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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003786
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物、発泡成形体及び多層管
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/08 20060101AFI20230110BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230110BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20230110BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20230110BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20230110BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230110BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20230110BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C08J9/08 CEV
C08L27/06
C08L33/06
C08K3/26
C08K3/32
B32B5/18
B32B1/08 Z
B32B27/30 101
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105072
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 梨嘉
(72)【発明者】
【氏名】望月 弘章
(72)【発明者】
【氏名】久保 喜弘
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA35
4F074AA48
4F074AB01
4F074AD16
4F074AG03
4F074AG20
4F074BA03
4F074BA13
4F074CA22
4F074CC22X
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA24
4F074DA59
4F100AK15B
4F100AK25B
4F100AL05B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA01B
4F100DA11
4F100DJ01B
4F100GB07
4J002BD041
4J002BD051
4J002BD061
4J002BD071
4J002BD081
4J002BD091
4J002BG042
4J002BG052
4J002DE206
4J002DH047
4J002FD326
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】金型への樹脂組成物の付着を抑制し、かつ、得られる発泡成形体の独立気泡率を高めることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、アクリル系ポリマーと、発泡剤と、亜鉛-リン酸化合物とを含み、前記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が、600以上1000以下であり、前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウムを含み、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記亜鉛-リン酸化合物の含有量が、0.3重量部以上1.7重量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂と、アクリル系ポリマーと、発泡剤と、亜鉛-リン酸化合物とを含み、
前記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が、600以上1000以下であり、
前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウムを含み、
前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記亜鉛-リン酸化合物の含有量が、0.3重量部以上1.7重量部以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記発泡剤が、アゾジカルボンアミドを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記亜鉛-リン酸化合物の含有量の、前記炭酸水素ナトリウムの含有量に対する重量比が、0.14以上0.78以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系ポリマーの含有量が、10重量部以上50重量部以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物が発泡成形された、発泡成形体。
【請求項6】
シート状、管状又は棒状である、請求項5に記載の発泡成形体。
【請求項7】
発泡層と、前記発泡層の内側に配置された内層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備え、
前記発泡層が、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物が発泡成形された発泡成形体である、多層管。
【請求項8】
空調ドレン用管である、請求項7に記載の多層管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂と発泡剤とを含む樹脂組成物に関する。また、本発明は、上記樹脂組成物を用いた発泡成形体及び多層管に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂と発泡剤とを含む樹脂組成物を発泡成形させた発泡成形体、又は該発泡成形体を備える成形物が広く用いられている。例えば、下記の特許文献1には、塩化ビニル系樹脂と発泡剤とを含む組成物を発泡成形させて得られた発泡層を備える空調ドレン管が開示されている。
