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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037616
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】カプセルを備えた紡績ユニット装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/16 20060101AFI20230308BHJP
   D01H 1/42 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
D01H1/16
D01H1/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022140098
(22)【出願日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】CH070240/2021
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(71)【出願人】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルーデク マリーナ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA02
4L056BD01
4L056BD32
4L056BD38
4L056BD52
4L056BD95
4L056BD97
4L056BG28
4L056BG29
4L056BG45
4L056DA16
4L056DA21
4L056DA34
4L056FB01
4L056FB04
4L056FC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通常のリング紡績機の構造形式に統合可能な、スピンドルへの簡単なアクセス性を可能にする、スピンドルもしくは巻取り体の完全な被覆を可能にする。
【解決手段】回転駆動可能にスピンドル台2上に取り付けられた、巻取り体のためのスピンドル20と、スピンドルの長手方向に延び、巻取り体を取り囲むカプセル50とを含み、カプセルがスピンドル台に結合されている、リング紡績機用の紡績ユニット装置10において、カプセルが長手方向で分割されていて、後側のカプセル壁51と前側のカプセル壁52とを有しており、前側のカプセル壁が、開放位置へと運動可能であり、これにより開放位置において、紡績ユニット装置の巻取り体に操作のためにアクセス可能であることが規定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング紡績機(1)用の紡績ユニット装置(10)であって、回転駆動可能にスピンドル台(2)上に取り付けられた、巻取り体(13)のためのスピンドル(20)と、該スピンドル(20)の長手方向に延び、前記巻取り体(13)を取り囲むカプセル(50)とを含んでおり、該カプセル(50)が、前記スピンドル台(2)に結合されている、紡績ユニット装置(10)において、
前記カプセル(50)が、長手方向で分割されていて、後側のカプセル壁(51)と前側のカプセル壁(52)とを有しており、前記前側のカプセル壁(51)が、開放位置へと運動可能であり、これにより該開放位置において、前記紡績ユニット装置(10)の前記巻取り体(13)に操作のためにアクセス可能であることを特徴とする、紡績ユニット装置(10)。
【請求項2】
前記前側のカプセル壁が、下側の領域において旋回可能に結合されていて、好適には水平方向の位置へと旋回可能である、請求項1記載の紡績ユニット装置。
【請求項3】
前記後側のカプセル壁(51)が、前記スピンドル台(2)に固定的に結合されており、前記前側のカプセル壁(52)が、前記後側のカプセル壁(51)に旋回可能に結合されている、請求項2記載の紡績ユニット装置。
【請求項4】
前記後側のカプセル壁(51)と前記前側のカプセル壁(52)とが、それぞれ部分シェルとして形成されており、該部分シェルが、好適には前記スピンドル台(2)の領域においてヒンジ(54)により互いに結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項5】
前記紡績ユニット装置(10)が、スピンドルブレーキ(60)をさらに有しており、該スピンドルブレーキ(60)が、前記スピンドル(20)もしくは前記巻取り体(13)を制動するために、前記カプセル(50)の開放により操作可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項6】
前記前側のカプセル壁(52)が、ブレーキ操作装置(55)を有しており、該ブレーキ操作装置(55)が、前記開放位置への前記前側のカプセル壁(52)の運動により前記スピンドルブレーキ(60)を作動させる、請求項4記載の紡績ユニット装置。
【請求項7】
前記スピンドルブレーキ(60)の制動力が、制御可能、好適には無段階に制御可能である、請求項4または5記載の紡績ユニット装置。
【請求項8】
前記スピンドルブレーキ(60)の制動作用は、前記カプセル(50)の開放度が増すにつれて、最大の制動作用にまで増大する、請求項4から6までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項9】
