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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037885
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】鳥獣忌避装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/10 20110101AFI20230309BHJP
【FI】
A01M29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144705
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】521392712
【氏名又は名称】株式会社J―bot
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(72)【発明者】
【氏名】松岡 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 政宗
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121AA07
2B121DA33
2B121EA26
2B121EA30
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により短時間の運転で広範囲について確実に鳥獣被害を防除する鳥獣忌避装置を提供する。
【解決手段】
本発明の鳥獣忌避装置1は、レーザ光の発振器10と、発振器から出射されるレーザ光を一方向に長いスリット孔12を介して板状レーザビーム11として通過させる板状レーザビーム形成手段30と、スリット孔12通過後のスリット孔背面側の外部近傍位置であって、スリット孔の長手方向に沿って設置される回転軸52と一体回転しつつスリット孔を通過した板状レーザビーム11を反射させる外部回転反射鏡装置50と、を含む。筐体に機器を収容する状態で板状レーザビーム形成手段30を構成し、スリット孔12通過後の板状レーザビームを出射方向に向けて横方向にセクタ状に走査移動させ、圃場や栽培地等全体にレーザビームを放射させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の発振器と、
発振器から出射されるレーザ光を一方向に長いスリット孔を介して板状レーザビームとして通過させる板状レーザビーム形成手段と、
スリット孔通過後のスリット孔背面側の外部近傍位置であって、スリット孔の長手方向に沿って設置される回転軸と一体回転しつつスリット孔を通過した板状レーザビームを反射させる外部回転反射鏡装置と、を含むことを特徴とする鳥獣忌避装置。
【請求項2】
板状レーザビーム形成手段は、閉鎖室を有する筐体と、
筐体の閉鎖室内に設けられレーザ光発振器から出射されるレーザ光を回転軸と一体回転しつつ反射させる内部回転反射鏡装置と、
筐体の壁面に設けられ内部回転反射鏡装置により反射されたレーザ光を通過させる一方向に長いスリット孔と、を含むことを特徴とする請求項1記載の鳥獣忌避装置。
【請求項3】
内部回転反射鏡装置は、筐体内に設けられレーザ光の発振器から出射されるレーザ光の放射方向と交差方向を回転軸心とする第1回転軸に支持されて第1回転軸と一体回転しつつレーザ光を反射して周回平面薄板状ビームを形成する第1反射鏡を含み、
スリット孔は、レーザ光発振器からのレーザビームの進路方向で当たる筐体の壁面であって、周回平面薄板状ビームの周回位置に対応する位置の筐体壁面に設けられていることを特徴とする請求項2記載の鳥獣忌避装置。
【請求項4】
第1反射鏡を支持する回転軸はレーザ光の発振器から出射されるレーザビームの出射方向に沿う筐体のいずれかの壁面に寄った位置に取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の鳥獣忌避装置。
【請求項5】
内部回転反射鏡装置の第1反射鏡は横軸に一体回転するように取り付けられた反射鏡であり、
