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特開2023-37543野球場及びソフトボール場で使用する土壌改良材及び混合土
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037543
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】野球場及びソフトボール場で使用する土壌改良材及び混合土
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/50 20060101AFI20230308BHJP
   A01G 24/27 20180101ALI20230308BHJP
【FI】
C09K17/50 P
A01G24/27
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021165091
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】521434584
【氏名又は名称】大友 光広
(72)【発明者】
【氏名】大友 光広
【テーマコード(参考)】
2B022
4H026
【Fターム(参考)】
2B022BA13
2B022BB01
4H026CA06
4H026CB03
4H026CB08
4H026CC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粘性・粘着性が高く、硬さ・強度があり、劣化を抑制する、野球場及びソフトボール場における改修及びメンテナンスに用いる混合土を提供する。
【解決手段】赤玉土製造時に副産する赤玉土の微塵又は鹿沼土製造時に副産する鹿沼土の微塵もしくはその両方に粘土鉱物を混合して得た混合土に、リグニンスルホン酸マグネシウムを主成分とするリグニンスルホン酸塩と、竹稈、竹枝、竹葉を粉砕して得た粉粒体からなる土壌改良材を添加した、マウンド・ブルペン・ダートサークル・1,2,3塁ベース周辺用混合土である。該「混合土」を用いて対象個所の表層を形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニンスルホン酸塩又は竹稈、竹枝、竹葉を粉砕して得た粉粒体もしくはその両方を含むことを特徴とする野球場及びソフトボール場における、マウンド・ブルペン・ダートサークル・1,2,3塁ベース周辺用土壌改良材。
【請求項2】
前記粉粒体の平均粒径D50が、5.0mm以下である、請求項1に記載の野球場、ソフトボール場のマウンド、ブルペン、ダートサークル、1,2,3塁ベース周辺用土壌改良材。
【請求項3】
請求項1、2のいずれか1項に記載の土壌改良材と、赤玉土製造時に副産する赤玉土の微塵又は鹿沼土製造時に副産する鹿沼土の微塵土もしくはその両方と、粘土鉱物とを混合してなることを特徴とする、野球場及びソフトボール場における、マウンド・ブルペン・ダートサークル・1,2,3塁ベース周辺用混合土。
【請求項4】
上記リグニンスルホン酸塩の含有量が1~10質量%である、請求項3に記載の野球場及びソフトボール場における、マウンド・ブルペン・ダートサークル・1,2,3塁ベース周辺用混合土。
【請求項5】
請求項1、2のいずれか1項に記載の土壌改良材の含有量が10~50質量%である、請求項3に記載の野球場及びソフトボール場における、マウンド・ブルペン・ダートサークル・1,2,3塁ベース周辺用混合土。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球場及びソフトボール場における、マウンド・ブルペン・ダートサークル・1,2,3塁ベース周辺(以下、「対象個所」ともいう。)の新設、改修及びメンテナンスに用いる混合土に関する。
【背景技術】
【0002】
対象個所の土は、投球動作や打撃動作等が行われる度に硬質なスパイク等によって外力を繰り返し受ける個所に用いられ、他の個所に用いられる土とは異なった土質が求められる。
