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特開2023-3767森林資源情報算定装置、森林資源情報算定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003767
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】森林資源情報算定装置、森林資源情報算定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230110BHJP
   G06T 7/521 20170101ALI20230110BHJP
【FI】
G06T7/00 C
G06T7/521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105040
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】517220036
【氏名又は名称】精密林業計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】トウ ソウキュウ
(72)【発明者】
【氏名】竹中 悠輝
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096AA09
5L096DA01
5L096DA02
5L096FA62
5L096FA64
5L096FA69
5L096GA51
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】調査対象森林域に含まれる広葉樹を単木レベルで適切に解析する。
【解決手段】森林資源情報算定装置は、調査対象森林域にレーザ光を複数方向から照射して得られたレーザ計測データから地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データを作成し、その3次元点群データを高さ方向に分割して複数のスライスデータを作成し、調査対象森林域に含まれる広葉樹の単木解析を行う。単木解析では、各スライスデータに含まれる3次元点群データのクラスタリングによりスライスデータ毎に樹幹点群クラスタが生成され、一のスライスデータに含まれる樹幹点群クラスタと、隣接するスライスデータに含まれる樹幹点群クラスタとの積み重ねが、3次元点群データの高さ方向の全体にわたって行われ、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、幹から分岐した枝を有する1本の広葉樹に対応するかの判断が行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データを取得するレーザ計測データ取得部と、
前記レーザ計測データ取得部によって取得されたレーザ計測データに基づいて3次元点群データを作成する3次元点群データ作成部と、
前記3次元点群データ作成部によって作成された3次元点群データから地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データである補正3次元点群データを作成する3次元点群データ補正部と、
前記3次元点群データ補正部によって作成された補正3次元点群データを高さ方向に分割することにより複数のスライスデータを作成するスライスデータ作成部と、
前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの解析を行う単木解析部とを備え、
前記単木解析部は、
前記スライスデータ作成部によって作成された複数のスライスデータのそれぞれに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第1クラスタリング部と、
一のスライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタと、前記一のスライスデータに隣接するスライスデータである隣接スライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタとの積み重ねを、前記補正3次元点群データの高さ方向の全体にわたって行うことにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第2クラスタリング部と、
分岐部分を含む樹幹点群クラスタが前記第2クラスタリング部によって生成された場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と前記幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するかの判断を行う分離処理部とを備える、
森林資源情報算定装置。
【請求項2】
前記分離処理部は、前記分岐部分の高さ方向寸法に基づいて、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応するかの判断を行う、
請求項1に記載の森林資源情報算定装置。
【請求項3】
前記分離処理部は、
前記分岐部分の高さ方向寸法が、前記3次元点群データ補正部によって作成された補正3次元点群データの高さ方向寸法の3分の2以上である場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応すると判断し、
前記分岐部分の高さ方向寸法が、前記3次元点群データ補正部によって作成された補正3次元点群データの高さ方向寸法の3分の2未満である場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応すると判断する、
請求項2に記載の森林資源情報算定装置。
【請求項4】
前記単木解析部は、
前記第2クラスタリング部によって生成された樹幹点群クラスタに含まれる点群に基づいて、広葉樹の樹幹の中心点の候補を計算する樹幹中心点候補計算部を備える、
請求項1に記載の森林資源情報算定装置。
【請求項5】
前記単木解析部は、
前記樹幹中心点候補計算部によって計算された樹幹の中心点の候補の数に基づいて、前記樹幹中心点候補計算部によって計算された樹幹の中心点の候補が樹幹中心点であるか否かを判断する樹幹中心点判断部を備える、
請求項4に記載の森林資源情報算定装置。
【請求項6】
前記単木解析部は、
前記樹幹中心点判断部によって樹幹中心点であると判断された点と、前記分離処理部による判断の結果とに基づいて、判断の対象の樹幹点群クラスタが、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応するか、あるいは、ノイズであるかを判断する単木判断部を備える、
請求項5に記載の森林資源情報算定装置。
【請求項7】
前記3次元点群データ作成部によって作成された3次元点群データのうち、前記単木判断部によって樹幹に対応する樹幹点群クラスタであると判断された3次元点群データ以外の3次元点群データを用いることにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のうちの樹幹以外の部分を再現する単木点群抽出部を備える、
請求項6に記載の森林資源情報算定装置。
【請求項8】
前記単木判断部によって樹幹に対応する樹幹点群クラスタであると判断された3次元点群データと、前記単木点群抽出部によって樹幹以外の部分の再現に用いられた3次元点群データとを用いることによって、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの水平方向位置および樹高を計算する単木樹高解析部を備える、
請求項7に記載の森林資源情報算定装置。
【請求項9】
調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データを取得するレーザ計測データ取得ステップと、
前記レーザ計測データ取得ステップにおいて取得されたレーザ計測データに基づいて3次元点群データを作成する3次元点群データ作成ステップと、
