(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037621
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】トルク経路を選択可能なトルクコンバータアーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
F16H 45/00 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
F16H45/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022140665
(22)【出願日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】63/240,545
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/315,884
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520280302
【氏名又は名称】エクセディ グローバルパーツ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーディ ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント グリツェリウス
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ワレガ
(72)【発明者】
【氏名】スコット ビンダー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回転駆動される装置に原動機の出力を接続するためのアーキテクチャであって、2通りの異なるトルク経路の間で切り替え可能であるアーキテクチャを提供する。
【解決手段】このアーキテクチャは、選択可能な切り替え装置と、末端の出力部材と、中間の出力部材を有するトルク伝達装置と、を含む。選択可能な切り替え装置は、原動機の出力に接続され、第1の状態と第2の状態との間で選択的かつ交互に接続がなされる。第1の状態では、トルク伝達装置と接続されることで、トルク伝達装置が原動機によって回転駆動され、末端の出力部材はトルク伝達装置の中間の出力部材によって回転駆動される。第2の状態では、末端の出力部材と接続されることで、末端の出力部材が原動機によって回転駆動され、トルク伝達装置は原動機の回転から切り離されて回転駆動されることがない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の出力を、前記原動機によって駆動される装置に接続するためのアーキテクチャであって、
前記原動機の前記出力に接続されるように構成され、かつ、選択的かつ交互に、第1の状態および第2の状態のうちの一方で接続がなされる、選択可能な切り替え装置と、
入力と、中間の出力部材と、を有するトルク伝達装置と、
末端の出力部材と、を含み、
前記中間の出力部材は、前記末端の出力部材に接続され、
前記第1の状態では、前記選択可能な切り替え装置は、前記原動機の前記出力を前記トルク伝達装置に接続し、これによって、前記トルク伝達装置が前記原動機によって回転駆動されるとともに、前記末端の出力部材は前記トルク伝達装置によって回転駆動され、
前記第2の状態では、前記選択可能な切り替え装置は、前記原動機の前記出力を前記末端の出力部材に接続し、これによって、前記末端の出力部材が前記原動機によって回転駆動されるとともに、前記トルク伝達装置は前記原動機の回転から切り離されて回転駆動されることがない、アーキテクチャ。
【請求項2】
前記第2の状態では、前記末端の出力部材が前記原動機によって直接駆動される、請求項1に記載のアーキテクチャ。
【請求項3】
前記原動機と前記末端の出力部材との間に接続された、第2のトルク伝達装置をさらに含み、前記第2の状態では、前記選択可能な切り替え装置は、前記第2のトルク伝達装置を介して前記原動機の前記出力を前記末端の出力部材に接続する、請求項1に記載のアーキテクチャ。
【請求項4】
前記トルク伝達装置と前記原動機の前記出力との間に接続された同期装置をさらに含む、請求項1に記載のアーキテクチャ。
【請求項5】
前記同期装置は、前記トルク伝達装置に選択的に接続され、前記トルク伝達装置を、前記原動機および前記末端の出力部材のうちの一方との所定の速度差の範囲内の速度で回転させ、前記トルク伝達装置と前記原動機の前記出力を、前記選択可能な切り替え装置を介して再接続することができるようにする、請求項4に記載のアーキテクチャ。
【請求項6】
前記同期装置は、トルクの増加またはコンバータスリップが望ましい動作状態の間、動作範囲全体にわたって、前記トルク伝達装置と前記原動機の前記出力を、前記選択可能な切り替え装置を介して再接続できるようにする、請求項6に記載のアーキテクチャ。
