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  • 特開-潜熱回収エコノマイザ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037664
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】潜熱回収エコノマイザ
(51)【国際特許分類】
   F22D 1/02 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
F22D1/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144375
(22)【出願日】2021-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000199887
【氏名又は名称】川重冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107283
【弁理士】
【氏名又は名称】塩出 洋三
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】田中 良知
(72)【発明者】
【氏名】久保 卓資
(57)【要約】
【課題】燃焼排ガスからの高効率な潜熱回収と蒸気ドレンなどの熱量を給水温度上昇に利用する排熱回収を両立し、高いシステム効率を実現することができる潜熱回収エコノマイザを提供する。
【解決手段】ボイラ1からの燃焼排ガスを通す排ガス通路内に水平方向に伸びる伝熱管3を多数設け、前記伝熱管3を連結することで一続きの給水流路を形成し、燃焼排ガスによって伝熱管3を加熱することでボイラ1への給水を予熱するエコノマイザ20において、エコノマイザ20を潜熱回収領域(潜熱回収部)23と顕熱回収領域(顕熱回収部)24に分割し、に潜熱回収領域(潜熱回収部)23低温給水を供給し、顕熱回収領域(顕熱回収部)24に高温給水を供給する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの燃焼排ガスを通す排ガス通路内に水平方向に伸びる伝熱管を多数設け、前記伝熱管を連結することで一続きの給水流路を形成し、燃焼排ガスによって伝熱管を加熱することでボイラへの給水を予熱するエコノマイザにおいて、エコノマイザを排ガス出口側の潜熱回収部と排ガス入口側の顕熱回収部に分割し、潜熱回収部に低温給水を供給し、顕熱回収部に高温給水を供給するようにしたことを特徴とする潜熱回収エコノマイザ。
【請求項2】
ボイラからの燃焼排ガスを通す排ガス通路内に水平方向に伸びる伝熱管を多数設け、給水入口取合として設けられた入口ヘッダー及び中間ヘッダー並びに給水出口取合として設けられた出口ヘッダーが順に前記伝熱管で連結され、前記伝熱管を連結することで一続きの給水流路を形成し、燃焼排ガスによって伝熱管を加熱することでボイラへの給水を予熱するエコノマイザであって、エコノマイザを排ガス出口側の潜熱回収部と排ガス入口側の顕熱回収部に分割し、潜熱回収部に前記入口ヘッダーを設け、顕熱回収部に前記中間ヘッダーを設け、前記入口ヘッダーには低温給水を供給し、前記中間ヘッダーには高温給水を供給するようにしたことを特徴とする潜熱回収エコノマイザ。
【請求項3】
ボイラからの燃焼排ガスを通す排ガス通路内に水平方向に伸びる伝熱管を多数設け、給水入口取合として設けられた入口ヘッダー及び給水出口取合として設けられた出口ヘッダーが順に前記伝熱管で連結され、前記伝熱管を連結することで一続きの給水流路を形成し、燃焼排ガスによって伝熱管を加熱することでボイラへの給水を予熱するエコノマイザにおいて、エコノマイザを排ガス出口側の潜熱回収エコノマイザと排ガス入口側の顕熱回収エコノマイザに分割し、潜熱回収エコノマイザに潜熱回収入口ヘッダー及び潜熱回収出口ヘッダーを設け、顕熱回収エコノマイザに顕熱回収入口ヘッダー及び顕熱回収出口ヘッダーを設け、前記潜熱回収入口ヘッダーには低温給水を供給し、前記顕熱回収入口ヘッダーには高温給水を供給するようにしたことを特徴とする潜熱回収エコノマイザ。
【請求項4】
