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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037586
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】ピンチバルブシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/28 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
A61M39/28 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127647
(22)【出願日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】21194899.7
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511081820
【氏名又は名称】レヴィトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペーター マイア
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュネーバーガー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066QQ15
4C066QQ46
4C066QQ48
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
【課題】流体システムにおいてチューブをクランプするための従来のピンチバルブシステムを更に改良すること。
【解決手段】本発明によるピンチバルブシステムは、チューブ100をクランプするための閉鎖部片21を有する軸方向Aに移動可能な閉鎖要素2と、閉鎖要素2を永久磁力によって開位置と閉位置とに保持でき、且つ保持のためにエネルギーを供給する必要のない永久磁気保持デバイス5と、閉鎖要素2を開位置と閉位置との間で移動させる切り換えプロセスを実行するための電磁作動デバイス6とを有する。少なくとも切り換えプロセスを実行するのに十分な電気エネルギーをエネルギー蓄積デバイス7に蓄積することができ、開位置又は閉位置である休止位置を制御ユニット8のために予め決定することができ、制御ユニット8は、エネルギー蓄積デバイス7に蓄積されたエネルギーによって閉鎖要素2を休止位置に至らせる切り換えプロセスをトリガ可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体システムにおいてチューブをクランプするためのピンチバルブシステムであって、
軸方向(A)に移動可能に配置される閉鎖要素(2)であって、前記チューブ(100)をクランプするための閉鎖部片(21)を有する閉鎖要素(2)と、
永久磁気保持デバイス(5)であって、前記閉鎖要素(2)を永久磁力によって2つの異なる安定した平衡位置に、すなわち開位置と閉位置とに、前記それぞれの平衡位置に保持するために前記永久磁気保持デバイス(5)にエネルギーを供給する必要なく保持できるように設計された永久磁気保持デバイス(5)と、
前記閉鎖要素(2)を前記開位置から前記閉位置へ又は前記閉位置から前記開位置へ移動させる切り換えプロセスを実行するための電磁作動デバイス(6)と
を有し、
エネルギー蓄積デバイス(7)及び制御ユニット(8)が設けられ、少なくとも切り換えプロセスを実行するのに十分な電気エネルギーを前記エネルギー蓄積デバイス(7)に蓄積することができ、前記開位置又は前記閉位置である休止位置を前記制御ユニット(8)のために予め決定することができ、前記制御ユニット(8)は、前記エネルギー蓄積デバイス(7)に蓄積されたエネルギーによって前記閉鎖要素(2)を前記休止位置に至らせることができる切り換えプロセスをトリガすることができることを特徴とする、ピンチバルブシステム。
【請求項2】
前記閉鎖要素(2)、前記保持デバイス(5)、前記作動デバイス(6)、前記エネルギー蓄積デバイス(7)及び前記制御ユニット(8)が共通ハウジング(10)内に配置され、前記ハウジング(10)は、外部エネルギー源に接続するための接続部(11)を有する、請求項1に記載のピンチバルブシステム。
【請求項3】
前記外部エネルギー源によるエネルギー供給の遮断を検出できる監視センサ(71)が前記共通ハウジング(10)内に設けられる、請求項2に記載のピンチバルブシステム。
【請求項4】
前記永久磁気保持デバイス(5)は、前記閉鎖要素(2)を取り囲む永久磁気リング(51)を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のピンチバルブシステム。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積デバイス(7)は、前記作動デバイス(6)のエネルギー供給のための中間回路として設計される、請求項1から4までのいずれか一項に記載のピンチバルブシステム。
【請求項6】
前記閉鎖要素(2)の位置を決定するための位置センサ(73)が設けられる、請求項1から5までのいずれか一項に記載のピンチバルブシステム。
【請求項7】
前記エネルギー蓄積デバイス(7)に蓄積された電気エネルギーを決定するための測定センサ(72)が設けられる、請求項1から6までのいずれか一項に記載のピンチバルブシステム。
【請求項8】
前記切り換えプロセスに必要な電流である切り換え電流を決定するための電流センサ(74)が設けられる、請求項1から7までのいずれか一項に記載のピンチバルブシステム。
【請求項9】
前記切り換え電流に基づいてチューブ検出を行なうことができる請求項8に記載のピンチバルブシステム。
【請求項10】
チューブ(100)を受けるための2つの側方開口(32)が前記ハウジングに設けられ、関節ジョイントによって前記ハウジング(10)に接続された閉鎖カバー(3)が設けられ、前記閉鎖カバーは、第1の位置と第2の位置との間で往復移動させることができ、前記第1の位置で、前記チューブ(100)は前記側方開口(32)に挿入されることができ、前記第2の位置で、前記チューブ(100)は前記ピンチバルブシステム(1)の前記ハウジング(10)に対して固定される、請求項2から9までのいずれか一項に記載のピンチバルブシステム。