【0003】
上記発泡成形体は、一般に、樹脂組成物を金型で成形することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-059707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩化ビニル系樹脂と発泡剤とを含む樹脂組成物を金型で成形した場合に、金型に樹脂組成物が付着することがある。金型に樹脂組成物が付着した場合には、成形性及び生産効率が低下することがある。
【0006】
また、金型への樹脂組成物の付着を抑制するために、樹脂組成物に滑剤を多量に添加した場合には、成形時の混錬が困難になり、得られる発泡成形体中で、気泡が連続したり密集したりする(独立気泡率が低下する)ことがある。発泡成形体の独立気泡率が低下すると、通水率が高くなるため、該発泡成形体を用いて多層管を作製した際に、発泡成形体の内部に水が浸透しやすく、結果として、多層管の熱交換率が高くなり、断熱性が低下するという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、金型への樹脂組成物の付着を抑制し、かつ、得られる発泡成形体の独立気泡率を高めることができる樹脂組成物を提供することである。また、本発明は、上記樹脂組成物を用いた発泡成形体及び多層管を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、塩化ビニル系樹脂と、アクリル系ポリマーと、発泡剤と、亜鉛-リン酸化合物とを含み、前記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が、600以上1000以下であり、前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウムを含み、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記亜鉛-リン酸化合物の含有量が、0.3重量部以上1.7重量部以下である、樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記発泡剤が、アゾジカルボンアミドを含む。
【0010】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記亜鉛-リン酸化合物の含有量の、前記炭酸水素ナトリウムの含有量に対する重量比が、0.14以上0.78以下である。
【0011】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系ポリマーの含有量が、10重量部以上50重量部以下である。
【0012】
本発明の広い局面によれば、上述した樹脂組成物が発泡成形された、発泡成形体が提供される。
【0013】
本発明に係る発泡成形体のある特定の局面では、前記発泡成形体は、シート状、管状又は棒状である。
【0014】
本発明の広い局面によれば、発泡層と、前記発泡層の内側に配置された内層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備え、前記発泡層が、上述した樹脂組成物が発泡成形された発泡成形体である、多層管が提供される。
【0015】
本発明に係る多層管のある特定の局面では、前記多層管は、空調ドレン用管である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、アクリル系ポリマーと、発泡剤と、亜鉛-リン酸化合物とを含む。本発明に係る樹脂組成物では、上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が、600以上1000以下であり、上記発泡剤が、炭酸水素ナトリウムを含む。本発明に係る樹脂組成物では、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記亜鉛-リン酸化合物の含有量が、0.3重量部以上1.7重量部以下である。本発明に係る樹脂組成物では、上記の全体の構成が備えられているので、金型への樹脂組成物の付着を抑制し、かつ、得られる発泡成形体の独立気泡率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、アクリル系ポリマーと、発泡剤と、亜鉛-リン酸化合物とを含む。本発明に係る樹脂組成物では、上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が、600以上1000以下であり、上記発泡剤が、炭酸水素ナトリウムを含む。本発明に係る樹脂組成物では、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記亜鉛-リン酸化合物の含有量が、0.3重量部以上1.7重量部以下である。
【0019】
従来の樹脂組成物を金型で成形した場合に、金型に樹脂組成物が付着することがある。金型に樹脂組成物が付着した場合には、成形性及び生産効率が低下することがある。
【0020】
また、樹脂組成物が、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤を含む場合には、金型に、塩化ビニル系樹脂及び発泡反応により発生する炭酸ナトリウムがより一層付着しやすい。金型の表面に塩化ビニル系樹脂等が付着すると、該塩化ビニル系樹脂が熱分解されることによりガスが発生し、発生したガスによって金型の金属(めっき等)が腐食することがある。
【0021】
また、金型への樹脂組成物の付着を抑制するために、樹脂組成物に滑剤を多量に添加した場合には、成形時の混錬が困難になり、得られる発泡成形体中で、気泡が連続したり密集したりする(独立気泡率が低下する)ことがある。発泡成形体の独立気泡率が低下すると、通水率が高くなるため、該発泡成形体を用いて多層管を作製した際に、発泡成形体の内部に水が浸透しやすく、結果として、多層管の熱交換率が上がり、断熱性が低下するという課題がある。
【0022】
本発明に係る樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、金型への樹脂組成物の付着を抑制することができる。結果として、本発明に係る樹脂組成物では、成形性及び生産効率を高めることができる。
【0023】
さらに、本発明に係る樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、金型への炭酸ナトリウム及び塩化ビニル系樹脂の付着を抑制することができる。結果として、金型の金属(めっき等)が腐食することを抑制することができる。
