(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037849
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/06 20060101AFI20230309BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20230309BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20230309BHJP
H02K 17/16 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
H02K1/06 A
H02K3/28 J
H02K9/19 A
H02K17/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144649
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】浜中 傑
(72)【発明者】
【氏名】卯辰 清志
【テーマコード(参考)】
5H013
5H601
5H603
5H609
【Fターム(参考)】
5H013FF01
5H013FF03
5H013LL04
5H601AA29
5H601CC01
5H603AA01
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB08
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD21
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609QQ08
5H609RR26
5H609RR30
(57)【要約】
【課題】大型化することなく、出力密度を向上可能な回転電機を提供する。
【解決手段】モータ1は、軸線方向に延びる円筒状のステータ2と、ステータ2の径方向内方に位置するロータ3と、を有する。ステータ2は、径方向内方に向かって突出する複数のティース13を有する円筒状のステータコア11と、複数のティース13に対して集中巻きによって巻回され、複数の並列回路を構成するステータコイル21と、を有する。ステータコア11の内周側は、ステータコア11を前記軸線方向に見て、ロータ3との間に、径方向の隙間が小さい第1間隙部S1と、第1間隙部S1よりも径方向の隙間が大きい第2間隙部S2とが形成されるような形状を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる円筒状のステータと、
前記ステータの径方向内方に位置するロータと、
を有する回転電機であって、
前記ステータは、
径方向内方に向かって突出する複数のティースを有する円筒状のステータコアと、
前記複数のティースに対して集中巻きによって巻回され、複数の並列回路を構成するステータコイルと、
を有し、
前記ステータコアの内周側は、前記ステータコアを前記軸線方向に見て、前記ロータとの間に、第1間隙部と、該第1間隙部よりも径方向の隙間が大きい第2間隙部とが形成されるような形状を有する、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記ステータコアの内周側は、前記軸線方向に見て楕円状である、
回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
前記ステータコイルは、前記ステータに前記ステータコアの周方向に並んだ4つの並列回路が形成されるように、前記複数のティースに対して巻回されている、
回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、
前記ステータコイルは、前記ステータコアの長軸方向に対向する2つの並列回路が形成されるとともに前記ステータコアの短軸方向に対向する2つの並列回路が形成されるように、前記複数のティースに対して巻回されている、
回転電機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の回転電機において、
前記ステータコアの外径よりも小さい内径を有する円筒状の円筒部材をさらに有し、
前記円筒部材は、
外周面に冷却用の液体が流れる流路を構成する溝を有し、
