導電性繊維を、直接又は他の材料を介して、前記芯材の周囲に巻き付けて被覆した導電性被覆部と、該導電性被覆部の周囲を絶縁性材料により被覆した絶縁性被覆部を有し、前記伸縮性配線の長さをL1、前記伸縮性配線から前記絶縁性被覆部を除去した後の長さをL2としたとき、0.50<L2/L1<1.00であることを特徴とする衣類。
【請求項3】
請求項1に記載の第1の計測電極から下方に10乃至20cmの位置に配置された第2の計測電極又は計測電極取付部を有し、
第2の計測電極もしくは計測電極取付部から水平方向に左右対称に、10乃至15cmの範囲に配置された第3及び第4の計測電極又は計測電極取付部を有し、
第3又は第4の電極取付位置から下方に、9±5cmの範囲に中性電極又は中性電極取付部を備えた請求項1乃至2記載の心電計測用衣類。
【請求項4】
請求項1に記載の誘導がNASA誘導、CM5誘導、CC5誘導の3誘導を含むことを特徴とする請求項1乃至3に記載の心電計測用衣類。
【請求項5】
前記心電計測用衣類及び前記心電計測デバイスが正しく装着できているか否かを、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末から受診者に知らせることを特徴とする請求項1乃至4に記載の心電計測用衣類。
【請求項6】
請求項5に記載の正しく装着できているか否かを受診者に知らせる方法が、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末からの振動、光、音の少なくとも1つによって前記受診者に知らせることを特徴とする心電計測用衣類。
【請求項7】
前記心電計測用衣類において、前記心電計測で取得したデータが前記心電計測デバイスから直接又は前記心電計測デバイスと無線通信する端末を経由してサーバに送信されて記録されることを特徴とする請求項1乃至6に記載の心電計測用衣類。
【請求項8】
前記データがデバイス内の記録媒体に記録されることを特徴とする請求項1乃至6に記載の心電計測用衣類。
【請求項9】
前記心電計測用衣類において、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末が、あらかじめ定められたイベントを記録する手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至8に記載の心電計測用衣類。
【請求項10】
前記心電計測用衣類において、加速度センサ、ジャイロセンサのうち少なくとも1つにより取得される運動データを合わせて記録することを特徴とする請求項1乃至9に記載の心電計測用衣類。
【請求項11】
前記第1の計測電極もしくは計測電極取付部から下方に向かって10cm、幅5cmの範囲に用いられる生地の4.9N荷重時の鉛直方向の伸び率が160%以下であることを特徴とする請求項1乃至10に記載の心電計測用衣類。
【請求項12】
前記第1乃至第4の電極が配置された部分を含む前記衣類の一部が、全部又は部分的に離脱する仕組みを備えた請求項1乃至11に記載の心電計測用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受診者が歩行等の運動を行ってもノイズが発生しづらく、健康診断や医師による検査に資する2乃至5誘導の心電計測用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の世界の死亡原因1位は虚血性心疾患で、全体の16%に上る。虚血性心疾患とは、冠動脈の閉塞や狭窄などにより心筋への血流が阻害されて心臓に障害が起こる疾患を指し、その発見には心電図、特にホルター心電計による24時間心電図が有効である。従来のホルター心電計は医療従事者でなければ装着が難しく、受診者はまず病院で装着し、24時間後に再び病院で外す必要があった。また、装着中は外すことができないため、風呂に入れない等の不便が生じていた。
【0003】
受診者が自ら装着できる心電計測として、衣服型の心電計も普及し始めている。例えば非特許文献1には65歳未満の若い被験者を対象にTシャツ型心電計により約2か月計測し、隠れ心房細動を検出した事例が開示されている。被験者はM又はLのいずれかの右胸と左胸に電極を配したTシャツを選んで自ら着用し、CC5誘導で心電図を計測している。通信機が計測した心電データをBluetoothでスマートフォンに送信し、さらにスマートフォンから4Gネットワークでデータサーバに送信している。
【0004】
さらに、非特許文献2には導電性銀ペーストをフィルム状にしたものを電極及び伸縮性配線に用いたTシャツ型心電計が開示されている。左胸と右胸の電極によるCC5誘導で心電を計測し、胸骨柄付近にもグラウンド電極を配置している。胸骨柄付近は筋電の影響を受けにくいことからグラウンドとして用いたと思われる。本文献では身長170.0±1.4cm、体重65.8±6.3kgで被験者の体格をある程度揃えて実施されている。非特許文献2に用いられている導電性材料は伸縮性で100%伸長時の抵抗が3倍になるが、通常の抵抗が十分小さいために問題にならないことが記載されている。また、衣類としての機能のために電極だけでなく配線も伸縮性である必要があることも記載されている。