【請求項7】
前記同期装置および前記選択可能な切り替え装置は、共通の装置に組み込まれている、請求項4に記載のアーキテクチャ。
【請求項8】
前記トルク伝達装置と前記末端の出力部材との間に接続された同期装置をさらに含む、請求項1に記載のアーキテクチャ。
【請求項9】
前記駆動される装置は、車両のトランスミッションである、請求項1に記載のアーキテクチャ。
【請求項10】
原動機の出力部材を、前記原動機によって駆動される装置に接続するためのアーキテクチャであって、
前記原動機の前記出力部材に接続されるように構成された入力部材と、
トルク伝達装置と、
前記駆動される装置に接続されるように構成された末端の出力部材と、
前記入力部材、前記トルク伝達装置、前記末端の出力部材の間に接続された選択可能な切り替え装置と、を含み、
前記選択可能な切り替え装置は、前記入力部材が前記トルク伝達装置に回転可能に接続され、前記トルク伝達装置が前記出力部材を回転駆動する第1の状態で接続可能であり、
前記選択可能な切り替え装置は、前記入力部材が前記末端の出力部材に回転可能に接続され、前記入力部材が前記末端の出力部材を回転駆動する第2の状態で接続可能であり、
前記第2の状態では、前記入力部材は前記トルク伝達装置の回転から切り離され、これによって、前記トルク伝達装置が前記入力部材によって回転駆動されることはない、アーキテクチャ。
【請求項11】
前記第2の状態では、前記末端の出力部材が前記原動機によって直接駆動される、請求項10に記載のアーキテクチャ。
【請求項12】
前記原動機と前記末端の出力部材との間に接続された、第2のトルク伝達装置をさらに含み、前記第2の状態では、前記選択可能な切り替え装置は、前記第2のトルク伝達装置を介して前記原動機の前記出力を前記末端の出力部材に接続する、請求項10に記載のアーキテクチャ。
【請求項13】
前記トルク伝達装置と、前記原動機の前記出力および前記末端の出力部材のうちの一方との間に接続された同期装置をさらに含む、請求項10に記載のアーキテクチャ。
【請求項14】
前記同期装置は、前記トルク伝達装置に選択的に接続され、前記トルク伝達装置を、前記原動機および前記末端の出力部材のうちの一方との所定の速度差の範囲内の速度で回転させ、トルクの増加またはコンバータスリップが望ましい動作状態の間、動作範囲全体にわたって、前記トルク伝達装置と前記原動機の前記出力を、前記選択可能な切り替え装置を介して再接続することができるようにする、請求項13に記載のアーキテクチャ。
【請求項15】
前記同期装置および前記選択可能な切り替え装置は、共通の装置に組み込まれている、請求項14に記載のアーキテクチャ。
【請求項16】
前記駆動される装置は車両のトランスミッションである、請求項10に記載のアーキテクチャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、非仮特許出願であり、2021年9月9日に出願された米国仮特許出願第63/240,545号および2022年3月2日に出願された米国仮特許出願第63/315,884号の優先権の利益を主張するとともに、これらの出願の内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、広義にはトルクコンバータを組み込んだパワートレインに関し、特に、モータービークルのパワートレインまたはそれによって駆動される他の装置で使用し得るような、トルクコンバータ用の新規なアーキテクチャに関する。
【背景技術】
【0003】
今日、自動車産業では、内燃機関(ICE)を用いる車両から電気車両へと次第に移行しつつある。その技術は向上しているが、完全電気自動車(EV)の欠点のひとつとして、現時点ではバッテリー技術に限界があるがゆえ、そのような自動車の走行距離範囲が制限されることがあげられる。狭い範囲での移動しか必要としない運転者であれば、これを不便だとは考えないが、一般的な完全電気自動車の走行距離範囲を超える走行距離を、少なくとも時々は必要とする運転者になると、通常、バッテリーを再充電するために長時間止まるか、走行距離が長い2台目の車両を所有するかのどちらかを選択しなければならない。
【0004】
ICE車両であっても、パワートレインの効率を改善することで、走行距離の制約を緩和することができる。現在採用されている方法のひとつに、車両が移動していないときには少なくとも一定時間ICEを停止し、車両のブレーキペダルから運転者の足が離れるなど、移動の意思が検出されたら速やかにICEを再始動させるものがある。
【0005】
ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)という、上記の2つの選択肢の中間に位置する車両も存在する。ハイブリッド車では、車両の動力源として、燃焼機関と電気モーターとが交互に使用される。総合的にみると、ハイブリッド車は燃費の点で燃焼機関式の車両に勝るものの、電気自動車よりは燃費が悪い。一方、プラグインハイブリッド車は、電気を主な動力源として走行するが、車両の走行距離を延ばすためにバックアップ動力源として燃焼機関を利用している。