外部回転反射鏡装置の第2反射鏡は、縦軸に一体回転するように取り付けられた反射鏡であることを特徴とする請求項3又は4記載の鳥獣忌避装置。
【請求項6】
第1及び第2反射鏡は平面鏡であることを特徴とする請求項5記載の鳥獣忌避装置。
【請求項7】
外部回転反射鏡装置は、レーザビームの進行経路からずらすべく、スリット孔の中心線から第2反射鏡の回転軸心を横方向にずらすように外部回転反射鏡を移動させるビーム放射経路確保装置が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の鳥獣忌避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場等の農作物を食餌する鳥や獣を圃場等から追い払う鳥獣忌避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の野生鳥獣による被害は我が国耕地面積が減少しているのに対し年度ごとの全体の被害面積に大きな変化が見られないことからわかるように、被害地域の面積割合は増加していると考えられる。農作物被害で年間170億円超の被害額があり、必要な対応が望まれている。シカ、イノシシ、カラス、サルなどによる被害のほか、カモによる被害も深刻でありその習性から特に夜間に活動して農作物被害を生じさせる事例が続出している。カモは農作物の栽培作業が行われない夜間に圃場等に飛来して食餌する習性があり、その忌避対策は容易ではない。
【0003】
従来、鳥獣害の防除方法として、特許文献1の装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-233644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、レーザ光利用の鳥獣害防除方法に関し、レーザ光源から放出されるレーザ光を、所定の方向に向けて空中に出射させて鳥獣害を防除することを企図している。しかしながら、特許文献1の方法では、レーザ光発振器自体にヘリウムネオンレーザ、炭酸ガスレーザ、紫外線レーザ等の高出力レーザを適用することを予定しており、危険防止のためにレーザ光源1、反射ミラー3、4、ポリゴンミラー2等の機器を本体ケース6内に収容させ、この状態で空中へ放射している。このため、ポリゴンミラー2からの空中放射角度は90度程度しか設定されておらず、レーザ光の放射領域が限定的で、圃場面へのレーザ光放射の際のカモ等の被害の防除は不十分であった。また、外周多角面のポリゴンミラーを用いるとしても、一方向回転のみではレーザ光放射による圃場への放射パターンをカモが学習し、レーザ光放射によりいったんはカモが逃げても長くない間隔で再飛来し捕食を繰り返すおそれがあった。また、この特許文献1の方法では、レーザ光は点状で対象に当たるから、このレーザ光を多角面ポリゴンミラーで反射して鳥獣の目の角膜に強い刺激を与えることを企図するものであり、鳥の個体ごとで、かつそれらの目にレーザ光を投射するについては有効性に疑問があった。また、高価な監視機器や大掛かりな設備は利用者への経費負担を大きくする問題があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、簡単な構成により短時間の運転で広範囲について鳥獣被害を防除することができる鳥獣忌避装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、防除対象の圃場等で広範囲にわたりしかも面状に対象地域にレーザ光を放射して防除の実効性を確保可能な鳥獣忌避装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、レーザ光の発振器10と、発振器10から出射されるレーザ光2を一方向に長いスリット孔12を介して板状レーザビーム11として通過させる板状レーザビーム形成手段30と、スリット孔12通過後のスリット孔背面側の外部近傍位置であって、スリット孔の長手方向に沿って設置される回転軸52と一体回転しつつスリット孔12を通過した板状レーザビーム11を反射させる外部回転反射鏡装置50と、を含む鳥獣忌避装置1から構成される。
【0008】