【請求項11】
前記閉鎖要素(2)の前記閉鎖部片(21)と協働するためのチューブピンチ要素(31)が前記閉鎖カバー(3)内に配置され、それにより、前記閉鎖カバー(3)が前記第2の位置にあるときに前記チューブ(100)が前記閉鎖部片(21)と前記チューブピンチ要素(31)との間でクランプされることができる、請求項10に記載のピンチバルブシステム。
【請求項12】
前記チューブピンチ要素(31)は、交換可能であるように設計及び配置される、請求項11に記載のピンチバルブシステム。
【請求項13】
前記閉鎖カバー(3)に凹部(34)が設けられ、前記チューブピンチ要素(31)は前記凹部(34)内に挿入されることができる、請求項12に記載のピンチバルブシステム。
【請求項14】
前記軸方向(A)に移動可能な保護要素(25)が設けられ、前記保護要素(25)は、前記閉鎖カバー(3)が前記第1の位置又は前記第2の位置にあってチューブ(100)が前記ピンチバルブシステムに挿入されていないときに前記保護要素(25)が前記2つの側方開口(32)を覆うように、ばね(27)によって荷重が与えられている、請求項8から11までのいずれか一項に記載のピンチバルブシステム。
【請求項15】
固定要素(33)が前記ハウジング上に設けられ、前記閉鎖カバー(3)は、前記固定要素(33)によって前記第2の位置に固定されることができる、請求項10から14までのいずれか一項に記載のピンチバルブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部分に係る、流体システムにおいてチューブをクランプするためのピンチバルブシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば生物学的液体のための流体システムは、一般に、流体を搬送するためのポンプデバイスを有し、該ポンプデバイスは、チューブを介して、蓄積タンク又はフィルタデバイスなどの流体システムの回路又は他の構成要素に接続される。このような流体システムの実例は、タンパク質又は他の生物学的物質が細胞培養液中で生成されてプロセスから除去されるバイオリアクタを有する、バイオテクノロジ又は製薬業界におけるプラントである。もう1つの実例は、例えば心臓の機能を引き継いで血液循環を維持するために心臓手術中に患者の血液循環に接続される人工心肺である。可能であれば、患者の循環に送り込まれる血液中に気泡が存在しないようにすることが非常に重要である。これは、これらが患者にとって深刻な危険をもたらすからである。したがって、通常、人工心肺ではポンプの下流側に気泡検出器及びピンチバルブシステムが設けられる。気泡検出器が気泡を検出すると直ぐに、ピンチバルブシステムは、搬送される血液を患者の体内に流すチューブを可能な限り急速にクランプし、それにより、気泡が身体の循環系に入ることができないように患者への血液供給を遮断しなければならない。
【0003】
しかしまた、他の流体システムでは、チューブを通じた更なる流れを防ぐためにチューブを可能な限り迅速且つ確実にクランプできることがしばしば必要である。したがって、この目的のために使用されるピンチバルブシステムは、流体システムの構成要素間の流れ接続のためのオン/オフスイッチとして機能する。
【0004】
チューブをクランプするためのピンチバルブシステムは多くの形態が知られている。特に効率的で信頼性の高いピンチバルブシステムが欧州特許出願第1132108号明細書に開示される。このピンチバルブシステムは、チューブをクランプするための閉鎖部片を伴う移動可能に配置される閉鎖要素と、永久磁気保持デバイスであって、閉鎖要素を2つの異なる安定した平衡位置、すなわち開位置と閉位置とに、それぞれの平衡位置に保持するために永久磁気保持デバイスにエネルギーを供給する必要なく保持できるように配置されて設計される永久磁気保持デバイスと、閉鎖要素を開位置から閉位置に移動させるための作動手段とを有する。
【0005】
永久磁気保持デバイスは、閉鎖要素に関して2つの安定した平衡位置、すなわち、一方では、液体がチューブを通じて流れることができるようにピンチバルブシステムに挿入されたチューブがクランプされない又は僅かにクランプされるにすぎない開位置と、他方では、もはや液体がチューブを通じて流れることができないようにチューブが閉鎖要素の閉鎖部片によってクランプされる閉位置とが存在するように設計される。閉鎖要素を2つの平衡位置に保持するために電気エネルギーは必要とされない。閉鎖要素は、単に受動的に、つまり、永久的に磁気的に2つの平衡位置に保持され、これはエネルギー消費の点で非常に大きな利点である。このことは、閉鎖要素が、一方の平衡位置から他方の平衡位置に切り換えるためだけにエネルギーを必要とし且つそれぞれの安定した平衡位置に保持するためにエネルギーを必要としない双安定デバイスであることを意味する。
【0006】
更に、ピンチバルブシステムを作動させるためにスピンドルドライブ又は他のセルフロックドライブは必要なく、これが、ピンチバルブシステムが構造的に単純で非常にコンパクトである理由である。
【0007】
作動手段は、閉位置の方向又は開位置の方向で作用する電磁力を閉鎖要素に及ぼすことができるように配置されるコイルを有する。コイルを作動させることにより、永久磁気保持力に加えて電磁力が生成され、この力は、閉鎖要素が他方の安定した平衡位置を取るように閉鎖要素をその一方の安定した平衡位置から離れるように偏向させる。したがって、閉鎖要素が開位置から閉位置に又はその逆に閉位置から開位置に移動されるようになっている場合にのみコイルを作動させる必要がある。
【0008】
欧州特許出願第1132108号明細書に開示されるピンチバルブシステムが実際に非常に良好であることが分かっているにもかかわらず、改善の見込みがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願第1132108号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、この最新技術から出発して、本発明の目的は、前述のタイプのピンチバルブシステムを更に改良することである。特に、より高い動作安全性と高い柔軟性とを実現できるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を満たす発明の主題は、独立特許請求項の構成によって特徴付けられる。