【0006】
上記では、車両とパワートレインについて説明したが、パワートレインは、装置に回転入力が必要とされる他の場面でも使用することができる。そのような他の場面として、回転入力が必要な他の装置に出力を接続することができるギア減速装置の駆動があげられるが、これに限定されるものではない。
【0007】
そのようなパワートレインの1つの構成要素に、トルクコンバータがある。トルクコンバータは、パワートレインの原動機(ICE、電気モーター(EM)またはICE/EMの組み合わせ)と、トランスミッションやギア減速機構などの装置の入力を回転駆動するのに用いられる出力と、の間に接続される。
【0008】
単純に言うと、トルクコンバータとは、入力トルクを増加し、増加したトルクを出力トルクとして、トランスミッションやギア減速機構などの装置の入力に伝達するように構成された流体力学的回路を提供するものと説明されてもよい。トルクコンバータにはフロントカバーとリアカバーがあり、これらのカバーが協働してシェルが画定されている。さらに、このシェルによって内部のチャンバが画定され、そこに流体力学的回路が設けられている。通常、原動機の出力によってシェルが回転し、これによってシェル内のインペラが回転する。インペラは、流体力学的流体を半径方向外側に向け、そのあとタービンに向かって軸方向前方に向ける。この流体によってタービンに伝えられる力を利用して、タービンが回転駆動される。タービンを出た流体は半径方向内側に流れ、その後、軸方向に流れてインペラに戻る。タービンとインペラとの間には、ステータが配置されている。ステータは、流体がインペラに効率よく伝達されるように流体を方向転換することで、伝達されるトルクを増加させる。これは流体力学的な回路であることから、トルクコンバータでは、入力側(インペラ)と出力側(タービン)との速度差(スリップ)を発生させてトルクを増加することができる。
【0009】
トルクを増加することができる機能と速度差の双方を有することが、トルクコンバータの目的であり、機能である。トルクの増加は、完全停止していた車両を発進させるときや、牽引するときには有効である。しかしながら、フロントカバー(トルクコンバータの入力)をトルクコンバータの出力でロックするトルクコンバータのロックアップ機能が有効な場合も存在する。そのひとつは、定常状態で道路を走行しているときである。このロックアップ状態は、トルクコンバータにロックアップクラッチを含めることで実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ロックアップ状態では、トルクコンバータのすべての構成要素が回転しつづけ、トルクは、シェル/フロントカバー、内部のロックアップクラッチ、出力ハブおよび出力軸を介してトルクコンバータ経由で伝達されるが、インペラ、タービンおよびステータの油圧接続は介在しない。このため、トルクコンバータの流体力学的回路が許容する速度差よりも効率を高めることができるが、構成要素を回転させるのに必要な慣性がゆえ、ドライブトレインには依然として慣性による効率の悪さが存在する。これらの損失は、ICE、EM、またはICE/EMのいずれを原動機として組み込んだパワートレインであっても発生する。さらに、トルクコンバータの最大回転速度は、ドライブラインを高めの回転速度で稼働させる際の制限要因になる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した従来技術の欠点および他の制限を解決するにあたり、一態様において、本発明は、2通りの異なるトルク経路の間で切り替えることが可能な、原動機によって駆動される装置に原動機の出力を接続するためのアーキテクチャを提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、選択可能な切り替え装置と、トルク伝達装置と、末端の出力部材と、を有するアーキテクチャを提供する。選択可能な切り替え装置は、原動機の出力に接続されるように構成されている。また、選択可能な切り替え装置では、選択的かつ交互に、第1の状態および第2の状態のうちの一方で接続がなされる。トルク伝達装置には、入力と、中間の出力部材とが含まれ、中間の出力部材は、末端の出力部材に接続されている。第1の状態では、選択可能な切り替え装置は、原動機の出力をトルク伝達装置に接続し、これによって、トルク伝達装置が原動機によって回転駆動されるとともに、末端の出力部材はトルク伝達装置によって回転駆動される。第2の状態では、選択可能な切り替え装置は、原動機の出力を末端の出力部材に接続し、これによって、末端の出力部材が原動機によって回転駆動されるとともに、トルク伝達装置は原動機の回転から切り離されて回転駆動されることがない。
【0013】
別の態様において、第2の状態では、末端の出力部材が原動機によって直接駆動される。
【0014】