その際、板状レーザビーム形成手段30は、閉鎖室9を有する筐体3と、筐体3の閉鎖室9内に設けられレーザ光発振器10から出射されるレーザ光2を回転軸42と一体回転しつつ反射させる内部回転反射鏡装置40と、筐体3の壁面3aに設けられ内部回転反射鏡装置40により反射されたレーザ光を通過させる一方向に長いスリット孔12と、を含むとよい。
【0009】
また、内部回転反射鏡装置40は、筐体3内に設けられレーザ光の発振器10から出射されるレーザ光2の放射方向と交差方向を回転軸心42aとする第1回転軸42に支持されて第1回転軸と一体回転しつつレーザ光を反射して周回平面薄板状ビーム11を形成する第1反射鏡41を含み、スリット孔12は、レーザ光発振器10からのレーザビームの進路方向で当たる筐体の壁面であって、周回平面薄板状ビーム11の周回位置に対応する位置の筐体壁面3aに設けられているとよい。
【0010】
また、その際、第1反射鏡41を支持する回転軸42はレーザ光の発振器10から出射されるレーザビーム2の出射方向に沿う筐体3のいずれかの壁面に寄った位置(3e)に取り付けられているとよい。
【0011】
また、内部回転反射鏡装置40の第1反射鏡41は横軸(42)に一体回転するように取り付けられた反射鏡であり、外部回転反射鏡装置50の第2反射鏡51は、縦軸(52)に一体回転するように取り付けられた反射鏡であるとよい。
【0012】
また、第1及び第2反射鏡41、51は平面鏡であるようにするとよい。
【0013】
さらに、外部回転反射鏡装置50は、レーザビームの進行経路からずらすべく、スリット孔12の中心線12aから第2反射鏡51の回転軸心52aを横方向にずらすように外部回転反射鏡(51)を移動させるビーム放射経路確保装置80が設けられているとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鳥獣忌避装置によれば、短時間の運転を数十分間隔で行うだけで対象区域へ面状にレーザ光を放射し有害鳥獣を圃場から忌避することができる。また、圃場等での広範な領域でレーザ光を放射することができるから有害鳥獣忌避の実効を確保することができる。さらに、簡単な構成により低廉なコストで装置を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る鳥獣忌避装置の一部切り欠き側面説明図である。
図2図1の鳥獣忌避装置の正面図である。
図3図1の鳥獣忌避装置のA-A線矢視図である。
図4図1の鳥獣忌避装置の一部破断平面説明図である。
図5図1の鳥獣忌避装置の斜視説明図である。
図6図1の鳥獣忌避装置の一部切り欠き側面作用説明図である。
図7図1の鳥獣忌避装置の正面作用説明図である。
図8】(a)~(e)は、図1の鳥獣忌避装置の外部回転反射鏡装置によるレーザビームの放射領域を平面視する模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照しつつ本発明の鳥獣忌避装置の実施形態について説明するが、本発明は実施形態の構成のみを限定的に含むものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、他の実施形態を用いるようにしてもよい。本発明の鳥獣忌避装置は、レーザ光を用いて夜間の圃場、その他の農作物植栽地、魚介類養殖場所、その他鳥獣の跳梁、飛来が禁止されるべき場所等への接近を阻止するために用いられる。
【0017】
図は本発明の1実施形態を示しており、図1は本発明の鳥獣忌避装置1の一部破断側面図、図2は、同装置1の正面図、図4は同装置1の一部破断平面説明図である。
【0018】
図に示す本発明の実施の形態においては、例えばレンコン等を栽培する圃場の夜間のカモによる食餌被害の防除の忌避装置を例示している。図1図2図4において、本発明の鳥獣忌避装置1は、レーザ光の発振器10と、板状レーザビーム形成手段30と、外部回転反射鏡装置50と、を含む。レーザ光の発振器10は、誘導放出による光増幅放射(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)によるレーザ光発振手段であり、コヒーレント光を発生させる。レーザ光発振器10は、光増幅された光をガス又は半導体の反射素子媒体間に配置し往復させ、発振及び共振を行わせながら高い光エネルギーを蓄積させるものであり、実施形態において、固体レーザとしての半導体レーザが用いられている。