【0012】
したがって、本発明によれば、軸方向に移動可能に配置されるとともにチューブをクランプするための閉鎖部片を有する閉鎖要素と、永久磁気保持デバイスであって、閉鎖要素を永久磁力によって2つの異なる安定した平衡位置に、すなわち開位置と閉位置とに、それぞれの平衡位置に保持するために永久磁気保持デバイスにエネルギーを供給する必要なく保持できるように設計される永久磁気保持デバイスと、閉鎖要素を開位置から閉位置へ又は閉位置から開位置へ移動させる切り換えプロセスを実行するための電磁作動デバイスとを有する、流体システムにおけるチューブをクランプするためのピンチバルブシステムが提案される。エネルギー蓄積デバイス及び制御ユニットが設けられ、少なくとも切り換えプロセスを実行するのに十分な電気エネルギーをエネルギー蓄積デバイスに蓄積することができ、開位置又は閉位置である休止位置を制御ユニットに関して予め決定することができ、制御ユニットは、エネルギー蓄積デバイスに蓄積されたエネルギーによって閉鎖要素を休止位置に至らせることができる切り換えプロセスをトリガする(引き起こす)ことができる。
【0013】
したがって、本発明に係るピンチバルブシステムの場合には、外部エネルギー供給源が完全に故障した場合でも、例えば幹線の遮断の場合でも、ピンチバルブシステムの閉鎖要素を予め決定できる休止位置に至らせることができる。いずれにせよ、ピンチバルブシステムのエネルギー蓄積デバイスは非常に多くのエネルギーを蓄積しているため、外部エネルギー供給源が故障した場合でも、少なくとも1つの切り換えプロセスが依然として可能である。したがって、いずれの場合でも、外部エネルギー供給源がなくても、閉鎖要素を所望の休止位置に至らせることが可能である。このことは、動作上の信頼性が大幅に向上することを意味する。
【0014】
更に、本発明に係るピンチバルブシステムは、予め決定できる休止位置が開位置又は閉位置となり得るため、高度な柔軟性を特徴とする。特定の用途に応じて、チューブを通じて流体が流れることができるように外部エネルギー供給源が故障した場合に閉鎖要素が開位置に至らされることが望ましくなり得る或いは更には必要となり得る。他の用途では、チューブがクランプされてチューブを通じた流体の更なる流れが確実に妨げられるように外部エネルギー供給源が故障した場合に閉鎖要素が閉位置に至らされることが望ましくなり得る或いは更には必要となり得る。休止位置が開位置である又は閉位置であるかどうかの選択は、例えば、電子的に、電気機械的に、又は、ソフトウェアによって行なうことができる。
【0015】
特に好ましい実施例によれば、閉鎖要素、保持デバイス、作動デバイス、エネルギー蓄積デバイス、及び、制御ユニット(8)が共通ハウジング内に配置され、ハウジングは、外部エネルギー源に接続するための接続部を有する。この実施例は、非常にコンパクトであり、取り扱いが特に容易である。外部エネルギー源に接続するための接続部は、ピンチバルブシステムを制御又はプログラムできる制御ライン又は信号ラインのために更に使用され得る。
【0016】
好ましくは、外部エネルギー源によるエネルギー供給の遮断を検出できる監視センサが共通ハウジング内に設けられる。したがって、ハウジングに組み込まれる監視センサは、外部エネルギー源によるエネルギー供給が完全に機能しなくなる又はもはや十分でない時期を検出できる。例えば、監視センサは、外部エネルギー源によって供給される供給電圧又は幹線電流の遮断を検出することができる。供給電圧又は電流の遮断が検出されると直ぐに、この情報が制御ユニットに渡される。制御ユニットは、閉鎖要素が開位置にあるか又は閉位置にあるかどうか及びいずれが閉鎖要素における所定の休止位置であるかをチェックする。閉鎖要素が所望の休止位置にない場合、制御ユニットは、閉鎖要素を休止位置に至らせる切り換えプロセスをトリガする。いずれにせよ、たとえ外部エネルギー源がもはやエネルギーを供給できない場合であっても、少なくとも1つの切り換えプロセスを実行するために十分なエネルギーがエネルギー蓄積デバイスに蓄積される。
【0017】
好ましい実施例において、永久磁気保持デバイスは、閉鎖要素を取り囲む永久磁気リングを有する。この永久磁気リングにより、例えば電流の形態でピンチバルブシステムにエネルギーを供給する必要なく、閉鎖要素を永久磁力によって2つの安定した平衡位置のいずれかに保持することができる。好ましくは、保持デバイスはまた、閉鎖要素を安定した平衡位置に保持するためのばねを伴うことなく設計される。
【0018】
好ましい実施例によれば、エネルギー蓄積デバイスは、作動デバイスのエネルギー供給のための中間回路として設計される。エネルギー蓄積デバイスは少なくとも1つのコンデンサを有することができ、コンデンサの容量は、外部エネルギー供給源が故障する場合に少なくとも1つの切り換えプロセスのための電気エネルギーを作動デバイスに供給するのに十分な大きさである。この大きなエネルギー蓄積デバイスに起因して、中間回路に電気エネルギーを供給するエネルギー源を有利により小さく寸法付けることもできる。
【0019】
更に、閉鎖要素の位置を決定するために位置センサが設けられることが好ましい。
【0020】
エネルギー蓄積デバイスに蓄積された電気エネルギーを決定するための測定センサが設けられることは、更に有利な手段である。
【0021】
また、切り換え電流を決定するための電流センサが設けられ、切り換え電流が切り換えプロセスに必要な電流であることも好ましい。
【0022】
例えば、切り換え電流が閉鎖電流となることができ、閉鎖電流は、開位置から閉位置への切り換えプロセスに必要な電流である。例えば、切り換え電流が開放電流となることができ、開放電流は、閉位置から開位置への切り換えプロセスに必要な電流である。
【0023】
作動デバイスに供給される電流は、完全な切り換えプロセスにわたって、すなわち、開位置から閉位置への又はその逆の閉鎖要素の全ストローク移動にわたって、電流センサにより決定され得る。この情報は、例えば、チューブがピンチバルブシステムに挿入されるか否かを決定するために使用され得る。
【0024】