従来、対象個所の土には、他の個所(内野)に用いられている土と同じ土、一般的に黒土と砂が任意の割合で混合された混合土(以下、従前の混合土、という。)が広く用いられてきた。
しかしながら、対象個所に従前の混合土を使用する場合、以下3つの課題がある。
(1)粘性・粘着性が不足している事。表層の土が水平方向を容易に移動する(投球動作では踏み出して着地した足がホームプレート方向へずれる)ため、特に投球動作時の着足が不安定となり、制球(コントロール)が悪化し、また股関節や肩肘への負担が増大し、故障に至る可能性がある。
(2)硬さ・強度が不足している事。表層の土が容易に削り掘られる(投球動作では踏み出して着地した足の位置が、少しずつ深くなる)ため、特に投球動作時の着足位置が不安定となり、制球が悪化し、また股関節や肩肘への負担が増大し、故障に至る可能性がある。
(3)劣化が加速度的に進行してしまう事。掘り起こされて移動する土は、大気や日光に触れる表面積と時間が多くなる。その結果、土に含まれる水分の蒸散が早くなり乾燥が促進される。その結果、風雨によって軽量のもしくは小粒径の構成物(粘土や有機物など)が散逸し、土の粘性・粘着性、硬さ・強度の劣化が加速度的に進行してしまう。
【0003】
上記3つの課題に対する対処として、対象個所の土を、固く締まる性質を有する天然の粘土鉱物(以下、「固締な粘土」、という。)に置換する方法が提案されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の固締な粘土への置換には以下のような、課題がある。
(1)新規導入時及び改修時の作業に関わる課題
作業に専門知識を要し、その知識を有しない場合は好適な設置が容易でない事。
具体的な作業は以下となる。
(イ)設置個所の勾配が、野球規則「野球競技場区画線(3)」投手のマウンドの区画線に則った角度になるよう、基盤土壌を調整する。
(ロ)対象個所の基盤土壌を、7.5cm~8.0cm掘り下げる。
(ハ)固締な粘土を敷く。
(ニ)固締な粘土が適度な水分になるよう加水し、水分が十分に沁み込むまで待つ。
(ホ)転圧し、固く突き固める。
(ヘ)対象個所の角度が上記野球規則に則っているように調整する。この時、固締な粘土で形成された表面を平に仕上げるため、「草かき」「レーキ」「タンパー」「木製ハンマー」などの道具を適時適切に使いこなす。
(ト)固締な粘土の表面を、基盤土壌の土などを用いて被覆する。
(2)メンテナンス作業に関わる課題
投球動作や打撃動作等が行われる度に硬質な歯のスパイクシューズ等によって外力を繰り返し受けると、固締な粘土によって固く締まった対象個所であっても、徐々に削り掘られて凹みが形成される。そのため、適宜原状回復のメンテナンス作業を要するが、そのメンテナンス作業にも一定の知識と経験を要する事。
したがって、作業員の交代のたびにトレーニングをする負担が発生する事。
該メンテナンス作業に要する時間が、従前のメンテナンス作業と比較して数倍長い事。
スパイク等によって削られた固締な粘土の片が乾燥し、カラカラの硬い粒となって対象個所に散らばり、メンテナンスの大きな負担となる事。
削られて乾燥した固締な粘土の片の再利用は、回収する時に混入する砂等の異物を取り除く手間がかかるため、実質的には難しい事。
状況に応じて対象個所の土の固さを調整するという製品設計がされていない事。(一例として、少年野球の監督者から「対処個所の土を少し柔らかくしてほしい」等の要望があるが、対応できない。)
具体的なメンテナンス作業は以下となる。
(イ)凹んだ個所の表面に付着する基盤土壌の土や砂、その他異物をブラシ又は粘土用カッター等で取り除く。
異物の取り残しが多い場合、密着不良が生じて追加した粘土が基盤土壌から剥離してしまいやすくなる。
(ロ)凹んだ個所の表面に適量の加水をする。水量が多すぎる又は少なすぎる場合、密着不良が生じて追加した粘土が基盤土壌から剥離してしまいやすくなる。
(ハ)必要量の固締な粘土を添加する。
(ニ)適量の加水をし、水が固締な粘土全体に十分沁み込むまで待つ。
(ホ)転圧し、固く突き固める。