前記ステータコアと前記ロータとの間に前記第1間隙部及び前記第2間隙部が形成されるように、前記ステータコアの外周側に篏合されている、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のステータと、前記ステータの径方向内方に位置するロータとを有する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状のステータと、前記ステータの径方向内方に位置するロータとを有する回転電機として、例えば特許文献1に開示されるような回転電機が知られている。前記回転電機は、複数の鋼板を積層した固定子コアと、前記固定子コアに巻回された固定子巻線とを備えている。
【0003】
前記回転電機は、誘導電動機であり、前記固定子巻線に120度ごとに位相差のあるパルス電流を供給すると、前記固定子巻線内部の磁界はあたかも永久磁石が存在するかのような磁界が発生して、磁束が流れる。これにより、前記回転電機には、前記固定子巻線による回転磁界が発生する。
【0004】
前記回転磁界によって、固定子と磁気的空隙を介して対向するように設けられた回転子を構成している回転子コアに誘導電流が発生する。この誘導電流によって前記回転子の導体バーが励磁され、この導体バーは、前記固定子に発生する回転磁界に追従するような磁界を前記回転子に対して発生させる。その結果、前記固定子に発生する回転磁界と、前記導体バーによって前記回転子に対し発生する磁界とによって、前記回転子が回転軸と一体に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、自動車及び航空機等の電動化に伴って、回転電機の高出力化が求められている。特に、電動航空機では、回転電機を大型化することなく、出力密度を向上することが求められている。
【0007】
本発明の目的は、大型化することなく、出力密度を向上可能な回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る回転電機は、軸線方向に延びる円筒状のステータと、前記ステータの径方向内方に位置するロータと、を有する。前記ステータは、径方向内方に向かって突出する複数のティースを有する円筒状のステータコアと、前記複数のティースに対して集中巻きによって巻回され、複数の並列回路を構成するステータコイルと、を有する。前記ステータコアの内周側は、前記ステータコアを前記軸線方向に見て、前記ロータとの間に、第1間隙部と、該第1間隙部よりも径方向の隙間が大きい第2間隙部とが形成されるような形状を有する(第1の構成)。
【0009】
このように、ステータコアの内周側が、前記ステータコアを軸線方向に見て、ロータとの間に、第1間隙部と、該第1間隙部よりも径方向の隙間が大きい第2間隙部とが形成されるような形状を有することにより、ステータに対して前記ロータが回転した際に、前記ステータのステータコイルに生じる誘起電圧に差が生じる。具体的には、前記第1間隙部に近い位置に位置する前記ステータコイルに生じる誘起電圧は、前記第2間隙部に近い位置に位置する前記ステータコイルに生じる誘起電圧よりも高い。
【0010】
このように前記ステータコイルに誘起電圧差を生じさせることにより、前記ステータコイルに循環電流を流すことができる。したがって、前記ステータコイルに、前記循環電流の分だけ多くの電流を流すことができるため、その分、回転電機の出力を増大させることができる。よって、大型化することなく出力密度を向上可能な回転電機を実現することができる。
【0011】
前記第1の構成において、前記ステータコアの内周側は、前記軸線方向に見て楕円状である(第2の構成)。
【0012】
これにより、ステータとロータとの間に、第1間隙部及び第2間隙部を周方向に交互に形成することができる。よって、前記ステータに対して前記ロータが回転した際に、ステータコイルに誘起電圧の差をより確実に生じさせることができる。したがって、前記ステータコイルにより確実に循環電流を流すことができるため、回転電機の出力密度をより確実に向上することができる。
【0013】
前記第2の構成において、前記ステータコイルは、前記ステータに前記ステータコアの周方向に並んだ4つの並列回路が形成されるように、前記複数のティースに対して巻回されている(第3の構成)。
【0014】
これにより、ステータコアの周方向に並んだ4つの並列回路において、第1間隙部に近い並列回路に生じる誘起電圧と、第2間隙部に近い並列回路に生じる誘起電圧とに、差が生じる。よって、前記第1間隙部に近い並列回路と前記第2間隙部に近い並列回路との間に還流電流が流れる。したがって、ステータコイルに還流電流を流すことができるため、回転電機の出力密度を向上することができる。