【0019】
実施形態係る図1,2,4において、一部に図示しない取付用開閉部を有する鉄製の矩形筐体3内にレーザ光発振器10が配置されている。矩形筐体3は内部に閉鎖室9を有しておりこの閉鎖室9内にレーザ光発振器10が配置されている。レーザ光発振器10は、生成したレーザ光の出射口4を有している。矩形筐体3の下部には操作台14を介して筐体3全体が縦軸回りa方向、及び首振りb方向に傾動可能に設けられている。なお、レーザ発振器10は、筐体内に設置する必要はなく筐体外に配置してそのレーザビームを筐体内に取り込んで板状レーザビームを形成するようにしてもよい。
【0020】
板状レーザビーム形成手段30は、発振器10から出射されるレーザ光2を所要の厚みを有する板状のビームとして生成し取り出す手段である。実施形態において、板状レーザビーム形成手段30は、閉鎖室9を有する筐体3と、内部回転反射鏡装置40と、一方向に長いスリット孔12と、を含む。スリット孔12は、発振器10から出射されるレーザ光を板状レーザビーム11として通過させる。実施形態において矩形筐体3は3対の対向壁面3a,3b、3c,3d、3e,3fを有しており、背面側壁面3b寄りの閉鎖室9内にレーザ光発振器10が設置されている。そして、レーザの放射方向となる正面側壁面3aに縦長のスリット孔12が設けられている。スリット孔12は、正面壁3aの左右略中央位置において設けられている。スリット孔12は、内部回転反射鏡装置40により反射されたレーザ光を通過させる一方向に長いスリット孔であり、直接的には、通過した板状レーザビーム11を形成させる。
【0021】
図1ないし図3において、閉鎖室9を有する筐体3内に設けられた内部回転反射鏡装置40は、第1反射鏡41を含む。レーザ光は、発散することなく直進するから、点状に投射されるレーザビームを板状板状のビームに変換する機能が必要となる。
【0022】
内部回転反射鏡装置40は、レーザ光発振器から出射されるレーザ光を回転軸と一体回転しつつ反射させるレーザビームの回転反射手段であり、詳しくは、筐体に設けた第1回転軸42と、第1回転軸に取り付けられて第1回転軸と一体回転する第1反射鏡41と、を含む。第1回転軸42は、筐体3内であって、レーザ光の発振器10から出射されるレーザ光2の放射方向と交差方向を回転軸心とするよう筐体3の左右側面壁に跨って取り付けられている。第1回転軸は図示しない軸受けを介して回転自在に設けられており、さらに実施形態において第1回転軸42に図示しない支持板がその中央部において固定されている。そして、支持板の片面又は両面に第1反射鏡41が反射面を外方に向けて面合わせ状に固定されている。これによって、第1回転軸42の回転に伴って第1反射鏡が第1回転軸42と一体に回転する。なお図示していないが、筐体3の側壁外部に第1回転軸42に連結されたモータが取り付けられて筐体に併設されており、第1回転軸42を回転駆動させる。この際、第1反射鏡41でレーザ光発振器10からのレーザビームを軸回りに回転させながら反射させることにより周回平面薄板状のビーム11を形成する(図6参照)。実施形態において、第1回転軸42及び第1反射鏡41は、筐体の上下中間位置よりも上面壁3eに近接して取り付けられている。
【0023】
なお、内部回転反射鏡装置40の第1回転軸42の軸心位置や回転軸の長手方向へのわずかな遊びに応じて第1反射鏡41による反射により形成されるビームは、数ミリメートル程度の厚みを有する板状のビーム、すなわち周回薄板状ビームとして形成される。
【0024】
実施形態において、内部回転反射鏡装置40は、さらに、固定鏡44を含む。固定鏡44は、レーザ光発振器10と対向する他端側の壁3aに近接した上下中間よりも下位の隅部に配置されており、発振器10から出射されたレーザビームを受けて斜め上方の回転する第1反射鏡41にレーザビームが当たるように設定されている。これによって、固定鏡44からのレーザビームを第1反射鏡41が軸回りに回転しながら反射させることにより周回平面薄板状のビーム11を形成する。周回平面薄板状のビーム11は、第1反射鏡41を連続回転させる間にその鏡面で反射するレーザビームが一定の厚みを有する周回平面薄板状のビーム11に変換されて形成される。