【0024】
また、本発明に係る樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、得られる発泡成形体の独立気泡率を高めることができる。また、本発明に係る樹脂組成物では、得られる発泡成形体の気泡径を微細にすることができる。結果として、得られる発泡成形体の通水率を低くすることができるので、該発泡成形体を用いて多層管を作製した際に、多層管の熱交換率を下げることができ、断熱性を高めることができる。
【0025】
[塩化ビニル系樹脂]
上記樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂を含む。
【0026】
上記塩化ビニル系樹脂として、従来公知の塩化ビニル系樹脂を使用可能である。上記塩化ビニル系樹脂としては、(1)塩化ビニルモノマーの単独重合体、(2)塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、及び(3)塩化ビニルモノマーの単独重合体以外の重合体に塩化ビニルモノマーがグラフト重合されたグラフト重合体等が挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、特に限定されず、エチレン、プロピレン、塩化アリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、及びアクリロニトリル等が挙げられる。上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記塩化ビニルモノマーの単独重合体以外の重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。上記塩化ビニルモノマーの単独重合体以外の重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、及びエチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体等が挙げられる。上記塩化ビニルモノマーの単独重合体以外の重合体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記塩化ビニル系樹脂は、塩素化塩化ビニル系樹脂であってもよい。
【0030】
上記塩化ビニル系樹脂100重量%中、塩化ビニルに由来する構造単位の含有率は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記塩化ビニルに由来する構造単位の含有率が上記下限以上であると、難燃性をより一層高めることができる。上記塩化ビニルに由来する構造単位の含有率が上記上限以下であると、成形性を高めることができる。また、上記塩化ビニルに由来する構造単位の含有率が上記上限以下であると、成形時に塩化ビニル系樹脂の熱分解を抑制することができるので、熱分解によるガスの発生を抑制することができ、金型の金属の腐食を抑制することができる。なお、上記塩化ビニル系樹脂100重量%中、塩化ビニルに由来する構造単位の含有率は、100重量%(全量)であってもよい。
【0031】
上記塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは37500以上、より好ましくは43750以上であり、好ましくは62500以下、より好ましくは56250以下である。
【0032】
上記塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質として用いたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される重量平均分子量を意味する。
【0033】
本発明の効果を発揮する観点から、上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、600以上1000以下である。上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、好ましくは700以上であり、好ましくは900以下である。上記平均重合度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、上記平均重合度が上記下限以上であると、熱安定性及び疲労特性等の長期性能が損なわれ難い。上記平均重合度が上記上限以下であると、成形時に高温環境下にする必要がなくなり、成形性及び生産効率がより一層良好になる。
【0034】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、重量平均分子量を、クロロエチレンの分子量で除することにより算出できる。
【0035】
金型への樹脂組成物の付着をより一層効果的に抑制する観点から、上記樹脂組成物100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは65重量%以上、より好ましくは75重量%以上であり、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0036】
なお、上記樹脂組成物は、後述するように、塩化ビニル系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0037】
上記樹脂組成物に含まれる全ての熱可塑性樹脂の合計100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは65重量%以上、より好ましくは75重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。
【0038】
[アクリル系ポリマー]
上記樹脂組成物は、アクリル系ポリマーを含む。上記アクリル系ポリマーを用いることにより、得られる発泡成形体の独立気泡率を高めることができる。また、気泡径を微細にすることができる。結果として、得られる発泡成形体の通水率を低くすることができる。
【0039】
上記アクリル系ポリマーとして、従来公知のアクリル系ポリマーを使用可能である。上記アクリル系ポリマーとしては、(1)アクリル系モノマーの単独重合体、並びに(2)アクリル系モノマーと、アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体等が挙げられる。上記アクリル系ポリマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0041】
