(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037791
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】微生物用培養器材、培地成分入り微生物用培養器材、及びこれを用いた微生物数計測法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230309BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144571
(22)【出願日】2021-09-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520319462
【氏名又は名称】高崎 真一
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】寺村 哉
(72)【発明者】
【氏名】高崎 真一
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA03
4B029AA07
4B029BB01
4B029CC02
4B029FA09
4B029GA01
4B029GB01
4B029GB02
4B029GB06
(57)【要約】
【課題】 検体中の微生物数を、操作性が高く、かつ簡単に製造することができ、さらに、検体中の微生物数を容易に計測することができる培養器材を提供する。
【解決手段】 本発明は、培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有し、前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備える、微生物用培養器材を提供する。本発明は、前記培養器材の前記凹部に培地成分が収容された状態で前記凸部が嵌入された構成を備える、培地成分入り微生物用培養器材を提供する。本発明は、前記培地成分入り微生物用培養器材を用いて、検体中の微生物を培養し、微生物数を計測する方法を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、
前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有し、
前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備える、微生物用培養器材。
【請求項2】
前記凹部と前記凸部との嵌入がなされた状態で傾斜面を有する空間が形成されるように構成されている、請求項1に記載の微生物用培養器材。
【請求項3】
前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に溝部を備える、請求項1又は2に記載の微生物用培養器材。
【請求項4】
前記溝部と前記凹部との間に、前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備える、請求項3に記載の微生物用培養器材。
【請求項5】
前記第1部材及び/又は前記第2部材は光透過性の合成樹脂材で形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の微生物用培養器材。
【請求項6】
前記第1部材と前記第2部材は一体成形されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の微生物用培養器材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の微生物用培養器材の前記凹部に培地成分が収容された状態で前記凸部が嵌入された構成を備える、培地成分入り微生物用培養器材。
【請求項8】
前記培地成分は、ゲル化剤と栄養成分とを少なくとも含む、請求項7に記載の培地成分入り微生物用培養器材。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の培地成分入り微生物用培養器材を用いて、検体中の微生物を培養し、微生物数を計測する方法。
【請求項10】
前記培地成分入り微生物用培養器材の凹部に検体を添加する工程、
添加後に、前記第1部材の凹部に前記第2部材の凸部を嵌入する工程、
嵌入後に、前記検体に含まれる微生物を培養する工程、及び
培養後に、前記微生物のコロニー数を計測する工程、
を含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物用培養器材、培地成分入り微生物用培養器材、及びこれを用いた微生物数計測法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物数を計測する方法としては、混釈培養法や寒天平板塗抹法等が知られている(非特許文献1)。
これらの方法において微生物を培養するのに用いる寒天培地は、栄養成分や選択成分を寒天と共に加熱溶解した培地を固化させたものであり、培養・計測に先立って予め調製、滅菌しておく必要がある。特に混釈培養法においては、これらの培地調製を検体の供試前に予め完了し、培地を約50℃に保温した状態にしておく必要がある。この混釈培養法においては、比較的高温に保温された培地を検体と直接混合することから、検体中の微生物の損傷状態によっては微生物の発育に影響を与え、十分に検出できない可能性がある。一方、寒天平板塗抹法においては、熱による検体中の微生物への影響はないが、検体を平板培地に供試するに際して、培地に検体を完全に吸収させながら塗布させるため、予め検体の供試前に培地表面を乾燥させる必要があり、また塗抹操作自体が煩雑であり、時間を要するという問題もある。
【0003】
近年、微生物の検出・計測をより簡便かつ効率的に行うため、予め培地の調製が不要な乾燥培地成分入りの乾燥簡易培養器材が種々開発されている。かかる乾燥簡易培養器材では、使用時に液体検体を乾燥培地成分に添加すると、その検体中の水分により培地を形成させてそのまま培養に供することができる。
【0004】
例えば、特許文献1では、操作性が高く、かつ簡単に製造することができ、さらに、検体中の微生物数を容易に計測することができる、微生物の培養器材を提供するために、(a)上部材、(b)凹部を有する下部材、及び(c)培地成分を有し、(c)培地成分は、(c1)グアーガム及びキサンタンガムから選択される一以上と、(c2)栄養成分とを含有する、微生物の培養器材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第2版 微生物学実習提要 59ページ 4.3菌量の測定と培養法 東京大学医科学研究所学友会編 丸善株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そして、特許文献1では、微生物用の培養器材において、凸部を有する上部材と凹部を有する下部材を勘合させ、上部材の凸部の上面と下部材の凹部の底面及びこれらの側面とで囲まれる空間の体積を、培地領域の空間体積分まで含ませた設計にすることで、この空間内で水分を含む検体と培地成分とを押圧しながら接触させて培地を形成できることが開示されている。
【0008】
かかる特許文献1の培養器材を、本発明者らが再現し、当該培養器材の下部材の凹部にある培地成分に検体液を添加し上部材を閉め上部材の凸部を前記凹部に嵌合させることで検体液を培地成分に拡散させ、その後微生物コロニー数を計測するための培養を行った。ところが、培養後の培養器材において、凹部の底面及び凸部の天面以外で略平行で対向する面同士の間、当該対向面同士の間のより具体的な例として、略平行な凹部の外周面(窪みの周面)と凸部の外周面(突起の側周面)との間、第1・第2の両部材の外周領域の略平行な対向面(内側面同士)の間に、微生物検出用の発色やコロニー形成がみられた。本発明者らは、この現象について検証を行った結果、培養前に、培地成分に検体液を添加後に凸部及び凹部を嵌合し検体液を培地成分に拡散させたと同時に、上部材の内側面と下部材の内側面とが水分を介して接触することによって毛細管現象が生じ、検体液が内側面同士の間を移動し培地領域の凹部の外部に漏れ出したためと考えた。
【0009】
さらに、微生物数を計測する方法を行う操作者にとって、コロニー数の計測時に、培養器材における天面及び底面以外の領域で、微生物検出用の発色やコロニー形成が存在しない方が、検体中の微生物数をより良好に容易に計測することができる。このため、操作者が特許文献1のような培養器材を用いた場合、操作者にとって、培養後に微生物検出用の発色やコロニー形成が天面及び底面以外の領域に存在させないように操作に細心の注意を払うこと、例えば、検体液を培地成分全体に均一に拡散させるために凸部及び凹部を慎重に嵌合させたり外側から慎重に押さえること、嵌合後の培養器材を略水平を保ち配置又は培養すること等は、大量の検体数を処理するために処理速度や処理効率も求められるため、非常に困難である。
【0010】
そこで、このような状況を鑑みて、本発明は、検体中の微生物を簡便な操作で培養することができ、検体中の微生物数を容易に計測することができる微生物の培養器材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の末、微生物用培養器材において、凸部が凹部に嵌入がなされた状態で凹部又は凸部の少なくとも一方の外周領域に凹部に向けて下り勾配となる傾斜構造を備える、又は、凸部が凹部に嵌入がなされた状態で凹部の外周側に傾斜面を有する空間が形成されるように構成することで、検体中の微生物を簡便な操作で培養することができ、微生物数を容易に計測することができることを見出した。さらに、本発明者らは、凹部及び/又は凸部の外周領域に傾斜構造及び/又は傾斜面を有する内部空間を備えることで、検体液が凹部(より具体的には使用時の培地)の外に漏れ出すことを抑制でき、培地中に均一に検体液が拡散し一定面積及び一定濃度の培地形成が可能となり、微生物の培養及び計測をより安定的で簡便に実現できることもさらに見出した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りである。
培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、
前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有し、
前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備える、微生物用培養器材。
前記凹部と前記凸部との嵌入がなされた状態で傾斜面を有する空間が形成されるように構成されていてもよい。
前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に溝部を備えていてもよい。
前記溝部と前記凹部との間に、前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備えてもよい。
前記第1部材及び/又は前記第2部材は光透過性の合成樹脂材で形成されていてもよい。
前記第1部材と前記第2部材は一体成形されていてもよい。
【0013】
前記微生物用培養器材の前記凹部に培地成分が収容された状態で前記凸部が嵌入された構成を備える、培地成分入り微生物用培養器材。
前記培地成分は、ゲル化剤と栄養成分とを少なくとも含んでもよい。
【0014】
前記培地成分入り微生物用培養器材を用いて、検体中の微生物を培養し、微生物数を計測する方法。
前記方法において、前記培地成分入り微生物用培養器材の凹部に検体を添加する工程、
添加後に、前記第1部材の凹部に前記第2部材の凸部を嵌入する工程、
嵌入後に、前記検体に含まれる微生物を培養する工程、及び
培養後に、前記微生物のコロニー数を計測する工程、
を含んでもよい。
【0015】
なお、本明細書において「検体」とは、特に限定されないが、通常は、検体液であり、具体的には飲料水、清涼飲料水、工業用水、製薬用水、透析水、尿等の水性の液体検体等である。また、固形の検体を希釈液等により乳剤又は懸濁液としたものも含まれる。