この実施例の場合、切り換え電流に基づいてチューブ検出を実行できることが特に想定し得る。この目的のために、例えば、開位置から閉位置への及び/又は閉位置から開位置への切り換えプロセスを実行するためにいずれのチューブタイプに関していずれの電流が必要とされるかに関して相関関係を割り当てテーブル(ルックアップテーブル)の状態で制御ユニットに記憶することができる。例えば、チューブタイプは、チューブのそれぞれの材料、チューブの直径、チューブの壁厚、及び、必要に応じて他のパラメータに関する情報を含むことができる。測定によって決定される切り換え電流と、必要に応じて位置センサからの信号とに基づいて、ピンチバルブシステムに挿入されるチューブを特定することができる。
【0025】
好ましい実施例によれば、チューブを受けるための2つの側方開口がハウジングに設けられ、関節ジョイント(関節継手)によってハウジングに接続される閉鎖カバーが設けられ、閉鎖カバーを第1の位置と第2の位置との間で前後に(すなわち往復式に)移動させることができ、第1の位置では、チューブを側方開口に挿入することができ、第2の位置では、チューブがピンチバルブシステムのハウジングに対して固定される。
【0026】
好ましくは、閉鎖要素の閉鎖部片と協働するためのチューブピンチ要素が閉鎖カバー内に配置され、閉鎖カバーが第2の位置にあるときに閉鎖部片とチューブピンチ要素との間でチューブをクランプできるようになっている。
【0027】
更に、チューブピンチ要素が交換可能となるように設計されて配置されることが好ましい手段であり、それにより、ピンチバルブシステムを異なるタイプのチューブ、特に異なる外径及び/又は内径のチューブに容易に適合させることができる。
【0028】
チューブピンチ要素を挿入することができる凹部が閉鎖カバーに設けられることが好ましい実施例である。結果として、特に簡単且つ迅速に、特に工具を使用せずに、チューブピンチ要素を交換することができる。
【0029】
更に、軸方向に移動可能な保護要素が設けられ、保護要素には、閉鎖カバーが第1の位置又は第2の位置にあってチューブがピンチバルブシステムに挿入されないときに保護要素が前記2つの側方開口を覆うように、ばねによって荷重(負荷)が与えられることが好ましい。この保護要素は、特に操作員のための指保護として機能するため、例えばチューブがピンチバルブシステムに挿入されない場合又はチューブを挿入するときに側方開口に不用意に手を伸ばすことがない。チューブを挿入する際、保護要素は、チューブが2つの側方開口に位置するまで、ばねの力に抗してチューブによって軸方向に移動される。その後、閉鎖カバーは、チューブがチューブピンチ要素と閉鎖部片との間に固定されるように第2の位置に至らされる。
【0030】
更に有利な手段として、固定要素をハウジングに設けることができ、固定要素を用いて閉鎖カバーを第2の位置に固定できる。このようにして、ピンチバルブシステムからのチューブの意図しない外れを防止することができる。
【0031】
本発明の更なる有利な手段及び実施例は、従属請求項によってもたらされる。
【0032】
以下、実施例及び図面に基づいて、本発明を更に詳しく説明する。部分的な概略図では、以下が示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係るピンチバルブシステムの実施例の斜視図である。
図2】軸方向の断面における実施例の断面図である。
図3】実施例の閉鎖カバー及びチューブを受けるための側方開口の斜視図である。
図4】実施例の保護要素の斜視図である。
図5】実施例の概略図である。
図6】実施例の動作を説明するための幾つかの図である。
図7図5と同様であるが、実施例の第1の変形例である。
図8図5と同様であるが、実施例の第2の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、全体として参照符号1で示される本発明に係るピンチバルブシステムの実施例の斜視図を示す。より良い理解のために、図2は、軸方向Aの断面における実施例の断面図を示し、図5は実施例の概略図を示す。
【0035】
ピンチバルブシステム1は、流体システムにおけるチューブ100をクランプする役目を果たし、この場合、チューブ100は、ピンチバルブシステム1に挿入されて該システム内に固定される。
【0036】
ピンチバルブシステム1は、軸方向Aで移動可能に配置される閉鎖要素2を有する。閉鎖要素2は、チューブ100をクランプするための閉鎖部片21を有し、閉鎖部片21は、ピンチバルブシステム1の閉鎖カバー3に配置されるチューブピンチ要素31と協働することができる。閉鎖部片21及びチューブピンチ要素31は、軸方向に関して、閉鎖部片21とチューブピンチ要素31との間に配置されるチューブ100のためのレセプタクル4を制限し、該レセプタクル内にチューブ100を挿入することができる。
【0037】
ピンチバルブシステム1は、永久磁気保持デバイス5、電磁作動デバイス6、エネルギー蓄積デバイス7、及び、制御ユニット8を更に有する。
【0038】
閉鎖要素2、保持デバイス5、作動デバイス6、エネルギー蓄積デバイス7、及び、制御ユニット8は、ピンチバルブシステム1の共通ハウジング10内に配置され、接続部11がハウジングに設けられ、接続部11によってピンチバルブシステム1を外部エネルギー源に接続することができる。接続部11は、ピンチバルブシステム1を作動又はプログラムすることができる制御ライン又は信号ラインのために更に使用することができ、又は、データ及び他の情報をピンチバルブシステム1からエクスポートすることができる。
【0039】
永久磁気保持デバイス5は、永久磁力によって閉鎖要素2を2つの異なる安定した平衡位置、すなわち開位置と閉位置とに、それぞれの平衡位置に保持するためにエネルギーを永久磁気保持デバイス5に供給する必要なく保持できるように設計される。この実施例の場合、保持デバイス5は、この目的のために、閉鎖要素2の周囲に配置される永久磁気リング51を有する。
【0040】
図2に示される開位置では、レセプタクル4内に挿入されるチューブ100がクランプされない又はごく僅かしかクランプされず、それにより、液体又は流体はチューブ100を通じて流れることができるが、チューブ100は固定される。閉鎖位置では、チューブ100は、それ以上液体がチューブ100を通じて流れることができないように、閉鎖部片21とチューブピンチ要素31との間でクランプされる。開位置(図2)では、チューブ100内の液体の流れ断面は最大である。閉鎖のために、閉鎖要素2、したがって閉鎖部片21も、図(図2)にしたがって左に移動され、それにより、流れ断面がゼロになるようにチューブ100を圧縮する。その結果、閉鎖要素2のこの閉位置では、チューブ100がクランプされる。
