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特開2023-37772半導体洗浄用組成物および半導体基板の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037772
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】半導体洗浄用組成物および半導体基板の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230309BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20230309BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20230309BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
H01L21/304 647B
H01L21/304 622Q
C11D1/14
C11D1/04
C11D3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144542
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】羽木 慎一郎
【テーマコード(参考)】
4H003
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB19
4H003AB27
4H003DA05
4H003DA09
4H003EA08
4H003EA23
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB14
4H003EB21
4H003EB30
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA28
5F057AA21
5F057DA03
5F057DA38
5F057EC30
5F057FA37
5F157AA29
5F157AA30
5F157AA96
5F157BC03
5F157BC04
5F157BC07
5F157BF12
5F157BF47
5F157BF48
5F157BF52
5F157BF58
5F157BF59
5F157BF60
5F157BF63
5F157BF72
5F157DB03
5F157DB57
(57)【要約】
【課題】酸化シリコンや窒化シリコンが露出した配線基板に及ぼす腐食によるダメージを抑制し、被処理体の表面より汚染を効率的に除去できる半導体洗浄用組成物、およびそれを用いた半導体基板の洗浄方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体洗浄用組成物は、下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数8~12のアルキル基とを有する化合物(A)と、下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数13~18のアルキル基とを有する化合物(B)と、を含有し、前記化合物(A)の含有量をMA(質量%)、前記化合物(B)の含有量をMB(質量%)とした場合、MA/MB=1~30である。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価のカチオンを表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数8~12のアルキル基とを有する化合物(A)と、
下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数13~18のアルキル基とを有する化合物(B)と、を含有し、
前記化合物(A)の含有量をMA(質量%)、前記化合物(B)の含有量をMB(質量%)とした場合、MA/MB=1~30である、半導体洗浄用組成物。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価のカチオンを表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)または(2)において、Mが下記一般式(3)で表されるカチオンである、請求項1に記載の半導体洗浄用組成物。
【化1】
(上記式(3)中、RないしRは、各々独立して水素原子あるいは有機基を示す。)
【請求項3】
さらに、有機酸を含有する、請求項1または請求項2に記載の半導体洗浄用組成物。
【請求項4】
pHが2~7である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体洗浄用組成物。
【請求項5】
酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくとも一方が露出した配線基板を、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体洗浄用組成物を用いて処理する工程を含む、半導体基板の洗浄方法。
【請求項6】
半導体基板を化学機械研磨した後に、前記半導体基板を請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体洗浄用組成物を用いて処理する工程を含む、半導体基板の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体洗浄用組成物およびそれを用いた半導体基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造に活用されるCMP(Chemical Mechanical Polishing)とは、被処理体を研磨パッドに圧着し、研磨パッド上に化学機械研磨用組成物(以下、「CMPスラリー」ともいう)を供給しながら被処理体と研磨パッドとを相互に摺動させて、被処理体を化学的かつ機械的に研磨する技術である。このようなCMPに用いられるCMPスラリーには、研磨砥粒の他、エッチング剤やpH調整剤等の化学薬品が含有されている。CMPを実施すると、被処理体や研磨パッド、そして化学機械研磨用組成物に由来する研磨屑が発生する。これらの研磨屑が被処理体に残留すると、致命的な装置欠陥となる場合がある。このため、CMP後、被処理体を洗浄する工程が必須となっている。
【0003】
CMP後の被処理体の表面には、銅やタングステン等の金属配線材料、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材料、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材料等が露出している。このような異種材料が被研磨面に共存する場合、被研磨面から汚染だけを除去し、腐食などのダメージを与えずに処理する必要がある。例えば特許文献1には、酸性の半導体洗浄用組成物を用いて配線材料とバリアメタル材料が露出した被研磨面の腐食を抑制する技術が開示されている。また、例えば特許文献2や特許文献3には、中性からアルカリ性の半導体洗浄用組成物を用いて配線材料とコバルトのようなバリアメタル材料が露出した被研磨面を処理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-258014号公報
【特許文献2】特開2009-055020号公報
【特許文献3】特開2013-157516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の更なる回路構造の微細化に伴い、被処理体の配線材料に与えるダメージを更に抑制し、被処理体の表面より汚染を効果的に除去できる処理技術が要求されている。
【0006】
本発明に係る幾つかの態様は、酸化シリコンや窒化シリコンが露出した配線基板に及ぼす腐食によるダメージを抑制し、被処理体の表面より汚染を効率的に除去できる半導体洗浄用組成物、およびそれを用いた半導体基板の洗浄方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
【0008】
本発明に係る半導体洗浄用組成物の一態様は、
