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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037763
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】ジョイントコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 31/08 20060101AFI20230309BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20230309BHJP
   H01R 13/516 20060101ALI20230309BHJP
   H01R 13/7193 20110101ALI20230309BHJP
【FI】
H01R31/08 Z
H01R13/42 B
H01R13/42 F
H01R13/516
H01R13/7193
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144528
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FB07
5E021FC32
5E021MA14
5E087GG15
5E087GG26
5E087GG31
5E087GG32
5E087GG37
5E087JJ06
5E087MM05
5E087PP08
5E087RR02
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】作業性に優れたジョイントコネクタを提供する。
【解決手段】ジョイントコネクタ1は、複数のランス13を有するハウジング10と、ハウジング10の後方からハウジング10内に挿入され、複数のランス13の係止作用によって抜け止めされる複数の端子金具30と、ハウジング10に対して前方から取り付けられ、複数の端子金具30を導通させるジョイント端子50と、ジョイント端子50を保持し、ハウジング10に対して、ハウジング10の前面を覆うように取り付けられる保持部材80と、を備え、ハウジング10内には、ハウジング10の後面に開口する治具挿入室16が形成され、ランス13は、治具挿入室16内に配置された治具当て部13Aを有する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のランスを有するハウジングと、
前記ハウジングの後方から前記ハウジング内に挿入され、複数の前記ランスの係止作用によって抜け止めされる複数の端子金具と、
前記ハウジングに対して前方から取り付けられ、複数の前記端子金具を導通させるジョイント端子と、
前記ジョイント端子を保持し、前記ハウジングに対して、前記ハウジングの前面を覆うように取り付けられる保持部材と、
を備え、
前記ハウジング内には、前記ハウジングの後面に開口する治具挿入室が形成され、
前記ランスは、前記治具挿入室内に配置された治具当て部を有するジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記治具当て部には、前後方向に対して傾斜したガイド面が形成されている請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記ハウジングに対する前記端子金具の挿入を許容する仮係止位置と、前記ハウジングに挿入された前記端子金具を抜け止めする本係止位置と、の間で変位可能なリテーナが取り付けられ、
前記リテーナには、前記リテーナが前記本係止位置にあるときに前記治具挿入室内に位置して前記治具当て部に治具が接触することを規制し、前記リテーナが前記仮係止位置にあるときに前記治具当て部に前記治具が接触することを許容する挿入規制部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記ジョイント端子は、複数の前記端子金具と個別に接続するタブを有し、
前記タブには、フェライトコアが外嵌され、前記ハウジングを前方から見た正面視において、前記フェライトコアの一部と前記治具挿入室の少なくとも一部とが、重なるように配置されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のジョイントコネクタ。
【請求項5】
複数の前記端子金具は、前後方向に直交する第1方向に沿って並び、且つ前記前後方向及び前記第1方向に直交する第2方向に2列に分かれて配置され、
