(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037581
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20230308BHJP
H01H 85/10 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
H01H37/76 G
H01H85/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122938
(22)【出願日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2021144287
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100141999
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 敬一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】和田 豊
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502BB07
5G502BB09
5G502BC05
(57)【要約】
【課題】過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子を提供する。
【解決手段】保護素子は、ヒューズエレメントと、ヒューズエレメントを収容する絶縁ケース10と、第1端子91と、第2端子92とを有し、さらに、ヒューズエレメントに近接若しくは接触させた状態で配置された第1絶縁部材及び第2絶縁部材と、ヒューズエレメントを分断する遮蔽部材20と、遮蔽部材20を押圧する押圧手段30と、遮蔽部材20の移動を抑える係止部材と、係止部材を加熱し軟化させる発熱体80A、80Bと、発熱体80A、80Bに電流を通電する給電部材90a、90bとを有し、絶縁ケース10はさらに、第1絶縁部材と、第2絶縁部材と、遮蔽部材20と、押圧手段30と、係止部材と、発熱体80A、80Bと、給電部材90a、90bの一部とを収容し、ヒューズエレメントは、第1端部と第2端部の間に電流経路を遮断させるための遮断部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントを収容する絶縁ケースと、第1端子と、第2端子とを有し、
さらに、前記ヒューズエレメントに近接若しくは接触させた状態で配置され、第1開口部若しくは第1分離部が形成された第1絶縁部材、及び第2開口部若しくは第2分離部が形成された第2絶縁部材と、
前記ヒューズエレメントを分断するように、前記第1絶縁部材の前記第1開口部若しくは前記第1分離部と、前記第2絶縁部材の前記第2開口部若しくは前記第2分離部とを、前記第1開口部若しくは前記第1分離部に挿入可能な方向に移動可能な遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を前記遮蔽部材の移動可能な方向に押圧する押圧手段と、
前記遮蔽部材の移動を抑える係止部材と、
前記係止部材若しくは前記係止部材を固定する固定部材を加熱し軟化させる発熱体と、
前記発熱体に電流を通電する給電部材と、を有し、
前記ヒューズエレメントは、互いに対向する第1端部と第2端部を有し、前記第1端子は、一方の端部が前記第1端部と接続し他方の端部が前記絶縁ケースから外部に露出し、前記第2端子は、一方の端部が前記第2端部と接続し他方の端部が前記絶縁ケースから外部に露出しており、
前記絶縁ケースはさらに、前記第1絶縁部材と、前記第2絶縁部材と、前記遮蔽部材と、前記押圧手段と、前記係止部材と、前記発熱体と、前記給電部材の一部とを収容し、
前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部の間に電流経路を遮断させるための遮断部を有する、保護素子。
【請求項2】
前記発熱体が発熱し、前記係止部材若しくは前記固定部材が軟化することによって、前記押圧手段の応力により前記遮蔽部材が前記係止部材を切断若しくは前記固定部材を離間し、
さらに前記遮蔽部材が前記第2絶縁部材の前記第2開口部若しくは前記第2分離部と、前記第1絶縁部材の前記第1開口部若しくは前記第1分離部とを移動して前記ヒューズエレメントの前記遮断部を切断することによって、前記ヒューズエレメントの通電を遮断する、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記ヒューズエレメントの前記遮断部を切断し、前記ヒューズエレメントを前記ヒューズエレメントの通電方向に遮蔽する、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記押圧手段はバネである、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項5】
前記第1絶縁部材、前記第2絶縁部材、前記遮蔽部材及び前記絶縁ケースのうち少なくとも一つは、耐トラッキング指標CTIが500V以上の材料で形成されている、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項6】
前記第1絶縁部材、前記第2絶縁部材、前記遮蔽部材及び前記絶縁ケースのうち少なくとも一つは、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂からなる群より選ばれる一種の樹脂材料で形成されている、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項7】
前記ヒューズエレメントは、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を少なくとも一部に有し、前記低融点金属層は錫を含み、前記高融点金属層は銀もしくは銅を含む、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項8】
前記ヒューズエレメントは、前記高融点金属層を2層以上有し、前記低融点金属層を1層以上有し、前記低融点金属層が前記高融点金属層の間に配置された積層体を少なくとも一部に有する、請求項7に記載の保護素子。
【請求項9】
前記ヒューズエレメントは、銀もしくは銅を含む単層体を少なくとも一部に有する、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項10】
前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部の間に溶断部を有し、前記第1端部および前記第2端部の前記第1端部から前記第2端部に向かう通電方向の断面積より、前記溶断部の前記通電方向の断面積の方が小さい、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項11】
前記係止部材の一部が、前記ヒューズエレメントと近接若しくは接触している、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項12】
前記ヒューズエレメントは、前記遮断部に低融点金属層又は前記低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を有し、かつ、前記第1端部及び前記第2端部の両方に前記高融点金属層を有し、前記低融点金属層は錫を含み、前記高融点金属層は銀もしくは銅を含む、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項13】
前記ヒューズエレメントにおいて少なくとも前記遮断部の厚みは、前記遮断部以外の厚みよりも薄い、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項14】
前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第1絶縁部材は、前記第1保持部材と一体化されている、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項15】
前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第2絶縁部材は、前記第2保持部材と一体化されている、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項16】
前記ヒューズエレメントと前記第1絶縁部材を複数有し、
複数の前記ヒューズエレメントは、前記第1絶縁部材又は前記第2絶縁部材の間に近接若しくは接触させた状態で配置されている、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項17】
前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第1絶縁部材の一つは、前記第1保持部材と一体化されている、請求項16に記載の保護素子。
【請求項18】
ヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントを収容する絶縁ケースと、第1端子と、第2端子とを有し、
さらに、前記ヒューズエレメントに近接若しくは接触させた状態で配置され、第1開口部若しくは第1分離部が形成された第1絶縁部材と、
前記ヒューズエレメントを分断するように、前記第1絶縁部材の前記第1開口部若しくは前記第1分離部を、前記第1開口部若しくは前記第1分離部に挿入可能な方向に移動可能な遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を前記遮蔽部材の移動可能な方向に押圧する押圧手段と、
前記遮蔽部材の移動を抑える係止部材と、を有し、
前記ヒューズエレメントは、互いに対向する第1端部と第2端部を有し、前記第1端子は、一方の端部が前記第1端部と接続し他方の端部が前記絶縁ケースから外部に露出し、前記第2端子は、一方の端部が前記第2端部と接続し他方の端部が前記絶縁ケースから外部に露出しており、
前記絶縁ケースはさらに、前記第1絶縁部材と、前記遮蔽部材と、前記押圧手段と、前記係止部材とを収容し、
前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部の間に電流経路を遮断させるための遮断部を有する、保護素子。
【請求項19】
前記係止部材を固定する固定部材を有し、
前記遮蔽部材は、前記ヒューズエレメントの前記遮断部を切断若しくは前記固定部材を離間し、前記ヒューズエレメントを前記ヒューズエレメントの通電方向に遮蔽する、請求項18に記載の保護素子。
【請求項20】
前記押圧手段はバネである、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項21】
前記第1絶縁部材、前記遮蔽部材及び前記絶縁ケースのうち少なくとも一つは、耐トラッキング指標CTIが500V以上の材料で形成されている、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項22】
前記第1絶縁部材、前記遮蔽部材及び前記絶縁ケースのうち少なくとも一つは、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂からなる群より選ばれる一種の樹脂材料で形成されている、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項23】
前記ヒューズエレメントは、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を少なくとも一部に有し、前記低融点金属層は錫を含み、前記高融点金属層は銀もしくは銅を含む、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項24】
前記ヒューズエレメントは、前記高融点金属層を2層以上有し、前記低融点金属層を1層以上有し、前記低融点金属層が前記高融点金属層の間に配置された積層体を少なくとも一部に有する、請求項23に記載の保護素子。
【請求項25】
前記ヒューズエレメントは、銀もしくは銅を含む単層体を少なくとも一部に有する、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項26】
前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部の間に溶断部を有し、前記第1端部および前記第2端部の前記第1端部から前記第2端部に向かう通電方向の断面積より、前記溶断部の前記通電方向の断面積の方が小さい、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項27】
前記係止部材の一部が、前記ヒューズエレメントと近接若しくは接触している、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項28】
前記ヒューズエレメントの外側に近接若しくは接触させた状態で配置された前記第1絶縁部材には、前記係止部材を保持する係止部材保持部を有する、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項29】
前記ヒューズエレメントは、前記遮断部に低融点金属層又は前記低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を有し、かつ、前記第1端部及び前記第2端部の両方に前記高融点金属層を有し、前記低融点金属層は錫を含み、前記高融点金属層は銀もしくは銅を含む、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項30】
前記ヒューズエレメントにおいて少なくとも前記遮断部の厚みは、前記遮断部以外の厚みよりも薄い、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項31】
前記係止部材若しくは前記係止部材を固定する固定部材を加熱し軟化させる発熱体と、
前記発熱体に電流を通電する給電部材と、を有し、
前記発熱体が発熱し、前記係止部材若しくは前記固定部材が軟化することによって、前記押圧手段の応力により前記遮蔽部材が前記係止部材を切断若しくは前記固定部材を離間し、
さらに前記遮蔽部材が前記第1絶縁部材の前記第1開口部若しくは前記第1分離部を移動して前記ヒューズエレメントの前記遮断部を切断することによって、前記ヒューズエレメントの通電を遮断する、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項32】
前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第1絶縁部材は、前記第1保持部材と一体化されている、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項33】
前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
第2絶縁部材は、前記第2保持部材と一体化されている、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項34】
前記ヒューズエレメントと前記第1絶縁部材を複数有し、
複数の前記ヒューズエレメントは、前記第1絶縁部材又は第2絶縁部材の間に近接若しくは接触させた状態で配置されている、請求項18または請求項19に記載の保護素子。
【請求項35】
前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第1絶縁部材の一つは、前記第1保持部材と一体化されている、請求項34に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流経路に定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントがある。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、家電製品から電気自動車など幅広い分野で使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、主に自動車用電気回路等に用いられるヒューズエレメントとして、両端部に位置する端子部の間に連結された2つのエレメントと、当該エレメントの略中央部に設けられた溶断部と、を備えるヒューズエレメントが記載されている。特許文献1には、ケーシングの内部に2枚組のヒューズエレメントが格納され、ヒューズエレメントとケーシングとの間に、消弧材を封入したヒューズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高電圧かつ大電流の電流経路に設置される保護素子においては、ヒューズエレメントが溶断されると、アーク放電が発生しやすい。大規模なアーク放電が発生すると、ヒューズエレメントが収納されている絶縁ケースが破壊されてしまう場合がある。このため、ヒューズエレメントの材料として、銅などの低抵抗でかつ高融点の金属を用いてアーク放電の発生を抑えることが行われている。また、絶縁ケースの材料として、セラミックスなどの堅牢でかつ高耐熱性の材料を用いること、さらに絶縁ケースのサイズを大きくすることが行われている。
また、これまでの高電圧大電流(100V/100A以上)の電流ヒューズは過電流遮断のみであり、遮断信号による遮断機能を両立するものはなかった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ヒューズエレメントの溶断時に大規模なアーク放電が発生しにくく、絶縁ケースのサイズを小型軽量化することが可能であると共に、高電圧大電流対応の過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
[1]ヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントを収容する絶縁ケースと、第1端子と、第2端子とを有し、
さらに、前記ヒューズエレメントに近接若しくは接触させた状態で配置され、第1開口部若しくは第1分離部が形成された第1絶縁部材、及び第2開口部若しくは第2分離部が形成された第2絶縁部材と、
