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特開2023-37620樹脂組成物、成形品、多層体および成形体
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  • 特開-樹脂組成物、成形品、多層体および成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037620
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品、多層体および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230308BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230308BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230308BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20230308BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230308BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230308BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20230308BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20230308BHJP
【FI】
C08L101/00
B32B27/36
B32B27/32 101
C08L25/08
C08L67/02
C08K3/013
C08K3/40
C08K3/016
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140532
(22)【出願日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2021144332
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小林 莉奈
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK12
4F100AK12A
4F100AK27
4F100AK41A
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK53
4F100AK70
4F100AK70A
4F100AL07A
4F100AL09A
4F100AS00C
4F100AS00E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA23
4F100CA23A
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100DG01
4F100JA07A
4F100JA11A
4F100JA12A
4F100JB16A
4F100JK02
4F100JK04
4F100JK06
4F100JK10
4F100JK10A
4F100JK14
4F100JK14A
4F100JL04
4F100JL11
4F100YY00A
4J002AA00W
4J002BB21X
4J002BC02X
4J002BC06Y
4J002BN12Z
4J002CD12Z
4J002CF07W
4J002DA036
4J002DE128
4J002DL007
4J002FA047
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD096
4J002FD138
4J002FD13Z
4J002GF00
4J002GJ01
(57)【要約】
【課題】 結晶性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から成形された成形品であって、他部材との接着性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、樹脂組成物から形成された成形品、および多層体の提供。
【解決手段】 結晶性熱可塑性樹脂(A)と酸変性重合体(B)とを含む樹脂組成物であって、前記酸変性重合体(B)の樹脂組成物中の含有量よりも、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の樹脂組成物中の含有量が多く、前記樹脂組成物中の酸の含有量が0.5質量%以上である、接着用樹脂組成物。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑性樹脂(A)と酸変性重合体(B)とを含む樹脂組成物であって、
前記酸変性重合体(B)の樹脂組成物中の含有量よりも、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の樹脂組成物中の含有量が多く、
前記樹脂組成物中の酸の含有量が0.5質量%以上である、接着用樹脂組成物。
【請求項2】
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項3】
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1または2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸変性重合体(B)の重量平均分子量が150,000以上である、請求項1または2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸変性重合体(B)が無水マレイン酸重合体を含む、請求項1または2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸変性重合体(B)がスチレンー無水マレイン酸重合体を含む、請求項1または2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、前記酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含む、請求項1または2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項8】
前記非晶性熱可塑性樹脂(C)がスチレン系樹脂を含む、請求項7に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、衝撃改質剤を含む、請求項1または2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項10】
前記衝撃改質剤がコアシェルエラストマーを含む、請求項9に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、強化充填材を含む、請求項1または2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項12】
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
前記酸変性重合体(B)がスチレンー無水マレイン酸重合体を含み、
さらに、前記酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含み、
前記非晶性熱可塑性樹脂(C)がスチレン系樹脂を含み、
さらに、強化充填材を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1、2または12に記載の接着用樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項14】
結晶性熱可塑性樹脂(A)と酸変性重合体(B)とを含む樹脂組成物から形成された成形品と、
前記成形品と、直接に、または、少なくとも接着剤を介して貼り合わされている他部材とを有し、
前記酸変性重合体(B)の樹脂組成物中の含有量よりも、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の樹脂組成物中の含有量が多く、
前記樹脂組成物中の酸の含有量が0.5質量%以上である、多層体。
【請求項15】
前記成形品と前記他部材が、一部において、直接に貼り合わされている、請求項14に記載の多層体。
【請求項16】
前記多層体が、さらに、接着剤を含み、
前記成形品と前記他部材とが、少なくとも接着剤を介して貼り合わされている、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項17】
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂を含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項18】
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項19】
前記酸変性重合体(B)の重量平均分子量が150,000以上である、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項20】
前記樹脂組成物中の酸の含有量が1質量%以上である、請求項14または15に記載の多層体
【請求項21】
前記酸変性重合体(B)が無水マレイン酸重合体を含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項22】
前記酸変性重合体(B)がスチレン-無水マレイン酸重合体を含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項23】
前記成形品の他部材と貼り合わせる領域の算術平均高さ(Sa)が1.0以上である、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項24】
前記樹脂組成物が、さらに、前記酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項25】
前記非晶性熱可塑性樹脂(C)がスチレン系樹脂を含む、請求項24に記載の多層体。
【請求項26】
前記樹脂組成物が、さらに、衝撃改質剤を含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項27】
前記衝撃改質剤がコアシェルエラストマーを含む、請求項26に記載の多層体。
【請求項28】
前記樹脂組成物が、さらに、強化充填材を含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項29】
前記強化充填材がガラスを含む、請求項28に記載の多層体。
【請求項30】
前記樹脂組成物が、さらに、難燃剤を含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項31】
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、前記樹脂組成物中の酸の含有量が1質量%以上であり、前記酸変性重合体(B)がスチレン-無水マレイン酸重合体を含み、前記樹脂組成物が、さらに、前記酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含み、前記非晶性熱可塑性樹脂(C)がスチレン系樹脂を含み、前記樹脂組成物が、さらに、ガラス繊維を含む、請求項14に記載の多層体。
【請求項32】
前記樹脂組成物が、さらにコアシェルエストマーを含む、請求項31に記載の多層体。
【請求項33】