下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数8~12のアルキル基とを有する化合物(A)と、
下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数13~18のアルキル基とを有する化合物(B)と、を含有し、
前記化合物(A)の含有量をMA(質量%)、前記化合物(B)の含有量をMB(質量%)とした場合、MA/MB=1~30である。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価のカチオンを表す。)
【0009】
前記半導体洗浄用組成物の一態様において、
上記一般式(1)または(2)において、Mが下記一般式(3)で表されるカチオンであってもよい。
【化1】
(上記式(3)中、RないしRは、各々独立して水素原子あるいは有機基を示す。)
【0010】
前記半導体洗浄用組成物のいずれかの態様において、
さらに、有機酸を含有してもよい。
【0011】
前記半導体洗浄用組成物のいずれかの態様において、
pHが2~7であってもよい。
【0012】
本発明に係る半導体基板の洗浄方法の一態様は、
酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくとも一方が露出した配線基板を、前記いずれかの態様の半導体洗浄用組成物を用いて処理する工程を含む。
【0013】
本発明に係る半導体基板の洗浄方法の一態様は、
半導体基板を化学機械研磨した後に、前記半導体基板を前記いずれかの態様の半導体洗浄用組成物を用いて処理する工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る半導体洗浄用組成物を用いることにより、酸化シリコンや窒化シリコンが露出した配線基板に及ぼす腐食によるダメージを抑制し、被処理体の表面より汚染を効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る半導体基板の洗浄方法に用いられる配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。
図2】本実施形態に係る半導体基板の洗浄方法に用いられる配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0017】
1.半導体洗浄用組成物
本発明の一実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数8~12のアルキル基とを有する化合物(A)(本明細書において、単に「化合物(A)」ともいう)と、下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数13~18のアルキル基とを有する化合物(B)(本明細書において、単に「化合物(B)」ともいう)と、を含有し、前記化合物(A)の含有量をMA(質量%)、前記化合物(B)の含有量をMB(質量%)とした場合、MA/MB=1~30である。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価のカチオンを表す。)
【0018】
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、酸化シリコンや窒化シリコンが露出した配線基板を洗浄するための組成物である。本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、純水や有機溶媒などの液状媒体で希釈して用いることを目的とした濃縮タイプであってもよいし、希釈せずにそのまま用いることを目的とした非希釈タイプであってもよい。本明細書において、濃縮タイプもしくは非希釈タイプであることを特定しない場合には、「半導体洗浄用組成物」との用語は、濃縮タイプおよび非希釈タイプの両方を含む概念として解釈される。
【0019】
このような半導体洗浄用組成物は、主にCMP終了後の酸化シリコンや窒化シリコンが露出した配線基板の表面に存在するパーティクルや有機残渣等の汚染物質を除去するための洗浄剤として使用することができる。以下、本実施形態に係る半導体洗浄用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0020】
1.1.化合物(A)
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、下記一般式(1)または(2)で表される官能基と、炭素数8~12のアルキル基とを有する化合物(A)を含有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価のカチオンを表す。)
【0021】
化合物(A)は、被処理体の表面に吸着して腐食によるダメージを低減させる機能を有している。そのため、本実施形態に係る半導体洗浄用組成物が化合物(A)を含有すると、被処理体の配線基板に及ぼす腐食によるダメージを抑制することができる。また、本実施形態に係る半導体洗浄用組成物を用いて被処理体を処理した後、超純水または純水でリンスをすると、化合物(A)は配線基板に残留せずに洗い流されるので、清浄な汚染のない被処理面を得ることができる。さらに、化合物(A)は、半導体洗浄用組成物のpHを調整するためのpH調整剤としての機能も有している。
【0022】
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物中の化合物(A)の含有量は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材料、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材料、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材料等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
【0023】
さらに、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても、化合物(A)の含有量を適宜変更することができる。化合物(A)の含有量は、非希釈タイプの半導体洗浄用組成物の全質量を100質量%とした場合、好ましくは0.01~1質量%であり、より好ましくは0.02~0.5質量%であり、特に好ましくは0.025~0.3質量%である。化合物(A)の含有量が前記範囲内にあると、被処理体の配線基板の表面に吸着して保護することにより腐食を低減し、配線基板に与えるダメージを抑制
することができる。また、被処理体を超純水または純水でリンスした後に、化合物(A)は配線基板の表面に残留せずに洗い流されるので、より清浄な汚染のない被処理面を得ることができる。
【0024】
上記一般式(1)および(2)中、Mで表される1価のカチオンとしては、これらに限定されないが、例えばH、Li、Na、K、下記一般式(3)で表されるカチオンが挙げられる。これらの中でも、Mで表される1価のカチオンは、被処理面の金属汚染を低減できることから、下記一般式(3)で表されるカチオンであることが好ましい。
【0025】
【化2】
(上記式(3)中、RないしRは、各々独立して水素原子あるいは有機基を示す。)
【0026】
上記一般式(3)において、RないしRで表される有機基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、アラルキル基、アリール基等を挙げることができる。
【0027】
アルキル基としては、通常炭素数が1~6の低級アルキル基が好ましく、炭素数1~4の低級アルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
シクロアルキル基としては、通常炭素数3~6のものが好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
アルケニル基としては、通常炭素数2~6のものが好ましい。アルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、n-プロペニル基、iso-プロペニル基、n-ブテニル基、iso-ブテニル基、sec-ブテニル基、tert-ブテニル基等が挙げられる。
【0030】