また、本明細書において「微生物」とは、通常は、細菌類、真菌類を指し、一般細菌、枯草菌、大腸菌、大腸菌群、ブドウ球菌、ビブリオ属細菌、腸球菌、酵母、カビ等をいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検体中の微生物を、簡便な操作で培養することができ、検体中の微生物数を容易に計測することができる。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の培養器材の一態様を表す図である。
図1Aは第1部材の凹部と第2部材の凸部が嵌入していない状態の培養器材の正投影図であり、底面及び天面がみえる側の図である。
図1Bは、
図1Aの線I-I’での断面図の一例を表す。
図1Cは、第2部材の凸部を第1部材の凹部に嵌入させようとしている状態を表す断面図である。
【
図2】本発明の培養器材の一態様を表す図である。
図2Aは、第1部材の凹部と第2部材の凸部とが嵌入した状態の培養器材の正投影図であり、第2部材の外側からみたときの図である。
図2Bは、
図2Aの線I-I’での断面図の一例を示す。
図2Cは、培養器材の凹部と凸部との間に培地成分が収容され、凸部が凹部に嵌入された状態での断面図の一例を示す。
【
図3】
図3Aは、本実施形態の培養器材の一態様及び参考例の培養器材の写真図であり、これらは嵌入していない状態で底面及び天面がみえる側の図であり、縦方向がX軸方向である。また、
図13Bは、
図3A左側の本実施形態の培養器材の一態様を、右に90°回転した図である。
図3Aの左側の培養器材は、本実施形態の培養器材の一態様であり、培地成分なしで凸部が嵌入していないときの実施例1の培養器材の図でもある。
図3Aの左側は、傾斜部及び溝部を備える培養器材であって第1部材の凹部と第2部材の凸部が嵌入していない状態の本実施形態の培養器材の一態様の正投影図であり、底面及び天面がみえる側の図である。
図3Aの右側は、参考例の培養器材であり、傾斜部を備えないが溝部を備える培養器材であって第1部材の凹部と第2部材の凸部が嵌入していない状態の培養器材の正投影図であり、底面及び天面がみえる側の図である。
【
図4】
図4の左図は実施例1の培地成分入り培養器材を用いて、検出されたコロニーの写真を表す図である。
図4の右図は参考例1の培地成分入り培養器材を用いて、検出されたコロニーの写真を示す図である。
図4の左図の培養器材にある矢印は、培養後に発色拡散が発生した箇所を示す。
【
図5】
図5Aは、本発明の培養器材の第1部材の一態様として、傾斜部及び溝部を備える第1部材10aを表す図である。
図5Bは、凹部の外周がX軸方向に対して垂直であって傾斜部を備えておらず、溝部を備える参考例の第1部材10bを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。また、各数値範囲の上限値と下限値は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0019】
<1.本発明に係る微生物用培養器材>
本発明は、培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有する構成を備える、微生物用培養器材を提供することができ、好適には前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備える微生物用培養器材である。そして、前記凹部に前記凸部の嵌入がなされた状態の微生物用培養器材では、前記凸部の天面と前記凹部の底面とが、接触状態又は非接触状態のいずれでもよい。さらに、本発明は、当該微生物用培養器材における凹部の底面上に及び/又は凸部の天面上に培地成分を配置してもよい。
また、本発明は、前記微生物用培養器材の前記凹部に培地成分が収容された状態で前記凸部が嵌入された構成を備える、培地成分入り微生物用培養器材を提供することもできる。前記凹部に前記凸部が嵌入された状態の培養器材において、前記培地成分は、凹部及び凸部との間に収容されていることが好適である。
【0020】
本発明の微生物用培養器材を用いることで、検体中の微生物を、簡便な操作で培養し、その数を容易に計測することができる。また、本発明の微生物用培養器材は、複雑な構成を採用しなくともよいため、製造も簡単にできる。
本発明の微生物用培養器材又は培地成分入り微生物用培養器材は、操作性が高く、安全に使用でき、かつ簡単に製造することができ、さらに、検体中の微生物数を容易に計測することができる。
【0021】
以下、本発明の微生物用培養器材(以下、「本発明の培養器材」ともいう)を、図面を参照してより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
本発明の培養器材1は、培地成分を収容可能な凹部11を有する第1部材10、前記凹部11に嵌入し得る凸部21を有する第2部材20を有する(
図1、
図2等参照)。
本発明の培養器材1は、第1部材10の凹部11に、第2部材20の凸部21を嵌入することができ、当該嵌入がなされた状態において、当該凸部21の天面22が当該凹部11の底面12に接触状態となるような構成を備えてもよいし、当該凸部21の天面22が当該凹部11の底面12に接触しない状態(以下、「非接触状態」ともいう)となるような構成を備えてもよい。
なお、本明細書において、培養器材の長手方向をX方向、短手方向をY方向、高さ方向をZ軸方向とする。また、線I-I’は、長手方向に沿って凹部の中心を通過する線である。
【0022】
本発明の培養器材1は、第1部材10の凹部11に第2部材20の凸部21が嵌入するように閉じることで、底面12と天面22とを内側にして、嵌入した状態の微生物用の培養器材1を得ることができる(
図1及び
図2等参照)。この嵌入した状態の微生物用の培養器材1は、これら部材の端部等を用いて開くことができ、開くときに嵌入した状態の凹部11と凸部21とを外すことができる。培養器材の開閉時に、培地成分を底面12及び/又は天面22に塗着してもよく、検体液を培地成分に適用してもよい。
【0023】
さらに、第1部材10の凹部11又は第2部材20の凸部21の少なくとも一方の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部15を備えることが好適である(
図1及び
図2等参照)。当該外周領域とは、凹部の外周13から第1部材の端までの領域又は凸部の外周から第2部材の端までの領域をいう。
【0024】
本発明の培養器材1は、第1部材10及び第2部材20を有しており、これら部材が一体成形されていてもよいし、別々に分離した第1部材10及び第2部材20から構成されていてもよい。
【0025】
<第1部材及び第2部材>
第1部材10は、培地成分を収容可能な凹部11を有することが好適であり、当該培地成分については後述する。
図3Aは、第1部材10を、凹部11の底面12(Z軸方向)からみたときの図である。底面側にある外周領域の面は、対向面同士を良好に接触させる等の観点から、平面であることが好適である。
さらに、微生物用培養器材の線I-I’での断面について、
図1B、
図1C、
図2B、
図2C等に示すが、第1部材の断面はこれらに特に限定されない。例えば、凹部の外周領域の部材の高さ(Z軸方向)は、特に限定されず、適宜変更が可能である。また、凹部の高さ(Z軸方向)は、特に限定されず、適宜変更可能である。
また、凹部11と後述する溝部30との間の幅(例えばX軸方向)は、特に限定されず、適宜変更が可能であり、当該幅部分の部材の高さ(Z軸方向)は、特に限定されず、適宜変更が可能である。
【0026】
第2部材20は、凹部11に嵌入し得る凸部21を有することが好適である。
図2Aは、第2部材20を、凸部21の天面22の反対側(Z軸方向)からみたときの図である。天面側にある外周領域の面は、対向面同士を良好に接触させる等の観点から、平面であることが好適である。
さらに、線I-I’での第2部材の断面は、特に限定されないが、例えば、凸部の外周領域の部材の高さ(Z軸方向)は、特に限定されず、適宜変更が可能である。また、凸部の高さ(Z軸方向)は、特に限定されず、適宜変更可能であり、凹部に嵌入しやすいように又は第1及び第2の両部材の外周領域の対向面同士が略平行になるように、凸部の高さを適宜変更可能である。
【0027】
また、凹部11の底面12及び凸部21の天面22は、それぞれ、平面でも曲面でもよいが、操作性の観点から、平面が好適である。平面であることにより、検体液を均一に第1部材の凹部に簡便に広げることができる。
底面の及び天面の面形状は、特に限定されず、例えば、円状、楕円状、多角形状等が挙げられるが、このうち円状が、操作性及び培養計測の観点から好適である。なお、多角形には、八角形、六角形、四角形、三角形等が挙げられるがこれらに限定されない。
底面及び天面は、両方が同じ平面であって同じ面形状であることが好適であり、さらに好適には、底面の面積及び天面の面積が実質的に同じである。また、円状の底面を有する凹部は、20~30cm2の底面積を有することが、1mL検体液の適用に適しているので、好適である。
【0028】
好ましい態様では、第2部材20は、第1部材10の凹部11と互いに嵌入しうる立体形状である凸部21を有するように構成されている(
図2B)。このときの凸部及び凹部は、嵌入しうる形状であれば任意の立体形状でもよく、当該立体形状として、例えば、多角柱状(例えば六角柱等)、楕円柱状、円柱状、錐台状(例えば円錐台等)等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、円柱状又は円錐台状が、製造容易の観点及び嵌入のしやすさの観点から好適である。
凹部の嵌入部分の高さ(Z軸方向)は、特に限定されないが、好ましくは0.5~5mm、より好ましくは1~3mm、さらに好ましくは2~3mmであり、底面の最大長さは、特に限定されないが、好ましくは30~80mm、より好ましくは40~70mm、さらに好ましくは、50~60mmであり、当該最大長さは、直径であることが好適である。
また、凹部の嵌入部分の高さ(Z軸方向)は、凸部が嵌入したときに凸部の外周と凹部の外周とが重なる部分の高さ(Z軸方向)であってもよい。嵌入したときに凸部の外周面と凹部の外周面は、略平行の対向面であってもよい。傾斜部を備える場合には、この重なる部分の高さ(Z軸方向)は、凸部の高さ(Z軸方向)よりも低くなることが好適である。凹部の嵌入部分の高さは、より具体的には、好ましくは0.5~1.5mm、より好ましくは0.8~1.2mmであり、1mmがより好ましい。
【0029】
また、第2部材20は、第1部材10の凹部11と嵌入しうる円柱形状である凸部21を有することがさらに好適であり、凹部の嵌入部分に嵌入しうる円柱形状がより好適である。これにより、第2部材の凸部の円柱形状が、それよりやや大きい第1部材の凹部の円柱形状(中空)に嵌入し得る。この第1部材の凹部は、20~30cm2の底面積を有することが、1mL検体液の適用に適しているので、好適である。
【0030】
本発明の培養器材1は、嵌入がなされた状態における第2部材の凸部の天面と、第1部材の凹部の底面との距離は特に限定されず、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。当該嵌入がなされた状態において、凸部21の天面22が、凹部11の底面12に接触状態又は非接触状態のいずれでもよいが、接触状態となるように構成されていることが好適である。
前記非接触状態とは、嵌入時に天面と底面との間に一定距離以上の空間を持つことが好適であり、より具体的には、当該天面と当該底面との間の距離は、当該下限値として好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.02mm以上であり、より好適な数値範囲として、より好ましくは0.01~1mm、さらに好ましくは0.02~0.8mmである。
前記接触状態とは、嵌入時に天面と底面との間に一定距離以上の空間を持たないことが好適であり、より具体的には、当該天面と当該底面との間の距離は、好ましくは0.01mm未満、より好ましくは0.005mm以下、さらに好ましくは0.001mm以下であり、完全に密着状態であることがよりさらに好適である。
【0031】