【0005】
非特許文献1、非特許文献2の心電図は1誘導であるが、さらに例えば非特許文献3には市販のコンプレッションシャツの内側にウレタン系エラストマに銀フレークを分散した伸縮性配線及び電極を形成した単極胸部誘導による6誘導の心電計が開示されている。本文献には明記されていないが被験者は1名で体格は考慮されていないと思われる。
【0006】
さらに非特許文献4には、織物で作られた帯状の12誘導心電計測が開示されている。主として救急救命用のため医療従事者が装着する目的と推測されるが、電極を配置した帯状の布を、患者の正中線と腋の下の二つの目印に合わせて胸の周りに巻きつける操作のみで、正しい位置に電極を設置でき、帯に書かれた目安に沿って患者の体格としてS・M・L・LLのいずれかを計測機器上のボタンで選択することで、電極位置の微調整を行うことなく、正確な心電図の計測を可能にしている。
【0007】
一方、心電だけでなく衣服にセンサーや電気回路を形成した衣服型エレクトロニクスが普及し始めている。非特許文献2、非特許文献3に記載されている導電性粒子分散エラストマ型以外にも、ナイロンなどの糸に銀メッキを施した導電糸を用いたものも知られている。例えば特許文献1には導電糸を編成もしくは織成して作った伸縮性配線が開示されている。100%伸長時の抵抗上昇は約40~80%であることが示されている。
【0008】
特許文献2には導電糸と弾性糸を混用して製編され、伸長時と非伸長時の電気抵抗変化が皆無な伸縮性配線が開示されている。100%伸長時の抵抗上昇は見られない。
【0009】
特許文献3には伸縮性の芯材の周囲に導電性線材を巻き付けた伸縮性配線の両側を絶縁性伸縮フィルムで貼合した絶縁層付伸縮性配線が開示されている。伸長時の抵抗上昇については記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-129121号公報
【特許文献2】特許第5993493号公報
【特許文献3】再表2019/130477号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Fukuma, N., et al. Scientific reports 9.1 (2019): 1-6.
【非特許文献2】塩澤成弘. 生体医工学 54.3 (2016): 135-138.
【非特許文献3】萩原順, et al. エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集 第 32 回エレクトロニクス実装学術講演大会. 一般社団法人エレクトロニクス実装学会, 2018.
【非特許文献4】https://news.mynavi.jp/article/20180117-572956/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明者らは、受診者が自ら装着できるようにすることにより、医療従事者に装着してもらうために来院する必要がなく、着用時に運動してもノイズの問題が生じることなく利用できる2乃至5誘導の詳細分析可能な心電計測用衣類について検討したところ、種々の問題点があることに気付いた。
【0013】
発明者らが気付いた問題点の1つは、体格情報に基づく電極位置合わせ作業である。非特許文献1はMかLを選んでいるが、これは着心地及び粘着性のない電極であるためにシャツの着圧によって電極をしっかり体に接触させることが目的で、体の高さ方向の電極位置については厳密でなくともよかった。非特許文献2についても胸骨柄付近にグラウンド電極があることを除いて非特許文献1と同じで計測時の電極位置については1誘導であるためにあまり厳密さを必要としなかった。グラウンド電極の位置についても心電計測の誘導に関係ない位置であれば制約はなかった。
【0014】
非特許文献3は単極胸部誘導による6誘導のTシャツ型心電計であるが、体格は考慮されていない。誘導数が大きくなると、医療機器としての心電計測においては電極位置も重要な課題となる一方で、非特許文献3に限らず非特許文献1、非特許文献2にも共通するように、衣類による心電計測では、当該研究分野では導電布等の粘着性のない電極による心電計測におけるノイズ低減がメインテーマとなっているため、正確な電極位置合わせについては未だ十分な解決ができていない。
【0015】
体格と電極位置調整については、非特許文献3と胸部の電極が同じ配置である12誘導の非特許文献4において、帯に書かれた目安に沿って患者の体格としてS・M・L・LLのいずれかを計測機器上のボタンで選択する事が記載されている。これは衣類ではなくデバイス側でサイズを選択している。また、非特許文献3では着用時の位置の目安として患者の正中線と腋の下の二つの目印を用いることが開示されている。非特許文献3では非医療従事者は想定していないと思われるので問題ないが、仮にこれを非医療従事者が装着する場合は容易ではなく、非医療従事者による装着の場合は、そもそも自分の体格を自分で帯で計測するオペレーションも難しく、正中線も容易には合わせられず、医療知識があったとしても困難である。