前記ヒューズエレメントを分断するように、前記第1絶縁部材の前記第1開口部若しくは前記第1分離部と、前記第2絶縁部材の前記第2開口部若しくは前記第2分離部とを、前記第1開口部若しくは前記第1分離部に挿入可能な方向に移動可能な遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を前記遮蔽部材の移動可能な方向に押圧する押圧手段と、
前記遮蔽部材の移動を抑える係止部材と、
前記係止部材若しくは前記係止部材を固定する固定部材を加熱し軟化させる発熱体と、
前記発熱体に電流を通電する給電部材と、を有し、
前記ヒューズエレメントは、互いに対向する第1端部と第2端部を有し、前記第1端子は、一方の端部が前記第1端部と接続し他方の端部が前記絶縁ケースから外部に露出し、前記第2端子は、一方の端部が前記第2端部と接続し他方の端部が前記絶縁ケースから外部に露出しており、
前記絶縁ケースはさらに、前記第1絶縁部材と、前記第2絶縁部材と、前記遮蔽部材と、前記押圧手段と、前記係止部材と、前記発熱体と、前記給電部材の一部とを収容し、
前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部の間に電流経路を遮断させるための遮断部を有する、保護素子。
【0009】
[2]前記発熱体が発熱し、前記係止部材若しくは前記固定部材が軟化することによって、前記押圧手段の応力により前記遮蔽部材が前記係止部材を切断若しくは前記固定部材を離間し、
さらに前記遮蔽部材が前記第2絶縁部材の前記第2開口部若しくは前記第2分離部と、前記第1絶縁部材の前記第1開口部若しくは前記第1分離部とを移動して前記ヒューズエレメントの前記遮断部を切断することによって、前記ヒューズエレメントの通電を遮断する、[1]に記載の保護素子。
【0010】
[3]前記遮蔽部材は、前記ヒューズエレメントの前記遮断部を切断し、前記ヒューズエレメントを前記ヒューズエレメントの通電方向に遮蔽する、[1]または[2]に記載の保護素子。
【0011】
[4]前記押圧手段はバネである、[1]から[3]のいずれかに記載の保護素子。
【0012】
[5]前記第1絶縁部材、前記第2絶縁部材、前記遮蔽部材及び前記絶縁ケースのうち少なくとも一つは、耐トラッキング指標CTIが500V以上の材料で形成されている、[1]から[4]のいずれかに記載の保護素子。
【0013】
[6]前記第1絶縁部材、前記第2絶縁部材、前記遮蔽部材及び前記絶縁ケースのうち少なくとも一つは、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂からなる群より選ばれる一種の樹脂材料で形成されている、[1]から[5]のいずれかに記載の保護素子。
【0014】
[7]前記ヒューズエレメントは、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を少なくとも一部に有し、前記低融点金属層は錫を含み、前記高融点金属層は銀もしくは銅を含む、[1]から[6]のいずれかに記載の保護素子。
【0015】
[8]前記ヒューズエレメントは、前記高融点金属層を2層以上有し、前記低融点金属層を1層以上有し、前記低融点金属層が前記高融点金属層の間に配置された積層体を少なくとも一部に有する、[7]に記載の保護素子。
【0016】
[9]前記ヒューズエレメントは、銀もしくは銅を含む単層体を少なくとも一部に有する、[1]から[8]のいずれかに記載の保護素子。
【0017】
[10]前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部の間に溶断部を有し、前記第1端部および前記第2端部の前記第1端部から前記第2端部に向かう通電方向の断面積より、前記溶断部の前記通電方向の断面積の方が小さい、[1]から[9]のいずれかに記載の保護素子。
【0018】
[11]前記係止部材の一部が、前記ヒューズエレメントと近接若しくは接触している、[1]から[10]のいずれかに記載の保護素子。
【0019】
[12]前記ヒューズエレメントは、前記遮断部に低融点金属層又は前記低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を有し、かつ、前記第1端部及び前記第2端部の両方に前記高融点金属層を有し、前記低融点金属層は錫を含み、前記高融点金属層は銀もしくは銅を含む、[1]から[11]のいずれかに記載の保護素子。
【0020】
[13]前記ヒューズエレメントにおいて少なくとも前記遮断部の厚みは、前記遮断部以外の厚みよりも薄い、[1]から[12]のいずれかに記載の保護素子。
【0021】
[14]前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第1絶縁部材は、前記第1保持部材と一体化されている、[1]から[13]のいずれかに記載の保護素子。
【0022】
[15]前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第2絶縁部材は、前記第2保持部材と一体化されている、[1]から[14]のいずれかに記載の保護素子。
【0023】
[16]前記ヒューズエレメントと前記第1絶縁部材を複数有し、
複数の前記ヒューズエレメントは、前記第1絶縁部材又は前記第2絶縁部材の間に近接若しくは接触させた状態で配置されている、[1]から[15]のいずれかに記載の保護素子。
【0024】
[17]前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第1絶縁部材の一つは、前記第1保持部材と一体化されている、[16]に記載の保護素子。
【0025】
[18]ヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントを収容する絶縁ケースと、第1端子と、第2端子とを有し、
さらに、前記ヒューズエレメントに近接若しくは接触させた状態で配置され、第1開口部若しくは第1分離部が形成された第1絶縁部材と、
前記ヒューズエレメントを分断するように、前記第1絶縁部材の前記第1開口部若しくは前記第1分離部を、前記第1開口部若しくは前記第1分離部に挿入可能な方向に移動可能な遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を前記遮蔽部材の移動可能な方向に押圧する押圧手段と、
前記遮蔽部材の移動を抑える係止部材と、を有し、
前記ヒューズエレメントは、互いに対向する第1端部と第2端部を有し、前記第1端子は、一方の端部が前記第1端部と接続し他方の端部が前記絶縁ケースから外部に露出し、前記第2端子は、一方の端部が前記第2端部と接続し他方の端部が前記絶縁ケースから外部に露出しており、
前記絶縁ケースはさらに、前記第1絶縁部材と、前記遮蔽部材と、前記押圧手段と、前記係止部材とを収容し、
前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部の間に電流経路を遮断させるための遮断部を有する、保護素子。
【0026】
[19]前記係止部材を固定する固定部材を有し、
前記遮蔽部材は、前記ヒューズエレメントの前記遮断部を切断若しくは前記固定部材を離間し、前記ヒューズエレメントを前記ヒューズエレメントの通電方向に遮蔽する、[18]に記載の保護素子。
【0027】
[20]前記押圧手段はバネである、[18]または[19]に記載の保護素子。
【0028】
[21]前記第1絶縁部材、前記遮蔽部材及び前記絶縁ケースのうち少なくとも一つは、耐トラッキング指標CTIが500V以上の材料で形成されている、[18]から[20]のいずれかに記載の保護素子。
【0029】
[22]前記第1絶縁部材、前記遮蔽部材及び前記絶縁ケースのうち少なくとも一つは、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂からなる群より選ばれる一種の樹脂材料で形成されている、[18]から[21]のいずれかに記載の保護素子。
【0030】
[23]前記ヒューズエレメントは、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を少なくとも一部に有し、前記低融点金属層は錫を含み、前記高融点金属層は銀もしくは銅を含む、[18]から[22]のいずれかに記載の保護素子。
【0031】
[24]前記ヒューズエレメントは、前記高融点金属層を2層以上有し、前記低融点金属層を1層以上有し、前記低融点金属層が前記高融点金属層の間に配置された積層体を少なくとも一部に有する、[23]に記載の保護素子。
【0032】
[25]前記ヒューズエレメントは、銀もしくは銅を含む単層体を少なくとも一部に有する、[18]から[24]のいずれかに記載の保護素子。
【0033】
[26]前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部の間に溶断部を有し、前記第1端部および前記第2端部の前記第1端部から前記第2端部に向かう通電方向の断面積より、前記溶断部の前記通電方向の断面積の方が小さい、[18]から[25]のいずれかに記載の保護素子。
【0034】
[27]前記係止部材の一部が、前記ヒューズエレメントと近接若しくは接触している、[18]から[26]のいずれかに記載の保護素子。
【0035】
[28]前記ヒューズエレメントの外側に近接若しくは接触させた状態で配置された前記第1絶縁部材には、前記係止部材を保持する係止部材保持部を有する、[18]から[27]のいずれかに記載の保護素子。
【0036】
[29]前記ヒューズエレメントは、前記遮断部に低融点金属層又は前記低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を有し、かつ、前記第1端部及び前記第2端部の両方に前記高融点金属層を有し、前記低融点金属層は錫を含み、前記高融点金属層は銀もしくは銅を含む、[18]から[28]のいずれかに記載の保護素子。
【0037】
[30]前記ヒューズエレメントにおいて少なくとも前記遮断部の厚みは、前記遮断部以外の厚みよりも薄い、[18]から[29]のいずれかに記載の保護素子。
【0038】
[31]前記係止部材若しくは前記係止部材を固定する固定部材を加熱し軟化させる発熱体と、
前記発熱体に電流を通電する給電部材と、を有し、
前記発熱体が発熱し、前記係止部材若しくは前記固定部材が軟化することによって、前記押圧手段の応力により前記遮蔽部材が前記係止部材を切断若しくは前記固定部材を離間し、
さらに前記遮蔽部材が前記第1絶縁部材の前記第1開口部若しくは前記第1分離部を移動して前記ヒューズエレメントの前記遮断部を切断することによって、前記ヒューズエレメントの通電を遮断する、[18]から[30]のいずれかに記載の保護素子。
【0039】
[32]前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第1絶縁部材は、前記第1保持部材と一体化されている、[18]から[31]のいずれかに記載の保護素子。
【0040】
[33]前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
第2絶縁部材は、前記第2保持部材と一体化されている、[18]から[32]のいずれかに記載の保護素子。
【0041】
[34]前記ヒューズエレメントと前記第1絶縁部材を複数有し、
複数の前記ヒューズエレメントは、前記第1絶縁部材又は第2絶縁部材の間に近接若しくは接触させた状態で配置されている、[18]から[33]のいずれかに記載の保護素子。
【0042】
[35]前記絶縁ケースは、第1保持部材と第2保持部材を含み、
前記第1絶縁部材の一つは、前記第1保持部材と一体化されている、[34]に記載の保護素子。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、ヒューズエレメントの溶断時に大規模なアーク放電が発生しにくく、絶縁ケースのサイズを小型軽量化することが可能であると共に、高電圧大電流対応の過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る保護素子の斜視図である。
【
図2】
図1に示した保護素子の内部が見えるように一部を除去した斜視図である。
【
図4】(a)は、第1端子及び第2端子とヒューズエレメント積層体を構成する可溶性導体シート1個とを模式的に示す平面図であり、(b)は、ヒューズエレメント積層体、第2絶縁部材、第1端子、及び、第2端子を模式的に示す平面図であり、(c)は、(b)で示した平面図のX-X’線に沿った断面図である。
【
図5】(a)は、
図1のV-V’線に沿った断面図であり、(b)は、係止部材近傍の拡大図である。
【
図6】遮蔽部材がヒューズエレメントを切断して下がりきった状態の保護素子の断面図である。
【
図7】(a)は係止部材の変形例を有する保護素子の断面図であり、(b)は、係止部材近傍の拡大図である。
【
図8】発熱体の構造の一例を示すものであり、(a)は上面平面図であり、(b)は印刷前の絶縁基板の上面平面図、(C)は抵抗層印刷後の上面平面図、(d)は絶縁層印刷後の上面平面図、(e)は電極層印刷後の上面平面図、(f)は下面平面図である。
【
図9】発熱体へ給電する給電部材の引き出し方法を説明するための保護素子の斜視図であり、(a)は2個の発熱体を直列につなぐ場合であり、(b)は2個の発熱体を並列につなぐ場合である。
【
図10】第1実施形態の変形例の模式図であり、(a)は保持部材10Bの変形例である保持部材10BBの斜視図であり、(b)は保持部材10Bの変形例である保持部材10BBと、第1絶縁部材60A及び第2絶縁部材60Bの変形例である第1絶縁部材61A及び第2絶縁部材61Bの斜視図である。
【
図11】(a)は変形例の第2絶縁部材61Bの斜視図であり、(b)は第1絶縁部材61Aの斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係る保護素子の内部が見えるように一部を除去して模式的に示した斜視図であり、(b)は遮蔽部材の下側斜視図である。
【
図13】第2実施形態に係る保護素子の、
図5(a)に対応する断面図である。
【
図14】遮蔽部材がヒューズエレメントを分断して下がりきった状態の保護素子の断面図である。
【
図15】ヒューズエレメント積層体、第1端子及び第2端子を第1保持部材に設置された状態を模式的に示した斜視図である。
【
図16】第3実施形態に係るヒューズエレメントの模式図であり、
図4(a)に対応する平面図である。
【
図17】第3実施形態に係るヒューズエレメントの模式図であり、
図4(c)に対応する断面図である。
【
図18】(a)は第3実施形態に係るヒューズエレメントの断面図であり、(b)はヒューズエレメントの平面図である。
【
図19】(a)は第3実施形態の第1変形例のヒューズエレメントの断面図であり、(b)は第2変形例のヒューズエレメントの断面図である。
【
図20】第3実施形態の第3変形例のヒューズエレメントの平面図である。
【
図21】(a)は第3実施形態の第4変形例のヒューズエレメントの断面図であり、(b)は第5変形例のヒューズエレメントの断面図であり、(c)は第6変形例のヒューズエレメントの断面図であり、(d)は第7変形例のヒューズエレメントの断面図であり、(e)は第8変形例のヒューズエレメントの断面図であり、(f)は第9変形例のヒューズエレメントの断面図である。
【
図22】第3実施形態のヒューズエレメントが単層体である例の断面図である。
【
図23】第3実施形態のヒューズエレメントが積層体である例の断面図である。
【
図24】第4実施形態に係るヒューズエレメントの模式図であり、
図4(a)に対応する平面図である。
【
図25】第4実施形態に係るヒューズエレメントの模式図であり、
図4(c)に対応する断面図である。
【
図26】第4実施形態に係るヒューズエレメントの断面図である。
【
図27】第4実施形態に係るヒューズエレメントの遮断部以外の厚みと遮断部の厚みとの厚み比と、ヒューズ抵抗との関係を示す図である。
【
図28】第4実施形態のヒューズエレメントが積層体である例の断面図である。
【
図29】第4実施形態の第1変形例のヒューズエレメントの平面図である。
【
図30】第4実施形態の第2変形例のヒューズエレメントの平面図である。
【
図31】第4実施形態の第3変形例のヒューズエレメントの断面図である。
【
図32】第4実施形態のヒューズエレメントの製造方法の一例を示す模式図である。
【
図33】第4実施形態のヒューズエレメントの製造方法の一例を示す模式図である。
【
図34】第4実施形態のヒューズエレメントの製造方法の一例を示す模式図である。
【
図35】第4実施形態のヒューズエレメントの製造方法の一例を示す模式図である。
【
図36】
図35に続く、ヒューズエレメントの製造方法の一例を示す模式図である。
【
図37】
図35とは異なる、ヒューズエレメントの製造方法の一例を示す模式図である。
【
図38】第4実施形態のヒューズエレメントの製造方法の一例を示す模式図である。
【
図39】第5実施形態に係る保護素子の、
図5(a)に対応する断面図である。
【
図40】第6実施形態に係る保護素子の、
図5(a)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0046】
(保護素子(第1実施形態))
図1~
図5は、本発明の第1実施形態に係る保護素子を示した模式図である。以下の説明で用いる図面において、Xで示す方向はヒューズエレメントの通電方向である。Yで示す方向はX方向と直交する方向であり、幅方向ともいう。Zで示す方向は、X方向およびY方向に直交する方向であり、厚さ方向ともいう。
【0047】
図1は、本発明の第1実施形態に係る保護素子を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す保護素子の内部が見えるように一部を除去して模式的に示した斜視図である。
図3は、
図1に示す保護素子を模式的に示す分解斜視図である。
図4(a)は、第1端子及び第2端子とヒューズエレメント積層体を構成する可溶性導体シート1個とを模式的に示す平面図であり、(b)は、ヒューズエレメント積層体、第2絶縁部材、第1端子、及び、第2端子を模式的に示す平面図であり、(c)は、(b)で示した平面図のX-X線に沿った断面図である。
図5(a)は、
図1のV-V’線に沿った断面図であり、(b)は、係止部材の近傍の拡大図である。
【0048】
図1~
図5に示す保護素子100は、絶縁ケース10と、ヒューズエレメント積層体40と、第1絶縁部材60Aと、第2絶縁部材60Bと、遮蔽部材20と、押圧手段30と、係止部材70と、発熱体80と、給電部材90a、90bと、第1端子91と、第2端子92とを有する。なお、本実施形態の保護素子100において、通電方向は、使用時において電気が流れる方向(X方向)を意味し、通電方向の断面積は、通電方向に対して直交する方向の面(Y-Z面)の面積を意味する。