【0015】
前記第3の構成において、前記ステータコイルは、前記ステータコアの長軸方向に対向する2つの並列回路が形成されるとともに前記ステータコアの短軸方向に対向する2つの並列回路が形成されるように、前記複数のティースに対して巻回されている(第4の構成)。
【0016】
これにより、ステータコアの長軸方向に対向する2つの並列回路を、第2間隙部の近くに配置できる。また、ステータコアの短軸方向に対向する2つの並列回路を、第1間隙部の近くに配置できる。
【0017】
よって、ステータコアの周方向に並んだ4つの並列回路において、前記ステータコアの長軸方向に対向する2つの並列回路に生じる誘起電圧と、前記ステータコアの短軸方向に対向する2つの並列回路に生じる誘起電圧とに、より確実に差が生じる。したがって、ステータコイルに還流電流を流すことができるため、回転電機の出力密度を向上することができる。
【0018】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記回転電機は、前記ステータコアの外径よりも小さい内径を有する円筒状の円筒部材をさらに有する。前記円筒部材は、外周面に冷却用の液体が流れる流路を構成する溝を有し、前記ステータコアと前記ロータとの間に前記第1間隙部及び前記第2間隙部が形成されるように、前記ステータコアの外周側に篏合されている(第5の構成)。
【0019】
このように、ステータコアの外周側に円筒部材が嵌合されている回転電機の構成では、前記円筒部材の周方向の剛性は、前記円筒部材の外周面に形成された複数の溝によって、異なる。そのため、前記円筒部材が外周側に嵌合されたステータコアの外形は、前記円筒部材の剛性に応じて、周方向に異なる。これにより、前記ステータコアとロータとの間に第1間隙部及び第2間隙部を形成することができる。よって、上述の第1の構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態に係る回転電機によれば、ステータは、複数のティースを有するステータコアと、前記複数のティースに対して集中巻きによって巻回され、複数の並列回路を構成するステータコイルとを有し、前記ステータコアの内周側は、前記ステータコアを前記軸線方向に見て、前記ロータとの間に、径方向の隙間が小さい第1間隙部と、該第1間隙部よりも径方向の隙間が大きい第2間隙部とが形成されるような形状を有する。
【0021】
これにより、ステータコイルに誘起電圧差を生じさせて循環電流を流すことができる。したがって、前記ステータコイルに流れる前記循環電流の分だけ、回転電機の出力を増大させることができる。よって、大型化することなく出力密度を向上可能な回転電機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係るモータの構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、保持リングの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、ステータの外周側に保持リングを嵌合する様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。以下の説明において、ステータ2の軸線Pが延びる方向を、軸線方向と呼び、ステータ2の周方向を、単に周方向と呼び、ステータ2の径方向を、単に径方向と呼ぶ。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るモータ1の構成を模式的に示す図である。この
図1では、ロータ3の詳細な構成などの図示を省略している。モータ1は、軸線Pに沿って延びる円筒状のステータ2と、ステータ2の径方向内方に位置するロータ3とを有する。モータ1が、本発明の回転電機に対応する。モータ1は、例えば、電動航空機の駆動源として用いられる。なお、モータ1は、電動航空機の駆動源以外に用いられてもよい。
【0025】
ステータ2は、円筒状のステータコア11と、ステータコイル21とを有する。ステータコア11は、複数の鋼板を厚み方向に積層することにより構成されている。ステータコア11は、円筒状のヨーク12と、複数のティース13とを有する。複数のティース13は、ヨーク12の内周面から径方向内方に向かって延びている。ステータコイル21は、複数のティース13にそれぞれ巻回されている。
【0026】