【0016】
発明者らが気付いた2つ目の問題点は伸縮性配線の安定性である。非特許文献1の配線はそれほど伸縮性がない。但し、本文献では電極の導電布と心電計測デバイスの間にほとんど配線がないためそもそも必要がなかった。非特許文献2は抵抗が小さいので100%伸長で3倍の抵抗は問題ないとしているが、2誘導以上の場合は誘導ごとの比較が必要な他、配線の抵抗が高いことで配線の誘電体成分起因によるノイズも懸念され、問題となりうる。非特許文献3のウレタン系エラストマに銀フレークを分散した伸縮性配線も、データはないが導電性粒子の分散体は伸長時に粒子間距離が大きくなることで抵抗変化が大きくなるため、非特許文献2と同様に問題である。非特許文献4の場合は、救急救命等で受診者が動かないことが想定されているため、運動に起因するノイズは考慮されていないものと考えられる。
【0017】
特許文献1及び特許文献2のように編成等で作られている伸縮性配線は、絶縁層の形成が問題となる。伸縮性はテキスタイルの網目構造によるものであるが、そこに例えばホットメルトのようなもので絶縁層を形成すると、網目をホットメルトが埋めてしまうことで伸縮性が著しく低下してしまう。一方、特許文献3のように伸縮性の芯材の周囲に導電性線材を巻き付けたものは、その さらに外側に絶縁層を形成することで絶縁性も付与しやすいが、伸縮時の抵抗変化について十分な知見がなかった。絶縁層がないと、電極以外の部分が体に触れることもまたノイズの原因となる点もまた問題である。そしてそもそも、これら特許文献1、特許文献2及び特許文献3のような伸縮性配線は、衣類型の心電計において伸長時の抵抗安定性があまり求められてこなかったために検討されてこなかった。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、上述の課題を一度に解決できる心電計測用衣類を実現することを目的とする。より具体的には、受診者が特別な知識を必要とすることなく心電計測の電極を自ら装着できることで、来院の必要がなく、途中で風呂に入ることも可能で、かつ低ノイズで高度な診断を可能とする2乃至5誘導の心電計測用衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、鋭意検討の結果、心電計測における解剖学的なマーカー位置である胸骨柄が、解剖学とは異なる分野であるアパレル技術に基づき、首の周囲を囲う襟ぐりを有する衣類を用いることにより、襟の首元付近に正確に推定できることを見出した。さらにそこを第1の電極として第5肋間想定高さをも体格から容易に精度よく推定できることを見出した。非特許文献3は胸骨柄付近に電極を有するが、これは心電計測の電極ではなくグラウンド電極であるために正確な位置を必要としない。本発明は従来技術とは衣類の機能が異なっており、2誘導以上において非医療従事者にとっては困難な電極の配置を、衣類を体格に合わせたテンプレートとして用いることでNASA誘導やCM5誘導で必要となる胸骨柄、さらにはCC5誘導やCM5誘導で必要となる第5肋間想定高さを解剖学的に正確に特定できるようにした点に発明の特徴がある。
【0020】
さらに、2乃至5誘導の心電計測において、体動に伴うノイズ低減のために最適な伸縮性配線を用いることにより、着心地と精度の両立を実現し、本発明を完成させた。
【0021】
上記目的を達成するために本発明の一の態様は、計測電極又は計測電極取付部と、心電を計測する心電計測デバイスが、衣類の任意の位置に固定又は着脱機構を介して配置された2乃至5誘導の心電計測用衣類において、該衣類が首の周囲を囲う襟ぐりを有し、該襟ぐりの左右の頂点を直線で結び、その線分の中央点から下方に7.5乃至15cmの位置を中心に半径5cmの円内に第1の計測電極もしくは計測電極取付部が配置されており、全ての該計測電極又は該計測電極取付部と該心電計測デバイスとが、絶縁層を有する伸縮性配線で接続されており、該伸縮性配線の20%伸張時の電気抵抗率上昇が0乃至30%であって、導電部の周囲が絶縁性材料で絶縁されていることを特徴とする心電計測用衣類である。尚、伸縮性配線の電気抵抗率上昇は、長さ40cmの配線において、テスターで両端の抵抗値を計測し、初期の抵抗値R0とし、次に上記配線が48cmと20%の伸長になるように調整し、再度テスターで両端の抵抗値を計測し、20%伸長時の抵抗値R1とし、電気抵抗率上昇 r(%)=(R1-R0)/R0×100を算出した。
【0022】