上記アクリル系ポリマー100重量%中、アクリル系モノマーに由来する構造単位の含有率は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは98.5重量%以上である。
【0042】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは300万以上、より好ましくは400万以上であり、好ましくは600万以下、より好ましくは500万以下である。
【0043】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質として用いたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される重量平均分子量を意味する。
【0044】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系ポリマーの含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは12重量部以上、さらに好ましくは18重量部以上であり、好ましくは50重量部以下、より好ましくは36重量部以下、さらに好ましくは24重量部以下である。上記アクリル系ポリマーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、得られる発泡成形体の独立気泡率をより一層高めることができ、気泡径を小さくすることができる。結果として、得られる発泡成形体の通水率を低くすることができる。
【0045】
[発泡剤]
上記樹脂組成物は、発泡剤を含む。
【0046】
上記発泡剤は、炭酸水素ナトリウムを含む。上記発泡剤が炭酸水素ナトリウムを含むことにより、発泡倍率を高めることができる。
【0047】
上記発泡剤は、アゾジカルボンアミドを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。アゾジカルボンアミドを用いた場合には、アゾジカルボンアミドが核剤として働き、炭酸水素ナトリウムの発泡をより均一化することができる。上記発泡剤は、炭酸水素ナトリウムと、アゾジカルボンアミドとを含むことが好ましい。
【0048】
上記発泡剤は、炭酸水素ナトリウム及びアゾジカルボンアミドの双方とは異なる発泡剤(以下、発泡剤Xと記載することがある)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記発泡剤Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記発泡剤Xは、揮発性発泡剤であってもよく、分解型発泡剤であってもよい。
【0050】
揮発性発泡剤である発泡剤Xとしては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、及びケトン等が挙げられる。上記脂肪族炭化水素としては、プロパン、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、及びペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタンなど)等が挙げられる。上記脂環族炭化水素としては、シクロペンタン、及びシクロへキサン等が挙げられる。上記ハロゲン化炭化水素としては、トリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、及びジフルオロエタン等が挙げられる。上記エーテルとしては、ジメチルエーテル、及びジエチルエーテル等が挙げられる。上記ケトンとしては、アセトン、及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
【0051】
分解型発泡剤である発泡剤Xは、無機系発泡剤であってもよく、有機系発泡剤であってもよい。上記無機系発泡剤としては、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、及びホウ水素化ナトリウム等が挙げられる。上記有機系発泡剤としては、アゾジカルボン酸バリウム、及びジニトロソペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0052】
また、上記発泡剤Xとして、熱膨張性マイクロカプセル、並びに、炭酸ガス、窒素及び空気等のガス等も挙げられる。上記熱膨張性マイクロカプセルは、炭化水素を内包する熱膨張性マイクロカプセルであることが好ましい。上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成されたシェル内に炭化水素が内包された熱膨張性マイクロカプセルであることが好ましい。
【0053】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記発泡剤の含有量は、好ましくは1.0重量部以上、より好ましくは2.0重量部以上であり、好ましくは8.0重量部以下、より好ましくは5.0重量部以下である。上記発泡剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、発泡倍率を高めることができる。
【0054】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、炭酸水素ナトリウムの含有量は、好ましくは1.0重量部以上、より好ましくは2.0重量部以上であり、好ましくは3.0重量部以下、より好ましくは2.5重量部以下である。上記炭酸水素ナトリウムの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、発泡倍率を高めることができる。
【0055】
[亜鉛-リン酸化合物]
上記樹脂組成物は、亜鉛-リン酸化合物を含む。上記亜鉛-リン酸化合物とは、亜鉛原子を有しかつリン酸構造を有する化合物である。上記亜鉛-リン酸化合物を用いることにより、金型への樹脂組成物の付着を抑制することができる。また、上記亜鉛-リン酸化合物を用いることにより、塩化ビニル系樹脂、炭酸水素ナトリウムの発泡により発生する炭酸ナトリウム、及び樹脂組成物中のその他の無機成分の金型への付着を抑制することができる。
【0056】
