(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003769
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】引き抜き工具
(51)【国際特許分類】
B25B 27/08 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B25B27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105042
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康雅
【テーマコード(参考)】
3C031
【Fターム(参考)】
3C031DD23
(57)【要約】
【課題】簡単な操作でピンの引き抜きを行うことができる引き抜き工具を提供する。
【解決手段】引き抜き工具10は、ねじ棒12、把持部材11、支持部材14、ハンドル16、ラチェット機構付きのめねじ部材13、ハンドル17、及びスラスト軸受け15を備える。把持部材11は、ねじ棒12に設けられる。ハンドル16は、支持部材14に設けられる。めねじ部材13は、支持部材14に対向するように配置される。ハンドル17は、めねじ部材13からハンドル16に沿うように延びる。スラスト軸受け15は、支持部材14とめねじ部材13との間に配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の表面に形成された孔に差し込まれたピンを引き抜くための引き抜き工具であって、
ねじ棒と、
前記ねじ棒に設けられ、前記ピンを掴むための把持部材と、
貫通孔が形成され、前記把持部材によって前記ピンが掴まれた状態で前記表面に接触するための支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記ねじ棒に直交する軸に沿って延びる第1ハンドルと、
前記支持部材に対向するように配置され、前記ねじ棒に取り付けられたラチェット機構付きのめねじ部材と、
前記めねじ部材から前記第1ハンドルに沿うように延びる第2ハンドルと、
前記支持部材と前記めねじ部材との間に配置された緩衝部材と、
を備え、
前記ねじ棒は、前記把持部材と前記めねじ部材との間に配置された部分が前記貫通孔を貫通する引き抜き工具。
【請求項2】
前記緩衝部材は、スラスト軸受けである請求項1に記載の引き抜き工具。
【請求項3】
前記緩衝部材は、環状且つ樹脂製であり、前記ねじ棒が中空部を貫通するように前記支持部材又は前記めねじ部材に設けられた請求項1に記載の引き抜き工具。
【請求項4】
前記支持部材に設けられ、前記把持部材が前記支持部材に対して前記ねじ棒を中心に回転することを阻止するためのガイド部材を更に備えた請求項1から請求項3の何れか一項に記載の引き抜き工具。
【請求項5】
前記支持部材は、前記把持部材によって前記ピンが掴まれた状態で、前記ねじ棒の軸方向から見て前記ピンに対して対称な位置で前記表面に接触する請求項1から請求項4の何れか一項に記載の引き抜き工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピンを引き抜くための工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ピンを引き抜くための工具が記載されている。特許文献1に記載された工具は、エレベーターの保守員によって使用される。当該工具を使用する場合、保守員は、片手で支持枠を保持し、もう一方の手でスパナを操作する。スパナでナットを回転させることにより、ピンを引き抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された工具を使用する場合、保守員は、片手で支持枠を保持しながら、もう一方の手でスパナを操作しなければならない。ナットは支持枠に接触するため、スパナを回転させると支持枠にも回転する力が作用する。特にピンがレバーに固着している場合は、片手で支持枠を押さえつけながらスパナを操作しなければならず、操作し難いといった問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、簡単な操作でピンの引き抜きを行うことができる引き抜き工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る引き抜き工具は、部材の表面に形成された孔に差し込まれたピンを引き抜くための引き抜き工具である。当該引き抜き工具は、ねじ棒と、ねじ棒に設けられ、ピンを掴むための把持部材と、貫通孔が形成され、把持部材によってピンが掴まれた状態で表面に接触するための支持部材と、支持部材に設けられ、ねじ棒に直交する軸に沿って延びる第1ハンドルと、支持部材に対向するように配置され、ねじ棒に取り付けられたラチェット機構付きのめねじ部材と、めねじ部材から第1ハンドルに沿うように延びる第2ハンドルと、支持部材とめねじ部材との間に配置された緩衝部材と、を備える。ねじ棒は、把持部材とめねじ部材との間に配置された部分が貫通孔を貫通する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る引き抜き工具を用いることにより、簡単な操作でピンを引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エレベーターで使用されるブレーキ装置の例を示す図である。