前記スピンドルブレーキ(60)が、クランプの形態で構成されている、請求項4から7までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項10】
当該紡績ユニット装置が、個別スピンドル駆動ユニットを有しており、該個別スピンドル駆動ユニットが、前記カプセルの開放および/または閉鎖により制御可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項11】
当該紡績ユニット装置(10)が、スピンドル分離装置(70)を有しており、該スピンドル分離装置(70)が、前記カプセル(50)の開放により、前記リング紡績機の駆動エレメント(6)を前記スピンドル(20)から分離する、請求項1から9までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項12】
前記駆動エレメント(6)が、前記スピンドル(20)を運転するために該スピンドル(20)のワーブ(21)に接触する駆動ベルトである、請求項11記載の紡績ユニット装置。
【請求項13】
前記スピンドル分離装置(70)が、分離ローラ(71)を有しており、該分離ローラ(71)が、前記駆動ベルト(6)の方向に運動可能に支持されており、これにより、前記分離ローラ(71)が、前記スピンドル分離装置(70)の操作時に前記駆動ベルト(6)を前記ワーブ(21)から離れるように押圧する、請求項12記載の紡績ユニット装置。
【請求項14】
前記スピンドルブレーキ(60)と前記スピンドル分離装置(70)とは、前記カプセル(50)の開放により、まず前記スピンドルブレーキが最大の制動作用に至るまで操作され、次いで前記リング紡績機(1)の前記駆動エレメント(6)が前記スピンドル(20)から分離されるように、構成されている、請求項11から13までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項15】
前記スピンドルブレーキ(60)と前記スピンドル分離装置(70)とは、前記カプセル(50)の閉鎖により、まず前記リング紡績機(1)の前記駆動エレメント(6)が前記スピンドル(20)に連結された後、次いで前記スピンドルブレーキが解除されるように構成されている、請求項11から14までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項16】
前記前側のカプセル壁(52)が、前記スピンドル分離装置(70)を操作するために操作アーム(58)を有している、請求項11から15までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項17】
前記分離ローラ(71)が、水平方向にガイドされたキャリッジ(72)上に取り付けられており、前記キャリッジ(72)が、トグルレバー(73)により操作可能である、請求項13から16までのいずれか1項記載の紡績ユニット装置。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の多数の紡績ユニット装置を備えたリング紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング紡績機用の紡績ユニット装置であって、回転駆動可能にスピンドル台上に取り付けられた、巻取り体のためのスピンドルと、スピンドルの長手方向に延び、巻取り体を取り囲むカプセルとを含んでいる、リング紡績機用の紡績ユニットに関する。
【0002】
背景技術
クローズドエンドおよび真の撚りを伴う紡績法のための機械、たとえばリング紡績、ホッパ紡績、ループ紡績、回転するリングを用いた紡績、浮遊するリングを用いた紡績、あらゆる種類のバルーン制限を伴う紡績(マルチバルーン、定置および可動のバルーン制限スリーブ、紡績クラウン、紡績フィンガー、バルーン制限リング等のようなバルーン低減)、遠心式紡績、ムラノ紡績(Muranospinnen)が一般に知られている。
【0003】
このような機械は、通常、相並んだ多数の紡績ユニットを有しており、これらの紡績ユニットは、同様に、または互いに類似の形態で運動させられる。これらの紡績法は、同様に加撚に使用することができるが、これに関してはこれ以上詳細に説明しない。糸は、紡績糸、フィラメントおよび撚糸のための上位概念である。以下では、通常、「紡績糸」および「紡績」が話題となる。しかし、当業者には、この概念が「糸」および「加撚」にも適用され得ることは明らかである。
【0004】
今日既に、高速回転する多くのリング紡績機が、スピンドル時間当たりの製造およびエネルギ消費に基づいて生じるコスト最適な速度で運転される。コストは、製造の増大に伴って線形に減少し、エネルギ消費は、約2~4の指数、通常、約3.2~3.4の指数で指数関数的に増大する。
【0005】
エネルギ消費の指数関数的な増大の理由は、クローズエンドおよび一回の真の撚りを伴う紡績法では、巻取りボビンを機械上で必然的に回転させなければならないということである(そうでない場合には、機械がボビンの周囲を回転しなければならないだろう)。通常はコップの形態の巻取り体は、この場合、ベンチレータとして作用する。
【0006】
加速すべき空気質量の減少によるエネルギ節減のために、カプセルが知られている。コップおよび/または糸バルーンは、通常、円筒形のスリーブによって被覆され、このスリーブの直径は、コップもしくはバルーンよりも数ミリメートルだけ大きい。このことは機能するが、たとえば糸破断除去時または糸継ぎ時のような種々様々な運転状況においてコップへのアクセス性を阻止する。
【0007】
バルーンカプセルの特別な形態は、たとえば独国特許出願公告第1510657号明細書または独国特許出願公開第19848752号明細書に記載されているようなバルーン制限スリーブである。
【0008】
ボビンもしくはコップは、スピンドルの軸線上で回転し、スピンドルにたとえば摩擦結合によって結合されている。スピンドルは、ベルト駆動装置によってまたは個別モータによって駆動されていてよい。理想的にはカプセルに依存しないことが望ましい多数の支持バリエーションが存在する。スピンドルは、通常、スピンドル台に取り付けられている。スピンドル台は、固定的に、またはスピンドルの軸方向で可動に構成されていてよい。
【0009】
さらに、全ての糸が同一の箇所において隆起部として巻き取られるのではなく、相対運動によって規定可能なボビン構造形態において(たとえばコップ巻きとして)巻き取られるように、ボビン(もしくはスピンドル)と、糸移動を定義するための機構との間における、ボビン(もしくはスピンドル)の軸線方向での相対運動を実現しなければならない。
【0010】
糸を移動させる機構は、たとえばリングおよびトラベラ、キャップ紡績、ホッパ紡績またはループ紡績時のキャップ縁部またはホッパ縁部、またはホッパ紡績もしくはムラノ紡績時の糸ガイド、糸ガイド管またはこれに類するものである。
【0011】
糸移動させるエレメントは、通常、相並んで1つの長いエレメントに取り付けられており、このエレメントは、エレメントに応じてたとえばリング台、ホッパレール、キャップレールまたは糸ガイドレールまたは糸ガイドフレームと呼ばれる。
【0012】
この相対運動は、一方または両方のエレメントの相互の運動によって実現することができる。広く普及した従来のリング紡績機ではリング台が移動させられ、スピンドル台は機械フレームに不動に位置している。
【0013】
いまスピンドルが被覆されている場合、被覆された領域における糸移動の相対運動を可能にするか、またはカプセルの大部分、ひいてはエネルギ節減を省略しなければならない。
【0014】
カプセルは、スイス国特許発明第683349号明細書(および独国出願公告第1510657号明細書または独国特許出願公開第19848752号明細書)に記載されているように、リング台に取り付けることができ、この実施形態では、紡績領域の特定の小さな部分のみが被覆されている。エネルギ節減は僅かである。
【0015】
中国実用新案第209957949号明細書は、リング台の下側に取り付けられるが、個別モータ駆動装置を備えたスピンドルの上方に移動された延長された取付けを示している、不完全なカプセルを示している。このカプセルは、完全ではなく、スピンドルは比較不安定であり、アウタトラベラの空隙は、スピンドルの歳差運動によって一定に保持することができない。
【0016】
スイス国特許発明第706759号明細書は、コップをリング台の下側で完全かつ効率的に被覆するカプセルを示しているが、スピンドルの駆動構造および支持構造は、このスピンドルがカプセル内に進入するためには不都合な長さである。
【0017】
独国特許出願公開第1685679号明細書は、短縮可能な互いに異なる2つのカプセルバリエーションを示しているが、これらのカプセルバリエーションは、全長にわたってエネルギ的に最適な直径を有しておらず、安定的でも、汚れ耐性でも、容易にクリーニング可能でもない。さらにこのカプセルバリエーションは、容易なアクセス性を有していない。
【0018】
欧州特許出願公開第3483313号明細書には、可動のスピンドル台が記載されており、このときスピンドルは、カプセルに走入する。ここでも、手間のかかる長いスピンドル形態が必要である。
【0019】
国際公開第2020105006号には、リング台に取り付けられているカプセル内に走入するために適している、磁気的に支持された長いスピンドルが記載されている。カプセルの使用のためにかけなければならない手間は著しく大きい。
【0020】
スイス国特許発明第715908号明細書は、位置固定されたリング台と、複数のバルーンを一定に保つことを可能にする運動させられるスピンドル台とを備えたマルチバルーン法を示している。しかしバルーンをリング台の上側で被覆し、かつコップをスピンドルの下側で被覆するために必要となる大きな手間と著しい構造高さとが認識される。同様に、エネルギ削減は、回転する大きな空気体積によって低減されている。
【0021】
特開2013-170337号公報には、カプセルがスピンドル台に固定されて取り付けられている紡績機が記載されている。カプセルにはスリットが形成されており、リング台の機能的な部分は、機械の内側に向けられており、カプセルの後側に取り付けられており、これにより、リングホルダは、リング台によって外側からスリットを通って係合し、リングはカプセル内で軸方向にガイドされる。機械構造は、実質的に慣例的であり、カプセルは、機能にとって必要な程度にだけ高いが、別の欠点の他に、特に紡績ユニットへのアクセス性は悪い。この紡績機は、特定の運転状況において操作しにくい。いずれの場合も、紡績ユニットは、糸破断のような特定の運転状況において、または空の巻管上への紡績開始時に、停止され、アクセス可能にされなければならない。
【0022】
中国実用新案第210194054号明細書は、糸ガイドの統合の問題を解決し、紡績リングを、スリットを必要とすることなしに、カプセル内で磁石によって外部から保持するようにガイドする。糸ガイドはカバー内に統合されており、構造高さは最適化されている。このカプセルは回転し、エネルギ削減自体のためにカプセル自体が被覆を必要とするだろう。技術的な手間は大きい。紡績ユニットには極めてアクセスしにくい。