【0041】
電磁作動デバイス6は、閉鎖要素2を開位置から閉位置へ又は閉位置から開位置へ移動させることができる切り換えプロセスを実行するように設計される。この目的のために、電磁作動デバイス6は少なくとも1つのコイル61を有し、このコイル61は、切り換えプロセスを実行するために制御ユニット8によって作動され得る。更なる電磁力が、切り換えプロセスのためにコイル61によって閉鎖要素2に及ぼされ、この電磁力は、閉鎖要素2を、その一方の安定平衡位置(例えば、開位置)から、閉鎖要素2がその2つの安定平衡位置のうちの他方(例えば、閉位置)をとるような程度まで偏向させるのに十分強い。
【0042】
永久磁気保持デバイス5が、エネルギー、例えば、この目的のために供給される必要がある電流を伴うことなく閉鎖要素2を両方の平衡位置(開位置及び閉位置)に保持できることは重要な態様である。保持中、ピンチバルブシステム1は電気エネルギーを必要とせず、そのため、2つの平衡位置でのエネルギー消費に関して非常に経済的である。
【0043】
永久磁気保持デバイス5(図2参照)は、共通ハウジング10の一部を形成するアクチュエータハウジング12内に配置される。アクチュエータハウジング12は強磁性材料から形成される。保持デバイス5は、閉鎖要素2を受けるための中央通路52を有する。通路52は、軸方向Aに延在して第1の円筒領域521を有し、この第1の円筒領域521には円錐領域522が接続され、円錐領域522はその後に第2の円筒領域523に合流し、第2の円筒領域523の直径は第1の円筒領域521の直径よりも小さい。円錐領域522及び第2の円筒領域523は、アクチュエータハウジング12の延在部121によって制限され、延在部121は、磁束を案内するための磁気還流としての機能を果たすとともに、強磁性的に設計される。延在部121は、軸方向Aに対して斜めに延びる円錐境界面を有するとともに、同様に円錐形状である閉鎖要素2の表面と協働することができる。非強磁性材料、例えばプラスチックから形成されるスリーブ53が、第1の円筒形領域521に挿入される。
【0044】
閉鎖要素2は、円筒状に設計されるヘッド22を有し、ヘッド22の外径は、通路52の第1の円筒領域521内のスリーブ53の内径に適合され、それにより、ヘッド22は、スリーブ53に入ることができるとともに、スリーブ53を通じて案内される。ヘッド22は、強磁性材料から形成されるとともに、図(図2)よればその左端に円錐状に設計された表面を有し、この表面は延在部121の円錐境界表面と協働する。更に、ロッド23がヘッド22のこの端部に取り付けられ、ロッド23は、通路52の第2の円筒領域523を通じて軸方向Aに延び、図(図2)によれば、ロッド23の左端には閉鎖部片21が固定される。
【0045】
更に、閉鎖要素2のヘッド22を取り囲むように配置される永久磁気リング51は、アクチュエータハウジング12内に設けられる。
【0046】
コイル61は、永久磁気リング51に隣接して軸方向Aでアクチュエータハウジング12内に設けられ、このコイルは閉鎖要素2をその開位置から閉位置へ又はその逆に移動させる作動手段としての機能を果たす。コイル61は、コイル軸が軸方向Aに延在するように通路52を囲繞する。したがって、電流が供給されると、コイル61は、閉鎖要素2に対して軸方向Aに向けられた電磁力を及ぼすことができ、この電磁力は、図(図2)によれば電流の方向に応じて右に又は左に向けられ得る。
【0047】
コイル61は、永久磁気リング51から離れる方向を向くその軸方向端部がアクチュエータハウジング12の延在部121に隣接する。コイル61は更に制御ユニット8に信号接続され、それにより、制御ユニット8は、コイル61に電気エネルギーを供給することができるとともに、切り換えプロセスをトリガできる。
【0048】
更なるエネルギー供給を伴うことなく閉鎖要素2を永久磁力によって保持することができる2つの安定した平衡位置の存在、並びに、コイル61によって生成される電磁力によって閉鎖要素2を閉位置から開位置へ又は開位置から閉位置へ移動させることができる切り換えプロセスに関しては、既に述べた欧州特許出願第1132108号明細書及びそこに見出される詳細な説明を参照されたい。
【0049】
本発明によれば、エネルギー蓄積デバイス7は、1つの切り換えプロセスを実行するのに少なくとも十分な電気エネルギーをエネルギー蓄積デバイスに蓄積できるように設計される。更に、開位置又は閉位置である休止位置を制御ユニット8に関して予め決定することができ、この場合、制御ユニット8は、エネルギー蓄積デバイス7に蓄積されたエネルギーによって閉鎖要素2を休止位置に至らせることができる切り換えプロセスをトリガすることができる。
【0050】
以下、実施例に基づき、図1図2、及び、図5を参照して、これについて更に詳しく説明する。
【0051】
ここに記載される実施例において、ピンチバルブシステム1は、完全に統合された双安定システムとして設計され、このシステムでは、切り換えプロセスのための又は2つの安定平衡位置のそれぞれに保持するための戻しばねが設けられない。共通ハウジング10は、アクチュエータハウジング12、閉鎖ハウジング13、及び、保護ハウジング14を有し、アクチュエータハウジング12は、軸方向Aに関して閉鎖ハウジング13と保護ハウジング14との間に配置される。アクチュエータハウジング12、閉鎖ハウジング13、及び、保護ハウジング14は、それらが共通ハウジング10を形成するように、例えばねじ又は他の締結手段によって互いに強固に接続される。
【0052】
閉鎖ハウジング13は、アクチュエータハウジング12から離れる方向を向く閉鎖ハウジング13の軸方向端部に閉鎖カバー3を有する。閉鎖カバー3は、関節ジョイントによって閉鎖ハウジング13に接続されるとともに、第1の位置と第2の位置との間で前後に移動され得る。第1の位置(図3も参照)では、チューブ100をレセプタクル4に挿入することができる。第2の位置(図4も参照)では、チューブ100が、共通ハウジング10に対して、すなわち、チューブピンチ要素31と閉鎖部片21との間で固定される。好ましくは、インジケータ131が閉鎖ハウジング13に設けられ、このインジケータ131は、閉鎖要素2がその開位置にある又はその閉位置にあるかどうかを外部から認識可能に示す。
【0053】