請求項14、15、31および32のいずれか1項に記載の多層体を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形品、多層体および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性熱可塑性樹脂は、加工が容易であり、さらに、機械的物性、耐熱性その他の物理的・化学的特性に優れている。このため、自動車部品、電気・電子機器部品その他の精密機器部品等に幅広く使用されている。特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂は結晶化速度が速いため射出成形用に好適に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、(a)ポリエステル樹脂50~96重量%と、(b)ゴム変性ポリスチレン系樹脂35~3重量%と、(c)芳香族ポリカーボネート樹脂および/またはスチレン-無水マレイン酸共重合体15~1重量%からなるポリエステルを主成分とする樹脂(A)100重量部に対して、少なくとも、(B)アミノ系シランカップリング剤とノボラック型エポキシ樹脂を含む集束剤が少なくとも一部に付着しているガラス繊維10~150重量部と、(C)エポキシ化合物を0.1~3重量部とを配合してなるガラス繊維強化ポリエステル樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、収縮率の小さい樹脂組成物として、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂25~90重量%、(B)結晶化温度が140~210℃である、ポリブチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂25~1重量%、(C)ゴム変性ポリスチレン系樹脂35~3重量%(D)芳香族ポリカーボネート樹脂およびスチレン-無水マレイン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種15~1重量%を、各々配合してなることを特徴とするポリブチレンテレフタレ-ト樹脂組成物(但し、(A)~(D)の合計量が100重量%)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-016559号公報
【特許文献2】特開2006-219626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、結晶性熱可塑性樹脂から形成された成形品を、他の樹脂部材等と接着剤を用いて接着することが広く行われている。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、結晶性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から成形された成形品であって、他部材との接着性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、前記樹脂組成物から形成された成形品、および多層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、結晶性熱可塑性樹脂に、酸変性重合体を配合して、樹脂組成物中の酸の量を調整することにより、接着性を向上させることが可能であることを見出し、上記課題を解決するに至った。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>結晶性熱可塑性樹脂(A)と酸変性重合体(B)とを含む樹脂組成物であって、
前記酸変性重合体(B)の樹脂組成物中の含有量よりも、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の樹脂組成物中の含有量が多く、
前記樹脂組成物中の酸の含有量が0.5質量%以上である、接着用樹脂組成物。
<2>前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂を含む、<1>に記載の接着用樹脂組成物。
<3>前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、<1>または<2>に記載の接着用樹脂組成物。
<4>前記酸変性重合体(B)の重量平均分子量が150,000以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の接着用樹脂組成物。
<5>前記酸変性重合体(B)が無水マレイン酸重合体を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の接着用樹脂組成物。
<6>前記酸変性重合体(B)がスチレンー無水マレイン酸重合体を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の接着用樹脂組成物。
<7>さらに、前記酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の接着用樹脂組成物。
<8>前記非晶性熱可塑性樹脂(C)がスチレン系樹脂を含む、<7>に記載の接着用樹脂組成物。
<9>さらに、衝撃改質剤を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の接着用樹脂組成物。
<10>前記衝撃改質剤がコアシェルエラストマーを含む、<9>に記載の接着用樹脂組成物。
<11>さらに、強化充填材を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の接着用樹脂組成物。
<12>前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
前記酸変性重合体(B)がスチレンー無水マレイン酸重合体を含み、
さらに、前記酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含み、
前記非晶性熱可塑性樹脂(C)がスチレン系樹脂を含み、
さらに、強化充填材を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の接着用樹脂組成物。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載の接着用樹脂組成物から形成された成形品。
<14>結晶性熱可塑性樹脂(A)と酸変性重合体(B)とを含む樹脂組成物から形成された成形品と、
前記成形品と、直接に、または、少なくとも接着剤を介して貼り合わされている他部材とを有し、
前記酸変性重合体(B)の樹脂組成物中の含有量よりも、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の樹脂組成物中の含有量が多く、
前記樹脂組成物中の酸の含有量が0.5質量%以上である、多層体。
<15>前記成形品と前記他部材が、一部において、直接に貼り合わされている、<14>に記載の多層体。
<16>前記多層体が、さらに、接着剤を含み、
前記成形品と前記他部材とが、少なくとも接着剤を介して貼り合わされている、<14>または<15>に記載の多層体。
<17>前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂を含む、<14>~<16>のいずれか1つに記載の多層体。
<18>前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、<14>~<17>のいずれか1つに記載の多層体。
<19>前記酸変性重合体(B)の重量平均分子量が150,000以上である、<14>~<18>のいずれか1つに記載の多層体。
<20>前記樹脂組成物中の酸の含有量が1質量%以上である、<14>~<19>のいずれか1つに記載の多層体
<21>前記酸変性重合体(B)が無水マレイン酸重合体を含む、<14>~<20>のいずれか1つに記載の多層体。
<22>前記酸変性重合体(B)がスチレン-無水マレイン酸重合体を含む、<14>~<21>のいずれか1つに記載の多層体。
<23>前記成形品の他部材と貼り合わせる領域の算術平均高さ(Sa)が1.0以上である、<14>~<22>のいずれか1つに記載の多層体。
<24>前記樹脂組成物が、さらに、前記酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含む、<14>~<23>のいずれか1つに記載の多層体。
<25>前記非晶性熱可塑性樹脂(C)がスチレン系樹脂を含む、<24>に記載の多層体。
<26>前記樹脂組成物が、さらに、衝撃改質剤を含む、<14>~<25>のいずれか1つに記載の多層体。
<27>前記衝撃改質剤がコアシェルエラストマーを含む、<26>に記載の多層体。
<28>前記樹脂組成物が、さらに、強化充填材を含む、<14>~<27>のいずれか1つに記載の多層体。
<29>前記強化充填材がガラスを含む、<28>に記載の多層体。
<30>前記樹脂組成物が、さらに、難燃剤を含む、<14>~<32>のいずれか1つ記載の多層体。
<31>前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、前記樹脂組成物中の酸の含有量が1質量%以上であり、前記酸変性重合体(B)がスチレン-無水マレイン酸重合体を含み、前記樹脂組成物が、さらに、前記酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含み、前記非晶性熱可塑性樹脂(C)がスチレン系樹脂を含み、前記樹脂組成物が、さらに、ガラス繊維を含む、<14>~<30>のいずれか1つに記載の多層体。
<32>前記樹脂組成物が、さらにコアシェルエストマーを含む、<31>に記載の多層体。
<33><14>~<32>のいずれか1つに記載の多層体を含む成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、結晶性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から成形された成形品であって、他部材との接着性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成された成形品を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における接着強度を測定する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、特に述べない限り、東ソー社製HLC―8320GPC EcoSECを使用し、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてShodex KF-G,KF-805Lを3本,KF-800Dを使用し、カラム温度40℃で流量1.2mL/minでGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定し、検出器(UV―8320)、検出波長254nmにて検出したポリスチレン換算値である。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂(A)と酸変性重合体(B)とを含む樹脂組成物であって、前記酸変性重合体(B)の樹脂組成物中の含有量よりも、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の樹脂組成物中の含有量が多く、前記樹脂組成物中の酸の含有量が0.5質量%以上であることを特徴とする。
酸の量が所定の量以上となるように調整することにより、他部材との接着性に優れた樹脂組成物が得られると推測される。
さらに、本実施形態においては、結晶性熱可塑性樹脂に、非晶性熱可塑性樹脂を配合することにより、および/または、酸変性重合体として非晶性熱可塑性樹脂を用いることにより、樹脂組成物の成形収縮率を小さくし、得られる成形品の反りを抑制できる。
特に本実施形態の樹脂組成物は、接着用樹脂組成物として好ましく用いられる。
本実施形態の多層体は、結晶性熱可塑性樹脂(A)と酸変性重合体(B)とを含む樹脂組成物から形成された成形品と、前記成形品と、直接に、または、少なくとも接着剤を介して貼り合わされている他部材とを有し、前記酸変性重合体(B)の樹脂組成物中の含有量よりも、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の樹脂組成物中の含有量が多く、前記樹脂組成物中の酸の含有量が0.5質量%以上であることを特徴とする。
酸の量が所定の量以上となるように調整した樹脂組成物を用いることにより、前記樹脂組成物から得られる成形品と他部材との接着性に優れた多層体が得られると推測される。