なお、本発明の培養器材における外周領域の端部のいずれかに、第1部材及び第2部材の開閉用の取手部を設けてもよく、部材の高さの差で取手部としてもよい。また、培養器材の長手方向のいずれか一方の端部に取手部を設けてもよく、取手部はヒンジ部とは反対側の端部に設けることが好適である。また、第1部材内に配置する凹部の中心は、第1部材の長さ(X軸方向又はY軸方向)の10分の3~6に配置されていることが好適である。当該端部に設ける取手部の例として、例えば
図1、
図2、
図4等に示す培養器材のようにX軸の右方向の外周領域端部付近に部材の高さの差で設けている取手部が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
<傾斜部>
さらに、本発明の培養器材の好ましい態様として、凹部11に凸部21の嵌入がなされた状態で形成される空間17をさらに備えることが好適であり、より好ましくは、傾斜面16を有する空間が形成されるように、及び/又は、第2部材の凸部の外周面に接する空間が形成されるように構成されていることを備えることである(
図2B、
図2C等)。前記形成される空間は、前記培地成分に添加された検体液が凹部の外へ溢れ出すことを抑制するように構成されていることが好適である。当該傾斜面は、前記凹部に向けて下り勾配となるように構成されていることが好適である。当該空間が形成されることにより、培地成分に添加された検体液が凹部の外又は外周領域へ溢れ出すことを抑制することができる。従来の培養器材のように前記形成される空間(特に傾斜面)を設けない場合、培地成分に添加された検体液の水分が凹部の外を超えて第1及び第2の両部材の略平行にて対向する面の間を移動し部材端にまで到達する。本発明では、前記形成される空間(好適には傾斜面)を備えることで、毛細管現象によって、両部材の略平行の表面間にある検体液が端部方向に移動する現象を、当該形成された空間にて抑制することができる。さらに、培地成分に添加した検体液が凹部の外に漏れ出すことにより生じる培地濃度が不均一になるのを防ぐこともでき、これにより意図した濃度の培地を形成させることもできる。
【0033】
前記形成された空間17は、前記嵌入がなされた状態で、第2部材の凸部21の外周面と、第2部材における天面側にある外周領域の内側面と、第1部材10における底面側にある外周領域の内側面とから形成される空間であること、及び/又は、前記嵌入がなされた状態で、第2部材20の凸部21の外周面と、第2部材における天面側にある外周領域の内側面と、第1部材の傾斜部15の傾斜面16と、第1部材10の外周凸部14の内周面とから、形成される空間であること、がより好適である。これにより、培地成分に添加された検体液が凹部の外へ毛細管現象等により漏れ出すことをより良好に抑制することができる。
【0034】
また、前記嵌入がなされ、空間17が形成された状態のときに、凹部の底面と凸部の天面とが接触又は非接触のいずれでもよく、凸部の外周と凹部の外周とが接するように構成されていることが好適である。
【0035】
なお、傾斜面16の下端から上端までのZ軸方向の高さを「傾斜面16(勾配)の高さ」という。傾斜面16の下端から上端までのX軸方向の長さを「傾斜面16の底辺の長さ」ともいい、これは「凹部片側の傾斜部のX軸方向の長さ」であってもよい。また、凹部11の底面12に略平行な平面(
図2B中の破線)と傾斜部15の傾斜面16とから成す鋭角の角度を「傾斜角度(α°)」ともいう。また、外周凸部における内周から外周までのX軸方向の長さを「外周凸部のX軸方向の長さ」ともいう。外周凸部の内周とは、凹部方向を内とし、凹部側の周をいう。これらの説明は、例えば
図2Bの右拡大図等を参照することで理解できるであろう。
【0036】
第1部材10及び/又は第2部材20は、傾斜部15を備えることが好適であり、前記凹部11及び/又は前記凸部21の少なくとも一方の外周領域に凹部11側に向けて下り勾配となる傾斜部15を備えることがより好適である。より具体的な態様として、第1部材10及び/又は第2部材20は、凹部11に向けて下り勾配となる傾斜部15を備えることがより好適である(
図1、
図2、
図5A等)。さらに、傾斜部15は、凹部の外周13に向けて下り勾配(例えば傾斜面16)を有するように構成されていることが好適であり、凹部内に液体(例えば検体液)が流れる又は戻るように構成されていることがより好適であり、傾斜面は1平面や段差面などであってもよいが、1平面の方が簡単に勾配を形成しやすいので好適である。
【0037】
さらに溝部30を備える場合、第1部材10及び/又は第2部材20は、溝部30と凹部11又は凸部21との間に、凹部11(好適には凹部の底面12)に向けて下り勾配となる傾斜部15を備えることが好適であり、当該傾斜部15は、第1部材10に少なくとも備えることがより好適である。傾斜部15は、培地成分に添加された検体液が凹部11の外側へ毛細管現象等により溢れ出すことを抑制するように構成されていることが好適である。
【0038】
傾斜部が第1部材及び/又は第2部材に備えられることで、凹部に凸部の嵌入がなされたときに、培地成分に添加された検体液が凹部の外部へ毛細管現象等により溢れ出すことをより良好に抑制することができる。これにより、凹部の外周と凸部の外周との略平行の対向面同士の間に、及び/又は、第1及び第2の両部材の外周領域の略平行の対向面同士の間に、検体液が残ることをより良好に抑制することができる。
さらに、傾斜部が備えられることで、嵌入時に凹部から溢れ出した検体液が溝部の内側に存在する外周凸部にまで到達しにくくなるため、培養後に外周凸部上で稀に発生するコロニー形成をより良好に抑制することができるようになり、検体液中の微生物数をより容易に計測することができる。
【0039】
さらに、培地成分に添加された検体液が毛細管現象により凹部の外へ漏れ出すことを抑制するための溝部を備えつつ傾斜部を備えない培養器材を用いた場合(例えば、
図3A右側の培養器材、
図5Bの第1部材10b)、培養後に、凹部の外周と凸部の外周との間又は外周凸部上で稀にコロニー形成が発生する場合がある。しかしながら、
図5Aの第1部材10aのような、溝部を備える培養器材にさらに傾斜部が備えられることで、この稀に発生するコロニー形成をよりさらに良好に抑制することもできるようになり、検体液中の微生物数をよりさらに容易に計測することができる。
【0040】
培養器材に傾斜部を備える場合、凹部と傾斜部とは隣接又は連設されていることが好適であり、この凹部の上端(高さ)と傾斜部の下端とが接続されていることがより好適である。なお、凹部の下端とは底面となり、傾斜部の高さは、凹部の底面(下端)から傾斜面の上端までの高さ(Z軸方向)である。凹部に凸部が嵌入されたときに、天面と底面とが接触状態又は非接触状態のいずれでもよいが、凸部の天面の位置(Z軸方向)よりも傾斜部の傾斜面の下端までの高さ(Z軸方向)が高くなるように構成されていることが好適である。また、嵌入時に培地成分が収容されているときでも、凸部の天面の位置よりも傾斜部の傾斜面の下端までの高さが同等以上に高くなるように構成されていることが好適である(
図2C等)。当該嵌入時の凸部の天面の位置(Z軸方向)は、凹部の底面から天面までの高さ(Z軸方向)である。これにより、嵌入時に天面及び底面が接触しない状態(非接触状態)であっても、嵌入時に凹部の形状にて凸部を容易に固定することができる。
【0041】
さらに、第1部材及び/又は第2部材は、傾斜部の上端又は外周に対し、傾斜部の高さ(Z軸方向)よりも高い段差部を備えることが好適である。当該段差部は、前記嵌入がなされるときに対向する部材の対向面(より好適には対向する部材の外周領域)と接触可能な平面を有することが好適であり、また、段差部の内周はX軸方向と垂直であることが好適である。当該段差部は、外周凸部14であることがより好適であり、当該外周凸部は、凹部及び/又は凸部と溝部との間にあることがより好適であり、当該外周凸部の外周が、溝部の内周であることが好適である。なお、溝部の内周は、溝部内において凹部又は凸部の方向にある周をいう。
【0042】
さらに、第一部材又は第二部材に備える傾斜部は環状の傾斜部であることが好適であり、当該環状は全周又は部分周のいずれでもよいが、好適には全周の50%以上、より好適には80%以上、さらに好適には90%以上の傾斜部であり、より好適には全周である。なお、部分周は、単数又は複数の間欠を有する周でもよく、複数の間欠として2、3又は4の均等的な間欠でもよい。
前記傾斜部は、凹部上に逆円錐台形状の空間を形成できるように構成されていることがより好適であり、前記嵌入がなされた状態では、第2部材における凸部の外周面及び凸部の外周領域にある内面と、第1部材における傾斜面及び外周凸部の内周面とから、中空の逆円錐台形状の空間が形成される。また、好適な態様として、第1部材では、非嵌入のときに、底面のZ軸方向には漏斗状の空間が存在するように構成され、当該漏斗状は、底面の側から順に第一円柱状、逆円錐台形状、第二円柱状から構成されているものが好適であり、第一円柱状の直径は、第二円柱状の直径よりも小さいことがより好適である。
【0043】
傾斜部の傾斜角度(α°)は、特に限定されないが、好適な下限値は好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であり、また、好適な上限値は好ましくは40°以下、より好ましくは35°以下である。
【0044】
傾斜部を備えた場合には、「凹部の底面の最大長さ」と「凹部片側の傾斜部のX軸方向の長さ」との長さ割合は、凹部の底面の最大長さを1としたとき、好適な下限値は好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、また、好適な上限値は好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である。
また、傾斜部を備えた場合には、「凹部片側の傾斜部のX軸方向の長さ」と「外周凸部のX軸方向の長さ」との長さ割合は、特に限定されないが、傾斜部のX軸方向の長さが外周凸部のX軸方向の長さよりも長い方が好ましく、好ましくは1~5:1、より好ましくは1~2:1、さらに好ましくは1.5:1であり、例えば、凹部片側の傾斜部のX軸方向の長さは例えば2~4mm(より好適には3mm)であってもよい。
また、傾斜部を備えた場合には、「傾斜部の下周(傾斜面16の下端)から凸部14の上面までの高さ(Z軸方向)」は、凹部の高さを1としたときに、好適な下限値は好ましくは1以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.6以上であり、また、好適な上限値は好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.1以下であり、好適な数値範囲としてより好ましくは1.7であり、凹部の高さは例えば0.5~1.5mm(より好適には1mm)であってもよい。
また、傾斜部を備えた場合には、「傾斜部の高さ」は、凹部の高さを1としたときに、好適な下限値は好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.8以上であり、また、好適な上限値は好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2以下であり、好適な数値範囲としてより好ましくは2である。なお、「傾斜部の高さ」は、底面12から傾斜面16の上端までの高さ(Z軸方向)をいう。
【0045】
本発明の培養器材は、外周領域に凹部に向けて下り勾配となる傾斜構造を備えることにより、培地成分を凹部に収容した後に培養器材を閉じることで、凹部と凸部との嵌入がなされた状態で傾斜面を有する空間が独立して新たに形成されうる。当該傾斜面を有する空間は、第2部材の凸部の外周面と第2部材の凸部以外の内側面と、第1部材の傾斜面から形成されることが好適である。
さらに、本発明の培養器材における凹部又は凸部の少なくとも一方の外周領域に溝部を備えることが好適であり、当該溝部を備える培養器材の場合には、前記溝部と前記凹部との間に、前記傾斜部を備えることが好適である。
【0046】