(ヘ)対象個所の傾斜角度が上記野球規則に則っているよう調整する。
(ト)粘土表面を、基盤土壌の土などを用いて被覆する。
(3)保管時の課題
固締な粘土は水分を含んだ状態で提供されるため、乾燥しない場所及び乾燥しない方法(袋ごとプラスティックコンテナに入れる等)での保管管理が必要な事。
乾燥した場合、固締な粘土に質量当たり均一量の加水をした後に、固締な粘土全体に十分沁み込むまで放置しなくてはならない。袋に入ったまま加水することはできない。なぜなら、袋の中の乾燥した固締な粘土の上位部分のみに質量当たりの適量を超えた加水がされることになり、結果として上位部分が泥土化し、中位部分及び下位部分の乾燥した固締な粘土には水分が行き渡らない。それを避けるためには、すべての又は使用する分の乾燥した固締な粘土を袋から取り出し、薄く均一に広げ、均一に散水し、しばらく放置する作業が必要になる。
(4)プレーヤー目線からの課題
固締な粘土を固く突き固めて対象個所を形成することで硬さ・強度が上がる一方、粘性・粘着性が減じて着足が不安定になる土になる事。
硬さ・強度が高く、粘性・粘着性が低い場合、例えば投球動作において踏み出して着地した足が、対象表面をホームプレート方向へ上滑りする。そうなると投球動作時に踏み出した着足が安定せず、制球が悪化し、また股関節や肩肘への負担が増大する。(選手がプラスチック製の軟質な歯のスパイクシューズを使う少年野球の監督者から「対象個所を柔らか目の土質にしてほしい」と要望が出る理由である。)
【0005】
従来、園芸用土である赤玉土の製造時に副産する赤玉土の微塵(商品に出来ない直径1mm以下の粉粒体)は、一部が苗床用に利用されている外は、埋め戻し材料とされるか、もしくは産業廃棄物として廃棄されている。一説によると栃木県鹿沼地区赤玉土の埋蔵資源はあと15年~20年で枯渇すると計算されており、貴重な資源の有効活用が求められている。
【0006】
従来、園芸用土である鹿沼土の製造時に副産する鹿沼土の微塵(商品に出来ない直径1mm以下の粉粒体)は、ごく一部が吸湿効果を得る目的で壁土に混合されている以外に利用がなく、埋め戻し材料とされるか、もしくは産業廃棄物として廃棄されている。一説によると鹿沼土の埋蔵資源はあと40年~50年で枯渇すると計算されており、貴重な資源の有効活用が求められている。
【0007】
人の手が入らないまま放置される竹林の面積は直近の5年間で約3%(5,000ヘクタール)増えている。その結果、竹林は田畑を荒らす猪等の野生鳥獣の隠れ家となったり、地下茎を伸ばして隣接する農地の耕作を妨げたり、スギやヒノキ等の樹木の生育を阻害したりする等の問題を生じさせている。主な原因は、竹の利用が減り、資源としての価値が減じているためである。
従来、放置された竹の一部は竹製製品や農業又は園芸用の土壌改良材等として利用されているものの、放置されたまま毎年増殖する竹の全体量からすればわずかに留まり、新たな有効活用が求められている。
【0008】
森林面積約2500万ヘクタールで国土の67%が森林である日本は、森林資源に富む国である。リグニンは、セルロース、ヘミセルロースとともに植物細胞壁を構成する主要成分の一つであり、地域農林業が持続的に産み出す植物性資源の約20%~30%を占めている。
単離リグニンの中で工業的に扱われている工業リグニンは、様々な活用の研究及び実施がされているものの、その膨大な資源量に対する生産量は全体のわずか2%ほどであり、新たな有効活用が求められている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてされたものであり、その解決しようとする課題は以下である。
(1)新規導入時及び改修時の設置作業に関し、
いかにして新たな専門知識を要せず、誰もが容易に作業が可能とするか。
(2)メンテナンス作業に関し、
いかにして、必要とする知識と経験及びトレーニングの負担を少なくするか。
いかにして、該メンテナンス作業の所要時間を、従前のメンテナンス作業の所要時間と同程度とするか。