ステータコイル21は、ステータコア11の複数のティース13に対して、それぞれ、集中巻きによって巻回されている。本実施形態では、ステータコイル21は、4つの並列回路を形成するように、複数のティース13に巻回されている。具体的には、ステータコイル21は、ステータコア11を軸線方向に見て、ステータコア11の4つの領域にそれぞれ並列回路が形成されるように、複数のティース13に巻回されている。ステータコイル21によって形成される4つの並列回路は、電気的に並列に接続されている。
【0027】
ステータ2の径方向内方には、ロータ3が回転可能に配置されている。ロータ3は、特に図示しないが、ロータコアとロータコイルとを有する。ロータ3の構成は、従来の構成と同様であるため、詳しい説明を省略する。なお、
図1において、説明のために、ロータ3にはハッチングを付している。
【0028】
ステータ2の径方向外側には、円筒状の保持リング4(円筒部材)が嵌合されている。保持リング4の径方向外側には、円筒状のハウジング5が嵌合されている。
【0029】
図2は、保持リング4の概略構成を示す図である。
図2に示すように、保持リング4は、円筒状の部材である。保持リング4の内周面4aは、ステータコア11の外周側に嵌合された状態で、ステータコア11の外周面に接触する。保持リング4の内径は、ステータコア11の外径よりも小さい。
【0030】
保持リング4は、外周面の軸線方向両端部及び軸線方向中央部にそれぞれフランジ部4bを有する。保持リング4は、外周面上で且つ軸線方向に隣り合うフランジ部4bの間に、軸線方向に延びる複数の溝4cを有する。溝4cは、保持リング4の径方向外側にハウジング5が嵌合された状態で、例えば油などの冷却用の液体が通過可能な空間を構成する。
【0031】
なお、保持リングは、フランジ部を有していなくてもよい。また、保持リングは、外周面に溝を一つ有していてもよい。保持リングは、フランジ部にも溝を有していてもよい。
【0032】
ステータ2は、その外周側に保持リング4が嵌合されることにより、径方向に変形する。
図3は、ステータ2の外周側に保持リング4が嵌合された状態を模式的に示す図である。保持リング4の剛性が周方向に異なるため、ステータ2が保持リング4から径方向に受ける力が周方向で異なる。
図3に示すように、ステータ2は、例えば、径方向の一方向(図中の白抜き矢印の方向)に保持リング4から受ける力が、前記径方向において前記一方向に直交する方向に保持リング4から受ける力よりも大きい。これにより、ステータ2は、保持リング4の嵌合によって、前記一方向に押されて楕円状に変形する。
【0033】
上述のようにステータ2が楕円状に変形することにより、
図1に示すように、ステータ2とロータ3との間には、径方向の隙間が小さい第1間隙部S1と、該第1間隙部よりも径方向の隙間が大きい第2間隙部S2とを有する。第1間隙部S1は、ステータ2とロータ3との間で且つ楕円状のステータ2の短軸方向に、一対、形成されている。第2間隙部S2は、ステータ2とロータ3との間で且つ楕円状のステータ2の長軸方向に、一対、形成されている。
【0034】
図3に示すように、第1間隙部S1の径方向寸法G1は、例えば、ステータ2の外周と外周長さが等しい真円状のステータ(
図3に細破線で示す)とロータとの隙間の径方向寸法GAよりも5%~25%小さい隙間である。第1間隙部S1の径方向寸法G1は、前記真円状のステータ(
図3に細破線で示す)とロータとの隙間の径方向寸法GAよりも約10%程度小さいのがより好ましい。第2間隙部S2の径方向寸法G2は、例えば、前記真円状のステータとロータとの隙間の径方向寸法GBよりも約10%程度大きい隙間である。なお、第1間隙部S1の径方向寸法G1は、前記真円状のステータとロータとの隙間の径方向寸法GAよりも小さければよい。第2間隙部S2の径方向寸法G2は、前記真円状のステータとロータとの隙間の径方向寸法G2よりも大きければよい。
【0035】
本実施形態では、第1間隙部S1は、ステータコア11において、回路1及び回路3をそれぞれ構成するステータコイル21が巻回される部分と、ロータ3との間に形成される。すなわち、回路1及び回路3は、第1間隙部S1に対して径方向外方に位置する。第2間隙部S2は、ステータコア11において、回路2及び回路4をそれぞれ構成するステータコイル21が巻回される部分と、ロータ3との間に形成される。すなわち、回路2及び回路4は、第2間隙部S2に対して径方向外方に位置する。
【0036】
回路1から回路4は、電気的に並列に接続された並列回路である。回路1から回路4では、それぞれ、例えば、三相のステータコイル21がY結線されている。なお、各回路におけるステータコイルの結線方法は、Δ結線であってもよい。