ヒドロキシアルキル基としては、通常炭素数が1~6のものが好ましく、炭素数1~4のものがより好ましい。ヒドロキシアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、ヒドロキシアルキル基に含まれるヒドロキシ基の置換位置は特に限定されない。ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ジヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ジヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ジヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
アラルキル基としては、通常炭素数7~12のものが好ましい。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基、エチルベンジル基等が挙げられる。
【0032】
アリール基としては、通常炭素数6~14のものが好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,5-キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0033】
上記のアラルキル基またはアリール基の芳香環は、例えば、メチル基、エチル基等の低級アルキル基や、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基等を、置換基として有していてもよい。
【0034】
化合物(A)の具体例としては、アルキル(C8~C12)硫酸トリエタノールアミン、アルキル(C8~C12)硫酸ジエタノールアミン、アルキル(C8~C12)硫酸モノエタノールアミン、アルキル(C8~C12)ベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキル(C8~C12)エーテル酢酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキル(C8~C12)エーテル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる。これらの化合物(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。ここで、「アルキル(C8~C12)」は、直鎖または分岐鎖の炭素数8~12のアルキル基を表す。
【0035】
1.2.化合物(B)
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、下記一般式(1)あるいは(2)で表される官能基と、炭素数13~18のアルキル基とを有する化合物(B)を含有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価のカチオンを表す。)
【0036】
化合物(B)は、被処理体の表面に作用して有機残渣等の汚染を効果的に除去する機能を有する。すなわち、本実施形態に係る半導体洗浄用組成物を用いて被処理体を処理した後、超純水または純水でリンスをすると、化合物(B)と相互作用する有機残渣等の汚染が化合物(B)とともに洗い流されるので、清浄な汚染のない被処理面を得ることができる。さらに、化合物(B)は、半導体洗浄用組成物のpHを調整するためのpH調整剤としての機能も有している。
【0037】
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物中の化合物(B)の含有量は、被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材料、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材料、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材料等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても、化合物(B)の含有量を適宜変更することができる。化合物(B)の含有量は、非希釈タイプの半導体洗浄用組成物の全質量を100質量%とした場合、好ましくは0.001~0.5質量%であり、より好ましくは0.01~0.1質量%であり、特に好ましくは0.02~0.05質量%である。化合物(B)の含有量が前記範囲内にあると、被処理体の表面に残留している有機残渣等の汚染と相互作用して水溶性を高め、被処理体を超純水または純水でリンスした後に、より清浄な汚染のない被処理面を得ることができる。
【0039】
上記一般式(1)および(2)中、Mで表される1価のカチオンとしては、これらに限定されないが、例えばH、Li、Na、K、下記一般式(3)で表されるカチオンが挙げられる。これらの中でも、Mで表される1価のカチオンは、被処理面の金属汚染を低減できることから、下記一般式(3)で表されるカチオンであることが好ましい
【0040】
【化3】
(上記式(3)中、RないしRは、各々独立して水素原子あるいは有機基を示す。)
【0041】
上記一般式(3)において、RないしRで表される有機基としては、化合物(A)と同様の基を例示することができる。
【0042】
化合物(B)の具体例としては、アルキル(C13~C18)硫酸トリエタノールアミン、アルキル(C13~C18)硫酸ジエタノールアミン、アルキル(C13~C18)硫酸モノエタノールアミン、アルキル(C13~C18)硫酸アンモニウム、アルキル(C13~C18)ベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキル(C13~C18)エーテル酢酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキル(C13~C18)エーテル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる。これらの化合物(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。ここで、「アルキル(C13~C18)」は、直鎖または分岐鎖の炭素数13~18のアルキル基を表す。
【0043】
1.3.化合物(A)と化合物(B)との質量比
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物中の、化合物(A)の含有量をMA(質量%)、化合物(B)の含有量をMB(質量%)とした場合、MA/MBの値は1~30であり、1~25であることが好ましく、1~20であることがより好ましい。化合物(A)と化合物(B)との質量バランスを示すMA/MBの値が前記範囲内にあると、窒化シリコンや酸化シリコンが露出した配線基板の配線等に及ぼす腐食によるダメージを抑制し、被処理体の表面より汚染を効率的に除去することができる。
【0044】
1.4.その他の成分
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、上述の成分および主成分である液状媒体の他、必要に応じて有機酸、アミン、水溶性高分子、その他の成分を含有してもよい。
【0045】
1.4.1.液状媒体
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、液状媒体を主成分とする液体である。液状媒体としては、水を主成分とした水系媒体が好ましい。このような水系媒体としては、水、水およびアルコールの混合媒体、水および水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等が挙げられる。これらの中でも、水、水およびアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。
【0046】
1.4.2.有機酸
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、有機酸を含有してもよい。有機酸は、カルボキシ基、スルホ基等の酸性基を1個以上有することが好ましい。なお、本発明における「有機酸」は、上述の化合物(A)や化合物(B)を含まない概念であり、異なる成分である。