エネルギー蓄積デバイス7及び制御ユニット8は保護ハウジング14内に配置される。更に、接続部11が保護ハウジング14に設けられ、この接続部11を介してピンチバルブシステム1を外部エネルギー源(図示せず)に接続することができる。更に、接続部11を介して制御ユニット8の作動及び/又はプログラミングを行なうことができる。接続部11は、電気接続部78を介してエネルギー蓄積デバイス7及び/又は制御ユニット8に接続される。
【0054】
図5に示されるように、制御ユニット8は、電源ユニット81と開ループ制御ユニット82とを有する。電源ユニット81は、特に、エネルギー、特に切り換えプロセスが実行されるようになっている場合には電流を作動デバイス6のコイル61に供給するパワーエレクトロニクスを有する。この目的のために、電源ユニット81は、接続部V1を介してコイル61に接続される。開ループ制御ユニット82は、ピンチバルブシステム1の動作のための制御器又は調整器と、任意選択的に、ピンチバルブシステム1の動作のためのメモリモジュール、処理モジュール、又は、評価モジュールとを有する。
【0055】
特に好ましくは、エネルギー蓄積デバイス7は、作動デバイス6のエネルギー供給のための中間回路として設計される。エネルギー蓄積デバイス7は、一方では、電気接続部78及び接続部11を介して外部エネルギー源に接続することができ、他方では、接続部V1を介して作動デバイス6のコイル61に接続される。例えば、外部エネルギー源は、幹線電圧などの供給電圧又は別の電圧源又は電流源である。
【0056】
特に好ましくは、エネルギー蓄積デバイス7は、電気エネルギーを蓄積するための少なくとも1つのコンデンサを有し、この場合、コンデンサは、又はコンデンサが幾つかある場合にはコンデンサ全体は、外部エネルギー源によるエネルギー供給に不具合がある場合であっても少なくとも1つの切り換えプロセスを実行するのに十分な電気エネルギーがエネルギー蓄積デバイス7に蓄積されるのに十分大きい容量を有する。エネルギー蓄積デバイス7に蓄積されるエネルギーは、好ましくは、開位置から閉位置への閉鎖要素2のストローク移動に沿った力を積分した経路よりも大きい。
【0057】
電源ユニット81内のパワーエレクトロニクスは、コイル61を作動させるのに適したそれ自体既知の任意の態様で設計され得る。例えば、パワーエレクトロニクスは、過電圧保護を伴うHブリッジとして設計することができ、Hブリッジには、エネルギー蓄積デバイス7によって与えられる中間回路電圧が供給される。
【0058】
好ましくは、監視センサ71が共通ハウジング10に設けられ、この監視センサ71により、エネルギー供給の遮断、すなわち、外部エネルギー源によって供給されるエネルギーの障害を検出することができる。一般に、外部エネルギー源に障害がある場合に制御ユニット8に信号を送信する外部センサを設けることもできるが、共通ハウジング10の内部に設けられる監視センサ71が好ましい。監視センサ71は、好ましくは保護ハウジング14内に配置され、信号ラインS1を介して制御ユニット8に、より正確には制御ユニット8の開ループ制御ユニット82に信号接続される。監視センサ71は、好ましくは、電流センサ又は電圧センサとして設計され、外部電源からの供給の障害を検出できるように構成される。例えば、供給の障害は、幹線の遮断、又は、供給電圧、例えば幹線電圧の崩壊、又は、電流の流れの欠如となり得る。
【0059】
ピンチバルブシステム1の動作のために、チューブ100がレセプタクル4に挿入され、また、閉鎖カバー3は、チューブが閉鎖部片21とチューブピンチ要素31との間で固定される第2の位置に至らされる。開位置又は閉位置である所望の休止位置は、制御ユニット8の開ループ制御ユニット82に対して予め決定される。したがって、外部電源が故障したときに閉鎖要素2が開位置に又は閉位置に至らされるべきかどうかが制御ユニット8に関して予め決定される。
【0060】
外部エネルギー供給の障害、例えば供給電圧の欠如が監視センサ71によって検出される場合には、この情報が制御ユニット8の開ループ制御ユニット82に送信される。制御ユニット8は、閉鎖要素2が所定の休止位置にあるかどうかをチェックする。閉鎖要素2が所定の休止位置にある場合には、閉鎖要素2を休止位置に維持するためにエネルギー供給を必要としないので、任意の更なるステップを踏む必要はない。閉鎖要素2が所定の休止位置にない場合、開ループ制御ユニット82は、切り換えプロセスを実行しなければならないというコマンドを電源ユニット81に送信する。この切り換えプロセスに必要な電気エネルギーは、作動デバイス6が閉鎖要素2を休止位置に移動させることができるようにエネルギー蓄積デバイス7で利用可能である。閉鎖要素2が休止位置にあると直ぐに、閉鎖要素2を休止位置に維持するために更なるエネルギー供給は必要ない。
【0061】
この動作は、いずれの場合にも時間tが水平軸上にプロットされる幾つかの概略図によって図6に例示的に示される。上から下に向かって観て、以下の値、すなわち、外部エネルギー源によって与えられる供給電圧B1、幹線遮断(外部エネルギー供給又は供給電圧の損失)の検出B2、開ループ制御ユニットの作用B3、エネルギー蓄積デバイス7におけるエネルギーB4が縦軸上にプロットされる。
【0062】
図6に示される実施例は、閉鎖要素2が休止位置にないが外部エネルギー供給が失われる-ここでは例えば供給電圧が失われる幹線遮断-時の2つの安定した平衡位置のうちの他方にある場合を示す。
【0063】
時間tでは、供給電圧B1の遮断又は損失がある。時間tにおいて、監視センサ71は、外部エネルギー供給B2の障害を検出し、この情報を開ループ制御ユニット82に送信する。開ループ制御ユニットB3の作用が時間tで行なわれ、すなわち、エネルギー蓄積デバイス7のコンデンサに蓄積された電気エネルギーによって切り換えプロセスが開始される。
【0064】
エネルギー蓄積デバイス7に蓄積されたエネルギーB4は、切り換えプロセスに起因して減少する。切り換えプロセスは時点tで完了し、閉鎖要素2が所定の休止位置に到達している。
【0065】
図6の最も下側の図に一例として示されるエネルギー蓄積デバイス7に蓄積されるエネルギーB4は、時間tで値ゼロに達する必要はなく、ゼロ以外の値を有することもできることが理解される。このことは、エネルギー蓄積デバイス7が時間tで完全に放電されないことを専ら想定し得るが、エネルギーを依然としてエネルギー蓄積デバイス7に蓄積できることを意味する。
【0066】