ここで、前記成形品と他部材は、直接に貼り合わされていてもよいし、少なくとも接着剤を介して貼り合わされていてもよい。すなわち、前記成形品は、接着性に優れているため、接着剤なしに他部材そのものと貼り合わせることもできる。また、前記成形品と他部材を、少なくとも接着剤を介して貼り合わせる場合についても、例えば、下塗り層を設けずとも十分に貼り合わせることができる等の利点がある。すなわち、成形品と他部材を接着剤のみを介して貼り合わせてもよい。もちろん、成形品と他部材を下塗り層と接着剤を介して貼り合わせてもよい。
すなわち、本実施形態の第一の実施形態は、成形品と他部材が、一部において、直接に貼り合わされている多層体である。例えば、他部材が、エポキシ樹脂、シリコーンゴムなどの封止剤やコーティング剤(塗料、塗装剤を含む)の場合などである。より具体的には、第一の実施形態の多層体は、成形品の表面にエポキシ樹脂、シリコーンゴムなどの封止剤を設けた多層体や、成形品の表面にコーティング剤(塗料、塗装を含む)を設けた多層体などが挙げられる。また、本実施形態における多層体は、金型モールド法による成形品であってもよく、その中でも、コンプレッション成形、トランスファ成形であってもよく、更に、溶接法による成形品であってもよく、成形品表面に複数の液体を塗布して反応させ、硬化することによって出来る多層体や成形品であってもよい。
本実施形態の第二の実施形態は、多層体が、さらに、接着剤を含み、成形品と他部材とが、少なくとも接着剤を介して貼り合わされている多層体である。例えば、本実施形態における樹脂組成物から形成された成形品と、金属から形成された部材とを接着剤で貼り合わせた多層体や、本実施形態における樹脂組成物から形成された成形品と、ガラスから形成された部材とを接着剤で貼り合わせた多層体や、本実施形態における樹脂組成物から形成された成形品と、本実施形態における樹脂組成物、または、他の樹脂組成物から形成された部材とを接着剤で貼り合わせた多層体が例示される。さらには、本実施形態における樹脂組成物から形成された成形品と他部材とを下塗り層と接着剤で貼り合わせた多層体であってもよい。
【0012】
本実施形態における成形品、多層体ないし成形体は、電気電子機器、OA機器、携帯情報端末、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器、ディスプレイ等の部品等に好適に用いられる。これらの中でも、車輌部品に好ましく用いられる。なお、本実施形態における成形体とは、多層体を含むものであり、部品であっても完成品であってもよい。
本実施形態における成形品は、上述の通り、接着剤や封止剤、加飾、コーティング剤(塗料、塗装剤を含む)、その他の部材との接着性に優れている。従って、成形品と他部材と接着剤を用いて貼り合わせる多層体や、封止剤、加飾、コーティング剤等を用いて成形品の封止や加飾、コーティングを行う用途に好ましく用いられる。
なお、他部材とは、上述の通り、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、ガラス等から形成された部材を指す。
具体的には、イグニッションケース、センサーハウジング、ECUハウジング、フューエルキャップ、ウィンドレギュレーター、自動車用コネクター、リレーケース、モーターケース、各種ケース、各種チューブなどに好ましく用いられる。
【0013】
接着剤とは、2つのものを貼り合わせる物質をいい、通常は、熱可塑性ではない物質である。接着剤は、層状(接着剤層)を形成していることが好ましい。接着剤層の厚さは、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、10000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましい。
上記接着剤としては、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着等が例示される。接着剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
下塗り層は、接着剤と、成形品または他部材との接着性を更に向上させるための層であり、接着剤と成形品または他部材との間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層を形成する物質としては、特開2022-123848号公報に記載のものを参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0015】
また、上記封止剤としては、特開2021-080363号公報、特開2014-062224号公報、特開平10-305444号公報、特開2011-018859号公報、特開2001-247746号公報、特開2009-029842号公報に記載の封止剤、封止用組成物または封止方法を好適に使用することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0016】
以下に本実施形態の多層体の好ましい構成の具体例を示す。本実施形態の多層体がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
(1)樹脂組成物から形成された成形品、および、他の部材を有し、前記成形品と前記他の部材が一部において直接に貼り合わされている多層体。
(2)樹脂組成物から形成された成形品、接着剤、および、他の部材を有し、前記成形品と前記他の部材が、接着剤を介して貼り合わされている多層体
(3)樹脂組成物から形成された成形品、下塗り層、接着剤、および、他の部材を有し、前記成形品の少なくとも一部の表面に下塗り層が設けられており、前記下塗り層と他の部材が接着剤を介して貼り合わされている、多層体。
(4)樹脂組成物から形成された成形品、接着剤、下塗り層、および、他の部材を有し、前記他の部材の少なくとも一部の表面に下塗り層が設けられており、前記下塗り層と成形品が接着剤を介して貼り合わされている、多層体。
【0017】
なお、本実施形態の多層体は、必ずしも、各層が平板状、シート層状等である必要性はなく、例えば、本実施形態における樹脂組成物から形成された射出成形品と、他の部材としての射出成形品を接着剤で貼り合わせたものなども含むことは言うまでもない。
【0018】
本実施形態においては、本実施形態における樹脂組成物から形成された成形品の他部材と貼り合わせる領域の算術平均高さ(Sa)が1.0以上であることが好ましい。Saが高いことにより他部材等との接着性がより向上する傾向にある。なお、成形品の内、他部材と貼り合わされている領域について上記Saを満たせばよいが、成形品の表面全体が、上記Saを満たしていてもよい。
前記Saは、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.6以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることが一層好ましく、1.0以上であることがより一層好ましい。また、前記Saの上限値は、10.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましく、3.0以下であることが一層好ましく、2.5以下であることがより一層好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品外観がより向上する傾向にある。
前記Saを1.0以上とする手段としては、本実施形態における樹脂組成物に、酸変性重合体(B)を配合すること、強化充填材を配合することならびに、これらの2つ以上を組み合わせること等によって達成される。
【0019】
樹脂組成物から形成された成形品の他部材と貼り合わせる領域の算術平均高さ(Sa)は、ハイブリッドレーザーマイクロスコープ(LASERTEC製OPTELICS HYBRID)の対物レンズ10倍で観察し、付属の解析ソフト(Lasertec Microscope Solution Software LMeye7)で、ISO 25178に準拠して表面を計測することにより、算出することができる。詳細は、実施例の記載に従う。
また、多層体における成形品の表面の算術平均高さ(Sa)は、上述の方法と同様にして、成形品の他部材と未接合の部分の表面を計測して算術平均高さ(Sa)を算出することができる。未接合の部分(領域)がない場合には、多層体断面を、光学顕微鏡または、走査型電子顕微鏡により観察し、計測することで算術平均高さ(Sa)に対応する値を得ることができる。
【0020】
さらに、本実施形態においては、樹脂組成物に、結晶性熱可塑性樹脂と共に、非晶性熱可塑性樹脂を配合することにより、および/または、酸変性重合体として非晶性熱可塑性樹脂を用いることにより、樹脂組成物の成形収縮率を小さくし、得られる成形品の反りを抑制できる。
以下、本実施形態における樹脂組成物の詳細について述べる。
【0021】
<結晶性熱可塑性樹脂(A)>
本実施形態における樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂を含む。本実施形態における結晶性樹脂とは、DSC(示差走査熱量)測定によって、明確な融点を示す樹脂をいう。また、明確な融点を示さない樹脂を非晶性熱可塑性樹脂とする。
結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂などが例示され、ポリアミド樹脂および結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂(以下、単に、「ポリエステル樹脂」ということがある)が好ましく、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂がより好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂がさらに好ましい。
尚、酸変性重合体であって、結晶性熱可塑性樹脂に相当するものは、本発明では、酸変性重合体(B)に該当するものとする。
【0022】
ポリアミド樹脂の詳細は、特開2020-100832号公報の段落0012~0022の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
ポリアセタール樹脂の詳細は、特開2021-098767号公報の段落0009~0014の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0023】
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであってもよい。
【0024】
ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1、5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン-4,4’-ジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、アントラセン-2,5-ジカルボン酸、アントラセン-2,6-ジカルボン酸、p-tert-フェニレン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
【0025】
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用してもよい。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等のエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
【0026】
ポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等の脂環式ジオール等、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、少量であれば、分子量400~6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
【0027】
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
ポリエステル樹脂としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、すなわち、ポリエステル樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