【0023】
従来のリング紡績機における糸継ぎ時に、既にボビン上に位置しているか、またはボビン上で糸継ぎのために取り付けられた糸片が、上方に向かって、糸ガイド機構を通して挿通され、スピンドルが始動させられ、糸端部が、ドラフト装置から走出する繊維と合わせられて、これにより、新しい繊維が古い糸片と撚られて、ひいては結合される。このことは、たとえばドラフト装置出口における回転によって、または出口ローラにおける格納によって行うことができる。その後に通常の紡績工程が開始し、この工程では、供給された繊維が、糸の長さ毎に規定された回数の撚りを加えられる。
【0024】
しかしスピンドルは、必然的に、最後まで撚られた糸で始動されねばならない。糸継ぎ工程が依然として残っている時間の間、糸は、常に同じ糸片への付加的な撚りを加えられる。このことは、糸継ぎが過度に遅い場合、または紡績速度が過度に速い場合に、糸が過剰に撚られ、これにより糸が破断することにつながってしまう。
【0025】
発明の開示
本発明の課題は、通常のリング紡績機の構造形式に統合可能な、スピンドルへの簡単なアクセス性を可能にする、スピンドルもしくは巻取り体の完全な被覆を可能にすることである。別の課題は、特に糸破断時に個別の紡績ユニットの簡単な操作でアクセス性を可能にすることである。特に、今日では通常の6~10秒で糸破断を解消することを可能にすることが望ましい。
【0026】
この課題は、請求項1に記載の特徴を備えた紡績ユニット装置により解決される。リング紡績機用の紡績ユニット装置は、回転駆動可能にスピンドル台上に取り付けられた、巻取り体(つまり空の巻管または巻き取られた糸を有するボビン)のための、スピンドルと、スピンドルの長手方向に延び、巻取り体を取り囲むカプセルとを含んでおり、カプセルが、スピンドル台に結合されている。このカプセルは、長手方向で分割されていて、後側のカプセル壁と、操作者側にある前側のカプセル壁とを有している。前側のカプセル壁は、開放位置へと運動可能であり、これにより開放位置において、紡績ユニット装置の巻取り体に操作のためにアクセス可能である。
【0027】
幾つかの実施形態では、前側のカプセル壁が、下側の領域において旋回可能に結合されていて、かつ好適には水平方向の位置へと旋回可能である。代替的には、前側のカプセル壁は、線形運動によって、スピンドル軸線を中心とした旋回によって、またはスライド運動等によって、開放位置にもたらすことができる。
【0028】
本発明は、カプセルを極めて簡単に開放することができるという利点を有している。リング紡績機では、個別の紡績ユニットのスピンドルの回転軸線が、鉛直方向に延びている。スピンドルは、下端部において、回転駆動可能にスピンドル台上に支持されている。操作者側にある前側のカプセル壁が下端部において回転可能に支持されていることによって、この前側のカプセル壁は、鉛直方向の閉鎖位置から水平方向の開放位置へと外方に旋回した場合に、前側からの、つまりリング紡績機の操作者側からの巻取り体へのアクセス性を確実に保証することができ、これによって糸破断時の機械的な糸継ぎあるいは自動的または手動の操作が問題のない形式で可能にされている。このようなカプセルは、既存の紡績機に後から装備するためにも適している。
【0029】
幾つかの実施形態では、後側のカプセル壁が、スピンドル台に固定的に結合されていてよく、前側のカプセル壁が、後側のカプセル壁に旋回可能に結合されていてよい。このためには、後側のカプセル壁は、たとえば側方に配置され、かつ前方に向かって突出する2つの脚部を有していてよく、これらの脚部において、前側のカプセル壁が、たとえば軸により旋回可能に保持されている。代替的には、前側のカプセル壁が、スピンドル台、もしくはスピンドル台に取り付けられたホルダに旋回可能に結合されていてもよい。
【0030】
幾つかの実施形態では、後側のカプセル壁と前側のカプセル壁とが、それぞれ部分シェルとして形成されていてよく、これらの部分シェルは、好適にはスピンドル台の領域においてヒンジにより互いに結合されている。これらの部分シェルは一緒に、スピンドル軸線を360°取り囲んでいる。部分シェルは、それぞれが180°を取り囲んでいる2つのハーフシェルとして構成されていてよい。別の分割も同様に考えられる。
【0031】
幾つかの実施形態では、紡績ユニット装置が、スピンドルブレーキをさらに有していてよく、このスピンドルブレーキは、スピンドルもしくは巻取り体を制動するために、カプセルの開放により操作可能である。このような機械的なスピンドルブレーキは、しばしば必要である。なぜならば、巻取り体が高い回転数に基づいて、もはや手で制動することができないからである。信頼性の高い迅速な制動は、たとえば糸破断をできるだけ短時間で克服するためにも必要である。
【0032】
スピンドルブレーキは自体公知であり、通常は、操作オペレータの膝で操作されるように設計されており、これにより両手は糸破断の克服のために自由である。
【0033】
幾つかの実施形態では、前側のカプセル壁は、ブレーキ操作装置を有していてよく、このブレーキ操作装置は、開放位置への前側のカプセル壁の運動によりスピンドルブレーキを作動させる。このことは、カプセルの開放と同時にスピンドルもしくは巻取り体が制動されるという利点を有している。膝を用いた面倒な制動は省略することができる。カプセルが完全に開放されるや否や、巻取り体も制動されており、糸端部は再び正確に挿通され、繊維束に結合され得る。カプセルが閉鎖されると、対応してスピンドルブレーキが解除され、紡績過程が継続される。
【0034】