図1~
図5に示す保護素子100においては、第1絶縁部材60Aと第2絶縁部材60Bとが異なる構成を有する部材である例を示したが、これらの第1絶縁部材60Aと第2絶縁部材60Bとが同じ構成を有する部材であってもよい。
【0049】
本実施形態の保護素子100は、電流経路を遮断させる機構として、可溶性導体シート50(
図4(c)参照)に定格電流を超えた過電流が流れた場合に可溶性導体シート50が溶断されて電流経路を遮断させる過電流遮断と、過電流以外の異常が発生した場合に発熱体80に電流を通電して遮蔽部材20の移動を抑制している係止部材70を溶融し、押圧手段30によって下方に押圧力を付与されている遮蔽部材20を移動させてヒューズエレメント50を切断して電流経路を遮断させるアクティブ遮断とを有する。
【0050】
(絶縁ケース)
絶縁ケース10は、略長円柱状(Y-Z面の断面がX方向のどの位置でも長円)である。絶縁ケース10は、カバー10Aと保持部材10Bとからなる。
カバー10Aは、両端が開口した長円筒形状である。カバー10Aの開口部における内側の縁部は、面取りされた傾斜面21とされている。カバー10Aの中央部は、保持部材10Bが収容される収容部22とされている。
【0051】
保持部材10Bは、Z方向で下側に配置する第1保持部材10BaとZ方向で上側に配置する第2保持部材10Bbとからなる。
図3に示すように、第1保持部材10Baの通電方向(X方向)における両端部(第1端部10Baa、第2端部10Bab)には端子載置面111が設けられている。
また、
図3に示すように、第1保持部材10Baの両端部(第1端部10Baa、第2端部10Bab)には給電部材載置面12が設けられている。給電部材載置面12のZ方向の位置(高さ)が発熱体80の位置(高さ)とほぼ同じ高さにあることで給電部材90の引き回し距離の短縮を図っている。
【0052】
保持部材10Bの内部には、内圧緩衝空間15(
図5(a)、
図6参照)が形成されている。内圧緩衝空間15は、ヒューズエレメント積層体40の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子100の内圧の急激な上昇を抑える作用がある。
【0053】
カバー10Aおよび保持部材10Bは、耐トラッキング指標CTI(トラッキング(炭化導電路)破壊に対する耐性)が500V以上の材料で形成されていることが好ましい。
耐トラッキング指標CTIは、IEC60112に基づく試験により求めることができる。
【0054】
カバー10Aおよび保持部材10Bの材料としては、樹脂材料を用いることができる。
樹脂材料は、セラミック材料よりも熱容量が小さく融点も低い。このため、保持部材10Bの材料として樹脂材料を用いると、ガス化冷却(アブレーション)によるアーク放電を弱める特性や、溶融飛散した金属粒子が保持部材10Bに付着する際に、保持部材10Bの表面が変形したり付着物が凝集したりすることで、疎らとなり伝導パスを形成し難い特性があり好ましい。
【0055】
樹脂材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂を用いることができる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドであってもよいし、半芳香族ポリアミドであってもよい。脂肪族ポリアミドの例としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66を挙げることができる。半芳香族ポリアミドの例としては、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリフタルアミド(PPA)樹脂を挙げることができる。フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。また、ポリアミド系樹脂およびフッ素系樹脂は耐熱性が高く、燃焼しにくい。特に、脂肪族ポリアミドは燃焼してもグラファイトが生成しにくい。このため、脂肪族ポリアミドを用いて、カバー10Aおよび保持部材10Bを形成することで、ヒューズエレメント積層体40の溶断時のアーク放電に生成したグラファイトによって、新たな電流経路が形成されることをより確実に防止できる。
【0056】
(ヒューズエレメント積層体)
ヒューズエレメント積層体は、厚さ方向に並列配置された複数個の可溶性導体シート(複数個の可溶性導体シートをまとめてヒューズエレメントということがある)と、複数個の可溶性導体シートの各々の間、及び、複数個の可溶性導体シートのうちの最下部に配置された可溶性導体シートの外側に近接若しくは接触させた状態で配置され、第1開口部若しくは第1分離部が形成された複数の第1絶縁部材とを有する。ヒューズエレメント積層体はヒューズエレメントと第1絶縁部材とからなる。
ヒューズエレメント積層体40は、厚さ方向(Z方向)に並列配置された6個の可溶性導体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fを有する。可溶性導体シート50a~50fの各々の間には、第1絶縁部材60Ab、60Ac、60Ad、60Ae、60Afが配置されている。第1絶縁部材60Aa~60Afは、可溶性導体シート50a~50fの各々に近接もしくは接触させた状態で配置されている。近接させた状態は、第1絶縁部材60Ab~60Afと可溶性導体シート50a~50fとの距離が0.5mm以下の状態であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以下の状態である。
また、可溶性導体シート50a~50fのうちの最下部に配置された可溶性導体シート50aの外側には第1絶縁部材60Aaが配置されている。さらに、可溶性導体シート50a~50fのうちの最上部に配置された可溶性導体シート50fの外側には第2絶縁部材60Bが配置されている。可溶性導体シート50a~50fの幅(Y方向の長さ)は、第1絶縁部材60Aa~60Afおよび第2絶縁部材60Bの幅よりも狭くなっている。
ヒューズエレメント積層体40は、複数個の可溶性導体シートが6個の例であるが、6個に限定されず、複数個であればよい。
【0057】
可溶性導体シート50a~50fの各々は、互いに対向する第1端部51及び第2端部52と、第1端部51及び第2端部52の間に位置する溶断部53とを有する。厚さ方向に並列配置された可溶性導体シート50a~50fのうちの下から3つの可溶性導体シート50a~50cの第1端部51は、第1端子91の下面に接続し、上から3つの可溶性導体シート50d~50fの第1端部51は、第1端子91の上面に接続されている。また、可溶性導体シート50a~50fのうちの下から3つの可溶性導体シート50a~50cの第2端部52は、第2端子92の下面に接続し、上から3つの可溶性導体シート50d~50fの第2端部52は、第2端子92の上面に接続されている。なお、可溶性導体シート50a~50fと第1端子91及び第2端子92の接続位置はこれに限定されるものではない。例えば、可溶性導体シート50a~50fの第1端部51の全てが、第1端子91の上面に接続されていてもよいし、第1端子91の下面に接続されていてもよい。また、可溶性導体シート50a~50fの第2端部52の全てが、第2端子92の上面に接続されていてもよいし、第2端子92の下面に接続されていてもよい。
【0058】
可溶性導体シート50a~50fの各々は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体であってもよいし、単層体であってもよい。低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体は低融点金属層の周囲を高融点金属層で覆った構造でもよい。
積層体の低融点金属層はSnを含む。低融点金属層は、Sn単体であってもよいし、Sn合金であってもよい。Sn合金は、Snを主成分とする合金である。Sn合金は、合金に含まれる金属の中でSnの含有量が最も多い合金である。Sn合金の例としては、Sn-Bi合金、In-Sn合金、Sn-Ag-Cu合金を挙げることができる。高融点金属層は、AgもしくはCuを含む。高融点金属層は、Ag単体であってもよいし、Cu単体であってもよいし、Ag合金であってもよいし、Cu合金であってもよい。Ag合金は合金に含まれる金属の中でAgの含有量が最も多い合金であり、Cu合金は、合金に含まれる金属の中でCuの含有量が最も多い合金である。積層体は、低融点金属層/高融点金属層の2層構造であってもよいし、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層が1層以上で、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された3層以上の多層構造であってもよい。
【0059】
単層体の場合は、AgもしくはCuを含む。単層体は、Ag単体であってもよいし、Cu単体であってもよいし、Ag合金であってもよいし、Cu合金であってもよい。
【0060】
可溶性導体シート50a~50fの各々は、溶断部53に貫通孔54(54a、54b、54c)を有していてもよい。図に示す例では、貫通孔は3個であるが、個数に制限はない。貫通孔54を有することによって、第1端部51および第2端部52の断面積より、溶断部53の断面積が小さくなる。溶断部53の断面積が小さくなることによって、可溶性導体シート50a~50fの各々に定格を超える大電流が流れた場合には、溶断部53の発熱量が大きくなるため、溶断部53が溶断部となって溶断しやすくなる。第1端部51及び第2端部52側よりも溶断部53を溶断され易くする構成としては貫通孔に限らず、幅狭にしたり部分的に厚みを薄くするなどの構成とすることもできる。ミシン目の様な切込み形状でもよい。
また、可溶性導体シート50a~50fの各々において、溶断され易く構成された溶断部53は遮蔽部材20の凸状部20aによって切断され易い。
【0061】
可溶性導体シート50a~50fの厚さは、過電流によって溶断され、かつ、遮蔽部材20によって物理的に切断される厚さとされている。具体的な厚さは可溶性導体シート50a~50fの材料や個数(枚数)、また押圧手段30の押圧力(応力)に依存するが、例えば、可溶性導体シート50a~50fが銅箔である場合は目安として、0.01mm以上0.1mm以下の範囲とすることができる。また、可溶性導体シート50a~50fがSnを主成分とする合金の周囲をAgでめっきした箔である場合は目安として、0.1mm以上1.0mm以下の範囲とすることができる。
【0062】
第1絶縁部材60Aa~60Afの各々は、互いに隙間(第1分離部)64を介して対向した第1絶縁片63aと第2絶縁片63bからなる。第2絶縁部材60Bも同様に、互いに隙間(第2分離部)65を介して対向した第3絶縁片66aと第4絶縁片66bからなる。図示する例では、第1絶縁部材60Aa~60Af及び第2絶縁部材60Bの隙間64、65は、2つの部材(第1絶縁片63a及び第2絶縁片63b及び第3絶縁片66a及び第4絶縁片66b)に分離する分離部(第1分離部、第2分離部)であるが、遮蔽部材20の凸状部20aが移動(通過)可能な開口部(第1開口部、第2開口部)であってもよい。
第1絶縁片63aおよび第2絶縁片63bはそれぞれY方向の両端側に、ヒューズエレメントの遮断時に発生するアーク放電に伴う圧力上昇を絶縁ケースの押圧手段収容空間へ効率良く逃がすための通気孔67を有する。図示した例では、第1絶縁片63aおよび第2絶縁片63bはそれぞれY方向の両端側に3個ずつ有するが、個数に制限はない。
アーク放電により発生した上昇圧力は、通気孔67を通り、押圧手段支持部20bと第2保持部材10Bbとの間に設けられた四隅の隙間(不図示)を介して、絶縁ケース10の押圧手段30を収容する空間へと効率良く逃がされる。そして、その結果、遮蔽部材20の遮蔽動作がスムーズに行われると共に、第1絶縁部材60Aa~60Afと第2絶縁部材60Bの破壊が防止される。
隙間64、65は、可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と第2端部52との間に配置する溶断部53に対向する位置にある。すなわち、第1絶縁部材60Aa~60Afおよび第2絶縁部材60Bは、可溶性導体シート50a~50fの溶断部53に対向する位置で分離されている。
【0063】
第1絶縁部材60Aa~60Afおよび第2絶縁部材60Bは、耐トラッキング指標CTIが500V以上の材料で形成されていることが好ましい。
第1絶縁部材60Aa~60Afおよび第2絶縁部材60Bの材料としては、樹脂材料を用いることができる。樹脂材料の例は、カバー10Aおよび保持部材10Bの場合と同じである。
【0064】
ヒューズエレメント積層体40は、例えば、次のようにして製造することができる。
第1絶縁部材60Aa~60Afと第2絶縁部材60Bに設けられた凸部に対応した位置決め凹部と第1端子91と第2端子92の位置決め固定部を有する治具を用い、第1絶縁部材60Aaの上に、可溶性導体シート50a~50fと第1絶縁部材60Ab~60Afとを、それぞれ厚さ方向に交互に積層し、最上部に配置された可溶性導体シート50fの上面に第2絶縁部材60Bを配置して、積層体を得る。
【0065】
(遮蔽部材)
遮蔽部材20は、ヒューズエレメント積層体40側に向いた凸状部20aと、押圧手段30の下部を収容して支持する凹部20baを有する押圧手段支持部20bとを有する。
遮蔽部材20は、押圧手段30の押圧力を下方に付与された状態で、係止部材70によって下方への移動が抑えられている。そのため、係止部材70が発熱体80の発熱によって加熱され軟化温度以上の温度で軟化されると、遮蔽部材20は下方へ移動可能になる。このとき、軟化された係止部材70はその材料の種類や加熱状況等によって、遮蔽部材20によって物理的に切断され、あるいは、熱的に溶断され、あるいは遮蔽部材20による物理的切断と熱的溶断が合わさった作用を受ける。
遮蔽部材20は係止部材70による下方への移動抑制が外れると、下方へ移動して可溶性導体シート50a~50fを物理的に切断する。
遮蔽部材20では、凸状部20aの先端20aaが尖っており、可溶性導体シート50a~50fを切断しやすい形状とされている。
図6に、遮蔽部材20がヒューズエレメント積層体40の隙間64、65を移動し、凸状部20aによって可溶性導体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fを切断し、遮蔽部材20が下がりきった状態の保護素子の断面図を示す。
【0066】
遮蔽部材20がヒューズエレメント積層体40の隙間65、64を移動して下がっていき、遮蔽部材20の凸状部20aによって可溶性導体シート50f、50e、50d、50c、50b、50aを順に切断すると、切断面同士が凸状部20aによって遮蔽されて絶縁され、各可溶性導体シートを介した通電経路が物理的に確実に遮断される。これによって、アーク放電が迅速に消滅(消弧)する。
また、遮蔽部材20がヒューズエレメント積層体40の隙間65、64を移動して下方に下がりきった状態では、遮蔽部材20の押圧手段支持部20bが第2絶縁部材60Bからヒューズエレメント積層体40を押圧し、可溶性導体シートと第1絶縁部材60Aa~60Af及び第2絶縁部材60Bとが密着するので、その間にアーク放電が継続できる空間がなくなり、アーク放電が確実に消滅する。
【0067】
凸状部20aの厚み(X方向の長さ)は、第1絶縁部材60Aa~60Af及び第2絶縁部材60Bの隙間64、65のX方向の幅よりも小さい。この構成によって、凸状部20aは隙間64、65をZ方向下方に移動可能となる。
例えば、可溶性導体シート50a~50fが銅箔である場合は、凸状部20aの厚みと隙間64、65のX方向の幅との差は例えば、0.05~1.0mmとすることができ、0.2~0.4mmとすることが好ましい。0.05mm以上であると、切断された最小厚み0.01mmの場合の可溶性導体シート50a~50fの端部が第1絶縁部材60Aa~60Af及び第2絶縁部材60Bと凸状部20aの隙間に入り込んでも凸状部20aの移動がスムーズとなり、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。これは、上記差が0.05mm以上であると、凸状部20aが引掛りにくいためである。また、上記差が1.0mm以下であると、隙間64、65が、凸状部20aを移動させるガイドとして機能する。したがって、可溶性導体シート50a~50fの溶断時に移動する凸状部20aの位置ずれが防止され、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。可溶性導体シート50a~50fがSnを主成分とする合金の周囲をAgでめっきした箔である場合は、凸状部20aの厚みと隙間64、65のX方向の幅との差は例えば、0.2~2.5mmとすることができ、0.22~2.2mmとすることが好ましい。
【0068】
凸状部20aの幅(Y方向の長さ)は、ヒューズエレメント積層体40の可溶性導体シート50a~50fの幅より広い。この構成によって、凸状部20aが可溶性導体シート50a~50fの各々を切断することが可能である。
【0069】
凸状部20aのZ方向の長さLは、Z方向下方に下がりきったときに、凸状部20aの先端20aaが、第1絶縁部材60Aa~60AfのうちZ方向で最下部に配置する第1絶縁部材60Aaよりも下方まで到達できる長さを有する。凸状部20aは最下部に配置する第1絶縁部材60Aaよりも下がるときには、保持部材10Baの内底面13に形成された挿入孔14に挿入される。
この構成によって、凸状部20aが可溶性導体シート50a~50fの各々を切断することが可能となる。
【0070】
(押圧手段)
押圧手段30は、遮蔽部材20をZ方向下方に押圧した状態で遮蔽部材20の凹部20baに収容されている。
【0071】
押圧手段30としては、例えば、バネ、ゴムなど、弾性力を付与できる公知の手段を用いることができる。
保護素子100においては、押圧手段30としてバネが用いられている。バネ(押圧手段)30は、遮蔽部材20の凹部20baに縮められた状態で保持されている。
【0072】
押圧手段30として用いるバネの材料としては、公知のものを用いることができる。
押圧手段30として用いられるバネとしては、円筒状のものを用いてもよいし、円錐状のものを用いてもよい。円錐状のバネを用いると収縮長を短くできるため、押圧時の高さを抑制して保護素子の小型化を図ることができる。また、円錐状のバネは、複数個重ねて応力の増強を図ることも可能である。