【0028】
なかでも好ましいのは、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂であり、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分および1,4-ブタンジオールまたはエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
また、イソフタル酸、ダイマー酸、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコール等が共重合されているものも好ましい。なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリアルキレンテレフタレートの全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものが例示される。
【0029】
ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基濃度は、1~23eq/tonであることが好ましく、7~20eq/tonであることがより好ましい。このような範囲とすることにより、流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物が2種以上のポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基濃度は、混合物のものとする。末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリエステル樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を用いて滴定することにより、求めることができる。
【0030】
本実施形態における樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)を、樹脂成分の30質量%以上含むことが好ましく、また、75質量%以上含むことが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
<酸変性重合体(B)>
本実施形態における樹脂組成物は、酸変性重合体を含む。酸変性重合体を含むことにより、他部材との接着性を高めることができる。
酸変性重合体(B)は結晶性樹脂であっても、非晶性樹脂であってもよいが、通常は非晶性樹脂である。非晶性樹脂を用いることにより、低反り性を効果的に達成することができる。また、酸変性重合体は、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0032】
酸変性重合体は、酸基含有単量体単位のみからなっていてもよいが、酸基含有単量体単位に加えて、他の単量体単位を含んでいることが好ましく、酸基含有単量体単位(好ましくは無水マレイン酸基含有単量体単位)に加え、芳香族ビニル基含有単量体単位およびオレフィン基含有単量体単位の少なくとも1種を含むことが好ましく、酸変性基含有単量体単位に加え、スチレン基含有単量体単位およびオレフィン基含有単量体単位の少なくとも1種を含むことがより好ましく、酸変性基含有単量体単位に加え、スチレン基含有単量体単位を含むことがさらに好ましい。酸変性単量体単位に加え、スチレン単量体単位を含むことにより、接着性に加え、低そり性について、顕著に向上する傾向にある。
【0033】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム等のスチレンスルホン酸塩;スチレンスルホン酸エチル等のスチレンスルホン酸エステル;t-ブトキシスチレン等のスチレンアルキルエーテル;アセトキシスチレン、ビニル安息香酸等のスチレン誘導体;α-メチルスチレンおよびα-メチルスチレン誘導体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンが例示される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族ビニル単量体単位および/またはオレフィン単量体の含有量は、酸変性重合体中、2質量%以上であることが好ましく、また、98質量%以下であることが好ましい。
【0034】
酸変性重合体は、上記に加え、さらに他の単量体単位を含んでいてもよい。その他の単量体としては、アクリル系単量体やマレイミド系単量体が好ましい。アクリル系単量体としては、メタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどが例示される。マレイミド系単量体としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体などが挙げられる。また、アクリロニトリルも例示される。
酸変性重合体の酸変性は、酸および/または酸無水物によって行われることが好ましく、酸無水物によって行われることがより好ましい。酸変性重合体は、具体的には、有機酸およびその酸無水物類によって行われることが好ましく、カルボン酸類および無水カルボン酸類によって行われることがより好ましく、マレイン酸および無水マレイン酸によって行われることがさらに好ましく、無水マレイン酸によって行われることが一層好ましい。
【0035】
酸変性重合体における酸変性の割合(酸の割合)は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが好ましく、また、50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
樹脂組成物中の酸変性重合体における酸の含有量は、樹脂組成物を可溶な溶媒に溶かして得られた溶液から溶媒を蒸発させ、残った物質(残存物)をNMR測定用の重溶媒に溶かし、NMR測定により酸含有量を算出することが出来る。NMR測定にて酸基が確認出来ない場合には、残存物を可溶な溶媒に溶かし、指示薬を加えて塩基性溶媒にて滴定して算出することも出来る。
前記可溶な溶媒及びNMR測定に使用する溶媒は、組成物中の樹脂成分が可溶な溶媒であることが好ましく、ジクロロメタン、メタノール、クロロホルム等が挙げられるが、その限りではない。
【0036】
本実施形態で用いられる無水マレイン酸変性重合体の具体例としては、スチレン-無水マレイン酸重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド-無水マレイン酸重合体、および、αオレフィン-無水マレイン酸重合体の少なくとも1種であることがさらに好ましく、スチレン-無水マレイン酸重合体であることが一層好ましい。
本実施形態で用いる酸変性重合体は、酸基単量体単位と芳香族ビニル基含有単量体単位と、必要に応じ配合されるその他の単量体単位の合計が末端基を除く全構成単位の合計の100質量%を占めるように構成されることが好ましい。
【0037】
酸変性重合体は、酸変性衝撃改質剤でもよい。
本実施形態で用いることができる酸変性衝撃改質剤は、酸変性されたオレフィン系エラストマーおよび酸変性されたスチレン系エラストマーからなる少なくとも1種の酸変性エラストマーである。
【0038】
オレフィン系エラストマーとしては、軟質相にポリオレフィン部があればよく、EPR、EPDM等のエチレンプロピレンゴム等が好ましく使用できる。
【0039】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン成分とエラストマー成分からなり、スチレン成分を通常5~80質量%、好ましくは10~50質量%、特に15~30質量%の割合で含有するものが好ましい。この際のエラストマー成分としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等の共役ジエン系炭化水素が挙げられ、スチレン系エラストマーとしてはより具体的にはスチレンとブタジエンとの共重合体(SBS)エラストマー、スチレンとイソプレンとの共重合体(SIS)エラストマー等が挙げられる。
【0040】
本実施形態における酸変性衝撃改質剤の酸変性は、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水コハク酸等の環状酸無水物などで共重合体側鎖に環状無水物やカルボン酸基を導入することを指す。
酸変性を導入する方法は、通常行われる方法、例えばグラフト共重合、ランダム共重合などで導入することができる。
このような酸変性の衝撃改質剤としては、例えば、旭化成社製の「タフテックM1913」、アルケマ社製の「ロタダー4613」、三井化学社製「タフマーMP0610」などが挙げられる。
【0041】
酸変性重合体の重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、80,000以上であることがより好ましく、90,000以上であることがさらに好ましく、100,000以上であることが一層好ましく、150,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリエステル樹脂との相溶性が向上し、表面外観が改善する傾向にある。また、前記酸変性重合体の重量平均分子量は、500,000以下であることが好ましく、400,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることが一層好ましく、200,000以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品表面への酸変性重合体、ひいては、酸(酸基)の存在確率が高くなり、樹脂組成物の接着性がより向上する傾向にある。
上記重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本実施形態における樹脂組成物が、酸変性重合体を2種以上含む場合、混合物の重量平均分子量とする。
【0042】
本実施形態における酸変性重合体の酸価は、0mgKOH/g超であり、0.5mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがより好ましく、5mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、10mgKOH/g以上であることが一層好ましく、用途に応じては、15mgKOH/g以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、ポリエステル樹脂の分解をより効果的に抑制することができる。また、前記酸変性重合体の酸価の上限は、100mgKOH/g以下であることが好ましく、90mgKOH/g以下であることがより好ましく、80mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、用途に応じては、70mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下、35mgKOH/g以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形品の械的物性の低下を効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物が酸変性ポリマーを2種以上含む場合、前記酸価は、混合物の酸価とする。
【0043】
本実施形態における樹脂組成物における酸変性重合体の含有量は、結晶性熱可塑性樹脂よりも少ない、すなわち、酸変性重合体の樹脂組成物中の含有量よりも、結晶性熱可塑性樹脂の樹脂組成物中の含有量が多い。より具体的には、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、6質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよく、16質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形品表面へのマレイン酸の存在確率が高くなり、得られる成形品の他部材への接着性がより向上する傾向にある。また、前記酸変性重合体の含有量の上限値は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、45質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の耐熱性がより向上する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物は、酸変性重合体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0044】