【0025】
第1反射鏡41を支持する回転軸42はレーザ光の発振器10から出射されるレーザビームの出射方向に沿ういずれかの壁面に寄った位置に取り付けられている。これによって、回転する第1反射鏡によるレーザビームが正面壁3a側のスリット孔12を効率よく通過し、また、第1回転軸部分がレーザビームの進行経路に位置してスリット孔12からの通過を妨げないようにしている。
【0026】
実施形態において、第1反射鏡41は、図示しない支持板を介して回転軸に対して背面合わせ状に取り付けられた2枚の平面鏡で構成されている。なお、平面鏡はいずれか1枚のみとしてもよい。さらに、平面鏡でなくとも曲面とした凸面鏡、多角鏡あるいは多面鏡としてもよい。
【0027】
一方、スリット孔12は、レーザ光発振器10からのレーザビームの延長方向で当着する筐体の壁面であって、周回平面薄板状ビーム11の周回位置に対応する位置の筐体正面壁3aに設けられている。スリット孔12は内部回転反射鏡装置40の第1反射鏡41により生成される周回平面薄板状ビーム11を通過させて筐体外へ導出させ直接的に板状レーザビーム11を形成させる手段である。実施形態においてスリット孔12は例えば幅6mm、縦長長さ34mm程度の縦長形状孔で長手方向を鉛直方向に沿って配置させている。なお、スリット孔のサイズはこの実施形態に限らずその幅や長さをより大きなサイズとするものでもよい。スリット孔12は長手方向を鉛直方向から90度未満となるある程度の角度で斜め方向に形成するものでもよい。スリット孔12は矩形形状のスリット孔でもよく、長手両端側がR形状に形成されるものでもよい。
【0028】
外部回転反射鏡装置50は、スリット孔12の長手方向に沿って設置される回転軸回りに反射鏡を回転してスリット孔12を通過した周回平面薄板状ビーム11を反射させ反射ビームを直接に防護すべき圃場や栽培地に向けて放射させる手段である。外部回転反射鏡装置50は、第2回転軸52と第2回転軸に機枠53を介して一体的に取り付けられた第2反射鏡51と、を含む。
【0029】
実施形態において、スリット孔12を設けた筐体3の正面壁3aの直前方位置にスリット孔12の長手方向に平行、すなわち縦方向に第2回転軸52が回転自在に設けられており、さらにこの第2回転軸に取り付けた機枠53の片面に第2反射鏡51が取り付けられている。これによって、第2反射鏡51は第2回転軸52の軸回り、すなわち、縦軸回りに第2回転軸と一体回転する。
【0030】
実施形態において、内部回転反射鏡装置40の第1反射鏡41は第1回転軸42としての横軸に一体回転するように取り付けられた反射鏡であり、外部回転反射鏡装置50の第2反射鏡51は、第2回転軸52としての縦軸に一体回転するように取り付けられた反射鏡である。これによって、スリット孔12から左右方向に面を有する平面薄板状ビーム11を取出し、これを縦軸回りに回動する第2反射鏡51により回転しながら連続反射させることにより出射方向から横方向にセクタ状に板状ビームを走査移動させることになり、ターゲットの圃場や栽培地等全体にレーザビームを放射あるいは照射することが可能となる。
【0031】
外部回転反射鏡装置50は、スリット孔12を通過した板状レーザビーム11を回転軸と一体回転しつつ反射させる反射鏡手段であり、実施形態において、外部回転反射鏡装置50は第2回転軸52と、第2反射鏡51と、を含む。
【0032】
第2回転軸52は、レーザビーム通過方向のスリット孔12の背面側の外部近傍位置であってスリット孔の長手方向、すなわち、縦方向に沿って図示しない軸受に軸支されて回転自在に設けられている。そして、この第2回転軸52に取り付けられた機枠54に第2反射鏡51が取り付けられ、これによって、第2回転軸52とともに一体回転する。
【0033】