【0047】
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸、フェ
ニル乳酸、フェニルコハク酸、ナフタレンスルホン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。これらの有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0048】
有機酸としては、アミノ酸を用いてもよい。アミノ酸としては、下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0049】
【化4】
(上記一般式(4)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、およびヘテロ原子を有する炭素数1~20の有機基よりなる群から選択されるいずれかを表す。)
【0050】
上記一般式(4)中のR、RおよびRにおける炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1~10の環状飽和炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基等を挙げることができ、これらの中でも炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0051】
上記一般式(4)中のR、RおよびRにおけるヘテロ原子を有する炭素数1~20の有機基としては、例えばカルボキシ基を有する炭素数1~20の炭化水素基、ヒドロキシ基を有する炭素数1~20の炭化水素基、アミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基、メルカプト基を有する炭素数1~20の炭化水素基、複素環を有する炭素数1~20の有機基等を挙げることができ、これらの基はさらに酸素、硫黄、ハロゲン等のヘテロ原子を含んでいてもよく、その一部は他の置換基で置換されていてもよい。
【0052】
上記一般式(4)で表される化合物としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、パリン、トリプトファン、ヒスチジン、2-アミノ-3-アミノプロパン酸、ドデシルアミノエチルアミノエチルグリシン等を挙げることができる。これらのアミノ酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0053】
有機酸としては、下記一般式(5)で表される化合物を用いることも好ましい。
【0054】
【化5】
(上記一般式(5)中、Rは、炭素数1~20の有機基を示す。)
【0055】
上記一般式(5)中のRにおける炭素数1~20の有機基としては、例えば炭素数6~20の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の不飽和脂肪族炭化水素基、環状飽和炭化水素基を有する炭素数6~20の有機基、不飽和環状炭化水素基を有する炭素数6~20の有機基、カルボキシ基を有する炭素数1~20の炭化水素基、ヒドロキシ基を有する
炭素数1~20の炭化水素基、アミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基、複素環基を有する炭素数1~20の有機基等を挙げることができる。これらの中でも、不飽和環状炭化水素基を有する炭素数6~20の有機基、カルボキシ基を有する炭素数1~20の炭化水素基が好ましく、アリール基を有する炭素数6~20の有機基、カルボキシメチル基が特に好ましい。ただし、上記一般式(5)で表される化合物の概念には、上記一般式(4)で表される化合物は含まれないものとする。
【0056】
上記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、ヒドロキシフェニル乳酸、ヒドロキシマロン酸等を挙げることができ、これらの中でもヒドロキシフェニル乳酸であることが好ましい。上記例示した化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0057】
有機酸の含有量は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材料、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材料、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材料等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても、有機酸の含有量を適宜変更することができる。有機酸の含有量は、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物を希釈して調製される洗浄剤もしくは非希釈タイプの半導体洗浄用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。有機酸の含有量が前記範囲内にあると、配線基板表面に付着した不純物を効果的に除去できる場合がある。また、過度のエッチングの進行をより効果的に抑制し、良好な被処理面を得ることができる場合がある。
【0059】
1.4.3.アミン
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、アミン(但し、アミノ酸を除く)を含有してもよい。アミンは、エッチング剤としての機能を有すると考えられる。アミンを含有することにより、CMP終了後における処理工程において、配線基板上の金属酸化膜(例えば、CuO、CuOおよびCu(OH)層)や有機残渣をエッチングして除去することができると考えられる。
【0060】
アミンは、水溶性アミンであることが好ましい。「水溶性」とは、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることをいう。アミンとしては、例えば、アルカノールアミン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等が挙げられる。
【0061】
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、1,3-プロパンジアミン等が挙げられる。第二級アミンとしては、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。これらのアミンは、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0062】
これらのアミンの中でも、配線基板上の金属酸化膜や有機残渣をエッチングする効果が
高い点で、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが好ましく、モノエタノールアミンがより好ましい。
【0063】
アミンの含有量は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材料、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材料、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材料等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても、アミンの含有量を適宜変更することができる。アミンの含有量は、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物を希釈して調製される洗浄剤もしくは非希釈タイプの半導体洗浄用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。アミンの含有量が前記範囲内にあると、CMP終了後における洗浄工程において、配線基板上の金属酸化膜や有機残渣をより効果的にエッチングして除去することができる場合がある。
【0065】
1.4.4.水溶性高分子
