IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 光洋サーモシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱処理装置 図1
  • 特開-熱処理装置 図2
  • 特開-熱処理装置 図3
  • 特開-熱処理装置 図4
  • 特開-熱処理装置 図5
  • 特開-熱処理装置 図6
  • 特開-熱処理装置 図7
  • 特開-熱処理装置 図8
  • 特開-熱処理装置 図9
  • 特開-熱処理装置 図10
  • 特開-熱処理装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037681
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 7/02 20060101AFI20230309BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20230309BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
F27D7/02 A
F27D19/00 A
F27D21/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144406
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓弘
【テーマコード(参考)】
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K056AA09
4K056BB10
4K056CA18
4K056FA02
4K056FA13
4K063AA05
4K063BA12
4K063CA03
4K063DA06
4K063DA13
4K063DA32
(57)【要約】
【課題】湿気の原因となる低温の流体が熱処理炉に供給されることを抑制できる熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置1は、過熱水蒸気生成器2からの過熱水蒸気を熱処理炉3へ供給する供給経路11および排出経路12を含む流体経路10と、供給経路11の上流部11cから下流部11dへ流体を供給する供給状態と上流部11cからの流体が排出される排出状態とを切り替える導入弁20と、温度センサ5と、を有する。下流部11dの経路長L2は、上流部11cの経路長L1よりも短い。温度センサ5は、導入弁20の近傍における流体温度を測定する。温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度Th1以下の場合には排出状態となり、第1設定温度Th1を超えている場合には供給状態となる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱水蒸気生成器と、
被処理物を熱処理するための熱処理炉と、
前記過熱水蒸気生成器と前記熱処理炉とに接続され前記過熱水蒸気生成器から過熱水蒸気を前記熱処理炉へ供給するための供給経路、および、前記供給経路の途中に設けられた分岐部において前記供給経路から分岐した排出経路を含む流体経路と、
前記供給経路において前記分岐部からみた上流部から下流部へ流体を供給する供給状態と、前記上流部から前記下流部への前記流体の供給が規制され且つ前記上流部から前記排出経路を通した前記流体の排出が許容された排出状態と、を切り替える導入弁と、
前記流体経路内の温度を測定する温度センサと、
を備え、
前記下流部の経路長は、前記上流部の経路長よりも短く設定されており、
前記温度センサは、前記導入弁の近傍における前記温度を測定するように構成され、
前記温度センサの検出温度が所定の設定温度以下の場合には前記排出状態となるように構成され、
前記検出温度が前記設定温度を超えている場合には前記供給状態となるように構成されている、熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記温度センサは、前記分岐部の近傍における前記温度を測定する、熱処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱処理装置であって、
前記温度センサは、前記供給経路の下流端部における前記温度を測定する、熱処理装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の熱処理装置であって、
前記導入弁は、前記熱処理炉における前記下流部からの前記過熱水蒸気の導入口で且つ前記下流部の下流端に配置されている、熱処理装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の熱処理装置であって、
前記温度センサは、前記供給経路における前記導入弁の上流側の前記温度を測定し、
前記供給経路における前記導入弁の下流側の前記温度を測定する第2温度センサをさらに備え、
前記導入弁は、前記第2温度センサの検出温度が所定の第2設定温度以下の場合には前記排出状態とされる、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気生成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、過熱水蒸気を用いて医療廃棄物を滅菌処理する医療廃棄物処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献2に記載の医療廃棄物処理装置では、蛇管(22)を通過する水道水がバーナー(28)で加熱されて過熱水蒸気となる。なお、バーナー(28)の加熱によって蛇管(22)の温度が十分に高くなるまでは、蛇管(22)からの流体は、過熱水蒸気バルブ(112)を通って排出される。そして、バーナー(28)の加熱によって蛇管(22)の温度が十分に高くなると、蛇管(22)から過熱水蒸気が処理室(4)に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-83153号公報
【特許文献2】特開2004-129993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子部品等の工業製品の製造時に使用される工業用の熱処理装置において、過熱水蒸気を熱処理炉内に供給することで、被処理物に熱処理を施す場合がある。過熱水蒸気の比熱は、約0.48(cal/g/℃)であり、空気の比熱約0.24(cal/g/℃)よりも大きい。このため、熱処理室に搬入された被処理物を熱処理するための熱処理ガスとして過熱水蒸気が用いられる場合、被処理物へ大きな熱エネルギーを与えることができる。
【0006】
このような熱処理装置では、過熱水蒸気発生器で発生した過熱水蒸気を配管を通して加熱炉に供給し、加熱炉内の被処理物を加熱する構成を採用することが考えられる。過熱水蒸気発生器は、通常、起動時には水を加熱できる温度が低く、水、または、設定温度よりも低い温度の蒸気を出す。このため、水、または、設定温度よりも低い温度の蒸気が加熱炉に到達すると、加熱炉内が湿ってしまう。加熱炉内が湿ってしまうと、被処理物を加熱する際に加熱炉内の温度が安定しない等の好ましくない現象が生じる。
【0007】
一方で、被処理物が電子部品等の工業製品の素材である場合、被処理物の品質を高めるために、熱処理ガスの温度を正確に制御する要請が高い。しかしながら、特許文献2に記載の発明は医療廃棄物を処理するための装置であり、工業製品の熱処理に要求されるような、高度に均等な温度分布が要求されているわけではない。このため、引用文献2には、処理室(4)内の温度を正確に制御するという観点が存在しているとはいえない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、湿気の原因となる低温の流体が熱処理炉に供給されることを抑制できる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置は、過熱水蒸気生成器と、被処理物を熱処理するための熱処理炉と、前記過熱水蒸気生成器と前記熱処理炉とに接続され前記過熱水蒸気生成器から過熱水蒸気を前記熱処理炉へ供給するための供給経路、および、前記供給経路の途中に設けられた分岐部において前記供給経路から分岐した排出経路を含む流体経路と、前記供給経路において前記分岐部からみた上流部から下流部へ流体を供給する供給状態と、前記上流部から前記下流部への前記流体の供給が規制され且つ前記上流部から前記排出経路を通した前記流体の排出が許容された排出状態と、を切り替える導入弁と、前記流体経路内の温度を測定する温度センサと、を備え、前記下流部の経路長は、前記上流部の経路長よりも短く設定されており、前記温度センサは、前記導入弁の近傍における前記温度を測定するように構成され、前記温度センサの検出温度が所定の設定温度以下の場合には前記排出状態となるように構成され、前記検出温度が前記設定温度を超えている場合には前記供給状態となるように構成されている。