本発明の一の態様によれば、心電計測における解剖学的なマーカー位置である胸骨柄は、襟ぐりの左右の頂点を直線で結び、その線分の中央点から下方に7.5乃至15cmの場所に位置する。そこを第1の電極とすることにより、医学知識のない受診者でもアパレルの特性を活かして容易に解剖学的なマーカー位置である胸骨柄に正確に計測電極を配置でき、2誘導以上の心電検査を自ら行うことができる。そして、受診者の運動に伴う配線の伸縮時の抵抗変化が小さく、洗濯時の配線の破断等による故障を防ぐことができる。
【0023】
本発明の他の態様として、前記伸縮性配線が伸縮性を備える芯材を含んでおり、少なくとも1つの繊維に導電材料を被覆した導電性繊維を、直接又は他の材料を介して、前記芯材の周囲に巻き付けて被覆した導電性被覆部と、その導電性被覆部の周囲を絶縁性材料により被覆した絶縁性被覆部を有し、前記伸縮性配線の長さをL1、前記伸縮性配線から前記絶縁性被覆部を除去した後の長さをL2としたとき、0.50<L2/L1<1.00であることが好ましい。これにより高い伸縮性を有しつつ、伸張時の抵抗変化の小さい伸縮性配線を形成することができる。
【0024】
本発明のさらに他の態様として、前述の第1の計測電極から下方に10乃至20cmの位置に第2の計測電極又は計測電極取付部を配置し、第2の計測電極もしくは計測電極取付部から水平方向に左右対称に、10乃至15cmの範囲に第3及び第4の計測電極又は計測電極取付部を配置し、さらに第3又は第4の電極取付位置から下方に、9±5cmの範囲に中性電極又は中性電極取付部を配置した心電計測用衣類が好ましい。
【0025】
本発明のさらに他の態様として、心電計測においてNASA誘導、CM5誘導、CC5誘導の3誘導を含むことが好ましい。前述の第1から第4の計測電極配置によって、この3つの誘導を計測できるため好ましい。
【0026】
本発明のさらに他の態様として、心電計測用衣類及び前記心電計測デバイスが正しく装着できているか否かを、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末から受診者に知らせることが好ましい。
【0027】
本発明のさらに他の態様として、正しく装着できているかを受診者に知らせる方法が、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末からの振動、光、音の少なくとも1つによることがさらに好ましい。受診者に心電図波形を見せることで判断させることもできるが、システムが自動で判別した情報を端末からの振動、光、音のような単純な方法で知らせる方がより受診者にとって安心なサービスとなる。
【0028】
本発明のさらに他の態様として、取得したデータが前記心電計測デバイスから直接又は前記心電計測デバイスと無線通信する端末を経由してサーバに送信・記録されることが好ましい。受診者とサービス提供者間の配送ステップにおいて万が一心電計測デバイスを紛失した場合でも、受診者の個人情報である心電データを漏洩させる懸念が生じない。
【0029】
本発明のさらに他の態様として、前記データがデバイス内の記録媒体に記録されることを特徴とすることもまた好ましい。無線通信によるデータ送信は、通信環境等によるデータロスの懸念があり、さらに多誘導の心電データはデータサイズが大きいために通信費用も高額になりうる。心電計測デバイスの盗難等による心電データ漏洩に対しては、記録データを暗号化しておくことが好ましい。
【0030】
本発明のさらに他の態様として、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末が、あらかじめ決めたイベントを記録する手段を備えていることが好ましい。
【0031】
本発明のさらに他の態様として、加速度センサ、ジャイロセンサのうち少なくとも1つによる運動データを合わせて記録することが好ましい。
【0032】
本発明のさらに他の態様として、前記第1の計測電極もしくは計測電極取付部から下方に向かって10cm、幅5cmの範囲に用いられる生地の4.9N荷重時の鉛直方向の伸び率が160%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明のさらに他の態様として、前記計測電極もしくは計測電極取付部が配置された部分を含む前記衣類の一部が、全部又は部分的に離脱する仕組みを備えていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は本発明に係る心電計測衣類1の外観を示す図
【
図2】
図2は本発明に係る心電計測衣類1の他の態様の外観を示す図
【
図3】
図3は本発明に係る心電計測のNASA誘導に関する図
【
図4】
図4は本発明に係る心電計測のCM5誘導に関する図
【
図5】
図5は本発明に係る心電計測のCC5誘導に関する図
【
図6】
図6は本発明に係る心電計測デバイス31のブロック図
【
図7】
図7は本発明に係る心電計測衣類1の他の態様の外観を示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に従って本発明の好適な実施形態について説明する。
【0036】