以下、図3及び図4に基づき、閉鎖カバー3を伴う閉鎖ハウジング13の好ましい実施例について説明する。図3は、閉鎖カバー3が第1の位置にある閉鎖ハウジング13の斜視図を示し、この第1の位置では、ピンチバルブシステム1のレセプタクル4にチューブ100を挿入する又はレセプタクル4からチューブ100を取り外すことができる(チューブは図3には示されない)。図4は、チューブ100がレセプタクル4内に固定される第2の位置にある閉鎖カバー3を示す。ここで、チューブ100は、チューブピンチ要素31と閉鎖部片21との間でクランプされる。より良い理解のため、閉鎖ハウジング13の閉鎖カバー3のみが図4に示され、内部を見ることができるように残りの部分は取り除かれる。
【0067】
閉鎖ハウジング13には、レセプタクル4の側部に2つの側方開口32が設けられ、閉鎖カバー3が第2の位置にあるときに、これらの側方開口32を通じてチューブ100が閉鎖ハウジング13から出ることができる。したがって、閉鎖カバー3のこの第2の位置において、側方開口32は、チューブ100が共通ハウジング10、より正確には共通ハウジング10の閉鎖ハウジング13を貫通する2つの通路を形成する。
【0068】
閉鎖カバー3は、閉鎖ハウジング13の軸方向端部に配置され、関節ジョイントによって閉鎖ハウジング13に接続され、それにより、閉鎖カバー3を第1の位置(図3)から第2の位置(図4)へと約90°旋回又は傾斜させることができる。更に、閉鎖ハウジング13には固定要素33(図3)が設けられ、この固定要素33により閉鎖カバー3を第2の位置に固定することができ、それにより、閉鎖カバー3が意図せずに開くこと、すなわち、第2の位置から意図せずに離れることを安全に回避できる。例えば、固定要素33は、閉鎖カバー3が第2の位置にある場合に閉鎖カバー3の溝331と協働することができる刻み付きねじとして設計される。刻み付きねじは、閉鎖カバーの第2の位置で溝331によって受けられる。刻み付きねじを締めることにより、閉鎖カバー3を第2の位置に固定する又は取り付けることができる。勿論、固定要素33の他の実施例も想定し得ることが理解される。
【0069】
特に好ましい実施例によれば、チューブピンチ要素31が閉鎖カバー3内に交換可能に配置され、それにより、チューブピンチ要素31を別のチューブピンチ要素31、例えば異なるサイズのチューブピンチ要素31と簡単に交換することができる。
【0070】
この目的のため、閉鎖カバー3は、チューブピンチ要素31を挿入できる凹部34を有することが好ましい。図3では、より良い理解のために、チューブピンチ要素31が凹部34の外側に示される。図3に参照符号を伴わない2つの矢印により示されるように、チューブピンチ要素31を閉鎖カバー3の凹部34に容易に挿入する又は凹部34から取り外すことができる。好ましくは、凹部34は、チューブピンチ要素31が凹部34に固定されるように、チューブピンチ要素31を取り囲んで案内する2つの側方溝を有する。
【0071】
チューブピンチ要素31は、それぞれが平らで丸みを帯びたU字形又はV字形に設計される2つの側方チューブ支持体35を有し、それにより、チューブ100はチューブ支持体35によって部分的に取り囲まれる。更に、チューブピンチ要素31は中央ピンチ要素36を有し、この中央ピンチ要素36は、2つのチューブ支持体35間の中央に配置されるとともに、動作状態でチューブ100に面する側31が丸みを帯びた、好ましくは凸状に丸みを帯びた態様で設計される。動作状態において、チューブ100は、閉鎖要素2の閉位置で、閉鎖部片21とチューブピンチ要素31の中央ピンチ要素36との間でクランプされる。
【0072】
好ましくは、特定の用途に関して、チューブ100の寸法、特にチューブ100の外径及び/又は内径にしたがって適切なチューブピンチ要素31を選択できるように、幾つかの交換可能なチューブピンチ要素31が設けられる。例えば、より小さい外径及び/又はより小さい内径を伴うチューブ100の場合には、より大きい外径及び/又は内径を伴うチューブ100のために設けられるチューブピンチ要素31よりも高い、すなわち、レセプタクル4内へと更に延在する中心ピンチ要素36を有するようなチューブピンチ要素31を使用することができる。
【0073】
チューブ支持体35の形状及び設計を異なるチューブピンチ要素31に関して変えることもできる。
【0074】
更に、軸方向Aに移動可能な保護要素25を設けることが好ましく、この保護要素25には、閉鎖カバー3が図3に示される第1の位置にあるときに保護要素25が2つの側方開口32を覆うように、ばね27によって荷重が与えられる。保護要素25は、閉鎖部片21の両側に配置される2つの側壁251を有し、それにより、閉鎖部片21が2つの側壁251間に位置される。側壁251は閉鎖ハウジング13の内部に配置され、各側壁251は側方開口32のうちの一方の前方にある。軸方向Aに関して、側壁251は、それらが好ましくは閉鎖カバーの第1の位置(図3)で側方開口32と面一で終端するように、すなわち、それらが側方開口32を完全に覆って側方開口32を越えて軸方向Aに突出しないように寸法付けられる。したがって、チューブ100がピンチバルブシステム1に挿入されない場合、2つの側方開口32は、第1の位置及び第2の位置の両方で保護要素25の側壁251によって完全に覆われ、そのため、側方開口32への意図しない到達を防止するフィンガーガードとして機能する。
【0075】
他の実施例において、側壁251は、それらが側方開口を完全に閉じないように、しかしながら好ましくは指が意図せずに届くのを防止する程度まで、軸方向に対して幾分短くなるように設計することもできる。
【0076】
更に、保護要素25を軸方向Aに案内するガイドレール26が閉鎖ハウジング13に設けられ、それにより、保護要素25をガイドレール26に沿って軸方向Aで前後に移動できる。保護要素25と閉鎖要素2との間にはばね27が設けられ、このばね27は、保護要素25の側壁251が側方開口を完全に覆う図3に示される位置へと保護要素25を予圧するように配置される。したがって、チューブ100をレセプタクル4に挿入するために、側壁251が側方開口32を少なくとも部分的に覆わないように保護要素25をばね27の力に抗して移動させなければならない。チューブ100がレセプタクル4に挿入される場合、保護要素25は、チューブ100がレセプタクル4及び側方開口32に位置するまで、ばね27の力に抗してチューブ100と共に軸方向に移動される。その後、閉鎖カバー3は、第2の位置に至らされて、そこで固定要素33によって固定される。