上記亜鉛-リン酸化合物としては、亜鉛リン酸エステル等が挙げられる。上記亜鉛リン酸エステルとしては、亜鉛ステアリン酸化合物等が挙げられる。上記亜鉛-リン酸化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記亜鉛-リン酸化合物の含有量は、0.3重量部以上1.7重量部以下である。上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記亜鉛-リン酸化合物の含有量は、好ましくは0.4重量部以上、より好ましくは0.6重量部以上であり、好ましくは1.5重量部以下、より好ましくは1.0重量部以下である。上記亜鉛-リン酸化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、金型への樹脂組成物の付着をより一層効果的に抑制することができる。また、塩化ビニル系樹脂、炭酸水素ナトリウムの発泡により発生する炭酸ナトリウム、及び樹脂組成物中のその他の無機成分の金型への付着をより一層効果的に抑制することができる。
【0058】
上記亜鉛-リン酸化合物の含有量の、上記炭酸水素ナトリウムの含有量に対する重量比(亜鉛-リン酸化合物の含有量/炭酸水素ナトリウムの含有量)は、好ましくは0.14以上、より好ましくは0.20以上であり、好ましくは0.78以下、より好ましくは0.58以下、さらに好ましくは0.39以下である。上記重量比(亜鉛-リン酸化合物の含有量/炭酸水素ナトリウムの含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、金型への樹脂組成物の付着をより一層効果的に抑制することができる。また、塩化ビニル系樹脂、炭酸水素ナトリウムの発泡により発生する炭酸ナトリウム、及び樹脂組成物中のその他の無機成分の金型への付着をより一層効果的に抑制することができる。
【0059】
[他の成分]
上記樹脂組成物は、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、滑剤、熱安定剤、相溶化剤、熱安定化助剤、衝撃改質剤、耐衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、顔料、可塑剤及び熱可塑性樹脂(塩化ビニル系樹脂以外の熱可塑性樹脂)等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
<滑剤>
上記樹脂組成物は、滑剤を含むことが好ましい。上記滑剤を用いることにより、金型と樹脂組成物との滑り性及び樹脂組成物に含まれる樹脂間の滑り性を高めることができる。
【0061】
上記滑剤としては、内部滑剤、及び外部滑剤が挙げられる。上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記亜鉛-リン酸化合物と滑剤との合計の含有量は、好ましくは0.4重量部以上、より好ましくは0.6重量部以上であり、好ましくは2.0重量部以下、より好ましくは1.5重量部以下、さらに好ましくは1.0重量部以下である。上記合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、金型への樹脂組成物の付着をより一層効果的に抑制することができる。また、塩化ビニル系樹脂、炭酸水素ナトリウムの発泡により発生する炭酸ナトリウム、及び樹脂組成物中のその他の無機成分の金型への付着をより一層効果的に抑制することができる。また、上記合計の含有量が上記上限以下であると、樹脂組成物を良好に混錬することができるので、アクリル系ポリマーの分散性を高めることができ、得られる発泡成形体の発泡倍率及び独立気泡率を高めることができる。
【0063】
<熱安定剤>
上記樹脂組成物は、熱安定剤を含むことが好ましい。上記熱安定剤を用いることにより、樹脂組成物の熱安定性を良好に高めることができる。
【0064】
上記熱安定剤としては、有機錫系安定剤、鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤、及びバリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられる。樹脂組成物の熱安定性を高める観点から、上記安定剤は、有機錫系安定剤であることが好ましい。上記有機錫系安定剤としては、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、及びジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。上記熱安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
<熱安定化助剤>
上記樹脂組成物は、熱安定化助剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記熱安定化助剤としては、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記熱安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
<衝撃改質剤>
上記樹脂組成物は、衝撃改質剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記衝撃改質剤としては、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、及びアクリルゴム等が挙げられる。上記衝撃改質剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
<耐熱向上剤>
上記樹脂組成物は、耐熱向上剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記耐熱向上剤としては、α-メチルスチレン系、及びN-フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。上記耐熱向上剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
<酸化防止剤>
上記樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
<紫外線吸収剤>
上記樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
<光安定剤>
上記樹脂組成物は光安定剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。上記光安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0071】
<充填剤>
上記樹脂組成物は、充填剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記充填剤としては、炭酸カルシウム、及びタルク等が挙げられる。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