エコノマイザ出口の熱交換後高温給水の一部をボイラに供給せずに、高温水を利用するプロセスへ供給するようにした請求項1、2又は3に記載の潜熱回収エコノマイザ。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラから排出される燃焼排ガスから熱回収を行うエコノマイザに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なボイラでは、効率向上のためボイラから排出される燃焼排ガスから更なる熱回収を行う目的で、エコノマイザを設けている。
エコノマイザでは給水温度が低い場合には、燃焼排ガス中に含まれる水蒸気がドレン化するため、潜熱を回収することができる。
一方で、プロセス使用後の蒸気ドレンなどの熱量を給水温度上昇に利用する排熱回収を行うことがある。その場合、エコノマイザへ供給する給水温度が高くなってしまうため、燃焼排ガス中の潜熱を回収することができなくなる課題がある。例えば、給水温度が排ガス露点温度以上になると、原理上、潜熱は回収不可能となる。
【0003】
また、下記の特許文献1には、潜熱を最大限吸収することにより熱吸収量を増大させるエコノマイザとして、伝熱管群の燃焼排ガス流上流側の顕熱吸収部には伝熱管全周にフィンを設けた顕熱吸収用伝熱管を設け、顕熱吸収部よりも燃焼排ガス流下流側の潜熱吸収部には、伝熱管上面側にのみフィンを設け、下面側はフィンを設けていない潜熱吸収用伝熱管を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-248105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、エコノマイザへ供給する給水温度が高くなってしまう場合、例えば、給水温度が排ガス露点温度以上になる場合、燃焼排ガス中の潜熱を回収することができなくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、エコノマイザを潜熱回収部と顕熱回収部に分割し、エコノマイザに供給する給水を低温給水と高温給水に分けて供給することにより、燃焼排ガスからの高効率な潜熱回収と蒸気ドレンなどの熱量を給水温度上昇に利用する排熱回収を両立し、高いシステム効率を実現することができる潜熱回収エコノマイザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の潜熱回収エコノマイザは、ボイラからの燃焼排ガスを通す排ガス通路内に水平方向に伸びる伝熱管を多数設け、前記伝熱管を連結することで一続きの給水流路を形成し、燃焼排ガスによって伝熱管を加熱することでボイラへの給水を予熱するエコノマイザにおいて、エコノマイザを排ガス出口側の潜熱回収部(潜熱回収領域)と排ガス入口側の顕熱回収部(顕熱回収領域)に分割し、潜熱回収部に低温給水を供給し、顕熱回収部に高温給水を供給するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の潜熱回収エコノマイザは、ボイラからの燃焼排ガスを通す排ガス通路内に水平方向に伸びる伝熱管を多数設け、給水入口取合として設けられた入口ヘッダー及び中間ヘッダー並びに給水出口取合として設けられた出口ヘッダーが順に前記伝熱管で連結され、前記伝熱管を連結することで一続きの給水流路を形成し、燃焼排ガスによって伝熱管を加熱することでボイラへの給水を予熱するエコノマイザであって、エコノマイザを排ガス出口側の潜熱回収部と排ガス入口側の顕熱回収部に分割し、潜熱回収部に前記入口ヘッダーを設け、顕熱回収部に前記中間ヘッダーを設け、前記入口ヘッダーには低温給水を供給し、前記中間ヘッダーには高温給水を供給するようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の潜熱回収エコノマイザは、ボイラからの燃焼排ガスを通す排ガス通路内に水平方向に伸びる伝熱管を多数設け、給水入口取合として設けられた入口ヘッダー及び給水出口取合として設けられた出口ヘッダーが順に前記伝熱管で連結され、前記伝熱管を連結することで一続きの給水流路を形成し、燃焼排ガスによって伝熱管を加熱することでボイラへの給水を予熱するエコノマイザにおいて、エコノマイザを排ガス出口側の潜熱回収エコノマイザと排ガス入口側の顕熱回収エコノマイザに分割し、潜熱回収エコノマイザに潜熱回収入口ヘッダー及び潜熱回収出口ヘッダーを設け、顕熱回収エコノマイザに顕熱回収入口ヘッダー及び顕熱回収出口ヘッダーを設け、前記潜熱回収入口ヘッダーには低温給水を供給し、前記顕熱回収入口ヘッダーには高温給水を供給するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明において、エコノマイザ出口の熱交換後高温給水の一部をボイラに供給せずに、高温水を利用するプロセスへ供給するように構成することもできる。