【0010】
この構成によると、供給経路において、下流部の経路長は、上流部の経路長よりも短く設定されている。この短い下流部を開閉するように導入弁が配置されるので、導入弁は、熱処理炉の近傍に配置される。さらに、温度センサは導入弁の近傍における流体温度を測定し、その測定結果(検出温度)に応じて、導入弁の排出状態と供給状態とが切り替えられる。これにより、例えば、供給経路における炉の近傍に到達した過熱水蒸気が設定温度を超えている場合は過熱水蒸気が下流部から熱処理炉に供給される。一方で供給経路における炉の近傍に到達した流体の温度が設定温度以下である場合は、この流体は熱処理炉には供給されずに排出経路に排出される。例えば、過熱水蒸気生成器の動作開始初期において過熱水蒸気生成器から水が送り出された場合、または、過熱水蒸気生成器から供給経路を通過することで過熱水蒸気の熱エネルギーが供給経路の壁面に吸収されること等によって過熱水蒸気の温度が低下して過熱水蒸気から水が生じた場合、湿気の原因となる流体は、排出経路から排出される。その結果、熱処理炉において湿気の原因となる、温度の低い流体が熱処理炉内に供給されることをより確実に抑制できる。よって、過熱水蒸気生成器の起動時において湿気の原因となる低温の流体が熱処理炉に供給されることを抑制できるとともに、過熱水蒸気生成器の動作異常等に起因して低温の流体が熱処理炉に供給されることを抑制できる。
【0011】
(2)前記温度センサは、前記分岐部の近傍における前記温度を測定する場合がある。
【0012】
この構成によると、分岐部には、過熱水蒸気生成器の動作中には流体の温度にかかわらず過熱水蒸気生成器からの流体が通過するので、温度センサは、流体温度をより正確に測定できる。しかも、温度センサは、流体経路において排出状態および供給状態の何れにおいても流体が流動する箇所で且つ過熱水蒸気生成器からできるだけ遠い箇所の流体温度を測定できる。よって、導入弁を供給状態とすべきか否かの判断を、熱処理炉により近い箇所での流体温度に基づいて行うことができる。
【0013】
(3)前記温度センサは、前記供給経路の下流端部における前記温度を測定する場合がある。
【0014】
この構成によると、温度センサは、熱処理炉における過熱水蒸気の導入口付近における流体温度を測定する。そして、この導入口付近における流体温度が十分に高いときのみ、供給経路から流体が熱処理炉に導入される。これにより、熱処理炉に湿気の原因となる低温の流体が供給されてしまうことをより確実に抑制できる。
【0015】
(4)前記導入弁は、前記熱処理炉における前記下流部からの前記過熱水蒸気の導入口で且つ前記下流部の下流端に配置されている場合がある。
【0016】
この構成によると、供給経路における導入弁の直後に熱処理炉が配置されている。すなわち、導入弁は、熱処理炉の極めて近い箇所に配置される。さらに、温度センサは導入弁の近傍における流体温度を測定し、その測定結果に応じて、排出状態と供給状態とが切り替えられる。これにより、温度センサで検出された流体温度と実質的に同一の高温の過熱水蒸気を熱処理炉に導入することができる。よって、熱処理炉に湿気の原因となる低温の流体が導入されることをより確実に抑制できる。特に、温度センサが供給経路の下流端部における流体温度を測定する場合、導入弁および温度センサを熱処理炉の極めて近い箇所に配置できる。よって、温度センサで検出された流体温度と実質的に同一の高温の過熱水蒸気を熱処理炉に導入することができる。
【0017】
(5)前記温度センサは、前記供給経路における前記導入弁の上流側の前記温度を測定し、前記熱処理装置は、前記供給経路における前記導入弁の下流側の前記温度を測定する第2温度センサをさらに備え、前記導入弁は、前記第2温度センサの検出温度が所定の第2設定温度以下の場合には前記排出状態とされる場合がある。
【0018】
この構成によると、供給経路において導入弁より下流側において何らかの異常が発生したときにおいて、第2温度センサがこの異常を検出でき、その結果、導入弁を排出状態にできる。よって、湿気の原因となる流体が熱処理炉に導入されることをより確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、熱処理装置において、湿気の原因となる低温の流体が熱処理炉に供給されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る熱処理装置の構成を示す模式図である。
図2図2(A)は、熱処理装置において排出状態を示す図であり、図2(B)は、熱処理装置において供給状態を示す図である。
図3図3は、熱処理装置における熱処理開始動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、処理装置における熱処理最中動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、処理装置における熱処理終了動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、第1実施形態の変形例を示す図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る熱処理装置の構成を示す模式図である。
図8図8は、第2実施形態の変形例を示す図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態に係る熱処理装置の構成を示す模式図である。
図10図10は、第3実施形態の熱処理装置における熱処理最中動作の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、第3実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱処理装置1の構成を示す模式図である。図2(A)は、熱処理装置1において排出状態を示す図であり、図2(B)は、熱処理装置1において供給状態を示す図である。図において、破線は電気信号の経路を示している。図2(A)および図2(B)において、流体が流れている箇所を太線で示している。
【0023】
図1図2(A)および図2(B)を参照して、熱処理装置1は、被処理物100に熱処理を施すための装置である。被処理物100として、セラミック、電子部品、半導体、および、金属部品を例示できる。熱処理装置1では、一度に一つのみの被処理物100が熱処理されてもよいし、複数の被処理物100がホルダ等に置かれた状態で一括して熱処理されてもよい。熱処理装置1で用いられる熱処理用ガスは、本実施形態では、過熱水蒸気である。過熱水蒸気の比熱は、約0.48(cal/g/℃)であり、空気の比熱約0.24(cal/g/℃)よりも大きい。このため、熱処理室に搬入された被処理物100を熱処理するための熱処理ガスとして過熱水蒸気が用いられる場合、被処理物100へ大きな熱エネルギーを与えることができる。なお、熱処理装置1は、熱処理用ガスとして、過熱水蒸気以外に、他のガスも用いられてもよい。本実施形態では、熱処理室用ガスとして過熱水蒸気を熱処理炉3に供給する構成を説明する。
【0024】
熱処理装置1は、過熱水蒸気生成器2と、被処理物100を熱処理するための熱処理炉3と、供給経路11および排出経路12を含む流体経路10と、流体経路10に設けられた導入弁20と、温度センサ5と、制御部30と、を有している。
【0025】
過熱水蒸気生成器2は、水を加熱することで過熱水蒸気を生成する。本実施形態では、過熱水蒸気生成器2は、熱処理炉3とは別体に形成されている。なお、過熱水蒸気生成器2と熱処理炉3とが1つの筐体内に設置されて一体に形成されていてもよい。過熱水蒸気生成器2は、過熱水蒸気を生成可能な構成であれば、具体的な構成は限定されない。過熱水蒸気生成器2は、例えば、水を加熱することで飽和水蒸気を生成する飽和水蒸気生成用ボイラまたは内部に水の通路が形成された飽和水蒸気生成用誘導加熱コイルと、内部に飽和水蒸気が通過する通路が形成されこの通路を通過する蒸気を加熱することで過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成用誘導加熱コイルと、を含んでいてもよい。また、過熱水蒸気生成器2は、内部に通路が形成され、この通路内を通過する水を過熱水蒸気まで変化させるボイラまたは誘導加熱コイル、抵抗加熱ヒータ等であってもよい。