前記3次元点群データ作成ステップにおいて作成された3次元点群データから地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データである補正3次元点群データを作成する3次元点群データ補正ステップと、
前記3次元点群データ補正ステップにおいて作成された補正3次元点群データを高さ方向に分割することにより複数のスライスデータを作成するスライスデータ作成ステップと、
前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの解析を行う単木解析ステップとを備え、
前記単木解析ステップには、
前記スライスデータ作成ステップにおいて作成された複数のスライスデータのそれぞれに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタ第1クラスタリングステップと、
一のスライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタと、前記一のスライスデータに隣接するスライスデータである隣接スライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタとの積み重ねを、前記補正3次元点群データの高さ方向の全体にわたって行うことにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第2クラスタリングステップと、
分岐部分を含む樹幹点群クラスタが前記第2クラスタリングステップにおいて生成された場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と前記幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するかの判断を行う分離処理ステップとが含まれる、
森林資源情報算定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データを取得するレーザ計測データ取得ステップと、
前記レーザ計測データ取得ステップにおいて取得されたレーザ計測データに基づいて3次元点群データを作成する3次元点群データ作成ステップと、
前記3次元点群データ作成ステップにおいて作成された3次元点群データから地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データである補正3次元点群データを作成する3次元点群データ補正ステップと、
前記3次元点群データ補正ステップにおいて作成された補正3次元点群データを高さ方向に分割することにより複数のスライスデータを作成するスライスデータ作成ステップと、
前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの解析を行う単木解析ステップとを実行させるためのプログラムであって、
前記単木解析ステップには、
前記スライスデータ作成ステップにおいて作成された複数のスライスデータのそれぞれに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第1クラスタリングステップと、
一のスライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタと、前記一のスライスデータに隣接するスライスデータである隣接スライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタとの積み重ねを、前記補正3次元点群データの高さ方向の全体にわたって行うことにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第2クラスタリングステップと、
分岐部分を含む樹幹点群クラスタが前記第2クラスタリングステップにおいて生成された場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と前記幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するかの判断を行う分離処理ステップとが含まれる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、森林資源情報算定装置、森林資源情報算定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
森林は国土の7割を占め、内5割が広葉樹林である。広葉樹材は家具や床材、化粧材などに使われ、針葉樹の数倍から10倍の高値で取引される。しかし、広葉樹材の需要の9割が輸入である。国産広葉樹は9割以上が安価なチップ原料になっている。広葉樹資源は豊富にあるが高価値で利用されていない現状にある。広葉樹の市場価値は樹種、樹形(幹曲がりと枝分かれの有無)、出材量で決定される。国内の家具と住宅メーカーは、国内の森林に何処に、どれくらいの量の広葉樹資源があるのか伝わっておらず、国産広葉樹マーケットが形成されていない。
【0003】
近年、森林資源情報を算定する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、調査対象森林域に対応する画像データが空撮によって取得され、3次元点群データが空撮画像データに基づいて作成される。更に、調査対象森林域画像データが、3次元点群データと、地理情報システムから得られる地理的情報とに基づいて作成される。また、調査対象森林域画像データに基づいて、樹冠高が表わされた樹冠高画像データが作成される。更に、樹冠高画像データを用いることによって、各種の森林資源情報を算定するための処理が行われる。
ところで、特許文献1に記載された技術では、調査対象樹木として、例えばカラマツ、アカマツ、スギ、ヒノキなどの高木となる植栽木(針葉樹)が想定されている。調査対象樹木が針葉樹である場合には、調査対象樹木が広葉樹である場合と比較して、樹頂点を見つけることが容易である。また、針葉樹は、広葉樹と比較して、幹曲がりや枝分かれが少ない。
そのため、特許文献1に記載された技術では、各種の森林資源情報を算定するために、基本的に、空撮画像データに基づいて作成された画像データが用いられ、補助的に、SFM(Structure from Motion)あるいはレーザ計測データを用いて作成された低密度の3次元点群データ(例えば樹冠高、地表の標高などを含むデータ)が用いられる。従って、特許文献1に記載された技術では、調査対象森林域に含まれる広葉樹を単木レベルで適切に解析することができず、広葉樹に関する森林資源情報(例えば広葉樹の樹形、生育状況などを示す情報)を適切に算定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-185449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した問題点に鑑み、本発明は、調査対象森林域に含まれる広葉樹を単木レベルで適切に解析することができる森林資源情報算定装置、森林資源情報算定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データを取得するレーザ計測データ取得部と、前記レーザ計測データ取得部によって取得されたレーザ計測データに基づいて3次元点群データを作成する3次元点群データ作成部と、前記3次元点群データ作成部によって作成された3次元点群データから地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データである補正3次元点群データを作成する3次元点群データ補正部と、前記3次元点群データ補正部によって作成された補正3次元点群データを高さ方向に分割することにより複数のスライスデータを作成するスライスデータ作成部と、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの解析を行う単木解析部とを備え、前記単木解析部は、前記スライスデータ作成部によって作成された複数のスライスデータのそれぞれに