実施形態において、外部回転反射鏡装置50は、ビーム放射経路確保装置80を含む。ビーム放射経路確保装置80は、一方向に長いレーザビームの進行方向経路からずらすべく、スリット孔の縦中心線12aから第2反射鏡51の回転軸心52aを横方向(k方向)、すなわち左右方向にずらすように第2反射鏡51としての外部回転反射鏡を移動させるビーム放射経路確保手段である。
【0034】
図1,2,6,7において、筐体3の上面から正面前方側に向けて庇状に突設した突設部56を有する上プレート55が固定されている。また、上プレート55の突設部56の対向下面側には、筐体3の下部から正面前方側に向けて突設して受台部57が固定されている。実施形態において、ビーム放射経路確保装置80は、第2回転軸52の横方向案内機構60と第2回転軸52を横方向に駆動させる駆動機構70と、を含む。
【0035】
図1,2,6、7において、突設部56と受台部57との間には横方向、すなわち水平方向にスライド移動自在にコ字状の移動枠61が設けられている。移動枠61は、図1,6に示すように装置の側面視において正面側に開口するようにコ字枠体で一体に構成されている。すなわち、移動枠61は、筐体3の正面壁に近接対向する位置に面合わせ状に配置される立壁61aと立壁の上下端部から前方側に突設する上下壁61b、61cを一体固定したコ字枠体から構成されている。そして、立壁61aの略中央部分位置であって筐体3の正面壁3aに穿孔した縦長のスリット孔12に対向する位置に貫通孔としての通孔66が穿孔されている。移動枠61は、図7に示すように正面視で左右方向に移動自在に設けられている。図7において、移動枠61と突設部56及び受台部57とには相互に横方向すなわちレーザビームの進行方向と交差する方向に進退移動案内する図示しない移動案内機構が設けられている。そして、コ字状移動枠61の対向上下板に挟まれた空間部分に縦方向に第2回転軸52が縦軸回り回転自在に設けられている。さらにこの第2回転軸52に取り付けた機枠54に片面を反射面とする第2反射鏡51が取り付けられている。第2反射鏡51はコ字状移動枠61の通孔66の近接位置であって板状レーザビームのスリット孔12及び通孔66の通過後の直背面側に設けられている。実施形態において、スリット孔12の軸心線と第2反射鏡の縦中心線は相互にオフセット位置に設定してある。なお、この設定位置はビーム放射経路確保装置80を設けることによりスリット孔12の軸心線と第2反射鏡の縦中心線が一致する位置に設定してもよい。
【0036】
図4において、上プレート55の突設部56に間隔を空けて立設した2個のガイドピン62、62が設けられている。そして、このガイドピン62、62が遊挿される2つの平行長孔63,63を有する支持板64が上プレート55上でスライド移動自在に設けられている。支持板64上に駆動モータ65が取り付けられており、その回転軸はコ字状移動枠61の上板での図示しない接続部を介して第2回転軸52に連結されて第2回転軸52を回転駆動させ、同時に第2反射鏡51を回転させる。
【0037】
実施形態において、支持板64の2個の平行長孔63は、板状レーザビームの進行方向と直交方向に長く開孔されている。そして、上プレート55の突設部56の2個のガイドピン62、62が遊挿することによりこれらのガイドピンに案内されながら支持板64が自在に水平方向に移動できるようになっている。
【0038】
横方向案内機構60は、上プレート55の突設部56に立設したガイドピン62と、ガイドピン62に遊挿され駆動モータ65を搭載した支持板64の長孔63と、を含む。なお、コ字状移動枠61の上板部と駆動モータ65の支持板64とは連結部材を介して連結されており、この連結部材の移動用孔が上プレート55に設けられている。
【0039】
ビーム放射経路確保装置80の駆動機構70は、第2回転軸52を横方向にずらしつつ第2反射鏡51の回転軸心を横方向にずらしてビーム放射経路を直接的に確保させる手段であり、実施形態において、駆動モータ65の支持板64をk方向に向けて付勢する複数のばね67,68と、固定片69と、ソレノイド71と、を含む。実施形態ではコイルばねが用いられており、ばね67は上プレート55の突設部56への固定片69に一端が接続され他端がモータの支持台65に固定されている。また、ばね68は、支持台65を間に挟む支持台の対向他端側に一端が固定され、他端がソレノイド71に接続されている。そして、ソレノイドへの電気接続のオン、オフによりばね68の引込、復帰動作を介して駆動モータ64の支持台65が横方向案内機構60を介して第2回転軸並びに第2反射鏡51の回転軸心を横方向にずらすことができる。ソレノイド71にはタイマー設定で設定した時間ごとに通電のオン、オフを繰り返すようになっている。