【0026】
過熱水蒸気生成器2は、水が供給される給水管31から水を与えられる。給水管31には、給水弁32が取り付けられている。給水弁32は、給水管31を開閉可能な構成であればよく、仕切弁であってもよいし、ボール弁であってもよいし、他の形式の弁であってもよい。また、給水弁32は、作業員によって手動操作される手動弁であってもよいし、制御部30からの制御信号を与えられることで開閉動作する自動弁であってもよい。自動弁としては、電磁弁、電動モータまたは油圧によって開閉動作される弁等を例示できる。本実施形態では、給水弁32が制御部30の制御によって開閉動作する形態を例に説明する。
【0027】
過熱水蒸気生成器2は、水を過熱水蒸気に変化させる加熱動作を行う。本実施形態では、過熱水蒸気生成器2は、水またはこの水が加熱されることで生成された蒸気が通過する内部経路2aを有している。内部経路2aは、入口ポート2bから水を受け入れ、出口ポート2cから流体を送り出す。過熱水蒸気生成器2は、スイッチ(図示せず)をオンにされることで、内部経路2aの加熱動作を開始するように構成されている。過熱水蒸気生成器2は、給水弁32が開かれて水を内部経路2aに通された状態で、スイッチをオンにされる。これにより、過熱水蒸気生成器2においては、内蔵されている加熱源へ通電され、内部経路2aの加熱動作が開始される。
【0028】
過熱水蒸気生成器2は、スイッチオンにされてから一定時間は、加熱動作を開始してから間もないことにより、内部経路2aの温度を十分に上昇させることができない。このとき、内部経路2aを通過する水は、水のまま、または、設定温度よりも低い温度の蒸気となって、出口ポート2cから流体経路10に送り出される。本実施形態では、過熱水蒸気生成器2においては水を内部経路2aから排出するポートは出口ポート2cであり、内部経路2aに供給された流体は、出口ポート2cから流体経路10に送り出される。なお、過熱水蒸気生成器2の内部経路2aは、出口ポート2cに加えてドレン配管を含んでいてもよく、このドレン配管を通じて流体を排出可能に構成されていてもよい。過熱水蒸気生成器2は、過熱水蒸気は出口ポート2cから送り出し、過熱水蒸気以外の流体はドレン配管から排出するように構成されていてもよい。
【0029】
過熱水蒸気生成器2から送り出される過熱水蒸気の温度、すなわち、過熱水蒸気生成器2で設定されている過熱水蒸気温度は、少なくとも100℃以上、例えば150℃以上であり、例えば200℃以上であり、例えば300℃以上である。過熱水蒸気の上限温度は特に制限はなく、機器の性能による。
【0030】
熱処理炉3は、被処理物100を収容した状態で過熱水蒸気が導入されることにより、被処理物100を加熱する。熱処理炉3は、箱形形状に形成されており、図示しない扉を開いた状態で、被処理物100を出し入れされる。熱処理炉3は、被処理物100を収容し、且つ、扉を閉じられた状態で、流体経路10を介して過熱水蒸気生成器2から過熱水蒸気を供給される。熱処理炉3内に到達した過熱水蒸気は、熱処理炉3内の雰囲気および被処理物100を加熱する。熱処理炉3には、熱処理炉3内の雰囲気を加熱するヒータ(図示せず)が設けられていてもよいし、熱処理炉3内の雰囲気温度を測定する温度センサ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0031】
流体経路10は、過熱水蒸気生成器2からの過熱水蒸気を熱処理炉3に供給するための搬送路である。流体経路10は、例えば、配管を用いて形成されており、当該流体経路10内を流体が通過するように構成されている。流体経路10は、外気に直接曝される配管であってもよいし、断熱材が巻かれた配管であってもよい。流体経路10は、このように配管を用いて形成されていることから、過熱水蒸気生成器2から送り出された流体は、流体経路10に熱エネルギーを吸収され、過熱水蒸気生成器2から遠ざかるに従い温度が下がる傾向にある。
【0032】
流体経路10は、過熱水蒸気生成器2の内部経路2aの温度が十分に上昇しておらず流体経路10内の流体温度が所定の第1設定温度Th1以下であるときには、流体経路10内の流体を熱処理装置1の外部に排出するように構成されている。すなわち、熱処理炉3に第1設定温度Th1を超える過熱水蒸気を供給できないときには、流体経路10は、流体経路10内の流体を熱処理炉3外に排出する。一方、流体経路10は、過熱水蒸気生成器2の内部経路2aの温度が十分に上昇し流体経路10内の流体温度が第1設定温度Th1を超えているときには、流体経路10内の流体を熱処理炉3に供給するように構成されている。すなわち、熱処理炉3に十分な温度の過熱水蒸気を供給できるときには、流体経路10は、流体経路10内の流体を熱処理炉3内に送り出す。
【0033】
第1設定温度Th1は、例えば、被処理物100を熱処理するのに適した過熱水蒸気の温度である。第1設定温度Th1は、少なくとも過熱水蒸気が存在可能な温度であり、過熱水蒸気に水(飽和水蒸気)が混じらないようにするためには、100℃以上であることが好ましく、例えば150℃以上に設定され、例えば200℃や300℃に設定されていてもよい。
【0034】
流体経路10は、前述したように、供給経路11と、排出経路12と、を有している。
【0035】
供給経路11は、過熱水蒸気生成器2と熱処理炉3とに接続され過熱水蒸気生成器2から過熱水蒸気を熱処理炉3へ供給するために設けられている。供給経路11の上流端11aは、過熱水蒸気生成器2の出口ポート2cに接続されており、この上流端11aから流体が導入される。供給経路11の中間部の形状は特に限定されない。供給経路11の中間部は、例えば、水平に配置されていてもよいし、過熱水蒸気生成器2から遠ざかるに従い(熱処理炉3に近づくに従い)上方に向かうように傾斜する部分を含んでいてもよいし、過熱水蒸気生成器2から遠ざかるに従い(熱処理炉3に近づくに従い)下方に向かうように傾斜する部分を含んでいてもよい。
【0036】
供給経路11の下流端11bは、熱処理炉3の導入口3a(過熱水蒸気導入ポート)に接続されている。導入口3aは、熱処理炉3の外壁等に設置された筒状部分である。供給経路11を通過した過熱水蒸気は、導入口3aを通して、熱処理炉3内における被処理物100が配置される空間に進入する。導入口3aは、熱処理炉3の側壁に設置されていてもよいし、上壁に設置されていてもよいし、底壁に設置されてもよい。
【0037】
供給経路11の途中には、分岐部13が設けられている。
【0038】
分岐部13では、本実施形態では、流体経路10が2つに分かれている。すなわち、分岐部13において、流体を引き続き供給経路11に通す進路と流体を排出経路12に通す進路とに分かれている。
【0039】
供給経路11は、分岐部13を境にして上流部11cと下流部11dとに分けられている。すなわち、供給経路11は、上流部11cと、分岐部13と、下流部11dと、を有している。
【0040】
上流部11cは、供給経路11における流体の移動方向、すなわち、過熱水蒸気生成器2から熱処理炉3に向かう移動方向F1の上流側に配置された部分であり、分岐部13からみた上流部である。上流部11cの一端(上流端)は、供給経路11の上流端11aである。上流部11cの他端(下流端)は、分岐部13である。
【0041】
下流部11dは、移動方向F1の下流側に配置された部分であり、分岐部13からみた下流部である。下流部11dの一端(上流端)は、分岐部13である。下流部11dの他端(下流端)は、供給経路11の下流端11bである。本実施形態では、下流部11dの経路長L2(移動方向F1に沿った流体の移動距離)は、上流部11cの経路長L1よりも短く設定されている。経路長L1は、移動方向F1に沿った上流端11aから分岐部13までの距離であり、経路長L2は、分岐部13から下流端11bまでの距離である。上流部11cの経路長L1の具体的な値は、特に限定されない。下流部11dの経路長L2の具体的な値は、特に限定されないが、この経路長L2を短くすることで、下流部11dを通過するときの過熱水蒸気の温度低下量(過熱水蒸気から下流部11dに放出される熱量)を可及的に小さくできる。
【0042】
分岐部13には、排出経路12が接続されている。
【0043】
排出経路12は、流体経路10の一部であって供給経路11から分岐している。排出経路12は、流体、特に、水、飽和水蒸気、または、第1設定温度Th1未満の過熱水蒸気を、排水溝33等の熱処理装置1の外部へ排出するために設けられている。排出経路12は、供給経路11と同様に、配管を用いて形成されている。排出経路12の一端は、分岐部13に接続されており、他端は排水溝33等に開口している。排出経路12の経路長は限定されない。排出経路12の配置は限定されないが、分岐部13から遠ざかるに従い下方に進むように傾斜していることが好ましい。
