(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037886
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】スロットル制御装置、および、これを有するマルチコプタ
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20230309BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230309BHJP
【FI】
F02D9/02 351M
B64C27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144707
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】梶間 弘和
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA05
3G065DA06
3G065EA03
3G065EA07
3G065GA01
3G065GA42
3G065GA43
(57)【要約】
【課題】速やかにスロットル弁のステップモータの脱調を検出できるスロットル制御装置、および、これを有するマルチコプタを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、単気筒で構成されるエンジン41への吸気量を調節するステップモータ式のスロットル弁55と、スロットル弁55を制御する制御部32と、を有するスロットル制御装置5において、制御部32は、アイドル停止→開弁開始時にて、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1を、予め記憶している予想値Aと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定する脱調判定制御を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単気筒で構成されるエンジンへの吸気の流量である吸気量を調節するステップモータ式のスロットル弁と、
前記スロットル弁を制御する制御部と、
を有するスロットル制御装置において、
前記吸気の圧力である吸気圧を検出する吸気圧検出部を有し、
前記制御部は、
前記スロットル弁の開度変化量に対応した各エンジンサイクルの特定のタイミングにおける前記吸気圧の変化量の予想値を記憶しており、
今回のエンジンサイクルの特定のタイミングにて前記吸気圧検出部により検出した前記吸気圧の検出値から、前回のエンジンサイクルの特定のタイミングにて前記吸気圧検出部により検出した前記吸気圧の検出値を減算して求めた吸気圧検出変化量を、前記予想値と比較して、前記ステップモータの脱調の有無を判定する脱調判定制御を行うこと、
を特徴とするスロットル制御装置。
【請求項2】
請求項1のスロットル制御装置において、
前記特定のタイミングとは、前記エンジンサイクルの中で前記吸気圧が最大または最小となるタイミングであること、
を特徴とするスロットル制御装置。
【請求項3】
請求項1または2のスロットル制御装置において、
前記制御部は、
前記脱調判定制御を、前記ステップモータが停止した状態から開弁駆動を開始する時に行う場合に、
前記吸気圧検出変化量が前記予想値未満である場合には、前記ステップモータの脱調が発生していると判定すること、
を特徴とするスロットル制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つのスロットル制御装置において、
前記制御部は、
前記脱調判定制御を、前記ステップモータが開弁駆動を行っている状態から停止する時に行う場合に、
前記吸気圧検出変化量が前記予想値よりも大きい場合には、前記ステップモータの脱調が発生していると判定すること、
を特徴とするスロットル制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つのスロットル制御装置において、
前記制御部は、
前記脱調判定制御を、前記ステップモータが停止した状態から閉弁駆動を開始する時に行う場合に、
前記吸気圧検出変化量が前記予想値よりも大きい場合には、前記ステップモータの脱調が発生していると判定すること、
を特徴とするスロットル制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つのスロットル制御装置において、
前記制御部は、
前記脱調判定制御を、前記ステップモータが閉弁駆動を行っている状態から停止する時に行う場合に、
前記吸気圧検出変化量が前記予想値未満である場合には、前記ステップモータの脱調が発生していると判定すること、
を特徴とするスロットル制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つのスロットル制御装置において、
前記制御部は、前記ステップモータが閉弁駆動を行っている途中で過剰/過少に脱調したと判定した場合に、前記ステップモータの停止位置を嵩上げ/嵩下げすること、
を特徴とするスロットル制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つのスロットル制御装置において、
前記制御部は、前記ステップモータが開弁駆動を行っている途中で過剰/過少に脱調したと判定した場合に、前記ステップモータの停止位置を嵩下げ/嵩上げすること、
を特徴とするスロットル制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つのスロットル制御装置を有すること、を特徴とするマルチコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スロットル制御装置、および、これを有するマルチコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電する内燃機関の吸気弁システムであって、ステップモータによって移動される弁体を備える弁装置の開度を制御する制御部を備える吸気弁システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にはステップモータ式のスロットル弁が使用されている発電用エンジンが開示されているが、ステップモータが脱調するおそれがあり、エンストにつながる可能性がある。そのため、速やかにスロットル弁のステップモータの脱調を検出することが望まれる。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、速やかにスロットル弁のステップモータの脱調を検出できるスロットル制御装置、および、これを有するマルチコプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、単気筒で構成されるエンジンへの吸気の流量である吸気量を調節するステップモータ式のスロットル弁と、前記スロットル弁を制御する制御部と、を有するスロットル制御装置において、前記吸気の圧力である吸気圧を検出する吸気圧検出部を有し、前記制御部は、前記スロットル弁の開度変化量に対応した各エンジンサイクルの特定のタイミングにおける前記吸気圧の変化量の予想値を記憶しており、今回のエンジンサイクルの特定のタイミングにて前記吸気圧検出部により検出した前記吸気圧の検出値から、前回のエンジンサイクルの特定のタイミングにて前記吸気圧検出部により検出した前記吸気圧の検出値を減算して求めた吸気圧検出変化量を、前記予想値と比較して、前記ステップモータの脱調の有無を判定する脱調判定制御を行うこと、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、今回のエンジンサイクルの特定のタイミングにおける吸気圧と、前回のエンジンサイクルの特定のタイミングにおける吸気圧との差分である吸気圧の変化量について、その検出値を、予め記憶した予想値と比較して、ステップモータの脱調の有無を判定するので、速やかにスロットル弁のステップモータの脱調を検出できる。そのため、ステップモータの脱調を速やかに検出して、ステップモータの脱調による空燃比ずれを補正できるので、エンストを防止できる。
【0008】
上記の態様においては、前記特定のタイミングとは、前記エンジンサイクルの中で前記吸気圧が最大または最小となるタイミングであること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、エンジンサイクル中において基準とし易いタイミングにおける吸気圧をもとにステップモータの脱調の有無を判定するので、精度よく、スロットル弁のステップモータの脱調を検出できる。
【0010】
上記の態様においては、前記制御部は、前記脱調判定制御を、前記ステップモータが停止した状態から開弁駆動を開始する時に行う場合に、前記吸気圧検出変化量が前記予想値未満である場合には、前記ステップモータの脱調が発生していると判定すること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、スロットル弁が停止している状態から開弁駆動を開始する時に、ステップモータの脱調を検出できる。
【0012】
上記の態様においては、前記制御部は、前記脱調判定制御を、前記ステップモータが開弁駆動を行っている状態から停止する時に行う場合に、前記吸気圧検出変化量が前記予想値よりも大きい場合には、前記ステップモータの脱調が発生していると判定すること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、スロットル弁が開弁駆動している状態から停止する時に、ステップモータの脱調を検出できる。