前記第2方向に沿って並ぶ一対の前記端子金具は、1つの差動ペア伝送線路を構成しており、前記差動ペア伝送線路を構成する一対の前記端子金具に接続される一対の前記タブに、1つの前記フェライトコアが取り付けられている請求項4に記載のジョイントコネクタ。
【請求項6】
前記ランスが前記端子金具から解離するときの変位方向は、前記第1方向と平行な方向である請求項5に記載のジョイントコネクタ。
【請求項7】
前記治具当て部が、前記第1方向に隣り合う前記端子金具の間に配置されている請求項6に記載のジョイントコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジョイントコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コネクタハウジングと、コネクタハウジングに収容された端子金具とを有するジョイントコネクタが開示されている。ジョイントコネクタには、サブハーネスに接続された汎用コネクタが嵌合される。汎用コネクタには、サブハーネスを構成する複数本の電線に接続された複数の端子が収容されている。ジョイントコネクタと汎用コネクタを嵌合すると、汎用コネクタの複数の端子が、端子金具に接続され、端子金具を介して導通可能に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-221907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汎用コネクタの端子をメンテナンス等のために取り外す際には、汎用コネクタの正面、即ちジョイントコネクタとの対向面から治具を挿入することによって、端子の抜け止めを解除する。しかし、端子の抜け止めを解除するためには、事前に、汎用コネクタをジョイントコネクタから離脱させる必要がある。そのため、作業性が良くない。
【0005】
本開示のジョイントコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、作業性に優れたジョイントコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のジョイントコネクタは、
複数のランスを有するハウジングと、
前記ハウジングの後方から前記ハウジング内に挿入され、複数の前記ランスの係止作用によって抜け止めされる複数の端子金具と、
前記ハウジングに対して前方から取り付けられ、前記複数の端子金具を導通させるジョイント端子と、
前記ジョイント端子を保持し、前記ハウジングに対して、前記ハウジングの前面を覆うように取り付けられる保持部材と、
を備え、
前記ハウジング内には、前記ハウジングの後面に開口する治具挿入室が形成され、
前記ランスは、前記治具挿入室内に配置された治具当て部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ジョイントコネクタを作業性に優れたものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のジョイントコネクタを分解して示す斜視図である。
図2図2は、ハウジングを後方から見た背面図である。
図3図3は、図2におけるA-A断面図である。
図4図4は、ハウジングを前方斜め右上から見た斜視図である。
図5図5は、リテーナが仮係止位置にあるハウジングの横断面図である。
図6図6は、リテーナが本係止位置にあるハウジングの横断面図である。
図7図7は、実施形態1のジョイントコネクタの側断面図である。
図8図8は、保持部材を後方斜め右上から見た斜視図である。
図9図9は、保持部材を後方斜め右上から見た斜視図である。
図10図10は、図2におけるA-A断面図に相当し、キャビティに端子金具を挿入する途中の状態を示す。
図11図11は、図2におけるA-A断面図に相当し、キャビティへの端子金具の挿入が完了した状態を示す。
図12図12は、実施形態1のジョイントコネクタを前方から見た正面図である。
図13図13は、治具を前方斜め左上から見た斜視図である。
図14図14は、図2におけるA-A断面図に相当し、治具挿入室に治具を挿入する途中の状態を示す。
図15図15は、図2におけるA-A断面図に相当し、治具挿入室に挿入した治具によって端子金具からランスを解離させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のジョイントコネクタは、