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第1クラスタリング部と、一のスライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタと、前記一のスライスデータに隣接するスライスデータである隣接スライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタとの積み重ねを、前記補正3次元点群データの高さ方向の全体にわたって行うことにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第2クラスタリング部と、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが前記第2クラスタリング部によって生成された場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と前記幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するかの判断を行う分離処理部とを備える、森林資源情報算定装置である。
【0007】
本発明の一態様の森林資源情報算定装置では、前記分離処理部は、前記分岐部分の高さ方向寸法に基づいて、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応するかの判断を行ってもよい。
【0008】
本発明の一態様の森林資源情報算定装置では、前記分離処理部は、前記分岐部分の高さ方向寸法が、前記3次元点群データ補正部によって作成された補正3次元点群データの高さ方向寸法の3分の2以上である場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応すると判断し、前記分岐部分の高さ方向寸法が、前記3次元点群データ補正部によって作成された補正3次元点群データの高さ方向寸法の3分の2未満である場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応すると判断してもよい。
【0009】
本発明の一態様の森林資源情報算定装置では、前記単木解析部は、前記第2クラスタリング部によって生成された樹幹点群クラスタに含まれる点群に基づいて、広葉樹の樹幹の中心点の候補を計算する樹幹中心点候補計算部を備えてもよい。
【0010】
本発明の一態様の森林資源情報算定装置では、前記単木解析部は、前記樹幹中心点候補計算部によって計算された樹幹の中心点の候補の数に基づいて、前記樹幹中心点候補計算部によって計算された樹幹の中心点の候補が樹幹中心点であるか否かを判断する樹幹中心点判断部を備えてもよい。
【0011】
本発明の一態様の森林資源情報算定装置では、前記単木解析部は、前記樹幹中心点判断部によって樹幹中心点であると判断された点と、前記分離処理部による判断の結果とに基づいて、判断の対象の樹幹点群クラスタが、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応するか、あるいは、ノイズであるかを判断する単木判断部を備えてもよい。
【0012】
本発明の一態様の森林資源情報算定装置は、前記3次元点群データ作成部によって作成された3次元点群データのうち、前記単木判断部によって樹幹に対応する樹幹点群クラスタであると判断された3次元点群データ以外の3次元点群データを用いることにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のうちの樹幹以外の部分を再現する単木点群抽出部を備えてもよい。
【0013】
本発明の一態様の森林資源情報算定装置は、前記単木判断部によって樹幹に対応する樹幹点群クラスタであると判断された3次元点群データと、前記単木点群抽出部によって樹幹以外の部分の再現に用いられた3次元点群データとを用いることによって、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの水平方向位置を計算する単木樹高解析部を備えてもよい。
【0014】
本発明の一態様は、調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データを取得するレーザ計測データ取得ステップと、前記レーザ計測データ取得ステップにおいて取得されたレーザ計測データに基づいて3次元点群データを作成する3次元点群データ作成ステップと、前記3次元点群データ作成ステップにおいて作成された3次元点群データから地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データである補正3次元点群データを作成する3次元点群データ補正ステップと、前記3次元点群データ補正ステップにおいて作成された補正3次元点群データを高さ方向に分割することにより複数のスライスデータを作成するスライスデータ作成ステップと、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの解析を行う単木解析ステップとを備え、前記単木解析ステップには、前記スライスデータ作成ステップにおいて作成された複数のスライスデータのそれぞれに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタ第1クラスタリングステップと、一のスライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタと、前記一のスライスデータに隣接するスライスデータである隣接スライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタとの積み重ねを、前記補正3次元点群データの高さ方向の全体にわたって行うことにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第2クラスタリングステップと、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが前記第2クラスタリングステップにおいて生成された場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と前記幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するかの判断を行う分離処理ステップとが含まれる、森林資源情報算定方法である。
【0015】
本発明の一態様は、コンピュータに、調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データを取得するレーザ計測データ取得ステップと、前記レーザ計測データ取得ステップにおいて取得されたレーザ計測データに基づいて3次元点群データを作成する3次元点群データ作成ステップと、前記3次元点群データ作成ステップにおいて作成された3次元点群データから地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データである補正3次元点群データを作成する3次元点群データ補正ステップと、前記3次元点群データ補正ステップにおいて作成された補正3次元点群データを高さ方向に分割することにより複数のスライスデータを作成するスライスデータ作成ステップと、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの解析を行う単木解析ステップとを実行させるためのプログラムであって、前記単木解析ステップには、前記スライスデータ作成ステップにおいて作成された複数のスライスデータのそれぞれに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第1クラスタリングステップと、一のスライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタと、前記一のスライスデータに隣接するスライスデータである隣接スライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタとの積み重ねを、前記補正3次元点群データの高さ方向の全体にわたって行うことにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する第2クラスタリングステップと、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが前記第2クラスタリングステップにおいて生成された場合に、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、前記分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と前記幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するかの判断を行う分離処理ステップとが含まれる、プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、調査対象森林域に含まれる広葉樹を単木レベルで適切に解析することができる森林資源情報算定装置、森林資源情報算定方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の森林資源情報算定装置の一例を示す図である。
図2】3次元点群データ作成部によって作成された3次元点群データの一例を示す図である。
図3】3次元点群データ作成部によって作成された3次元点群データの一例を示す図である。
図4】3次元点群データ補正部によって行われる処理の一例を説明するための図である。
図5】3次元点群データ補正部によって作成された補正3次元点群データと、スライスデータ作成部によって作成された複数のスライスデータとの関係の一例を示す図である。
図6】スライスデータ作成部によって作成された複数のスライスデータの一例を示す図である。
図7】第1クラスタリング部によって行われるクラスタリングを説明するための図である。
図8】第2クラスタリング部によって生成された複数の広葉樹の樹幹に対応する複数の樹幹点群クラスタの一例を示す図である。
図9】分岐部分を含む樹幹点群クラスタが異なる2本の広葉樹に対応すると分離処理部によって判断される例を説明するための図である。
図10】単木判断部によって調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹の樹幹に対応すると判断された樹幹点群クラスタの一例を示す図である。
図11】単木点群抽出部によって樹幹以外の部分の再現が行われた後の調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹の3次元点群データの一例を示す図である。
図12】単木樹高解析部によって計算された水平方向位置および樹高を示す情報が、図11に示す3次元点群データに加えられたデータを示す図である。
図13】第1実施形態の森林資源情報算定装置において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図14図13のステップS50において実行される処理の一例を詳細に説明するためのフローチャートである。
図15】1つ目の調査地である大町市社の調査対象森林域を説明するための図である。
図16】2つ目の調査地である大町市二ツ屋の調査対象森林域を説明するための図である。
図17】3つ目の調査地である木島平村の調査対象森林域を説明するための図である。
図18】3つの調査地の現地調査結果を示す図である。
図19】1つ目および2つ目の調査地の分類結果を示す図である。
図20】3つ目の調査地の分類結果などを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の森林資源情報算定装置、森林資源情報算定方法およびプログラムの実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の森林資源情報算定装置1の一例を示す図である。
図1に示す例では、森林資源情報算定装置1が、所定の調査対象森林域における森林資源情報(例えば調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹形、生育状況などを示す情報)を算定する。森林資源情報算定装置1は、レーザ計測データ取得部11と、3次元点群データ作成部12と、3次元点群データ補正部13と、スライスデータ作成部14と、単木解析部15と、単木点群抽出部16と、単木樹高解析部17とを備えている。
レーザ計測データ取得部11は、ドローンを用いることにより調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データを取得する。レーザ計測データ取得部11によって取得されるレーザ計測データには、例えば電子基準点のGNSS(全球測位衛星システム)観測データ、ドローン上のGNSS観測データ、IMU(慣性計測ユニット)観測データ、レーザ測距データ等が含まれる。
図1に示す例では、ドローンを用いることにより調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データが、レーザ計測データ取得部11によって取得されるが、他の例では、ドローンを用いることにより調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データと、地上のレーザ計測装置を用いることにより調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データとが、レーザ計測データ取得部11によって取得されてもよい。
更に他の例では、地上のレーザ計測装置のみを用いることにより調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データとが、レーザ計測データ取得部11によって取得されてもよく、航空機またはヘリコプターのみを用いることにより調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データが、レーザ計測データ取得部11によって取得されてもよく、あるいは、これらの手法が組み合わされてレーザ計測データが、レーザ計測データ取得部11によって取得されてもよい。
図1に示す例では、3次元点群データ作成部12は、レーザ計測データ取得部11によって取得されたレーザ計測データに基づいて3次元点群データを作成する。
【0020】
図2および図3は3次元点群データ作成部12によって作成された3次元点群データの一例を示す図である。詳細には、図2は3次元点群データ作成部12によって作成された3次元点群データを斜視図によって示しており、図3(A)は図2に示す斜視図を縮小して示しており、図3(B)は図3(A)に示す調査対象森林域の一部の鉛直断面を示している。つまり、図3(B)は地表面が傾斜していることを示している。
図2および図3に示すように、第1実施形態の森林資源情報算定装置1では、特許文献1に記載された技術と比較して格段に高密度な3次元点群データが作成される。
また、第1実施形態の森林資源情報算定装置1では、ドローンを用いることにより調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向(詳細には、多数の方向)から照射することによって得られたレーザ計測データが用いられるため、図3(A)に示すアングルからは死角となる位置の3次元点群データ(図3(B)参照)も作成される。
【0021】
図1に示す例では、3次元点群データ補正部13が、3次元点群データ作成部12によって作成された3次元点群データから、地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データである補正3次元点群データを作成する。
【0022】