【0014】
上記の態様においては、前記制御部は、前記脱調判定制御を、前記ステップモータが停止した状態から閉弁駆動を開始する時に行う場合に、前記吸気圧検出変化量が前記予想値よりも大きい場合には、前記ステップモータの脱調が発生していると判定すること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、スロットル弁が停止している状態から閉弁駆動を開始する時に、ステップモータの脱調を検出できる。
【0016】
上記の態様においては、前記制御部は、前記脱調判定制御を、前記ステップモータが閉弁駆動を行っている状態から停止する時に行う場合に、前記吸気圧検出変化量が前記予想値未満である場合には、前記ステップモータの脱調が発生していると判定すること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、スロットル弁が閉弁駆動している状態から停止する時に、ステップモータの脱調を検出できる。
【0018】
上記の態様においては、前記制御部は、前記ステップモータが閉弁駆動を行っている途中で過剰/過少に脱調したと判定した場合に、前記ステップモータの停止位置を嵩上げ/嵩下げすること、が好ましい。
【0019】
この態様によれば、スロットル弁(ステップモータ)が閉弁駆動を行って停止した後の吸気量が安定するので、エンジンの駆動の安定性が向上する。
【0020】
上記の態様においては、前記制御部は、前記ステップモータが開弁駆動を行っている途中で過剰/過少に脱調したと判定した場合に、前記ステップモータの停止位置を嵩下げ/嵩上げすること、が好ましい。
【0021】
この態様によれば、ステップモータが開弁駆動を行って停止した後の吸気量が安定するので、エンジンの駆動の安定性が向上する。
【0022】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、マルチコプタにおいて、上記のいずれか1つのスロットル制御装置を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本開示のスロットル制御装置、および、これを有するマルチコプタによれば、速やかにスロットル弁のステップモータの脱調を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態のマルチコプタの外観斜視図である。
【
図2】本実施形態のマルチコプタの構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の発電用エンジンシステムとその関連機器の一部を示す概略構成図である。
【
図4】第1実施例において、アイドル停止→開弁開始時における各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す図である。
【
図5】第1実施例において、アイドル停止→開弁開始時に行う脱調判定制御の内容を示すフローチャート図である。
【
図6】第1実施例において、開弁駆動→開弁停止時における各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す図である。
【
図7】第1実施例において、開弁駆動→開弁停止時に行う脱調判定制御の内容を示すフローチャート図である。
【
図8】第1実施例において、開弁停止→閉弁開始時における各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す図である。
【
図9】第1実施例において、開弁停止→閉弁開始時に行う脱調判定制御の内容を示すフローチャート図である。
【
図10】第1実施例において、閉弁駆動→アイドル停止時における各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す図である。
【
図11】第1実施例において、閉弁駆動→アイドル停止時に行う脱調判定制御の内容を示すフローチャート図である。
【
図12】第2実施例において、ステップモータの閉弁駆動時に行う制御の内容(ステップモータが過剰に脱調することを想定した内容)を示すフローチャート図である。
【
図13】
図12に示す内容の制御を行った場合における各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す図である。
【
図14】第2実施例において、ステップモータの閉弁駆動時に行う制御の内容(ステップモータが過少に脱調することを想定した内容)を示すフローチャート図である。
【
図15】第2実施例において、ステップモータの開弁駆動時に行う制御の内容を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示のスロットル制御装置、および、これを有するマルチコプタの実施形態について説明する。
【0026】
<マルチコプタについて>
まず、本実施形態のマルチコプタ1の概要について説明する。
【0027】
(マルチコプタの構成)
図1に示すように、本実施形態のマルチコプタ1は、機体11とエンジン発電ユニット12を有する。
【0028】
機体11には、プロペラ21とモータ22と機体本体部23が設けられている。
【0029】
プロペラ21は、複数設けられている。そして、この複数のプロペラ21を回転させることにより、マルチコプタ1は飛行する。
【0030】
モータ22は、各々のプロペラ21に設けられ、プロペラ21を回転させるために駆動する。モータ22は、
図2に示すように、後述するESC34(インバータ)とパワーコントロールユニット33とを介して、後述するバッテリ31やジェネレータ42に電気的に接続されている。これにより、ジェネレータ42にて発電された電力やバッテリ31から放電される電力が、パワーコントロールユニット33とESC34とを介して、モータ22に供給される。
【0031】
機体本体部23には、
図2に示すように、バッテリ31と、制御部32と、パワーコントロールユニット33と、ESC(Electric Speed Controller)34などが設けられている。
【0032】
バッテリ31は、電力を充放電可能な充放電部(二次電池、蓄電池)である。
図2に示すように、バッテリ31は、パワーコントロールユニット33を介して、ジェネレータ42と電気的に接続されており、ジェネレータ42で発電された電力(すなわち、モータ22を駆動させる電力)を充電する。また、バッテリ31は、パワーコントロールユニット33とESC34とを介して、モータ22と電気的に接続されており、モータ22に供給する電力(すなわち、モータ22を駆動させる電力)を放電する。
【0033】
制御部32は、小型のコンピュータとして構成されており、マルチコプタ1の全体を制御する。例えば、制御部32は、発電用エンジンシステム40を制御して、ジェネレータ42での発電を制御する。また、本実施形態では、制御部32は、マルチコプタ1が有するスロットル制御装置5の一部を構成しており、後述するスロットル弁55(詳しくは、ステップモータ56)を制御する。
【0034】
パワーコントロールユニット33は、モータ22へ供給される電力を制御する装置である。このパワーコントロールユニット33は、ジェネレータ42で発電された電力を受給したり、バッテリ31との間で電力の供給および受給を行ったり、ESC34へ電力を供給したりする。
【0035】
ESC34は、モータ22の回転数を制御する装置である。このESC34は、パワーコントロールユニット33から供給される電力を、駆動電力として、モータ22に供給する。
【0036】
エンジン発電ユニット12は、
図1と
図2に示すように、エンジン41を備える発電用エンジンシステム40と、ジェネレータ(すなわち、発電機)42と、を備えている。エンジン41は、ジェネレータ42の動力源である。すなわち、エンジン41は、モータ22とバッテリ31に供給する電力をジェネレータ42で発電するために駆動する。
【0037】
また、本実施形態のマルチコプタ1においては、モータ22とバッテリ31とエンジン41によりシリーズハイブリッドシステムが構成されている。すなわち、マルチコプタ1においては、エンジン41が発電のみに使用され、モータ22がプロペラ21の駆動に使用され、さらに電力を回収するためのバッテリ31を有するシステムが構成されている。このようにして、マルチコプタ1は、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電し、発電した電力でモータ22を駆動してプロペラ21を駆動することにより、飛行する。また、マルチコプタ1は、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電した際の余剰電力を、バッテリ31に一旦蓄え、必要に応じてモータ22の駆動に用いる。
【0038】
(マルチコプタの作用)
このような構成のマルチコプタ1は、モータ22に電力を供給し、複数のプロペラ21を回転させることにより飛行する。そして、プロペラ21の回転数を制御し、プロペラ21の回転によって得られる揚力をマルチコプタ1自体の重力とバランスさせることで、マルチコプタ1のホバリング飛行や前進・後進・左右移動飛行を実現させることができる。また、プロペラ21により発生させる揚力を大きくしてマルチコプタ1の上昇飛行を実現
させることができ、プロペラ21により発生させる揚力を小さくしてマルチコプタ1の下降飛行を実現させることができる。
【0039】
<発電用エンジンシステムとその関連機器について>
次に、発電用エンジンシステム40について説明する。
【0040】