押圧手段30として円錐状のバネを用いる場合、外径の小さい側を可溶性導体シート50a~50fの各々の溶断部(切断部)53側に向けて配置してもよいし、外径の大きい側を可溶性導体シート50a~50fの各々の溶断部53側に向けて配置してもよい。
押圧手段30として円錐状のバネを用いる場合、外径の小さい側を可溶性導体シート50a~50fの各々の溶断部(切断部)53側に向けて配置することにより、例えば、バネが金属などの導電性材料で形成されている場合に、可溶性導体シート50a~50fの各々の溶断部53の切断時に発生するアーク放電の継続をより効果的に抑制できる。これは、アーク放電の発生場所と、バネを形成している導電性材料との距離が確保されやすくなるためである。
また、押圧手段30として円錐状のバネを用い、外径の大きい側を可溶性導体シート50a~50fの各々の溶断部53側に向けて配置した場合、押圧手段30から遮蔽部材20により均等に弾性力を付与でき、好ましい。
【0073】
(係止部材)
係止部材70は、第2絶縁部材60Bの隙間65を橋渡しし、遮蔽部材20の移動を抑える。
保護素子100においては、3個の係止部材70(70A、70B、70C)を備えるが、3個に限定されない。
係止部材70Aは第2絶縁部材60Bの溝60Ba1及び溝60Ba2に載置され、係止部材70Bは第2絶縁部材60Bの溝60Bb1及び溝60Bb2に載置され、係止部材70Cは第2絶縁部材60Bの溝60Bc1及び溝60Bc2に載置される。
また、遮蔽部材20の凸状部20aの先端20aaには係止部材の形状と位置に対応した溝があり(
図12(b)参照)、その溝が係止部材を挟み込む様に安定して保持する。
【0074】
3個の係止部材70A、70B、70Cは同じ形状である。係止部材70Aについて図を用いて形状を説明すると、係止部材70Aは第2絶縁部材60Bに形成された溝に載置されて支持される支持部70Aaと、支持部から下方に延びてその先端70Abaが最上部の可溶性導体シート50fに近接若しくは接触する突出部70Abとを有する。係止部材70では、すべての係止部材が同じ形状であるが、異なる形状のものが含まれてもよい。
【0075】
係止部材70A、70B、70Cの上に発熱体80A、80Bが載置されている。発熱体80A、80Bに電流が通電されると、発熱体80A、80Bが発熱し、係止部材70に伝熱して係止部材70は昇温し軟化温度以上の温度において軟化する。ここで、軟化温度とは、固相と液相が混在あるいは共存する温度あるいは温度範囲を意味する。係止部材70が軟化温度以上の温度になると、外力により変形するくらい柔らかくなる。
軟化した係止部材70は押圧手段30の押圧力によって押圧された遮蔽部材20の凸状部20aによって物理的に切断されやすくなる。係止部材70が切断されると、遮蔽部材20の凸状部20aは、隙間65、64をZ方向下方に挿入されていく。
凸状部20aが隙間65、64をZ方向下方に挿入されていく際に、凸状部20aが可溶性導体シートを切断しながら、突き進んで最下位置まで到達する。これによって凸状部20aは可溶性導体シート50a~50fをその溶断部53で第1端子91側と第2端子92側とに遮蔽する。これによって可溶性導体シート50a~50fが切断される際に発生するアーク放電は迅速かつ確実に消滅させることができる。
発熱体80A、80Bの発熱が係止部材70を介して可溶性導体シート50fが加熱され、さらに他の可溶性導体シートも加熱されて、可溶性導体シート50a~50fは物理的に切断されやすい。また、発熱体80A、80Bの発熱の大きさによっては可溶性導体シート50fが熱的に溶断され得る。この場合は、凸状部20aはそのまま突き進んで最下位置まで到達する。
【0076】
係止部材70では、突出部70Abが可溶性導体シート50fに接触している。そのため、可溶性導体シートに定格電流を越えた過電流が流れると、可溶性導体シート50fに接触している係止部材70は伝熱して昇温し、軟化温度以上の温度において軟化する。
また、大きな過電流が流れ瞬時に可溶性導体シート50fが溶断した場合は、発生したアーク放電が係止部材70にも流れ、係止部材70は軟化温度以上の温度において軟化する。
軟化した係止部材70は押圧手段30の押圧力によって押圧された遮蔽部材20の凸状部20aによって物理的に切断されやすくなる。係止部材70が切断されると、遮蔽部材20の凸状部20aは、隙間65、64をZ方向下方に挿入されていく。
この場合、可溶性導体シートは定格電流を越えた過電流が流れて熱的に溶断されており、凸状部20aはそのまま隙間65、64をZ方向下方に挿入されていく。この際、凸状部20aは可溶性導体シート50a~50fをその溶断部で第1端子91側と第2端子92側とに遮蔽する。これによって可溶性導体シート50a~50fが切断される際に発生するアーク放電は迅速かつ確実に消滅させることができる。
仮に可溶性導体シートが未だ熱的に溶断されていないときでも、凸状部20aが隙間65、64をZ方向下方に挿入されていく際に、凸状部20aが可溶性導体シートを切断しながら、突き進んで最下位置まで到達する。これによって凸状部20aは可溶性導体シート50a~50fをその溶断部で第1端子91側と第2端子92側とに遮蔽する。これによって可溶性導体シート50a~50fが遮断される際に発生するアーク放電は迅速かつ確実に消滅させることができる。
【0077】
図7(a)に係止部材70の変形例である係止部材71を有する保護素子を示す。
図7(b)は、係止部材71の近傍の拡大図である。
係止部材71は、第2絶縁部材60Bに形成された溝に載置されて支持される支持部71Aaのみを有し、可溶性導体シート50fに接触する突出部を有さない構成である。
【0078】
係止部材71は可溶性導体シート50fに接触する部分を有さないため、可溶性導体シートに定格電流を越えた過電流が流れても軟化されず、発熱体80によってのみ軟化される。ただし、高電圧に伴うアーク放電が発生した場合に於いては、アーク放電が係止部材71に達し係止部材71を溶断させ、凸状部20aによる可溶性導体シート50a~50fをその溶断部で第1端子91側と第2端子92側とに遮蔽する。
【0079】
係止部材70、71の材料は可溶性導体シートと同じ材料のものとすることができるが、発熱体80の通電によって迅速に軟化するため、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体であることが好ましい。例えば、融点217℃のSnを主成分とする合金の周囲を、融点962℃のAgでめっきしたものを用いることができる。
【0080】
(発熱体)
発熱体80は係止部材70の上面に接触するように載置される。発熱体80に電流を通電させることによって発熱し、その熱によって係止部材70を加熱して軟化、溶融する。
係止部材70の溶融によって、押圧手段30によってZ方向下方に押圧力が付与されている遮蔽部材20はヒューズエレメント積層体40の隙間に挿入され、可溶性導体シート50を切断し、ヒューズエレメント積層体40を第1端子91側と第2端子92側に遮蔽する。
【0081】
保護素子100においては、2個の発熱体80(80A、80B)を備えるが、2個に限定されない。
図8に発熱体80の模式図を示す。
図8(a)は発熱体80のおもて面(押圧手段30側の面)の平面図であり、
図8(b)は絶縁基板の平面図であり、
図8(c)~(e)はそれぞれ、絶縁基板のおもて面側の3層を順に積層し、下の層も見えるように示した透過平面図である。
図8(c)は絶縁基板上に抵抗層を積層した状態、(d)は(c)にさらに絶縁層を積層した状態、(e)は(d)にさらに電極層を積層した状態、の平面図である。
図8(f)は発熱体80の裏面(ヒューズエレメント積層体40側の面)の平面図である。
発熱体80A、80Bはそれぞれ、絶縁基板80-3のおもて面80-3A(押圧手段30側の面)に平行に離間して配置する2つの抵抗層80-1(80-1a、80-1b)と、抵抗層80-1を覆う絶縁層80-4と、絶縁基板80-3上に形成され、抵抗層80-1aの両端に電気的に接続する発熱体電極80-5a及び発熱体電極80-5bと、抵抗層80-1bの両端に電気的に接続する発熱体電極80-5c及び発熱体電極80-5dと、絶縁基板80-3の裏面80-3B(ヒューズエレメント積層体40側の面)に形成された電極層80-2(80-2a、80-2b)と、を有する。抵抗層は、発熱体80A、80Bそれぞれに2つずつ備えるが、これは180度回転して搭載してもよいように配慮したフェールセーフ設計であり、2つが必須ではない。
抵抗層80-1は、通電すると発熱する導電性を有する材料、例えばニクロム、W、Mo、Ru等、又は、これらを含む材料からなる。抵抗層80-1は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板80-3上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。絶縁基板80-3は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する基板である。絶縁層80-4は、抵抗層80-1の保護を図るために設けられる。絶縁層80-4の材料としては、例えば、セラミックス、ガラスなどの絶縁材料を用いることができる。縁部層80-4は、絶縁材料のペーストを塗布し、焼成する方法によって形成することができる。
発熱体80A、80Bのそれぞれのおもて面の発熱体電極80-5a~dと、裏面の電極層80-2a~bは、絶縁基板80-3により電気的に絶縁されている。
発熱体80A、80Bとしては
図8に示したものに限らず、公知のものを用いることができる。
【0082】
発熱体80A、80Bは、保護素子100の通電経路となる外部回路に異常が発生する等によって通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電され発熱される。
【0083】
(給電部材)
図9は、発熱体80A、80Bへ給電する給電部材の引き出し方法を説明するための保護素子の斜視図であり、(a)は発熱体80A、80Bを直列につなぐ場合であり、(b)は発熱体80A、80Bを並列につなぐ場合である。
図9(a)においては、給電部材90aが発熱体80Aの発熱体電極80-5c(
図8参照)に接続され、発熱体80Bの発熱体電極80-5a(
図8参照)に給電部材90bが接続され、給電部材90Aが発熱体80Aの発熱体電極80-5d(
図8参照)及び発熱体80Bの発熱体電極80-5b(
図8参照)に接続されている。また、発熱体80Aの電極層80-2は係止部材70(70A、70B、70C)を介して発熱体80Bの電極層80-2に接続されている。この構成では、「給電部材90a~発熱体80Aの発熱体電極80-5c~発熱体80Aの抵抗層80-1a~発熱体80Aの発熱体電極80-5d~給電部材90A~発熱体80Bの発熱体電極80-5b~発熱体80Bの抵抗層80-1b~発熱体80Bの発熱体電極80-5a~給電部材90b」の経路で給電して発熱体80A、80Bを発熱させる。この発熱によって係止部材70(70A、70B、70C)が溶融され、遮蔽部材20がヒューズエレメント積層体40の隙間64、65に挿入される。遮蔽部材20がヒューズエレメント積層体40の隙間64、65に挿入されることによって給電部材90Aが切断され、発熱体80A、80Bへの給電が遮断され、発熱体80A、80Bの発熱が停止する。
図9(b)においては、給電部材90cが発熱体80Aの発熱体電極80-5cに接続され、発熱体80Aの発熱体電極80-5dに給電部材90eが接続されている。また、給電部材90dが発熱体80Bの発熱体電極80-5aに接続され、発熱体電極80-5b(
図8参照)に給電部材90fが接続されている。この構成では、「給電部材90c~発熱体80Aの発熱体電極80-5c~発熱体80Aの抵抗層80-1a~発熱体80Aの発熱体電極80-5d~給電部材90e」の第1の経路と、「給電部材90d~発熱体80Bの発熱体電極80-5a~発熱体80Bの抵抗層80-1b~発熱体80Bの発熱体電極80-5b~給電部材90f」の第2の経路とが並列で構成されている。第1の経路及び第2の経路で給電して発熱体80A、80Bを発熱させる。この発熱によって係止部材70(70A、70B、70C)が溶融され、遮蔽部材20がヒューズエレメント積層体40の隙間64、65に挿入される。この構成では、遮蔽部材20がヒューズエレメント積層体40の隙間64、65に挿入されることによって発熱体80A、80Bへの給電が遮断されずに、発熱体80A、80Bの発熱が継続する。よって、別途システム制御(タイマー等)により適宜電流制御素子への通電を停止することにより、遮断後の保護素子100の発熱体80A、80Bの発熱を停止することができる。
【0084】
(第1端子、第2端子)
第1端子91は、一方の端部が可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と接続し、他方の端部が絶縁ケース10の外部に露出している。また、第2端子92は、一方の端部が可溶性導体シート50a~50fの第2端部52と接続し、他方の端部が絶縁ケース10の外部に露出している。
【0085】
第1端子91と第2端子92とは、略同形であってもよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。第1端子91および第2端子92の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.3mm以上1.0mm以下の範囲内にあってもよい。第1端子91の厚みと第2端子92の厚みとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0086】
第1端子91は、外部端子孔91aを備えている。また、第2端子92は、外部端子孔92aを備えている。外部端子孔91a、外部端子孔92aのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。もしくは、外部端子孔91a、外部端子孔92aは、負荷の内部の通電経路に接続されるために用いられてもよい。外部端子孔91aおよび外部端子孔92aは、平面視略円形の貫通孔とすることができる。
【0087】
第1端子91および第2端子92としては、例えば、銅、黄銅、ニッケルなどからなるものを用いることができる。第1端子91および第2端子92の材料として、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。第1端子91と第2端子92とは、同じ材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。
【0088】
(保護素子の製造方法)
本実施形態の保護素子100は、次のようにして製造することができる。
先ず、治具にて位置決めされたヒューズエレメント積層体40と、第1端子91および第2端子92とを用意する。そして、ヒューズエレメント積層体40の可溶性導体シート50a~50fの各々の第1端部51と第1端子91とをハンダ付けによって接続する。
また、第2端部52と第2端子92とをハンダ付けによって接続する。ハンダ付けに使用されるハンダ材料としては、公知のものを用いることができ、抵抗率と融点および環境対応鉛フリーの観点からSnを主成分とするものを用いることが好ましい。可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と第1端子91との接続およびの可溶性導体シート50a~50fの第2端部52と第2端子92との接続は、ハンダ付けに限定されるものではなく、溶接による接合など公知の接合方法を用いてもよい。
【0089】
次に、係止部材70A、70B、70Cを用意する。係止部材70A、70B、70Cのそれぞれを、
図3に示した第2絶縁部材60Bの溝60Ba1及び溝60Ba2、溝60Bb1及び溝60Bb2、及び、溝60Bc1及び溝60Bc2のそれぞれに配置する。
また、第2絶縁部材60Bと同じ形状の治具を用いてもよい。
【0090】
次に、
図8(a)及び
図8(b)に示した発熱体80A、80Bとハンダペーストを用意する。そして、係止部材70A、70B、70Cと発熱体80A、80Bの接続部位にハンダペーストを適量塗布した後、
図9(a)に示すように、第2絶縁部材60Bの所定の位置に発熱体80A、80Bを配置する。発熱体80A、80Bはその裏側が係止部材70A、70B、70Cの上に載置する。オーブンやリフロー炉等で加熱し係止部材70A、70B、70Cと発熱体80A、80Bをハンダ接続する。
【0091】
次に、給電部材90a、90b、90Aを用意する。給電部材90aを給電部材載置面12に配置し、給電部材90aを発熱体80Aの発熱体電極80-5cにハンダ付けすることによって接続する。また、給電部材90bを給電部材載置面12に配置し、給電部材90bを発熱体80Bの発熱体電極80-5aにハンダ付けすることによって接続する。また、給電部材90Aを発熱体80Aの発熱体電極80-5d及び発熱体80Bの発熱体電極80-5bにハンダ付けすることによって接続する。給電部材90a、90b、90Aと発熱体80A、80Bとは、溶接による接合によって接続されていてもよく、公知の接合方法を用いることができる。
【0092】
次に、第2保持部材10Bb、遮蔽部材20、及び、押圧手段30を用意する。そして、押圧手段30を遮蔽部材20の凹部20baに配置し、第2保持部材10Bbに収容する。
【0093】
次に、遮蔽部材20の先端20aaに設けられた溝に係止部材70A、70B、70Cを嵌め込み押圧手段30を圧縮しながら、第1保持部材10Baの第1端部10Baa及び第2端部10Babのそれぞれに2個ずつ形成された凹部17に、第2保持部材10Bbの対応箇所に形成された4個の凸部(不図示)を係合して、保持部材10Bを形成する。
【0094】
次に、カバー10Aを用意する。そして、カバー10Aの収容部22に、保持部材10Bを挿入する。次いで、保持部材10Bの端子接着剤注入口16に接着剤を注入して、端子載置面111と第1端子91および第2端子92との隙間を埋める。また、ケース接着剤注入口であるカバー10Aの楕円状側面の傾斜面21に接着剤を注入して、カバー10Aと保持部材10Bとを接着させる。接着剤としては、例えば、熱硬化性樹脂を含む接着剤を用いることができる。こうして、カバー10A内が密閉された絶縁ケース10が形成される。
以上の工程により、本実施形態の保護素子100が得られる。
【0095】