【0044】
導入弁20は、供給経路11において分岐部13からみた上流部11cから下流部11dへ流体を供給する供給状態と、上流部11cから下流部11dへの流体の供給が規制され且つ上流部11cから排出経路12を通した流体の排出が許容された排出状態と、を切り替える弁である。
【0045】
導入弁20は、本実施形態では、下流部11dを開閉する第1弁21と、排出経路12を開閉する第2弁22と、を有している。
【0046】
第1弁21は、本実施形態では、下流部11dに設けられている。第1弁21は、分岐部13から熱処理炉3(導入口3a)への流体の移動を規制可能な弁である。第1弁21は、下流部11dにおいて、分岐部13に近い上流側に設けられていてもよいし、導入口3aに近い下流側に設けられていてもよい。第1弁21の出口21bから導入口3aまでの経路長L3の値は、特に限定されないが、この経路長L3を短くすることで、下流部11bを短くすることが可能となり、下流部11dを通過するときの過熱水蒸気の温度低下量(過熱水蒸気から下流部11dに放出される熱量)を可及的に小さくできる。
【0047】
第1弁21(導入弁20)は、下流部11dを開閉可能な構成であればよく、仕切弁であってもよいし、ボール弁であってもよいし、他の形式の弁であってもよい。第1弁21は、制御部30からの制御信号を与えられることで開閉動作する自動弁であってもよいし、温度センサ5からの信号を与えられることに基づいて開閉動作する自動弁であってもよい。自動弁としては、電磁弁、電動モータまたは油圧によって開閉動作される弁等を例示できる。本実施形態では、第1弁21が制御部30の制御によって開閉動作する形態を例に説明する。
【0048】
第2弁22は、本実施形態では、排出経路12に設けられている。第2弁22は、分岐部13から排出経路12(排水溝33)への流体の移動を規制可能な弁である。第2弁22は、排出経路12において、分岐部13に近い上流側に設けられていてもよいし、排水溝33に近い下流側に設けられていてもよい。
【0049】
第2弁22は、排出経路12を開閉可能な構成であればよく、仕切弁であってもよいし、ボール弁であってもよいし、他の形式の弁であってもよい。第2弁22は、制御部30からの制御信号を与えられることで開閉動作する自動弁であってもよいし、温度センサ5からの信号を与えられることに基づいて開閉動作する自動弁であってもよい。自動弁としては、電磁弁、電動モータまたは油圧によって開閉動作される弁等を例示できる。本実施形態では、第2弁22が制御部30の制御によって開閉動作する形態を例に説明する。
【0050】
温度センサ5は、流体経路10内の流体温度を測定する。本実施形態では、温度センサ5は、供給状態において上流部11cから下流部11dを通して導入口3aに流れる流体の温度を測定し、排出状態において上流部11cから排出経路12に流れる流体の温度を測定する。流体の温度とは、空気、ガス、水、飽和水蒸気、および、過熱水蒸気の少なくとも1つを含む流体の温度である。温度センサ5は、流体経路10内の温度の測定結果である検出温度T1を特定する信号を出力するように構成されている。温度センサ5として、熱電対を例示できる。温度センサ5は、流体経路10内の流体と接触する接触式の温度センサであってもよいし、非接触式の温度センサであってもよい。非接触式の温度センサとして、赤外線温度センサを例示できる。なお、温度センサ5の温度測定原理は限定されず、検出温度T1を示す信号を出力可能であればよい。
【0051】
温度センサ5は、導入弁20の近傍における流体経路10内の温度を測定するように構成されている。この場合の「導入弁20の近傍」の一例として、温度センサ5から導入弁20の第1弁21の入口21aまでの距離が、下流部11dの経路長L2(分岐部13から導入口3aまでの距離)よりも短い距離となるように温度センサ5が配置されていることを挙げることができる。なお、「導入弁20の近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と分岐部13との距離が分岐部13から導入弁20(第1弁21)までの距離以下であることを示していてもよいし、移動方向F1における温度センサ5と導入弁20(第1弁21)との距離が導入弁20(第1弁21)から導入口3aまでの距離(経路長L3)以下であることを示していてもよい。
【0052】
また、「導入弁20の近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と導入弁20の第1弁21との距離が1000mm以下であることを示していてもよいし、700mm以下であることを示していてもよいし、500mm以下であることを示していてもよいし、300mm以下であることを示していてもよいし、100mm以下であることを示していてもよい。上流部11cにおいて温度センサ5が流体を温度測定する位置は、導入弁20の第1弁21に近いほど、好ましい。
【0053】
温度センサ5は、本実施形態では、上流部11cにおける分岐部13の近傍に配置されている。温度センサ5を分岐部13の近傍に配置することで、分岐部13の近傍の流体温度、すなわち、流体を排出経路12と熱処理炉3に分配する箇所の近傍での流体温度を温度センサ5が検出温度T1として測定できる。さらには、温度センサ5は、熱処理炉3の入口である導入口3aの近傍における流体温度を検出温度T1として測定できる。
【0054】
温度センサ5は、分岐部13の近傍における流体温度を検出温度T1として測定する、ともいえる。この場合の「分岐部13の近傍」の一例として、温度センサ5と分岐部13との距離が、下流部11dの経路長L2(分岐部13から導入口3aまでの距離)よりも短い距離となるように温度センサ5が配置されていることを挙げることができる。なお、「分岐部13の近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と分岐部13との距離が分岐部13から導入弁20の第1弁21までの距離以下であることを示していてもよいし、導入弁20の第1弁21から導入口3aまでの経路長L3以下であることを示していてもよい。
【0055】
また、「分岐部13の近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と分岐部13との距離が1000mm以下であることを示していてもよいし、700mm以下であることを示していてもよいし、500mm以下であることを示していてもよいし、300mm以下であることを示していてもよいし、100mm以下であることを示していてもよい。上流部11cにおいて温度センサ5が流体を温度測定する位置が分岐部13に近いほど、好ましい。
【0056】
温度センサ5は、供給経路11のうち上流部11cにおける流体温度を測定することで、過熱水蒸気生成器2から送り出される流体の温度を常時計測可能である。なお、温度センサ5は、下流部11dにおける流体の温度を測定してもよい。
【0057】
制御部30は、所定の入力信号に基づいて、所定の出力信号を出力する構成を有している。制御部30は、導入弁20を含む、熱処理装置1の種々の機器を制御するために設けられている。制御部30は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)等を用いて形成されている。なお、制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むコンピュータを用いて形成されていてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)を含む構成であってもよいし、シーケンス回路等を用いて形成されていてもよい。
【0058】
制御部30は、本実施形態では、過熱水蒸気生成器2と、温度センサ5と、導入弁20(第1弁21および第2弁22)と、給水弁32と、に電気的に接続されている。
【0059】
制御部30は、給水弁32の開閉動作を制御する。制御部30は、過熱水蒸気生成器2へ水を供給する場合に給水弁32を開く。制御部30は、過熱水蒸気生成器2への水の供給を停止する場合に給水弁32を閉じる。
【0060】
制御部30は、過熱水蒸気生成器2による水の加熱動作を制御する。制御部30は、過熱水蒸気生成器2による過熱水蒸気の生成動作(流体の加熱動作)を行わせるときは、過熱水蒸気生成器2のスイッチをオンにする。制御部30は、過熱水蒸気生成器2による過熱水蒸気の生成動作(流体の加熱動作)を停止するときは、過熱水蒸気生成器2のスイッチをオフにする。