いかにして、削られて乾燥した片の発生が少なく、発生した場合もカラカラの硬い粒にならず、メンテナンスの負担にならないようにするか。
いかにして、対象個所の土の固さの調整を容易にするか。
いかにして、風雨によって散逸する軽量のもしくは小粒径の構成物(粘土や有機物など)を少なくするか。
(3)製品開封後の保管管理に関し、
いかにして、特別な保管管理を不要とするか。
いかにして、乾燥した場合に、新たな作業負荷を不要とするか。
(4)いかにして、粘性・粘着性が着足の安定化に好適で、かつ硬さ・強度が容易に削り掘られない程度の好適さとするか。
(5)いかにして、園芸用土である赤玉土の製造時に副産する赤玉土の微塵(商品に出来ない直径1mm以下の粉粒体)を有効活用するか。
(6)いかにして、園芸用土である鹿沼土の製造時に副産する鹿沼土の微塵(商品に出来ない直径1mm以下の粉粒体)を有効活用するか。
(7)いかにして、放置されたまま毎年増殖する竹林の竹を有効活用するか。
(8)いかにして、資源量が膨大なリグニンを有効利用するか。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が鋭意研究したところ、前述の課題の解決に以下が有効であることを見出した。赤玉土製造時に副産する赤玉土の微塵又は鹿沼土製造時に副産する鹿沼土の微塵もしくはその両方に粘土鉱物を混合して得た混合土に、リグニンスルホン酸塩と、竹稈、竹枝、竹葉を粉砕して得た粉粒体とを混合した改良材を添加する。その「混合土」を用いて対象個所の表層を形成する。
【0011】
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)リグニンスルホン酸塩又は竹稈、竹枝、竹葉を粉砕して得た粉粒体もしくはその両方を含むことを特徴とする対象個所用土壌改良材。
【0012】
(2)前記粉粒体の平均粒径D50が、5.0mm以下である前記(1)に記載の土壌改良材。
【0013】
(3)上記(1)~(2)のいずれか1項に記載の土壌改良材と、赤玉土製造時に副産する赤玉土の微塵又は鹿沼土製造時に副産する鹿沼土の微塵もしくはその両方と、粘土鉱物とを混合してなることを特徴とする対象個所用混合土。
【0014】
(4)上記リグニンスルホン酸塩の含有量が1~10質量%である、前記(3)に記載の混合土。
【0015】
(5)上記土壌改良材の含有量が10~50質量%である上記(3)に記載の混合土。
【発明の効果】
【0016】
本発明の改良材及び混合土を使用することで、
(1)新規導入時及び改修時の設置作業時に、専門知識を要せず、誰もが容易に作業が可能となる。
(2)メンテナンス作業時に、必要とする知識と経験は少なく、トレーニングする負担が少なくなる。また、該メンテナンス作業の所要時間は、従前のメンテナンス作業の所要時間と同程度で可能となる。また、削られて乾燥した片が減少し、カラカラの固い粒状になりにくくなり、メンテナンス負担が減る。また、対象個所の土の固さ調整が容易に可能となる。また、風雨による軽量のもしくは小粒径の構成物(粘土や有機物など)の散逸が少なくなり、粘性・粘着性及び硬さ・強度の劣化の進行が緩慢になる。
(3)本発明の改良材及び混合土は乾燥状態での提供が可能であり、その場合は製品開封後の保管管理に関し、特別な保管管理は必要なくなる。
(4)粘性・粘着性が着足の安定化に好適で、かつ硬さ・強度が容易に削り掘られない程度の好適を得られる。
(5)園芸用土である赤玉土の製造時に副産する赤玉土の微塵(直径1mm以下の粉粒体)を有効活用できる。
(6)園芸用土である鹿沼土の製造時に副産する鹿沼土の微塵(直径1mm以下の粉粒体)を有効活用できる。
(7)放置されたまま毎年増殖する竹林の竹を有効活用できる。
(8)資源量が膨大なリグニンを有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】竹の粉粒体の多孔質構造を示す電子顕微鏡図である。
図2】リグニンスルホン酸塩の構造式である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(対象個所用改良材)