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子は、被処理体の表面に吸着して腐食を低減させる機能を有している。そのため、本実施形態に係る半導体洗浄用組成物が水溶性高分子を含有すると、被処理体の腐食を低減させることができる場合がある。「水溶性」とは、上述した定義と同義である。また、「水溶性高分子」とは、2以上の繰り返し単位が線状あるいは網目状に共有結合を介して連なった水溶性の化合物のことをいう。
【0066】
このような水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、およびこれらの塩;スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン等のモノマーと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸モノマーとの共重合体や、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等をホルマリンで縮合させた芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を含む重合体およびこれらの塩;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルオキサゾリン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミンなどのビニル系合成ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、加工澱粉などの天然多糖類の変性物などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの水溶性高分子は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
本実施形態で用いられる水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいが、2種以上の単量体を共重合させた共重合体であってもよい。このような単量体としては、カルボキシ基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、ヒドロキシ基を有する単量体、ポリエチレンオキシド鎖を有する単量体、アミノ基を有する単量体、複素環を有する単量体などを用いることができる。
【0068】
本実施形態で用いられる水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上1,500,000以下、より好ましくは3,000以上1,200,000以下である。なお、「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
【0069】
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物の25℃における粘度は、好ましくは5mPa・s未満であり、より好ましくは4mPa・s以下であり、さらに好ましくは2mPa・s以下であり、さらにより好ましくは1.2mPa・s以下であり、特に好ましくは1mPa・s以下である。半導体洗浄用組成物の25℃における粘度が前記範囲であると、半導体洗浄用組成物をろ過して精製する際に十分なろ過速度を出すことができ、実用に供するために十分なスループットを得ることができる。また、半導体洗浄用組成物の常温における粘度が前記範囲であると、半導体洗浄用組成物を用いた処理工程において、被処理体の表面に凹凸があった場合でも、該凹凸に組成物が侵入して凹凸表面に接触して処理することができるため、被処理体の表面をより均質に処理することができる。半導体洗浄用組成物の25℃における粘度が前記範囲を超えると、粘度が高くなりすぎるため、被処理体に半導体洗浄用組成物を安定して供給することができない場合がある。半導体洗浄用組成物の粘度は、添加する水溶性高分子の重量平均分子量や含有量によりほぼ決定されるので、それらのバランスを考慮しながら調整するとよい。
【0070】
なお、半導体洗浄用組成物の粘度とは、JIS K2283に準拠して測定されたウベローデ粘度のことをいう。
【0071】
水溶性高分子の含有量は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材料、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材料、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材料等の材質や、使用された半導体洗浄用組成物の組成により適宜変更することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても、水溶性高分子の含有量を適宜変更することができる。水溶性高分子の含有量は、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物を希釈して調製される洗浄剤もしくは非希釈タイプの半導体洗浄用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。水溶性高分子の含有量が前記範囲内にあると、腐食の抑制と半導体洗浄用組成物中に含まれていたパーティクルや金属不純物の配線基板上からの除去効果との両立が促進されて、より良好な被処理面が得られやすい。
【0073】
1.4.5.その他の成分
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、適宜必要な成分を含有してもよく、例えばpH調整剤や上述した化合物(A)および化合物(B)以外の界面活性剤(以下、「その他の界面活性剤」ともいう)等を含有してもよい。
【0074】
<pH調整剤>
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物のpHは、好ましくは7以下、より好ましくは6以下であり、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。半導体洗浄用組成物のpHが前記範囲内にあると、銅やタングステンを含む配線材料の腐食の抑制と有機残渣の除去効果との両立が促進されて、より良好な被処理面が得られやすい。
【0075】
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物において、上述した成分を含有しても所望のpHが得られない場合には、pHを上記範囲内に調整するために別途pH調整剤を添加してもよい。pH調整剤としては、例えば、リン酸、硝酸、硫酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニア等の塩基性化合物が挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0076】
<その他の界面活性剤>
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、上述した化合物(A)および化合物(B)以外の界面活性剤を含有してもよい。その他の界面活性剤としては、公知の界面活性剤を適宜使用することができるが、ノニオン性界面活性剤を好ましく使用することができる。その他の界面活性剤を含有することにより、CMPスラリー中に含まれていたパーティクルや金属不純物を配線基板上から除去する効果が高まり、より良好な被処理面が得られる場合がある。
【0077】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。上記例示したノニオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0078】
その他の界面活性剤の含有量は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材料、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材料、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材料等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
【0079】