本発明の培養器材は、少なくとも前記傾斜構造を備えることで、培地成分に添加した検体液を、培養器材の外部から指等にて、凹部の培地成分に均一に広げる操作が容易にでき、培養に使用できる培地を簡便に容易に調製することができる。検体液接種後に第2部材の凸部を嵌め込むだけで、第1部材の凹部全体に検体液が広がるとともに培地成分中のゲル化剤が水を吸収し、設計通りの各培地濃度の培地を再構築させることも可能である。さらに、培養使用時に、発育したコロニーが大きく広がることを防止し、コロニー数を計測するのに最適な状況を生み出すことに寄与できる。培養後の計測時に培養器材における略平行で対向する面同士の間で、微生物検出用の発色やコロニー形成がみられず、検体中の微生物数をより良好に容易に計測することができる。また、嵌入の操作や培地成分中に均一に検体液を拡散する操作等も容易に行うことができ、このような操作を行っても、凹部及び凸部以外での微生物検出用の発色やコロニー形成をより良好に抑制することができる。
【0047】
<溝部>
さらに、本発明の培養器材の好ましい態様として、第1部材の凹部11又は第2部材の凸部21の少なくとも一方の外周領域に、単数又は複数の溝部30を備えることが好適である(例えば、
図4左側の培養器材、
図5Aの第1部材10a参照)。当該溝部は、対向する面側に形成されることが好適であり、対向する面方向に開口するように形成されることがより好適である。当該溝部30が第1部材10に形成される場合、凹部11と溝部30との間に、外周凸部14が第1部材10に形成され備えられてもよく、より好適には溝部30と凹部11との間に外周凸部14が第1部材10に形成されることである(
図1等)。また、溝部の窪み部分は、Z軸方向に突起状になるように形成されることが好適であり、これにより、後述するスタッキング用凸部と併用することで、複数の培養器材を積み重ねる際の各部材の位置決めをすることができる(
図2B、
図3、
図4等)。
溝部の数は、特に限定されないが、前記凹部の外周領域及び前記凸部の外周領域のそれぞれに、1つ又は2つ以上であることが好適であり、より好ましくは1つであるが、前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に1つ備えてもよい。
【0048】
溝部は、培地成分に添加された検体液が毛細管現象により凹部の外へ漏れ出すことを抑制することができるように構成されている。従来の培養器材の構成のように溝部を設けない場合、培地成分に添加された検体液の水分が、接触状態の第1部材の表面と第2部材の表面とを濡らすことで、両者の間に存在する水分が直ちに凹部の外を超え部材端にまで到達する。本発明では、溝部を凹部又は凸部の外周領域に形成することで、毛細管現象によって、両部材の表面間にある検体液が端部方向に移動する現象を、溝部の手前で抑止することができる。このとき、この溝部によって、凹部(より好適には使用時の培地)の外に、検体液が漏れ出すことを抑制することができる。
培地成分に添加した検体液が凹部の外に漏れ出すことにより生じる培地濃度が不均一になるのを防ぐこともでき、これにより意図した濃度の培地を形成させることができる。このように溝部の付加的機能として、検体液の水分を溝部の手前で抑制し、外周領域へ水分の流出を隔離するための隔離用の溝部として機能させてもよい。
【0049】
溝部は、第1部材の凹部の外周領域に、当該凹部の外周の全部又は一部を囲うように備えることが好適である。また、溝部は、第2部材の凸部の外周領域に、当該凸部の外周の全部又は一部を囲うように備えることが好適である。また、第1部材の外周領域及び第2部材の外周領域の両方に、それぞれ溝部を適宜設けてもよい。
また、溝部は、凹部又は凸部の外周を少なくとも50%以上、より好適には80%以上、さらに好適には90%以上、よりさらに好適には完全に囲うことが好適である。また、溝部は、対向面側(Z軸方向)からみたときに、第1部材の凹部又は第2部材の凸部の外周に沿って、連続的に又は断続的に、形成されていてもよい。
【0050】
溝部を備える位置は、凹部又は凸部の外周(外周端:0mm)より外側(部材の端部方向)であれば、特に限定されない。溝部を備える位置は、凹部又は凸部の外周(0mm)より、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上又は2mm以上離れていることが好適であり、その上限値は、部材の大きさによって適宜設定することができるが、例えば10mm以下、8mm以下、5mm以下、4mm以下又は3mm以下等である。当該距離は凹部又は凸部の外周から溝部の内周までの距離であることが好ましい。
【0051】
前記傾斜部を備える場合の溝部の位置は、傾斜部を備えない場合の溝部の位置よりも、より部材の端部方向に離れることが好適である(
図5等)。
例えば、凹部又は凸部の外周(0mm)から溝部の内周までの距離は、好適な下限値として、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上であり、好適な上限値として、好ましくは10mm以下、より好ましくは9mm以下、さらに好ましくは8mm以下であり、好適な数値範囲として、より好ましくは3~10mm、さらに好ましくは5~8mmである。
また、例えば、傾斜部15の終了地点(傾斜面16の上端)(0mm)から溝部の内周までの距離は、好適な下限値として、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、好適な上限値として、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、さらに好ましくは5mm以下であり、好適な数値範囲として、より好ましくは1~6mm、さらに好ましくは2~5mmである(
図5等)。
【0052】
溝部の溝の深さ(Z軸方向)は、毛細管現象を遮断できる程度の深さがあれば良く、容器設計上、凹部又は凸部の高さ(Z軸方向)によって適宜変更することができる。溝部の溝の深さは、例えば1~5mmが好適であり、1~3mmがより好適である。また、溝部の溝の幅(X軸方向又はY軸方向)は、特に限定されず、任意に設定することができ、例えば、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5~3mm程度、より好ましくは2~3mm程度である。
また、溝部の断面形状(Z軸方向)は、特に限定されないが、対向する面に向かって開口する形状が好適である。溝部の断面形状として、例えば、V字状、U字状、上向きC字状、半円状、四角形状、台形状等が挙げられるが、U字状又は上向きC字状が好適である。また、溝部の底面の形状は特に限定されないが、成形の容易性と強度の点から曲面であることが好ましい。
【0053】
本発明の培養器材に係る態様として、1mLの検体液を第1部材の凹部に収容されている培地成分に接種し、凹部に嵌入した第2部材の凸部によって検体液が培地成分に押し広げられた場合、収容されている培地成分中のゲル化剤が検体液の水分を吸収し、固化される。さらに、第1部材の凹部の外周領域に溝部を設けなかった場合、ゲル化剤が検体液中の水分を吸収するよりも早い段階で、第2部材と接触した第1部材との毛細管現象により凹部から水が周囲の外周領域方向に逃げていきやすい。このため、溝部を備えなかった場合には、水が周囲に逃げることで培地成分を膨潤させるための必要な水分がない状態で膨潤し培地が再構成され、再構成された培地が塗布面から剥離するため良好な培養結果が得られにくいだけでなく、設計通りの濃度の培地が得られにくい場合がある。一方、凹部又は凸部の外周領域に、凹部又は凸部の外周に沿って溝部を少なくとも1つ備えることで、毛細管現象が断ち切られ、凹部の外への水の流出を防ぐことが可能となる。1mLの検体液接種後に第2部材の凸部を嵌め込むだけで、第1部材の凹部全体に被検液が広がると共に培地成分中のゲル化剤が水を吸収し、設計通りの各培地成分濃度の培地を再構成させることが可能となる。
【0054】
従って、第1部材の凹部の外周領域に溝部は、第1部材に設置した凹部の外周から1mm以上離れていることが好適であるが、毛細管現象を堰き止めるために凹部の外周付近から離れすぎないようにすることが好ましい。また、第1部材の凹部と第2部材の凸部が完全に密着した状態で勘合し、空間を持たない状態の培養器材に、底面及び天面の間に培地成分をさらに入れても、適用時1mL検体液では、水の膨潤による培地成分自体の上下方向への体積増加はほとんど無視できるほど小さい。
【0055】
<ヒンジ部>
さらに、好ましい態様として、第1部材10及び第2部材20はヒンジ部50により連設されていることである(例えば
図3及び4)。当該ヒンジ部の短手方向(Y軸方向)の長さは、部材の端部の長さよりも短く形成されていてもよい。当該ヒンジ部は、凹部の中心を通過する線I-I’上に配置してもよい。
培養器材が閉じた状態でのヒンジ部の断面形状は、特に限定されず、例えば、多角形状(例えば、四角形状、五角形状、六角形状等)、半円状、半楕円状、I字状、C字状等が挙げられる。例えば、第1部材の端部と第2部材の端部とが一辺を共有するような構成で、この一辺をヒンジ部とし、この一辺を軸として折り曲げて嵌入したときに、断面形状がI字状のヒンジ部が形成されてもよい。
【0056】
ヒンジ部50は、第2部材20の凸部21の天面22を、第1部材10の凹部11の底面12に対して略平行を維持しつつ嵌入し得る構造を備えることが、より好適である。このように嵌入させることで、培養使用時に、検体液を培地成分に適用した後に凹部に凸部を嵌入させたときに、検体液を培地成分への均一適用させること、毛細管現象の発生の抑制、空気層の発生抑制等ができる。
このうち、ヒンジ部の断面形状が四角形状であることが、より簡便な操作で略平行を維持しつつ嵌入できる観点から、より好適である。
【0057】
なお、第2部材20の凸部21の天面22を、第1部材10の凹部11の底面12に対して略平行を維持しつつ嵌入し得る構造として、例えば、
図1に表すように、ヒンジ部を設けずに、第1部材と第2部材とが別々の部材として構成されている構造であってもよい。
【0058】
<スタッキング用凸部>
好ましい態様として、第1部材10又は第2部材20のいずれかの外周領域に、スタッキング用凸部60が形成されることである(例えば
図3及び4)。
スタッキング用凸部は、第1部材及び/又は第2部材の外側(Z軸方向)の面に突起状になるように形成されることが好適である。
スタッキング用凸部の配置(XY軸方向)は、特に限定されず、例えば、部材の凹部又は凸部の周端領域に単数又は複数配置されてもよいし、部材の端領域に単数又は複数配置されてもよし、部材の溝部の周端領域に単数又は複数配置してもよい。
このように、培養器材ごとにスタッキング用凸部を設けることで、下に配置した培養器材が上に配置した培養器材を、支持することができ、これにより複数の培養器材を積み重ねることができる。
【0059】
スタッキング用凸部の数は、特に限定されず、単数又は複数であり、好ましくは1又は2以上、さらに好ましくは3~10程度であり、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3又は4である。スタッキング用凸部の形状は、例えば、正方形状、長方形状、円錐形状、円錐形状等の立体形状が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0060】
なお、スタッキング用凸部が形成される面に対向する面上に、スタッキング用凸部を位置決するための支持部を形成することが好適である。当該支持部として、例えば、培養器材の外側方向(Z軸方向)の面上に、突起状になるように形成された溝部、凹部と溝部との間に形成された窪み状、外周領域に形成された窪み状や突起状等の位置決め可能な支持部等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
<部材材料>
本発明における第1部材及び/又は第2部材は、合成樹脂材で形成されることが好適であり、光透過性の合成樹脂材で形成されることがより好適である。
本発明の培養器材において、第1部材及び/又は第2部材の材料は特に限定されず、例えば、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリビニル系、ポリエチレン系、ポリエステル系、ポリ乳酸系のポリマー等の合成樹脂材を採用でき、これらから1種又は2種以上を用いることができる。