【
図3】実施の形態1における引き抜き工具の例を示す正面図である。
【
図4】引き抜き工具を
図3に示すB方向から見た図である。
【
図5】引き抜き工具を用いたピンの引き抜き方法を説明するための図である。
【
図6】
図5に示す引き抜き工具をD方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、エレベーターで使用されるブレーキ装置の例を示す図である。先ず、
図1を参照して、エレベーターのブレーキ装置について説明する。
図1は、ブレーキ装置の一部を示す。ブレーキ装置は、基体1、ブレーキホイール2、ブレーキシュー3、アーム4、及びピン5を備える。
【0011】
ブレーキホイール2は、基体1に回転可能に支持される。ブレーキホイール2は、エレベーターの駆動綱車(図示せず)の回転に連動して回転する。ブレーキホイール2は、駆動綱車が停止すると停止する。エレベーターのかご(図示せず)は、駆動綱車に巻き掛けられたロープによって昇降路に吊り下げられる。
【0012】
ブレーキシュー3は、ブレーキホイール2に対向する。ブレーキシュー3は、駆動綱車が回転することを阻止するためにブレーキホイール2に押し付けられる。ブレーキシュー3は、アーム4に設けられる。アーム4は、その下端部がピン5を介して基体1に設けられる。即ち、アーム4がピン5を中心に変位することにより、ブレーキシュー3がブレーキホイール2に対して接近及び離隔する。
【0013】
図2は、
図1のA-A断面を示す図である。
図2に示すように、アーム4の下端部は、基体1の固定部材6と固定部材7との間に配置される。固定部材6に貫通孔6aが形成される。アーム4の下端部に貫通孔4aが形成される。固定部材7に取付穴7aが形成される。ピン5は、固定部材6の表面6b側から貫通孔6aに差し込まれることにより、貫通孔6a及び貫通孔4aを貫通し、先端部が取付穴7aに配置される。
【0014】
図2に示すように、ピン5に無端状の溝5aが形成される。溝5aに、抜け止め板8の先端部が嵌められる。抜け止め板8は、ボルト9によって固定部材6の表面6bに固定される。
【0015】
エレベーターの定期点検において、ピン5、並びに貫通孔6a、貫通孔4a、及び取付穴7aの清掃が行われる。エレベーターの保守員は、当該清掃を行うために、ピン5を基体1から引き抜かなければならない。以下に、ピン5を引き抜くための工具について詳しく説明する。
【0016】
図3は、実施の形態1における引き抜き工具10の例を示す正面図である。
図4は、引き抜き工具10を
図3に示すB方向から見た図である。
図4では、引き抜き工具10の一部を断面で示している。引き抜き工具10は、把持部材11、ねじ棒12、めねじ部材13、支持部材14、スラスト軸受け15、ハンドル16、ハンドル17、及びばね18を備える。
【0017】
把持部材11は、ピン5を掴むための機構を有する。
図3及び
図4に示す例では、把持部材11は、間隔が可変な一対の爪部20を有する。把持部材11は、ピン5の溝5aに爪部20の先端部をピン5の両側から配置することにより、ピン5を掴むことができる。把持部材11は、ねじ棒12の一方の端部に設けられる。
【0018】
めねじ部材13は、中心部分にめねじが形成されたラチェット機構付きの部材である。めねじ部材13は、ねじ棒12に形成されたおねじに嵌合する。めねじ部材13は、ねじ棒12に取り付けられる。
【0019】
図3及び
図4に示す例では、支持部材14は、全体としてコの字形状である。支持部材14は、基部21、接触部22、及び接触部23を備える。基部21、接触部22、及び接触部23は、それぞれ板状である。
【0020】
基部21は、ねじ棒12に対して直交するように配置される。基部21に、貫通孔21aが形成される。ねじ棒12は、貫通孔21aを貫通する。基部21は、把持部材11とめねじ部材13との間に配置される。即ち、ねじ棒12のうち、把持部材11とめねじ部材13との間に配置された部分が貫通孔21aを貫通する。基部21の一方の表面21bは、把持部材11に対向する。基部21のもう一方の表面21cは、めねじ部材13に対向する。
【0021】
接触部22及び接触部23は、ピン5を引き抜く際に固定部材6の表面6bに接触する部分である。接触部22は、基部21の表面21bから突出するように基部21に設けられる。接触部23は、基部21の表面21bから突出するように基部21に設けられる。
図3及び
図4に示す例では、接触部22及び接触部23は互いに平行に配置される。把持部材11は、接触部22と接触部23との間に配置される。
【0022】
スラスト軸受け15は、支持部材14の基部21とめねじ部材13との間に設けられる。スラスト軸受け15は、ねじ棒12が中空部を貫通するように配置される。スラスト軸受け15は、支持部材14の基部21とめねじ部材13との間に配置された緩衝部材の一例である。緩衝部材は、めねじ部材13からの力を受ける機能と、めねじ部材13の回転を案内する機能とを有する。当該力は、めねじ部材13が支持部材14の基部21に接近しようとする力である。当該回転は、ねじ棒12を中心とした支持部材14に対する回転である。
【0023】
緩衝部材は、樹脂製の環状の滑り部材でも良い。一例として、当該滑り部材の素材として超高分子量ポリエチレンが採用されても良い。当該滑り部材は、ねじ棒が中空部を貫通するように基部21の表面21c又はめねじ部材13の基部21に対向する表面に設けられる。当該滑り部材は、基部21とめねじ部材13の双方に設けられても良い。