本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント50(複数個の可溶性導体シート50a~50f)に定格電流を超えた過電流が流れた場合にヒューズエレメント50が熱的に溶断されて電流経路を遮断させる他、発熱体80に電流を通電して遮蔽部材20の移動を抑制している係止部材70を溶融し、押圧手段30によって遮蔽部材20を移動させて、ヒューズエレメント50を物理的に切断して電流経路を遮断させることが可能である。
【0096】
本実施形態の保護素子100では、押圧手段30による押圧力が付与されている遮蔽部材20の移動を係止部材70によって抑制する構成であるため、電流経路の遮断時以外は、ヒューズエレメント50(複数個の可溶性導体シート50a~50f)に押圧手段30と遮蔽部材20とによる切断押圧力がかからない。そのため、ヒューズエレメント50の経時劣化が抑制され、また、電流経路の遮断が必要でないときにヒューズエレメント50が昇温した際に押圧力が付与された状態であることに起因する断線を防止できる。
【0097】
本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント積層体40が厚さ方向に並列配置された複数個の可溶性導体シート50a~50fを含み、その可溶性導体シート50a~50fの各々がその間に配置された第1絶縁部材60Aa~60Af及び第2絶縁部材60Bと近接もしくは接触(密着)して絶縁されている。このため、可溶性導体シート50a~50fの各々に流れる電流値が小さくなり且つ可溶性導体シート50a~50fを取り巻く空間が極めて狭くなり、溶断することによって発生するアーク放電の規模が小さくなりやすくなる。つまり、溶断空間が狭いとその空間内の気体が少なくなり、アーク放電中に電流が流れる経路となる「空間内の気体が電離して発生するプラズマ」の量も少なくなり、アーク放電を早期に消弧し易くなる。よって、本実施形態の保護素子100によれば、絶縁ケース10のサイズを小型軽量化することが可能となる。
【0098】
本実施形態の保護素子100において、可溶性導体シート50a~50fのうちの最下部に配置された可溶性導体シート50aと絶縁ケース10の第1保持部材10Baとの間に第1絶縁部材60Aaが配置し、また、可溶性導体シート50a~50fのうちの最上部に配置された可溶性導体シート50fと絶縁ケース10の第2保持部材10Bbとの間の各々に第2絶縁部材60Bが配置されていると、可溶性導体シート50a、50fが第1保持部材10Ba、第2保持部材10Bbと直接接触しないので、アーク放電によって、これらの絶縁ケース10の内部表面に導電路となる炭化物が形成されにくくなるので、絶縁ケース10のサイズを小型にしてもリーク電流が発生しにくくなる。
【0099】
本実施形態の保護素子100において、第1絶縁部材60Aa~60Afおよび第2絶縁部材60Bが可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と第2端部52との溶断部53に対向する位置で分離されていると、可溶性導体シート50a~50fが溶断部53で溶断したときに、第1絶縁部材60Aa~60Afおよび第2絶縁部材60Bの表面の連続的な溶融飛散物の付着を抑制することができる。このため、可溶性導体シート50a~50fの溶断によって発生したアーク放電を早期に消弧させることができる。
【0100】
本実施形態の保護素子100において、第1絶縁部材60Aa~60Af、第2絶縁部材60B、遮蔽部材20、絶縁ケース10のカバー10A、および保持部材10Bのうち少なくとも一つは、耐トラッキング指標CTIが500V以上の材料で形成されていると、アーク放電によって、これらの部品の表面に導電路となる炭化物が形成されにくくなるので、絶縁ケース10のサイズを小型にしてもリーク電流がより発生しにくくなる。
【0101】
本実施形態の保護素子100において、第1絶縁部材60Aa~60Af、第2絶縁部材60B、遮蔽部材20、絶縁ケース10のカバー10A、および保持部材10Bのうち少なくとも一つは、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂で形成されていると、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂は、絶縁性と耐トラッキング性とが優れるので、小型化と軽量化を両立しやすくなる。
【0102】
本実施形態の保護素子100において、可溶性導体シート50a~50fの各々が、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体であり、低融点金属層がSnを含み、高融点金属層がAgもしくはCuを含むと、低融点金属層が溶融することによって高融点金属がSnによって溶解されるので、可溶性導体シート50a~50fの溶断温度が低くなる。また、AgやCuはSnよりも物理的強度が高いため、低融点金属層に高融点金属層を積層した可溶性導体シート50a~50fの物理的強度は、低融点金属層単体の物理的強度よりも高くなる。さらには、AgやCuはSnよりも電気抵抗率が低く、低融点金属層に高融点金属層を積層した可溶性導体シート50a~50fの電気抵抗値は、低融点金属層単体の電気抵抗値よりも低くなる。即ち、より大電流対応のヒューズエレメントとなる。
【0103】
本実施形態の保護素子100において、可溶性導体シート50a~50fの各々が、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層を1層以上有し、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された積層体であると、外側に高融点金属層があるので、可溶性導体シート50a~50fの強度が高くなる。特に、可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と第1端子91および第2端部52と第2端子92とをハンダ付けで接続する場合には、ハンダ付け時の加熱による可溶性導体シート50a~50fの変形が起こりにくくなる。
【0104】
本実施形態の保護素子100において、可溶性導体シート50a~50fの各々が、銀もしくは銅を含む単層体であると、高融点金属層と低融点金属層の積層体である場合と比較して、電気抵抗率が小さくなりやすい。このため、銀もしくは銅を含む単層体からなる可溶性導体シート50a~50fは、高融点金属層と低融点金属層の積層体からなる可溶性導体シート50a~50fと同じ面積で同等の電気抵抗を有する場合でも、厚みを薄くすることができる。可溶性導体シート50a~50fの厚みが薄いと、可溶性導体シート50a~50fが溶断したときの溶融飛散物量も厚みに比例して少なくなり、遮断後の絶縁抵抗が高くなる。
【0105】
本実施形態の保護素子100において、可溶性導体シート50a~50fの各々は、溶断部53に貫通孔54が設けられていて、第1端部51および第2端部52の通電方向の断面積より溶断部53の通電方向の断面積が小さくなるようにされた溶断部を有しているので、電流経路に定格を超える電流が流れたとき溶断する部位が安定する。なお、本実施形態の保護素子100においては溶断部53に貫通孔54を設けているが、溶断部53の断面積が小さくする方法に特に制限はない。例えば、溶断部53の両端部を凹状に切り取ることや部分的に厚みを薄くすることによって、溶断部53の断面積を小さくしてもよい。
【0106】
(変形例)
図10は、第1実施形態の変形例の模式図であり、(a)は保持部材10Bの変形例である保持部材10BBの斜視図であり、(b)は第1絶縁部材60A及び第2絶縁部材60Bの変形例である第1絶縁部材61A及び第2絶縁部材61Bが遮蔽部材20の凸状部20aが移動(通過)可能な開口部を有する構成の斜視図である。
図11(a)に第2絶縁部材の斜視模式図、(b)に第1絶縁部材の斜視模式図を示す。なお、6個の第1絶縁部材は同じ形状を有するものであるため、
図11(b)に示す第1絶縁部材はその共通する構成を示すものである。
なお、この変形例におけるヒューズエレメント積層体は、第1絶縁部材以外は
図4で示した構成と同様である。従って、以下の説明においては
図4で示した部材と共通する部材については同じ符号で記載する。
【0107】
図10及び
図11に示す第1絶縁部材61Aa~61Afの各々は第1開口部64Aを有し、第2絶縁部材61Bは第2開口部65Aを有する。また、第1開口部64Aと第2開口部65AのY方向の長さは、可溶性導体シート50a~50f及び遮蔽部材20の凸状部20aのY方向の長さよりも大きい。これにより、可溶性導体シート50a~50fが遮断された後、凸状部20aが第1開口部64Aと第2開口部65Aに挿入され可溶性導体シート50a~50fの溶断部が確実に遮蔽される。
第1絶縁部材61Aa~61Afの各々および第2絶縁部材61BはそれぞれY方向の両端側に、ヒューズエレメントの遮断時に発生するアーク放電に伴う圧力上昇を絶縁ケースの押圧手段収容空間へ効率良く逃がすための通気孔67Aを有する。図示した例では、第1絶縁部材61Aa~61Afの各々および第2絶縁部材61BはそれぞれY方向の両端側であって第1開口部64Aあるいは第2開口部65Aを挟んで左右に、通気孔67Aを5個ずつ有するが、個数に制限はない。
アーク放電により発生した上昇圧力は、通気孔67Aを通り、押圧手段支持部20bと第2保持部材10BBbとの間に設けられた四隅の隙間(不図示)を介して、絶縁ケース10の押圧手段30を収容する空間へと効率良く逃がされる。そして、その結果、遮蔽部材20の遮蔽動作がスムーズに行われると共に、第1絶縁部材61Aa~61Afと第2絶縁部材61Bの破壊が防止される。
第1開口部64A、第2開口部65Aは、可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と第2端部52との間に配置する溶断部53に対向する位置にある。
【0108】
第1絶縁部材61Aa~61Afおよび第2絶縁部材61Bの材料については、第1絶縁部材60Aa~60Afおよび第2絶縁部材60Bの材料と同様のものが好ましく、また、同様の種類の材料を用いることができる。
【0109】
図10(a)及び
図10(b)に示す保持部材10BB(Z方向で上側に配置する第2保持部材10BBbとZ方向で下側に配置する第1保持部材10BBa)は、第1絶縁部材及び第2絶縁部材の変形例に対応する形状とされている。
【0110】
(保護素子(第2実施形態))
図12~
図15は、本発明の第2実施形態に係る保護素子を示す模式図である。第2実施形態に係る保護素子は、電流経路を遮断させる機構として、発熱体によるアクティブ遮断機構を有さず、可溶性導体シートに定格電流を超えた過電流が流れた場合に可溶性導体シートが溶断されて電流経路を遮断させる過電流遮断機構のみによる点が第1実施形態に係る保護素子に対する主な相違点である。具体的には、第2実施形態に係る保護素子は、発熱体及び給電部材を有さない点が第1実施形態に係る保護素子に対する主な相違点である。
以下の図面において、第1実施形態に係る保護素子と同様又はほぼ同様の構成部材については同じ符号を付与して説明を省略する。
図12(a)は、
図2に対応する図であり、保護素子の内部が見えるように一部を除去して模式的に示した斜視図であり、(b)は遮蔽部材の斜視図である。
図13は、第2実施形態に係る保護素子の、
図5(a)に対応する断面図である。
図14は、
図6に対応する断面図であり、遮蔽部材がヒューズエレメントを切断して下がりきった状態の保護素子の断面図である。
図15は、ヒューズエレメント積層体、第1端子及び第2端子を第1保持部材に設置された状態を模式的に示した斜視図である。
【0111】
図12~
図15に示す保護素子200は、絶縁ケース11と、ヒューズエレメント積層体140と、第1絶縁部材160Aと、遮蔽部材120と、押圧手段30と、係止部材70と、を有する。なお、本実施形態の保護素子200において、通電方向は、使用時において電気が流れる方向(X方向)を意味し、通電方向の断面積は、通電方向に対して直交する方向の面(Y-Z面)の面積を意味する。
【0112】
(絶縁ケース)
絶縁ケース11は、略長円柱状(Y-Z面の断面がX方向のどの位置でも長円)である。絶縁ケース11は、カバー110Aと保持部材110Bとからなる。
保護素子200は発熱体及び給電部材を有さないため、それに伴って、カバー110A及び保持部材110Bは発熱体用の部位や給電部材用の部位を備えない点がカバー10A及び保持部材10Bに対する差異である。
保持部材110Bは、Z方向で下側に配置する第1保持部材110BaとZ方向で上側に配置する第2保持部材110Bbとからなる。
カバー110A及び保持部材110Bの外形は、小型でアーク放電による内圧上昇に耐える様に略長円柱状とし材料使用量を抑えているが、保護素子の定格電圧・定格電流・遮断容量に応じアーク放電による破壊が起きない限りにおいて、外形は略長円柱状に限らず直方体などの任意の形状を取ることができる。
【0113】
保持部材110Bの内部には、内圧緩衝空間15(
図14参照)が形成されている。内圧緩衝空間15は、ヒューズエレメント積層体140の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子200の内圧の急激な上昇を抑える作用がある。
【0114】
カバー110Aと保持部材110Bの材料としては、カバー10A及び保持部材10Bと同様の材料を用いることができる。
【0115】
(ヒューズエレメント積層体)
ヒューズエレメント積層体140は、厚さ方向に並列配置された複数個の可溶性導体シート50(複数個の可溶性導体シートをまとめてヒューズエレメント50ということがある)と、複数個の可溶性導体シート50の各々の間、及び、複数個の可溶性導体シート50のうちの最下部及び最上部に配置された可溶性導体シート50の外側に近接若しくは接触させた状態で配置され、第1開口部が形成された複数の第1絶縁部材160A(160Aa~160Ag)とを有する。ヒューズエレメント積層体140はヒューズエレメントと第1絶縁部材とからなる。
複数個の可溶性導体シート50は
図4で示したものと同じ構成を有するものであり、上述した特徴の説明は省略する。また、複数の第1絶縁部材160A(160Aa~160Ag)はすべて同じ構成を有する部材であり、
図10(b)で示した第1絶縁部材61Aと同じ構成を有するものであり、上述した特徴の説明は省略する。
【0116】
図12~
図15に示した保護素子200においては、保護素子100が備える第2絶縁部材60Bに対応する箇所に第1絶縁部材を備える点で相違する。保護素子200においても、最上部に配置する第1絶縁部材に替えて、第1絶縁部材とは異なる構成の絶縁部材を備えてもよい。
ここで、保護素子100においては、第2絶縁部材60Bは発熱体80を配置する箇所を備えるなどで第1絶縁部材60Aと相違する。しかし、第1絶縁部材60Aと同様な構成で代用することも可能であり、この場合には第2絶縁部材60Bと第1絶縁部材60Aとは構成上の差異はなくなり、この場合には保護素子100もヒューズエレメント積層体40もヒューズエレメントと第1絶縁部材とからなるものとなる。
【0117】
ヒューズエレメント積層体140は、厚さ方向(Z方向)に並列配置された6個の可溶性導体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fを有する。可溶性導体シート50a~50fの各々の間には、第1絶縁部材160Ab、160Ac、160Ad、160Ae、160Afが配置されている。第1絶縁部材160Ab~160Afは、可溶性導体シート50a~50fの各々に近接もしくは接触させた状態で配置されている。近接させた状態は、第1絶縁部材160Ab~160Afと可溶性導体シート50a~50fとの距離が0.5mm以下の状態であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以下の状態である。
また、可溶性導体シート50a~50fのうちの最下部に配置された可溶性導体シート50aの外側には第1絶縁部材160Aaが配置されている。さらに、可溶性導体シート50a~50fのうちの最上部に配置された可溶性導体シート50fの外側には第1絶縁部材160Agが配置されている。可溶性導体シート50a~50fの幅(Y方向の長さ)は、第1絶縁部材160Aa~160Agの幅よりも狭くなっている。
ヒューズエレメント積層体140は、複数個の可溶性導体シートが6個の例であるが、6個に限定されず、複数個であればよい。
また、可溶性導体シート50a~50fの各々において、溶断され易く構成された溶断部53は遮蔽部材120の凸状部120aによって切断され易い。
【0118】
可溶性導体シート50a~50fの厚さは、過電流によって溶断される厚さとされている。具体的な厚さは可溶性導体シート50a~50fの材料や個数(枚数)、また押圧手段30の押圧力(応力)に依存するが、例えば、可溶性導体シート50a~50fが銅箔である場合は目安として、0.01mm以上0.1mm以下の範囲とすることができる。
また、可溶性導体シート50a~50fがSnを主成分とする合金の周囲をAgでめっきした箔である場合は目安として、0.1mm以上1.0mm以下の範囲とすることができる。
【0119】
第1絶縁部材160Aa~160Agの各々は、X方向における中央部に遮蔽部材120の凸状部120aが移動(通過)可能な第1開口部64Aを有する。
第1絶縁部材160Aa~160Agはヒューズエレメントの遮断時に発生するアーク放電に伴う圧力上昇を絶縁ケースの押圧手段収容空間へ効率良く逃がすための通気孔67Aを有する。図示した例では、第1絶縁部材160Aa~160Agは、それぞれY方向の両端側の、第1開口部64Aを挟んで左右に、通気孔67Aを5個ずつ有するが、個数に制限はない。
アーク放電により発生した上昇圧力は、通気孔67Aを通り、押圧手段支持部120bと第2保持部材110Bbとの間に設けられた四隅の隙間(不図示)を介して、絶縁ケース11の押圧手段30を収容する空間へと効率良く逃がされる。そして、その結果、遮蔽部材120の遮蔽動作がスムーズに行われると共に、第1絶縁部材160Aa~160Agの破壊が防止される。
第1開口部64Aは、可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と第2端部52との間に配置する溶断部53に対向する位置にある。
【0120】
(遮蔽部材)