本発明の対象個所用改良材は、リグニンスルホン酸塩と、竹稈、竹枝、竹葉を粉砕して得た粉粒体を含みて構成される。
【0019】
本発明において使用する該竹粉粒体の原材料となる竹を調達する方法の一例として、竹林の間伐竹を竹紛製造機で粉粒体にすることがあげられる。
本発明において竹の粉粒体を使用することにより、放置されたまま毎年増殖する竹林の竹を有効活用できるだけでなく、以下の特徴の発現に寄与する。
(イ)保水力の向上。
(ロ)粘性・粘着性及び硬さ・強度を好適に維持する期間の長期化。
なお、粉砕した後の粉粒体は乾燥処理を行うのが好ましいが、行わなくてもよい。
【0020】
改良材として用いる粉粒体の平均粒径D50は、5.0mm以下とすることが好ましい。それ以上では、強度が好適から外れて着足が上滑りしやすくなり、対象個所の土に混合させるものとして適切ではないからである。
粉粒体にかけるふるいの目開きは、2.0mm~4.0mmの範囲内とすることが好ましい。
【0021】
竹を粉砕して得た粉末・粉粒体は、従前より農地、ハウス、花壇などの土壌改良剤や、畜産飼料、ペットフードで使用されていた。
しかし、本発明は農業、園芸、畜産、ペットフードとは全く異なる技術分野である対象個所の建設の分野に、該粉粒体を適用しようという新規かつ独創的な着想に基づき完成されたものである。
【0022】
なお、上記の実施形態では竹稈、竹枝、竹葉を粉砕した粉粒体を例として説明したが、本発明は平均粒径D50が5.0mm以下であれば、藁の粉粒体や落ち綿を使用しても同様の効果を得ることができる。
【0023】
本発明において使用するリグニンスルホン酸塩は、リグニンスルホン酸マグネシウムを主成分とするものが好ましい。
本発明においてリグニンスルホン酸塩を使用することにより、資源量が膨大なリグニンを有効利用できるだけでなく、以下の特徴の発現に寄与する。
(イ)粘性・粘着性の好適化。
(ロ)硬さ・強度の好適化。
(ハ)削られた片の発生数が減少し、片は乾いた固い粒状になりにくくなる。
(ニ)軽量のもしくは小粒径の構成物(粘土や有機物など)が風雨によって散逸するのを妨げ、土の粘性・粘着性、硬さ・強度の劣化の進行を緩慢化する。
(ホ)粘土鉱物の含有量(質量%)を少なく出来、減じた分を赤玉土の微塵と鹿沼土の微塵に置換することが出来る。
【0024】
リグニンスルホン酸塩は、天然由来の粘結材、分散剤として様々な用途に活用されている。例えば、肥料、化成品、金属粉、鉱物、飛灰、等の造粒促進剤として、土壌改良剤として、掘削泥水調整剤として、コンクリートの減水剤としてなどである。
しかし、本発明は、リグニンスルホン酸塩の多様な特徴に着目し、全く異なる技術分野である対象個所の建設の分野に適用しようという、新規かつ独創的な着想に基づき完成されたものである。
【0025】
(対象個所用混合土)
本発明の対象個所用混合土は、上記改良材に、赤玉製造時に副産する赤玉土の微塵又は鹿沼土製造時に副産する鹿沼土の微塵もしくはその両方と粘土鉱物とを混合してなることを特徴とする。
【0026】
本発明において使用する粘土鉱物としては、対象個所の表層に一般的に含まれるもしくは用いられるものであればよい。例えば、モンモリロナイトやカオリナイトなどであり、単独でもしくは荒木田土と混合して用いることが出来る。
【0027】
本実施形態の対象個所用混合土において、粘土鉱物の含有量は10~60質量%とすることが好ましい。10質量%未満の場合、粘性・粘着性、硬さ・強度が好適化に至らずに不足し、60質量%超えの場合は粘性・粘着性、硬さ・強度が過剰となるからである。
【0028】
本実施形態の対象個所用混合土において、改良材の含有量は1~50質量%とすることが好ましい。1質量%未満の場合、粘性・粘着性、硬さ・強度が好適に至らず不足し、50質量%超えの場合は粘性・粘着性が好適に至らず、硬さ・強度が過剰となるからである。
【実施例0029】
〔例1:微塵に竹紛を添加した混合土と、固締の粘土との比較〕