【0061】
制御部30は、温度センサ5から出力された、検出温度T1を特定する信号を受信する。制御部30は、温度センサ5の検出温度T1に基づいて、導入弁20の開閉動作を制御する。
【0062】
制御部30は、導入弁20の第1弁21および第2弁22に接続されており、第1弁21の開閉動作と第2弁22の開閉動作とを制御する。制御部30は、温度センサ5の検出温度T1が所定の第1設定温度Th1以下の場合には排出状態となるように導入弁20を制御する。具体的には、制御部30は、第1弁21を閉じるとともに第2弁22を開くことで、排出状態にする。一方、制御部30は、温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度Th1を超えている場合には供給状態となるように導入弁20を制御する。具体的には、制御部30は、第1弁21を開くとともに第2弁22を閉じることで、供給状態にする。
【0063】
なお、本実施形態では、温度センサ5からの信号を受けた制御部30が導入弁20の第1弁21の開閉動作と第2弁22の開閉動作とを制御する形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。例えば、温度センサ5からの信号を導入弁20の第1弁21と第2弁22とに出力してもよい。この場合、導入弁20(第1弁21および第2弁22)は、検出温度T1に応じて開閉動作する演算回路、または、シーケンス回路等を有している。そして、導入弁20(第1弁21および第2弁22)においては、検出温度T1が第1設定温度Th1以下のときは、第1弁21が閉じられるとともに第2弁22が開かれて排出状態となる。一方、検出温度T1が第1設定温度Th1を超えているときは、第1弁21が開かれるとともに第2弁22が閉じられて供給状態となる。
【0064】
以上が、熱処理装置1の概略構成である。次に、熱処理装置1における熱処理開始動作の一例を説明する。図3は、熱処理装置1における熱処理開始動作の一例を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、フローチャートを参照して説明するときは、フローチャート以外の図も適宜参照しながら説明する。
【0065】
図1図3を参照して、熱処理炉3で被処理物100の加熱処理を開始する際には、被処理物100が熱処理炉3内に配置された状態で、まず、排出状態とされる(ステップS11)。具体的には、制御部30は、導入弁20の第1弁21を閉じるとともに、第2弁22を開く。
【0066】
次に、給水弁32が開かれることで、過熱水蒸気生成器2への給水が開示される(ステップS12)。このとき、制御部30は、給水弁32を開くことで、水を過熱水蒸気生成器2の内部経路2aへ導入する。
【0067】
次に、過熱水蒸気生成器2における過熱水蒸気生成動作が開始される(ステップS13)。このとき、制御部30は、過熱水蒸気生成器2のスイッチをオンにすることで、加熱源による加熱を開始させ、水から過熱水蒸気を生成する。なお、過熱水蒸気生成器2のスイッチオン直後(加熱動作開始直後)には、過熱水蒸気生成器2の内部経路2aの温度は十分に上がっておらず、過熱水蒸気生成器2から上流部11cへは、しばらくの間、水または飽和水蒸気が送り出される。
【0068】
次に、制御部30は、温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度Th1以下であるか否かが判定される(ステップS14)。検出温度T1が第1設定温度Th1以下である場合(ステップS14でYES)、制御部30は、排出状態を維持する(ステップS15)。これにより、上流部11cを流れる流体は、分岐部13において排出経路12から排水溝33へ排出される。
【0069】
一方、検出温度T1が第1設定温度Th1を超えている場合(ステップS14でNO)、排出状態から供給状態に切り替わる(ステップS16)。このとき、制御部30は、第1弁21を開くとともに第2弁22を閉じる。これにより、上流部11cを流れる過熱水蒸気は、分岐部13から下流部11dに流れ、導入口3aを通して熱処理炉3内に送り出される。これにより、熱処理炉3内に過熱水蒸気が供給され、過熱水蒸気を用いた被処理物100の加熱処理が開始される。
【0070】
以上が、熱処理開始動作の一例である。
【0071】
次に、熱処理開始動作後の熱処理最中動作の一例について説明する。図4は、熱処理装置1における熱処理最中動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0072】
図1図2(A)、図2(B)、および、図4を参照して、熱処理炉3での被処理物100の加熱処理最中には、制御部30は、検出温度T1が第1設定温度Th1以下であるか否かを判定する(ステップS21)。検出温度T1が第1設定温度Th1を超えている場合(ステップS21でNO)、制御部30は、熱処理動作完了すべきか否かを判定する(ステップS22)。制御部30は、熱処理動作完了時の条件を予め与えられており、この完了条件を満たしてない場合には(ステップS22でNO)、ステップS21の処理を繰り返す。
【0073】
一方、ステップS22において、熱処理動作完了条件が満たされていると制御部30が判定した場合(ステップS22でYES)、制御部30は、熱処理最中動作を終了する。
【0074】
一方、ステップS21において、過熱水蒸気生成器2が故障した、または、上流部11cに損傷が生じて外気が上流部11c内に混入した等の理由によって、検出温度T1が第1設定温度Th1以下となっことを制御部30が検出した場合(ステップS21でYES)、制御部30は、供給状態から排出状態に移行する(ステップS23)。具体的には、制御部30は、導入弁20の第1弁21を閉じるとともに第2弁22を開く。これにより、過熱水蒸気生成器2からの流体は、排出経路12へ排出される。次に、制御部30は、図示しないスピーカまたはモニタに、異常が生じたことを示すアラーム報知を行わせ(ステップS24)、熱処理最中動作を完了する。
【0075】
以上が、熱処理最中動作の一例である。
【0076】
次に、熱処理終了動作の一例について説明する。図5は、熱処理装置1における熱処理終了動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0077】
図1図2(A)、図2(B)、および、図5を参照して、この停止動作では、例えば、まず、制御部30によって過熱水蒸気生成器2のスイッチがオフにされる(ステップS31)。次いで、供給状態から排出状態に切り替えられる(ステップS32)。具体的には、制御部30は、第1弁21を閉じるとともに第2弁22を開き、上流部11cからの流体を排出経路12に流れるようにする。なお、図4に示す熱処理最中動作において、既に排出状態に移行している場合、このステップS32は省略されてもよい。
【0078】
次に、制御部30は、温度センサ5の検出温度T1が停止可能温度Th0以下になったか否かを判定する(ステップS33)。停止可能温度Th0は、過熱水蒸気生成器2の内部経路2aが十分に冷えた温度となったときの温度であり、第1設定温度Th1よりは低い。停止可能温度Th0は、例えば、数十℃である。制御部30は、検出温度T1が停止可能温度Th0を超えている場合は待機し(ステップS33でNO)、検出温度T1が停止可能温度Th0以下になったときに(ステップS33でYES)、給水弁32を閉じる(ステップS34)。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によると、供給経路11において、下流部11dの経路長L2は、上流部11cの経路長L1よりも短く設定されている。この短い下流部11dを開閉するように導入弁20が配置されるので、導入弁20は、熱処理炉3の近傍に配置される。さらに、温度センサ5は導入弁20の近傍における流体温度を測定し、その測定結果(検出温度T1)に応じて、導入弁20の排出状態と供給状態とが切り替えられる。これにより、例えば、供給経路11における炉の近傍に到達した過熱水蒸気が第1設定温度Th1を超えている場合は過熱水蒸気が下流部11dから熱処理炉3に供給される。一方で供給経路11における熱処理炉3の近傍に到達した流体の温度が第1設定温度Th1以下である場合は、この流体は熱処理炉3には供給されずに排出経路12に排出される。例えば、過熱水蒸気生成器2の動作開始初期において過熱水蒸気生成器2から水が送り出された場合、または、過熱水蒸気生成器2から供給経路11を通過することで過熱水蒸気の熱エネルギーが供給経路11の壁面に吸収されること等によって過熱水蒸気の温度が低下して過熱水蒸気から水が生じた場合、湿気(結露)の原因となる流体は、排出経路12から排出される。その結果、熱処理炉3において湿気の原因となる、温度の低い流体が熱処理炉3内に供給されることをより確実に抑制できる。よって、過熱水蒸気生成器2の起動時において湿気の原因となる低温の流体が熱処理炉3に供給されることを抑制できるとともに、過熱水蒸気生成器2の動作異常等に起因して低温の流体が熱処理炉3に供給されることを抑制できる。