【0011】
本発明において、例えば、低温給水の「低温」とは、給水温度が燃焼排ガス露点温度未満の場合を挙げることができる。また、高温給水の「高温」とは、給水温度が燃焼排ガス露点温度以上の場合を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の潜熱回収エコノマイザは、低温給水は潜熱回収部に供給し、高温給水は顕熱回収部に供給することで、燃焼排ガスからの高効率な潜熱回収と蒸気ドレンなどの熱量を給水温度上昇に利用する排熱回収を両立し、高いシステム効率を提供できる。
【0013】
エコノマイザ出口の熱交換後高温給水の一部をボイラに供給せずに、高温水を利用するプロセスへ供給する場合は、低温給水量を増加させることができ、燃焼排ガスからの潜熱回収量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の潜熱回収エコノマイザの構成の一例を示す説明図である。
図2図2は本発明の潜熱回収エコノマイザの概略構成の一例を示す説明図である。
図3図3は本発明の潜熱回収エコノマイザの概略構成の他の例を示す説明図である。
図4図4は本発明の潜熱回収エコノマイザの概略構成のさらに他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
【0016】
図1図2は、本発明の実施の第一形態を示している。
図1に示すように、エコノマイザ20は、ボイラ1からの燃焼排ガスを通す排ガス通路2内に水平方向に伸びる伝熱管3を多数設け、給水入口取合として設けられた入口ヘッダー17及び中間ヘッダー18並びに給水出口取合として設けられた出口ヘッダー19が順に前記伝熱管3で連結され、前記伝熱管3を連結することで一続きの給水流路を形成し、燃焼排ガスによって伝熱管3を加熱することでボイラ1への給水を予熱する。7はボイラ本体、8は気水分離器、9は安全弁、10は主蒸気止弁、11は水柱管、12は低温給水ポンプ、13は給水逆止弁、14は給水止弁、15はエコノマイザバイパス弁、16は高温給水ポンプである。なお、図示を省略しているが、高温給水配管にも給水逆止弁、給水止弁が設けられている。
【0017】
エコノマイザ20は、排ガス出口側の潜熱回収領域(潜熱回収部)と排ガス入口側の顕熱回収領域(顕熱回収部)に分割されており、潜熱回収領域に入口ヘッダー17を設け、顕熱回収領域に中間ヘッダー18を設け、入口ヘッダー17には低温給水を供給し、中間ヘッダー18には高温給水を供給する。
【0018】
図2に基づいてさらに詳しく説明する。
エコノマイザ20には、給水入口取合として、上述したように、入口ヘッダー17と中間ヘッダー18を設ける。入口ヘッダー17には低温給水タンク21から低温給水ポンプ12によって低温給水を供給し、中間ヘッダー18には高温給水タンク22から高温給水ポンプ16によって高温給水を供給する。なお、高温給水タンク22では、何らかの熱回収を行い、給水昇温を行う。
【0019】
そして、入口ヘッダー17から中間ヘッダー18間の潜熱回収領域(潜熱回収部)23では、燃焼排ガスから潜熱を回収する。中間ヘッダー18から出口ヘッダー19間の顕熱回収領域(顕熱回収部)24では、燃焼排ガスから顕熱を回収する。
ボイラ1への給水制御としては、高温給水と低温給水の合計量がボイラの蒸発量と一致するようにする。なお、図2では図示を省略しているが、入口ヘッダー17と中間ヘッダー18、出口ヘッダー19は、順に伝熱管で連結されている(図1参照)。また、図2に示す各温度は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0020】