【0062】
本発明において、第1部材又は第2部材のいずれか一方は透明であることが好ましく、第1部材と第2部材の両方が透明であることがより好ましい。第1部材及び/又は第2部材は、光透過性を有することが好ましい。これにより、計測対象の微生物のコロニーを、培養器材を分解することなく、外部から容易に観察・計測することができる。
なお、ここで透明(光透過性)とは、目視により部材の反対側を透視できる程度でよく、より具体的には可視光透過率が70%以上であることが好ましいが、これに限定されない。
【0063】
また、本発明の培養器材において、第1部材と第2部材は、別個に分離していてもよいし、一体となっていてもよい。
好ましい態様として、第1部材10及び第2部材20が一体成形されているものである。
例えば、第1部材の一部と第2部材の一部とが、一辺を共有する等して、連結していてもよい。例えば、後述するヒンジ部を第1部材の端部と第2部材の端部との間に設けて、これら部材を連設してもよい。
このような一体形成の態様の場合、成形した培養器材を第2部材の凸部と第1部材の凹部とに嵌入するように第1部材と第2部材とを重ね合わせて折り曲げることにより使用することが可能となり(例えば
図1及び2)、製造する上で、培地成分塗着や培養使用時の部材の開閉等の操作性等の観点からも、部材が1つで済むことは好ましい態様といえる。
【0064】
<培地成分>
本発明の培養器材の凹部に収容可能な培地成分について説明する。
本発明に用いられる培地成分は、第2部材を第1部材に被せたときに互いに接触する部分、即ち第1部材の凹部分の底面及び/又は第2部材の凸部分の天面に均一に塗着されていることが好ましい。当該培地成分は、乾燥状態のものが好適であり、検体液の水分を含むことで、培養用の培地に再構成できるような乾燥培地成分がより好適である。
この培地成分の塗着部位は、通常、検体液は、第2部材の凸部の天面を利用することにより均一に第1部材の凹部に広げられることと、広げられた検体液のスムーズな拡散と培養使用時の培地への均一な再構成を両立させる点で、第1部材の凹部分の底面及び/又は第2部材の凸部分の天面に均一に塗布又は塗着されていることが好適である。
【0065】
本発明の培養器材における培地成分は、ゲル化剤及び栄養成分を含有することが好ましい。
本発明において、培地成分は、微生物を培養するための培地を調製するためのものである。前記調製は、通常、計測対象の微生物を含む検体液中の水分をそのまま培地を構成するゲルの溶媒として、培地成分に添加し浸透させることにより行われる。
【0066】
前記ゲル化剤は、非加熱ゲル化剤が、加熱することなく検体液を培地成分に適用することで液体をゲル化できるので好ましい。寒天やカラギーナンといった加熱ゲル化剤を用いる場合、検体液を培地成分と共に固化させる際に加熱が必要であるため、培養使用時に加熱工程が必要となったり、検体中の微生物を加熱することによる死滅等にて計測にばらつきが生じやすい。
【0067】
一方、非加熱ゲル化剤は、加熱による溶解を経ずに、また冷却によらず、水分の添加のみによりゲルを形成させることができるため、培地形成の操作が簡便であり、また対象微生物の生育を妨げないという利点がある。
さらに、静置時にゲル化できる成分がより好適であり、当該静置時のゲル化成分として、増粘多糖類がさらに好適であるが、これらに限定されない。当該増粘多糖類は、培地を構成するゲル化剤の役割を担うことができ、常温(10~30℃程度)で検体液を培地成分に均一になるように押し広げて適用したときにこれらを固化でき、その後、静置状態でゲル状態を維持可能な検体を含む培地が形成できることから、好ましい。
これにより、培地成分中のゲル化剤により形成される培養使用時の培地は、流動性がほとんどなくまた水分を強固に保持できるため、微生物の存在数をその発育したコロニー数により定量的により正確に計測することができる。
【0068】
増粘多糖類として、特に限定されないが、例えば、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドガム、カードラン、タラガム、プルラン等が挙げられ、これらからなる群から選択される1種又は2種以上がより好ましい。当該増粘多糖類には、本発明の効果を妨げない限りにおいて、さらに他のゲル化剤を併用してもよい。
【0069】
増粘多糖類のうち、グアーガム、キサンタンガム、及びそれらの混合物から選択される1種又は2種以上が好ましい。混合物の方が、これらの割合を調整して培養使用時のゲル化能を調整しやすいのでより好適である。これらに、本発明の効果を妨げない限りにおいて、さらに他のゲル化剤を併用してもよい。
ここで、グアーガム及び/又はキサンタンガムは、吸水、固化の速度が比較的緩やかであるため、培地成分及びゲル化剤を早急に混合させるような操作を行わなくともよい。このため、検体液をグアーガム及び/又はキサンタンガムを含む培地成分に添加し、培地成分の全体に均一になるように拡散させる操作をしても、薄く広がったゲル培地を形成することができるため、本発明の培養器材により良好に適する。これにより、培養使用時の培地は、流動性がほとんどなくまた水分を強固に保持できるため、微生物の存在数をその発育したコロニー数により定量的に正確に計測することができる。
また、グアーガム、キサンタンガム、又はそれらの混合物にて形成されるゲルが、透明であることにより、培養後の培地中の微生物のコロニー及びその数を、培養器材を分解することなく外部から正確かつ容易に検出することができる。
【0070】
本発明に用いられるゲル化剤(より好適にはグアーガム及び/又はキサンタンガム)の使用時の濃度は、特に限定されないが、1mLの水に対する固化能の観点から、1mLの水を添加した使用時の濃度(1mL当たりの濃度)として合計量で0.01~0.2g/mLが好ましく、0.01~0.1g/mLがより好ましい。
【0071】
培地成分に含まれる栄養成分は、対象微生物を発育させるためものである。栄養成分としては、特に限定されないが、ペプトン、獣肉エキス、酵母エキス、魚肉エキス等が好ましく挙げられる。
微生物数を計測する培地には、寒天を含む寒天培地と寒天を含まない液体培地の2種の培地形態が存在するが、寒天を含まない液体培地の成分かそれと同等の成分を、本発明における培地成分に含有させることが好ましい。
【0072】
本発明に用いられる培地成分には、第1部材及び/又は第2部材に対する接着性成分が含まれることが好適である。接着性成分を含ませることで、培地成分の全ては、本発明の培養器材の凹部の底面又は凸部の天面の少なくとも片側に塗着することができる。
【0073】
接着性成分を用いることで、培地成分を、第1部材及び/又は第2部材に、安定的に塗着させる役割を果たし、さらに天面と底面とに培地成分をより密着した状態にすることができる。そして、凸部を凹部に嵌入させた状態にすることで培地成分が、凹部に収容されると共に第1部材と第2部材とが接着性成分を含む培地成分を介して接着される。これにより、第1部材の凹部に第2部材の凸部が嵌入した状態を維持した状態の培地成分入り微生物用培養器材を得ることもできる。また、培養使用時に、培地と天面と底面との間に空気層がより発生しづらくなるため、操作性がより簡便であり、培養時の、周囲のコロニーとの重なりを低減することができ、容易に計測することができる。
【0074】
接着性成分として、特に限定されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びメチルセルロース等が挙げられ、これらから1種又は2種以上を選択することができる。
接着性成分の使用時の濃度は、特に限定されないが、培地成分を乳剤又は懸濁液として塗布する際の粘度と接着能の観点から、1mLの水を添加した使用時の濃度(1mL当たりの濃度)として接着性成分合計量で0.1~10mg/mLが好ましく、0.5~5mg/mLがより好ましい。
【0075】
本発明に用いられる培地成分は、さらに呈色試薬を含有することが好ましい。これは、培養によって生じた微生物のコロニーを有色のものとして、より検出及び/又は計測しやすくするためである。
呈色試薬としては、例えば、2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)やテトラゾリウムバイオレット等をはじめとする酸化還元指示薬等が挙げられ、これらから1種又は2種以上を選択することができる。呈色試薬は、検体中に存在する全ての種類の微生物を計測したい場合に好ましく用いることができる。TTCを用いる場合は、1mLの水を添加した使用時の濃度(1mL当たりの濃度)として1mg~100mg/Lが好ましく、10~50mg/Lがより好ましい。
【0076】
また、呈色試薬としては、特定の微生物種のみが保有する酵素に対する基質(以下、酵素基質という)であって、分解されることにより色原体化合物を遊離し得る化合物を用いてもよい。これは、当該特定の微生物を計測したい場合に好ましく用いることができる。
ここで、色原体化合物とは、可視光下で有色のもの及び蛍光発色するもののいずれでもよい。可視光下で有色の化合物として遊離され得る官能基として、例えば5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル基等が挙げられ、遊離した5-ブロモ-4-クロロ-3-インドールは酸化縮合して2量体の5,5’-ジブロモ-4,4’-ジクロロ-インディゴとなり、青色を呈する。蛍光発色する化合物として遊離され得る官能基としては、4-メチルウンベリフェリル基等が挙げられ、遊離した4-メチルウンベリフェロンは紫外線照射下で蛍光を発する。
【0077】
酵素基質の例を挙げると、対象微生物が大腸菌群の場合は、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-β-D-ガラクトピラノシド(X-GAL)等を、大腸菌の場合は、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-β-D-グルクロン酸(X-GLUC)等を、黄色ブドウ球菌の場合は、5-ブロモ-4-クロロ-3インドキシル-リン酸(X-phos)等を、腸球菌等の場合は、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-β-D-グルコピラノシド等を、真菌の場合は、X-phos、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-酢酸や5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-酪酸等を、それぞれ好ましく用いることができる。さらに、全ての微生物種を検出したい場合には、これら全てを組み合わせて使用してもよい。
酵素基質を用いる場合には、1mLの水を添加した使用時の濃度(1mL当たりの濃度)として0.01~1.0g/Lが好ましく、0.2~0.5/Lがより好ましい。
【0078】
本発明に用いられる培地成分は、本発明の効果を妨げない限りにおいて、さらに、選択物質、抗菌性物質、無機塩類、糖類、増粘剤、pH調整剤等を任意に含有してもよい。これら任意の成分から、適宜、1種又は2種以上選択することができる。
選択物質としては、例えば、ポリミキシンBやバンコマイシンなどの抗生物質や、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、Tween80、コール酸ナトリウム等の胆汁酸塩等の界面活性剤等が挙げられる。
抗菌性物質としては、例えば、ポリリジン、プロタミン硫酸塩、グリシン、ソルビン酸等が挙げられる。
無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の無機酸金属塩、ピルビン酸ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸ナトリウム等の有機酸金属塩等が挙げられる。