【0080】
また、本実施形態によると、温度センサ5は、分岐部13の近傍における流体温度を検出温度T1として測定する。この構成によると、分岐部13には、過熱水蒸気生成器2の動作中には流体の温度にかかわらず過熱水蒸気生成器2からの流体が通過するので、温度センサ5は、流体温度をより正確に測定できる。しかも、温度センサ5は、流体経路10において排出状態および供給状態の何れにおいても流体が流動する箇所で且つ過熱水蒸気生成器2からできるだけ遠い箇所の流体温度を測定できる。よって、制御部30は、導入弁20を供給状態とすべきか否かの判断を、熱処理炉3により近い箇所での流体温度に基づいて行うことができる。
【0081】
次に、実施形態の変形例、および、他の実施形態を説明する。なお、以下では、上述の実施形態と異なる点を主に説明し、上述の実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を繰り返すことを省略する。
【0082】
<第1実施形態の変形例>
図6は、第1実施形態の変形例を示す図である。図6に示す変形例が第1実施形態と異なっている点は、導入弁20に代えて、1つの三方弁で形成された導入弁20Aが用いられている点にある。
【0083】
導入弁20Aは、本変形例では、分岐部13に設けられている。すなわち、導入弁20Aの位置と分岐部13の位置とが同じに設定されている。導入弁20Aが分岐部13を形成しているともいえる。導入弁20Aの出口20Abから導入口3aまでの経路長L3は、分岐部13から導入口3aまでの経路長(分岐部13から下流端11bまでの経路長L2)と実質的に同一であるといえる。
【0084】
温度センサ5は、導入弁20Aの近傍における流体経路10内の温度を測定するように構成されている。この場合の「導入弁20Aの近傍」の一例として、移動方向F1における温度センサ5と導入弁20A(分岐部13)との距離が、導入弁20A(分岐部13)から導入口3aまでの距離(経路長L2,L3)よりも短い距離となるように温度センサ5が配置されていることを挙げることができる。
【0085】
また、「導入弁20Aの近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と導入弁20Aとの距離が1000mm以下であることを示していてもよいし、700mm以下であることを示していてもよいし、500mm以下であることを示していてもよいし、300mm以下であることを示していてもよいし、100mm以下であることを示していてもよい。上流部11cにおいて温度センサ5が流体を温度測定する位置は、導入弁20Aに近いほど、好ましい。
【0086】
上述の構成により、温度センサ5は、第1実施形態の変形例では、上流部11cにおける分岐部13の近傍に配置されている。温度センサ5を分岐部13の近傍に配置することで、分岐部13の近傍の流体温度、すなわち、流体を排出経路12と熱処理炉3に分配する箇所の近傍での流体温度を温度センサ5が検出でき、さらには、熱処理炉3の入口である導入口3aの近傍における流体温度を温度センサ5が検出できる。
【0087】
導入弁20Aは、供給状態と排出状態とを切り替える弁であればよい。導入弁20Aは、制御部30からの制御信号を与えられることで開閉動作する自動弁であってもよいし、温度センサ5からの信号を与えられることに基づいて開閉動作する自動弁であってもよい。本変形例では、導入弁20Aが制御部30の制御によって開閉動作する形態を例に説明する。
【0088】
制御部30は、導入弁20Aに接続されており、導入弁20Aの動作を制御する。制御部30は、温度センサ5の検出温度T1が所定の第1設定温度Th1以下の場合には排出状態となるように導入弁20を制御する。具体的には、制御部30は、導入弁20Aにおいて上流部11cに接続されたポート20Aaと排出経路12に接続されたポート20Acとの間で流体が通過するように、導入弁20の弁体(図示せず)が位置するような制御を行うことで、排出状態にする。一方、制御部30は、温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度Th1を超えている場合には供給状態となるように導入弁20を制御する。具体的には、制御部30は、導入弁20Aにおいて上流部11cに接続されたポート20Aaと下流部11dに接続されたポート20Abとの間で流体が通過するように、導入弁20の弁体(図示せず)が位置するような制御を行うことで、供給状態にする。
【0089】
なお、本変形例では、温度センサ5から信号を受けた制御部30が導入弁20Aの動作を制御する形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。例えば、温度センサ5からの信号を導入弁20Aに出力してもよい。この場合、導入弁20Aは、検出温度T1に応じて開閉動作する演算回路、または、シーケンス回路等を有している。そして、導入弁20Aにおいては、検出温度T1が第1設定温度Th1以下のときは、排出状態に対応する弁体配置とされる。一方、検出温度T1が第1設定温度Th1を超えているときは、導入弁20Aは、供給状態に対応する弁体配置とされる。
【0090】
この変形例における熱処理開始動作、熱処理最中動作、および、熱処理終了動作は、実施形態における熱処理開始動作、熱処理最中動作、および、熱処理終了動作と同様であるので、説明を省略する。
【0091】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る熱処理装置1の構成を示す模式図である。第2実施形態において、第1実施形態との違いは、分岐部13、および、導入弁20の第1弁21が、熱処理炉3における下流部11dからの過熱水蒸気の導入口3aで且つ下流部11dの下流端(供給経路11の下流端11b)に配置されている点にある。
【0092】
第2実施形態では、第1弁21の出口21bが導入口3aに直接接続されており、第1弁21の出口21bから導入口3aまでの経路長L3は、ゼロである。
【0093】
温度センサ5は、導入弁20の近傍における流体経路10内の温度を測定するように構成されている。この場合の「導入弁20の近傍」は、例えば、移動方向F1における温度センサ5と分岐部13との距離が分岐部13から導入弁20の第1弁21までの距離(経路長L2)以下であることを示していてもよいし、分岐部13から導入口3aまでの距離以下であることを示していてもよい。また、「導入弁20の近傍」は、温度センサ5が下流部11dに設置されることで、温度センサ5と第1弁21との距離が分岐部13と第1弁21との距離未満であることを示していてもよい。
【0094】
また、「導入弁20の近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と導入弁20の第1弁21との距離が1000mm以下であることを示していてもよいし、700mm以下であることを示していてもよいし、500mm以下であることを示していてもよいし、300mm以下であることを示していてもよいし、100mm以下であることを示していてもよい。
【0095】
温度センサ5は、本第2実施形態では、分岐部13の近傍に配置されている。なお、「分岐部13の近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と分岐部13との距離が分岐部13から導入弁20の第1弁21までの距離以下であることを示していてもよいし、分岐部13から導入口3aまでの距離以下であることを示していてもよい。
【0096】
また、「分岐部13の近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と分岐部13との距離が1000mm以下であることを示していてもよいし、700mm以下であることを示していてもよいし、500mm以下であることを示していてもよいし、300mm以下であることを示していてもよいし、100mm以下であることを示していてもよい。温度センサ5が流体を温度測定する位置が分岐部13に近いほど、好ましい。
【0097】