図3に示すように、発電用エンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)40は、単気筒で構成されるエンジン41を備える。エンジン41は、4サイクルのレシプロエンジンであり、シリンダブロック41a、燃焼室を含む1つの気筒51及びクランクシャフト52の他、周知の構成要素を含む。エンジン41には、気筒51に吸気を導入するためにエンジン41へ吸気が流れる吸気通路53と、気筒51から排気を導出するための排気通路54とが設けられる。吸気通路53の途中には、サージタンク53aが設けられ、そのサージタンク53aの上流側にはスロットル弁55が設けられる。サージタンク53aは吸気通路53の一部を構成する。スロットル弁55は、所定の閉弁側の開度(すなわち、アイドル開度)と所定の開弁側の開度(すなわち、開弁停止開度)との間で開閉することにより、吸気通路53を流れる吸気量を調節するために開閉動作する。スロットル弁55は、ポペット式弁より構成され、弁座に対し往復駆動する弁体(図示略)と、その弁体を開度可変に駆動するためのステップモータ56とを含む。すなわち、スロットル弁55は、スロットル式のスロットル弁である。この実施形態の発電用エンジンシステム40には、軽量化と部品削減のために弁体の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサが設けられていない。スロットル弁55は、弁体で流路を開閉することにより、吸気通路53を流れる吸気量を調節するようになっている。
【0041】
吸気通路53には、この吸気通路53に燃料を噴射するための1つのインジェクタ57が設けられる。インジェクタ57は、燃料タンク(不図示)から供給される燃料(ガソリン)を噴射するように構成される。本実施形態のエンジン41は、一連の吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程を含むエンジンサイクルをもって動作する。吸気通路53では、エンジンサイクルの吸気行程で導入された吸気と、インジェクタ57から吸気通路53に噴射された燃料とにより可燃性の混合気が形成される。
【0042】
エンジン41には、気筒51に対応して1つの点火プラグ58とイグニションコイル59が設けられる。点火プラグ58は、イグニションコイル59から出力される点火信号を受けてスパーク動作する。気筒51において、混合気は、エンジンサイクルの圧縮行程で点火プラグ58のスパーク動作により爆発・燃焼し、その爆発行程が経過する。燃焼後の排気は、排気行程で気筒51から排気通路54へ排出される。これら一連のエンジンサイクルを720℃Aのクランク角をもって周期的に繰り返すことで、エンジン41のクランクシャフト52が回転し、エンジン41に出力が得られる。
【0043】
エンジン41に設けられた回転数センサ61は、クランクシャフト52の回転数をエンジン回転数neとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。スロットル弁55より下流のサージタンク53aに設けられた吸気圧センサ62は、サージタンク53a(吸気通路53)における吸気圧pm(すなわち、エンジン41への吸気(吸気通路53を通ってエンジン41へ吸入される空気)の圧力)を検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。なお、吸気圧センサ62は、本実施形態のスロットル制御装置5の一部でもあり、本開示の「吸気圧検出部」の一例である。
【0044】
制御部32には、回転数センサ61と吸気圧センサ62がそれぞれ電気的に接続される。また、制御部32には、スロットル弁55のステップモータ56、インジェクタ57及びイグニションコイル59がそれぞれ電気的に接続される。制御部32は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を含む。
【0045】
制御部32は、エンジン41を運転するために、回転数センサ61や吸気圧センサ62からの電気信号に基づいてスロットル弁55(詳しくは、ステップモータ56)、インジェクタ57及びイグニションコイル59をそれぞれ制御する。
【0046】
本実施形態では、制御部32は、スロットル制御装置5の一部でもあり、詳しくは後述するように、スロットル弁55のステップモータ56の脱調の有無を判定する脱調判定制御や、この脱調判定制御の判定結果をもとに嵩上げ制御または嵩下げ制御を行う。
【0047】
<スロットル制御装置で行われる制御について>
次に、本実施形態のスロットル制御装置5で行われる制御について説明する。スロットル制御装置5は、ステップモータ56を備えるスロットル弁55(ステップモータ式のスロットル弁55)と、制御部32と、吸気圧センサ62などを有する。
【0048】
[第1実施例]
本実施例では、スロットル制御装置5は、スロットル弁55の動作の過渡期(例えば、開弁開始時や開弁停止時や閉弁開始時や閉弁停止時など)において、吸気圧pmの変化量をもとに、スロットル弁55に備わるステップモータ56の脱調の有無を判定する脱調判定制御を行う。
【0049】
(アイドル停止→開弁開始時に行う脱調判定制御)
まず、アイドル停止→開弁開始時に行う脱調判定制御について説明する。ここで、「アイドル停止→開弁開始時」とは、スロットル弁55がアイドル開度(すなわち、所定の閉弁側の開度)で停止している状態から開弁駆動を開始する時であり、ステップモータ56が停止した状態から開弁駆動(すなわち、スロットル弁55を開弁させる駆動)を開始する時である。
【0050】
図4に、アイドル停止→開弁開始時におけるクランク角や吸気圧pmやスロットル弁55の状態やステップモータ56のステップ数などの各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す。
【0051】
図4に示すように、スロットル弁55がアイドル停止の状態(アイドル開度で停止した状態)であり、ステップモータ56が目標アイドルステップ数で停止しているときに、時間T2にて開弁開始要求(すなわち、スロットル弁55の開弁駆動を開始する要求)に基づいて開弁開始制御がなされたとする。
【0052】
このとき、ステップモータ56が脱調していない場合には、
図4にて破線で示すようにステップモータ56のステップ数が上昇し始めて、スロットル弁55の開度が大きくなるので、時間T3にて破線で示すように、最小吸気圧minpmが上昇し始める。
【0053】
なお、「最小吸気圧minpm」とは、エンジンサイクルの特定のタイミングにおける吸気圧pmであり、本実施例では、エンジンサイクル中の吸気行程のタイミング(例えば、吸気行程と圧縮行程とが切り替わるタイミング)毎に吸気圧センサ62で検出される吸気圧pmであって、1つのエンジンサイクルの中で最小となる吸気圧pmである。
【0054】
一方、ステップモータ56が閉弁側に脱調している場合には、ステップモータ56のステップ数が上昇せず、スロットル弁55の開度が変化しないので、時間T3にて実線で示すように、最小吸気圧minpmが上昇しない。そして、その後、遅れて、時間T4にて実線で示すように、最小吸気圧minpmが上昇し始める。
【0055】
そこで、このアイドル停止→開弁開始時に行う脱調判定制御では、最小吸気圧minpmの上昇の開始の遅れの有無をもとに、ステップモータ56の脱調の有無が判定される。
【0056】
具体的には、制御部32は、アイドル停止→開弁開始時に、
図5に示す脱調判定制御を行う。
図5に示すように、制御部32は、エンジン回転数neと、スロットル制御ステップ数thrstepと、最小吸気圧minpmと、クランク角カウンタccaと、スロットル弁55の開閉・停止要求を取り込む(ステップS1)。
【0057】
ここで、「スロットル制御ステップ数thrstep」は、スロットル弁55に備わるステップモータ56のステップ数である。
【0058】
次に、制御部32は、アイドル停止→開弁開始時のモードであるか否かを判断する(ステップS2)。
【0059】
そして、制御部32は、アイドル停止→開弁開始時のモードであると判断した場合(ステップS2:YES)には、開弁開始脱調判定フラグ(X開弁開始脱調判定)が0であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0060】
そして、制御部32は、開弁開始脱調判定フラグが0であると判断した場合(ステップS3:YES)には、ステップモータ56の脱調の有無を未だ判定していないと判断して、開弁開始制御前の最小吸気圧MINpm1を記憶する(ステップS4)。このステップS4では、制御部32は、開弁開始制御を行う前(
図4に示す時間T1)に吸気圧センサ62で検出した最小吸気圧minpmを、開弁開始制御前の最小吸気圧MINpm1として記憶する。
【0061】
次に、制御部32は、開弁開始制御後から例えば2ステップ時間経過したか否かを判断する(ステップS5)。ここで、「2ステップ時間経過した」とは、ステップモータ56のステップ数が2つ変化するために要する時間が経過したという意味である。
【0062】
そして、制御部32は、開弁開始制御後から2ステップ時間経過したと判断した場合(ステップS5:YES)には、開弁開始制御後の最小吸気圧minpm1を取り込む(ステップS6)。ここで、「開弁開始制御後の最小吸気圧minpm1」とは、開弁開始制御を行った後(
図4に示す時間T3)に、吸気圧センサ62で検出した最小吸気圧minpmである。
【0063】