【0037】
上述のように、ステータ2とロータ3との間に第1間隙部S1及び第2間隙部S2が形成されることにより、ステータ2に対してロータ3が回転すると、ステータ2のステータコイル21には、誘起電圧の差が生じる。具体的には、ステータコア11において第1間隙部S1に位置する部分に巻回されたステータコイル21に生じる誘起電圧は、ステータコア11において第2間隙部S2に位置する部分に巻回されたステータコイル21に生じる誘起電圧よりも大きい。
【0038】
このように、ステータコイル21に誘起電圧の差が生じると、ステータコイル21には循環電流が流れる。これにより、ステータコイル21に流れる電流を増大させることができる。よって、モータ1を大型化することなく、モータ1の出力密度を増大することができる。
【0039】
本実施形態では、上述のように、ステータコア11においてステータコイル21のうち回路1及び回路3をそれぞれ構成するステータコイル21が巻回される部分とロータ3との間に、第1間隙部S1が形成され、ステータコア11においてステータコイル21のうち回路2及び回路4をそれぞれ構成するステータコイル21が巻回される部分とロータ3との間に、第2間隙部S2が形成されるため、回路1及び回路3をそれぞれ構成するステータコイル21に生じる誘起電圧は、回路2及び回路4をそれぞれ構成するステータコイル21に生じる誘起電圧よりも大きい。このように、回路1及び回路3と、回路2及び回路4との間に誘起電圧差が生じることにより、ステータコイル21には循環電流が流れる。これにより、ステータコイル21に流れる電流を増大させることができ、モータ1の出力密度を増大させることができる。
【0040】
以上より、本実施形態によれば、モータ1は、軸線方向に延びる円筒状のステータ2と、ステータ2の径方向内方に位置するロータ3と、を有する。ステータ2は、径方向内方に向かって突出する複数のティース13を有する円筒状のステータコア11と、複数のティース13に対して集中巻きによって巻回され、複数の並列回路を構成するステータコイル21と、を有する。ステータコア11の内周側は、ステータコア11を前記軸線方向に見て、ロータ3との間に、径方向の隙間が小さい第1間隙部S1と、第1間隙部S1よりも径方向の隙間が大きい第2間隙部S2とが形成されるような形状を有する。
【0041】
このように、ステータコア11の内周側が、ステータコア11を軸線方向に見て、ロータ3との間に、径方向の隙間が小さい第1間隙部S1と、第1間隙部S1よりも径方向の隙間が大きい第2間隙部S2とが形成されるような形状を有することにより、ステータ2に対してロータ3が回転した際に、ステータ2のステータコイル21に生じる誘起電圧に差が生じる。具体的には、第1間隙部S1に近い位置に位置するステータコイル21に生じる誘起電圧は、第2間隙部S2に近い位置に位置するステータコイル21に生じる誘起電圧よりも高い。
【0042】
このようにステータコイル21に誘起電圧差を生じさせることにより、ステータコイル21に循環電流を流すことができる。したがって、ステータコイル21に、前記循環電流の分だけ多くの電流を流すことができるため、その分、モータ1の出力を増大させることができる。よって、モータ1の出力密度を向上することができる。
【0043】
本実施形態では、ステータコア11の内周側は、前記軸線方向に見て楕円状である。これにより、ステータ2とロータ3との間に、第1間隙部S1及び第2間隙部S2を周方向に交互に形成することができる。よって、ステータ2に対してロータ3が回転した際に、ステータコイル21に誘起電圧の差をより確実に生じさせることができる。したがって、ステータコイル21により確実に循環電流を流すことができるため、モータ1の出力密度をより確実に向上することができる。
【0044】
本実施形態では、ステータコイル21は、ステータ2にステータコア11の周方向に並んだ4つの並列回路が形成されるように、複数のティース13に対して巻回されている。
【0045】
これにより、ステータコア11の周方向に並んだ4つの並列回路において、第1間隙部S1に近い並列回路に生じる誘起電圧と、第2間隙部S2に近い並列回路に生じる誘起電圧とに、差が生じる。よって、第1間隙部S1に近い並列回路と第2間隙部S2に近い並列回路との間に還流電流が流れる。したがって、ステータコイル21に還流電流を流すことができるため、モータ1の出力密度を向上することができる。