幾つかの実施形態では、スピンドルブレーキの制動力は制御可能、好適には無段階に制御可能であってよい。制御可能な制動力により、スピンドルは、必要に応じて迅速にまたは緩慢に静止状態に至るまで制動され得る。反対に、スピンドルの始動を、カプセルもしくは前側のカプセル壁の閉鎖によって調整することができ、これによってスピンドルは、糸継ぎのために必要な回転数を有している。
【0035】
幾つかの実施形態では、スピンドルブレーキの制動作用は、カプセルの開放度が増すにつれて、最大の制動作用にまで増大することができる。前側のカプセル壁の開放または外方への旋回によって、スピンドルブレーキを、前側のカプセル壁に取り付けられたブレーキ操作装置を介して操作することができる。スピンドルブレーキとブレーキ操作装置とは、カプセルの開放度が増すにつれて制動作用が増大するように構成されていてよい。開放中に、スピンドルもしくは巻取り体が制動される。これとは逆に、カプセルの閉鎖時に制動作用が減少し、スピンドルもしくは巻取り体は、再び回転し始める。前側のカプセル壁は、スピンドルの回転数を調整するためにブレーキレバーのように作用する。これにより、特にカプセルの閉鎖時に、スピンドルの始動を調整することができ、これにより、糸破断克服の最後において糸の撚りのための最適な回転数が達成される。カプセルが完全に閉鎖されるや否や、スピンドルは再び運転回転数で回転し、紡績工程が継続される。
【0036】
幾つかの実施形態では、スピンドルブレーキは、巻取り体とワーブとの間またはワーブと巻取り支持部との間に配置されていてよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、スピンドルブレーキは、クランプまたはトングの形態で構成されていてよい。クランプは、第1のブレーキレバーと第2のブレーキレバーとを有していてよく、これら第1のブレーキレバーと第2のブレーキレバーとは、ヒンジを介して互いに結合されている。さらにこれらのブレーキレバーのうちの一方は、ばね弾性的に構成されていてよい。両ブレーキレバーのそれぞれ一方の端部には、スピンドルを制動するためのクランプジョーが形成されていてよく、このクランプジョーは、そのためにスピンドルの周囲に設置されている。両ブレーキレバーのそれぞれの他方の端部は、ブレーキ操作装置が、両ブレーキレバーの間に導入可能であり、ブレーキレバーのこれらの端部を互いに押し離すように構成されていてよい。クランプジョーが押し合わせられ、スピンドルが制動される。
【0038】
クランプまたはトングの形態のスピンドルブレーキでは、両ブレーキレバーは、ブレーキ操作装置が導入される端部(つまりスピンドルとは反対側の端部)において、斜めの当接面を有していてよく、この当接面がヒンジに向かって互いに接近する。これにより、制動作用を、カプセルの開放度が増大するにつれて、もしくはブレーキ操作装置をブレーキレバー間に導入するにつれて、増大させることができる。予め規定された導入深さから、両当接面は互いに平行に延びていてよく、これにより、ブレーキ操作装置をさらに引き続き導入した場合に、制動作用はもはや増大しないが、維持される。このことは特に、付加的に後述のスピンドル分離装置が使用される場合に有利である。
【0039】
たとえばカプセルのブレーキ操作装置のためのブレーキジョーおよびスライドガイドを備えたスピンドルブレーキの別の構成も可能である。スライドガイドは、制動作用が、カプセルの開放度に依存して増大し、場合によっては規定された開放度から一定に維持されるように構成されていてよい。
【0040】
紡績ユニット装置に、個別スピンドル駆動ユニットが設けられていてもよく、または1つの駆動ユニットが、たとえば駆動ベルトを介して複数の紡績ユニット装置を駆動することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、紡績ユニット装置が、個別スピンドル駆動ユニットを有していてよい。この個別スピンドル駆動ユニットは、カプセルの開閉によって(説明したスピンドルブレーキと同様に)、制御可能である。このためには、紡績ユニット装置に、駆動制御ユニットが設けられていてよく、この駆動制御ユニットは、カプセルの開閉によって操作可能である。カプセルの開放によって、駆動装置の回転数を減少させることができるか、または駆動装置を完全にスイッチオフすることができる。逆に、カプセルの閉鎖によって、駆動装置の回転数を高めるか、または駆動装置を再びスイッチオンすることができる。制御装置は、機械的かつ/または電子式に構成されていてよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、紡績ユニット装置は、スピンドル分離装置を有していてよく、スピンドル分離装置は、カプセルの開放により、好適には開放位置への前側のカプセル壁の外方への旋回時に、リング紡績機の駆動エレメントをスピンドルから分離する。駆動エレメントは、スピンドルを運転するためにスピンドルのワーブに接触する駆動ベルトであってよい。このようなスピンドル分離装置は、制動されたスピンドルの、たとえば引き続き走行する駆動ベルトによる過熱を回避するために有利である。
【0043】
幾つかの実施形態では、スピンドル分離装置は、分離ローラを有していてよく、分離ローラが、駆動ベルトの方向に運動可能に支持されており、これにより、この分離ローラが、スピンドル分離装置の操作時に駆動ベルトをワーブから離れるように押圧する。カプセルの開放時には、対応して駆動ベルトがスピンドルから分離され、スピンドルをより簡単に制動することができる。
【0044】