次に、制御部32は、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1を求める(ステップS7)。ここで、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1は、ステップS6で取り込んだ開弁開始制御後の最小吸気圧minpm1から、ステップS4で記憶した開弁開始制御前の最小吸気圧MINpm1を減算して求められる。このようにして、制御部32は、今回のエンジンサイクルの吸気行程にて吸気圧センサ62により検出した最小吸気圧minpmの検出値である開弁開始制御後の最小吸気圧minpm1から、前回のエンジンサイクルの吸気行程にて吸気圧センサ62により検出した最小吸気圧minpmの検出値である開弁開始制御前の最小吸気圧MINpm1を減算して、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1を求める。なお、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1は、本開示の「吸気圧検出変化量」の一例である。
【0064】
次に、制御部32は、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1が、予め記憶した予想値A以上であるか否か、を判断する(ステップS8)。ここで、予想値Aは、スロットル弁55の開度変化量(すなわち、ステップモータ56のステップ数の変化量)に対応した各エンジンサイクルの最小吸気圧minpmの変化量の予想値であり、ここでは、ステップモータ56が脱調していない場合に予想される開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1の値である。このようにして、制御部32は、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1を、予想値Aと比較して、脱調判定制御を行う。
【0065】
そして、制御部32は、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1が予想値A以上であると判断した場合(ステップS8:YES)には、アイドル停止→開弁開始時にて、ステップモータ56が脱調しておらず、正常であると判定する(ステップS9)。
【0066】
次に、制御部32は、開弁開始脱調OKフラグ(X開弁開始脱調OK)を1にして(ステップS10)、開弁開始脱調判定フラグを1にする(ステップS11)。
【0067】
一方、制御部32は、ステップS8において、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1が予想値A未満であると判断した場合(ステップS8:NO)には、アイドル停止→開弁開始時にて、ステップモータ56が脱調しており、異常であると判定する(ステップS12)。
【0068】
次に、制御部32は、開弁開始脱調NGフラグ(X開弁開始脱調NG)を1にして(ステップS13)、開弁開始脱調判定フラグを1にする(ステップS11)。
【0069】
また、制御部32は、ステップS3において開弁開始脱調判定フラグが1であると判断した場合(ステップS3:NO)や、ステップS5において開弁開始制御後から2ステップ時間経過していないと判断した場合(ステップS5:NO)には、そのまま制御処理を一旦終了する。
【0070】
また、制御部32は、ステップS2において、アイドル停止→開弁開始時のモードでないと判断した場合(ステップS2:NO)には、スロットル他開閉モード、すなわち、アイドル停止→開弁開始時のモード以外の他のモードへ移行する(ステップS14)。
【0071】
以上のように、制御部32は、アイドル停止→開弁開始時にて、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1を、予め記憶している予想値Aと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定する脱調判定制御を行う。
【0072】
このようにして、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1について、その検出値を、予め記憶した予想値Aと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定するので、速やかにステップモータ56の脱調を検出できる。そのため、速やかに出力補正(スロットル開度、空燃比、点火時期の補正)実行して、エンストを防止できる。
【0073】
そして、制御部32は、脱調判定制御をアイドル停止→開弁開始時に行う場合に、開弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm1が予想値A未満である場合には、ステップモータ56が脱調していると判定する。
【0074】
これにより、スロットル弁55がアイドル開度で停止している状態から開弁駆動を開始する時に、ステップモータ56の脱調を検出できる。
【0075】
(開弁駆動→開弁停止時に行う脱調判定制御)
次に、開弁駆動→開弁停止時に行う脱調判定制御について説明する。ここで、「開弁駆動→開弁停止時」とは、スロットル弁55が開弁駆動を行っている状態から開弁停止開度(すなわち、所定の開弁側の開度)で停止する時であり、ステップモータ56が開弁駆動を行っている状態から停止する時である。
【0076】
図6に、開弁駆動→開弁停止時におけるクランク角や吸気圧pmやスロットル開度やステップモータ56のステップ数などの各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す。
【0077】
図6に示すように、スロットル弁55が開弁駆動を行っており、ステップモータ56のステップ数が上昇しているときに、時間T11にて開弁停止要求(すなわち、スロットル弁55の開弁駆動を停止する要求)に基づいて開弁停止制御がなされたとする。
【0078】
このとき、ステップモータ56が脱調していない場合には、
図6にて破線で示すようにステップモータ56のステップ数が上昇しなくなり、スロットル弁55の開度が変化しなくなるので、時間T13にて破線で示すように、最小吸気圧minpmが上昇しなくなる。
【0079】
一方、ステップモータ56が開弁側に脱調している場合には、ステップモータ56のステップ数が上昇して、スロットル弁55の開度が大きくなるので、時間T13にて実線で示すように、最小吸気圧minpmが上昇する。そして、その後、遅れて、時間T14にて実線で示すように、最小吸気圧minpmが上昇しなくなる。
【0080】
そこで、この開弁駆動→開弁停止時に行う脱調判定制御では、最小吸気圧minpmの上昇の停止の遅れの有無をもとに、ステップモータ56の脱調の有無が判定される。
【0081】
具体的には、制御部32は、開弁駆動→開弁停止時に、
図7に示す脱調判定制御を行う。
図7に示すように、制御部32は、エンジン回転数neと、スロットル制御ステップ数thrstepと、最小吸気圧minpmと、クランク角カウンタccaと、スロットル弁55の開閉・停止要求を取り込む(ステップS101)。
【0082】
次に、制御部32は、開弁駆動→開弁停止時のモードであるか否かを判断する(ステップS102)。
【0083】
そして、制御部32は、開弁駆動→開弁停止時のモードであると判断した場合(ステップS102:YES)には、開弁停止脱調判定フラグ(X開弁停止脱調判定)が0であるか否かを判断する(ステップS103)。
【0084】
そして、制御部32は、開弁停止脱調判定フラグが0であると判断した場合(ステップS103:YES)には、ステップモータ56の脱調の有無を未だ判定していないと判断して、開弁停止制御後の最小吸気圧MINpm2を記憶する(ステップS104)。このステップS104では、制御部32は、開弁停止制御を行った後(
図6に示す時間T12)に吸気圧センサ62で検出した最小吸気圧minpmを、開弁停止制御後の最小吸気圧MINpm2として記憶する。
【0085】
次に、制御部32は、開弁停止制御後から例えば2ステップ時間経過したか否か、を判断する(ステップS105)。
【0086】
そして、制御部32は、開弁停止制御後から2ステップ時間経過したと判断した場合(ステップS105:YES)には、開弁停止制御後の最小吸気圧minpm2を取り込む(ステップS106)。ここで、「開弁停止制御後の最小吸気圧minpm2」とは、開弁停止制御を行った後であってステップS104の処理を行った後(
図6に示す時間T13)に、吸気圧センサ62で検出した最小吸気圧minpmである。
【0087】
次に、制御部32は、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2を求める(ステップS107)。ここで、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2は、ステップS106で取り込んだ開弁停止制御後の最小吸気圧minpm2から、ステップS104で記憶した開弁停止制御後の最小吸気圧MINpm2を減算して求められる。このようにして、制御部32は、今回のエンジンサイクルの吸気行程にて吸気圧センサ62により検出した最小吸気圧minpmの検出値である開弁停止制御後の最小吸気圧minpm2から、前回のエンジンサイクルの吸気行程にて吸気圧センサ62により検出した最小吸気圧minpmの検出値である開弁停止制御後の最小吸気圧MINpm2を減算して、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2を求める。なお、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2は、本開示の「吸気圧検出変化量」の一例である。
【0088】