糖類としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、キシロース、セロビオース、マルトース等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸等が挙げられる。なお、本発明の培養器材に塗布される培地組成物は、対象微生物の生育の観点から、使用時のpHが好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5になるように調製される。
【0079】
本発明の培養器材は、任意の方法で製造することができるが、一例を説明するが、これに限定されない。
適当な大きさのアクリル板等の合成樹脂平板を用いて、第1部材及び第2部材とすることができる。第1部材の凹部及び/又は第2部材の凸部は、合成樹脂の加工成形方法を利用して作製することができ、例えば、アクリル板の接着やくり抜き、又は金型等を用いた押圧や射出による成形などにより、作製することができる。
本発明に用いられる培地成分は、非水系溶媒に溶解又は懸濁させたものを、第1部材の凹部及び/又は第2部材の凸部の面全体に均一に塗布した後、素早く強制乾燥等乾燥することにより、培養器材の第1部材の凹部及び/又は第2部材の凸部に塗着させることができる。
ここで、非水系溶媒は、常温常圧下で速やかに揮発し得る揮発性溶媒がよく、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、及びブタノール等から選択される1種又は2種以上の低級アルコール(好適には炭素数1~4)を好ましく挙げられる。これらの非水系溶媒を用いれば、製造時にゲル化剤をゲル化させることなく培地成分を塗着させることができるので、容易かつ効率良く培地成分入り培養器材を製造することができる。
【0080】
<本発明に係る微生物用培養器材の例>
上述したように、本発明に係る微生物用培養器材は、以下の構成を採用することができるが、これらに限定されない。
・〔1〕本実施形態は、培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有する、微生物用培養器材を提供することができ、より好適には、前記嵌入がなされた状態で前記凸部の天面が前記凹部の底面に接触状態又は非接触状態となる構成を備える微生物用培養器材である。
・〔2〕前記培地に添加された検体液が前記凹部の外へ漏れ出することを抑制するように構成されている、前記〔1〕に記載の微生物用培養器材。
【0081】
・〔3〕さらに、前記凹部の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備える、及び/又は、前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に溝部を備える、前記〔1〕又は〔2〕に記載の微生物用培養器材。
前記溝部又は前記傾斜部は、前記培地に添加された検体液が前記凹部の外へ漏れ出することを抑制するように構成されていることが好適である。
本実施形態は、前記溝部及び/又は傾斜部を採用することによって、本発明の前記培地に添加された検体液が前記凹部の外へ漏れ出することを抑制するということを課題に設定したとしても当該課題を解決することができる。また、外周領域上の又は外周凸部上の第1部材と第2部材との間に形成されてしまうコロニーをより低減することができ、コロニー計測を、容易に簡便に効率よく精度良く実施することができる。
・〔4〕 培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有し、前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備える、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の微生物用培養器材。
・〔5〕 前記凹部と前記凸部との嵌入がなされた状態で傾斜面を有する空間が形成されるように構成されている、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の微生物用培養器材。
・〔6〕 前記溝部と前記凹部との間に、前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備える、前記〔3〕~〔5〕のいずれか一つに記載の微生物用培養器材。
【0082】
・〔7〕前記第1部材及び/又は前記第2部材は光透過性の合成樹脂材で形成される、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載の微生物用培養器材。
・〔8〕 前記第1部材と前記第2部材は一体成形されている、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の微生物用培養器材。
・〔9〕 前記第1部材と前記第2部材とはヒンジ部により連設されている、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の微生物用培養器材。
・〔10〕 前記ヒンジ部は、前記凸部の前記天面を前記底面に対して平行状態を維持しつつ嵌入し得る構造を備える、前記〔9〕に記載の微生物用培養器材。
・〔11〕 前記第1部材又は前記第2部材のいずれかの外周領域に、スタッキング用凸部が形成される、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一つに記載の微生物用培養器材。
【0083】
また、上述したように、本実施形態の微生物用培養器材は、以下の例1~2を提供することができる。
本実施形態の例1として、培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有し、
前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備え、
より好適には、前記嵌入がなされた状態で前記凸部の天面が前記凹部の底面に接触状態又は非接触状態となる構成を備える、微生物用培養器材を提供することができる。
【0084】
本実施形態の例2として、培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有し、
前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に溝部、及び、
前記凹部又は前記凸部の少なくとも一方の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備え、
より好適には、前記嵌入がなされた状態で前記凸部の天面が前記凹部の底面に接触状態又は非接触状態となる構成を備える、微生物用培養器材を提供することができる。
【0085】
上述した微生物用培養器材の凹部に培地成分を収容するように配置することで、培地成分入り微生物用培養器材を提供することができ、より好適には前記凹部と前記凸部との間に培地成分を配置することである。当該培地成分入り微生物用培養器材の培地成分に検体液を接触させ、凹部に凸部が嵌入がなされた状態のときに、検体液が凹部の外に残存することを抑制することができる等の効果を発揮させることができる。これにより、検体中の微生物を簡便な操作で培養することができ、検体中の微生物数を容易に計測することができる。
【0086】
<2.本発明の実施形態に係る培養器材の例>
本発明の微生物用培養器材に関する実施形態の例を以下に説明するが、これらに限定されない。また、適宜、培地成分入り微生物用培養器材に適用してもよい。
以下、本発明の第一実施形態及び第二実施形態の培養器材の説明において、<1.本発明に係る微生物用培養器材>の構成と重複する、第1部材、第2部材、傾斜部、外周凸部、溝部、ヒンジ部、スタッキング用凸部、培地成分などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該<1.>の説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。また、第一実施形態及び第二実施形態の構成を適宜、組み合わせてもよい。
【0087】
<本第一実施形態>
本発明の第一実施形態の培養器材として、ヒンジ部の断面形状が四角形状を有する培養器材の1例を、
図4に表すが、これに限定されない。
本第一実施形態は、ヒンジ部の断面形状が四角形状を有する培養器材であり、培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、当該凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有することが好適である。当該ヒンジ部は、第1部材と第2部材に連設されてもよく、凹部の中心を通過する線I-I’上に配置されてもよい。
【0088】
また、本実施形態の凹部又は凸部の少なくとも一方の外周領域に傾斜部を単数又は複数備えることがより好適である。当該傾斜部は、前記凹部に向けて下り勾配となるように構成されていることがより好適である。当該傾斜部は、前記凹部又は前記凸部を全周することが好適であり、傾斜部は全周するように構成されているものが好適である。当該傾斜部は、前記溝部と前記凹部又は前記凸部との間に形成されていることがより好適である。
【0089】
さらに、本第一実施形態の凹部又は凸部の少なくとも一方の外周領域に溝部を単数又は複数備えることがより好適である。当該溝部は、前記凹部又は前記凸部を全周することが好適であり、溝部の数は1つ(1周)が好適である。当該溝部の断面形状(線I-I’)は、底面が曲面(例えばU字状等)であることが好適である。
【0090】
Z軸方向(
図3の平面方向又は底面方向)からみたときの第1部材及び第2部材の形状は、三角形状、長方形状が好適であり、長方形状がより好適である。第2部材の凸部は、天面の反対側の外部からみたときに中空の円柱状であってもよい。第1部材と第2部材との外周領域は、両部材の対向面同士が接触状態となる構成であることが好適であり、天面側及び底面側にある外周領域の面は平面であることがより好適である。
前記第1部材又は前記第2部材のいずれかの外周領域に、スタッキング用凸部を、単数又は複数、適宜形成してもよい。複数のスタッキング用凸部は、等間隔で配置することが好適であり、溝部の周端領域に配置することがより好適である。
【0091】
<本第二実施形態>
また、本発明の第二実施形態の培養器材において、第1部材及び第2部材は、それぞれ、複数の凸部及び凹部を有していてもよい。すなわち、嵌入時に凹部及び凸部の接触状態又は非接触状態が複数形成される態様であってもよく、一度に複数の検体を並行して処理するのに適する。このとき、第1部材の凹部の外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を備えることがより好適であり、さらに第1部材の凹部の外周領域に溝部をさらに備えることがより好適である。
また、上記<1.>で説明した、嵌入がなされた状態の第1部材及び第2部材を1画分として、当該画分を複数有する、培養器材であってもよい。
本発明の第二実施形態として、培地成分を有用可能な凹部を複数有する第1部材と、前記凹部に嵌入し得る凸部を複数有する第2部材と、を、有し、
前記嵌入がなされた状態で前記凹部の天面が前記凹部の底面に接触状態又は非接触状態となる構成を、複数備える微生物用培養器材を提供することができる。
より好ましい態様として、前記第1部材の凹部ごとに1対1で対応し嵌入可能なように前記凸部を、前記第2部材に複数有することが好適である。
より好ましい態様として、前記複数の凹部ごとの外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を単数又は複数備える、及び/又は、前記複数の凸部ごとの外周領域に前記凹部に向けて下り勾配となる傾斜部を単数又は複数備える。当該傾斜部は、前記溝部と前記凹部又は前記凸部との間に形成されていることがより好適である。
より好ましい態様として、前記複数の凹部ごとの外周領域に溝部を単数又は複数備える、及び/又は、前記複数の凸部ごとの外周領域に溝部を単数又は複数備える。
【0092】
<3.本発明に係る培地成分入り微生物用培養器材>
本発明の別の側面として、上記培養器材の前記凹部に培地成分が収容された状態で前記凸部が前記凹部に嵌入された構成を備える、培地成分入り微生物用培養器材を提供することができる。このとき、当該培地成分は、培養器材の前記凹部と前記凸部との間に存在することがより好適である。