【0077】
2つの側壁251を伴う保護要素25は、特に小さい外径を有するチューブ100の場合に、チューブ100を中心付ける役目を更に果たす。チューブ100は更に側壁251によって固定され、それにより、チューブ100が小さな外径を有する場合であっても、閉鎖カバー3が第2の位置(図4参照)にあるときにチューブ100がレセプタクル4に対して移動し得ることが確実に防止される。更に、保護要素25は、チューブ100の不均一な挟み込み並びに閉鎖部片21への偏心的な力の導入を防止する。
【0078】
図5に対応する表示において、図7は、前述の実施例の第1の変形例を示す。この第1の変形例では、エネルギー蓄積デバイス7に蓄積されたエネルギーを決定するための測定センサ72が更に設けられる。例えば電圧センサとして設計され得る測定センサ72は、信号ラインS2を介して制御ユニット8の開ループ制御ユニット82に信号接続される。測定センサ72は、エネルギー蓄積デバイス7を監視し、少なくとも、エネルギー蓄積デバイス7で利用可能なエネルギーを用いて切り換えプロセスを依然として実行できるかどうかの推定を可能にする。例えば、測定センサ72は、コンデンサの電圧を測定できるように構成される電圧測定ユニットとして設計することができる。コンデンサに蓄えられる電気エネルギーは、エネルギー蓄積デバイス7のコンデンサの電圧から少なくとも推定することができる。次に、コンデンサに現在蓄えられているエネルギーを、例えば開ループ制御ユニット82で、切り換えプロセスに必要な電気エネルギーと比較することができる。
【0079】
更なるオプションとして、閉鎖要素2の位置を決定するための位置センサ73を設けることが可能である。この目的のためには、閉鎖要素2の位置を決定することができるそれ自体既知の任意のセンサが適している。特に、位置センサ73によって、閉鎖要素2が開位置にあるか又は閉位置にあるかを認識することができる。位置センサ73は、信号ラインS3を介して制御ユニット8の開ループ制御ユニット82に信号接続される。
【0080】
外部電源からのエネルギー供給の遮断が監視センサ71によって検出されると、開ループ制御ユニット82は、いずれが所定の休止位置であるかをチェックする。開ループ制御ユニット82は、位置センサ73から、閉鎖要素2の現在位置、すなわち、閉鎖要素2が開位置にあるか又は閉位置にあるかに関する情報を受信する。閉鎖要素2の現在の位置が休止位置に対応する場合には、それ以上の措置は必要なく、それ以上の行動はとられない。閉鎖要素2の現在位置が所定の休止位置に対応しない場合、開ループ制御ユニット82は、切り換えプロセスが実行されるべきであるというコマンドを電源ユニット81に発行する。それに応じて作動デバイス6が制御され、したがって、閉鎖要素2が所望の休止位置に移動される。その後、閉鎖要素2が所定の休止位置に到達したかどうかを位置センサ73によって更にチェックすることができる。
【0081】
勿論、位置センサ73及び測定センサ72の両方が設けられる必要はないが、可能である。他の実施例では、位置センサ73のみを設け、測定センサ72を設けないことができる。更に他の実施例では、測定センサ72のみを設け、位置センサ73を設けないことができる。
【0082】
図5に対応する表示において、図8は、記載された実施例の第2の変形例を示す。この第2の変形例では、第1の変形例(図7)と比較して、切り換え電流を決定するための電流センサ74が更に設けられ、この電流センサ74は、信号ラインS4を介して制御ユニット8の開ループ制御ユニット82に信号接続される。切り換え電流は、それぞれの切り換えプロセスに必要な電流である。
【0083】
切り換え電流を閉鎖電流とすることができ、この場合、閉鎖電流は、閉鎖要素2の開位置から閉鎖要素2の閉位置への切り換えプロセスに必要な電流である。
【0084】
切り換え電流を開放電流とすることができ、この場合、開放電流は、閉鎖要素2の閉位置から閉鎖要素2の開位置への切り換えプロセスに必要な電流である。
【0085】
したがって、電流センサ74は、作動デバイス6に供給される電流、特に作動デバイス6のコイル61に供給される電流を決定できるように構成されて設計される。電流センサ74により、開位置から閉位置への又は閉位置から開位置への切り換えプロセスに必要な電流は、開位置から閉位置への又は閉位置から開位置への閉鎖要素2の全ストロークにわたって決定することができる。
【0086】
特に、この実施例では、切り換え電流に基づくチューブ検出がピンチバルブシステムによって実行されることが想定し得る。この目的のために、例えば、開位置から閉位置へ又はその逆への切り換えプロセスを実行するためにどの閉鎖電流及び/又はどの開放電流がどのタイプのチューブに関して必要なのかの相関関係を制御ユニット8の開ループ制御ユニット82内の割り当てテーブルに記憶することができる。例えば、チューブのタイプは、チューブのそれぞれの材料、外径、内径、壁の厚さ、及び、必要に応じて他のパラメータに関する情報を含むことができる。その場合、割り当てテーブルは、例えば、チューブのタイプを決定する値と必要な切り換え電流との間の相関関係が記憶される多次元テーブルである。測定によって捕捉される切り換え電流、及び、必要に応じて位置センサ73からの信号に基づいて、ピンチバルブシステム1に挿入されたチューブ100を特定することが可能である。
【0087】
更に、閉位置から開位置へ又は開位置から閉位置へ実行される切り換えプロセスと、このために必要な切り換え電流の測定された検出とに基づいて、チューブ100がピンチバルブシステム1のレセプタクル4に挿入されるか否かを検出することができる。
【0088】
勿論、チューブ検出が閉鎖電流のみに基づいて又は開放電流のみに基づいて実行されるような実施例も想定し得る。チューブ検出のために複数の切り換えプロセスを実行することもでき、また、必要な開放電流又は閉鎖電流をその都度測定することができる。例えば、開位置から閉位置へと切り換えプロセスを実行することができ、その後、閉位置から開位置への切り換えプロセスを実行することができる。
【0089】
特に、チューブ検出は、チューブを通じて流体がまだ流れていないチューブ100、すなわち、例えば空のチューブ100に関して実行することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】