【0046】
本実施形態では、ステータコイル21は、ステータコア11の長軸方向に対向する2つの並列回路が形成されるとともにステータコア11の短軸方向に対向する2つの並列回路が形成されるように、複数のティース13に対して巻回されている。
【0047】
これにより、ステータコア11の長軸方向に対向する2つの並列回路を、第2間隙部S2の近くに配置できる。また、ステータコア11の短軸方向に対向する2つの並列回路を、第1間隙部S1の近くに配置できる。
【0048】
よって、ステータコア11の周方向に並んだ4つの並列回路において、ステータコア11の長軸方向に対向する2つの並列回路に生じる誘起電圧と、ステータコア11の短軸方向に対向する2つの並列回路に生じる誘起電圧とに、より確実に差が生じる。したがって、ステータコイル21に還流電流を流すことができるため、モータ1の出力密度を向上することができる。
【0049】
本実施形態では、モータ1は、ステータ2の外径よりも小さい内径を有する円筒状の保持リング4をさらに有する。保持リング4は、外周面に冷却用の液体が流れる流路を構成する複数の溝4cを有し、ステータコア11とロータ3との間に第1間隙部S1及び第2間隙部S2が形成されるように、ステータコア11の外周側に篏合されている。
【0050】
このように、ステータコア11の外周側に保持リング4が嵌合されているモータ1の構成では、保持リング4の周方向の剛性は、保持リング4の外周面に形成された複数の溝4cによって、異なる。そのため、保持リング4が外周側に嵌合されたステータコア11の外形は、保持リング4の剛性に応じて、周方向に異なる。これにより、ステータコア11とロータ3との間に第1間隙部S1及び第2間隙部S2を形成することができる。よって、本実施形態の構成を有するモータ1の構成を実現することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0052】
前記実施形態では、回転電機の一例としてモータ1が挙げられている。しかしながら、回転電機は、発電機などのように、円筒状の部品とその径方向内方に位置する部品とを有する機器であれば、どのような機器であってもよい。
【0053】
前記実施形態では、外表面に溝4cを有する保持リング4をステータコア11の外周側に嵌合させることにより、ステータ2を楕円状に変形させている。これにより、ステータ2とロータ3との間に第1間隙部S1及び第2間隙部S2を形成している。しかしながら、ステータコアの内径側を軸線方向に見て楕円状に形成することにより、ステータとロータとの間に第1間隙部及び第2間隙部を形成してもよい。また、保持リングとは異なる形状のリング部材を、ステータコアの外周側に嵌合させることにより、ステータを楕円状に変形させてもよい。
【0054】
前記実施形態では、ステータ2は、ステータ2を軸線方向に見て楕円状である。しかしながら、ステータは、ロータとの間の第1間隙部及び第2間隙部が形成される構成であれば、楕円状以外の形状を有していてもよい。
【0055】
前記実施形態では、ステータ2は、4つの並列回路を構成するステータコイル21を有する。しかしながら、ステータは、3つ以下の並列回路を構成するステータコイルを有していてもよいし、5つ以上の並列回路を構成するステータコイルを有していてもよい。
【0056】
前記実施形態では、回路1及び回路3は、第1間隙部S1に対して径方向外方に位置し、しかしながら、回路1及び回路3が第2間隙部に対して径方向外方に位置していてもよいし、回路2及び回路4が第1間隙部に対して径方向外方に位置していてもよい。回路1から回路4は、それぞれ、一部が第1間隙部及び第2間隙部の少なくとも一方に対して径方向外方に位置していてもよい。
【0057】
なお、回路の一部が第1間隙部及び第2間隙部の少なくとも一方に位置している場合でも、ステータコイルに誘起電圧の差が生じて、前記ステータコイルに循環電流が流れる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、円筒状のステータと、前記ステータの径方向内方に位置するロータとを有する回転電機に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 モータ(回転電機)
2 ステータ
3 ロータ
4 保持リング(円筒部材)
4a 内周面
4b フランジ部
4c 溝
5 ハウジング
11 ステータコア
12 ヨーク
13 ティース
21 ステータコイル
S1 第1間隙部
S2 第2間隙部
P 軸線