さらなる態様において、原動機と末端の出力部材との間に接続された、第2のトルク伝達装置をさらに含み、第2の状態では、選択可能な切り替え装置は、第2のトルク伝達装置を介して原動機の出力を末端の出力部材に接続する。
【0015】
追加の態様において、トルク伝達装置と原動機の出力との間に接続された同期装置をさらに含む。
【0016】
さらに別の態様において、同期装置は、トルク伝達装置に選択的に接続され、トルク伝達装置を、原動機および末端の出力部材のうちの一方との所定の速度差の範囲内の速度で回転させ、トルク伝達装置と原動機の出力を、選択可能な切り替え装置を介して再接続することができるようにする。
【0017】
さらに別の態様において、同期装置は、トルクの増加またはコンバータスリップが望ましい動作状態の間、動作範囲全体にわたって、トルク伝達装置と原動機の出力を、選択可能な切り替え装置を介して再接続できるようにする。
【0018】
追加の態様において、同期装置および選択可能な切り替え装置は、共通の装置に組み込まれている。
【0019】
さらに別の態様において、トルク伝達装置と末端の出力部材との間に接続された同期装置をさらに含む。
【0020】
さらなる態様において、駆動される装置は、車両のトランスミッションである。
【0021】
別の態様において、本発明は、原動機の出力部材を、原動機によって駆動される装置に接続するためのアーキテクチャであって、原動機の出力部材に接続されるように構成された入力部材と、トルク伝達装置と、駆動される装置に接続されるように構成された末端の出力部材と、入力部材、トルク伝達装置、末端の出力部材の間に接続された選択可能な切り替え装置と、を含み、選択可能な切り替え装置は、入力部材がトルク伝達装置に回転可能に接続され、トルク伝達装置が出力部材を回転駆動する第1の状態で接続可能であり、選択可能な切り替え装置は、入力部材が末端の出力部材に回転可能に接続され、入力部材が末端の出力部材を回転駆動する第2の状態で接続可能であり、第2の状態では、入力部材はトルク伝達装置の回転から切り離され、これによって、トルク伝達装置が入力部材によって回転駆動されることはない
【0022】
さらに別の態様において、第2の状態では、末端の出力部材が原動機によって直接駆動される。
【0023】
さらなる態様において、原動機と末端の出力部材との間に接続された、第2のトルク伝達装置をさらに含み、第2の状態では、選択可能な切り替え装置は、第2のトルク伝達装置を介して原動機の出力を末端の出力部材に接続する。
【0024】
追加の態様において、トルク伝達装置と、原動機の出力および末端の出力部材のうちの一方との間に接続された同期装置をさらに含む。
【0025】
さらに別の態様において、同期装置は、トルク伝達装置に選択的に接続され、トルク伝達装置を、原動機および末端の出力部材のうちの一方との所定の速度差の範囲内の速度で回転させ、トルクの増加またはコンバータスリップが望ましい動作状態の間、動作範囲全体にわたって、トルク伝達装置と原動機の出力を、選択可能な切り替え装置を介して再接続することができるようにする。
【0026】
さらに別の態様において、駆動される装置は車両のトランスミッションである。
【0027】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、特許請求の範囲を含む以下の説明を検討し、本明細書に添付されて本明細書の一部を構成する図面を参照すれば、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の原理を取り入れたトルクコンバータアーキテクチャの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すトルクコンバータアーキテクチャの一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明で使用する場合、「上方」「下方」などの方向を示す語を、図に示した要素の向きを基準にして用いる。このため、「上方」とは図の上に向かう方向をいい、「下方」とは図の下に向かう方向をいう。「左」と「右」も同様に解釈される。「内方向」または「内側」、「外方向」または「外側」という語は、図に中心軸を示してあるか否かを問わず、おおむね、参照される部品の中心軸に向かう方向または中心軸から離れる方向を示す。したがって、軸方向に面する表面が軸面である。すなわち、軸面は中心軸に沿った方向を向いている。したがって、半径方向表面は、半径方向すなわち、おおむね中心軸から離れる方向または中心軸に向かう方向に面する。しかしながら、実際の実施では、本明細書で使用する方向の基準と、対応する構成要素または装置の設置の仕方や方向とが必ずしも一致しないことが理解されるであろう。
【0030】
ここで図面を参照すると、本発明の原理を取り入れたトルクコンバータアーキテクチャを
図1に概略で図示し、10で示す。トルクコンバータアーキテクチャ10は、原動機12と、一例を