図4は3次元点群データ補正部13によって行われる処理の一例を説明するための図である。詳細には、図4(A)は3次元点群データ補正部13による処理が行われる前の3次元点群データ(つまり、3次元点群データ作成部12によって作成された3次元点群データ)の一例を示しており、図4(B)は3次元点群データ補正部13による処理が行われた後の3次元点群データ(つまり、3次元点群データ補正部12によって作成された補正3次元点群データ)の一例を示している。
3次元点群データ作成部12によって作成された3次元点群データ(図4(A)参照)に傾斜した地表面が含まれる場合、3次元点群データ補正部13は、補正3次元点群データ(図4(B)参照)に含まれる地表面が水平面になる(つまり、同一標高で平坦になる)ように、3次元点群データ作成部12によって作成された3次元点群データを補正する。
【0023】
図1に示す例では、スライスデータ作成部14が、3次元点群データ補正部13によって作成された補正3次元点群データを高さ方向に分割することにより複数のスライスデータを作成する。
【0024】
図5は3次元点群データ補正部13によって作成された補正3次元点群データと、スライスデータ作成部14によって作成された複数のスライスデータとの関係の一例を示す図である。
図5に示す例では、3次元点群データ補正部13によって作成された補正3次元点群データの高さ方向寸法が約20m(詳細には、20m20cm)である。また、スライスデータ作成部14によって、補正3次元点群データの高さが1mから20m20cmまでの部分が20cm間隔で分割され、96個のスライスデータが作成されている。
【0025】
図6はスライスデータ作成部14によって作成された複数のスライスデータの一例を示す図である。詳細には、図6はスライスデータ作成部14によって作成された複数のスライスデータのうちの6つのスライスデータを示している。
図6において、「1stSlice」は、例えば図5に示すような複数のスライスデータのうちの補正3次元点群データの高さ方向(図5の上下方向)の最も下側に位置するスライスデータ(高さが1m~1m20cmのスライスデータ)を示している。「3rdSlice」は、例えば図5に示すような複数のスライスデータのうちの補正3次元点群データの高さ方向の下から3番目に位置するスライスデータ(高さが1m40cm~1m60cmのスライスデータ)を示している。「5thSlice」は、例えば図5に示すような複数のスライスデータのうちの補正3次元点群データの高さ方向の下から5番目に位置するスライスデータ(高さが1m80cm~2mのスライスデータ)を示している。
【0026】
図1に示す例では、単木解析部15が、調査対象森林域(図2参照)に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの解析を行う。単木解析部15は、第1クラスタリング部15Aと、第2クラスタリング部15Bと、樹幹中心点候補計算部15Cと、樹幹中心点判断部15Dと、分離処理部15Eと、単木判断部15Fとを備えている。
第1クラスタリング部15Aは、スライスデータ作成部14によって作成された複数のスライスデータのそれぞれに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する。詳細には、第1クラスタリング部15Aは、DBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)を用いることによって、各スライスデータに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行う。
【0027】
図7は第1クラスタリング部15Aによって行われるクラスタリングを説明するための図である。詳細には、図7(A)は第1クラスタリング部15Aによってクラスタリングが行われる前の高さが1m~1m20cmのスライスデータ(つまり、スライスデータ作成部14によって作成された高さが1m~1m20cmのスライスデータ)を示している。図7(B)は第1クラスタリング部15Aによってクラスタリングが行われた後の高さが1m~1m20cmの複数の樹幹点群クラスタを示している。
図7(A)に示すように、第1クラスタリング部15Aによってクラスタリングが行われる前のスライスデータには、ドローンから照射されたレーザ光を反射した点群が含まれている。つまり、第1クラスタリング部15Aによってクラスタリングが行われる前のスライスデータには、広葉樹の樹幹に対応する点群が含まれているのみならず、小枝、葉などに対応する点群も含まれている。また、第1クラスタリング部15Aによってクラスタリングが行われる前のスライスデータでは、どの点群が1本の広葉樹に対応しているかが識別されていない。
【0028】
図7(B)に示すように、第1クラスタリング部15Aによってクラスタリングが行われた後の点群データには、小枝、葉などに対応する点群が含まれていない。詳細には、第1クラスタリング部15Aは、図7(A)に示す点群のうちの隣接する点群の数Knが閾値Kr以下である点群(低密度の点群)は、小枝、葉などに対応する点群であると判断する。更に、第1クラスタリング部15Aは、小枝、葉などに対応する点群を、図7(B)に示す点群データから除去する。
更に、第1クラスタリング部15Aによって行われるクラスタリングにより、同一の(1本の)広葉樹の樹幹に対応する点群が識別される。具体的には、第1の広葉樹の樹幹に対応する点群によって第1の樹幹点群クラスタが生成され、第1の広葉樹とは異なる第2の広葉樹の樹幹に対応する点群によって第2の樹幹点群クラスタが生成される。第1の樹幹点群クラスタと第2の樹幹点群クラスタとが互いに異なる樹幹点群クラスタとして識別される。
【0029】
図1に示す例では、第2クラスタリング部15Bが、一のスライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタと、そのスライスデータに隣接するスライスデータである隣接スライスデータに含まれる複数の樹幹点群クラスタとの積み重ねを、補正3次元点群データの高さ方向(図5の上下方向)の全体にわたって行うことにより、調査対象森林域(図1参照)に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する。
【0030】
図8は第2クラスタリング部15Bによって生成された複数の広葉樹の樹幹に対応する複数の樹幹点群クラスタの一例を示す図である。
第2クラスタリング部15Bは、高さが1m~1m20cmのスライスデータ(図5の最も下側に位置するスライスデータ)に含まれる複数の樹幹点群クラスタ(第1クラスタリング部15Aによって生成された樹幹点群クラスタ)に対して、高さが1m20cm~1m40cmのスライスデータ(図5の下から2番目に位置するスライスデータ)に含まれる複数の樹幹点群クラスタ(第1クラスタリング部15Aによって生成された樹幹点群クラスタ)を積み重ねる。
次いで、第2クラスタリング部15Bは、高さが1m40cm~1m60cmのスライスデータ(図5の下から3番目に位置するスライスデータ)に含まれる複数の樹幹点群クラスタ(第1クラスタリング部15Aによって生成された樹幹点群クラスタ)を更に積み重ねる。
次いで、第2クラスタリング部15Bは、高さが1m60cm~1m80cmのスライスデータ(図5の下から4番目に位置するスライスデータ)に含まれる複数の樹幹点群クラスタ(第1クラスタリング部15Aによって生成された樹幹点群クラスタ)を更に積み重ねる。
第2クラスタリング部15Bは、高さが20m~20m20cmのスライスデータ(図5の最も上側に位置するスライスデータ)に含まれる複数の樹幹点群クラスタ(第1クラスタリング部15Aによって生成された樹幹点群クラスタ)が積み重ねられるまで、積み重ねを続ける。
その結果、図8に示すように、高さ方向(図5の上下方向)に積み重ねられた複数の樹幹点群クラスタが生成される。
図8に示す樹幹点群クラスタ(第2クラスタリング部15Bによって生成された樹幹点群クラスタ)は、ドローンから照射されたレーザ光を反射した点群であって、広葉樹の樹幹の周りの樹皮の表面上の点群の集まりである。
【0031】