<顔料>
上記樹脂組成物は、顔料を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記顔料としては、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。上記有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、及び染料レーキ系有機顔料等が挙げられる。上記無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、及びフェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
<可塑剤>
上記樹脂組成物は、可塑剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、及びジ-2-エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
<塩化ビニル系樹脂以外の熱可塑性樹脂>
上記樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記塩化ビニル系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、及びABS樹脂等が挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂以外の熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記樹脂組成物に上記他の成分が存在するか否か、及びその含有量は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS)等により測定することができる。なお、これら以外の方法でも確認することも可能である。ICP-AESの場合、EN ISO17353:2004に準拠して測定できる。
【0076】
(発泡成形体及び多層管)
本発明に係る発泡成形体は、上述した樹脂組成物が発泡成形された発泡成形体である。上記樹脂組成物を発泡成形することにより、発泡成形体を得ることができる。
【0077】
上記発泡成形体の形状は特に限定されない。上記発泡成形体は、シート状であってもよく、管状であってもよく、棒状であってもよい。上記発泡成形体は、シート状、管状又は棒状であることが好ましく、シート状又は管状であることがより好ましく、管状であることがさらに好ましい。
【0078】
本発明に係る多層管は、発泡層と、上記発泡層の内側に配置された内層と、上記発泡層の外側に配置された外層とを備え、上記発泡層が、上述した樹脂組成物が発泡成形された発泡成形体である。上記多層管は、中心から径方向外側に向かって、内層と発泡層と外層とをこの順に備える。上記内層は、非発泡層であることが好ましく、上記外層は、非発泡層であることが好ましい。上記多層管は、内層と発泡層と外層との3層構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。
【0079】
上記内層及び上記外層の材料は、特に限定されない。上記内層及び上記外層の材料としては、従来公知の多層管の材料を用いることができる。
【0080】
上記管状である発泡成形体は、空調ドレン用管に好適に用いられる。また、上記多層管は、空調ドレン用管に好適に用いられる。上記管状である発泡成形体は、空調ドレン用管であることが好ましく、上記多層管は、空調ドレン用管であることが好ましい。
【0081】
上記発泡成形体の発泡倍率及び上記多層管における上記発泡層の発泡倍率はそれぞれ、好ましくは3.5倍以上、より好ましくは4.5倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは6.5倍以下である。上記発泡倍率が上記上限以下であると、独立気泡性をより一層高めることができ、気泡径を均一にすることができる。また、上記発泡倍率が上記下限以上及び上記上限以下であると、断熱性を高めることができ、発泡成形体及び多層管を軽量にすることができる。
【0082】
上記発泡成形体の発泡倍率及び上記多層管における上記発泡層の発泡倍率は、以下のようにして測定される。
【0083】
発泡成形体又は発泡層を縦15mm×横40mmに切り出して、試験片とする。得られた試験片の見かけ密度を、JIS K7112:1999に準拠して、23℃±2℃で水置換式比重計を用いて小数点以下3桁まで求める。下記式(1)により発泡倍率を算出する。
【0084】
m=γc/γ’ ・・・(1)
【0085】
上記式(1)中、mは発泡倍率を表し、γ’は見かけ密度(g/cm)を表し、γcは未発泡時(樹脂組成物)の密度(g/cm)を表す。
【0086】
上記発泡成形体の発泡倍率及び上記多層管における上記発泡層の発泡倍率は、塩化ビニル系樹脂の種類及び含有量、発泡剤の種類及び含有量、製造条件等により適宜調整することができる。
【0087】
上記発泡成形体の独立気泡率及び上記多層管における上記発泡層の独立気泡率はそれぞれ、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。上記独立気泡率が上記下限以上であると、通水率を低くすることができるので、得られる多層管の熱交換率を下げることができ、断熱性を高めることができる。上記独立気泡率の上限は特に限定されない。上記独立気泡率は、100%であってもよい。
【0088】
上記発泡成形体の独立気泡率及び上記多層管における上記発泡層の独立気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して、以下のようにして測定される。
【0089】
発泡成形体又は発泡層を周長20mm×横30mmに切り出して、試験片とする。得られた試験片について、JIS K 7138:2006に準拠して、23℃±2℃で空気比較式比重計を用いて体積(空気比較式体積)を測定し、JIS K 7112:1999に準拠して、23℃±2℃で水置換式比重計を用いて体積(水置換法体積)を測定する。下記式(2)により独立気泡率を算出する。
【0090】
Cc=(Va/Vaq)×100 ・・・(2)
【0091】
上記式(2)中、Ccは独立気泡率(%)を表し、Vaは空気比較式体積(cm)を表し、Vaqは水置換法体積(cm)を表す。
【0092】