本実施形態の説明において、上述した<1.本発明に係る微生物用培養器材><2.本発明の実施形態に係る培養器材の例>と重複する、第1部材、第2部材、培地成分などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該<1.><2.>の説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
【0093】
<4.本発明に係る微生物数の計測方法>
本発明の別の側面として、上記説明した本発明の培養器材及び培地成分入り培養器材は、検体中の微生物を培養し、該微生物数を計測する方法に好適に用いることができる。
本発明は、培地成分を収容可能な凹部を有する第1部材と、前記凹部に嵌入し得る凸部を有する第2部材と、を有し、前記嵌入がなされた状態で前記凸部の天面が前記凹部の底面に接触状態又は非接触状態となる構成を備える、培地成分入り微生物用培養器材を用いて、検体中の微生物を培養し、微生物数を計測する方法を提供することができる。
本実施形態の説明において、上述した<1.本発明に係る微生物用培養器材><2.本発明の実施形態に係る培養器材の例><3.本発明に係る培地成分入り微生物用培養器材>と重複する、第1部材、第2部材、培地成分などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該<1.><2.><3.>の説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
【0094】
前記計測方法は、具体的には、培養器材の凹部に検体液を添加する工程、
添加後に、前記第1部材の凹部に前記第2部材の凸部を嵌入する工程、
嵌入後に、前記検体に含まれる微生物を培養する工程、及び
培養後に、前記微生物のコロニー数を計測する工程、を含むことが好ましい。
前記嵌入工程において、第2部材を第1部材に被せることで、第1部材の凹部に第2部材の凸部が嵌入し、嵌入することで、第1部材の凹部に添加された検体液を培地成分全体に均一に押し広げることができる。また、均一に押し広げられた検体液の水分が、培地成分中のゲル化剤により吸収され、速やかにゲル化することで、検体を含み固化した状態の培養使用時の培地が容易に形成される。
【0095】
微生物の培養条件は、特に限定されないが、対象微生物の種類により適正に選ばれるが、例えば、細菌を培養する場合等では、35±2℃で24~48時間が好ましい。
培養後の培地中には、対象微生物の生育コロニーが出現するので、これを計測する。微生物のコロニー数の計測は、培養器材を分解することなく外部から目視によって確認したり、カメラ等で撮像したものを画像解析ソフトで解析したりすることによって、計測することができる。本発明の計測方法によれば、正確にコロニー数を計測することができる。
【0096】
本発明の計測方法を適用しうる検体としては、特に限定されないが、飲料水、清涼飲料水、工業用水、製薬用水、透析水、尿等の液体検体等が好ましく挙げられる。また、固形の検体を希釈液等により乳剤としたものも含まれる。さらに、これらの検体を予めトリプトソイブイヨン等で培養した培養液であってもよい。
また、本発明の計測方法は上記検体をリン酸食塩緩衝液等の希釈液で希釈した検体にも、本発明の計測方法に好ましく供することができる。
【実施例0097】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
(1)培養器材の作製
<試験例1(比較例1)>
試験例1(比較例1)におけるポリスチレンシート製の培養器材は、特許文献1(特開2019-180369号公報)の態様を再現したものであり、上部材の凸部と下部材の凹部が嵌入した状態において培地領域という空間が形成されるように、かつ下部材に溝部を設けていない。この培養器材の凸部の外周面と凹部の外周面とは略平行で対向した面となっており、これら外周面及び内周面はX軸方向に垂直な面(鉛直な面)でもある。例えば、
図5Bにおいて凹部の外周13が垂直な面となっている。さらに、凸部の外周面の高さと凹部の外周面の高さ(Z軸方向の始端から終端)は、概ね同じ高さ(2.6mm)であった。凹部の外周の直径と凸部の外周の直径も概ね同じ直径(56.4mm)であった。
【0099】
<試験例2(参考例1)>
試験例2(参考例1)の培養器材として、
図3A右側及び
図4右側に示す培養器材100bであり、スタッキング用凸部を凹部の外周端部に等間隔に3箇所設けたポリスチレンシート製を作製した。具体的には、試験例2(参考例1)のポリスチレンシート製の培養器材として、透明な0.2mm厚ポリスチレン製の長方形状のシートを成形し、直径56.43mm(
図1のD(mm)参照)、高さ2.63mmの中空円柱状の凹部(底面積25cm
2)を有する下部材と、この凹部と完全に勘合する同体積の円柱状の凸部(高さ2.63mm)を中央に有する上部材とをそれぞれ設計し作製した。凹部の窪みは円柱状の中空となっており、この窪みに、凸部の円柱状の突起が嵌入できるような構造の構成となっている。下部材及び上部材は略同じ面積の長方形状に設計されている。試験例2(参考例1)の培養器材は、凸部が凹部に嵌入し、嵌入がなされた状態で凸部の天面が凹部の底面に接触状態となる構成に設計され、凸部の嵌入部分の高さのmmが凹部の嵌入部分の深さのmmと同じmmに設計されており、嵌入がなされた状態で天面と底面との距離0.001mm以下になるような構成に設計されている。試験例2(参考例1)の培養器材の凸部の外周面と凹部の外周面とは略平行で対向した面となっており、これら外周面及び内周面はX軸方向に垂直な面(鉛直な面)でもある。例えば、試験例2(参考例1)の培養器材の下部材10bの1例である
図5Bにて説明すると、試験例2(参考例1)の培養器材は、凹部の外周13が垂直な面となっており、外周凸部14の内周が凹部の外周13ともなっており、外周凸部14の外周が溝部30の内周となっており、凹部の中心から外側(X軸・Y軸方向)に向かって凹部12、外周凸部14、溝部30の順にこれらは配置されている。
【0100】
試験例2(参考例1)の培養器材は、上部材と下部材はヒンジ部で連設され、嵌入した状態で末端部分のヒンジ部はX軸方向に平行な中央線I-I’による断面が四角形状になるように構成されている。このヒンジ部の反対側は、培養器材の開閉用の取手部とすることができる。短手方向の部材長さの半分の位置上に凹部の中心を配置し、この中心はヒンジ部側方向にやや近いように配置され、ヒンジ部末端及び取手部末端の距離の10分の3~5に配置されている。
試験例2(参考例1)の培養器材は、下部材に、凹部の外周領域を完全に囲うような隔離用の溝部を設けており、溝部は、凹部の外周(0mm)から1mm以上3mm以下の範囲に配置され、溝部の深さは1~3mm、溝部の幅は2~3mmで設計されている。溝部の底面の形状は曲面であり、断面形状はU字状となっている。
【0101】
<試験例3(実施例1)>
試験例3(実施例1)のポリスチレンシート製の培養器材1として、
図3A左側及び
図3B、
図4左側に示すように、透明な0.2mm厚ポリスチレン製の長方形状のシートを成形し、直径56.43mm(
図1のD(mm)参照)、高さ2.63mmの中空漏斗状の空間が嵌入時に底面12の上方に形成される、底面12を有する凹部を有する下部材10と、この凹部11内の円柱状の中空部分と完全に勘合しうる同体積の円柱状の凸部21(高さ2.63mm)を有する上部材20とをそれぞれ設計し作製した。当該中空漏斗状の空間は、凹部11に凸部21が嵌入した際に、下部材10の底面12側から順に、前記凹部11内に存在する円柱状の中空(直径56.4mm)、環形状の傾斜部15の傾斜面16を側面とする中空逆円錐台(底面の直径56.4mm、上面の直径62.4mm)、上部材側にあり外周が外周凸部14の内周となる円柱状の中空(直径62.4mm)から構成される形状である。そして、この空間は、嵌入がなされた状態で、前記凸部21の外周面と、下部材10の傾斜部15の傾斜面16と、上部材20の内側面と、外周凸部14の内周面とから形成され、凹部11に向けて下り勾配の傾斜のある空間である。
さらに、この培養器材には、スタッキング用凸部60を、円上に等間隔に3箇所設け、これらスタッキング用凸部60は、上部材20の外周領域であって嵌入した際に溝部30よりも外側になるように設けた。
【0102】
試験例3(実施例1)の培養器材は、下部材10及び上部材20は略同じ面積の長方形状に設計されている。試験例3(実施例1)の培養器材は、凸部21が凹部11に嵌入し、嵌入がなされた状態で凸部21の天面22が凹部11の底面12に接触状態となる構成に設計され、凸部21の嵌入部分の高さのmmが凹部11の嵌入部分の深さのmmと同じmmに設計されており、嵌入がなされた状態で天面22と底面12との距離が0.001mm以下になるような構成に設計されている。具体的には、上部材20の凸部21の円柱状の突起が下部材10の凹部11の窪み(凹部内の円柱状の中空)に嵌入することができ、嵌入がなされた状態では、外周凸部14の上面と上部材20の内側面とは接触するように構成されている。なお、試験例3の培養器材の追加例として、この嵌入がなされた状態で天面22と底面12との距離が0.4mmになるように、凹部11の深さ(Z軸方向)を2.53mmと、凸部21の高さ(Z軸方向)2.13mmとする培養器材を作製してもよい。
【0103】
試験例3(実施例1)の培養器材は、上記試験例2(参考例1)と同様に、凹部11の外周領域を完全に囲うような隔離用の溝部30を設けている。この溝部30の内周は、凹部11の外周(0mm)から5mm以上8mm以下の範囲、傾斜部15の終了地点(傾斜面16の上端)から2mm以上5mm以下の範囲に存在し、溝部30の深さ(Z軸方向)は1~3mm、溝部30の幅(X軸方向及びY軸方向)は2~3mmで設計されている。溝部30の底面の形状は平面状であり、断面形状はU字状となっている。なお、試験例3の培養器材の追加例として、溝部30を備えない培養器材を作製することもできる。
試験例3(実施例1)の培養器材では、毛細管現象が切れる位置が、溝部30の内周から傾斜部15の開始地点(傾斜面の下端)に移動している。このことは、
図5Aの本発明の培養器材の第1部材と、
図5Bの参考例の培養器材の第1部材との各部の位置関係の対比にてわかるであろう。このため、試験例3(実施例1)の嵌入した状態での培養器材の大きさ(X軸及びY軸方向)は、試験例2(参考例1)の培養器材の大きさよりも、傾斜部のX軸及びY軸方向の長さにより、大きくなっている。
【0104】
さらに、試験例3(実施例1))の培養器材における傾斜部15は、凹部11に向けて下り勾配となる傾斜面16を有し、傾斜部15の角度とは、
図2の拡大図に示す破線と傾斜面16とがなす角度α°のことをいい、試験例3(実施例1)の培養器材における傾斜部15の高さは底面12から傾斜面16の上端までの高さであり、これは2.00mmであった。傾斜面16の下端~上端までのZ軸方向の高さは1.00mmであり、底面12から傾斜面16の下端までの高さ(Z軸方向)は1.00mmであり、傾斜面16の上端から段差部14の上面までの高さ(Z軸方向)は0.63mmであった。すなわち、凹部11の高さ1mmを1としたときに、傾斜部15の高さ(底面12から傾斜面16の上端までの高さ)は2であり、「傾斜部15の下周(傾斜面の下端)から外周凸部14の上面までの高さ」は1.63であった。また、試験例3(実施例1)の培養器材における傾斜部15の角度は、傾斜面16の底辺の長さ(換言すると凹部片側の傾斜部のX軸方向の長さ)3mm、傾斜面16の高さ(下端~上端)1mmより、18.4°であった。試験例3(実施例1)の培養器材における溝30のX軸方向の幅は、2.5mmであり、段差部(外周凸部)14のX軸方向の幅は、2mmであった。
【0105】
試験例3(実施例1)の培養器材は、上部材と下部材はヒンジ部で連設され、嵌入した状態で末端部分のヒンジ部はX軸方向に平行な中央線I-I’による断面が三角形状になるように構成されている。この三角形状の部分をZ軸方向から押しながらY軸方向に滑らすことで、折れ曲がったV字状にすることができる。このヒンジ部の反対側は、培養器材の開閉用の取手部とすることができる。短手方向(Y軸方向)の部材長さの半分の位置上に凹部の中心を配置し、この中心はヒンジ部側方向にやや近いように配置され、ヒンジ部末端及び取手部末端の距離の10分の3~5に配置されている。