さらに、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても、その他の界面活性剤の含有量を適宜変更することができる。その他の界面活性剤の含有量は、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物を希釈して調製される洗浄剤もしくは非希釈タイプの半導体洗浄用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上1質量%以下である。その他の界面活性剤の含有量が前記範囲内にあると、CMP終了後における処理工程において、被処理体の表面からCMPスラリー中に含まれていたパーティクルや金属不純物を効率的に除去することができる場合がある。
【0080】
1.5.半導体洗浄用組成物の調製方法
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、特に制限されず、公知の方法を使用することにより調製することができる。具体的には、水や有機溶媒等の液状媒体に上述した各成分を溶解させて、ろ過することにより調製することができる。上述した各成分の混合順序や混合方法については特に制限されない。
【0081】
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物の調製方法では、必要に応じて、デプスタイプまたはプリーツタイプのフィルタでろ過して粒子量を制御することが好ましい。ここで、デプスタイプのフィルタとは、深層ろ過または体積ろ過タイプのフィルタとも称される高精度ろ過フィルタである。このようなデプスタイプのフィルタは、多数の孔が形成されたろ過膜を積層させた積層構造をなすものや、繊維束を巻き上げたものなどがある。デプスタイプのフィルタとしては、具体的には、プロファイルII、ネクシスNXA、ネクシスNXT、ポリファインXLD、ウルチプリーツプロファイル等(全て、日本ポール社製)、デプスカートリッジフィルタ、ワインドカートリッジフィルタ等(全て、アドバンテック社製)、CPフィルタ、BMフィルタ等(全て、チッソ社製)、スロープピュア、ダイア、マイクロシリア等(全て、ロキテクノ社製)等が挙げられる。
【0082】
プリーツタイプのフィルタとしては、不織布、ろ紙、金属メッシュなどからなる精密ろ
過膜シートをひだ折り加工した後、筒状に成形するとともに前記シートのひだの合わせ目を液密にシールし、かつ、筒の両端を液密にシールして得られる筒状の高精度ろ過フィルタが挙げられる。具体的には、HDCII、ポリファインII等(全て、日本ポール社製)、PPプリーツカートリッジフィルタ(アドバンテック社製)、ポーラスファイン(チッソ社製)、サートンポア、ミクロピュア等(全て、ロキテクノ社製)等が挙げられる。
【0083】
フィルタは、定格ろ過精度が0.01~20μmであるものを用いることが好ましい。定格ろ過精度が前記範囲のものを用いることにより、パーティクルカウンタで測定したときの、1mL当たりにおける粒子径20μm以上の粒子の数が0個であるろ液を効率良く得ることができる。また、フィルタに捕捉される粗大粒子の数が最小限になるため、フィルタの使用可能期間が延びる。
【0084】
2.洗浄剤
本発明における「洗浄剤」とは、上述の半導体洗浄用組成物に液状媒体を添加して希釈することにより調製されたもの、若しくは上述の半導体洗浄用組成物自体であって、実際に被処理面を洗浄する際に用いられる液剤のことをいう。上述の半導体洗浄用組成物に液状媒体を添加して希釈することにより洗浄剤を調製する場合、上述の半導体洗浄用組成物は濃縮タイプの半導体洗浄用組成物であり、通常、各成分が濃縮された状態で存在する。そのため、各ユーザーが、上述の濃縮タイプの半導体洗浄用組成物を適宜液状媒体で希釈して洗浄剤を調製する。一方、上述の半導体洗浄用組成物自体が洗浄剤である場合、上述の洗浄用組成物は非希釈タイプの半導体洗浄用組成物であり、洗浄剤としてそのまま使用に供する。
【0085】
ここで希釈に用いられる液状媒体は、上述の半導体洗浄用組成物に含有される液状媒体と同義であり、上記例示した液状媒体の中から適宜選択することができる。
【0086】
濃縮タイプの半導体洗浄用組成物に液状媒体を加えて希釈する方法としては、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物を供給する配管と液状媒体を供給する配管とを途中で合流させて混合し、この混合された洗浄剤を被処理面に供給する方法がある。この混合は、圧力を加えた状態で狭い通路を通して液同士を衝突混合させる方法;配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法;配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など通常に行われている方法を採用することができる。
【0087】
また、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物に液状媒体を加えて希釈する別の方法としては、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物を供給する配管と液状媒体を供給する配管とを独立に設け、それぞれから所定量の液を被処理面に供給し、被処理面上で混合する方法がある。さらに、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物に液状媒体を加えて希釈する別の方法としては、1つの容器に、所定量の濃縮タイプの半導体洗浄用組成物と所定量の液状媒体を入れ混合してから、被処理面にその混合した洗浄剤を供給する方法がある。
【0088】
濃縮タイプの半導体洗浄用組成物に液状媒体を加えて希釈する際の希釈倍率としては、濃縮タイプの半導体洗浄用組成物1質量部を、液状媒体を添加して1~500質量部(1~500倍)に希釈することが好ましく、20~500質量部(20~500倍)に希釈することがより好ましく、30~300質量部(30~300倍)に希釈することが特に好ましい。なお、上述の濃縮タイプの半導体洗浄用組成物に含有される液状媒体と同じ液状媒体で希釈することが好ましい。このように半導体洗浄用組成物を濃縮された状態とすることにより、洗浄剤をそのまま運搬し保管する場合と比較して、より小型な容器での運搬や保管が可能になる。その結果、運搬や保管のコストが低減できる。また、そのまま洗浄剤を濾過等するなどして精製する場合よりも、より少量の洗浄剤を精製することになるので、精製時間の短縮化を行うことができ、これにより大量生産が可能になる。
【0089】
3.半導体基板の洗浄方法
本発明の一実施形態に係る半導体基板の洗浄方法は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくとも一方が露出した配線基板を、上述の半導体洗浄用組成物を用いて処理する工程を含む。以下、本実施形態に係る半導体基板の洗浄方法の一例について、図面を用いながら詳細に説明する。
【0090】
<配線基板の作製>
図1は、本実施形態に係る半導体基板の洗浄方法に用いられる配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。かかる配線基板は、以下のプロセスを経ることにより形成される。
【0091】
図1は、CMP処理前の被処理体を模式的に示す断面図である。図1に示すように、被処理体100は、基体10を有する。基体10は、例えばシリコン基板とその上に形成された酸化シリコン膜から構成されていてもよい。さらに、基体10には、図示していないが、トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。
【0092】
被処理体100は、基体10の上に、配線用凹部20が設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の表面ならびに配線用凹部20の底部および内壁面を覆うように設けられたバリアメタル膜14と、配線用凹部20を充填しかつバリアメタル膜14の上に形成された配線金属膜16と、が順次積層されて構成される。
【0093】