(1)複数のランスを有するハウジングと、ハウジングの後方からハウジング内に挿入され、複数のランスの係止作用によって抜け止めされる複数の端子金具と、ハウジングに対して前方から取り付けられ、複数の端子金具を導通させるジョイント端子と、ジョイント端子を保持し、ハウジングに対して、ハウジングの前面を覆うように取り付けられる保持部材と、を備え、ハウジング内には、ハウジングの後面に開口する治具挿入室が形成され、ランスは、治具挿入室内に配置された治具当て部を有する。この構成によれば、端子金具に対するランスの係止を解除する際には、ハウジングの後方から治具挿入室内に挿入した治具を、ランスの治具当て部に当て、ランスを、端子金具から解離する方向へ変位させる。保持部材をハウジングから取り外す必要がないので、作業性に優れている。
【0010】
(2)治具当て部には、前後方向に対して傾斜したガイド面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、治具挿入室に挿入した治具が、治具当て部に突き当たることを防止できる。
【0011】
(3)前記ハウジングには、前記ハウジングに対する前記端子金具の挿入を許容する仮係止位置と、前記ハウジングに挿入された前記端子金具を抜け止めする本係止位置との間で変位可能なリテーナが取り付けられ、リテーナには、リテーナが本係止位置にあるときに治具挿入室内に位置して治具当て部に治具が接触することを規制し、リテーナが仮係止位置にあるときに治具当て部に治具が接触することを許容する挿入規制部が形成されていることが好ましい。リテーナが本係止位置にある状態でランスによる抜け止めを解除して、端子金具を後方へ抜き取ろうとすると、端子金具とリテーナとの係止部分において変形や破損が生じることが懸念される。この対策として、リテーナに挿入規制部を形成した。これにより、リテーナが本係止位置にある状態で治具挿入室に治具を挿入すると、治具が治具当て部に接触することが規制されるので、ランスに対する解除操作を行うことができない。したがって、リテーナが本係止位置にある状態のままで、端子金具を抜き取る作業が行われることを防止できる。
【0012】
(4)ジョイント端子は、複数の端子金具と個別に接続するタブを有し、タブには、フェライトコアが外嵌され、ハウジングを前方から見た正面視において、フェライトコアの一部と治具挿入室の少なくとも一部とが、重なるように配置されていることが好ましい。この構成によれば、治具挿入室を形成したことによって、隣り合う端子金具間の間隔が拡がっているが、この拡がった間隔を利用してフェライトコアを配置することができた。よって、フェライトコアを設けたことに起因する大型化を回避することができる。
【0013】
(5)(4)において、複数の端子金具は、前後方向に直交する第1方向に沿って並び、且つ前後方向及び第1方向に直交する第2方向に2列に分かれて配置され、第2方向に沿って並ぶ一対の端子金具は、1つの差動ペア伝送線路を構成しており、差動ペア伝送線路を構成する一対の端子金具に接続される一対のタブに、1つのフェライトコアが取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、複数のフェライトコアを第1方向に沿って一列に並べて配置することができ、フェライトコアのレイアウトを簡単にすることができる。
【0014】
(6)(5)において、ランスが端子金具から解離するときの変位方向は、第1方向と平行な方向であることが好ましい。この構成によれば、差動ペア伝送線路を構成する一対の端子金具間のピッチを狭めることができるので、フェライトコアの小型化を図ることができる。
【0015】
(7)(6)において、治具当て部が、第1方向に隣り合う端子金具の間に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第1方向に隣り合う端子金具間の間隔を確保できるので、第1方向に並ぶフェライトコア同士の接触を回避しつつ、第1方向におけるフェライトコアの寸法を充分に確保することができる。これにより、フェライトコアによるノイズフィルタ性能を高めることができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施形態1]
本明細書に開示された技術の実施形態1を図1から図15を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下の方向については、図1あらわれる向きをそのまま上方、下方と定義する。前後の方向については、図1における右方を前方、左方を後方と定義する。前方は、ハウジング10に対して保持部材80が位置する方向である。左右の方向については、図1における奥側を左方、手前側を右方と定義する。
【0017】
実施形態1のジョイントコネクタ1は、図1に示すように、ハウジング10、リテーナ70、複数の端子金具30、保持部材80、複数のジョイント端子50、及び複数のフェライトコア20を備えている。
【0018】