駆動ユニットの分離または切離しは、特に、紡績ユニットが欠陥に基づき比較的長い時間停止されなければならない場合に有利である。
【0045】
幾つかの実施形態では、スピンドルブレーキとスピンドル分離装置もしくは駆動制御ユニットとが、互いに組み合わせられていてよい。好適には、スピンドルブレーキとスピンドル分離装置もしくは駆動制御ユニットとは、カプセルの開放により、好適には開放位置への前側のカプセル壁の外方への旋回時に、まずスピンドルブレーキが最大の制動作用に至るまで操作され、次いで初めて、リング紡績機の駆動エレメントがスピンドルから分離されるように、構成されていてよい。逆に、スピンドルブレーキとスピンドル分離装置もしくは駆動制御ユニットとは、カプセルの閉鎖により、まずリング紡績機の駆動エレメントがスピンドルに連結された後、次いでスピンドルブレーキが解除されるように、構成されていてよい。
【0046】
幾つかの実施形態では、前側のカプセル壁が、スピンドル分離装置もしくは駆動制御ユニットを操作するために、操作アームを有していてよい。分離ローラは、たとえば水平方向にガイドされるキャリッジ上に取り付けられていてよく、キャリッジが、トグルレバーにより操作可能である。操作アームは、前側のカプセル壁の外方への旋回時に、トグルレバーに作用し、かつこれにより駆動エレメントを分離することができる。操作アームは、この操作アームがカプセルのほぼ完全な開放時に初めてスピンドル分離装置に作用するように構成されていてよく、これにより、スピンドルは、その制動後に初めて分離される。このことは特に、カプセルの閉鎖時に、まずスピンドルが駆動エレメントに連結され、その後に制動作用が解消されるようにするために有利であり、これによって閉鎖時における制動作用の確実な調整もしくは制動作用の段階的な解消を可能にすることができる。
【0047】
カプセルの開放度に依存して調整可能なスピンドルブレーキとカプセルとの組み合わせは、独立した発明と見なすこともできる。同様に、スピンドルブレーキの段階的な調整自体も、独立的な発明と見なすことができる。スピンドル分離装置は、単独でも、スピンドルブレーキありまたはなしのカプセルとの組み合わせでも、独立した発明と見なすことができる。
【0048】
同様に、機械式のブレーキ(迅速で強い制動作用)または駆動装置の駆動制御が、個別モータにより駆動されるスピンドルに作用する、本発明の別の形態も考えられる。
【0049】
しかし、全ての構成に共通することは、紡績ユニットのカプセルの開放によるスピンドルの制動と、カプセルの開放状態による、少なくとも立ち上げ時のスピンドルの制御可能な速度とである。
【0050】
本発明はさらに、上述の多数の紡績ユニット装置を備えたリング紡績機に関する。
【0051】
本発明を以下に図面に関連した実施例につき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】カプセルを備えた紡績ユニット装置を示す側面図であり、(a)では閉鎖位置、(b)では開放位置で示されている。
図2】ブレーキ操作装置を備えた前側のカプセル壁を示す正面図である。
図3】スピンドルブレーキを示す図である。
図4】スピンドル分離装置を示す図であり、(a)では連結位置で、(b)では分離位置で示されている。
【0053】
図中、同一の要素にはそれぞれ同一の参照符号が使用されており、別に明確に言及しない限り、最初の説明は全ての図面に該当する。
【0054】
発明を実施するための形態
図1は、リング紡績機1の紡績ユニット10を概略的に示す側面図であり、(a)ではカプセルが閉鎖位置にある状態で、(b)ではカプセルが開放位置にある状態で示されている。
【0055】
紡績ユニット10では、繊維束11から糸12が紡績され、回転している巻取り体13もしくは紡績コップ上に巻き取られる。このためには、巻取り体13は、回転駆動可能なスピンドル20上に取り付けられている。紡績工程中に繊維束11はドラフト装置7を通過し、次いで撚られて糸12となって、巻取り体13上に巻き取られる。巻取り体13上に糸12を置くために、糸12のガイドが、紡績リング30上で回転するリングトラベラ31により行われる。糸12をガイドするために、スピンドル20もしくは巻取り体13の上側に、糸ガイド40が配置されている。巻取り時に形成される糸バルーン14の半径方向の延在量は、バルーン制限器41もしくはバルーン制限リングによって制限することができる。したがってバルーン制限器41は、紡績リング30と糸ガイド40との間に配置されている。リング紡績機1は、典型的には、並んで配置された多数の紡績ユニット10を有している。
【0056】
紡績ユニット10の紡績リング30は、リング紡績機1の長手方向に延びるリング台3に配置されている。互いに並んで配置された紡績ユニット10のバルーン制限器41は、リング紡績機1の長手方向に延びるクロスバー4に調整可能に配置されている。相応して、相並んで配置された紡績ユニット10の糸ガイド40は、リング紡績機1の長手方向に延びるクロスバー5に調整可能に配置されている。
【0057】
これらの紡績ユニット10のスピンドル20は、リング紡績機1の長手方向に延びるスピンドル台2に配置されている。紡績ユニット10の、本実施形態に図示されているスピンドル20は、下端部にワーブ21とスピンドル軸受22とを含んでおり、スピンドル軸受22によってスピンドル20は、スピンドル台2上に回転可能に支持されている。スピンドル20は、接線ベルト6を介して駆動され、この接線ベルト6は、それぞれ複数の紡績ユニットを駆動することができ、スピンドル20のワーブ21に押し付けられる。別の駆動装置も可能である。