図2に示す後段/下流のドライブトレイン要素、ギア減速機構または他の装置14の入力との間に配置されている。原動機12は、内燃機関(ICE)や電気モーター(EM)であってもよいし、これらの組み合わせ(ICE/EM)であってもよい。
【0031】
トルクコンバータアーキテクチャ10には、大枠の構成要素として、選択可能な切り替え装置16と、トルクコンバータ18と、出力軸などの出力20とが含まれる。動作時、原動機12からのトルクが選択可能な切り替え装置16に伝達される。原動機12からのトルクは、選択可能な切り替え装置16の状態に応じて、トルクコンバータ18に向けられた後に出力20に向けられる場合(第1の動作状態)もあれば、(第2の動作状態として)直接、出力20に向けられる場合もある。原動機12の出力と下流の装置14の入力との間での直接駆動状態が望ましい場合、選択可能な切り替え装置16は、直接、トルクを出力20に伝達する。この第2の動作状態では、トルクコンバータ18を全く経由せず、トルクコンバータ18に回転入力が供給されることはない。
【0032】
トルクコンバータ18は、入力トルクを増加し、増加したトルクを出力トルクとして下流の被駆動装置14に伝達するように構成された流体力学的回路を提供する。トルクコンバータ18は、フロントカバー22とリアカバー24を含み、これらのカバーが協働してシェル26を画定する。さらに、シェル26によって内部のチャンバ28が画定され、そこに流体力学的回路が設けられている。
【0033】
入力軸29は、トルクをトルクコンバータ18に伝達する。このトルクは、一般にフロントカバー22でシェル26により受けられ、通常は内部でリアカバー24に取り付けられるインペラ30に、伝達される。インペラ30は、流体力学的流体を半径方向外側に向け、そのあとタービン32に向かって軸方向前方に向ける。この流体によりタービン32に伝えられる力により、タービン32が回転駆動される。タービン32を出た流体は半径方向内側に流れ、その後、軸方向に流れてインペラ30に戻る。ステータ34が、タービン32とインペラ30との間に位置し、ワンウェイクラッチ35によって支持されている。ステータ34は、流体がインペラ30に効率よく移送されるように流体を方向転換することによって、伝達されるトルクを増加する。
【0034】
タービン32は、タービン出力ハブ36に接続されている。タービン出力ハブ36は、中間の出力部材37およびワンウェイクラッチ38を介して、出力部材20に出力トルクを伝達する。この出力部材20が、下流の装置14にトルクを伝達する。ワンウェイクラッチ38の代わりに、クラッチ/選択可能な装置を使用してもよい。また、出力トルクを出力部材20に伝達する前に騒音・振動・ハーシュネス(NVH)対策のために、トルクコンバータ18に、図示しないダンパーアセンブリを設けてもよい。
【0035】
上述したように、トルクコンバータがフロントカバーからの入力をタービン出力ハブでロックすることができるように、トルクコンバータ内には、一般に、ピストン/クラッチアセンブリで構成されるロックアップクラッチアセンブリが備えられている。このようにしてロックアップされると、下流の装置に伝達されるトルクは、インペラとタービンの流体力学的回路を経由しない。しかしながら、フロントカバーおよびリアカバー、インペラ、タービン、ステータ、ダンパーおよびトルクコンバータの他の構成要素は、関連する慣性と効率の損失とともに、依然として回転したままである。
【0036】
本発明のトルクコンバータアーキテクチャ10では、トルクコンバータ18からロックアップクラッチを省き、代わりに上流の選択可能な切り替え装置16を採用している。このため、ロックアップ状態のときにトルクコンバータの回転によって生じる損失が回避されるだけでなく、トルクコンバータの全体としての大きさが抑えられ、ロックアップクラッチを作動させるための高圧の油圧回路も省かれる。
【0037】
本発明の原理を採用したアーキテクチャ10は、トルクコンバータ以外にも、トルク伝達装置を利用した他の構成に実装することができる。例えば、トルクコンバータ18の代わりに、流体継手や流体静力学的接続装置またはトルクをかける他の装置などの別の装置を使用することもできる。
【0038】
選択可能な切り替え装置16には、様々なタイプの選択可能なクラッチ/装置を採用し得ることが、理解されるであろう。例を示すと、そのような装置として、油圧クラッチ、シンクロナイザ、選択可能な電気クラッチがあげられるが、これらに限定されるものではない。上述したように、このような装置は、実装されたときに、選択可能な切り替え装置16から伝達されるトルクを、交互に、トルクコンバータ18の入力軸29に向けるか、直接、出力部材20に向けることができるタイプでなければならない。
【0039】
概略は
図1に示したが、トルクコンバータアーキテクチャ10を改変した物理的な実装を