[ハウジングについて]
ハウジング10は合成樹脂製である。ハウジング10は、概ねブロック状をなしている。ハウジング10には、前後方向に貫通する複数のキャビティ12が形成されている。各キャビティ12には、端子金具30が1つずつ挿入される。これらキャビティ12は、上下2段で一組とされており、このキャビティ12の組が左右方向に三つ並んでいる。
【0019】
各キャビティ12の左方には、前後方向に貫通して治具挿入室16が形成されている。治具挿入室16は、ハウジング10の後面に開口している。治具挿入室16には、後方から治具90が挿入される。図3に示すように、ハウジング10内には、キャビティ12と治具挿入室16とに跨るように、左右方向に弾性変形可能なランス13が1つずつ設けられている。つまり、ハウジング10は、複数のランス13を有している。各ランス13は、各キャビティ12内に突出している。
【0020】
各ランス13は、治具当て部13Aを有している。治具当て部13Aは、治具挿入室16内に配置されている。治具当て部13Aは、ランス13の左縁部に連結しており、上向きに立ち上がっている(図2参照)。治具当て部13Aの後側には、前後方向に対して傾斜したガイド面13Bが形成されている。具体的には、ガイド面13Bは、斜め右後方に面しており、右に向かうにつれて前向きに傾斜している。図4に示すように、ハウジング10の前側には、角筒状をなして前向きに突出したフード部10Aが設けられている。フード部10Aの上壁及び下壁の先端部には、上下方向に貫通するロック孔10B,10Cが形成されている。
【0021】
ハウジング10の下側の前後方向中央部には、右端から左端にかけて上向きに凹むように取付溝14が形成されている。取付溝14は、各ランス13よりも後方に配置されている(図3参照)。取付溝14は、各キャビティ12に連通している。取付溝14には、リテーナ70が取り付けられる。ハウジング10の左右方向両側面には、周囲より一段凹んで凹面部17が形成されている(図3参照)。凹面部17には、左右方向外側に突出して仮係止部18、及び本係止部19が設けられている(図5、6参照)。仮係止部18、及び本係止部19は、凹面部17において、取付溝14よりも上方に配置されている。本係止部19は、凹面部17において、仮係止部18よりも上方に配置されている。
【0022】
[リテーナについて]
リテーナ70は、合成樹脂製である。図1に示すように、リテーナ70は、左右方向に延びたブロック状をなしている。リテーナ70の左右方向両端部には、上方向及び前後方向に延出するガイド部70Aが形成されている。図5、6に示すように、リテーナ70は、ガイド部70Aをハウジング10の凹面部17に沿わせて、ハウジング10の下方から取付溝14に挿入される。リテーナ70のガイド部70Aが仮係止部18に係止する場合、リテーナ70は、ハウジング10に対し、仮係止位置に保持される(図5参照)。リテーナ70のガイド部70Aが、本係止部19に係止する場合、リテーナ70は、ハウジング10に対し、本係止位置に保持される(図6参照)。リテーナ70は、ハウジング10に対して、仮係止位置と本係止位置との間で変位可能に取り付けられる。
【0023】
リテーナ70には、下段のキャビティ12及び治具挿入室16に対応する複数の貫通孔70Dが形成されている(図1参照)。リテーナ70は、上段の各キャビティ12及び治具挿入室16に対応する位置と、下段の各キャビティ12及び治具挿入室16に対応する位置とに、上向きに突出する複数の抜止部70B及び挿入規制部70Cが設けられている。各抜止部70Bは、リテーナ70を取付溝14に挿入した際に、各キャビティ12に対して下方から臨む位置に配置される。各挿入規制部70Cは、リテーナ70を取付溝14に挿入した際に、各治具挿入室16に対して下方から臨む位置に配置される。
【0024】
リテーナ70が仮係止位置にあるときに、挿入規制部70Cは、治具挿入室16の下端部に位置して退避状態になるとともに、抜止部70Bは、キャビティ12の下端部に位置して退避状態になる(図5参照)。これによって、ハウジング10の後方から治具90を治具挿入室16に挿入したときに、ランス13の治具当て部13Aに治具90が接触することが許容される。これとともに、キャビティ12に対する端子金具30の挿入が許容される。
【0025】
リテーナ70が本係止位置にあるときに、挿入規制部70Cは、治具挿入室16内の上下中央部に位置する進入状態になるとともに、抜止部70Bは、キャビティ12内の上下中央部に位置する進入状態になる(図6参照)。これによって、治具90をハウジング10の後方から治具挿入室16に挿入したときに、リテーナ70は、ランス13の治具当て部13Aに治具90が接触することを規制する。これとともに、リテーナ70は、キャビティ12に挿入された端子金具30を抜け止めする。