次に、制御部32は、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2が、予想値B以下であるか否か、を判断する(ステップS108)。ここで、予想値Bは、スロットル弁55の開度変化量(すなわち、ステップモータ56のステップ数の変化量)に対応した各エンジンサイクルの最小吸気圧minpmの変化量の予想値であり、ここでは、ステップモータ56が脱調していない場合に予想される開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2の値である。このようにして、制御部32は、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2を、予想値Bと比較して、脱調判定制御を行う。
【0089】
そして、制御部32は、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2が予想値B以下であると判断した場合(ステップS108:YES)には、開弁駆動→開弁停止時にて、ステップモータ56が脱調しておらず、正常であると判定する(ステップS109)。
【0090】
次に、制御部32は、開弁停止脱調OKフラグ(X開弁停止脱調OK)を1にして(ステップS110)、開弁停止脱調判定フラグを1にする(ステップS111)。
【0091】
一方、制御部32は、ステップS108において、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2が予想値Bよりも大きいと判断した場合(ステップS108:NO)には、開弁駆動→開弁停止時にて、ステップモータ56が脱調しており、異常であると判定する(ステップS112)。
【0092】
次に、制御部32は、開弁停止脱調NGフラグ(X開弁停止脱調NG)を1にして(ステップS113)、開弁停止脱調判定フラグを1にする(ステップS111)。
【0093】
また、制御部32は、ステップS103において開弁停止脱調判定フラグが1であると判断した場合(ステップS103:NO)や、ステップS105において開弁停止制御後から2ステップ時間経過していないと判断した場合(ステップS105:NO)には、そのまま制御処理を一旦終了する。
【0094】
また、制御部32は、ステップS102において、開弁駆動→開弁停止時のモードでないと判断した場合(ステップS102:NO)には、スロットル他開閉モード、すなわち、開弁駆動→開弁停止時のモード以外の他のモードへ移行する(ステップS114)。
【0095】
以上のように、制御部32は、開弁駆動→開弁停止時にて、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2を、予め記憶している予想値Bと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定する脱調判定制御を行う。
【0096】
このようにして、今回の最小吸気圧minpmと、前回の最小吸気圧minpmとの差分である吸気圧pmの変化量について、その検出値を、予め記憶した予想値Bと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定するので、速やかにステップモータ56の脱調を検出できる。そのため、速やかに出力補正(スロットル開度、空燃比、点火時期の補正)実行して、エンストを防止できる。
【0097】
そして、制御部32は、脱調判定制御を開弁駆動→開弁停止時に行う場合に、開弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm2が予想値Bよりも大きい場合には、ステップモータ56が脱調していると判定する。
【0098】
これにより、スロットル弁55が開弁駆動している状態から開弁停止開度で停止する時に、ステップモータ56の脱調を検出できる。
【0099】
(開弁停止→閉弁開始時に行う脱調判定制御)
次に、開弁停止→閉弁開始時に行う脱調判定制御について説明する。ここで、「開弁停止→閉弁開始時」とは、スロットル弁55が開弁停止開度で停止している状態から閉弁駆動を開始する時であり、ステップモータ56が停止した状態から閉弁駆動(すなわち、スロットル弁55を閉弁させる駆動)を開始する時である。
【0100】
図8に、開弁停止→閉弁開始時におけるクランク角や吸気圧pmやスロットル開度やステップモータ56のステップ数などの各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す。
【0101】
図8に示すように、スロットル弁55が開弁停止開度で停止しており、ステップモータ56が目標開弁停止ステップ数で停止しているときに、時間T22にて閉弁開始要求(すなわち、スロットル弁55の閉弁駆動を開始する要求)に基づいて閉弁開始制御がなされたとする。
【0102】
このとき、ステップモータ56が脱調していない場合には、
図8にて破線で示すようにステップモータ56のステップ数が降下し始めて、スロットル弁55の開度が小さくなるので、時間T23にて破線で示すように、最小吸気圧minpmが降下し始める。
【0103】
一方、ステップモータ56が開弁側に脱調している場合には、ステップモータ56のステップ数が降下せず、スロットル弁55の開度が変化しないので、時間T23にて実線で示すように、最小吸気圧minpmが降下しない。そして、その後、遅れて、時間T24にて実線で示すように、最小吸気圧minpmが降下し始める。
【0104】
そこで、この開弁停止→閉弁開始時に行う脱調判定制御では、最小吸気圧minpmの降下の開始の遅れの有無をもとに、ステップモータ56の脱調の有無が判定される。
【0105】
具体的には、制御部32は、開弁停止→閉弁開始時に、
図9に示す脱調判定制御を行う。
図9に示すように、制御部32は、エンジン回転数neと、スロットル制御ステップ数thrstepと、最小吸気圧minpmと、クランク角カウンタccaと、スロットル弁55の開閉・停止要求を取り込む(ステップS201)。
【0106】
次に、制御部32は、開弁停止→閉弁開始時のモードであるか否かを判断する(ステップS202)。
【0107】
そして、制御部32は、開弁停止→閉弁開始時のモードであると判断した場合(ステップS202:YES)には、閉弁開始脱調判定フラグ(X閉弁開始脱調判定)が0であるか否かを判断する(ステップS203)。
【0108】
そして、制御部32は、閉弁開始脱調判定フラグが0であると判断した場合(ステップS203:YES)には、ステップモータ56の脱調の有無を未だ判定していないと判断して、閉弁開始制御前の最小吸気圧MINpm3を記憶する(ステップS204)。このステップS204では、制御部32は、閉弁開始制御を行う前(
図8に示す時間T21)に吸気圧センサ62で検出した最小吸気圧minpmを、閉弁開始制御前の最小吸気圧MINpm3として記憶する。
【0109】
次に、制御部32は、閉弁開始制御後から例えば2ステップ時間経過したか否かを判断する(ステップS205)。
【0110】
そして、制御部32は、閉弁開始制御後から2ステップ時間経過したと判断した場合(ステップS205:YES)には、閉弁開始制御後の最小吸気圧minpm3を取り込む(ステップS206)。ここで、「閉弁開始制御後の最小吸気圧minpm3」とは、閉弁開始制御を行った後(
図8に示す時間T23)に、吸気圧センサ62で検出した最小吸気圧minpmである。
【0111】
次に、制御部32は、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3を求める(ステップS207)。ここで、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3は、ステップS206で取り込んだ閉弁開始制御後の最小吸気圧minpm3から、ステップS204で記憶した閉弁開始制御前の最小吸気圧MINpm3を減算して求められる。このようにして、制御部32は、今回のエンジンサイクルの吸気行程にて吸気圧センサ62により検出した最小吸気圧minpmの検出値である閉弁開始制御後の最小吸気圧minpm3から、前回のエンジンサイクルの吸気行程にて吸気圧センサ62により検出した最小吸気圧minpmの検出値である閉弁開始制御前の最小吸気圧MINpm3を減算して、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3を求める。なお、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3は、本開示の「吸気圧検出変化量」の一例である。
【0112】
次に、制御部32は、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3が、予想値-C以下であるか否か、を判断する(ステップS208)。ここで、予想値-Cは、スロットル弁55の開度変化量(すなわち、ステップモータ56のステップ数の変化量)に対応した各エンジンサイクルの最小吸気圧minpmの変化量の予想値であり、ここでは、ステップモータ56が脱調していない場合に予想される閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3の値である。このようにして、制御部32は、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3を、予想値-Cと比較して、脱調判定制御を行う。
【0113】
そして、制御部32は、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3が予想値-C以下であると判断した場合(ステップS208:YES)には、開弁停止→閉弁開始時にて、ステップモータ56が脱調しておらず、正常であると判定する(ステップS209)。
【0114】
次に、制御部32は、閉弁開始脱調OKフラグ(X閉弁開始脱調OK)を1にして(ステップS210)、閉弁開始脱調判定フラグを1にする(ステップS211)。