鹿沼土の製造工場より副産する、赤玉土の微塵と鹿沼土の微塵(商品に出来ない廃棄予定の直径1mm以下の粉体)と、リサイクルセンターが生産する竹稈、竹枝、竹葉を粉砕して得た粉粒体を用意した。この粉粒体は目開き4.0mmのふるいにかけられたものである。竹粉粒体の製造上、若干量の4.0mm以上の粒体がふるいを通過するが、複数回の検証の結果、発明の効果への明らかな影響は確認できなかった。
これらを用い、下記[表1]に示す試験品1を作成し、社会人野球チームのブルペンに施工し、投球練習終了後、固締の粘土が施工されたマウンドで投球した経験のある選手に、粘性・粘着性の好適さ、硬さ・強度の好適さについてヒアリング調査をした。
加えて発明者が管理する公営球場のマウンドに施工し、[発明の効果][0016]の達成を確認した。
得られた結果を[ヒアリング1]と[発明の効果-確認1]に示す。
【表1】
【0030】
〔試験結果〕
試験品1で施工した対象面への選手の評価は、固締な粘土で施工した対象面と比較して、粘性・粘着性、硬さ・強度の好適さでほぼ同等という結果となった。(ヒアリング1及び発明の効果-確認1-(4)より。)
(ただし、従前の土と比較した場合は、粘性・粘着性、硬さ・強度の好適さで明らかに優れるという結果であった。)
試験品1で施工した対象面は、スパイク等によって削られた片がカラカラに乾いた固い粒状になって、プレーを妨げる可能性があることが分かった。(発明の効果-確認1-(2)-2より。)
【0031】
〔例2:試験品1に粘土鉱物を添加し、固締の粘土と比較〕
試験品1と、カオリナイト鉱物を主成分とする粘土鉱物の粉末を用意した。
これらを用い、下記[表2]に示す試験品2を作成し、同じ社会人野球チームのブルペンに施工し、投球練習終了後の選手に粘性・粘着性、硬さ・強度の好適さについてヒアリング調査をした。
加えて発明者が管理する公営球場のマウンドに施工し、[発明の効果][0016]の達成を確認した。
得られた結果を[ヒアリング2]と[発明の効果-確認2]に示す。
【表2】
【0032】
〔試験結果〕
試験品2で施工した対象面は、固締な粘土で施工した対象面と比較して、粘性・粘着性、硬さ・強度で同等もしくはそれ以上の好適さという評価を選手から得た。(ヒアリング2より。)
発明者の検証では、粘性・粘着性は固締な粘土より優れ、固さ・強度で劣る評価となったが、これは過度な固さ・強度が好適に移行したのであって、望ましい結果と言える。(発明の効果-確認2-(4)より。)
試験品2で施工した対象面では、スパイク等によって削られた片が試験品1で発生した数よりも多く、またよりカラカラに乾いた固い粒状になって、メンテナンスの負担となった。(発明の効果-確認2-(2)-2より。)
試験品2で施工した対象面では、従前の土で施工した対象面と比較して、風雨による土の粘性・粘着性、硬さ・強度の劣化の進行が同等だと分かった。(発明の効果-確認2-(2)-4より。)
【0033】
〔例3:試験品2にリグニンを添加し、固締の粘土と比較)
試験品2とリグニンスルホン酸マグネシウムを主成分とするリグニンスルホン酸塩の粉末を用意した。
これらを用い、同じ社会人野球チームのブルペンに施工し、投球練習終了後の選手に粘性・粘着性、硬さ・強度の好適さについてヒアリング調査をした。
加えて発明者が管理する公営球場のマウンドに施工し、[発明の効果][0016]の達成を確認した。
得られた結果を[ヒアリング3]と[発明の効果-確認3]に示す。
【表3】
【0034】
〔試験結果〕
試験品3で施工した対象面は、固締な粘土で施工した対象面と比較して、粘性・粘着性、硬さ・強度の好適さで同等以上という結果を得た。(ヒアリング3より)
発明者の検証では、粘性・粘着性は固締な粘土より優れ、固さ・強度で劣る評価となったが、これは過度な固さ・強度が好適に移行したのであって、望ましい結果と言える。(発明の効果-確認3-(4)より。)
試験品3で施工した対象面は、固締な粘土や試験品2で施工した対象面と比較して、スパイク等によって削られた片の発生数が明らかに少なく、発生した粒はわずかに湿気を持ち、踏むと容易に崩壊して粉末に戻ることから、メンテナンスの負担にならないことが分かった。(発明の効果-確認2-(2)-2より。)