【0024】
ハンドル16は、支持部材14に設けられる。ハンドル16は、ねじ棒12に直交する軸に沿うように支持部材14から延びる。
【0025】
ハンドル17は、めねじ部材13に設けられる。ハンドル17は、めねじ部材13からハンドル16に沿うように延びる。ハンドル17は、めねじ部材13と共にねじ棒12を中心に変位する。ハンドル17は、ねじ棒12に直交する平面に沿うように変位し、ハンドル16に接近及び離隔する。
【0026】
ばね18は、ハンドル16とハンドル17との間に設けられる。ばね18は、ハンドル17がハンドル16から離隔するようにハンドル17に対して力を与える。
【0027】
次に、
図5及び
図6も参照し、引き抜き工具10を用いて、固定部材6の貫通孔6aに差し込まれているピン5を引き抜く方法について説明する。
図5は、引き抜き工具10を用いたピン5の引き抜き方法を説明するための図である。
図5は、
図1のC-C断面に相当する図である。
【0028】
エレベーターの保守員は、ピン5及び貫通孔6a等の清掃を行う場合、先ず、ボルト9を緩めて抜け止め板8を外す。次に、保守員は、
図5に示すように、ねじ棒12がピン5に対して一直線状に配置されるように引き抜き工具10を配置し、ピン5の溝5aに爪部20の先端部を掛ける。これにより、把持部材11によってピン5を掴むことができる。把持部材11によってピン5を掴むと、接触部22の先端部と接触部23の先端部とを固定部材6の表面6bに接触させる。
【0029】
図5は、把持部材11によってピン5を掴み、支持部材14を固定部材6に表面6b側から当てた状態を示す。
図5に示す状態では、支持部材14は、ねじ棒12の軸方向から見てピン5に対して対称な位置で表面6bに接触することが好ましい。支持部材14が表面6bに接触する位置は、ねじ棒12の中心軸に対して点対称でも良い。支持部材14が表面6bに接触する位置は、ねじ棒12の中心軸に直交する直線に対して線対称でも良い。
【0030】
図6は、
図5に示す引き抜き工具10をD方向から見た図である。ハンドル17は、ばね18によって押されることにより、
図3に示す状態からねじ棒12を中心にE方向に回転する。保守員は、引き抜き工具10を
図5に示す状態に配置すると、片方の手でハンドル16とハンドル17とを掴み、強く握り締める。これにより、ハンドル17が、ねじ棒12を中心に
図6に示すF方向に回転する。
【0031】
ハンドル17がF方向に回転すると、ハンドル17が固定されためねじ部材13もF方向に回転する。めねじ部材13がF方向に回転すると、めねじ部材13が嵌合されたねじ棒12に対して
図5に示すG方向の力が作用する。これにより、ピン5が把持部材11に引っ張られ、ピン5がG方向に変位する。
【0032】
保守員は、ハンドル16及びハンドル17を握り締めることによってハンドル17を
図3に示す状態までハンドル16に接近させると、ハンドル16及びハンドル17を握る力を緩める。これにより、ハンドル17は、ばね18の力によってねじ棒12を中心にE方向に回転し、
図6に示す状態まで開く。上述したように、めねじ部材13にはラチェット機構が備えられている。このため、ハンドル17がねじ棒12に対してE方向に回転しても、めねじ部材13はねじ棒12に対してE方向に回転しない。保守員は、ハンドル16及びハンドル17を強く握ったり握る力を弱めたりすることを繰り返すことにより、ピン5をG方向に移動させて、ピン5を引き抜くことができる。
【0033】
本実施の形態に示す例では、ハンドル16が支持部材14に設けられ、ハンドル17がめねじ部材13に設けられる。このため、保守員は、ピン5を引き抜く操作を行う際に、支持部材14の回転を阻止するために片方の手で支持部材14を押さえ付けておく必要がない。したがって、保守員は、簡単な操作でピン5を引き抜くことができる。
【0034】
また、支持部材14を手で押さえ付ける必要がないため、固定部材6に対して、ピン5を引き抜く方向以外の方向の力が作用し難い。このため、ピン5を引き抜く際に固定部材6が破損してしまうような不具合を防止できる。
【0035】
引き抜き工具10は、他の機能として、把持部材11が支持部材14に対してねじ棒12を中心に回転することを阻止するためのガイド部材を更に備えても良い。当該ガイド部材は、例えば接触部22或いは接触部23に設けられる。
【0036】
本実施の形態では、引き抜き工具10によってエレベーターのブレーキ装置に備えられたピン5を引き抜く例について説明した、引き抜き工具10の使用例はこれに限定されない。引き抜き工具10は、他の部材の表面に形成された孔に差し込まれたピンを引き抜くために用いられても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 基体、 2 ブレーキホイール、 3 ブレーキシュー、 4 アーム、 4a 貫通孔、 5 ピン、 5a 溝、 6 固定部材、 6a 貫通孔、 6b 表面、 7 固定部材、 7a 取付穴、 8 抜け止め板、 9 ボルト、 10 引き抜き工具、 11 把持部材、 12 ねじ棒、 13 めねじ部材、 14 支持部材、 15 スラスト軸受け、 16 ハンドル、 17 ハンドル、 18 ばね、 20 爪部、 21 基部、 21a 貫通孔、 21b 表面、 21c 表面、 22 接触部、 23 接触部