【0115】
一方、制御部32は、ステップS208において、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3が予想値-Cよりも大きいと判断した場合(ステップS208:NO)には、開弁停止→閉弁開始時にて、ステップモータ56が脱調しており、異常であると判定する(ステップS212)。
【0116】
次に、制御部32は、閉弁開始脱調NGフラグ(X閉弁開始脱調NG)を1にして(ステップS213)、閉弁開始脱調判定フラグを1にする(ステップS211)。
【0117】
また、制御部32は、ステップS203において閉弁開始脱調判定フラグが1であると判断した場合(ステップS203:NO)や、ステップS205において閉弁開始制御後から2ステップ時間経過していないと判断した場合(ステップS205:NO)には、そのまま制御処理を一旦終了する。
【0118】
また、制御部32は、ステップS202において、開弁停止→閉弁開始時のモードでないと判断した場合(ステップS202:NO)には、スロットル他開閉モード、すなわち、開弁停止→閉弁開始時のモード以外の他のモードへ移行する(ステップS214)。
【0119】
以上のように、制御部32は、開弁停止→閉弁開始時にて、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3を、予め記憶している予想値-Cと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定する脱調判定制御を行う。
【0120】
このようにして、今回の最小吸気圧minpmと、前回の最小吸気圧minpmとの差分である吸気圧pmの変化量について、その検出値を、予め記憶した予想値-Cと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定するので、速やかにステップモータ56の脱調を検出できる。そのため、速やかに出力補正(スロットル開度、空燃比、点火時期の補正)実行して、エンストを防止できる。
【0121】
そして、制御部32は、脱調判定制御を開弁停止→閉弁開始時に行う場合に、閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量Δpm3が予想値-Cよりも大きい場合には、ステップモータ56が脱調していると判定する。
【0122】
これにより、スロットル弁55が開弁停止開度で停止している状態から閉弁駆動を開始する時に、ステップモータ56の脱調を検出できる。
【0123】
(閉弁駆動→アイドル停止時に行う脱調判定制御)
次に、閉弁駆動→アイドル停止時に行う脱調判定制御について説明する。ここで、「閉弁駆動→アイドル停止時」とは、スロットル弁55が閉弁駆動を行っている状態からアイドル開度で停止する時であり、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている状態から停止する時である。
【0124】
図10に、閉弁駆動→アイドル停止時におけるクランク角や吸気圧pmやスロットル開度やステップモータ56のステップ数などの各要素の挙動を示したタイムチャートの一例を示す。
【0125】
図10に示すように、スロットル弁55が閉弁駆動を行っており、ステップモータ56のステップ数が降下しているときに、時間T31にて閉弁停止要求(すなわち、スロットル弁55の閉弁駆動を停止する要求)に基づいて閉弁停止制御がなされたとする。
【0126】
このとき、ステップモータ56が脱調していない場合には、
図10にて破線で示すようにステップモータ56のステップ数が降下しなくなり、スロットル弁55の開度が変化しなくなるので、時間T33にて破線で示すように、最小吸気圧minpmの降下しなくなる。
【0127】
一方、ステップモータ56が閉弁側に脱調している場合には、ステップモータ56のステップ数が降下して、スロットル弁55の開度が小さくなるので、時間T33にて実線で示すように、最小吸気圧minpmが降下する。そして、その後、遅れて、時間T34にて実線で示すように、最小吸気圧minpmが降下しなくなる。
【0128】
そこで、この閉弁駆動→アイドル停止時に行う脱調判定制御では、最小吸気圧minpmの降下の停止の遅れの有無をもとに、ステップモータ56の脱調の有無が判定される。
【0129】
具体的には、制御部32は、閉弁駆動→アイドル停止時に、
図11に示す脱調判定制御を行う。
図11に示すように、制御部32は、エンジン回転数neと、スロットル制御ステップ数thrstepと、最小吸気圧minpmと、クランク角カウンタccaと、スロットル弁55の開閉・停止要求を取り込む(ステップS301)。
【0130】
次に、制御部32は、閉弁駆動→アイドル停止時のモードであるか否かを判断する(ステップS302)。
【0131】
そして、制御部32は、閉弁駆動→アイドル停止時のモードであると判断した場合(ステップS302:YES)には、閉弁停止脱調判定フラグ(X閉弁停止脱調判定)が0であるか否かを判断する(ステップS303)。
【0132】
そして、制御部32は、閉弁停止脱調判定フラグが0であると判断した場合(ステップS303:YES)には、ステップモータ56の脱調の有無を未だ判定していないと判断して、閉弁停止制御後の最小吸気圧MINpm4を記憶する(ステップS304)。このステップS304では、制御部32は、閉弁停止制御を行った後(
図10に示す時間T32)に吸気圧センサ62で検出した最小吸気圧minpmを、閉弁停止制御後の最小吸気圧MINpm4として記憶する。
【0133】
次に、制御部32は、閉弁停止制御後から例えば2ステップ時間経過したか否か、を判断する(ステップS305)。
【0134】
そして、制御部32は、閉弁停止制御後から2ステップ時間経過したと判断した場合(ステップS305:YES)には、閉弁停止制御後の最小吸気圧minpm4を取り込む(ステップS306)。ここで、「閉弁停止制御後の最小吸気圧minpm4」とは、閉弁停止制御を行った後であってステップS304の処理を行った後(
図11に示す時間T33)に、吸気圧センサ62で検出した最小吸気圧minpmである。
【0135】
次に、制御部32は、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4を求める(ステップS307)。ここで、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4は、ステップS306で取り込んだ閉弁停止制御後の最小吸気圧minpm4から、ステップS304で記憶した閉弁停止制御後の最小吸気圧MINpm4を減算して求められる。このようにして、制御部32は、今回のエンジンサイクルの吸気行程にて吸気圧センサ62により検出した最小吸気圧minpmの検出値である閉弁停止制御後の最小吸気圧minpm4から、前回のエンジンサイクルの吸気行程にて吸気圧センサ62により検出した最小吸気圧minpmの検出値である閉弁停止制御後の最小吸気圧MINpm4を減算して、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4を求める。なお、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4は、本開示の「吸気圧検出変化量」の一例である。
【0136】
次に、制御部32は、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4が、予想値-D以上であるか否か、を判断する(ステップS308)。ここで、予想値-Dは、スロットル弁55の開度変化量(すなわち、ステップモータ56のステップ数の変化量)に対応した各エンジンサイクルの最小吸気圧minpmの変化量の予想値であり、ここでは、ステップモータ56が脱調していない場合に予想される閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4の値である。このようにして、制御部32は、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4を、予想値-Dと比較して、脱調判定制御を行う。
【0137】
そして、制御部32は、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4が予想値-D以上であると判断した場合(ステップS308:YES)には、閉弁駆動→アイドル停止時にて、ステップモータ56が脱調しておらず、正常であると判定する(ステップS309)。
【0138】
次に、制御部32は、閉弁停止脱調OKフラグ(X閉弁停止脱調OK)を1にして(ステップS310)、閉弁停止脱調判定フラグを1にする(ステップS311)。
【0139】
一方、制御部32は、ステップS308において、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4が予想値-D未満であると判断した場合(ステップS308:NO)には、閉弁駆動→アイドル停止時にて、ステップモータ56が脱調しており、異常であると判定する(ステップS312)。
【0140】
次に、制御部32は、閉弁停止脱調NGフラグ(X閉弁停止脱調NG)を1にして(ステップS313)、閉弁停止脱調判定フラグを1にする(ステップS311)。
【0141】
また、制御部32は、ステップS303において閉弁停止脱調判定フラグが1であると判断した場合(ステップS303:NO)や、ステップS305において閉弁停止制御後から2ステップ時間経過していないと判断した場合(ステップS305:NO)には、そのまま制御処理を一旦終了する。
【0142】