図1に示す例では、樹幹中心点候補計算部15Cが、第2クラスタリング部15Bによって生成された樹幹点群クラスタに含まれる点群(広葉樹の樹幹の周りの樹皮の表面上の点群)に基づいて、広葉樹の樹幹の中心点(樹幹の中心線上の点)の候補を計算する。
樹幹中心点判断部15Dは、樹幹中心点候補計算部15Cによって計算された樹幹の中心点の候補の数に基づいて、樹幹中心点候補計算部15Cによって計算された樹幹の中心点の候補が樹幹中心点であるか否かを判断する。
具体的には、樹幹中心点候補計算部15Cによって計算された樹幹の中心点の候補のうちの高さ方向に隣接する樹幹の中心点の候補の数Knが閾値Kcより多い場合(つまり、樹幹の中心線を構成し得る十分な数(密度)の中心点の候補が存在する場合)に、樹幹中心点判断部15Dは、その樹幹の中心点の候補が樹幹中心点であると判断する。
樹幹中心点候補計算部15Cによって計算された樹幹の中心点の候補のうちの高さ方向に隣接する樹幹の中心点の候補の数Knが閾値Kc以下である場合、樹幹中心点判断部15Dは、その樹幹の中心点の候補が樹幹中心点ではなく、ノイズであると判断する。
図8に示す例では、第2クラスタリング部15Bが、補正3次元点群データの高さ方向(図5の上下方向)の全体にわたって延びている樹幹点群クラスタを生成するが、他の例では、例えば第2クラスタリング部15Bが、樹幹中心点であると樹幹中心点判断部15Dによって判断された樹幹中心点を用いることにより、補正3次元点群データの高さ方向(図5の上下方向)の全体にわたって延びている樹幹中心点クラスタ(樹幹中心点をクラスタリングしたもの)を生成してもよい。
【0032】
上述したように、広葉樹は、針葉樹と比較して、幹曲がりや枝分かれが多い。そのため、図8に示すように高さ方向に積み重ねられた樹幹点群クラスタに、1本の広葉樹の樹幹から枝が分岐しているのか、あるいは、幹曲がりが大きい広葉樹を含む2本の広葉樹が近接しているのかを識別しづらい部分(分岐部分)が含まれる場合がある。
【0033】
そこで、図1に示す例では、分離処理部15Eは、分岐部分(樹幹から分岐した枝である可能性がある部分)を含む樹幹点群クラスタが第2クラスタリング部15Bによって生成された場合に、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するかの判断を行う。
分離処理部15Eは、分岐部分(樹幹から分岐した枝である可能性がある部分)の高さ方向寸法に基づいて、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応するかの判断を行う。つまり、分離処理部15Eは、樹幹から分岐した枝に対応する可能性がある樹幹点群クラスタを含むスライスデータの数に基づいて、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応するかの判断を行う。
詳細には、分離処理部15Eは、分岐部分(樹幹から分岐した枝である可能性がある部分)の高さ方向寸法が、3次元点群データ補正部13によって作成された補正3次元点群データの高さ方向寸法の3分の2以上である場合に、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応すると判断する。つまり、分離処理部15Eは、樹幹から分岐した枝に対応する可能性がある樹幹点群クラスタを含むスライスデータの数が、スライスデータの総数(例えば図5に示す例では96)の3分の2以上である場合に、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するのではなく、異なる2本の広葉樹に対応すると判断する。
一方、分離処理部15Eは、分岐部分(樹幹から分岐した枝である可能性がある部分)の高さ方向寸法が、3次元点群データ補正部13によって作成された補正3次元点群データの高さ方向寸法の3分の2未満である場合に、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応すると判断する。つまり、分離処理部15Eは、樹幹から分岐した枝に対応する可能性がある樹幹点群クラスタを含むスライスデータの数が、スライスデータの総数(例えば図5に示す例では96)の3分の2未満である場合に、分岐部分が樹幹から分岐した枝である可能性が高いと判断する。
【0034】
図1に示す例では、上述したように、分離処理部15Eが、樹幹点群クラスタを含むスライスデータの数に基づいて、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応するかの判断を行う。
他の例では、分離処理部15Eが、樹幹中心点クラスタを含むスライスデータの数に基づいて、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応するかの判断を行ってもよい。
【0035】
図9は分岐部分を含む樹幹点群クラスタが異なる2本の広葉樹に対応すると分離処理部15Eによって判断される例を説明するための図である。詳細には、図9(A)は分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが1本の広葉樹に対応するかの判断が分離処理部15Eによって行われる前の状態を示している。図9(B)は分岐部分を含む樹幹点群クラスタが異なる2本の広葉樹に対応すると分離処理部15Eによって判断された後の状態を示している。
図9に示す例では、樹幹から分岐した枝に対応する可能性がある樹幹中心点クラスタを含むスライスデータの数が、スライスデータの総数の3分の2以上であるため、分離処理部15Eは、分岐部分(樹幹から分岐した枝に見える部分)を含む樹幹点群クラスタが、幹と幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するのではなく、異なる2本の広葉樹に対応すると判断する。
【0036】
図1に示す例では、単木判断部15Fが、樹幹中心点判断部15Dによって樹幹中心点であると判断された点と、分離処理部15Eによる判断の結果とに基づいて、判断の対象の樹幹点群クラスタが、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応するか、あるいは、ノイズであるかを判断する。
詳細には、単木判断部15Fは、例えば第2クラスタリング部15Bによって生成された高さ方向に延びている樹幹中心点クラスタと、分離処理部15Eによる判断の結果とを用いることによって、例えば図8に示す樹幹点群クラスタが、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹の樹幹のみに対応するか、あるいは、樹幹から分岐した枝(ノイズとして除去すべきもの)を含むかを判断する。
【0037】
図10は単木判断部15Fによって調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹の樹幹に対応すると判断された樹幹点群クラスタの一例を示す図である。
図10に示す例では、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれを示す各樹幹点群クラスタに通し番号が付されている。
【0038】
図1に示す例では、単木点群抽出部16が、3次元点群データ作成部12によって作成された3次元点群データ(図2および図3参照)のうち、単木判断部15Fによって樹幹に対応する樹幹点群クラスタであると判断された3次元点群データ(例えば図10に示す樹幹点群クラスタ)以外の3次元点群データ(例えば広葉樹の枝葉に対応する部分の3次元点群データ)を用いることにより、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のうちの樹幹以外の部分を再現する。
【0039】
図11は単木点群抽出部16によって樹幹以外の部分の再現が行われた後の調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹の3次元点群データの一例を示す図である。