本実施形態においては、樹脂組成物中の酸の含有量が0.5質量%以上である。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の他部材への優れた接着性を達成することができる。前記樹脂組成物中の酸の含有量は、0.55質量%以上であることが好ましく、0.60質量%以上であることがより好ましく、0.70質量%以上であることがより一層好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましく、1.4質量%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂組成物中の酸の含有量の上限は、10.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以下であることがさらに好ましく、4.0質量%以下であることが一層好ましく、3.0質量%以下であることがより一層好ましく、2.5質量%以下であることが更に好ましく、2.0質量%以下であることが、更に好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の基礎物性、表面外観がより向上する傾向にある。
特に、酸の含有量が1.4質量%以上2.5質量%以下であり、かつ、算術平均高さ(Sa)が1.0以上2.5以下である場合、他部材との優れた接着性、樹脂組成物の基礎物性、表面外観のバランスが良くなることから好ましい。
樹脂組成物中の酸の含有量は、酸変性重合体中の酸の含有量が測定等で判っている場合は、樹脂組成物100質量部中の酸変性重合体含有量に酸変性重合体中の酸含有率を掛けることで算出することができる。
また、酸変性重合体中の酸の含有量が不明な場合は、前述の通り、樹脂組成物を可溶な溶媒に溶かして得られた溶液から溶媒を蒸発させ、残った物質(残存物)をNMR測定用の重溶媒に溶かし、NMR測定により酸含有量を算出する。NMR測定にて酸基が確認出来ない場合には、残存物を可溶な溶媒に溶かし、指示薬を加えて塩基性溶媒にて滴定して算出することも出来る。
【0045】
<酸変性重合体以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)>
本実施形態における樹脂組成物は、酸変性重合体(B)以外の非晶性熱可塑性樹脂(C)を含むことが好ましい。非晶性熱可塑性樹脂を含むことにより、得られる成形品の反りを効果的に抑制できる。これは、非晶性熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂に比べて、成形時に収縮しにくいためと推測される。さらに、本実施形態においては、非晶性熱可塑性樹脂を含むことにより、薬品等によって、成形品の表面に容易に適度な粗さを形成することができ、得られる成形品の接着性をより高めることができる。
非晶性熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリルエチレンゴムスチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリロニトリルスチレンアクリルゴム樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、(メタ)アクリレート共重合体、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ-4-メチルペンテン-1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂が例示され、スチレン系樹脂およびポリカーボネート樹脂が好ましく、スチレン系樹脂がより好ましい。スチレン系樹脂を用いることにより、樹脂組成物の成形安定性、熱安定性向上などの効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0046】
スチレン系樹脂の中でも、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)およびAS樹脂(アクリロニトリルスチレン樹脂)が好ましく、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)およびAS樹脂(アクリロニトリルスチレン樹脂)がより好ましい。
【0047】
本実施形態における樹脂組成物における非晶性熱可塑性樹脂(好ましくはスチレン系樹脂)の含有量は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよく、25質量部以上であってよい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の反りを効果的に抑制できる傾向にある。また、前記非晶性熱可塑性樹脂(好ましくはスチレン系樹脂)の含有量の上限値は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることが好ましく、55質量部以下であることがより好ましく、45質量部以下であってもよい。
実施形態の樹脂組成物は、非晶性熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0048】
本実施形態における樹脂組成物は、また、酸変性重合体と非晶性熱可塑性樹脂の合計量が、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、35質量部以上であることが好ましく、また、90質量部以下であることが好ましく、55質量部以下であってもよく、45質量部以下であってもよい。
【0049】
<エポキシ基含有化合物(D)>
本実施形態における樹脂組成物は、エポキシ基含有化合物を含むことが好ましい。エポキシ基含有化合物は、結晶性熱可塑性樹脂、特に、ポブチレンテレフタレート樹脂が加水分解を受け、分子量低下を起こすと同時に機械的強度等が低下することを効果的に抑制することができる。
【0050】
本実施形態においては、エポキシ基含有化合物として、重量平均分子量(Mw)が200~10000のものを使用することが好ましい。Mwは、好ましくは9000以下であり、さらに好ましくは6000以下、中でも4000以下、とりわけ2000以下、特には1000以下が好ましい。
【0051】
エポキシ基含有化合物としては、1分子中に1個以上のエポキシ基を有するものであればよく、通常はアルコール、フェノール類またはカルボン酸等とエピクロロヒドリンとの反応物であるグリシジル化合物や、オレフィン性二重結合をエポキシ化した化合物を用いればよい。
エポキシ基含有化合物としては、例えば、ノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、エポキシ化ブタジエン重合体、レゾルシン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0052】
ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等を例示できる。ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ化合物としては、ビスフェノールF-ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールF-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0053】
脂環式エポキシ化合物の例としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシル-3,4-シクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0054】
グリシジルエーテル類の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0055】
グリシジルエステル類としては、安息香酸グリシジルエステル、ソルビン酸グリシジルエステル等のモノグリシジルエステル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル類等が挙げられる。
【0056】
エポキシ化ブタジエン重合体としては、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン系共重合体、エポキシ化水素化スチレン-ブタジエン系共重合体等を例示できる。
レゾルシン型エポキシ化合物としてはレゾルシンジグリシジルエーテル等が例示できる。
【0057】
エポキシ基含有化合物は、グリシジル基含有化合物を一方の成分とする共重合体であってもよい。例えばα,β-不飽和酸のグリシジルエステルと、α-オレフィン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルからなる群より選ばれる一種または二種以上のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0058】
エポキシ基含有化合物のエポキシ当量は150~1000g/eqであることが好ましい。エポキシ当量を150g/eq以上とすることにより、樹脂組成物の粘度を適度に低くでき、また、エポキシ当量を1000g/eq以下とすることにより、エポキシ基の量が少なくなるため、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性がより向上する傾向にある。エポキシ当量は、より好ましくは160~800g/eqであり、さらに好ましくは170~700g/eqであり、一層好ましくは180~650g/eqである。
【0059】
エポキシ基含有化合物としては、ビスフェノールAやノボラックとエピクロロヒドリンとの反応から得られる、ビスフェノールA型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物が、耐加水分解性、耐アルカリ性が向上しやく、成形品の表面外観の点から特に好ましい。
【0060】
本実施形態における樹脂組成物がエポキシ基含有化合物を含む場合、その含有量は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.15質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましく、0.25質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐加水分解性がより向上する傾向にある。また、前記エポキシ基含有化合物の含有量の上限値は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
実施形態の樹脂組成物は、エポキシ基含有化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0061】
<離型剤(E)>
本実施形態における樹脂組成物は、離型剤を含むことが好ましい。
離型剤は、公知の離型剤を広く用いることができ、低分子量のポリオレフィンや脂肪族カルボン酸のエステル化物が好ましい。低分子量のポリオレフィンとしては、重量平均分子量が、例えば、10,000以下のもの、好ましくは5000以下のもの、さらに好ましくは1000以下のものが挙げられる。脂肪族カルボン酸のエステル化物は、多価アルコールと、炭素数10~19の脂肪族カルボン酸のエステル化物であることが好ましい。
離型剤としては、具体的には、特開2018-070722号公報の段落0063~0077の記載、特開2019-123809号公報の段落0090~0098の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0062】