また、制御部32は、ステップS302において、閉弁駆動→アイドル停止時のモードでないと判断した場合(ステップS302:NO)には、スロットル他開閉モード、すなわち、閉弁駆動→アイドル停止時のモード以外の他のモードへ移行する(ステップS314)。
【0143】
以上のように、制御部32は、閉弁駆動→アイドル停止時にて、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4を、予め記憶している予想値-Dと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定する脱調判定制御を行う。
【0144】
このようにして、今回の最小吸気圧minpmと、前回の最小吸気圧minpmとの差分である吸気圧pmの変化量について、その検出値を、予め記憶した予想値-Dと比較して、ステップモータ56の脱調の有無を判定するので、速やかにステップモータ56の脱調を検出できる。そのため、速やかに出力補正(スロットル開度、空燃比、点火時期の補正)実行して、エンストを防止できる。
【0145】
そして、制御部32は、脱調判定制御を閉弁駆動→アイドル停止時に行う場合に、閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量Δpm4が予想値-D未満である場合には、ステップモータ56が脱調していると判定する。
【0146】
これにより、スロットル弁55が閉弁駆動している状態からアイドル開度で停止する時に、ステップモータ56の脱調を検出できる。
【0147】
[第2実施例]
本実施例では、ステップモータ56の閉弁駆動または開弁駆動の途中で、ステップモータ56の脱調の有無を判定し、その結果、ステップモータ56が脱調していると判定した場合には、ステップモータ56のアイドル停止位置(すなわち、アイドル停止時におけるステップ数)、または、開弁停止位置(すなわち、開弁停止時におけるステップ数)を嵩上げ、または、嵩下げして調整する。
【0148】
(閉弁駆動の途中で過剰に脱調した場合)
まず、ステップモータ56が、閉弁駆動を行っている途中で、過剰に脱調した場合(すなわち、過剰にステップ数が降下した場合)について説明する。
【0149】
具体的には、制御部32は、
図12に示すフローチャートに基づいて、ステップモータ56の脱調判定制御と、アイドル停止位置の嵩上げ制御を行う。
【0150】
図12に示すように、制御部32は、エンジン回転数neと、スロットル制御ステップ数thrstepと、最小吸気圧minpmと、クランク角カウンタccaと、スロットル弁55の開閉・停止要求を取り込む(ステップS401)。
【0151】
次に、制御部32は、閉弁駆動→アイドル停止時のモードであるか否かを判断する(ステップS402)。
【0152】
そして、制御部32は、閉弁駆動→アイドル停止時のモードであると判断した場合(ステップS402:YES)には、目標アイドル取込みフラグ(X目標アイドル取込み)が1であるか否かを判断する(ステップS403)。
【0153】
そして、制御部32は、目標アイドル取込みフラグが1であると判断した場合(ステップS403:YES)には、最新0&1サイクル前の最小吸気圧minpmを取込んで更新する(ステップS404)。このステップS404では、制御部32は、最新のエンジンサイクルにおける最小吸気圧minpm(i)を取込んで、これを最新の最小吸気圧0minpm(i)として更新する。また、制御部32は、1つ前のエンジンサイクルにおける最小吸気圧minpm(i-1)を取込んで、これを1サイクル前の最小吸気圧1minpm(i)として更新する。
【0154】
次に、制御部32は、スロットル制御ステップ数thrstepが、目標アイドルステップ数Tidlestepよりも大きいか否か、を判断する(ステップS405)。ここで、「目標アイドルステップ数Tidlestep」とは、アイドル停止時における目標のステップモータ56のステップ数である。
【0155】
そして、制御部32は、スロットル制御ステップ数thrstepが、目標アイドルステップ数Tidlestepよりも大きい、と判断した場合(ステップS405:YES)には、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中であると判断して、Δpmサイクル算出・記憶(更新)を行う(ステップS406)。このステップS406では、制御部32は、1サイクル前の最小吸気圧1minpm(i)から最新の最小吸気圧0minpm(i)を減算して、最新の吸気圧変化量Δpm(i)を算出する。そして、制御部32は、この算出した最新の吸気圧変化量Δpm(i)を記憶(更新)する。
【0156】
次に、制御部32は、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が、1サイクル前の吸気圧変化量Δpm(i-1)(詳しくは、1サイクル前の吸気圧変化量Δpm(i-1)に所定量a(バラツキ補正量)を加算した量)よりも大きいか否かを判断する(ステップS407)。なお、「1サイクル前の吸気圧変化量Δpm(i-1)」とは、1つ前のエンジンサイクルにおける吸気圧変化量Δpmである。
【0157】
そして、制御部32は、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が1サイクル前の吸気圧変化量Δpm(i-1)よりも大きいと判断した場合(ステップS407:YES)には、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中で、過剰に閉弁駆動(すなわち、過剰にステップ数が降下)するような脱調が発生したと判断して、アイドル停止位置の嵩上げを行う(ステップS408)。このステップS408では、制御部32は、目標アイドルステップ数Tidlestepを更新する。詳しくは、制御部32は、更新前の目標アイドルステップ数tidlestepに所定のステップ数b(例えば、3)を加算したステップ数を、目標アイドルステップ数Tidlestepとする。
【0158】
例えば、
図13に示すように、時間T41から時間T42において、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中で過剰に閉弁駆動するような脱調が発生した場合に、時間T43において、ステップモータ56のアイドル停止時の目標のステップ数が、更新前の目標アイドルステップ数tidlestepから、目標アイドルステップ数Tidlestepに嵩上げ(大きく)される。
【0159】
図12の説明に戻って、次に、制御部32は、減速pm先読み補正(MINpm=0minpm-Δpm)を行い(ステップS409)、ステップモータ56のステップ数を目標のスロットル制御ステップ数thrstepに制御する(ステップS410)。
【0160】
一方、制御部32は、ステップS407において、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が1サイクル前の吸気圧変化量Δpm(i-1)以下である、と判断した場合(ステップS407:NO)には、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中で過剰に閉弁駆動するような脱調が発生しなかったと判断して、アイドル停止位置を変更しない(ステップS411)。このステップS411では、制御部32は、目標アイドルステップ数Tidlestepを更新しない。詳しくは、制御部32は、目標アイドルステップ数Tidlestepを、更新前の目標アイドルステップ数tidlestepのままとする。
【0161】
また、制御部32は、ステップS405において、スロットル制御ステップ数thrstepが、目標アイドルステップ数Tidlestep以下である、と判断した場合(ステップS405:NO)には、ステップモータ56をアイドル停止位置で停止させて、ステップモータ56のフィードバック制御を行う(ステップS412)。
【0162】
また、制御部32は、ステップS403において、目標アイドル取込みフラグが0であると判断した場合(ステップS403:NO)には、目標アイドルステップ数tidlestepを取り込んで(ステップS413)、最新の目標アイドルステップ数Tidlestepを目標アイドルステップ数tidlestepに更新して(ステップS414)、目標アイドル取込みフラグを1とする(ステップS415)。
【0163】
また、制御部32は、閉弁駆動→アイドル停止時のモードでない、と判断した場合(ステップS402:NO)には、スロットル他開閉モード、すなわち、閉弁駆動→アイドル停止時のモード以外の他のモードへ移行する(ステップS416)。
【0164】
以上のように、本実施例では、制御部32は、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中で過剰に脱調したと判定した場合に、ステップモータ56のアイドル停止位置を嵩上げする。
【0165】
このようにして、本実施例では、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中でステップモータ56の脱調が発生したことを判定した後に、当該脱調を見越してステップモータ56が閉弁駆動を行った後のステップモータ56の停止位置を調整する制御を行う。これにより、スロットル弁55(ステップモータ56)が閉弁駆動を行って停止した後の吸気量が安定するので、エンジン41の駆動の安定性が向上する。
【0166】
(閉弁駆動の途中で過少に脱調した場合)
次に、ステップモータ56が、閉弁駆動を行っている途中で、過少に脱調した場合(すなわち、過少にステップ数が降下した場合)について説明するが、
図12の内容と共通する点が多いので、