絶縁膜12としては、例えば、真空プロセスで形成された酸化シリコン膜(例えば、PETEOS膜(Plasma Enhanced-TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced-TEOS膜)、熱化学気相蒸着法により得られる酸化シリコン膜等)、FSG(Fluorine-doped silicate glass)と呼ばれる絶縁膜、ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、SiON(Silicon oxynitride)と呼ばれる絶縁膜、Siliconnitride等が挙げられる。
【0094】
バリアメタル膜14としては、例えば、タンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、およびこれらの化合物等が挙げられる。バリアメタル膜14は、これらの1種から形成されることが多いが、チタンと窒化チタンなど2種以上を併用することもできる。
【0095】
配線金属膜16としては、例えば、銅、アルミニウム、タングステン、およびこれらの金属の合金等が挙げられる。配線金属膜16は、これらの1種から形成されることが多い。
【0096】
配線金属膜16は、図1に示すように、配線用凹部20を完全に埋めることが必要となる。そのためには、通常、化学蒸着法、物理蒸着法または原子層堆積法により、100~10,000Åの配線金属膜を堆積させる。
【0097】
次いで、図1の被処理体100のうち、配線用凹部20に埋没された部分以外の配線金属膜16をバリアメタル膜14が露出するまでCMPにより高速研磨する(第1研磨工程)。さらに、表面に露出したバリアメタル膜14をCMPにより研磨する(第2研磨工程)。このようにして、図2に示すような配線基板200が得られる。
【0098】
<配線基板の処理>
次いで、図2に示す配線基板200の表面(被処理面)を上述の洗浄剤を用いて処理する。本実施形態に係る半導体基板の洗浄方法によれば、CMP終了後の酸化シリコンや窒
化シリコンが露出した配線基板を処理する際に、配線基板に及ぼす腐食によるダメージを抑制し、被処理体の表面より汚染を効率的に除去することができる。
【0099】
洗浄方法としては、特に制限されないが、配線基板200に上述の洗浄剤を直接接触させる方法により行われる。洗浄剤を配線基板200に直接接触させる方法としては、洗浄槽に洗浄剤を満たして配線基板を浸漬させるディップ式;ノズルから配線基板上に洗浄剤を流下しながら配線基板を高速回転させるスピン式;配線基板に洗浄剤を噴霧して洗浄するスプレー式等の方法が挙げられる。また、このような方法を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の配線基板を同時に処理するバッチ式処理装置、1枚の配線基板をホルダーに装着して処理する枚葉式処理装置等が挙げられる。
【0100】
本実施形態に係る半導体基板の洗浄方法において、洗浄剤の温度は、通常室温とされるが、性能を損なわない範囲で加温してもよく、例えば40~70℃程度に加温することができる。
【0101】
また、上述の洗浄剤を配線基板200に直接接触させる方法に加えて、物理力による洗浄方法を併用することも好ましい。これにより、配線基板200に付着したパーティクルによる汚染の除去性が向上し、処理時間を短縮することができる。物理力による洗浄方法としては、洗浄ブラシを使用したスクラブ洗浄や超音波洗浄が挙げられる。
【0102】
さらに、本実施形態に係る半導体基板の洗浄方法による洗浄の前および/または後に、超純水または純水による洗浄を行うことが望ましい。
【0103】
4.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0104】
4.1.実施例1~22、比較例1~7
4.1.1.半導体洗浄用組成物の調製
ポリエチレン製容器に、下表1~下表3に示す含有割合となるように各成分を添加し、イオン交換水を適量入れ、15分間撹拌した。この混合物に、全構成成分の合計量が100質量部となるようにイオン交換水とアンモニア水(富士フイルム和光純薬社製、商品名「アンモニア水」)を必要に応じて加え、下表1~下表3に示すに示すpH、含有量となるように組成物を調製した。その後、孔径5μmのフィルタで濾過して、下表1~下表3に示す各半導体洗浄用組成物を得た。なお、pHは、株式会社堀場製作所製のpHメーター「F52」を用いて測定した。
【0105】
4.1.2.化学機械研磨用組成物の調製
高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業社製、品番:PL-3;シリカ濃度20%)5kgと3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Alfa Aesar社製、商品名:(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン)6gを混合し、2時間加熱還流することにより、チオール化シリカゾルを得た。そのシリカゾルに、過酸化水素を加えて8時間加熱還流することにより、シリカ粒子の表面を酸化させてスルホン酸基を固定化した。このようにしてシリカ濃度が20%、一次粒子径45nm、二次粒子径68nmのシリカ粒子分散体を得た。続いて、容量20Lのポリエチレン製の瓶に純水14,043g、20%シリカ粒子水分散体を3,940g、リン酸(富士フイルム和光純薬社製、商品名「りん酸」)43g、ポリビニルピロリドン(日本触媒社製、商品名「ポリビニルピロリドン」)2gを添加し、室温で1時間攪拌することで化学機械研磨用組成物Aを調製した。
【0106】
4.1.3.評価試験
「4.1.2.化学機械研磨用組成物の調製」の項で調製した化学機械研磨用組成物Aを用いて、直径12インチのシリコン窒化膜250nm付きウェハおよび直径12インチのシリコン酸化膜(p-TEOS膜)1000nm付きウェハをそれぞれ被処理体として、下記の条件で研磨処理を行い、その後、「4.1.1.半導体洗浄用組成物の調製」で調製した洗浄剤を用いて下記の条件で洗浄処理を行った。最後に、下記の条件でブラシスクラブ洗浄を行い、洗浄後の被処理体を得た。
【0107】
洗浄後の被処理体の表面を欠陥検査装置(ケーエルエー・テンコール社製、型式「Surfscan SP2」)を用いて全面の欠陥数を計測した。シリコン酸化膜における欠陥数およびシリコン窒化膜における欠陥数がいずれも100個未満であれば良好であると判断し、シリコン酸化膜における欠陥数およびシリコン窒化膜における欠陥数の少なくともいずれかが100個以上であれば実用に供することができないため不良と判断した。その結果を下表1~下表3に示す。
【0108】
<研磨処理条件>
・研磨装置:アプライド・マテリアルズ社製、型式「Reflexion―LK」
・研磨パッド:富士紡績社製、「多孔質ポリウレタン製パッド;H800-type1(3-1S)775」
・化学機械研磨用組成物:上記で調製した化学機械研磨用組成物A
・化学機械研磨用組成物供給速度:300mL/分
・定盤回転数:90rpm
・ヘッド回転数:91rpm
・ヘッド押し付け圧:2.0psi
・処理時間:60sec
【0109】
<洗浄処理>
・研磨装置:アプライド・マテリアルズ社製、型式「Reflexion―LK」
・研磨パッド:富士紡績社製、「多孔質ポリウレタン製パッド;H800-type1(3-1S)775」
・洗浄剤:上記で調製した半導体洗浄用組成物
・洗浄剤供給速度:300mL/分
・定盤回転数:50rpm
・ヘッド回転数:51rpm
・ヘッド押し付け圧:0.5psi
・処理時間:30sec
【0110】
<ブラシスクラブ洗浄条件>
・処理剤:純水
・上部ブラシ回転数:400rpm
・下部ブラシ回転数:400rpm
・基板回転数:50rpm
・処理剤供給速度:1200mL/分
・処理時間:40秒
【0111】
4.1.4.評価結果
下表1~下表3に、各実施例および各比較例で使用した半導体洗浄用組成物の組成、ならびに評価結果を示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
上表1~上表3中、各化合物は以下に示すものを用いた。
<化合物A>