本実施形態における樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、0.01質量部以上含むことが好ましく、0.08質量部以上含むことがより好ましく、0.2質量部以上含むことがさらに好ましい。また、前記離型剤の含有量の上限値は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以下であることがさらにより好ましく、0.8質量部以下であることが一層好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、離型剤を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0063】
<衝撃改質剤(F)>
本実施形態における樹脂組成物は、衝撃改質剤を含有することも好ましい。衝撃改質剤を含有することで、樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。
【0064】
本実施形態で用いることができる衝撃改質剤は、ゴム成分にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
なお、酸変性衝撃改質剤の場合、本明細書では、酸変性重合体(B)とみなす。
【0065】
ゴム成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも-20℃以下が好ましく、さらには-30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン-アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴムやエチレン-ブテンゴム、エチレン-オクテンゴムなどのエチレン-α-オレフィン系ゴム、エチレン-アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、スチレン-ブタジエンゴムが好ましい。
【0066】
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点から、コアシェルエラストマーであることが好ましい。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コアシェルエラストマーが特に好ましい。上記コアシェルエラストマーにおいて、ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10質量%以上含有するものが好ましい。尚、本実施形態におけるコアシェルエラストマーは必ずしもコア層とシェル層が明確に区別できるものでなくてもよく、コアとなる部分の周囲にゴム成分をグラフト重合して得られる化合物を広く含む趣旨である。
【0067】
コアシェルエラストマーの好ましい具体例としては、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート-アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート-アクリルゴム-スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート-アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート-アクリル・ブタジエンゴム-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。
【0068】
このような衝撃改質剤としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン社製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C-223A」、「メタブレンE-901」、「メタブレンS-2001」、「メタブレンSRK-200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M-511」、「カネエースM-600」、「カネエースM-400」、「カネエースM-580」、「カネエースM-711」、「カネエースMR-01」、宇部興産製の「UBESTA XPA」等が挙げられる。
【0069】
本実施形態における樹脂組成物が衝撃改質剤を含む場合、その含有量は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが一層好ましく、12質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、前記衝撃改質剤の含有量の上限値は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましく、28質量部以下であることがより好ましく、26質量部以下であることがさらに好ましく、24質量部以下であることが一層好ましく、22質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
実施形態の樹脂組成物は、衝撃改質剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
しい。
【0070】
<安定剤(G)>
本実施形態における樹脂組成物は、安定剤を含んでいてもよい。
安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、硫黄系安定剤等が例示される。これらの中でも、リン系化合物が好ましい。
安定剤としては、具体的には、特開2021-063196号公報の段落0067~0075の記載、特開2018-070722号公報の段落0046~0057の記載、特開2019-056035号公報の段落0030~0037の記載、国際公開第2017/038949号の段落0066~0078の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0071】
本実施形態における樹脂組成物が安定剤を含む場合、その含有量は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、0.01質量部以上含むことが好ましく、0.05質量部以上含むことがより好ましく、0.08質量部以上含むことがさらに好ましい。また、前記安定剤の含有量の上限値は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましく、0.3質量部以下であることが一層好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0072】
<着色剤(H)>
本実施形態における樹脂組成物は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、染料であっても、顔料であってもよいが、顔料が好ましい。
着色剤としては、有機着色剤および無機着色剤のいずれでもよい。また、有彩色着色剤および無彩色着色剤のいずれであってもよい。
着色剤としては、特開2021-101020号公報の段落0121~0123の記載、特開2019-188393号公報の段落0088~0090の記載が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態における樹脂組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒径には特に制限はないが、5~60nm程度であることが好ましい。
【0073】
カーボンブラックは、熱可塑性樹脂、好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂と予め混合したマスターバッチとして配合されることが好ましい。
【0074】
本実施形態における樹脂組成物が着色剤(好ましくはカーボンブラック)を含む場合、その含有量は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、着色効果がより効果的に発揮される。また、前記着色剤の含有量の上限値は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対し、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物は、着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0075】
<強化充填材(I)>
本実施形態における樹脂組成物は、強化充填材を含んでいることが好ましい。強化充填材を含むことにより、得られる成形品の機械的強度を高くすることができる。
本実施形態で用いることができる強化充填材は、その種類等、特に定めるものではなく、繊維、フィラー、ビーズ等のいずれであってもよいが、繊維が好ましい。
【0076】
強化充填材が繊維である場合、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
強化充填材の原料は、ガラス、炭素(炭素繊維等)、アルミナ、ボロン、セラミック、金属(スチール等)等の無機物、および、植物(ケナフ(Kenaf)、竹等を含む)、アラミド、ポリオキシメチレン、芳香族ポリアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、超高分子量ポリエチレン等の有機物などが挙げられ、ガラスが好ましい。
【0077】
本実施形態における樹脂組成物は、強化充填材として、ガラス繊維を含むことが好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、Sガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料をいう。ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が通常1~25μm、好ましくは5~17μmである。数平均繊維径を1μm以上とすることにより、樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。数平均繊維径を25μm以下とすることにより、得られる構造体の外観が向上し、補強効果も向上する傾向にある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(すなわち、数平均繊維長1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(すなわち、数平均繊維長10~500μmのガラス繊維)などのいずれであってもよいが、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。
【0078】
ガラス繊維は、本実施形態における樹脂組成物の特性を大きく損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
【0079】
本実施形態における樹脂組成物は、強化充填材(好ましくはガラス繊維)を、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対して、10質量部以上含むことが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、35質量部以上であることがさらに好ましく、45質量部以上であることが一層好ましく、55質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる構造体の機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記強化充填材(好ましくはガラス繊維)の含有量は、結晶性熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)100質量部に対して、300質量部以下であることが好ましく、270質量部以下であることがより好ましく、250質量部以下であることがさらに好ましく、200質量部以下であることがさらに好ましく、170質量部以下であることがさらに好ましく、150質量部以下であることがさらに好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましく、90質量部であることがさらに好ましく、80質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の外観がより向上する傾向にある。
【0080】