【0106】
(2)培地成分入り培養器材の作製
上述の試験例1(比較例1)、試験例2(参考例1)、試験例3(実施例1)の各ポリスチレンシート製培養器材を用意した。
100mL調製用量(3g)のトリプトソイブイヨン培地粉末(ベクトン・ディッキンソン製)、0.0025gのTTC、それぞれ1.5gのキサンタンガム及びグアーガム、及び0.1gのヒドロキシプロピルセルロースを、100mLのエタノールに懸濁し、混合溶液を得た。該混合溶液1000μLを、上記作製した各ポリスチレンシート製の培養器材の下部材の凹部の底面に添加し、底面上に均一に広げた後、これをヒートブロック上に置き70℃で5分間乾燥させた。これにより、試験例1(比較例1)、試験例2(参考例1)、試験例3(実施例1)の各培地成分入り培養器材を作製した。
【0107】
(3)コロニー確認試験
供試菌株はBacillus属細菌又はEscherichia属細菌を使用し、トリプトソイ寒天培地で24時間前培養した後、マクファーランド比濁#1相当(約3.0×108CFU/mL)になるように滅菌綿棒を用いて滅菌生理食塩水に懸濁し、菌原液とした。各菌原液を用いて、滅菌生理食塩水にて10倍段階希釈を10-8まで繰り返し、数10CFU/mLの菌希釈液を調製した。この菌希釈液1mLを検体液として、培地成分入りの培養器材の下部材の凹部に接種し、すぐに上部材の凸部を嵌入して、菌希釈液を凹部に均一に広げ、培地成分に菌希釈液を浸透させて、培地を形成させた。検体を含む液を含んだ培地入り培養器材を、35℃で24時間、インキュベータ内にて培養した後、各培養器材における菌株の発育の状況(有無、コロニー数)を確認した。
このようにして、試験例1(比較例1)、試験例2(参考例1)、試験例3(実施例1)の各培地成分入り培養器材を用いたコロニー確認試験を行った。
なお、使用した菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(nite)バイオテクノロジーセンターから購入したBacillus subtilis NBRC 3134及びEscherichia coli NBRC 3972を使用した。
【0108】
<試験例1(比較例1)の培養器材でのコロニー確認結果>
試験例1(比較例1)として作製した、凹部を完全に囲うような隔離用の溝を設けない培養器材では、凹部と凸部が完全に勘合されると凹部に空気層が発生し、さらに上下部材が接触する際の毛細管現象により、凹部の周囲へ水分が漏れ出してしまうことを認めた。しかも、本現象は上下部材の凹凸部を相当慎重に勘合させてもゲル化よりも早い段階で周囲へ漏れ出してしまうことを認めた。これにより、塗布された培地が均一に再構成されず、きれいな培養例を作ることが困難であった。また、菌液(検体液)が外部へ流出し漏れることは好ましくはない。
試験例1(比較例1)の培養器材では、嵌合し培養した際に、凹部以外の領域、具体的には、凹部の外周面及び凸部の外周面における略平行で対向する面の間、第2部材の凸部以外の上部材の面とこれに略平行で対向する下部材の面との間に、微生物検出用の発色やコロニー形成がみられた。試験例1の培養器材を用いたコロニー確認試験を数回行ったところ、多数の試験例において、微生物検出用のコロニー発色が、凹部を越えて、略平行で対向する面との間(対向する壁面の間、対向する上下部材の面との間)で認められた。
【0109】
<試験例2(参考例1)の培養器材でのコロニー確認結果>
試験例2(参考例1)として作製した培養器材では、試料液を下部材の凹部に接種し、上部材の凸部が完全に嵌入するように被せると、直ちに検体が凹部の底面全体に均一に広がり、速やかに水分が吸収され、透明な培地が形成された。このとき、凹部と凸部が完全に勘合されると1mL分の検体体積がないため、接種した試料液は外部に溢れ出ることが予想されるが、試験例2(参考例1)の培養器材では、驚くべきことに若干凸部が持ち上がる程度で膨潤したゲルが速やかに固化し、一切の試料液の水分が溢れ出ることを認めず、均一で透明な培地が構成されることを認めた。また、ゲル化させた培地の培養後の様子は
図4左側に示すように、明瞭な発色コロニーを形成することを認め、コロニーが離水等により拡散することを認めなかった。
【0110】
試験例2(参考例1)の培養器材に備えた溝の役割についてより詳細に観察した。検体液を添加したとき、試験例2(参考例1)の培養器材に収容された培地成分中のゲル化剤が水にて膨潤し固化するには若干の時間差があるため、培地成分に添加した検体液の水分が凹部から若干染み出すこともあった。しかし、試験例2(参考例1)の培養器材の溝により毛細管現象が遮断されるため、凹部から染み出した少量の水は、溝に落ち込むことなく、凹部の外周縁部と溝の内周縁部との間で止まり、その後培地成分中のゲル化剤がこの間にある水分を吸収することにより、凹部内に吸い寄せられた。このように、培地成分に添加された検体液の水分は溝に落ち込むことなく、培養使用時の培地は正確な培地濃度となると共に、培養後に観察するときの微生物コロニーは全て凹部内に形成された。
【0111】
<試験例3(実施例1)の培養器材でのコロニー確認結果>
試験例3(実施例1)として作製した傾斜部及び溝部を備えた本発明の培養器材100aでは、傾斜部の斜面の水切れは良く、斜面部表面にコロニー、コロニー発色のにじみの発生は起きなかった。そして本発明の培養器材では、試験例2(参考例1)の溝部を有する培養器材と同等以上の効果、具体的には、培地成分に添加された検体液が毛細管現象により凹部の外に漏れ出すことを抑制するという効果を得ることができた。そして、試験例3(実施例1)の培養器材では、培地成分に添加された検体液の水分は溝に落ち込むこともなく、培養使用時の培地は正確な培地濃度となると共に、培養後に観察するときの微生物コロニーは概ね凹部内に形成された。このことから、凹部の外周面及び凸部の外周面との面の間及び凹部以外の対向面間での、コロニー形成やコロニー発色の拡散が大幅に低減することができた。試験例2(参考例1)の培養器材では、コロニー確認試験において、時折、凹部の外周面及び凸部の外周面との面の間にコロニー発色がみられることがあったが、本発明の培養器材ではこれら面の間にコロニー発色が認められなくなった。このことから、本発明のような傾斜部を設けることで、上下部材が接触する際の毛細管現象により凹部の周囲への水分の漏れ出しを抑制することができること、水分の漏れが抑制できることで塗布された培地が均一に再構築でき、きれいな培養例を作ることができることが考えられた。さらに溝部を設けることで、毛細管現象によって凹部の外側への検体液の漏れ出することをより良好に抑制することができる。
【0112】
試験例2(参考例1)は傾斜部15はないが溝部30はある培養器材であり、試験例3(実施例1)は傾斜部15がある培養器材であるが、試験例3(実施例1)の傾斜部15がある培養器材は、試験例2(参考例1)の傾斜部15はないが溝部30がある培養器材と比較し、毛細管現象が切れる位置が、溝部30の内周から、傾斜部15開始地点(凹部内の外周)に移動させることができたと考える(例えば、
図3~
図5参照)。
さらに、試験例3(実施例1)の培養器材の傾斜部15の開始高さ(下端)が、嵌合した時、上蓋となる凸部21の天面の位置(嵌入時の底面12から天面22までのZ軸方向の距離)よりも高ければよく、上蓋となる凸部21の天面22と凹部11の底面12の接触状態は、接触又は非接触のいずれでもよく、嵌入時に凸部21の天面22と凹部11の底面12とに隙間が生じた状態(非接触状態)であってもよいが、好ましくは完全に接触した状態が好ましい。
【0113】
さらに、コロニー確認試験での検体液を添加する操作において、液体を凹部に添加し凹部及び凸部を勘合した直後に傾斜部に検体液が溢れる場合があっても、通常は検体液が傾斜部に留まらずプラスチック器材の特有の撥水性も相俟って凹部に速やかに戻るので、コロニー確認試験における検体中の微生物数の精度に影響が少ない。従来の培養器材では、初心者や熟練者でない者が微生物数を確認する場合、又は急ぎの検査や連続大量の検査の場合には、操作の誤操作で、凹部に凸部を強く押し付けることや容器を傾けることなども起こりやすい。本発明の培養器材には、傾斜部の外側にさらに溝部を設けることが望ましく、これにより、上下部材の外周領域に培養成分に添加された検体液が毛細管現象により凹部の外に漏れ出すことがより良好に抑制することができるようになる。
【0114】
<総括>
すなわち、本発明の培養器材を用いると、1mL検体の適用時に凹凸部により形成される空間体積や器材の接触角に関係なく、さらにスプレッダー等の器具や不織布等による毛細管現象によらずとも、検体液を培地成分入りの凹部に添加し上部材の凸部と下部材の凹部とを嵌入させるだけで、凹部全体に液体試料を均一に広げることができた。また、培地成分中のゲル化剤のゲルは速やかに固化し、試料液が溢れることなく試料液を含む使用時の培地を簡便に構築することができた。このように、簡便な操作で培養することができた。培養後は
図4に示すように凹部のみに形成された透明なゲルの中に明瞭な発色コロニーが目視により確認でき、容易にそのコロニー数を計測することができた。さらに、培地成分に添加された検体液が毛細管現象により凹部の外へ漏れ出すことを抑制することがより良好にできるような構成として、<試験例2>で設計した溝部及び/又は<試験例3>で設計した傾斜部を提案できた。また、本発明の培養器材は複雑な構成ではないため、容易かつ効率的に作製することができた。
【0115】
そして、本発明者らは、20~30cm2の円状の底面積の凹部を有する皿状部材と、その凹部と、一部が凹部と勘合する凸部を有する蓋部材を有し、凹部に凸部の嵌入がなされたときに蓋部材の凸部の外周面と、蓋部材の外周領域の内面と、皿状部材の傾斜部の傾斜面と、皿状部材の外周凸部の内周面とに基づき形成される空間をさらに備えるような構成となる培養器材を設計したところ、当該培養器材において、検体液が外部に漏れ出すことなく均一に拡散し一定面積の培地形成が可能であり、より簡便な微生物の培養及び計測を実現できた。このとき、凹部又は凸部のいずれか片方を完全に囲うような隔離用の溝を設けることで、この培養器材の凹部あるいは凸部の少なくとも片側に、培地成分を塗布することで、1mL検体液の適用時にフタを閉めるという簡単な操作のみで、凹凸部により形成される空間体積や器材の接触角に関係なく、また器具や毛細管現象等を利用せずとも、液体検体が外部に漏れ出すことなく均一に拡散し一定面積の培地形成が可能となり、より簡便な微生物の培養及び計測を実現できる。そして、培地を形成するゲル化剤として、グアーガム、キサンタンガム又はそれらの混合物が、操作の簡便性や外部からの視認性の高さの観点から好適である。
【0116】
さらに、本発明の培養器材は、真空成形法や射出成形法などの一般的な樹脂成形法により成形することができる。当該成形された器材構造自体が、従来技術の培養器材及びこれを用いた微生物計測方法に存在していた欠点をも改善できる。このため、本発明は、別の側面として、極めて簡単で安価な微生物用培養器材の製造方法を提供できる発明でもある。
【0117】
よって、本発明は、新規な微生物用培養器材、培地成分入り微生物培養用器材、及びこれを用いた微生物数計測法を提供することができる。また、本発明は、複雑な構成ではないため、製造も簡単にできる微生物用培養器材を提供することができる。
このように、本発明の微生物用培養器材は、操作性が高く、安全に使用でき、かつ簡単に製造することができ、さらに、検体中の微生物数を容易に計測することができる。
本発明によれば、検体中の微生物を、簡便な操作で培養し、その数を容易に計測することができる。また、本発明の培養器材は、複雑な構成ではないため、製造も簡単であるため、産業上有用である。
1:微生物用培養器材、10:第1部材、11:凹部、12:底面、13:凹部の外周、14:外周凸部(段差部)、15:傾斜部、16:傾斜面、17:空間、20:第2部材、21:凸部、22:天面、30:溝部、40:培地成分、50:ヒンジ部、60:スタッキング用凸部、100:培地成分入り微生物用培養器材