・オクチル硫酸トリエタノールアミン:オクチル硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、商品名「n―オクチル硫酸ナトリウム」)5%水溶液を強カチオンイオン交換樹脂(Merck type I)でナトリウムを除去した後、トリエタノールアミン(東京化成工業社製、商品名「Triethanolamine」)でpH7に調整し、純水で希釈してオクチル硫酸トリエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・デシル硫酸トリエタノールアミン:デシル硫酸ナトリウム(東京化成工業社製、商品名「Sodium Decyl Sulfate」)5%水溶液を用いた以外は、上記オク
チル硫酸トリエタノールアミンと同様の方法により、デシル硫酸トリエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・ドデシル硫酸トリエタノールアミン:花王社製、商品名「エマールTD、40%水溶液」
・ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン:東邦化学工業社製、商品名「ルノックスS-40TD、38%水溶液」
・ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸トリエタノールアミン:東邦化学社製、商品名「アルスコープN―335T、35.5%水溶液」
・ポリオキシエチレンドデシルエーテル酢酸トリエタノールアミン:ポリオキシエチレンドデシルエーテル酢酸ナトリウム(三洋化成工業社製、商品名「ビューライトLCA」)5%水溶液用いた以外は、上記オクチル硫酸トリエタノールアミンと同様の方法により、ポリオキシエチレンドデシルエーテル酢酸トリエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・デシル硫酸モノエタノールアミン:デシル硫酸ナトリウム(東京化成工業社製、商品名「Sodium Decyl Sulfate」)5%水溶液を強カチオンイオン交換樹脂(Merck type I)でナトリウムを除去した後、アミノエタノール(富士フイルム和光純薬社製、商品名「2-アミノエタノール」)でpH7に調整し、純水で希釈してデシル硫酸モノエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
<化合物B>
・トリデシル硫酸トリエタノールアミン:トリデシル硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、商品名「1-トリデシル硫酸ナトリウム」)5%水溶液を用いた以外は、上記オクチル硫酸トリエタノールアミンと同様の方法により、トリデシル硫酸トリエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・テトラデシル硫酸トリエタノールアミン:テトラデシル硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、商品名「テトラデシル硫酸ナトリウム」)5%水溶液を用いた以外は、上記オクチル硫酸トリエタノールアミンと同様の方法により、テトラデシル硫酸トリエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・ヘキサデシル硫酸トリエタノールアミン:ヘキサデシル硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、商品名「ヘキサデシル硫酸ナトリウム」)5%水溶液を用いた以外は、上記オクチル硫酸トリエタノールアミンと同様の方法により、ヘキサデシル硫酸トリエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・オクタデシル硫酸トリエタノールアミン:オクタデシル硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、商品名「オクタデシル硫酸ナトリウム」)5%水溶液を用いた以外は、上記オクチル硫酸トリエタノールアミンと同様の方法により、オクタデシル硫酸トリエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸トリエタノールアミン:ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム(三洋化成工業社製、商品名「ビューライトECA」)5%水溶液を用いた以外は、上記オクチル硫酸トリエタノールアミンと同様の方法により、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸トリエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・トリデシル硫酸モノエタノールアミン:トリデシル硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、商品名「1-トリデシル硫酸ナトリウム」)5%水溶液を用いた以外は、上記デシル硫酸モノエタノールアミンと同様の方法により、トリデシル硫酸モノエタノールアミン1%水溶液を調製して使用した。
・トリデシル硫酸アンモニウム:トリデシル硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、商品名「1-トリデシル硫酸ナトリウム」)5%水溶液を強カチオンイオン交換樹脂(Merck type I)でナトリウムを除去した後、アンモニア(富士フイルム和光純薬社製、商品名「アンモニア水」)でpH7に調整し、純水で希釈してトリデシル硫酸アンモニウム1%水溶液を調製して使用した。
<有機酸>
・マレイン酸:富士フイルム和光純薬社製
・マロン酸:富士フイルム和光純薬社製
・クエン酸:富士フイルム和光純薬社製
・酢酸:富士フイルム和光純薬社製
<無機酸>
・リン酸:富士フイルム和光純薬社製、商品名「りん酸」
・硫酸:富士フイルム和光純薬社製、商品名「硫酸」(10%水溶液)
・硝酸:東京化成工業社製、商品名「Nitric Acid」(67%水溶液)
<塩基性化合物>
・テトラエチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Tetraetylammonium Hydroxide (10% in Water)」
・テトラブチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Tetrabutylammonium Hydroxide (40% in Water)」
<アミン>
・アミノエタノール:富士フイルム和光純薬社製、商品名「2-アミノエタノール」
・トリエタノールアミン:東京化成工業社製、商品名「Triethanolamine」
<水溶性高分子>
・ポリアクリル酸:東亜合成社製、商品名「ジュリマーAC-10L」
・ポリマレイン酸:日油社製、商品名「ノンポール PMA-50W」
・ポリスチレンスルホン酸:Alfa Aesar社製、商品名「ポリ(スチレンスルホン酸), ナトリウム塩、M.W.70,000」
・ポリビニルアルコール:日本酢ビ・ポバール株式会社製、商品名「PXP-05」
・ポリエチレングリコール:富士フイルム和光純薬社製、商品名「ポリエチレングリコール400」
<アミノ酸>
・ヒスチジン:富士フイルム和光純薬社製、商品名「L―ヒスチジン」
・ドデシルアミノエチルアミノエチルグリシン:三洋化成社製、商品名「レボンS」
・L-(+)-リシン:富士フイルム和光純薬社製、商品名「L-リシン一塩酸塩」
【0116】
上表1~上表3から明らかなように、化合物(A)と化合物(B)との質量バランスを示すMA/MBの値が所定範囲内にある実施例1~22に係る半導体洗浄用組成物を使用することで、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜を有する被処理面を処理する際に、表面欠陥が少なくダメージ抑制に有用であることがわかる。このことから、本発明に係る半導体洗浄用組成物を用いれることにより、窒化シリコンや酸化シリコンが露出した配線基板に及ぼす腐食によるダメージを抑制し、被処理体の表面より汚染を効率的に除去できると推察される。
【0117】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0118】
10…基体、12…絶縁膜、14…バリアメタル膜、16…配線金属膜、20…配線用凹部、100…被処理体、200…配線基板
図1
図2