図1は、本発明に係る心電計測用衣類1の外観を示す図である。衣類1は素肌に直接着用するため、季節を問わず下着として着用しやすい半袖のTシャツタイプ又はノースリーブタイプが好ましい。衣類は首の周囲を囲う襟ぐりを有し、前面と後面を合わせたときに生じる襟ぐりの左右の頂点11を直線で結び、その線分の中央点12から下方に7.5乃至15cmの位置を中心に半径5cmの円内に第1の計測電極もしくは計測電極取付部131が配置されている。心電を計測するデバイスはコネクタ部14に取り付けられる。第1の計測電極もしくは計測電極取付部131とコネクタ部14は伸縮性配線15で接続されている。コネクタ部14の位置は図示例の位置に限定されない。つまり、心電を計測するデバイスは任意の位置に配置される。また、心電を計測するデバイスは、固定又は着脱機構を介して配置される。
【0037】
伸縮性配線15は人の動作によって抵抗が変化しないよう、伸縮性を備える芯材を含んでおり、少なくとも1つの繊維に導電材料を被覆した導電性繊維を、直接又は他の材料を介して、前記芯材の周囲に巻き付けて被覆した導電性被覆部(導電部)と、その導電性被覆部の周囲を絶縁性材料により被覆した絶縁性被覆部(絶縁層)を有し、前記伸縮性配線の長さをL1、前記伸縮性配線から前記絶縁性被覆部を除去した後の長さをL2としたとき、0.50<L2/L1<1.00であることが好ましい。これにより、伸縮性配線が受診者の動き等によって伸縮したときに抵抗変化が小さくなるだけでなく、受診者の着用時や洗濯時に心電計測シャツが強く引っ張られたときに配線が断線するのを防ぐことができるようになる。導電性繊維は芯材に直接巻き付けてもよいし、芯材の周囲を潤滑剤や粘着剤などでコートしてから巻き付けてもよい。
【0038】
絶縁性被覆部を作製する方法としては、導電性被覆部の周囲に直接、天然ゴムや合成ゴムのようなエラストマを射出成形する方法や、導電性被覆部を前記エラストマの溶液にディップする方法、あるいは絶縁性繊維をらせん状もしくは組紐のようにして巻き付ける方法などが挙げられる。合成ゴムとしては、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、シリコーン系、フッ素系などが挙げられる。絶縁性繊維としては絶縁性であれば特に限定はなく、天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリル繊維、ポリオレフィン繊維などが挙げられる。絶縁性繊維はあらかじめ撥水剤コートしておくことが絶縁性を高めるために好ましい。撥水剤コートとしては特に限定はなく、フッ素系やシリコーン系などが挙げられる。
【0039】
図2は、本発明に係る心電計測衣類1の他の態様の外観を示す図である。第1の計測電極もしくは計測電極取付部131から下方に10乃至20cmの位置に第2の計測電極132が配置されている。さらに、第2の計測電極もしくは計測電極取付部132から水平方向に左右対称に10乃至15cmの範囲に第3の計測電極又は計測電極取付部133、第4の計測電極又は計測電極取付部134が配置されている。そして、第3又は第4の電極取付位置から下方に、9±5cmの範囲に中性電極又は中性電極取付部16が配置されている。21は第5肋間想定高さで、この位置に第2、3、4の計測電極又は計測電極取付部があることが好ましい。第1の計測電極もしくは計測電極取付部131と第5肋間想定高さ21の距離Dと受診者の身長Hとの間には次の関係式がある。
【0040】
(数1)
(性別の情報がない場合)
D = [(H - 119.390) / 2.47] ± 5.0 [A]
(数2)
(男性の場合)
D = [(H - 126.388) / 2.23] ± 5.0 [B]
(数3)
(女性の場合)
D = [(H - 110.713) / 2.76] ± 5.0 [C]
【0041】
人体の胸骨柄と第5肋間想定高さの距離については、例えばYonguc, G. N., et al. 「Estimation of stature and sex from sternal lengths: an autopsy study.」 Anatomical science international 90.2 (2015): 89-96.に身長と胸骨長の高い相関が示されている。胸骨は胸骨柄・胸骨体・剣状突起から成るが、Dは胸骨柄と胸骨体を足した長さに相当し、Table2に男性は前記式[B]、女性は前記式[C]が示されている。本発明において、性別を考慮しない場合は式[B]と式[C]を平均化した前記式[A]を用いたところ、それでも十分な精度を示すことを見出した。
【0042】
図3は、本発明に係る心電計測のNASA誘導に関する図である。
【0043】
図4は、本発明に係る心電計測のCM5誘導に関する図である。
【0044】
図5は、本発明に係る心電計測のCC5誘導に関する図である。
【0045】