図2に示す。図中、原動機12は、トルクジェネレータ、すなわち固定のステータ41と回転可能なローター42とを有する電気モーター(EM)40で表されている。(ここではEMとして示したが、原動機12を内燃機関(ICE)または両者の組み合わせとして示すこともできよう。)EM40のローター42を介してトルクを与えると、このトルクは、選択可能な切り替え装置16に伝達される。選択可能な切り替え装置16の状態に応じて、トルクは、2つの出力駆動部材44、46のうちの一方に伝達され、それぞれ、トルクコンバータ18の入力軸29または出力部材20のいずれかに伝達されるが、両方に同時に伝達されることはない。
図2に示すように、出力部材20は出力軸として設けられ、入力軸29内に入力軸29と同心状に配置されている。出力部材20と入力軸29は、軸受または他の手段によって、互いに独立して回転するように支持されている。
【0040】
トルクをトルクコンバータ18に向けると、トルクは、選択可能な切り替え装置16から入力軸29に伝達される。入力軸29は、トルクコンバータのシェル26のフロントカバー22に固定的に接続され、リアカバー24を回転駆動する。上述したように、(リアカバー24によって保持された)インペラ30とタービン32との間の流体接続によってタービン32が駆動され、ステータ34が作動油を効率よくインペラに戻すため、トルクが増加されてタービン32に伝達される。ここでも、タービン32にはタービン出力ハブ36が含まれる。タービン出力ハブ36は、選択可能な切り替え装置16の第1の状態で、ワンウェイクラッチ38を介して出力部材20に接続され、出力軸20を駆動する。
【0041】
図2に示すように、出力部材20は、ギアボックスすなわちトランスミッション48として示される、下流の装置14に対する入力軸46でもある。ギアボックス48には、軸方向にシフトレール52に乗ったシフトフォーク50が含まれる。シフトフォーク50は、シンクロナイザ58を介して入力軸48を前進駆動ギアセット54または後退駆動ギアセット56のいずれかに接続することで、ギアボックス48の前進動作と後退動作の両方を提供する。このようにすることで、トルクがトルクコンバータ18を経由するように向けられているときに、前進と後退の両方の動作中でトルクの増加を利用して、出力軸60を介してさらなる被駆動装置または構成要素(図示せず)に出力可能であることが、理解されるであろう。また、上述したものに代えて様々なタイプの接続/順方向逆方向切り替えメカニズムを採用し得ることも、理解されるであろう。
【0042】
トルクの方向を決めてトルクコンバータ18を経由しないようにすると、トルクは、選択可能な切り替え装置16から、出力ドライブ46を介して、直接、出力部材20に伝達される。その後、上述したように、トルクの増加を伴わずに、出力部材20が直接、下流の装置14/ギアボックス48の入力軸48として動作する。
【0043】
このアーキテクチャの代替的な構成では、選択可能な切り替え装置16が第2の状態にあるときに、選択可能な切り替え装置16と出力部材20との間に第2のトルク伝達装置64が実装されてもよい。第2のトルク伝達装置64は、好ましくは、トルクコンバータ18とは種類の異なるトルク伝達装置であり、例えば、スリップクラッチまたはピークトルクリミッターなどの装置であってもよい。
【0044】
原動機12(
図2ではEM40として示す)で出力部材20を直接駆動すると、トルクコンバータ18は駆動されず、効率が最大化され、実際に回転が止まる場合もある。駆動されていないトルクコンバータ18を系の動作速度範囲にわたって原動機12と再接続できるようにするために、任意に、同期装置62を採用してもよい。同期装置62については、
図1の概略図で示してある。
【0045】
同期装置62は、入力軸29、シェル26、トルクコンバータ18のインペラ30を、原動機12の出力部材の回転に対して特定の速度差の範囲内にある速度まで到達させ、それによって、トルクコンバータ18経由でトルクを伝達するために選択可能な切り替え装置16を容易に再接続できるようにする。あるいは、同期装置62によって、入力軸29を、出力部材20の回転に対して特定の速度差の範囲内にある速度まで到達させてもよい。
【0046】
同期装置62は、油圧クラッチ、電気クラッチ、電動モーターまたは他の装置(マニュアルまたはオートマチック)の形態であってもよい。クラッチ装置を
図1に同期装置62として概略的に示すが、これに限定されるものではない。別の構成では、選択可能な切り替え装置16を有する単独の装置16’と同期装置62とを組み合わせるおよび/またはこのような単独の装置16’に同期装置62を組み込むようにしてもよい。
【0047】
上記の説明は、本発明の原理を取り入れた少なくとも1つの好ましい実施態様を例示することを意図している。添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の真の意図および公正な範囲から逸脱することなく、本発明に改変、変形および変更を施し得ることを、当業者であれば真に理解するであろう。したがって、本明細書で使用した用語は、限定のための言葉ではなく、説明のための言葉の性質で理解されることが意図される。
【外国語明細書】