遮蔽部材120は、ヒューズエレメント積層体140側に向いた凸状部120aと、押圧手段30の下部を収容して支持する凹部120baを有する押圧手段支持部120bとを有する。凸状部120aの先端に係止部材70を挟むための挟み溝120aAを有する。遮蔽部材120では、挟み溝120aAを3個有するが、個数に制限はない。
遮蔽部材120は、押圧手段30の押圧力を下方に付与された状態で、係止部材70によって下方への移動が抑えられている。係止部材70はその突出部70Abが可溶性導体シート50fに接触しているため、可溶性導体シートに定格電流を越えた過電流が流れると、係止部材70は伝熱して昇温し、軟化温度以上の温度において軟化する。また、大きな過電流が流れ瞬時に可溶性導体シート50fが溶断した場合は、発生したアーク放電が係止部材70にも流れ、係止部材70は軟化温度以上の温度において軟化する。軟化した係止部材70は押圧手段30の押圧力によって押圧された遮蔽部材120の凸状部120aによって物理的に切断されやすくなる。
係止部材70が切断されて係止部材70による下方への移動抑制が外れると、遮蔽部材120は下方へ移動して可溶性導体シート50a~50fを物理的に切断する。
遮蔽部材120では、凸状部120aの先端120aaが尖っており、可溶性導体シート50a~50fを切断しやすい形状とされている。
図14に、遮蔽部材120がヒューズエレメント積層体140の第1開口部64Aを移動し、凸状部120aによって可溶性導体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fを切断し、遮蔽部材120が下がりきった状態の保護素子の断面図を示す。
【0121】
遮蔽部材120がヒューズエレメント積層体140の第1開口部64Aを移動して下がっていき、遮蔽部材120の凸状部120aによって可溶性導体シート50f、50e、50d、50c、50b、50aを順に切断すると、切断面同士が凸状部120aによって遮蔽されて絶縁され、各可溶性導体シートを介した通電経路が物理的に確実に遮断される。これによって、アーク放電が迅速に消滅(消弧)する。
また、遮蔽部材120がヒューズエレメント積層体140の第1開口部64Aを移動して下方に下がりきった状態では、遮蔽部材120の押圧手段支持部120bが第1絶縁部材160Agからヒューズエレメント積層体140を押圧し、可溶性導体シートと第1絶縁部材160Aa~160Agとが密着するので、その間にアーク放電が継続できる空間がなくなり、アーク放電が確実に消滅する。
【0122】
凸状部120aの厚み(X方向の長さ)は、第1絶縁部材160Aa~160Agの第1開口部64AのX方向の幅よりも小さい。この構成によって、凸状部120aは第1開口部64AをZ方向下方に移動可能となる。
例えば、可溶性導体シート50a~50fが銅箔である場合は、凸状部120aの厚みと第1開口部64AのX方向の幅との差は例えば、0.05~1.0mmとすることができ、0.2~0.4mmとすることが好ましい。0.05mm以上であると、切断された最小厚み0.01mmの場合の可溶性導体シート50a~50fの端部が第1絶縁部材160Aa~160Agと凸状部120aの隙間に入り込んでも凸状部120aの移動がスムーズとなり、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。これは、上記差が0.05mm以上であると、凸状部120aが引掛りにくいためである。また、上記差が1.0mm以下であると、第1開口部64Aが、凸状部120aを移動させるガイドとして機能する。したがって、可溶性導体シート50a~50fの溶断時に移動する凸状部120aの位置ずれが防止され、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。可溶性導体シート50a~50fがSnを主成分とする合金の周囲をAgでめっきした箔である場合は、凸状部120aの厚みと第1開口部64AのX方向の幅との差は例えば、0.2~2.5mmとすることができ、0.22~2.2mmとすることが好ましい。
【0123】
凸状部120aの幅(Y方向の長さ)は、ヒューズエレメント積層体140の可溶性導体シート50a~50fの幅より広い。この構成によって、凸状部120aが可溶性導体シート50a~50fの各々を切断することが可能である。
【0124】
凸状部120aのZ方向の長さLは、Z方向下方に下がりきったときに、凸状部120aの先端120aaが、第1絶縁部材160Aa~160AgのうちZ方向で最下部に配置する第1絶縁部材160Aaよりも下方まで到達できる長さを有する。凸状部120aは最下部に配置する第1絶縁部材160Aaよりも下がるときには、保持部材110Baの内底面に形成された挿入孔114に挿入される。
この構成によって、凸状部120aが可溶性導体シート50a~50fの各々を切断することが可能となる。
【0125】
(押圧手段)
押圧手段30は、遮蔽部材120をZ方向下方に押圧した状態で遮蔽部材120の凹部120baに収容されている。
押圧手段30は、保護素子100が備えるものと同様なものを用いることができる。
【0126】
(係止部材)
係止部材170の構成(形状や材料)としては係止部材70と同じものを用いてもよい。
保護素子200においては、3個の係止部材170を備えるが、3個に制限されない。
遮蔽部材120の凸状部120aの先端120aaに備える挟み溝120aAに差し込まれた状態で保持される。
【0127】
係止部材170は、T字状の形状を有し、第1腕部170aaと第2腕部170abとからなる横延部(支持部)170aと、横延部170aの中央部から下方に延びる縦延部(突出部)170bとを有する。
保護素子200においては、横延部170aは第1腕部170aa及び第1腕部170aaのそれぞれが、第1絶縁部材160Agの第1開口部64Aを挟んで遮蔽部材側の面160AgSに支持されており、縦延部170bはその下端が可溶性導体シート50fの遮蔽部材側の面50fSに支持されている。図示する例では、第1絶縁部材160Agの遮蔽部材側の面160AgSには係止部材170が載置される溝を有さないが、係止部材170が載置される溝を有してもよい。
縦延部170bが可溶性導体シート50fの遮蔽部材側の面50fSに支持されていると、可溶性導体シート50fに定格電流を越えた過電流が流れる際に、可溶性導体シート50fに接触している係止部材170は伝熱して昇温し、軟化温度以上の温度において軟化する。
保護素子200においては、横延部170a、及び、縦延部170bの両方の部位が支持されているが、いずれか一方が支持されていてもよいが、可溶性導体シート50fに定格電流を越えた過電流が流れる際に軟化するように縦延部170bが可溶性導体シート50fの遮蔽部材側の面50fSに接触して支持されている方が好ましい。縦延部170bが可溶性導体シート50fの遮蔽部材側の面50fSに接触していない場合は、遮蔽部材側の面50fSに近接している方が好ましい。
【0128】
3個の係止部材170はすべて同じ形状であるが、異なる形状のものが含まれてもよい。
【0129】
係止部材170が軟化温度以上の温度になると、外力により変形するくらい柔らかくなる。
軟化した係止部材170は押圧手段30の押圧力によって押圧された遮蔽部材120の凸状部120aによって物理的に切断されやすくなる。係止部材170が切断されると、遮蔽部材120の凸状部120aは、第1開口部64AをZ方向下方に挿入されていく。
凸状部120aが第1開口部64AをZ方向下方に挿入されていく際に、凸状部120aが可溶性導体シートを切断しながら、突き進んで最下位置まで到達する。これによって凸状部120aは可溶性導体シート50a~50fをその溶断部53で第1端子91側と第2端子92側とに遮蔽する。これによって可溶性導体シート50a~50fが切断される際に発生するアーク放電は迅速かつ確実に消滅させることができる。
【0130】
係止部材170では、縦延部170bが可溶性導体シート50fに接触している。そのため、可溶性導体シートに定格電流を越えた過電流が流れると、可溶性導体シート50fに接触している係止部材170は伝熱して昇温し、軟化温度以上の温度において軟化する。
また、大きな過電流が流れ瞬時に可溶性導体シート50fが溶断した場合は、発生したアーク放電が係止部材170にも流れ、係止部材170は軟化温度以上の温度において軟化する。
軟化した係止部材170は押圧手段30の押圧力によって押圧された遮蔽部材120の凸状部120aによって物理的に切断されやすくなる。係止部材170が切断されると、遮蔽部材120の凸状部120aは、第1開口部64AをZ方向下方に挿入されていく。
この場合、可溶性導体シートは定格電流を越えた過電流が流れて熱的に溶断されており、凸状部120aはそのまま第1開口部64AをZ方向下方に挿入されていく。この際、凸状部120aは可溶性導体シート50a~50fをその溶断部で第1端子91側と第2端子92側とに遮蔽する。これによって可溶性導体シート50a~50fが切断される際に発生するアーク放電は迅速かつ確実に消滅させることができる。
仮に可溶性導体シートが未だ熱的に溶断されていないときでも、凸状部120aが第1開口部64AをZ方向下方に挿入されていく際に、凸状部120aが可溶性導体シートを切断しながら、突き進んで最下位置まで到達する。これによって凸状部120aは可溶性導体シート50a~50fをその溶断部で第1端子91側と第2端子92側とに遮蔽する。これによって可溶性導体シート50a~50fが遮断される際に発生するアーク放電は迅速かつ確実に消滅させることができる。
【0131】
第2実施形態に係る保護素子200は、発熱体及び給電部材を有さない点以外は第1実施形態に係る保護素子100と同様又は類似する部材が多いため、その製造方法の説明は省略する。
【0132】
本実施形態の保護素子200では、ヒューズエレメント50(複数個の可溶性導体シート50a~50f)に定格電流を超えた過電流が流れた場合にヒューズエレメント50が熱的に溶断されて電流経路を遮断させる。
【0133】
本実施形態の保護素子200では、押圧手段30による押圧力が付与されている遮蔽部材120の移動を係止部材170によって抑制する構成であるため、電流経路の遮断時以外は、ヒューズエレメント50(複数個の可溶性導体シート50a~50f)に押圧手段30と遮蔽部材120とによる切断押圧力がかからない。そのため、ヒューズエレメント50の経時劣化が抑制され、また、電流経路の遮断が必要でないときにヒューズエレメント50が昇温した際に押圧力が付与された状態であることに起因する断線を防止できる。
【0134】
本実施形態の保護素子200では、ヒューズエレメント積層体140が厚さ方向に並列配置された複数個の可溶性導体シート50a~50fを含み、その可溶性導体シート50a~50fの各々がその間に配置された第1絶縁部材160Ab~160Af及び可溶性導体シート50a、50fの外方に配置された第1絶縁部材160Aa~160Agと近接もしくは接触(密着)して絶縁されている。このため、可溶性導体シート50a~50fの各々に流れる電流値が小さくなり且つ可溶性導体シート50a~50fを取り巻く空間が極めて狭くなり、溶断することによって発生するアーク放電の規模が小さくなりやすくなる。よって、本実施形態の保護素子200によれば、絶縁ケース11のサイズを小型軽量化することが可能となる。
【0135】
本実施形態の保護素子200において、可溶性導体シート50a~50fのうちの最下部に配置された可溶性導体シート50aと絶縁ケース11の第1保持部材110Baとの間に第1絶縁部材160Aaが配置し、また、可溶性導体シート50a~50fのうちの最上部に配置された可溶性導体シート50fと絶縁ケース11の第2保持部材110Bbとの間の各々に1絶縁部材160Agが配置されていると、可溶性導体シート50a、50fが第1保持部材110Ba、第2保持部材110Bbと直接接触しないので、アーク放電によって、これらの絶縁ケース11の内部表面に導電路となる炭化物が形成されにくくなるので、絶縁ケース11のサイズを小型にしてもリーク電流が発生しにくくなる。
【0136】
本実施形態の保護素子200において、第1絶縁部材160Aa~160Agが可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と第2端部52との溶断部53に対向する位置で開口を有すると、可溶性導体シート50a~50fが溶断部53で溶断したときに、第1絶縁部材160Aa~160Agの表面の連続的な溶融飛散物の付着を抑制することができる。このため、可溶性導体シート50a~50fの溶断によって発生したアーク放電を早期に消弧させることができる。
【0137】
本実施形態の保護素子200において、第1絶縁部材160Aa~160Ag、遮蔽部材120、絶縁ケース11のカバー110A、および保持部材110Bのうち少なくとも一つが、耐トラッキング指標CTIが500V以上の材料で形成されていると、アーク放電によって、これらの部品の表面に導電路となる炭化物が形成されにくくなるので、絶縁ケース11のサイズを小型にしてもリーク電流がより発生しにくくなる。
【0138】
本実施形態の保護素子200において、第1絶縁部材160Aa~160Ag、遮蔽部材120、絶縁ケース11のカバー110A、および保持部材110Bのうち少なくとも一つが、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂で形成されていると、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂は、絶縁性と耐トラッキング性とが優れるので、小型化と軽量化を両立しやすくなる。
【0139】
本実施形態の保護素子200において、可溶性導体シート50a~50fの各々が、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体であり、低融点金属層がSnを含み、高融点金属層がAgもしくはCuを含むと、低融点金属層が溶融することによって高融点金属がSnによって溶解されるので、可溶性導体シート50a~50fの溶断温度が低くなる。また、AgやCuはSnよりも物理的強度が高いため、低融点金属層に高融点金属層を積層した可溶性導体シート50a~50fの物理的強度は、低融点金属層単体の物理的強度よりも高くなる。さらには、AgやCuはSnよりも電気抵抗率が低く、低融点金属層に高融点金属層を積層した可溶性導体シート50a~50fの電気抵抗値は、低融点金属層単体の電気抵抗値よりも低くなる。即ち、より大電流対応のヒューズエレメントとなる。
【0140】
本実施形態の保護素子200において、可溶性導体シート50a~50fの各々が、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層を1層以上有し、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された積層体であると、外側に高融点金属層があるので、可溶性導体シート50a~50fの強度が高くなる。特に、可溶性導体シート50a~50fの第1端部51と第1端子91および第2端部52と第2端子92とをハンダ付けで接続する場合には、ハンダ付け時の加熱による可溶性導体シート50a~50fの変形が起こりにくくなる。
【0141】
本実施形態の保護素子200において、可溶性導体シート50a~50fの各々が、銀もしくは銅を含む単層体であると、高融点金属層と低融点金属層の積層体である場合と比較して、電気抵抗率が小さくなりやすい。このため、銀もしくは銅を含む単層体からなる可溶性導体シート50a~50fは、高融点金属層と低融点金属層の積層体からなる可溶性導体シート50a~50fと同じ面積で同等の電気抵抗を有する場合でも、厚みを薄くすることができる。可溶性導体シート50a~50fの厚みが薄いと、可溶性導体シート50a~50fが溶断したときの溶融飛散物量も厚みに比例して少なくなり、遮断後の絶縁抵抗が高くなる。
【0142】
本実施形態の保護素子200において、可溶性導体シート50a~50fの各々は、溶断部53に貫通孔54が設けられていて、第1端部51および第2端部52の通電方向の断面積より溶断部53の通電方向の断面積が小さくなるようにされた溶断部を有しているので、電流経路に定格を超える電流が流れたとき溶断する部位が安定する。なお、本実施形態の保護素子200においては溶断部53に貫通孔54を設けているが、溶断部53の断面積が小さくする方法に特に制限はない。例えば、溶断部53の両端部を凹状に切り取ることや部分的に厚みを薄くすることによって、溶断部53の断面積を小さくしてもよい。
【0143】
(ヒューズエレメント(第3実施形態))
図16は、第3実施形態に係るヒューズエレメントの模式図であり、
図4(a)に対応する平面図である。
図17は、第3実施形態に係るヒューズエレメントの模式図であり、
図4(c)に対応する断面図である。
図18(a)は第3実施形態に係るヒューズエレメントの断面図であり、(b)はヒューズエレメントの平面図である。以下の図において、上述した構成と同様又はほぼ同様の構成部材については同じ符号を付与して説明を省略する。
【0144】
図16から
図18に示すように、複数個のヒューズエレメント550の各々は、第1端部551と第2端部552の間に電流経路を遮断させるための遮断部553(可溶導体)を有し、遮断部553に低融点金属層又は低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を有し、かつ、第1端部551及び第2端部552の両方に高融点金属層を有し、低融点金属層がSnを含み、高融点金属層がAgもしくはCuを含むなどで、
図4で示したものと相違する。ただし、複数個のヒューズエレメント550の配置などは
図4で示したものと同様の構成を有するものであり、上述した特徴の説明は省略する。また、複数の第1絶縁部材160A(160Aa~160Ag)はすべて同じ構成を有する部材であり、
図15で示したものと同じ構成を有するものであり、上述した特徴の説明は省略する。
【0145】
例えば、遮断部553に錫などの低融点金属、又は錫などの低融点金属に銀や銅などの高融点金属を積層させた材料を用い、その両端に銅や銀などの高融点金属箔555、556(遮断部よりも低抵抗かつ高融点の材料で形成したもの)を接続させることができる。これにより、定格電流の1.35~2倍の通電から10倍以上での爆発的な遮断にわたって絶縁部材や絶縁ケースの破損無くヒューズエレメントの通電を遮断することができるようになる。
【0146】