第5肋間想定高さ21の仮想線上に3つの計測電極132、133、134を配置し、第1の計測電極131を加えた4つの電極を用いたNASA誘導、CM5誘導、CC5誘導の3つの誘導による心電計測は、EASI誘導心電図と呼ばれ、最も詳細な12誘導心電図の代替手段として例えばDowerらによる「Deriving the 12-lead electrocardiogram from four (EASI) electrodes.」 Journal of electrocardiology 21 (1988): S182-S187.に示されているように古くから知られている方法である。EASI誘導心電図のメリットとして、例えばFinlayらの「Effects of electrode placement errors in the EASI-derived 12-lead electrocardiogram.」 Journal of electrocardiology 43.6 (2010): 606-611.に示されているように、理想的な計測電極の位置から上下左右に±5cmの誤差が許容されることが知られている。発明者らはアパレルのパターン技術により、この解剖学的なマーカー位置に対して±5cm以内の精度で心電の計測電極を衣類を着用するだけで配置できるようにするために、襟ぐりの左右の頂点11を基準にした第1の電極131(計測電極)の位置を決めることが有効であることを見出した。
【0046】
中性電極16は計測に影響を与えない位置であれば特に場所は限定されないが、シャツの場合は上半身に限られるため、手首や右側腹部が好ましく、半袖でも可能なことから右側腹部がさらに好ましく、第5肋間想定高さ21から下方に9±5cmの位置が特に好ましい。
【0047】
図6は、本発明に係る心電計測デバイス31のブロック図でをある。主制御部311を中心に計測やイベント入力等を行う。イベントとは24時間心電計測において、受診者が体調に異常を感じたとき、例えば動悸、息切れ、めまい、心臓の痛み等を含む。これにより、受診者の感じた異常とその時点の心電の関係を解析することができるようになる。電源312は主制御部だけでなく各部に電源を供給する。ADコンバータ313は1対の計測電極間の電位をデジタル変換するためのもので、電位を増幅するためにアンプを用いることが好ましい。心電計測のサンプリング周波数は100Hz以上あることが好ましく、250Hz以上あることがより好ましく、500Hz以上あることが特に好ましく、1000Hz以上あることが最も好ましい。
【0048】
最近では心電等の生体電位計測用のADコンバータも登場している。これらADコンバータの多くには家庭用電源や電波等のノイズを除去するためのグラウンドとして中性電極を繋ぐためのRLD(Right Leg Drive)と呼ばれる回路を有しているものもあり好ましい。RLDについては例えばWinterらの「Driven-right-leg circuit design.」 IEEE Transactions on Biomedical Engineering 1 (1983): 62-66.に示されている。中性電極についてはRLDでなくともデバイス内の回路上で生体電位のグラウンドを決めるように設計すれば特に限定はされない。
【0049】
近年、心電計測を用いてストレスなど自律神経系のモニタリングを行うためにR波の時間間隔の揺らぎを計測するHeart Rate Variability(HRV)という手法が用いられる。この手法においては時刻精度が重要であるが、市販のマイコンが内蔵しているクロックは環境温度の影響を受けやすいため、心電計測デバイス31にはより精度の高いリアルタイムクロック(RTC)314を用いることが好ましい。
【0050】
本発明に係る心電計測デバイス31には、前述のように計測電極が正しく装着されているかの情報を受診者に知らせるために情報出力部32があることが好ましい。情報出力部としては振動モータ321によるバイブレーション、LED322による光、スピーカ323による音を用いることがより好ましい。正しく装着されているかの判定方法としては特に限定はないが、例えば対を為す計測電極の一方もしくは両方が外れていると大きなノイズ信号のみとなることから、一定区間のS/N比を計測して判別する方法の他、フーリエ変換によって心拍の周期を検出する方法、心電のR波が強調されるようなローパスフィルタを用いて検出する方法などが好ましい。情報出力部32は、上記の方法により計測電極が正しく装着されていると判定した場合、又は、正しく装着されていないと判定した場合に、振動、光、及び音の少なくとも何れかを出力する。
【0051】
さらに本発明に係る心電計測デバイス31には、あらかじめ決めておいた自覚症状の記録や、行動記録のために情報入力部33があることが好ましい。情報入力部33としては、受診者が能動的に入力するイベントボタン331があることがより好ましく、受診者が意識せずとも慣性センサ332によって受診者の運動情報を自動で記録するのが特に好ましい。このように、心電計測デバイス31もしくは心電計測デバイス31と無線通信する端末が、あらかじめ定められたイベントを記録する手段を備えているようにしてもよい。