上記発泡成形体の独立気泡率及び上記多層管における上記発泡層の独立気泡率は、塩化ビニル系樹脂の種類及び含有量、発泡剤の種類及び含有量、アクリル系ポリマーの種類及び含有量、製造条件等により適宜調節することができる。
【0093】
上記発泡成形体及び上記発泡層は、下記の通水試験をしたときに、通水率が0.1%以下であることが好ましい。上記通水率が上記上限以下であると、上記発泡成形体及び上記発泡層の内部に水が浸透しにくいので、得られる多層管の熱交換率を下げることができ、断熱性を高めることができる。
【0094】
上記発泡成形体の通水率及び上記多層管における上記発泡層の通水率は、以下のようにして測定される。
【0095】
発泡成形体又は発泡層を縦200mm×横4mmに切り出して、試験片を得る。試験片を、水圧試験治具を取り付けた樹脂管内に配置し、樹脂管内に水圧0.06MPaで1分間通水する。
【0096】
下記式(3)により、試験片の通水率を算出し、上記発泡成形体又は上記発泡層の通水率とする。なお、上記通水率は、2個の試験片の通水率を平均して算出されることが好ましい。
【0097】
通水率(%)=通水後の試験片の重量/通水前の試験片の重量×100 ・・・(3)
【0098】
上記通水率が0.1%以下となる際の「成形時の樹脂組成物の温度」を「通水試験合格温度」とすると、上記通水試験合格温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記通水試験合格温度が上記上限以下であると、塩化ビニル系樹脂の粘着又は分解による金型の劣化が生じにくい。
【0099】
上記発泡成形体及び上記多層管における上記発泡層の厚みは、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.8mm以上である。上記発泡層の厚みが上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記発泡成形体及び上記多層管における上記発泡層の厚みの上限は、特に限定されない。上記発泡成形体及び上記多層管における上記発泡層の厚みは、10mm以下であってもよく、8mm以下であってもよい。
【0100】
上記発泡成形体及び上記多層管は、従来公知の方法で製造することができる。上記発泡成形体及び上記多層管は、例えば、上記樹脂組成物を押出成形する方法により製造することができる。なお、押出成形時の温度は、通水試験合格温度より5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことが好ましい。
【0101】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0102】
以下の材料を用意した。
【0103】
塩化ビニル系樹脂:
塩化ビニル樹脂(A1)(徳山積水工業社製「TS-800E」、平均重合度800)
塩化ビニル樹脂(A2)(徳山積水工業社製「TS-640M」、平均重合度640)
【0104】
アクリル系ポリマー:
アクリル系ポリマー(B)(カネカ社製「PA-40」、重量平均分子量500万)
【0105】
亜鉛-リン酸化合物:
亜鉛-リン酸化合物混合物(C)(亜鉛-リン酸化合物(C’)75~85重量%と滑剤系有機物15~25重量%との混合物(ADEKA社製「NPO-3」))
【0106】
発泡剤:
炭酸水素ナトリウム(D1)(永和化成工業社製「セルボンSC-855」)
アゾジカルボンアミド(D2)(永和化成工業社製「ビニホールAC#3」)
【0107】
(実施例1)
樹脂組成物の作製:
以下の成分を混合して、樹脂組成物を作製した。
【0108】
塩化ビニル系樹脂(A1)100重量部
アクリル系ポリマー(B)20重量部
亜鉛-リン酸化合物混合物(C)0.4重量部
炭酸水素ナトリウム(D1)2.2重量部
アゾジカルボンアミド(D2)0.3重量部
【0109】
発泡成形体の作製:
得られた樹脂組成物を、二軸押出機を用いて混練し、5mm×5mmにペレット化した。次いで、ペレット化された樹脂組成物を、二軸押出機(ユニオンプラスチック社製「USV30型押出機」)及びスリット金型(出口寸法20mm×2mm)を用いて、177℃~180℃で押出成形を行い、シート状の発泡成形体を得た。
【0110】
(実施例2,3及び比較例1,2)
樹脂組成物の組成及び成形時の樹脂組成物の温度を表1に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物及び発泡成形体を得た。
【0111】
(評価)
(1)発泡倍率
得られたシート状の発泡成形体を縦15mm×横40mmに切り出して、試験片とした。この試験片の見かけ密度を、JIS K7112:1999に準拠して、23℃±2℃で水置換式比重計を用いて小数点以下3桁まで求め、下記式(1)により発泡倍率を算出した。
【0112】
m=γc/γ’ ・・・(1)
【0113】
上記式(1)中、mは発泡倍率を表し、γ’は見かけ密度(g/cm)を表し、γcは未発泡時の密度(g/cm)を表す。
【0114】
(2)通水試験(通水試験合格温度)
得られたシート状の発泡成形体を、縦200mm×横4mmに切り出し、2個の試験片を得た。2個の試験片を、水圧試験治具を取り付けた樹脂管内に配置し、樹脂管内に水圧0.06MPaで1分間通水した。
【0115】
下記式(3)により、2個の試験片の通水率をそれぞれ算出し、その平均値を、発泡成形体の通水率とした。
【0116】
通水率(%)=通水後の試験片の重量/通水前の試験片の重量×100 ・・・(3)
【0117】
発泡成形体の通水率が0.1%以下となる際の「成形時の樹脂組成物の温度」を「通水試験合格温度」とした。通水試験について、以下の基準で判定した。
【0118】
[通水試験の判定基準]
○:通水試験合格温度が、180℃以下
×:通水試験合格温度が、180℃を超える
【0119】
(3)金型への樹脂組成物の付着
発泡成形体の製造後、金型を分解して、金型に樹脂組成物が付着しているか否かを目視にて確認し、以下の基準で判定した。
【0120】
[金型への樹脂組成物の付着の判定基準]
○○:樹脂組成物が、金型表面に付着していない
○:樹脂組成物が、金型の表面積100%中、50%未満に付着している
×:樹脂組成物が、金型の表面積100%中、50%以上に付着している
【0121】
樹脂組成物の構成、成形時の樹脂組成物の温度及び結果を下記の表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
表1に示すように、実施例1~3では、金型への樹脂組成物の付着を抑制することができた。なお、比較例1,2では、金型の表面積100%中、100%(全表面積)に樹脂組成物が付着していた。