【0040】
これによって、縦長のスリット孔12から左右方向に面を有する平面薄板状ビーム11を取出し、これを縦軸回りに回動する第2反射鏡51により回転しながら連続反射させることにより出射方向に向けて横方向にセクタ状に板状ビームを走査移動させることになり、ターゲットの圃場や栽培地等全体にレーザビームを放射あるいは照射することが可能となる。
【0041】
次に、本発明の実施形態の鳥獣忌避装置1の作用について、説明すると、図1,4,6において、筐体3の底面壁3f寄りとなる下部側に設けられたレーザ光発振器10から出射されたレーザビームは、内部回転反射鏡装置40の固定鏡44に反射され筐体3内の上面壁3e寄り位置に取り付けられた横軸回り回転駆動中の第1反射鏡41に向けて投射される。回転する第1反射鏡41では、その反射角が連続的に変化することで図6仮想線示のような左右方向に面を有する周回平面薄板状ビーム11を形成しこれらはビームが反射して進行する位置に対応して設定されたスリット孔12に向けられる。そして平面薄板状ビーム11がスリット孔12を通過した後、縦軸回りに回転する外部回転反射鏡装置50の第2反射鏡51の反射面に当り、第2反射鏡51はこれを回転しながら連続反射させることにより出射方向から横方向にセクタ状に縦板形の平面薄板状ビームを走査移動させることになり、ターゲットの圃場や栽培地等全体にレーザビームを放射あるいは照射することが可能となる。
【0042】
図8は、板状レーザビーム形成手段30で形成する板状レーザビーム11がスリット孔12を通過し、外部回転反射鏡装置50の第2反射鏡51によりビームの放射対象地域側への放射態様を示す模式図であり、第2反射鏡51の反射面が板状レーザビーム11と直交する(a)、(d)状態では、目的対象地域へのビーム放射は行われない。そして、第2反射鏡51の反射面が、(a)>反射面>180度、及び270度>反射面>360度の範囲で前方の目的対象地域へのビームの放射が有効となる。これを例えば1,800rpmのモータ駆動で各反射鏡を回転させながら発振器10からレーザビームを出射することにより目的とする前方の対象地域へのレーザ放射が実現される。
【0043】
実施形態のビーム放射経路確保装置80は、縦板形の平面薄板状ビームがスリット孔12を通過後に、外部回転反射鏡装置50の第2回転軸52の軸心52aがビーム進行経路上に位置して進行の妨げとならないように、第2回転軸52の軸心52aを左右方向にずらしてビーム放射経路を確保する。例えば、ソレノイド71に設定したタイマ時間に対応してばね68の引張、解放を繰り返すことでコ字状移動枠61全体が図7に示すk方向で進退移動しこれによって、第2回転軸の回転軸心52aを左右にずらせることで縦板形の平面薄板状ビームをセクタ状略全域にわたって走査しつつ放射させることが可能となる。
【0044】
本発明の鳥獣忌避装置1は、上記した実施形態の具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、内部回転反射鏡装置のミラーの配置、数、角度等は実施例構成に限るものではなく縦板状のレーザビームを形成できるものであればよい。また、外部回転反射鏡装置の横方向案内機構の具体的構成もその細部について本実施形態の構成に限られるものではない。
【0045】
上記の実施形態による例で実現される鳥獣忌避装置は、レーザ光の発振器と、発振器から出射されるレーザ光を一方向に長いスリット孔を介して板状レーザビームとして通過させる板状レーザビーム形成手段と、スリット孔通過後のスリット孔背面側の外部近傍位置であって、スリット孔の長手方向に沿って設置される回転軸と一体回転しつつスリット孔を通過した板状レーザビームを反射させる外部回転反射鏡装置と、を含むことにより、縦長板状のレーザビームを出射方向に向けて横方向にセクタ状に走査移動させることになり、ターゲットの圃場や栽培地等全体にレーザビームを放射あるいは照射することが可能となる。また、簡単な構成で低コストにより鳥獣の忌避装置を実現し得る。さらに、ビームの放射対象現場に設置して30秒程度の短時間の運転を30分間隔程度で行うだけでターゲットの鳥獣類を追い払うことができ、装置の維持管理作業やコストも簡単で低廉に維持し得る。