本実施形態における樹脂組成物における強化充填材(好ましくはガラス繊維)の含有量は、樹脂組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、25質量%以上であることが一層好ましい。また、前記強化充填材(好ましくはガラス繊維)の含有量は、樹脂組成物中、60質量%以下であることがより好ましく、55質量%以下であることがさらに好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以下であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の外観がより向上する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物は、強化充填材(好ましくはガラス繊維)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0081】
<難燃剤(J)>
本実施形態における樹脂組成物は、難燃剤を含んでいてもよい。難燃剤を含むことにより、樹脂組成物から形成された成形品の他部材との接着性が向上する。難燃剤を配合することにより、成形品の表面に難燃剤領域が形成され、算術平均高さ(Sa)が高くなり、接着性が向上すると推測される。
難燃剤としては、臭素系難燃剤、リン系難燃剤等が挙げられ、臭素系難燃剤が好ましく、中でも臭素化エポキシ化合物が好ましい。
臭素系難燃剤としては、臭素化ポリカーボネート樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化アクリレート樹脂、臭素化エポキシ化合物、臭素化イミド(臭素化フタルイミド等)が挙げられる。
臭素化ポリカーボネート樹脂としては、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4-t-ブチルフェニル基や2,4,6-トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6-トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
臭素化アクリレート樹脂としては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート、の単独又はそれらの混合物の重合体等が挙げられ、中でも臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、又は2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、該臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1~5個、中でも4~5個付加したものであることが好ましい。
臭素化エポキシ化合物としては、具体的には例えば、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型臭素化エポキシ化合物が挙げられる。
臭素化エポキシ化合物の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、重量平均分子量(Mw)で、例えば、10000以上であり、中でも15000以上、さらに18000以上、よりさらには20000以上、特には22000以上であることが好ましく、また、例えば、100000であり、中でも80000以下、さらに78000以下、よりさらには75000以下、特には70000以下であることが好ましい。
臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が1000g/eq以上であることが好ましく、中でも2000g/eq以上がより好ましく、特に3000g/eq以上であることがさらに好ましく、また40000g/eq以下であることが好ましく、中でも35000g/eq以下であることが好ましく、特に30000g/eq以下であることが好ましい。
リン系難燃剤としては、例えば、エチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛等の、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミンに代表されるメラミンとリン酸との反応生成物、リン酸エステル、環状フェノキシホスファゼン、鎖状フェノキシホスファゼン、架橋フェノキシホスファゼン等のホスファゼン等が挙げられ、中でも、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン、ホスファゼンが熱安定性に優れる点から好ましい。
難燃剤としては、上記の他、特開2016-216534号公報の段落0068~0075の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0082】
本実施形態における樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましく、25質量部以上であることがより一層好ましく、30質量部以上であることがさらに一層好ましく、35質量部以上であることがよりさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の他部材に対する密着性がより向上する傾向にある。上限値としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましく、60質量部以下であることが一層好ましく、50質量部以下であることがより一層好ましい。
本実施形態における樹脂組成物が難燃剤を含む場合、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0083】
<滴下防止剤(K)>
本実施形態における樹脂組成物は、滴下防止剤(K)を含有することが好ましい。滴下防止剤(K)としては、フルオロポリマーが好ましい。
フルオロポリマーとしては、フッ素を有する公知のポリマーを任意に選択して使用できるが、中でもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。
フルオロオレフィン樹脂としては、例えば、フルオロエチレン構造を含む重合体や共重合体が挙げられる。その具体例を挙げると、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられる。中でもテトラフルオロエチレン樹脂等が好ましい。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が好ましい。
フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフ ロロケミカル社製、テフロン(登録商標)6J、ダイキン工業社製、ポリフロン(登録商 標)F201L、ポリフロンF103等が挙げられる。
【0084】
また、フルオロエチレン樹脂の水性分散液として、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製のテフロン(登録商標)30J、ダイキン工業社製フルオンD-1、M12、住友スリー エム社製TF1750等も挙げられる。さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造 を有するフルオロエチレン重合体も、フルオロポリマーとして使用することができる。そ の具体例を挙げると、三菱レイヨン社製メタブレン(登録商標)A-3800等が挙げられる。
【0085】
本実施形態における樹脂組成物が滴下防止剤(K)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましく、1.5質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の他部材に対する密着性がより向上する傾向にある。上限値としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましく、2.5質量部以下であることが一層好ましく、2質量部以下であることがより一層好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、滴下防止剤(K)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0086】
<三酸化アンチモン(L)>
本実施形態における樹脂組成物は、三酸化アンチモン(L)を含有してもよい。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb23)、五酸化アンチモン(Sb25)およびアンチモン酸ナトリウム等が挙げられるが、本実施形態においては、三酸化アンチモンを含有するのが難燃性改良、接着性向上の点で好ましい。
【0087】
三酸化アンチモン(L)は、樹脂組成物中の臭素系難燃剤(J)由来の臭素原子と、三酸化アンチモン(L)中のアンチモン原子の質量割合が、両者の合計で3質量%以上となるように配合することが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、また、25質量%以下となるように配合することが好ましく、22質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、十分な難燃性が発揮される傾向にあり、上記上限値以下とすることにより、得られる多層体の機械的強度が向上する傾向にある。また、臭素原子とアンチモン原子の質量比(Br/Sb)は、0.3以上であることが好ましく、また、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、難燃性が発現しやすい傾向にあり好ましい。
【0088】
本実施形態においては、三酸化アンチモン(L)は、予めマスターバッチ化したものを用いることが好ましく、好ましくは結晶性熱可塑性樹脂(A)とのマスターバッチとして配合することが好ましい。これにより、溶融混練、成形加工時の熱安定性が良好となり、耐衝撃性の低下が抑えられ、さらに、難燃性、耐衝撃性のばらつきが少なくなる傾向となる。
【0089】
マスターバッチ中の三酸化アンチモン(L)の含有量は20質量%以上、また、90質量%以下であることが好ましい。三酸化アンチモン(L)が20質量%以上とすることにより、難燃剤マスターバッチ中のアンチモン化合物の割合が十分となり、難燃性向上効果が効果的に発揮される。一方、三酸化アンチモン(L)を90質量%以下とすることにより、三酸化アンチモン(L)の分散性が向上し、樹脂組成物の難燃性が不安になり、またマスターバッチ製造時の作業性が向上しやすくなり、例えば、押出機を使用して製造する際に、ストランドが安定し、切れにくくすることができる。
マスターバッチ中の三酸化アンチモン(L)の含有量は、好ましくは30質量%以上、また、85質量%以下である。
【0090】
本実施形態における樹脂組成物が三酸化アンチモン(L)を含む場合、その含有量は、結晶性熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の他部材に対する密着性がより向上する傾向にある。上限値としては、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが一層好ましく、18質量部以下であることがより一層好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、三酸化アンチモン(L)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0091】
<その他の成分>
本実施形態における樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤が挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃助剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0092】
本実施形態における樹脂組成物は、(A)結晶性熱可塑性樹脂、(B)酸変性重合体および(C)他の非晶性熱可塑性樹脂の合計が樹脂組成物の40質量%以上を占めることが好ましく、50質量%以上を占めることが好ましく、55質量%以上を占めることがより好ましい。上限値としては、90質量%以下を占めることが好ましく、85質量%以下であってもよい。