図12の内容と異なる点のみ説明する。
【0167】
具体的には、制御部32は、
図14に示すフローチャートに基づいて、ステップモータ56の脱調判定制御と、アイドル停止位置の嵩下げ制御を行う。
【0168】
図14に示すように、制御部32は、ステップS507において、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が1サイクル前の吸気圧変化量Δpm(i-1)以下である、と判断した場合(ステップS507:NO)には、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が0の近傍であるか否かを判断する(ステップS511)。
【0169】
そして、制御部32は、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が0の近傍であると判断した場合(ステップS511:YES)には、最小吸気圧minpmの降下代の低下(最小吸気圧minpmの降下が少ない状況)が生じており、ステップモータ56の閉弁駆動を行っている途中で、過少に閉弁駆動(すなわち、過少にステップ数が降下する)するような脱調が発生したと判断して、アイドル停止位置の嵩下げを行う(ステップS512)。このステップS512では、制御部32は、目標アイドルステップ数Tidlestepを更新する。詳しくは、制御部32は、更新前の目標アイドルステップ数tidlestepから所定のステップ数bを減算したステップ数を、目標アイドルステップ数Tidlestepとする。
【0170】
一方、制御部32は、ステップS511において、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が0の近傍でないと判断した場合(ステップS511:NO)には、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中で過少に閉弁駆動するような脱調が発生しなかったと判断して、アイドル停止位置を変更しない(ステップS513)。
【0171】
以上のように、本実施例では、制御部32は、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中で過少に脱調したと判定した場合に、ステップモータ56のアイドル停止位置を嵩下げする。
【0172】
このようにして、本実施例では、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中でステップモータ56の脱調が発生したことを判定した後に、当該脱調を見越してステップモータ56が閉弁駆動を行った後のステップモータ56の停止位置を調整する制御を行う。これにより、スロットル弁55(ステップモータ56)が閉弁駆動を行って停止した後の吸気量が安定するので、エンジン41の駆動の安定性が向上する。
【0173】
(開弁駆動の途中で過剰または過少に脱調した場合)
次に、ステップモータ56が、開弁駆動を行っている途中で、過剰または過少に脱調した場合について説明するが、
図12や
図14の内容と共通する点が多いので、
図12や
図14の内容と異なる点のみ説明する。
【0174】
具体的には、制御部32は、
図15に示すフローチャートに基づいて、ステップモータ56の脱調判定制御と、開弁停止位置の嵩下げ制御または嵩上げ制御を行う。
【0175】
図15に示すように、制御部32は、ステップS603において、目標開弁停止取込みフラグが1であると判断した場合(ステップS603:YES)には、最新0&1サイクル前の最小吸気圧minpmを取込んで更新する(ステップS604)。
【0176】
次に、制御部32は、スロットル制御ステップ数thrstepが、目標開弁停止ステップ数Topenstepよりも大きいか否かを判断する(ステップS605)。
【0177】
そして、制御部32は、スロットル制御ステップ数thrstepが、目標開弁停止ステップ数Topenstepよりも大きいと判断した場合(ステップS605:YES)には、ステップモータ56が開弁駆動を行っている途中であると判断して、Δpmサイクル算出・記憶(更新)を行う(ステップS606)。
【0178】
次に、制御部32は、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が、1サイクル前の吸気圧変化量Δpm(i-1)よりも大きいと判断した場合(ステップS607:YES)には、ステップモータ56の開弁駆動を行っている途中で過剰に開弁駆動(すなわち、過剰にステップ数が上昇)するような脱調が発生したと判断して、開弁停止位置の嵩下げを行う(ステップS608)。このステップS608では、制御部32は、目標開弁停止ステップ数Topenstepを更新する。詳しくは、制御部32は、更新前の目標開弁停止ステップ数topenstepから所定のステップ数bを減算したステップ数を、目標開弁停止ステップ数Topenstepとする。
【0179】
また、制御部32は、ステップS607において、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が1サイクル前の吸気圧変化量Δpm(i-1)未満であると判断した場合(ステップS607:NO)であって、最新の吸気圧変化量Δpm(i)が0の近傍である、と判断した場合(ステップS611:YES)には、ステップモータ56が開弁駆動を行っている途中で過少に開弁駆動(すなわち、過少にステップ数が上昇)するような脱調が発生したと判断して、開弁停止位置の嵩上げを行う(ステップS612)。このステップS612では、制御部32は、目標開弁停止ステップ数Topenstepを更新する。詳しくは、制御部32は、更新前の目標開弁停止ステップ数topenstepに所定のステップ数bを加算したステップ数を、目標開弁停止ステップ数Topenstepとする。なお、所定のステップ数bは、ステップS608とステップS612とで変更してもよい。
【0180】
また、制御部32は、ステップS603において、目標開弁停止取込みフラグが0である、と判断した場合(ステップS603:NO)には、目標開弁停止ステップ数topenstepを取り込んで(ステップS615)、最新の目標開弁停止ステップ数Topenstepを目標開弁停止ステップ数topenstepに更新して(ステップS616)、目標開弁停止取込みフラグを1とする(ステップS617)。
【0181】
以上のように、本実施例では、制御部32は、ステップモータ56が開弁駆動を行っている途中で過剰に脱調したと判定した場合に、ステップモータ56の開弁停止位置を嵩下げする。一方、制御部32は、ステップモータ56が開弁駆動を行っている途中で過少に脱調したと判定した場合に、ステップモータ56の開弁停止位置を嵩上げする。
【0182】
このようにして、本実施例では、ステップモータ56が閉弁駆動を行っている途中でステップモータ56の脱調が発生したことを判定した後に、当該脱調を見越してステップモータ56が閉弁駆動を行った後のステップモータ56の停止位置を調整する制御を行う。これにより、ステップモータ56が開弁駆動を行って停止した後の吸気量が安定するので、エンジン41の駆動の安定性が向上する。
【0183】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0184】
例えば、第1実施例において、ステップモータ56の脱調が発生していると判定した場合に、ステップモータ56のアイドル停止位置または開弁停止位置を嵩上げまたは嵩下げして調整してもよい。
【0185】
また、上記の説明では、最小吸気圧minpmを使用して制御を行っていたが、最大吸気圧maxpmを使用して制御を行ってもよい。なお、「最大吸気圧maxpm」とは、エンジンサイクル中の排気行程のタイミング(詳しくは、排気行程と吸気行程とが切り替わるタイミング)毎に吸気圧センサ62で検出される吸気圧pmであって、1つのエンジンサイクル中で最大となる吸気圧pmである。
【符号の説明】
【0186】
1 マルチコプタ
5 スロットル制御装置
11 機体
12 エンジン発電ユニット
21 プロペラ
22 モータ
23 機体本体部
31 バッテリ
32 制御部
40 発電用エンジンシステム
41 エンジン
42 ジェネレータ
51 気筒
52 クランクシャフト
53 吸気通路
53a サージタンク
55 スロットル弁
56 ステップモータ
61 回転数センサ
62 吸気圧センサ
ne エンジン回転数
pm 吸気圧
minpm 最小吸気圧
thrstep スロットル制御ステップ数
cca クランク角カウンタ
MINpm1 開弁開始制御前の最小吸気圧
minpm1 開弁開始制御後の最小吸気圧
Δpm1 開弁開始制御に伴う吸気圧変化量
A 予想値
MINpm2 開弁停止制御後の最小吸気圧
minpm2 開弁停止制御後の最小吸気圧
Δpm2 開弁停止制御に伴う吸気圧変化量
B 予想値
MINpm3 閉弁開始制御前の最小吸気圧
minpm3 閉弁開始制御後の最小吸気圧
Δpm3 閉弁開始制御に伴う吸気圧変化量
-C 予想値
MINpm4 閉弁停止制御後の最小吸気圧
minpm4 閉弁停止制御後の最小吸気圧
Δpm4 閉弁停止制御に伴う吸気圧変化量
-D 予想値
minpm(i) 最新のエンジンサイクルにおける最小吸気圧
0minpm(i) 最新の最小吸気圧
minpm(i-1) 1つ前のエンジンサイクルにおける最小吸気圧
1minpm(i) 1サイクル前の最小吸気圧
Tidlestep 目標アイドルステップ数
Δpm(i) 最新の吸気圧変化量
Δpm(i-1) 1サイクル前の吸気圧変化量
a 所定量
tidlestep 更新前の目標アイドルステップ数
b 所定のステップ数
maxpm 最大吸気圧