例えば、端子間のヒューズエレメントが同一材料からなる場合でも遮断部の厚みを薄くすることでヒートスポットを形成できるが、定格電流の1.35~2倍の通電時に遮断部が長時間高温状態となる場合がある。この場合、金属箔に低抵抗材料である銀や銅を使用すると、絶縁部材や絶縁ケースが溶融してしまう可能性がある。また、ヒューズエレメントに錫などの低融点金属を使用すると、銅よりも抵抗が高いため、定格電流を上げられない可能性がある。これに対し本実施形態では、遮断部553に錫などの低融点金属、又は錫などの低融点金属に銀や銅などの高融点金属を積層させた材料を用い、その両端に銅や銀などの高融点金属箔555、556を接続させたことで、2000A程度の大電流で遮断(爆発)するのとは異なり、150Aから250A程度の低電流でも遮断部553をゆっくり暖めて切断できるため、絶縁部材や絶縁ケースが溶融してしまう可能性は低い。また本実施形態では、遮断部553の低融点金属に高融点金属を積層させることで、遮断部553の厚みが薄くても低抵抗化することができるため、定格電流を上げられない可能性は低い。
例えば、遮断部が銅のみの場合、遮断部が銅の融点である1000℃以上まで加熱されるため、低電流遮断時に絶縁ケース(例えばナイロン)が溶融してしまう可能性が高い。これに対し本実施形態では、遮断部553に錫と銀の積層体を用いることで、融点が約300℃になるため、低電流遮断時に300℃程度で溶断することにより、絶縁ケースが溶ける前に加熱が止まる。
なお、低電流遮断時の電流値は定格電流に依存するため、定格電流の1.35~2倍は、定格150Aでは210~300Aになり、定格300Aでは420~600Aとなる。
【0147】
例えば、絶縁ケースは耐トラッキング性の高いナイロン等の樹脂材料で形成することができる。例えば、絶縁ケースの材料と低融点金属層の材料との融点の差は、200℃以内であることが好ましい。これにより、低電流から大電流にわたって絶縁ケースを破損させずにヒューズエレメントの通電を遮断することができるようになる。
例えば、絶縁ケースの材料と低融点金属層の材料との融点の差は、100℃以内であることがより好ましく、50℃以内であることが更に好ましい。
【0148】
例えば、遮断部553が低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を有する場合は、遮断部553の厚みが薄くても低抵抗化することができる。このため、バネやゴム等の押圧手段での切断(遮断信号による切断)と定格電流アップとを両立することができるようになる。以上により、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子が実現できる。
【0149】
ヒューズエレメント550の厚さは、過電流によって溶断される厚さとされている。具体的な厚さはヒューズエレメント550の材料や個数(枚数)、また押圧手段30の押圧力(応力)に依存する。例えば、ヒューズエレメント550の各々が可溶導体553(遮断部)の両端に金属箔555、556を接続させたものである場合は、金属箔555、556及び可溶導体553の寸法や形状の条件などは以下の範囲とすることができる。例えば、金属箔555、556の厚み555t、556tは、0.01mm以上0.2mm以下の範囲とすることができ、0.1mm以下とすることがより好ましい。例えば、可溶導体553の厚み553tは、0.01mm以上0.2mm以下の範囲とすることができ、0.1mm以下とすることがより好ましい。例えば、可溶導体553の長さ553Lは、1mm以上5mm以下の範囲とすることができ、4mm以下とすることがより好ましく、3mm以下とすることが更に好ましい。ここで、金属箔555、556の幅555w、556wに対する長さ1cmあたりの抵抗値をR1とし、可溶導体553の幅553wに対する長さ1cmあたりの抵抗値をR2とする。例えば、その抵抗比R2/R1は、2以上20以下の範囲とすることができ、2以上10以下の範囲とすることがより好ましい。
低抵抗化(定格電流アップ)のために並列も可能であり、配置に制限はない。図示した例では、複数個のヒューズエレメントが6個の例であるが、個数に制限はない。
【0150】
例えば、可溶導体553の両端に接続した高融点金属箔555、556が銅で形成されている場合、金属箔555、556の厚み555t、556tは0.06mm、幅555w、556wは16mm、抵抗率は1.7×10-8[Ω・m]とすることができる。例えば、可溶導体553が錫及び銀の積層体(外周めっき)である場合、可溶導体553の厚み553tは0.077mm(うち銀めっき厚は0.007mm)、幅553wは9mm、長さ553Lは3mm、抵抗率は7.0×10-8[Ω・m]とすることができる。例えば、金属箔555、556の幅555w、556wに対する長さ1cmあたりの抵抗値R1は0.18mΩとし、可溶導体553の幅553wに対する長さ1cmあたりの抵抗値R2は1.11mΩとし、抵抗比R2/R1は6.3とすることができる。なお、上記の各値は一例であり、限定されない。
【0151】
例えば、可溶導体553が錫の外周を銀でめっきしたものである場合は、可溶導体553は230℃程度の温度で溶けはじめ、絶縁部材(例えばナイロン等の樹脂材料)が溶ける前に可溶導体553が溶ける。すなわち、ヒューズエレメント550が溶ける際は、絶縁部材は溶けない。したがって、低電流でもヒューズエレメント550の通電を安全に遮断することができる。さらに、可溶導体553が錫の外周を銀でめっきしたものである場合は、銅よりも低融点かつ高抵抗となるので、大電流でもヒートスポットを形成でき、ヒューズエレメント550の通電を遮断することができる。つまり、低電流でも大電流でも抵抗が高い可溶導体部分がヒートスポットとなり、可溶導体部分でのヒートスポット形成により、ヒューズエレメント550の通電を遮断することができる。
【0152】
(ヒューズエレメントの製造方法)
本実施形態のヒューズエレメントは、次のようにして製造することができる。
例えば、
図19(a)に示すように、先ず、可溶導体553Aと2つの金属箔555、556とを用意する。そして、可溶導体553Aの両端に2つの金属箔555、556を接続する。例えば、可溶導体553Aの一端に一方の金属箔555の端部をハンダ付けによって接続するとともに、可溶導体553Aの他端に他方の金属箔556の端部をハンダ付けによって接続する。ハンダ付けに使用されるハンダ材料としては、公知のものを用いることができ、抵抗率と融点および環境対応鉛フリーの観点からSnを主成分とするものを用いることが好ましい。可溶導体553Aと金属箔555、556との接続は、ハンダ付けに限定されるものではなく、溶接による接合など公知の接合方法を用いてもよい。
【0153】
例えば、可溶導体553と金属箔555、556との接続は、同一面でもよいし、重なっていてもよい。例えば、可溶導体553のZ方向の上面及び下面は、それぞれ2つの金属箔555、556のZ方向の上面及び下面と同一面に配置されてもよい。例えば、
図19(b)に示すように、可溶導体553Bの一端側のZ方向の下面が一方の金属箔555の端部側のZ方向の上面に接続され、可溶導体553Bの他端側のZ方向の下面が他方の金属箔556の端部側のZ方向の上面に接続されてもよい。可溶導体553と金属箔555、556との接続は、上記に限定されない。
【0154】
例えば、
図20に示すように、ヒューズエレメントの上面視において金属箔555、556と可溶導体553Cの幅とは異なっていてもよい。例えば、金属箔555、556の幅が可溶導体553Cの幅553Cwよりも大きいことが好ましい。これにより、抵抗の差が出やすくなるため、可溶導体553Cをより切断しやすくなる。
図の例では、金属箔555、556の幅が可溶導体553Cの幅553Cwよりも大きい例であるが、幅の大小関係は限定されない。
【0155】
例えば、ヒューズエレメントの断面視において可溶導体553の構成は種々の構成を採用することができる。
例えば、
図21(a)に示すように、可溶導体553Dにおいて高融点金属層553Daは低融点金属層553Dbの全面を覆っていてもよい。図の例では、断面視矩形形状の低融点金属層553Dbの外面全体を覆うように断面視矩形枠状の高融点金属層553Daが配置されているが、この配置に限定されない。
【0156】
例えば、
図21(b)に示すように、可溶導体553Eにおいて低融点金属層553Ebは高融点金属層553Eaの全面を覆っていてもよい。図の例では、断面視矩形形状の高融点金属層553Eaの外面全体を覆うように断面視矩形枠状の低融点金属層553Ebが配置されているが、この配置に限定されない。
【0157】
例えば、
図21(c)に示すように、可溶導体553Fにおいて高融点金属層553Faは低融点金属層553FbのZ方向の上面及び下面のみを覆っていてもよい。図の例では、断面視矩形形状の低融点金属層553Fbの上面及び下面のみに沿うように高融点金属層553Faが配置されているが、この配置に限定されない。
【0158】
例えば、
図21(d)に示すように、可溶導体553Gにおいて低融点金属層553Gbは高融点金属層553GaのZ方向の上面及び下面のみを覆っていてもよい。図の例では、断面視矩形形状の高融点金属層553Gaの上面及び下面のみに沿うように低融点金属層553Gbが配置されているが、この配置に限定されない。
【0159】
例えば、
図21(e)に示すように、可溶導体553Hにおいて高融点金属層553Haは低融点金属層553HbのZ方向の片側面のみを覆っていてもよい。図の例では、断面視矩形形状の低融点金属層553Hbの上面のみに沿うように高融点金属層553Haが配置されているが、この配置に限定されない。
【0160】
例えば、
図21(f)に示すように、可溶導体553Iにおいて高融点金属層553Ia及び低融点金属層553Ibの各々は多層であってもよい。図の例では、可溶導体553Iは3層の高融点金属層553Iaと2層の低融点金属層553Ibとが交互に積層された5層の多層積層であるが、この層数や配置に限定されない。
【0161】
例えば、
図22に示すように、ヒューズエレメント550は、可溶導体553の両端に金属箔555、556が接続された単層体で構成されていてもよい。
例えば、
図23に示すように、ヒューズエレメント550は、複数個のヒューズエレメント550a~550fが積層された積層体で構成されていてもよい。図の例では、6個のヒューズエレメント550a~550fが積層されているが、この数や配置に限定されない。
【0162】
本実施形態のヒューズエレメント550は、遮断部553に低融点金属層又は低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を有し、かつ、第1端部551及び第2端部552の両方に高融点金属層を有し、低融点金属層は錫を含み、高融点金属層は銀もしくは銅を含む。これにより、定格電流の1.35~2倍の通電から10倍以上での爆発的な遮断にわたって絶縁部材や絶縁ケースの破損無くヒューズエレメント550の通電を遮断することができるようになる。また、遮断部553が低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体を有する場合は、遮断部553の厚みが薄くても低抵抗化することができる。このため、バネやゴム等の押圧手段での切断(遮断信号による切断)と定格電流アップとを両立することができるようになる。したがって、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子が実現できる。
【0163】
(ヒューズエレメント(第4実施形態))
図24は、第4実施形態に係るヒューズエレメントの模式図であり、
図4(a)に対応する平面図である。
図25は、第4実施形態に係るヒューズエレメントの模式図であり、
図4(c)に対応する断面図である。
図26は、第4実施形態に係るヒューズエレメントの断面図である。以下の図において、上述した構成と同様又はほぼ同様の構成部材については同じ符号を付与して説明を省略する。
【0164】
図24から
図26に示すように、複数個のヒューズエレメント650の各々は、ヒューズエレメント650において遮断部653の厚みが遮断部以外655、656の厚みよりも薄いなどで、
図4で示したものと相違する。ただし、複数個のヒューズエレメント650の配置などは
図4で示したものと同様の構成を有するものであり、上述した特徴の説明は省略する。また、複数の第1絶縁部材160A(160Aa~160Ag)はすべて同じ構成を有する部材であり、
図15で示したものと同じ構成を有するものであり、上述した特徴の説明は省略する。
【0165】
ヒューズエレメント650の厚さは、過電流によって溶断される厚さとされている。具体的な厚さはヒューズエレメント650の材料や個数(枚数)、また押圧手段30の押圧力(応力)に依存する。例えば、ヒューズエレメント650の各々が銅箔で形成されたものである場合は、遮断部653及び遮断部以外655、656の寸法や形状の条件などは以下の範囲とすることができる。例えば、遮断部以外655、656の厚みt1と遮断部653の厚みt2との厚み比t1/t2は、2以上とすることができ、3以上30以下の範囲とすることがより好ましく、4以上30以下の範囲とすることが更に好ましい。例えば、遮断部653の厚みt2は、0.05mm以下とすることができ、0.04mm以下とすることがより好ましく、0.03mm以下とすることが更に好ましい。例えば、遮断部653の長さx2は、1mm以上5mm以下の範囲とすることができ、4mm以下とすることがより好ましく、3mm以下とすることが更に好ましい。
低抵抗化(定格電流アップ)のために並列も可能であり、配置に制限はない。図示した例では、複数個のヒューズエレメント650が6個の例であるが、個数に制限はない。
【0166】
例えば、ヒューズエレメント650が銅箔で形成されている場合、遮断部653の厚みt2は0.01mmとすることができる。
図27は、遮断部以外の厚みt1と遮断部の厚みt2との厚み比t1/t2と、ヒューズ抵抗(6層)との関係を示す。
図27では、遮断部653の長さx2が1mmの場合及び3mmの場合をそれぞれ示す。
図27に示すように、遮断部以外の厚みt1が厚くなるほど低抵抗化する傾向がある。厚み比t1/t2が30以上になると、ヒューズ抵抗はほとんど変化しない。厚み比t1/t2が2より小さいと、遮断部以外の部分と遮断部との抵抗差が小さく、ヒートスポットが形成しにくくなる。なお、上記の各値は一例であり、限定されない。
【0167】
例えば、ヒューズエレメントに銅や銀、錫などの金属箔を使用する保護素子においては、遮断部と遮断部以外の厚み差を2倍以上、かつ、遮断部の長さを5mm以下とすると好ましい。これにより、過電流時に厚みの薄い遮断部にヒートスポットを形成してヒューズエレメントを溶断させることができる。
【0168】
例えば、ヒューズエレメントが遮断部に孔を有する場合(
図4に示すように、X方向に一様な厚みを有する場合)は、遮断部の切断強度が高いため、バネやゴム等の弾性力で駆動される遮蔽部材の力で切断しにくい。遮断部を切断しやすくするためには薄くする必要があるが、孔を有する遮断部を薄くすると高抵抗になり、定格電流を上げられない可能性がある。これに対し本実施形態では、遮断部653の厚みのみが薄いことで、ヒューズエレメント650の低抵抗化が可能になるとともに、薄い部分が高抵抗のため、過電流時にヒートスポットを形成し、大規模なアーク放電を発生させることなく、特定部分(遮断部653)を溶断させることができる。また、遮断の際の溶断体積が小さいことで、導通経路が形成しにくくなり、絶縁抵抗が高くなる。さらに、遮断信号による遮断の際、遮断部653の厚みが0.05mm以下であれば、バネやゴム等の弾性力で切断できる。以上により、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子が実現できる。
【0169】
ヒューズエレメントの構造は種々の構造を採用することができる。
例えば、
図29に示すように、ヒューズエレメントにおいて溶断部653A(遮断部)は、切込み653Aaを有していてもよい。これにより、切込み653Aaが切断のきっかけとなるため、遮蔽部材で切断しやすくなる。図の例では、溶断部653AにおいてY方向の一辺から内側に窪むように1つの切込み653Aaが形成されているが、この配置や数に限定されない。
【0170】
例えば、
図30に示すように、溶断部653Bは複数の切込み653Ba~653Bcを有していてもよい。図の例では、溶断部653BにおいてY方向の2辺から内側に窪むように形成された2つの切込み653Ba、653Bbと、溶断部653BにおいてY方向の中央に開口する1つの切込み653Bc(貫通孔)とを含むが、この配置や数に限定されない。
【0171】
例えば、
図31に示すように、ヒューズエレメントにおいて厚みが薄い部分653Cは複数箇所あってもよい。これにより、過電流遮断時のアーク放電を低減できる。図の例では、ヒューズエレメントのX方向において間隔をあけて3つの薄肉部653C(厚みが薄い部分)が形成されているが、この配置や数に限定されない。例えば、ヒューズエレメントの各層において薄肉部は2つ配置されていてもよいし、4つ以上配置されていてもよい。
【0172】
(ヒューズエレメントの製造方法)
本実施形態のヒューズエレメントは、次のようにして製造することができる。
例えば、
図32に示すように、先ず、複数の金属箔661、662を用意する。例えば、複数の金属箔661、662として、第1の金属箔661と、第1の金属箔661よりも厚みが厚い第2の金属箔662と、を用意する。そして、第1の金属箔661の両端側に2つの第2の金属箔662を接続する。例えば、第1の金属箔661の一端側に一方の第2の金属箔662をハンダ付けによって接続するとともに、第1の金属箔661の他端側に他方の第2の金属箔662をハンダ付けによって接続する。すなわち、第1の金属箔661のZ方向に垂直な一面に2つの第2の金属箔662をハンダ付けで接続して溶断部以外を積層する。ハンダ付けに使用されるハンダ材料663としては、公知のものを用いることができ、抵抗率と融点および環境対応鉛フリーの観点からSnを主成分とするものを用いることが好ましい。第1の金属箔661と第2の金属箔662との接続は、ハンダ付けに限定されるものではなく、溶接による接合など公知の接合方法を用いてもよい。
【0173】
例えば、
図33に示すように、ヒューズエレメントは、溶断部を切削することで製造してもよい。まず、1つの金属箔665を用意する。例えば、金属箔665として、溶断部以外の部分の厚みを一様に有するものを用意する。そして、切削部材666により、金属箔665において溶断部となる部分のみを切削する。
【0174】
例えば、