図11に示す例では、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹形(幹曲がり、枝ぶり)が再現されつつ、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれが明確に識別されている。
【0040】
図1に示す例では、単木樹高解析部17が、単木判断部15Fによって樹幹に対応する樹幹点群クラスタであると判断された3次元点群データと、単木点群抽出部16によって樹幹以外の部分の再現に用いられた3次元点群データとを用いることによって、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの水平方向位置(例えば緯度、経度など)および樹高を計算する。
【0041】
図12は単木樹高解析部17によって計算された水平方向位置および樹高を示す情報が、図11に示す3次元点群データに加えられたデータを示す図である。
【0042】
図13は第1実施形態の森林資源情報算定装置1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。図14図13のステップS50において実行される処理の一例を詳細に説明するためのフローチャートである。
図13および図14に示す例では、ステップS10において、レーザ計測データ取得部11は、ドローンを用いることにより調査対象森林域に対してレーザ光を複数方向から照射することによって得られたレーザ計測データを取得する。
次いで、ステップS20では、3次元点群データ作成部12が、ステップS10において取得されたレーザ計測データに基づいて3次元点群データを作成する。
次いで、ステップS30では、3次元点群データ補正部13が、ステップS20において作成された3次元点群データから、地表面の傾斜の影響を除外した3次元点群データである補正3次元点群データを作成する。
次いで、ステップS40では、スライスデータ作成部14が、ステップS30において作成された補正3次元点群データを高さ方向に分割することにより複数のスライスデータを作成する。
【0043】
次いで、ステップS50では、単木解析部15が、調査対象森林域(図2参照)に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの解析を行う。
詳細には、ステップS51では、単木解析部15が、生点群近隣距離Drの初期値、生点群近隣最低点数Krの初期値、中心点近隣距離Dcの初期値および中心点近隣最低点数Kcの初期値の設定を行う。
次いで、ステップS52では、第1クラスタリング部15Aが、ステップS40において作成された複数のスライスデータのそれぞれに含まれる3次元点群データのクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する。
ステップS53では、第1クラスタリング部15Aが、各スライスデータに含まれる3次元点群のそれぞれについて、低密度の点群であるか否かを判断する。
ステップS53Aでは、第1クラスタリング部15Aが、各スライスデータに含まれる3次元点群のうちの低密度の点群を小枝、葉などに対応するノイズと判断し、各スライスデータから除去する。
ステップS54では、第2クラスタリング部15Bが、隣接するスライスデータのそれぞれに含まれる樹幹点群クラスタの積み重ねを、補正3次元点群データの高さ方向(図5の上下方向)の全体にわたって行うことによって、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する樹幹点群クラスタを生成する。
【0044】
次いで、ステップS55では、樹幹中心点候補計算部15Cが、ステップS54において生成された樹幹点群クラスタに含まれる点群(広葉樹の樹幹の周りの樹皮の表面上の点群)に基づいて、広葉樹の樹幹の中心点の候補を計算する。
次いで、ステップS56では、樹幹中心点候補計算部15Cが、ステップS55において計算された広葉樹の樹幹の中心点の候補を補正3次元点群データの高さ方向(図5の上下方向)につなげる(クラスタリングを行う)処理を実行する。
次いで、ステップS57では、樹幹中心点判断部15Dが、ステップS56において高さ方向につなげられた樹幹の中心点の候補の数に基づいて、ステップS55において計算された樹幹の中心点の候補が樹幹中心点であるか否かを判断する。具体的には、樹幹中心点判断部15Dは、ステップS56において高さ方向につなげられた樹幹の中心点の候補が他の樹幹の中心点の候補から離れている(つまり、樹幹が高さ方向につながっていない)か否か、および、ステップS56において高さ方向につなげられた樹幹の中心点の候補が樹幹から外れているか否かを判断する。
ステップS57Aにおいて、樹幹中心点判断部15Dは、他の樹幹の中心点の候補から離れている樹幹の中心点の候補、および、樹幹から外れている樹幹の中心点の候補をノイズ中心点と判断し、除去する。
ステップS58では、樹幹中心点判断部15Dが、ノイズ中心点と判断されなかった樹幹の中心点の候補を樹幹中心点と判断すると共に、第2クラスタリング部15Bが、樹幹中心点のクラスタリングを行う(樹幹中心点を高さ方向につなげる)ことによって調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれに対応する樹幹中心点クラスタを生成する。
【0045】
次いで、ステップS59において、分離処理部15Eは、分岐部分(樹幹から分岐した枝である可能性がある部分)を含む樹幹中心点クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応するか、あるいは、分岐部分を含む樹幹点群クラスタが、幹と幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するかの判断を行う。
詳細には、分離処理部15Eは、分岐部分(樹幹から分岐した枝である可能性がある部分)の高さ方向寸法が、ステップS30において作成された補正3次元点群データの高さ方向寸法の3分の2以上である場合に、分岐部分を含む樹幹中心点クラスタが、異なる2本の広葉樹に対応すると判断する。つまり、分離処理部15Eは、樹幹から分岐した枝に対応する可能性がある樹幹中心点クラスタを含むスライスデータの数が、スライスデータの総数(例えば図5に示す例では96)の3分の2以上である場合に、分岐部分を含む樹幹中心点クラスタが、幹と幹から分岐した枝とを有する1本の広葉樹に対応するのではなく、異なる2本の広葉樹に対応すると判断する。
ステップS59Aでは、分離処理部15Eが、中心点近隣距離Dcの値を変更する。
ステップS59Bでは、分離処理部15Eが、中心点近隣距離Dcの値が1以下の樹幹中心点をノイズ中心点と判断し、除去する。
【0046】
次いで、ステップS60では、単木判断部15Fが、ステップS57において樹幹中心点であると判断された点と、ステップS59における判断の結果とに基づいて、判断の対象の樹幹点群クラスタが、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応するか、あるいは、ノイズであるかを判断する。
ステップS60において、単木判断部15Fは、ステップS58において生成された高さ方向に延びている樹幹中心点クラスタと、ステップS59における判断の結果とを用いる。
判断の対象の樹幹点群クラスタが、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応する(つまり、判断の対象の樹幹点群クラスタが単木に対応する)と単木判断部15Fによって判断される条件には、例えば、(1)ステップS58において生成された樹幹中心点クラスタが、3m~8mの高さの範囲内に5つ以上存在すること、(2)ステップS58において生成された樹幹中心点クラスタの最低高さが4m以下であること、(3)ステップS58において生成された樹幹中心点クラスタの最高高さが5m以上であること、(4)高さ方向につなげられた樹幹中心点クラスタに分岐部分(樹幹から分岐した枝である可能性がある部分)が含まれる場合に、その分岐部分を含むスライスデータの数がスライスデータの総数(例えば図5に示す例では96)の3分の1以下であること、(5)ステップS58において生成された樹幹中心点クラスタが、高さ方向の連続する10以上のスライスデータに含まれることが含まれる。