【0026】
[端子金具について]
【0027】
端子金具30は、金属製である。図1に示すように、端子金具30は、前後方向に細長く延びている。端子金具30は、前部に箱状の接続部30Aを有している。接続部30Aには、前方からジョイント端子50のタブ50Bが挿入される。図7に示すように、接続部30Aの下壁の前後方向中央部には、上向きに凹んで係止凹部30Bが形成されている。係止凹部30Bには、左方からランス13が入り込むことによって、端子金具30が一次的に抜け止めされる(図11参照)。さらに、接続部30Aの後端の下側に取付溝14に挿入されて本係止位置に保持されたリテーナ70の抜止部70Bが係止することによって、端子金具30は、二次的に抜け止めされる。
【0028】
端子金具30は、接続部30A後端から後向きに延びるようにバレル部30Cが設けられている。バレル部30Cには電線Wが圧着して接続される。電線Wは、ハウジング10の後面から外部に引き出される。
【0029】
[保持部材について]
保持部材80は、合成樹脂製である。図8に示すように、保持部材80は、ブロック状をなしている。保持部材80内には、3つの収容凹部80Aが左右に一定間隔を空けて形成されている。収容凹部80Aは、保持部材80の前面を前向きに凹ませた形態である。保持部材80内には、左右方向に細長い上下一対の溝80Dが形成されている。溝80Dは、収容凹部80Aの奥部から前向きに凹んでいる。溝80Dの奥部には、前向きに凹んで複数の圧入穴80Gが形成されている。
【0030】
保持部材80の上壁部には、上向きに突出したロック突部80Eが設けられている。ロック突部80Eの後面は、前に向かうにつれ上向きに傾斜しており、前面が上下方向に切り立っている。保持部材80の下壁部には、下向きに突出したロック突部80Fが設けられている。ロック突部80Fの後面は、前に向かうにつれ下向きに傾斜しており、前面が上下方向に切り立っている。
【0031】
図9に示すように、上壁部と下壁部には、U字形のスリット80Bが形成されている。これらスリット80Bは、保持部材80の外面から収容凹部80Aまで上下方向に貫通している。
【0032】
上壁部の内、スリット80Bで囲まれた部分は、前向きに片持ち状に延出した形態の押圧部80Cとして機能する。上壁部の押圧部80Cは、収容凹部80Aの後端から奥部に向けて、斜め下向きに傾斜している。つまり、上壁部の押圧部80Cは、収容凹部80A内に突出している。上壁部の押圧部80Cは、押圧部80Cの後端を支点として、上向きに弾性変形する。
【0033】
下壁部の内、スリット80Bで囲まれた部分は、前向きに片持ち状に延出した形態の押圧部80Cとして機能する。下壁部の押圧部80Cは、収容凹部80Aの後端から奥部に向けて、斜め上向きに傾斜している。つまり、下壁部の押圧部80Cは、収容凹部80A内に突出している。下壁部の押圧部80Cは、押圧部80Cの後端を支点として、下向きに弾性変形する。
【0034】
[ジョイント端子について]
ジョイント端子50は、金属製の平板材を打ち抜いて形成されている。図1に示すように、ジョイント端子50は、ベース部50A、3つのタブ50B、及び5つの圧入部50Cを有している。ベース部50Aは、板厚方向を上下方向に向けて、左右方向に延びている。3つのタブ50Bは、ベース部50Aの後側の長辺部から左右方向に一定ピッチで後向きに延びている。これらタブ50Bの各々は、ハウジング10に取り付けられた状態の各端子金具30と個別に接続する。5つの圧入部50Cは、ベース部50Aの前側の長辺部から左右方向に一定ピッチで前向きに延びている。ジョイント端子50は、3つの収容凹部80Aを介して各溝80Dに1つずつ差し込まれる(図7参照)。各ジョイント端子50の圧入部50Cは、圧入穴80Gに1つずつ圧入される(図7参照)。これによって、ジョイント端子50は、溝80Dから抜け止めされる。
【0035】
[フェライトコアについて]
図1に示すように、フェライトコア20は、全体として、縦長のブロック状をなしている。フェライトコア20は、前後対称な形状をなしている。フェライトコア20は、保持部材80の後方から収容凹部80Aに収容される(図7参照)。このとき、フェライトコア20の上面及び下面は、押圧部80Cの先端部が接触し、押圧部80Cによって押圧された状態になる(図7参照)。これによって、フェライトコア20は、収容凹部80Aに収容された状態が保持される。フェライトコア20には、前後方向に貫通する上下一対の挿通孔20Aが形成されている。フェライトコア20を収容凹部80Aに収容した状態では、各挿通孔20Aにタブ50Bが挿通され、タブ50Bの前端部がフェライトコア20の前方へ突出する(図7参照)。つまり、ジョイント端子50のタブ50Bには、フェライトコア20が外嵌される。各フェライトコア20は、一方の挿通孔20Aを貫通するタブ50Bから、他方の挿通孔20Aを貫通するタブ50Bへの電磁ノイズの伝播を防止するフィルタ機能を発揮する。