図3は、本発明の実施の第二形態を示している。図2に示す実施の第一形態では一体型エコノマイザとなっているが、図3に示す実施の第二形態のように潜熱回収部と顕熱回収部で別々のエコノマイザとなっていてもよい。また、図3に示す実施の第二形態は、高圧ドレン回収時の実施形態の一例を示している。
【0021】
図3に基づいて詳しく説明する。
排ガス出口側の潜熱回収エコノマイザ30には、潜熱回収入口ヘッダー31と潜熱回収出口ヘッダー32を設ける。そして、排ガス入口側の顕熱回収エコノマイザ33には、顕熱回収入口ヘッダー34と顕熱回収出口ヘッダー35を設ける。潜熱回収入口ヘッダー31には給水タンク36から低温給水ポンプ12によって低温給水を供給し、顕熱回収入口ヘッダー34には蒸気ドレン回収タンク37から高温給水ポンプ16によって高温給水を供給する。なお、蒸気ドレン回収タンク37では、何らかの熱回収を行い、給水昇温を行う。
【0022】
そして、潜熱回収入口ヘッダー31から潜熱回収出口ヘッダー32間の潜熱回収エコノマイザ30では、燃焼排ガスから潜熱を回収する。顕熱回収入口ヘッダー34から顕熱回収出口ヘッダー35間の顕熱回収エコノマイザ33では、燃焼排ガスから顕熱を回収する。
なお、図3に示す各温度は一例であり、これらに限定されるものではない。
他の構成及び作用等は、実施の第一形態と同様である。
【0023】
図4は、本発明の実施の第三形態を示している。図4に示す実施の第三形態は、燃焼排ガスからの潜熱回収量を増加させるために、低温給水量を増加させる目的で、エコノマイザ出口の熱交換後高温給水の一部をボイラに供給せずに、高温水を利用するプロセスへ供給するものである。また、図4に示す実施の第三形態は、高圧ドレン回収時の実施形態の他の例を示している。
【0024】
図4に基づいて詳しく説明する。
エコノマイザ20には、給水入口取合として、上述したように、入口ヘッダー17と中間ヘッダー18を設ける。入口ヘッダー17には給水タンク36から低温給水ポンプ12によって低温給水を供給し、中間ヘッダー18には蒸気ドレン回収タンク37から高温給水ポンプ16によって高温給水を供給する。なお、蒸気ドレン回収タンク37では、何らかの熱回収を行い、給水昇温を行う。
【0025】
そして、入口ヘッダー17から中間ヘッダー18間の潜熱回収領域(潜熱回収部)23では、燃焼排ガスから潜熱を回収する。中間ヘッダー18から出口ヘッダー19間の顕熱回収領域(顕熱回収部)24では、燃焼排ガスから顕熱を回収する。
燃焼排ガスからの潜熱回収量を増加させるために、低温給水量を増加させる目的で、エコノマイザ出口の熱交換後高温給水の一部をボイラに供給せずに、高温水を利用するプロセスへ供給する。すなわち、出口ヘッダー19からの熱交換後高温給水の一部を高温水利用プロセス38(例えば、地域暖房)へ供給する。40は逃がし弁である。
なお、図4に示す各温度は一例であり、これらに限定されるものではない。
他の構成及び作用等は、実施の第一、第二形態と同様である。
【0026】
以上説明したように、本発明では、エコノマイザを潜熱回収部(潜熱回収領域又は潜熱回収エコノマイザ)と顕熱回収部(顕熱回収領域又は顕熱回収エコノマイザ)に分割し、エコノマイザに供給する給水を低温給水と高温給水に分けて供給することにより、燃焼排ガスからの高効率な潜熱回収と蒸気ドレンなどの熱量を給水温度上昇に利用する排熱回収を両立し、高いシステム効率を実現することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ボイラ
2 排ガス通路
3 伝熱管
7 ボイラ本体
8 気水分離器
9 安全弁
10 主蒸気止弁
11 水柱管
12 低温給水ポンプ
13 給水逆止弁
14 給水止弁
15 エコノマイザバイパス弁
16 高温給水ポンプ
17 入口ヘッダー
18 中間ヘッダー
19 出口ヘッダー
20 エコノマイザ
21 低温給水タンク
22 高温給水タンク
23 潜熱回収領域(潜熱回収部)
24 顕熱回収領域(顕熱回収部)
30 潜熱回収エコノマイザ
31 潜熱回収入口ヘッダー
32 潜熱回収出口ヘッダー
33 顕熱回収エコノマイザ
34 顕熱回収入口ヘッダー
35 顕熱回収出口ヘッダー
36 給水タンク
37 蒸気ドレン回収タンク
38 高温水利用プロセス
40 逃がし弁
図1
図2
図3
図4