【0046】
また、板状レーザビーム形成手段は、閉鎖室を有する筐体と、筐体の閉鎖室内に設けられレーザ光発振器から出射されるレーザ光を回転軸と一体回転しつつ反射させる内部回転反射鏡装置と、筐体の壁面に設けられ内部回転反射鏡装置により反射されたレーザ光を通過させる一方向に長いスリット孔と、を含むことにより、筐体内にレーザビームの反射鏡と筐体にスリット孔を設ける簡単な構成により鳥獣の忌避装置を実現し得る。
【0047】
また、内部回転反射鏡装置は、筐体内に設けられレーザ光の発振器から出射されるレーザ光の放射方向と交差方向を回転軸心とする第1回転軸に支持されて第1回転軸と一体回転しつつレーザ光を反射して周回平面薄板状ビームを形成する第1反射鏡を含み、スリット孔は、レーザ光発振器からのレーザビームの延長方向で当たる筐体の壁面であって、周回平面薄板状ビームの周回位置に対応する位置の筐体壁面に設けられている構成とすることにより、筐体内での板状レーザビーム形成と、筐体へのスリットの形成を極めて簡単でコンパクトな構成により具体的に実現することができる。
【0048】
また、第1反射鏡を支持する回転軸はレーザ光の発振器から出射されるレーザビームの出射方向に沿う筐体のいずれかの壁面に寄った位置に取り付けられた構成とすることにより、レーザ発振器からのレーザ光の直進性を考慮して第1反射鏡自体がビームの進行経路中に存在しないようにして効率的に平面薄板状ビームを形成することができる。
【0049】
また、内部回転反射鏡装置の第1反射鏡は横軸に一体回転するように取り付けられた反射鏡であり、外部回転反射鏡装置の第2反射鏡は、縦軸に一体回転するように取り付けられた反射鏡である構成とすることにより、内部回転反射鏡装置により縦板面の平面薄板状ビームを形成し、外部回転反射鏡装置により出射方向に向けて横方向にセクタ状に走査移動させることを実現し得る。
【0050】
また、第1及び第2反射鏡は平面鏡であることにより、簡単かつ低廉な部品により内部回転反射鏡装置及び外部回転反射鏡装置を実現し得る。
【0051】
また、外部回転反射鏡装置は、レーザビームの進行経路からずらすべく、スリット孔の中心線から第2反射鏡の回転軸心を横方向にずらすように外部回転反射鏡を移動させるビーム放射経路確保装置が設けられている構成とすることにより、スリット孔を通過した板状レーザビームが外部回転反射鏡装置の第2反射鏡の第2回転軸に集中的に当って進路を妨げられ難い様にすることができる。
【0052】
以上のように、本発明の鳥獣忌避装置によれば、縦板状のレーザビームを広域な目的忌避対象地域においてセクタ状に放射するから対象の鳥獣を対象地域から確実に忌避あるいは退避させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の鳥獣忌避装置は、上記の実施形態の例の身に限ることなく、例えばカラス等の鳥類、その他シカ、イノシシ、カラス、サルなどの獣類の夜間食餌被害についても有効に忌避機能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 鳥獣忌避装置
2 レーザ光
3 筐体
10 レーザ光発振器
11 板状レーザビーム
12 スリット孔
30 板状レーザビーム形成手段
40 内部回転反射鏡装置
41 第1反射鏡
42 第1回転軸
44 固定鏡
50 外部回転反射鏡装置
51 第2反射鏡
52 第2回転軸
k 横方向(左右方向)
60 横方向案内機構
61 コ字状移動枠
62 ガイドピン
65 駆動モータ
66 通孔
67,68 ばね
70 駆動機構
71 ソレノイド
80 ビーム放射経路確保装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8