試験品3で施工した対象面は、従前の土で施工した対象面と比較して、風雨による土
の粘性・粘着性、硬さ・強度の劣化の進行が緩慢なことが分かった。(発明の効果-確認3-(2)-4より。)
試験品3で施工した対象面は、発明によって解決しようとする課題[0008]の全てを解決できることを発見した。
【0035】
〔例4:粘土鉱物の含有量とリグニンスルホン酸塩の関係性を検証〕
試験品3に含有する粘土鉱物の質量%を約半分(38.8質量%→20質量%)に減じた試験品4aと、同じく→15質量%に減じた試験品4bを作成し、粘性・粘着性、硬さ・強度について比較検証をした。得られた結果を[検証結果1]に示す。
加えて発明者が管理する公営球場のマウンドに施工し、[発明の効果][0016]の達成を確認した。
得られた結果を[発明の効果-確認4]に示す。
【表4】
【0036】
〔試験結果〕
試験品4aで施工した対象面は、試験品3で施工した対象面と比較して、粘性・粘着性、硬さ・強度の好適さで同程度という結果を得た。(検証結果3より)
発明者の検証では、粘性・粘着性、固さ・強度で試験品3と同等の評価となった。特筆すべきは、粒の発生数が減少し、発生した粒はわずかに湿気を持ち、踏むと容易に崩壊して粉末になったことである。(発明の効果-確認3-(2)-2及び4-(2)-2より。)この結果は、リグニンの特徴である吸湿性が寄与しているものと推測できる。
試験品4aで施工した対象面の風雨による土の粘性・粘着性、硬さ・強度の劣化の進行は、試験品3と比較して同等と分かった(発明の効果-確認3-(2)-4及び4-(2)-4より。)。これも、リグニンの特徴である吸湿性が寄与しているものと推測できる。
本発明に関わる試験により、粘土鉱物で対象個所を締め固める際の大きな課題である「スパイク等によって削られた片が発生し、乾いてカラカラの硬い粒状になって対象個所に広がる。」「劣化の進行が速い」の解決に、リグニンの添加が非常に有効であることを発見した。
試験品4aで施工した対象面は、発明によって解決しようとする課題[0008]の全てを試験品3よりも好適に解決できることを発見した。
【0037】
〔例5:竹紛の寄与内容を検証〕
鹿沼土の製造工場より副産する赤玉土の微塵及び鹿沼土の微塵(直径1mm以下の粉体)と、リサイクルセンターが生産する竹稈、竹枝、竹葉を粉砕して得た粉粒体を用意した。この粉粒体は目開き4.0mmのふるいにかけられたものである。
これらを用い、下記[表5]に示す試験品5a及び5bを作成し、保水力について比較検証をした。
【表5】
【0038】
(保水力検証)
土を親指と人差し指でこすり合わせ、直径2-3mm程度の棒状になって崩れないようになるまで試験品5a及び試験品5bに加水した。こうして現場での使用に好適な状態に整え、その時の試験品5a及び試験品5bそれぞれの含水率(含水の重量÷全体重量)を計測した。
含水率の計測は、加水後の試験品5a及び試験品5bをそれぞれ30mL容量の円筒形容器を使って固抜きしたものを作成した上で(以下、それぞれ計測用試料5a及び計測用試料5b、という。)、両計測用試料の重量変化を経時的に計測するという方法で行った。含水率がより高い絶対値で、より長時間維持される場合、その土は好適状態の範囲により長く留まることが出来るため、より好適な土と判断できる。
得られた結果を[検証結果2]に示す。
【0039】
[検証結果2]から明らかなように試験品5bは計測用試料5aと比較して、計測開始時から84時間経過後まで一貫してより高い含水率を維持しつつ、さらにその差は時間の経過とともに広がることが分かった。
以上より、竹紛は土の保水力を向上させ、使用に好適な状態をより長く維持することに寄与することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、野球場及びソフトボール場における、マウンド・ブルペン・ダートサークル・1,2,3塁ベース周辺の新設、改修及びメンテナンスの際に使用できる。
図1
図2