【0052】
さらに本発明に係る心電計測デバイス31には、心電だけでなくイベントや慣性センサの情報(データ)を記録するための記録部34(記録媒体)を有する。データ記録にはメモリ341を用いることが好ましい。あるいは無線モジュール342を経由して外部機器であるスマートフォンやPC、あるいは直接インターネットに送信することも可能になるので好ましい。心電計測で取得したデータが心電計測デバイス31から直接又は心電計測デバイスと無線通信する端末を経由してサーバに送信されて記録されるようにしてもよい。24時間心電図の場合、受診者は移動を伴うのでインターネット環境がなかったり、スマートフォンを携帯しなかったりする可能性があるので、心電計測デバイス31内のメモリ341に記録することがより好ましい。衣類1が加速度センサ及びジャイロセンサの少なくとも何れかを備えている場合、加速度センサ、ジャイロセンサのうち少なくとも1つにより取得される運動データを合わせて記録するようにしてもよい。
【0053】
本発明に係る心電計測に用いる電極(計測電極、中性電極)は、一般的なゲル電極の他、導電ゴムによるゴム電極や導電布による布電極を用いることができる。本発明の心電計測は医療用の高精度計測を目的としていることから、歩行のような体動の影響を受けにくい粘着性のあるゲル電極であることが好ましい。ゲル電極の場合はスナップボタンで取り付ける使い捨てのものが一般的であるため、衣類1にはゲル電極を取り付けるための電極取付部16、131、132、133、134が配置されるが、ゴム電極や布電極の場合は生地に縫製、貼合で配置する方法の他に、編成や織成で直接生地に組み込むことで電極を衣類1に配置することも可能である。
【0054】
さらに、本発明に係る心電検査方法に用いる衣類1は、第1の計測電極もしくは計測電極取付部131を原点の基準位置としているため、第5肋間想定高さ21との距離が大きく変化しないよう、第1の計測電極もしくは計測電極取付部から下方に向かって10cm、幅5cmの範囲に用いられる生地の4.9N荷重時の鉛直方向の伸び率が160%以下であることが好ましい。尚、使用する生地の伸び率は「JIS L 1096織物及び編物の生地試験方法」D法に基づき、幅50mm長さ300mmの試験片を用意し、100mm間隔(L0)に印を付け、4.9Nの荷重を加え、1分間保持後の印間の長さ(L1)を測定し、伸び率(%)={(L1-L0)/L0}×100として算出することができる。
【0055】
図7は、本発明に係る心電検査方法に用いる他の態様の衣類1の外観を示したものである。衣類1は、上からかぶるものだと計測電極もしくは計測電極取付部13、131、132、133、134の位置を調整しにくく、前をボタンで留めるYシャツ型やポロシャツ型だと計測電極もしくは計測電極取付部131がボタンと干渉するため、
図7のように衣類1の一部が、全部又は部分的に離脱する仕組みを備えていることが好ましい。前開きの部分を固定する方法としては特に限定はないが、ボタンあるいはベルクロあるいはファスナーが好ましく、簡便性と着心地の観点からファスナーがより好ましい。
【0056】
表1は本発明の心電計測シャツとして、XS・S・M・L・XLの5つのサイズを製作し、その際のDの実寸と受診者への推奨身長を性別ごとに示したものである。
【0057】
【0058】
表1の心電計測シャツに対し、身長147cmから190cmまでの受診者に対して、ユニセックスの場合は式[A]、男性の場合は式[B]、女性の場合は式[C]を計算してDの上限と下限を算出し、推奨サイズとの対応を検証した結果を表2に示す。数式から得られたDの範囲に対して対応するサイズは、受診者の身長を基にした推奨サイズ表から得られるサイズを含んでおり、実際に問題なく心電が計測できることを確認した。
【0059】
【0060】
表3は本発明の心電計測シャツとして、XS・S・M・L・XLの5つのサイズに加え、体の横幅の大きい受診者を想定したXLEを製作し、その際のDの実寸と受診者への推奨身長、推奨胸囲、推奨ウェストを性別ごとに示したものである。本発明において、表2に示したように同じ身長でも着られる服のサイズは複数選択できるが、さらに胸囲やウェストあるいは体重などを考慮して許容されるサイズの中で調整することが可能となる。
【0061】
【0062】
また、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1 心電計測衣類
2 受診者
11 襟ぐりの頂点
12 襟ぐりの頂点の中心
13 計測電極もしくは計測電極取付部位置
14 心電計測デバイスを固定するコネクタ部
15 伸縮性配線
16 中性電極もしくは中性電極取付部位置
21 第5肋間想定高さ
31 心電計測デバイス
32 情報出力部
33 情報入力部
34 記録部
131 第1の計測電極もしくは計測電極取付部位置
132 第2の計測電極もしくは計測電極取付部位置
133 第3の計測電極もしくは計測電極取付部位置