【0036】
[ジョイントコネクタの組み立て手順]
次に、ジョイントコネクタ1における組み立て手順の一例について説明する。先ず、ハウジング10にリテーナ70を取り付ける。具体的には、リテーナ70のガイド部70Aを、ハウジング10の凹面部17に沿わせて、ハウジング10の下方から取付溝14に挿入する。そして、ガイド部70Aを仮係止部18に係止する(図5参照)。これによって、リテーナ70は、仮係止位置に保持される。
【0037】
次に、電線Wの端末に固着された端子金具30をハウジング10のキャビティ12の後方からキャビティ12に挿入する(図10参照)。端子金具30をキャビティ12に挿入する過程において、接続部30Aの前端がランス13に突き当たる(図10参照)。すると、ランス13は、左向きに撓んで変形する(図10参照)。
【0038】
端子金具30がキャビティ12における正規位置まで挿入されると、係止凹部30Bがランス13の右側に配置される(図11参照)。すると、ランス13は、復元変形して接続部30Aの係止凹部30B内に左方から進入する(図11参照)。これによって、端子金具30が後向きに移動しても、ランス13が係止凹部30Bに係止して、端子金具30が抜け止め状態に一次係止される。こうして、複数の端子金具30は、ハウジング10の後方からハウジング10内に挿入され、複数のランス13の係止作用によって抜け止めされる。
【0039】
全ての端子金具30のキャビティ12への挿入作業が完了した後、仮係止位置に保持されたリテーナ70を本係止位置に移動させる。リテーナ70を仮係止位置から上向きに押し込むと、ガイド部70Aが本係止部19に係止する(図6参照)。これによって、リテーナ70は、本係止位置に保持される。このとき、リテーナ70の抜止部70Bがキャビティ12の上下中央部に移動して進入状態になるとともに、挿入規制部70Cが治具挿入室16の上下中央部に移動して進入状態になる(図6参照)。リテーナ70が進入状態になると、抜止部70Bは、端子金具30の接続部30Aの後端に係止する(図7参照)。こうして、本係止位置に保持されたリテーナ70は、キャビティ12内の正規位置まで挿入された端子金具30に係止して、端子金具30に抜け止め状態に二次係止される。このとき、ランス13の治具当て部13Aは、左右方向(第1方向)に隣り合う端子金具30の間に配置されている(図11参照)。
【0040】
このとき、複数の端子金具30は、前後方向に直交する第1方向(左右方向)に沿って並び、且つ前後方向及び左右方向に直交する上下方向(第2方向)に2列に分かれて配置されている(図7参照)。上下方向に沿って並ぶ一対の端子金具30は、1つの差動ペア伝送線路Pを構成している(図7参照)。
【0041】
次に、保持部材80に、ジョイント端子50を取り付ける。具体的には、2つのジョイント端子50を、3つの収容凹部80Aを介して保持部材80の各溝80Dに1つずつ差し込む(図7参照)。そして、各ジョイント端子50の圧入部50Cを、圧入穴80Gに1つずつ圧入する(図7参照)。これによって、保持部材80は、ジョイント端子50を、溝80Dから抜け止めした状態で保持する。
【0042】
次に、保持部材80に、フェライトコア20を取り付ける。具体的には、フェライトコア20を、一対の挿通孔20Aが上下方向に並ぶ向きにする。そして、一対の挿通孔20Aの内の上側の挿通孔20Aに、上側のジョイント端子50のタブ50Bを挿通するともに、一対の挿通孔20Aの内の下側の挿通孔20Aに、下側のジョイント端子50のタブ50Bを挿通する(図7参照)。そして、フェライトコア20を、収容凹部80Aに収容する。収容凹部80Aに収容されたフェライトコア20は、上方及び下方から押圧部80Cによって押圧され、収容凹部80Aに収容された状態が保持される(図7参照)。
【0043】
次に、ハウジング10に、保持部材80を取り付ける。具体的には、ハウジング10のフード部10Aの前方から保持部材80をフード部10A内に挿入する(図7参照)。このとき、先ず、ジョイント端子50のタブ50Bが、ハウジング10に取り付けられた端子金具30の接続部30Aに前方から挿入される。つまり、ジョイント端子50は、ハウジング10に対して前方から取り付けられ、これによって、複数の端子金具30を導通させる。