【0058】
さらに図1(a)は、閉鎖位置における紡績ユニット装置10のカプセル50を示している。
【0059】
カプセル50は、軸線方向で分割された、部分シェルの形態の2つのカプセル壁から形成されている。後側のカプセル壁51は、スピンドル台2に結合されており、スピンドルに対して相対的に位置固定的に取り付けられているか、または位置固定に、しかし除去可能に取り付けられている。操作者側にある前側のカプセル壁52は、たとえば、スピンドル軸線もしくはカプセル軸線に対して垂直方向の平面に位置している軸線を備えたヒンジ54を中心とした旋回によって開放することができる。図示の実施形態において、ヒンジ54は、後側のカプセル壁51の側方の2つの脚部53に位置しており、これらの脚部53は、前側のカプセル壁52を越えて前方に向かって突出している。
【0060】
さらに、図示の実施形態では、スピンドルブレーキ60が概略的に示されており、このスピンドルブレーキ60は、本実施形態では巻取り体13のすぐ下側に、かつスピンドル20のワーブ21の上側に配置されている。
【0061】
スピンドルブレーキ60の作動および制御のために、前側のカプセル壁52は、ブレーキ操作装置55を有している。このブレーキ操作装置55は、本実施形態では、その自由端に形成されたボール57を備えた操作アーム56の形態で実現されている。
【0062】
前側のカプセル壁52は、閉鎖状態において定義された終端位置を有している。たとえば紡績リング30およびリングトラベラ31の形態の、スピンドル20もしくは巻取り体13の軸線方向で糸移動を行うための手段が設けられている。この手段は、たとえば後側のカプセル壁51に設けられたリングホルダを備えたスリットであるか、またはたとえば紡績リング30の磁気的なガイドであってもよい。
【0063】
図1(b)は、図1(a)に示した紡績ユニット装置を、カプセル50が開放位置にある状態で示している。前側のカプセル壁52は、ヒンジ54を中心として前方かつ下側に旋回させられており、これによって前側のカプセル壁52は、ほぼ水平方向の位置にある。これにより、巻取り体13には操作のために自由にアクセス可能である。前側のカプセル壁52は、手で簡単に(またはロボットによって)、閉鎖位置から開放位置へと運動させることができる。
【0064】
前側のカプセル壁52の下端部には、ブレーキ操作装置55が取り付けられている。前側のカプセル壁52の外方への旋回時に、ブレーキ操作装置55、図示の実施形態ではブレーキ操作装置55のボール57が、スピンドルブレーキ内に導入され、スピンドルの制動を実現する。ブレーキ操作装置の別の構成も可能である。
【0065】
図2は、操作アーム56およびボール57として構成されたブレーキ操作装置55を備えた前側のカプセル壁52の正面図を示している。
【0066】
図3は、スピンドルブレーキ60を上方から見た図を示している。図示の実施形態では、スピンドルブレーキ60は、クランプまたはトングとして形成されており、第1のブレーキレバー61と第2のブレーキレバー62とを有している。両ブレーキレバー61,62は、ヒンジ63を介して互いに結合されている。両ブレーキレバー61,62は、一方の端部にそれぞれ1つのブレーキジョーまたはクランプジョーを有しており、このブレーキジョーまたはクランプジョーは、紡績ユニット装置10のスピンドル20の周囲に設置されている。スピンドルブレーキ60の操作時に、クランプジョーはスピンドル20に押し付けられ、スピンドル20を制動する。
【0067】
両ブレーキレバー61,62のそれぞれの他方の端部は、ブレーキ操作装置55が、両ブレーキレバー61,62の間に導入可能であり、かつブレーキレバー61,62の両端部を互いに押し離すように形成されていてよい。この場合にクランプジョーが押し合わせられて、スピンドルを制動する。
【0068】
つまり、スピンドルブレーキ60は、たとえば楔、ボール57、円筒体または別の適切な形状の形態の適切なブレーキ操作装置55により操作することができ、その制動力において無段階に開ループ制御または閉ループ制御することができる。ブレーキレバー61,62間に示した間隙は、楔形かつ真っ直ぐに形成されており、この場合、楔形は、操作の経路または旋回角度に依存して制動作用を調節することができるようにするために、別の角度または任意の楔形の曲線輪郭を有していてもよい。
【0069】
ブレーキレバーのうちの一方のブレーキレバー、ここでは第2のブレーキレバー62は、たとえば、ばね部材64を介して結合された2つの部分を有していることにより、ばね弾性的に形成されている。ばね部材64は、ばね鋼であってよい。
【0070】
前側のカプセル壁52の外方への旋回時に、ブレーキ操作装置55のボール57が、両ブレーキレバー61,62間の間隙にますます深く導入される。制動作用をカプセル50の開放度に依存して段階的に高めるために、両ブレーキレバー61,62は、スピンドルとは反対側の端部に、ブレーキ操作装置55のボール57のための当接面65をそれぞれ有しており、これらの当接面65は、ヒンジ63に向かって接近するので、ブレーキレバー61,62間には、ボール57が導入される先細りする間隙が形成されている。導入の深さが増すにつれて、スピンドルブレーキ60の、スピンドルとは反対の側の端部は、互いに押し離され、クランプジョーがスピンドル20に押し付けられる。この場合に制動作用は増大する。
【0071】