本実施形態における樹脂組成物は、(A)結晶性熱可塑性樹脂、(B)酸変性重合体、(C)他の非晶性熱可塑性樹脂、(D)エポキシ基含有化合物、(E)離型剤、(F)衝撃改質剤、(G)安定剤、(H)着色剤、(I)強化充填材、(J)難燃剤、(K)滴下防止剤、および(L)三酸化アンチモンの合計が樹脂組成物の95質量%以上を占めることが好ましく、98質量%以上を占めることがより好ましい。上限値としては、100質量%であってもよい。
本実施形態における樹脂組成物は、(A)結晶性熱可塑性樹脂、(B)酸変性重合体および(C)他の非晶性熱可塑性樹脂、ならびに、必要に応じ配合される他の成分の合計が100質量%となるように調整される。
【0093】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態における樹脂組成物は、直径100mm、厚み1.6mmの円板に成形したときの円板反りが、5mm未満であることが好ましく、3mm未満であることがより好ましい。前記反りの下限値は0mmが理想であるが、0.01mm以上が実際的である。このような低そりは、非晶性熱可塑性樹脂を配合することにより達成される。
前記反りは、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0094】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態における樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、結晶性熱可塑性樹脂(A)、および、酸変性重合体(B)、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常220~320℃の範囲である。
【0095】
<成形品>
上記した樹脂組成物(例えば、ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。すなわち、本実施形態の成形品は、上述の通り、本実施形態における樹脂組成物から成形される。成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。中でも、フィルム状、枠状、パネル状、ボタン状のものが好ましく、厚さは例えば、枠状、パネル状の場合1mm~5mm程度である。
【0096】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態における樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。なお、射出成形等、金型成形する際の金型温度は、40~130℃であることが好ましい。金型の温度が低いと算術平均高さが高くなり、接着強度は向上する傾向にあるが外観が悪化する。金型温度が高いと、算術平均高さは低くなり外観は向上するものの、接着強度は低下する傾向にある。金型の温度は60~100℃程度が好ましく、この範囲であれば接着強度と外観を効果的に向上させることができる。しかしながら、本実施形態における樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例0097】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0098】
1.原料
下記表1および表2に示す原料を用いた。
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
2.実施例1~19、比較例1~3
<コンパウンド>
上記表1または表2に示した各成分のうち、強化充填材を除いた各成分を表3-1~表6-2に示す割合(全て質量部)にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」、L/D=42)を使用し、強化充填材はサイドフィーダーより供給し、シリンダー設定温度260℃、吐出量40kg/h、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0101】
<酸の含有量の測定方法>
樹脂組成物中の酸の含有量は、原料(例えば、無水マレイン酸重合体)中の酸(例えば、無水マレイン酸)の含有量から算出した。具体的には、全ての添加物を含んだ樹脂組成物100質量部中、酸変性重合体含有量に重合体中の酸含有率を掛けることで算出した。
【0102】
<引張強さ>
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼社製射出成形機(型締め力85T)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO527に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、引張強さ(単位:MPa)を測定した。
【0103】
<曲げ特性>
ISO178に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で、曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0104】
<シャルピー衝撃強さ>
ISO179に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)にノッチ加工を施したノッチ付き試験片について、23℃の温度でノッチ付シャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。
【0105】
<円板反り>
上記樹脂組成物を用い、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80-9E」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で、直径100mm、厚み1.6mmの円板をサイドゲート金型により成形し、成形後23℃50%RH環境下で1晩放置後、円板の反り量(単位:mm)を求めた。
以下の基準により、低反り性の評価判定を行った。
A:反り量が3mm未満
B:反り量が3mm以上5mm未満
C:反り量が5mm以上
【0106】
<算術平均高さ(Sa)>
実施例1~6、9~19および比較例1~3はISO179に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を作製した。実施例7は成形時の金型温度を40℃に、実施例8は成形時の金型温度を120℃に変更した以外はISO179に準拠し、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を作製した。上記ISO多目的試験片(4mm厚)の表面を、ハイブリッドレーザーマイクロスコープ(LASERTEC製OPTELICS HYBRID)の対物レンズ10倍で観察し、付属の解析ソフト(Lasertec Microscope Solution Software LMeye7)で、ISO 25178に準拠して算術平均高さ(Sa)を計測した。
計測は、ISO多目的試験片のチャック部分の中心部における平均的な凹凸表面を計測アルゴリズムFine Peakを使用し、FZ像を得た。計測範囲は接着剤との接合範囲の中心部とした。カットオフ値λcは0.8000mmである。
任意の異なる場所で同じ操作を30回繰り返し、その平均値を求めた。
【0107】
<エポキシ系接着剤との接着強度および界面状態>
実施例1~6,9~19,比較例1~3はISO179に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を2枚作製した。実施例7は成形時の金型温度を40℃に、実施例8は成形時の金型温度を120℃に変更した以外はISO179に準拠し、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を2枚作製した。図1に示すように、その一方のISO多目的試験片1のチャック部分に、フッ素系樹脂テープ2(Nitto社製、NITOFLON粘着テープ、0.18×10×10mm)を貼った。次に、接着剤3の塗布範囲が20mm×20mm×0.18mm厚となるように、接着剤3を塗布し、もう一方のISO多目的試験片4(4mm厚)と接着した後、バインダークリップで固定し、その接着剤に規定の硬化条件にて処理を行い、接着させた。
ISO多目的試験片1・4は、テンシロン1tにて、図1に示す矢印の方向に5mm/minにて引張り、引張試験を行った。なお、引張試験の際は、試験片が垂直になるよう、スペーサーを使用した。
接着強度の単位は、Nで示した。
また、接着後の界面状態を確認し、以下の通り記載した。
試験後に材料の破壊が起きている場合:母材破壊
試験後に接着剤の破壊が起きている場合:凝集破壊
試験後に接着剤と樹脂界面での剥離が起きている場合:界面剥離
尚、エポキシ系接着剤は、一液型・加熱硬化接着剤を用いた。
【0108】
<変性シリコーン系接着剤との接着強度および界面状態>
上記エポキシ系接着剤との接着強度において、接着剤を変性シリコーン系接着剤(変性シリコーンポリマーを主成分とする一液・常温硬化型接着剤)に変更し、他は同様に行った。
接着強度の単位は、Nで示した。
また、接着後の界面状態を確認した。
【0109】
<ウレタン接着剤との接着強度および界面状態>
上記エポキシ系接着剤との接着強度において、接着剤をウレタン系接着剤に変更し、他は同様に行った。
接着強度の単位は、Nで示した。
また、接着後の界面状態を確認した。
【0110】
<アクリル系接着剤との接着強度および界面状態>
幅12mm×45mm、厚み1.5mmのアルミダイキャスト片を用意した。
上記樹脂組成物を用い、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80-9E」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で、幅100mm×100mm、厚み2mの平板をフィルムゲート金型により作製し、加工機にて50mm×10mmに切削した。
加工した平板の端部に、フッ素系樹脂テープ(Nitto社製、NITOFLON粘着テープ、0.18×10×10mm)を貼った。次に、アクリル系接着剤の塗布範囲が10mm×10mm×0.18mm厚となるように、アクリル系接着剤を塗布し、アルミダイキャスト(厚み1.5mm)と接着した後、バインダークリップで固定し、その接着剤に規定の硬化条件にて処理を行い、接着させた。
接着後試験片は、テンシロン1tにて、5mm/minにて引張り、引張試験を行った。なお、引張試験の際は、試験片が垂直になるよう、スペーサーを使用した。
接着強度の単位は、Nで示した。
また、接着後の界面状態を確認した。
【0111】
<接着性総合評価>
上記接着強度および界面状態に基づき、以下の通り評価した。
エポキシ系接着剤の接着について、母材破壊のものをaとした。
変性シリコーン系接着剤との接着強度(N):650N以上のものをaとし、350N以上650N未満のものをbとした。
総合評価:aが2つのものをA判定、a、bが1つずつのものをB判定、aが1つ、bが0のものをC判定、a、b共に0のものをD判定とした。
【0112】
【表3-1】
【表3-2】
【0113】
【表4-1】
【表4-2】
【0114】
【表5-1】
【表5-2】
【0115】
【表6】
【0116】
上記結果から明らかなとおり、実施例の樹脂組成物は、他部材との接着性に優れていた(実施例1~19)。さらに、非晶性樹脂を含むことにより、反りも効果的に抑制された。
また、無水マレイン酸変性重合体はスチレン-無水マレイン酸重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド-無水マレイン酸重合体、α-オレフィン-無水マレイン酸重合体の何れも他部材との接着性に優れており、その中でもスチレン-無水マレイン酸重合体が最も他部材との接着性に優れていた(実施例1~17)。
これに対し、酸変性重合体を含まない場合(比較例1)、接着性が劣っていた(比較例2)。酸変性重合体を含んでいても、樹脂組成物中の酸の量が十分ではない場合(比較例3)、接着性が劣っていた。
【符号の説明】
【0117】
1 ISO多目的試験片
2 フッ素系樹脂テープ
3 接着剤
4 ISO多目的試験片
図1