なお、温度センサ5は、供給経路11の下流端部11e(下流部11dと第1弁21との接続部)における流体温度を測定してもよい。この場合、温度センサ5は、熱処理炉3における過熱水蒸気の導入口3a付近での流体温度を測定する。そして、この導入口3a付近における流体温度が十分に高いときのみ、供給経路11から過熱水蒸気が熱処理炉3に導入される。これにより、熱処理炉3に湿気の原因となる低温の流体が供給されてしまうことをより確実に抑制できる。下流端部11eは、例えば、供給経路11において下流端11bから数十mm程度の範囲をいう。
【0098】
また、第2実施形態では、導入弁20の第1弁21は、熱処理炉3における下流部11dからの過熱水蒸気の導入口3aで且つ下流部11dの下流端11bに配置されている。この構成によると、供給経路11における導入弁20の直後に熱処理炉3が配置されている。すなわち、導入弁20は、熱処理炉3の極めて近い箇所に配置される。さらに、温度センサ5は導入弁20の近傍における流体温度を測定し、その測定結果に応じて、排出状態と供給状態とが切り替えられる。これにより、温度センサ5で検出された流体温度と実質的に同一の高温の過熱水蒸気を熱処理炉3に導入することができる。よって、熱処理炉3に湿気の原因となる低温の流体が導入されることをより確実に抑制できる。特に、温度センサ5が供給経路11の下流端部11eにおける流体温度を測定する場合、導入弁20および温度センサ5を熱処理炉の極めて近い箇所に配置できる。よって、温度センサ5で検出された流体温度と実質的に同一の高温の過熱水蒸気を熱処理炉3に導入することができる。
【0099】
<第2実施形態の変形例>
図8は、第2実施形態の変形例を示す図である。図8に示す変形例が上述の第2実施形態と異なっている点は、導入弁20に代えて、1つの三方弁で形成された導入弁20Aが用いられている点にある。第2実施形態の変形例は、第1実施形態の変形例で示す構成において、導入弁20Aおよび分岐部13を熱処理炉3の導入口3aに配置した、ともいえる。よって、第2実施形態の変形例においては、第1実施形態の変形例での構成と重複する構成と、第2実施形態での構成と重複する構成と、については説明を一部省略する。
【0100】
導入弁20Aのポート20Aaは、下流端11bに接続され、ポート20Abは導入口3aに接続され、ポート20Acは排出経路12に接続されている。
【0101】
温度センサ5は、導入弁20Aの近傍における流体経路10内の温度を測定するように構成されている。この場合の「導入弁20Aの近傍」は、移動方向F1における温度センサ5と導入弁20Aとの距離が1000mm以下であることを示していてもよいし、700mm以下であることを示していてもよいし、500mm以下であることを示していてもよいし、300mm以下であることを示していてもよいし、100mm以下であることを示していてもよい。上流部11cにおいて温度センサ5が流体を温度測定する位置が導入弁20Aに近いほど、好ましい。
【0102】
上述の構成により、温度センサ5は、第2実施形態の変形例では、上流部11cにおける分岐部13の近傍に配置されている。温度センサ5を分岐部13の近傍に配置することで、分岐部13の近傍の流体温度、すなわち、流体を排出経路12と熱処理炉3に分配する箇所の近傍での流体温度を測定でき、さらには、熱処理炉3の入口である導入口3aの近傍における流体温度を検出温度T1として測定できる。
【0103】
なお、温度センサ5は、供給経路11の下流端部11e(下流部11dと第1弁21との接続部)における流体温度を測定してもよい。この場合、温度センサ5は、熱処理炉3における過熱水蒸気の導入口3a付近での流体温度を測定する。そして、この導入口3a付近における流体温度が十分に高いときのみ、供給経路11から過熱水蒸気が熱処理炉3に導入される。これにより、熱処理炉3に湿気の原因となる低温の流体が供給されてしまうことをより確実に抑制できる。下流端部11eは、例えば、供給経路11において下流端11bから数十mm程度の範囲をいう。
【0104】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る熱処理装置1の構成を示す模式図である。第3実施形態において、第1実施形態との違いは、供給経路11における下流部11d(導入弁20の第1弁21と導入口3aとの間)に第2温度センサ6が配置されている点にある。
【0105】
温度センサ5は、上述したように、供給経路11における導入弁20の第1弁21の上流側(上流部11c)の流体温度を測定する。一方、第2温度センサ6は、供給経路11における導入弁20の第1弁21に対して下流側(下流部11d)の流体温度を測定する。
【0106】
第2温度センサ6は、第3実施形態では、供給状態において上流部11cから下流部11dを通して導入口3aに流れる流体温度を測定し、排出状態においては流体の流れを止められた下流部11d内の流体温度を測定する。第2温度センサ6は、下流部11d内の温度の測定結果である第2検出温度T2を特定する信号を出力するように構成されている。第2温度センサ6として、熱電対を例示できる。第2温度センサ6は、第1温度センサ5と同様に、流体経路10内の流体と接触する接触式の温度センサであってもよいし、非接触式の温度センサであってもよい。
【0107】
下流部11dにおいて第2温度センサ6が流体温度を測定する位置は、限定されない。第2温度センサ6が流体温度を測定する位置は、導入弁20の第1弁21の出口21b(下流部11bの上流端)であってもよいし、第1弁21と導入口3aとの中央位置であってもよいし、導入口3a(下流部11dの下流端、下流端11b)であってもよい。第2温度センサ6は、熱処理炉3内の温度の影響を受けない位置において下流部11d内の流体温度を測定できるようにすることが好ましい。
【0108】
第2温度センサ6は、排出状態のときは、過熱水蒸気生成器2から送り出された流体をリアルタイムでは温度測定せず、過熱水蒸気生成器2から送り出されて下流部11dに残存している流体の温度等の下流部11d内の雰囲気温度を測定する。一方、第2温度センサ6は、供給状態のときは、過熱水蒸気生成器2から送り出された流体をリアルタイムで温度測定する。
【0109】
第2温度センサ6は、制御部30と電気的に接続されている。制御部30は、温度センサ5から出力された信号(検出温度T1を特定する信号)に加えて、第2温度センサ6から出力された信号(第2検出温度T2を特定する信号)を受信する。制御部30は、温度センサ5および第2温度センサ6が測定した流体温度に基づいて、導入弁20の開閉動作を制御する。
【0110】
制御部30は、第1実施形態で説明したのと同様に、温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度Th1以下の場合には排出状態となるように導入弁20を制御し、温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度Th1を超えている場合には供給状態となるように導入弁20を制御する。さらに、第3実施形態では、制御部30は、第2温度センサの検出温度(第2検出温度T2)が所定の第2設定温度Th2以下の場合には、排出状態となるように導入弁20を制御可能である。
【0111】
上記の第2設定温度Th2は、少なくとも過熱水蒸気が存在可能な温度であり、過熱水蒸気に水または飽和水蒸気が混じらないようにするためには、100℃よりも高い温度であることが好ましく、例えば150℃以上に設定される。なお、第2設定温度Th2は、第1設定温度Th1より低くてもよいし、高くてもよいし、第1設定温度Th1と同じでもよい。供給状態において検出温度T1が第1設定温度Th1より高く、且つ、第2検出温度T2が第2設定温度Th2以下である場合とは、例えば、下流部11dが損傷して外気が下流部11dに混入することで下流部11d内の流体温度が低下している場合である。
【0112】
なお、第3実施形態では、温度センサ5および第2温度センサ6の検出温度T1,T2を特定する信号を受けた制御部30が導入弁20の第1弁21の開閉動作と第2弁22の開閉動作とを制御する形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。例えば、温度センサ5,6の検出温度T1,T2を特定する信号を導入弁20の第1弁21と第2弁22とに出力してもよい。この場合、導入弁20(第1弁21および第2弁22)は、検出温度T1,T2に応じて開閉動作する演算回路、または、シーケンス回路等を有している。そして、導入弁20(第1弁21および第2弁22)においては、検出温度T1,T2に基づいて、排出状態または供給状態となる。