図34に示すように、ヒューズエレメントは、溶断部を押圧により潰すことで製造してもよい。まず、土台668の上に金属箔669を設置する。例えば、金属箔669として、溶断部以外の部分の厚みを一様に有するものを用意する。そして、金属箔669において溶断部となる部分に押圧部材670を押し付け、溶断部を押圧により潰す。
図の例では、押圧部材670が断面円形状を有する例であるが、押圧部材670が断面矩形状を有していてもよく、押圧部材670の形状は上記に限定されない。
【0175】
例えば、
図35及び
図36に示すように、ヒューズエレメントは、溶断部以外を折って積層することで製造してもよい。まず、所定形状の金属箔672を用意する。例えば、
図35に示すように、金属箔672として、平面視でU字形状のものを用意する。図中一点鎖線は谷折り、破線は山折りを示す。そして、金属箔672を折り目に沿って折るとともに積層し、
図36に示すようなヒューズエレメントを製造する。
金属箔の形状は上記に限定されない。例えば、
図37に示すように、金属箔674として、平面視で長方形状のものを用意してもよい。図中一点鎖線は谷折り、破線は山折りを示す。この場合においても、金属箔674を折り目に沿って折るとともに積層し、
図36に示すようなヒューズエレメントを製造することができる。
【0176】
例えば、
図38に示すように、ヒューズエレメントは、プレスで溶断部以外を圧着することで製造してもよい。先ず、複数の金属箔676、677、678を用意するとともに、プレス機械に下金型679及び上金型680を装着する。例えば、複数の金属箔676、677、678として、第1の金属箔676と、第1の金属箔676よりも厚みが厚い第2の金属箔677、678と、を用意する。そして、下金型679の上に第1の金属箔676を設置するとともに、上金型680において第1の金属箔676の一端側と対向する部分に一方の第2の金属箔677を設置し、かつ、第1の金属箔676の他端側と対向する部分に他方の第2の金属箔678を設置する。次に、下金型679及び上金型680を上下方向に相対移動させることによって第1の金属箔676を第2の金属箔677、678に押し付ける。すなわち、第1の金属箔676のZ方向の一面に2つの第2の金属箔677、678をプレスで溶断部以外を圧着する。
【0177】
例えば、ヒューズエレメントの製造方法は上記に限定されず、種々の方法を採用することができる。例えば、エッチング、超音波溶着、溶接又はスポット溶接等の方法により、ヒューズエレメント(ヒューズエレメントにおいて遮断部の厚みが遮断部以外の厚みよりも薄いもの)を製造してもよい。
【0178】
本実施形態のヒューズエレメントにおいて遮断部653の厚みt2は、遮断部以外655、656の厚みt1よりも薄い。これにより、遮断部653の厚みt2のみが薄いことで、ヒューズエレメントの低抵抗化が可能になるとともに、薄い部分が高抵抗のため、過電流時にヒートスポットを形成し、大規模なアーク放電を発生させることなく、特定部分(遮断部653)を溶断させることができる。また、遮断の際の溶断体積が小さいことで、導通経路が形成しにくくなり、絶縁抵抗が高くなる。さらに、遮断信号による遮断の際、遮断部653の厚みt2が0.05mm以下であれば、バネやゴム等の弾性力で切断できる。したがって、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子が実現できる。
【0179】
(保護素子(第5実施形態))
図39は、本発明の第5実施形態に係る保護素子の、
図5(a)に対応する断面図である。第5実施形態に係る保護素子は、ヒューズエレメントが2つのケース部品の間に挟まれている点が第1実施形態に係る保護素子に対する主な相違点である。
図39において、第1実施形態に係る保護素子及び上述した変形例の構成と同様又はほぼ同様の構成部材については同じ符号を付与して説明を省略する。
【0180】
図39に示す保護素子300は、絶縁ケース310と、ヒューズエレメント250と、遮蔽部材320と、押圧手段30と、係止部材370と、発熱体80と、給電部材90と、第1端子291と、第2端子292とを有する。なお、本実施形態の保護素子300において、通電方向は、使用時において電気が流れる方向(X方向)を意味し、通電方向の断面積は、通電方向に対して直交する方向の面(Y-Z面)の面積を意味する。
【0181】
(絶縁ケース)
絶縁ケース310は、カバー310Aと保持部材310Bとからなる。カバー310Aと保持部材310Bの材料としては、カバー10A及び保持部材10Bと同様の材料を用いることができる。保持部材310Bの内部には、内圧緩衝空間15が形成されている。内圧緩衝空間15は、ヒューズエレメント250の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子300の内圧の急激な上昇を抑える作用がある。
【0182】
保持部材310Bは、Z方向で下側に配置する第1保持部材310BaとZ方向で上側に配置する第2保持部材310Bbとからなる。第2保持部材310Bbは2つのケース部品の一方の一例であり、第1保持部材310Baは2つのケース部品の他方の一例である。
【0183】
図の例では、絶縁ケース310は、少なくとも2つのケース部品(Z方向で下側に配置する第1保持部材310BaとZ方向で上側に配置する第2保持部材310Bb)から成り、一方のケース部品である第2保持部材310Bbが第1絶縁部材と一体であるが、これに限定されない。例えば、保護素子が第1絶縁部材及び第2絶縁部材を有する場合は、一方のケース部品が第1絶縁部材と一体且つ他方のケース部品が第2絶縁部材と一体であってもよいし、一方のケース部品が第1絶縁部材と一体又は他方のケース部品が第2絶縁部材と一体であってもよい。
【0184】
(ヒューズエレメント)
図の例では、ヒューズエレメント250は、単層体である。ヒューズエレメント250は
図18で示したものと同じ構成を有するものであり、上述した特徴の説明は省略する。
【0185】
図の例では、ヒューズエレメント250は、第1保持部材310Baと第2保持部材310Bbとの間に挟まれているが、これに限定されない。例えば、ヒューズエレメント250は、第1絶縁部材又は第2絶縁部材を介して、第1保持部材310Baと第2保持部材310Bbとの間に配置されていてもよい。例えば、ヒューズエレメント250は、2つのケース部品に近接若しくは接触させた状態で2つのケース部品の間に配置されていてもよい。
【0186】
図の例では、第2保持部材310Bbが第1絶縁部材と一体であり、ヒューズエレメント250が第2保持部材310Bbの下面に沿って配置されているが、これに限定されない。例えば、第1保持部材310Baが第1絶縁部材と一体である場合は、ヒューズエレメントが第1保持部材310Baの上面に沿って配置されていてもよい。第1保持部材310Ba又は第2保持部材310Bbに対するヒューズエレメント250の配置は、上記に限定されない。
【0187】
(遮蔽部材)
遮蔽部材320は、ヒューズエレメント250側に向いた凸状部320aと、押圧手段30の下部を収容して支持する凹部320baを有する押圧手段支持部320bとを有する。凸状部320aは、ヒューズエレメント250側に向かって突出している。
遮蔽部材320は、押圧手段30の押圧力を下方に付与された状態で、係止部材370によって下方への移動が抑えられている。そのため、係止部材370が発熱体80の発熱によって加熱され軟化温度以上の温度で軟化されると、遮蔽部材320は下方へ移動可能になる。このとき、軟化された係止部材370はその材料の種類や加熱状況等によって、押圧手段30の押圧力によって物理的に押し潰され、あるいは、熱的に溶断され、あるいは押圧手段30による物理的な力と熱的溶断が合わさった作用を受ける。
遮蔽部材320は、係止部材370による下方への移動抑制が外れると、下方へ移動してヒューズエレメント250を物理的に切断する。
遮蔽部材320では、凸状部320aの先端320aaが尖っており、ヒューズエレメント250を切断しやすい形状とされている。
【0188】
例えば、遮蔽部材320が下方へ移動し、遮蔽部材320の凸状部320aによってヒューズエレメント250を切断すると、切断面同士が凸状部320aによって遮蔽されて絶縁され、ヒューズエレメント250を介した通電経路が物理的に確実に遮断される。これによって、アーク放電が迅速に消滅(消弧)する。
【0189】
(押圧手段)
押圧手段30は、遮蔽部材320をZ方向下方に押圧した状態で遮蔽部材320の凹部320baに収容されている。押圧手段30は、遮蔽部材320の凹部320baに縮められた状態で保持されている。押圧手段30は、
図5で示したものと配置は異なるが同じ構成を有するものであり、上述した特徴の説明は省略する。
【0190】
図の例では、押圧手段30として円錐状のバネを用い、外径の大きい側をヒューズエレメント250側に向けて配置し、そのZ方向の上部に第3保持部材310Bcを円錐状のバネを押し縮めるように配置している。このため、第2保持部材3101Bbの上側からバネを挿入した際に位置決め安定性が高まり、製造プロセスの自動化を図る上で好ましい。
【0191】
(係止部材)
係止部材370は、遮蔽部材320の移動を抑える。係止部材370は、遮蔽部材320の上部に設けられている。係止部材370は、第2保持部材310Bbの上部と遮蔽部材320の上部とに支持されている。第2保持部材310Bbの上部と遮蔽部材320の上部とには、係止部材370の形状と位置に対応した凹部があり、その凹部が係止部材370を挟み込む様に安定して保持する。
【0192】
(発熱体)
発熱体80は、係止部材370のX方向の外面に接触するように載置されている。発熱体80は、係止部材370若しくは係止部材370を固定する固定部材(例えば、2枚の係止部材370間を接合するはんだや、発熱体80と係止部材370間を接合するはんだ)を加熱し軟化させる。図の例では、2個の発熱体80のそれぞれに給電部材90が接続されているが、これに限定されない。
【0193】
発熱体80に電流が通電されると、発熱体80が発熱し、係止部材370に伝熱して係止部材370は昇温し軟化温度以上の温度において軟化する。ここで、軟化温度とは、固相と液相が混在あるいは共存する温度あるいは温度範囲を意味する。係止部材370が軟化温度以上の温度になると、外力により変形するくらい柔らかくなる。
軟化した係止部材370は押圧手段30の押圧力によって物理的に押し千切られやすくなる。係止部材370が押し千切られ又は熱的に溶断されると、遮蔽部材320の凸状部320aは、第2保持部材310Bbの隙間をZ方向下方に挿入されていく。すると、凸状部320aがヒューズエレメント250を切断しながら、突き進んで最下位置まで到達する。これによって凸状部320aはヒューズエレメント250をその溶断部で第1端子291側と第2端子292側とに遮蔽する。これによってヒューズエレメント250が切断される際に発生するアーク放電は迅速かつ確実に消滅させることができる。
【0194】
また、発熱体80は電流を通電させることによって発熱し、その熱によって係止部材370を加熱して軟化、溶融する。係止部材370の溶融によって、押圧手段30によってZ方向下方に押圧力が付与されている遮蔽部材320は下方へ移動し、ヒューズエレメント250を切断し、ヒューズエレメント250を第1端子291側と第2端子292側に遮蔽する。
更に、2枚の係止部材370間を固定部材で接合する複合係止構造を用いる場合や、係止部材370と発熱体80の間を固定部材で接合する構造を用いる場合は、発熱体80は電流を通電させることによって発熱し、その熱によって固定部材が軟化、溶融する。固定部材の軟化、溶融によって、押圧手段30によってZ方向下方に押圧力が付与されている遮蔽部材320は下方へ移動し、ヒューズエレメント250を切断し、ヒューズエレメント250を第1端子291側と第2端子292側に遮蔽する。
なお、固定部材が軟化する場合は、固定部材を離間することとなる。つまり、係止部材370は切断できず解放される(外れる)こととなる。
【0195】
本実施形態の保護素子300では、絶縁ケース310は、少なくとも2つのケース部品(Z方向で下側に配置する第1保持部材310BaとZ方向で上側に配置する第2保持部材310Bb)とからなり、一方のケース部品である第2保持部材310Bbが第1絶縁部材と一体である。このため、第1絶縁部材を別に設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができ、低コスト化に寄与する。
【0196】
本実施形態の保護素子300では、ヒューズエレメント250は、第1保持部材310Baと第2保持部材310Bbとの間に挟まれている。これにより、ヒューズエレメント250は、第1保持部材310Baと第2保持部材310Bbとに近接もしくは接触(密着)して絶縁されている。このため、ヒューズエレメント250を取り巻く空間が極めて狭くなり、溶断することによって発生するアーク放電の規模が小さくなりやすくなる。よって、本実施形態の保護素子300によれば、絶縁ケース310のサイズを小型軽量化することが可能となる。
【0197】
(保護素子(第6実施形態))
図40は、本発明の第6実施形態に係る保護素子の、
図5(a)に対応する断面図である。第6実施形態に係る保護素子は、ヒューズエレメント積層体が2つのケース部品の間に挟まれている点が第1実施形態に係る保護素子に対する主な相違点である。
図40において、第1実施形態に係る保護素子及び上述した変形例の構成と同様又はほぼ同様の構成部材については同じ符号を付与して説明を省略する。
【0198】
図40に示す保護素子700は、絶縁ケース710と、ヒューズエレメント積層体40と、遮蔽部材20と、押圧手段30と、係止部材70と、発熱体80A、80Bと、給電部材90a、90bと、第1端子91と、第2端子92とを有する。なお、本実施形態の保護素子700において、通電方向は、使用時において電気が流れる方向(X方向)を意味し、通電方向の断面積は、通電方向に対して直交する方向の面(Y-Z面)の面積を意味する。
【0199】
(絶縁ケース)
絶縁ケース710は、カバー10Aと保持部材710Bとからなる。カバー10Aと保持部材710Bの材料としては、カバー10A及び保持部材10Bと同様の材料を用いることができる。保持部材710Bの内部には、内圧緩衝空間15が形成されている。内圧緩衝空間15は、ヒューズエレメント積層体40の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子700の内圧の急激な上昇を抑える作用がある。
【0200】
保持部材710Bは、Z方向で下側に配置する第1保持部材710BaとZ方向で上側に配置する第2保持部材710Bbとからなる。第1保持部材710Baは2つのケース部品の一方の一例であり、第2保持部材710Bbは2つのケース部品の他方の一例である。
【0201】
図の例では、絶縁ケース710は、少なくとも2つのケース部品(Z方向で下側に配置する第1保持部材710BaとZ方向で上側に配置する第2保持部材710Bb)から成り、一方のケース部品である第1保持部材710Baが第1絶縁部材と一体であり、他方のケース部品である第2保持部材710Bbが第2絶縁部材と一体であるが、これに限らない。例えば、保護素子が第1絶縁部材及び第2絶縁部材を有する場合は、一方のケース部品が第1絶縁部材と一体又は他方のケース部品が第2絶縁部材と一体であってもよい。図の例では、ヒューズエレメントと第1絶縁部材を複数有し、複数のヒューズエレメントは、複数の第1絶縁部材の間に近接若しくは接触させた状態で配置されているが、これに限らない。例えば、他方のケース部品が第2絶縁部材と別体である場合は、ヒューズエレメントは、第1絶縁部材と第2絶縁部材との間に近接若しくは接触させた状態で配置されていてもよい。図の例では、複数の第1絶縁部材の一つは、第1保持部材710Baと一体であるが、これに限らない。例えば、複数の第1絶縁部材のそれぞれが第1保持部材710Baと一体であってもよい。例えば、複数の第1絶縁部材の少なくとも1つが第1保持部材710Baと一体化されていてもよい。
【0202】
本実施形態の保護素子700では、絶縁ケース710は、少なくとも2つのケース部品(Z方向で下側に配置する第1保持部材710BaとZ方向で上側に配置する第2保持部材710Bb)とからなり、一方のケース部品である第1保持部材710Baが第1絶縁部材と一体であり、他方のケース部品である第2保持部材710Bbが第2絶縁部材と一体である。このため、第1絶縁部材及び第2絶縁部材を別に設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができ、低コスト化に寄与する。
【0203】
本実施形態の保護素子700では、ヒューズエレメント積層体40は、第1保持部材710Baと第2保持部材710Bbとの間に挟まれている。これにより、ヒューズエレメント積層体40は、第1保持部材710Baと第2保持部材710Bbとに近接もしくは接触(密着)して絶縁されている。このため、ヒューズエレメント積層体40を取り巻く空間が極めて狭くなり、溶断することによって発生するアーク放電の規模が小さくなりやすくなる。よって、本実施形態の保護素子700によれば、絶縁ケース710のサイズを小型軽量化することが可能となる。
【0204】
本発明の保護素子は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0205】
10、11、310、710 絶縁ケース
10A、110A、310A カバー
10B、10BB、110B、310B、710B 保持部材
10Ba、10BBa、110Ba、310Ba、710Ba 第1保持部材
10Bb、10BBb、110Bb、310Bb、710Bb 第2保持部材
310Bc 第3保持部材
20、120、320 遮蔽部材
30 押圧手段
40、140 ヒューズエレメント積層体
50a、50b、50c、50d、50e、50f 可溶性導体シート
51、251、551、651 第1端部
52、252、552、652 第2端部
53 溶断部
54 貫通孔
60A、60Aa、60Ab、60Ac、60Ad、60Ae、60Af、160A、
160Aa、160Ab、160Ac、160Ad、160Ae、160Af、160Ag、260A、260Aa、260Ab、260Ac 第1絶縁部材
60B 第2絶縁部材
64、65 隙間
64A 第1開口部
65A 第2開口部
67、67A 通気孔
70、170、370 係止部材
80 発熱体
90 給電部材
91、291 第1端子
92、292 第2端子
100、200、300 保護素子
250、550、650 ヒューズエレメント
553、653 遮断部