134 第4の計測電極もしくは計測電極取付部位置
311 主制御部
312 電源
313 ADコンバータ
314 リアルタイムクロック
321 振動モータ
322 LED
323 スピーカ
331 イベントボタン
332 慣性センサ
341 メモリ
342 無線モジュール
【手続補正書】
【提出日】2022-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測電極又は計測電極取付部と、心電を計測する心電計測デバイスが、衣類の任意の位置に固定又は着脱機構を介して配置された2乃至5誘導の心電計測用衣類において、
該衣類が首の周囲を囲う襟ぐりを有し、該襟ぐりの左右の頂点を直線で結んだ線分の中央点から真下に7.5乃至15cmの位置を中心に半径5cmの円内に第1の計測電極もしくは計測電極取付部が配置されており、
全ての該計測電極又は該計測電極取付部と該心電計測デバイスとが、絶縁層を有する伸縮性配線で接続されており、
該伸縮性配線の20%伸張時の電気抵抗率上昇が0乃至30%であって、導電部の周囲が絶縁性材料で絶縁されており、
前記伸縮性配線が伸縮性を備える芯材を含んでおり、少なくとも1つの繊維に導電材料を被覆した導電性繊維を、直接又は他の材料を介して、前記芯材の周囲に巻き付けて被覆した導電性被覆部と、該導電性被覆部の周囲を絶縁性材料により被覆した絶縁性被覆部を有し、前記伸縮性配線の長さをL1、前記伸縮性配線から前記絶縁性被覆部を除去した後の長さをL2としたとき、0.50<L2/L1<1.00であることを特徴とする心電計測用衣類。
【請求項2】
前記第1の計測電極もしくは計測電極取付部から真下に10乃至20cmの位置に配置された第2の計測電極もしくは計測電極取付部を有し、
前記第2の計測電極もしくは計測電極取付部を対称中心として水平方向に左右対称に、前記対称中心から10乃至15cmの範囲に配置された、第3の計測電極もしくは計測電極取付部、及び、第4の計測電極もしくは計測電極取付部を有し、
前記第3の計測電極もしくは計測電極取付部、又は、前記第4の計測電極もしくは計測電極取付部の位置から下方に9±5cmの範囲の高さで衣服の水平方向の任意の箇所に配置された中性電極又は中性電極取付部を備えた請求項1に記載の心電計測用衣類。
【請求項3】
前記誘導がNASA誘導、CM5誘導、CC5誘導の3誘導を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の心電計測用衣類。
【請求項4】
前記心電計測用衣類及び前記心電計測デバイスが正しく装着できているか否かを、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末から受診者に知らせることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の心電計測用衣類。
【請求項5】
前記正しく装着できているか否かを受診者に知らせる方法が、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末からの振動、光、音の少なくとも1つによって前記受診者に知らせることを特徴とする請求項4に記載の心電計測用衣類。
【請求項6】
前記心電計測用衣類において、前記心電計測で取得したデータが前記心電計測デバイスから直接又は前記心電計測デバイスと無線通信する端末を経由してサーバに送信されて記録されることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の心電計測用衣類。
【請求項7】
前記データが前記心電計測デバイス内の記録媒体に記録されることを特徴とする請求項6に記載の心電計測用衣類。
【請求項8】
前記心電計測用衣類において、前記心電計測デバイスもしくは前記心電計測デバイスと無線通信する端末が、あらかじめ定められたイベントを記録する手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の心電計測用衣類。
【請求項9】
前記心電計測用衣類において、加速度センサ、ジャイロセンサのうち少なくとも1つにより取得される運動データを合わせて記録することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の心電計測用衣類。
【請求項10】
前記第1の計測電極もしくは計測電極取付部から下方に向かって10cm、幅5cmの範囲に用いられる生地の4.9N荷重時の鉛直方向の伸び率が160%以下であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の心電計測用衣類。
【請求項11】
前記第1の計測電極もしくは計測電極取付部、前記第2の計測電極もしくは計測電極取付部、前記第3の計測電極もしくは計測電極取付部、及び前記第4の計測電極もしくは計測電極取付部が配置された部分を含む前記衣類の一部が、全部又は部分的に離脱する仕組みを備えた請求項2に記載の心電計測用衣類。