【0044】
次に、保持部材80がフード部10Aに前方から挿入される。そして、保持部材80のロック突部80E,80Fの各々がフード部10Aのロック孔10B,10Cに係止する(図7参照)。つまり、保持部材80は、ハウジング10に対して、ハウジング10の前面を覆うようにして取り付けられる。こうして、ジョイントコネクタ1の組み立てが完了する。図12に示すように、ジョイントコネクタ1のハウジング10を前方から見た正面視において、フェライトコア20の一部と、治具挿入室16の少なくとも一部とが、重なるように配置されている。1つのフェライトコア20は、差動ペア伝送線路Pを構成する一対の端子金具30に接続される一対のタブ50Bに取り付けられている(図7参照)。
【0045】
[端子金具を抜き取る手順]
次に、端子金具30をハウジング10から抜き取る手順の一例について説明する。先ず、ジョイント端子50及び保持部材80をハウジング10に取り付けたままの状態で、本係止位置に保持されたリテーナ70を仮係止位置に移動させる。すると、進入状態のリテーナ70の抜止部70Bが退避状態になるとともに、進入状態の挿入規制部70Cが退避状態になる(図5参照)。これによって、ランス13の治具当て部13Aに治具90が接触することが許容される。
【0046】
次に、治具挿入室16の後方から治具挿入室16に治具90を挿入する。図13に示すように、治具90は、前後方向に長く延びた形態をなしている。治具90の前後方向に直交する向きの断面形状は、上下方向に長い長方形状をなしている。治具90の先端部90A(すなわち、治具挿入室16に挿入する側)は、基端部90Dに対して上側に偏っている。治具90の先端面は、先端に向かうにつれて右向きに傾斜した傾斜面90Bである。治具90の基端部90Dには、把持し易くするために、鍔状に突出した鍔部90Cが設けられている。
【0047】
治具90の先端部90Aをハウジング10の後方から治具挿入室16に挿入する。そして、治具90の傾斜面90B及び治具当て部13Aのガイド面13Bによって、先端部90Aが、治具当て部13Aの右側に案内される(図14参照)。治具挿入室16への治具90の挿入をさらに進めると、治具90の先端部90Aが、治具当て部13Aを治具挿入室16の左側へ押し動かす(図15参照)。これに伴いランス13は、左向きに弾性変形し、係止凹部30B内から接続部30Aの左方に変位する(図15参照)。こうして、ランス13は、端子金具30から解離する。ランス13が端子金具30から解離するときの変位方向は、左右方向(第1方向)と平行な方向である。こうして、端子金具30は、ランス13による一次係止が解除され、ハウジング10の後面から後向きに抜き取ることができる。
【0048】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
【0049】
本開示のジョイントコネクタ1は、ハウジング10と、複数の端子金具30と、ジョイント端子50と、保持部材80と、を備えている。ハウジング10は、複数のランス13を有する。複数の端子金具30は、ハウジング10の後方からハウジング10内に挿入され、複数のランス13の係止作用によって抜け止めされる。ジョイント端子50は、ハウジング10に対して前方から取り付けられ、複数の端子金具30を導通させる。保持部材80は、ジョイント端子50を保持し、ハウジング10に対して、ハウジング10の前面を覆うように取り付けられる。ハウジング10内には、ハウジング10の後面に開口する治具挿入室16が形成され、ランス13は、治具挿入室16内に配置された治具当て部13Aを有する。この構成によれば、端子金具30に対するランス13の係止を解除する際には、ハウジング10の後方から治具挿入室16内に挿入した治具90を、ランス13の治具当て部13Aに当て、ランス13を、端子金具30から解離する方向へ変位させる。保持部材80をハウジング10から取り外す必要がないので、作業性に優れている。
【0050】
本開示のジョイントコネクタ1の治具当て部13Aには、前後方向に対して傾斜したガイド面13Bが形成されている。この構成によれば、治具挿入室16に挿入した治具90が、治具当て部13Aに突き当たることを防止できる。
【0051】