規定された導入深さから、ブレーキレバーは、一定に維持される制動作用のための当接面66を有していてよく、これらの当接面66は、ブレーキ操作装置55の導入時に、実質的に互いに平行に延びている。これにより、カプセル50が部分的な開放位置において既に最大制動作用を形成した後で、カプセル50を完全な開放位置にもたらすことができる。この場合に、制動作用は一定に維持される。
【0072】
したがって、換言すれば、カプセル50の開放により、ブレーキ操作装置55は、増大する制動作用のための当接面65において規定された導入深さにまでガイドされる。その後、このブレーキ操作装置55は、一定に維持された制動作用のための当接面66においてカプセルの完全な開放に至るまでガイドされる。これにより、スピンドルブレーキは、前側のカプセル壁52の内外への旋回により簡単に調整することができる。このことは特に、以下で図4において説明するように、付加的にスピンドル分離装置70が使用される場合に有利である。
【0073】
さらに、ブレーキ操作装置55を保持する必要なしに、スピンドルブレーキ60を閉じたまま保持することを可能にする係止位置が設けられている。この係止位置は、間隙の中央に、または間隙の端部に形成されていてよい。これに関しても多数の実施形態が考えられる。
【0074】
ブレーキは、ここでは「トング」として構成されており、このトングは、2つの操作レバーが互いに押し離された場合に閉じ、スピンドルの通常運転中にはスピンドルに接触しない。このためにばねが設けられており、このばねは、ブレーキトングをこの位置にもたらして保持し、このことは、トングの別の一連の実施形態によっても達成することができる。たとえばエラストマまたは、少なくとも部分的に弾性的なプラスチック部材としてのトングの構成は、同一の機能を引き受けることができる。
【0075】
代替的には、スピンドルブレーキは、このスピンドルブレーキがブレーキレバーの押し合わせ時に閉じるように構成されていてもよい。この場合、ブレーキレバーは、ブレーキ操作装置の適切な対向部材によって押し合せられる必要がある。たとえば、ブレーキレバーの間隙の楔形状もブレーキ操作装置に組み込まれていてよい。同様に、ブレーキレバーのうちの1つ、または一方のブレーキジョーだけが位置固定されていてもよく、他方のブレーキレバーのみが操作されてもよい。
【0076】
図4には、スピンドル分離装置70の概略図を、(a)では連結位置で、(b)では分離位置で示している。前側のカプセル壁52は、スピンドル分離装置70のための、固定的に結合された操作アーム58を有している。図2には、スピンドル分離装置70用の操作アーム58が、破線で図示されている。操作アーム58は、スピンドル20に対してリング紡績機の水平方向の長手方向でずらされているので、操作アーム58は、スピンドル20の隣に配置されたスピンドル分離装置70を操作することができる。
【0077】
スピンドル分離装置70は、図示の実施形態では、スピンドル台2上で線形にガイドされるキャリッジ72を有している。キャリッジ72上には、鉛直方向の回転軸線を備えた分離ローラ71が組み付けられている(回転軸線は、スピンドル軸線に対して平行である)。キャリッジ72は、トグルレバー73を介してスピンドル台2またはキャリッジ72のためのガイドプレートに結合されている。トグルレバー73の操作は、分離ローラ71を備えたキャリッジ72の線形移動を引き起こす。
【0078】
スピンドル分離装置70は、分離ローラ71がトグルレバー73の操作時に駆動ベルト6をスピンドル20(もしくはスピンドル20のワーブ21)から持ち上げて(図4(b)参照)、これによってスピンドル20を制動状態において高温にしないように配置されている。このことは、特に比較的高いスピンドル速度および比較的大きな出力伝達時に有利である。
【0079】
トグルレバー72もしくはスピンドル分離装置70を操作するために、前側のカプセル壁52は、相対回動不能に結合された操作アームまたは操作レバー58を有している。操作アーム58がトグルレバー73から除去されると、駆動ベルト6は、分離ローラ71、キャリッジ72およびトグルレバー73を出発位置に戻す。この工程は、適切な機構により、たとえばばね等により支援することができ、終端位置が定義されているが、キャリッジ72が取出し可能であるように運動を制限することができる。
【0080】
分離ローラを外すために、たとえば偏心体または部分偏心体のような、分離ローラの別の操作機構も可能である。しかし全ての解決手段には、スピンドルからの駆動ベルトの持上げが共通している。
【符号の説明】
【0081】
1 リング紡績機
2 スピンドル台
3 リング台
4 クロスバー(バルーン制限器)
5 クロスバー(糸ガイド)
6 駆動エレメント/接線ベルト
7 ドラフト装置
10 紡績ユニット/紡績ユニット装置
11 繊維束
12 糸
13 巻取り体/紡績コップ
14 糸バルーン
20 スピンドル
21 ワーブ
22 スピンドル軸受
30 紡績リング
31 リングトラベラ
40 糸ガイド
41 バルーン制限器
50 カプセル
51 後側のカプセル壁
52 前側のカプセル壁
53 脚部
54 ヒンジ/回転軸線
55 ブレーキ操作装置
56 操作アーム
57 ボール
58 スピンドル分離装置用の操作アーム
60 スピンドルブレーキ
61 第1のブレーキレバー
62 第2のブレーキレバー
63 ヒンジ
64 ばね部材
65 増大する制動作用のための当接面
66 一定の制動作用のための当接面
70 スピンドル分離装置
71 分離ローラ
72 キャリッジ
73 トグルレバー
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】