判断の対象の樹幹点群クラスタが、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの樹幹に対応せず、ノイズであるかと判断された場合に、ステップS60Aでは、ステップS58において生成された高さ方向に延びている樹幹中心点クラスタが、ノイズ中心点クラスタと判断され、除去される。
【0047】
次いで、ステップS70では、単木点群抽出部16が、ステップS20において作成された3次元点群データ(図2および図3参照)のうち、ステップS60において樹幹に対応する樹幹点群クラスタであると判断された3次元点群データ(例えば図10に示す樹幹点群クラスタ)以外の3次元点群データ(例えば広葉樹の枝葉に対応する部分の3次元点群データ)を用いることにより、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のうちの樹幹以外の部分を再現する。
次いで、ステップS80では、単木樹高解析部17が、ステップS60において樹幹に対応する樹幹点群クラスタであると判断された3次元点群データと、ステップS70において樹幹以外の部分の再現に用いられた3次元点群データとを用いることによって、調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの水平方向位置(例えば緯度、経度など)および樹高を計算する。
【0048】
[実施例]
本発明者等は、ドローン(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)として、DJI社製M600Proを用い、レーザ計測装置としてYellowScan社製Surveyor Ultraを用いて、大町市社、大町市二ツ屋および木島平村の所定の調査対象森林域のレーザ計測を行い、第1実施形態の森林資源情報算定装置1による森林資源情報の算定を行った。
【0049】
図15は1つ目の調査地である大町市社の調査対象森林域を説明するための図である。図16は2つ目の調査地である大町市二ツ屋の調査対象森林域を説明するための図である。図17は3つ目の調査地である木島平村の調査対象森林域を説明するための図である。図18は3つの調査地の現地調査結果を示す図である。
図19は1つ目および2つ目の調査地の分類結果を示す図である。詳細には、図19(A)は第1実施形態の森林資源情報算定装置1の単木樹高解析部17によって計算された大町市社の調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの水平方向位置を「ULS ITD(単木抽出結果)」で示しており、図19(B)は第1実施形態の森林資源情報算定装置1の単木樹高解析部17によって計算された大町市二ツ屋の調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの水平方向位置を「ULS ITD」で示している。
図20は3つ目の調査地の分類結果などを示す図である。詳細には、図20(A)は第1実施形態の森林資源情報算定装置1の単木樹高解析部17によって計算された木島平村の調査対象森林域に含まれる複数の広葉樹のそれぞれの水平方向位置を「ULS ITD」で示しており、図20(B)は3つの調査地における現地調査結果に対する第1実施形態の森林資源情報算定装置1の単木樹高解析部17による計算結果の正解率などを示している。
【0050】
大町市の調査地の正解率は100%であった。他地域でもDBH(胸高直径)が10cmを超える樹木の場合、90%を超える正解率だった。実用レベルの正解率は8割以上であることから、第1実施形態の森林資源情報算定装置1の実用精度は保証できていると言える。
【0051】
3カ所の異なるタイプの広葉樹林で3次元点群データから単木区分と樹冠形状の抽出に取り組んだ結果、いずれもモデルを立体的に区分表現でき、第1実施形態の森林資源情報算定装置1は高い空間再現力をもつことが明らかになった。
クリ、コナラ、ブナが優占する異なるタイプの広葉樹林において、単木区分の正解率はほぼ100%であった。
15種が混在し、多様で複雑な大町市社プロットでも、誤検出は3%未満であり、実用精度に問題はない。
【0052】
上述したように、広葉樹林は多様な樹種が混交し、本数密度も高く、樹冠は円く、樹頂点が見つけづらい。そのため、パターン認識やAI(人工知能)で単木区分することが難しい。また、広葉樹は着葉量が多く、幹曲がりや枝分かれもあるため、空撮画像を用いることによっては個体を判別できない。
そこで、第1実施形態の森林資源情報算定装置1では、上述した処理が行われる。
つまり、根元から樹頂点までの幹や枝ぶりをデータ化するために、落葉期にドローンを用いたレーザ計測を行うことによって、高密度の3次元点群データが得られる。
また、一定間隔のレベルスライスで範囲内の3次元点群データを抽出し、点密度によるクラスタリングを行うことによって、スライスデータ毎に樹幹点群クラスタが生成される。
更に、スライスデータ毎の樹幹点群クラスタを高さ方向に積み重ねることによって、枝や葉などのノイズが除去された高さ方向に延びている樹幹点群クラスタが生成され、立木位置が抽出される。
また、階層別に幹直径点群を抽出し、幹直径を連結することによって、樹頂点までの樹幹の3次元モデルが作成される。
【0053】
第1実施形態の森林資源情報算定装置1の一例(本発明者等の研究結果)によれば、現地調査せずに、ドローンのみを用いたレーザ計測データに基づいて広域の広葉樹林の3次元空間上における単木区分および樹形把握を実現することができる。
詳細には、第1実施形態の森林資源情報算定装置1によれば、樹木の位置、高さ、樹形を算定することによって、本数積算で出材量を把握することができる。
【0054】
<第2実施形態>
以下、本発明の森林資源情報算定装置、森林資源情報算定方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の森林資源情報算定装置1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の森林資源情報算定装置1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の森林資源情報算定装置1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の森林資源情報算定装置1と同様の効果を奏することができる。
【0055】
第1実施形態の森林資源情報算定装置1では、1つのコンピュータを用いることによって図13および図14に示す処理が実行される。
一方、第2実施形態の森林資源情報算定装置1では、複数のコンピュータを用いることによって図13および図14に示す処理が実行されてもよい。具体的には、例えばステップS10、S20、S30などの処理が例えばクラウドサーバなどにおいて実行されてもよい。
【0056】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0057】
なお、上述した実施形態における森林資源情報算定装置1が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0058】
1…森林資源情報算定装置、11…レーザ計測データ取得部、12…3次元点群データ作成部、13…3次元点群データ補正部、14…スライスデータ作成部、15…単木解析部、15A…第1クラスタリング部、15B…第2クラスタリング部、15C…樹幹中心点候補計算部、15D…樹幹中心点判断部、15E…分離処理部、15F…単木判断部、16…単木点群抽出部、17…単木樹高解析部
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