本開示のジョイントコネクタ1のハウジング10には、ハウジング10に対する端子金具30の挿入を許容する仮係止位置と、ハウジング10に挿入された端子金具30を抜け止めする本係止位置と、の間で変位可能なリテーナ70が取り付けられている。リテーナ70には、挿入規制部70Cが形成されている。挿入規制部70Cは、リテーナ70が本係止位置にあるときに治具挿入室16内に位置して治具当て部13Aに治具90が接触することを規制し、リテーナ70が仮係止位置にあるときに治具当て部13Aに治具90が接触することを許容する。リテーナ70が本係止位置にある状態でランス13による抜け止めを解除して、端子金具30を後方へ抜き取ろうとすると、端子金具30とリテーナ70との係止部分において変形や破損が生じることが懸念される。この対策として、リテーナ70に挿入規制部70Cを形成した。これにより、リテーナ70が本係止位置にある状態で治具挿入室16に治具90を挿入すると、治具90が治具当て部13Aに接触することが規制されるので、ランス13に対する解除操作を行うことができない。したがって、リテーナ70が本係止位置にある状態のままで、端子金具30を抜き取る作業が行われることを防止できる。
【0052】
本開示のジョイントコネクタ1のジョイント端子50は、複数の端子金具30と個別に接続するタブ50Bを有している。タブ50Bには、フェライトコア20が外嵌され、ハウジング10を前方から見た正面視において、フェライトコア20の一部と治具挿入室16の少なくとも一部とが、重なるように配置されている。この構成によれば、治具挿入室16を形成したことによって、隣り合う端子金具30間の間隔が拡がっているが、この拡がった間隔を利用してフェライトコア20を配置することができた。よって、フェライトコア20を設けたことに起因する大型化を回避することができる。
【0053】
本開示のジョイントコネクタ1において、複数の端子金具30は、前後方向に直交する左右方向(第1方向)に沿って並び、且つ前後方向及び左右方向(第1方向)に直交する上下方向(第2方向)に2列に分かれて配置されている。上下方向(第2方向)に沿って並ぶ一対の端子金具30は、1つの差動ペア伝送線路Pを構成しており、差動ペア伝送線路Pを構成する一対の端子金具30に接続される一対のタブ50Bに、1つのフェライトコア20が取り付けられている。この構成によれば、複数のフェライトコア20を左右方向に沿って一列に並べて配置することができ、フェライトコア20のレイアウトを簡単にすることができる。
【0054】
本開示のジョイントコネクタ1において、ランス13が端子金具30から解離するときの変位方向は、左右方向(第1方向)と平行な方向である。この構成によれば、差動ペア伝送線路Pを構成する一対の端子金具30間のピッチを狭めることができるので、フェライトコア20の小型化を図ることができる。
【0055】
本開示のジョイントコネクタ1において、治具当て部13Aが、左右方向(第1方向)に隣り合う端子金具30の間に配置されている。この構成によれば、左右方向に隣り合う端子金具30間の間隔を確保できるので、左右方向に並ぶフェライトコア20同士の接触を回避しつつ、左右方向におけるフェライトコア20の寸法を充分に確保することができる。これにより、フェライトコア20によるノイズフィルタ性能を高めることができる。
[他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0056】
実施形態1とは異なり、リテーナは、挿入規制部を有しないものでもよい。
【0057】
実施形態1とは異なり、保持部材は、ハウジングの外周面を包囲するフード部を有するものであってもよい。
【0058】
実施形態1とは異なり、ジョイント端子にフェライトコアを取り付けない形態としてもよい。
【0059】
実施形態1とは異なり、ランスが端子金具から解離するときの変位方向は、第2方向と平行な方向であってもよい。
【0060】
実施形態1とは異なり、治具当て部は、第2方向に並ぶ端子金具の間に配置してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…ジョイントコネクタ
10…ハウジング
10A…フード部
10B…ロック孔
10C…ロック孔
12…キャビティ
13…ランス
13A…治具当て部
13B…ガイド面
14…取付溝
16…治具挿入室
17…凹面部
18…仮係止部
19…本係止部
20…フェライトコア
20A…挿通孔
30…端子金具
30A…接続部
30B…係止凹部
30C…バレル部
50…ジョイント端子
50A…ベース部
50B…タブ
50C…圧入部
70…リテーナ
70A…ガイド部
70B…抜止部
70C…挿入規制部
70D…貫通孔
80…保持部材
80A…収容凹部
80B…スリット
80C…押圧部
80D…溝
80E…ロック突部
80F…ロック突部
80G…圧入穴
90…治具
90A…先端部
90B…傾斜面
90C…鍔部
90D…基端部
P…差動ペア伝送線路
W…電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15