【0113】
以上が、第3実施形態の熱処理装置1の概略構成である。次に、第3実施形態の熱処理装置1における熱処理開始動作、熱処理最中動作、および、熱処理終了動作の一例を説明する。
【0114】
第3実施形態の熱処理装置1における熱処理開始動作の一例は、図3に示す第1実施形態において説明した熱処理開始動作と同じである。なお、第3実施形態の熱処理装置1における熱処理開始動作の際には、第2温度センサ6の温度測定結果(第2検出温度T2)は、考慮されず、第2検出温度T2にかかわらず、熱処理開始動作が行われる。
【0115】
図10は、第3実施形態の熱処理装置1における熱処理最中動作の一例を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、図4に示す第1実施形態の熱処理装置1における熱処理最中動作のフローチャートに、ステップS25Bが追加された内容に相当する。
【0116】
具体的には、図9および図10を参照して、熱処理炉3での被処理物100の加熱処理最中には、制御部30は、第1温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度Th1以下であるか否かを判定する(ステップS21B)。検出温度T1が第1設定温度Th1を超えている場合(ステップS21BでNO)、制御部30は、第2温度センサ6の第2検出温度T2が第2設定温度Th2以下であるか否かを判定する(ステップS25B)。第2検出温度T2が第2設定温度Th2を超えている場合(ステップS25BでNO)、制御部30は、熱処理動作を完了すべきか否かを判定する(ステップS22B)。制御部30は、熱処理動作完了時の条件を予め与えられており、この完了条件を満たしてない場合には(ステップS22BでNO)、ステップS21Bの処理を繰り返す。
【0117】
一方、ステップS22Bにおいて、熱処理動作完了条件が満たされていると制御部30が判定した場合(ステップS22BでYES)、制御部30は、熱処理最中動作を完了する。
【0118】
一方、ステップS21Bにおいて、過熱水蒸気生成器2が故障した、または、上流部11cに損傷が生じて外気が上流部11c内に混入した等の理由によって、検出温度T1が第1設定温度Th1以下となったことを制御部30が検出した場合(ステップS21BでYES)、制御部30は、供給状態から排出状態に移行する(ステップS23B)。具体的には、制御部30は、導入弁20の第1弁21を閉じるとともに第2弁22を開く。これにより、過熱水蒸気生成器2からの流体は、排出経路12へ排出される。次に、制御部30は、図示しないスピーカまたはモニタに、異常が生じたことを示すアラーム報知を行わせ(ステップS24B)、熱処理最中動作を完了する。
【0119】
また、ステップS25Bにおいて、下流部11dに損傷が生じて外気が下流部11d内に混入した等の理由によって、第2検出温度T2が第2設定温度Th2以下となったことを制御部30が検出した場合(ステップS25BでYES)、制御部30は、上述したのと同様に、供給状態から排出状態に移行する(ステップS23B)。制御部30は、次いで異常報知を行う(ステップS24B)。
【0120】
以上が、熱処理最中動作の一例である。
【0121】
第3実施形態の熱処理装置1における熱処理終了動作の一例は、図5に示す第1実施形態において説明した熱処理終了動作と同じである。なお、第3実施形態の熱処理装置1における熱処理終了動作において、第2温度センサ6の温度測定結果(第2検出温度T2)は、考慮されない。
【0122】
なお、第3実施形態の熱処理開始動作、および、熱処理終了動作の少なくとも一方において、第2温度センサ6の第2検出温度T2を用いた制御が行われてもよい。この場合、熱処理開始動作のとき、熱処理動作開始時の第2設定温度Th2は、第1設定温度Th1以下とされる。これにより、検出温度T1>第1設定温度Th1のときに異常がなくても排出状態となってしまうことを防止できる。
【0123】
以上説明したように、第2温度センサ6の検出温度(第2検出温度T2)が第2設定温度Th2以下の場合には排出状態とすることができる。この構成によると、供給経路11において導入弁20より下流側において何らかの異常が発生したときにおいて、第2温度センサ6がこの異常を検出でき、その結果、導入弁20を排出状態にできる。よって、湿気の原因となる流体が熱処理炉3に導入されることをより確実に抑制できる。
【0124】
<第3実施形態の変形例>
図11は、第3実施形態の変形例を示す図である。図11に示す変形例が上述の第3実施形態と異なっている点は、導入弁20に代えて、1つの三方弁で形成された導入弁20Aが用いられている点にある。第3実施形態の変形例は、第1実施形態の変形例で示す構成において、第2温度センサ6を下流部11dに配置した、ともいえる。よって、第3実施形態の変形例においては、第3実施形態の変形例での構成と重複する構成と、第1実施形態の変形例での構成と重複する構成と、については説明を一部省略する。
【0125】
導入弁20Aのポート20Aaは上流部11cに接続され、ポート20Abは下流部11dに接続され、ポート20Acは排出経路12に接続されている。
【0126】
第2温度センサ6は、供給経路11における導入弁20Aに対して下流側の流体温度を測定する。
【0127】
下流部11dにおいて第2温度センサ6が流体温度を測定する位置は、限定されない。第2温度センサ6が流体温度を測定する位置は、導入弁20Aの出口20Ab(下流部11dの上流端)であってもよいし、導入弁20Aと導入口3aとの中央位置であってもよいし、導入口3a(下流部11dの下流端、下流端11b)であってもよい。
【0128】
第2温度センサ6は、第3実施形態では、制御部30と電気的に接続されている。制御部30は、温度センサ5から出力された信号(検出温度T1を特定する信号)に加えて、第2温度センサ6から出力された信号(第2検出温度T2を特定する信号)を受信する。制御部30は、温度センサ5および第2温度センサ6からの検出温度T1,T2に基づいて、導入弁20Aの開閉動作を制御する。
【0129】
制御部30は、第3実施形態で説明したのと同様に、温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度T1以下の場合には排出状態となるように導入弁20Aを制御し、温度センサ5の検出温度T1が第1設定温度Th1を超えている場合には供給状態となるように導入弁20Aを制御する。さらに、第3実施形態の変形例では、第3実施形態と同様に、制御部30は、第2温度センサの検出温度(第2検出温度T2)が第2設定温度Th2以下の場合には、排出状態となるように導入弁20Aを制御可能である。
【0130】
なお、第3実施形態の変形例では、温度センサ5,6の検出温度T1,T2を特定する信号を受けた制御部30が導入弁20Aの動作を制御する形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。例えば、温度センサ5および第2温度センサ6の検出温度T1,T2を特定する信号を導入弁20Aに出力してもよい。この場合、導入弁20Aは、検出温度T1,T2に応じて開閉動作する演算回路、または、シーケンス回路等を有している。そして、導入弁20Aにおいては、検出温度T1,T2に基づいて、排出状態または供給状態となる。
【0131】
以上が、第3実施形態の変形例における熱処理装置1の概略構成である。第3実施形態の変形例における熱処理開始動作、熱処理最中動作、および、熱処理終了動作は、第3実施形態における熱処理開始動作、熱処理最中動作、および、熱処理終了動作と同様であるので、説明を省略する。
【0132】
以上、本発明の実施形態および変形例について種々説明した。しかしながら、本発明の熱処理装置1は、少なくとも、過熱水蒸気生成器2と、熱処理炉3と、流体経路10と、導入弁20(20A)と、温度センサ5と、を有していればよい。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、熱処理装置として適用できる。
【符号の説明】
【0134】
1 熱処理装置
2 過熱水蒸気生成器
3 熱処理炉
5 温度センサ
6 第2温度センサ
10 流体経路
11 供給経路
11b 下流端
11c 上流部
11d 下流部
12 排出経路
13 分岐部
20,20A 導入弁
100 被処理物
L1 上流部の経路長
L2 下流部の経路長
Th1 第1設定温度(設定温度)
Th2 第2設定温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11