(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037913
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】充電ステーション
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20230309BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230309BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20230309BHJP
B60L 53/65 20190101ALI20230309BHJP
B60L 53/67 20190101ALI20230309BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/00 P
H02J7/00 301B
H02J7/02 U
B60L53/30
B60L53/65
B60L53/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144747
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】畠山 智行
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正俊
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB01
5G503DA17
5G503EA01
5G503FA03
5G503FA06
5G503GB03
5H125AA03
5H125AC12
5H125AC23
5H125BE02
5H125CC06
5H125DD03
5H125EE41
5H125FF14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】時間的余裕のない電気自動車が、待ち時間なく充電でき、充電器の稼働率を向上させる充電ステーションを提供する。
【解決手段】電気自動車の充電器50と、駐車スペース80A,80Bを備える充電ステーション90であって、充電器は、切替器18と、切替器と電気的に接続される電力変換手段32、33と、切替器と電気的に接続される充電コネクタ16A、16Bと、操作部と、車両識別部と、を備え、充電器の待機モードにおいて、操作部が充電要求を受け取り、車両識別部が登録車10と識別したとき、充電コネクタ16Aによって登録車を充電する第1充電モードへ移行し、車両識別部が非登録車11と識別したとき、充電コネクタ16Bによって非登録車を充電する第2充電モードへと移行する。充電器は、第2充電モードにおいて、車両識別部が、新たな充電要求が登録車だと識別すると、充電器は第2充電モードを中断して第1充電モードへと移行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車を充電する充電器と、電気自動車を駐車するための駐車空間を備える充電ステーションであって、
前記充電器は、系統電源接続手段と、前記系統電源接続手段の出力と電気的に接続される電力変換手段と、前記電力変換手段の出力と電気的に接続される第1接続手段および第2接続手段と、操作部と、車両識別部を備え、
前記充電器が充電をしていない待機モードにおいて、前記操作部が前記電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記車両識別部が前記電気自動車を登録車と識別したとき、前記充電器は前記待機モードから前記第1接続手段によって前記登録車を充電する第1充電モードへと移行し、
前記充電器が前記待機モードにおいて、前記操作部が前記電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記車両識別部が前記電気自動車を非登録車と識別したとき、前記充電器は前記待機モードから前記第2接続手段によって前記非登録車を充電する第2充電モードへと移行し、
前記充電器が前記第2充電モードにおいて、前記操作部が充電中の車両とは異なる電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記車両識別部が前記充電中の車両とは異なる電気自動車を前記登録車と識別したとき、前記充電器は前記第2充電モードを中断して前記第1充電モードへと移行することを特徴とする、充電ステーション。
【請求項2】
請求項1に記載の充電ステーションであって、
前記充電器が前記第1充電モードにおいて、前記操作部が充電中の車両とは異なる電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記車両識別部が前記充電中の車両とは異なる電気自動車を前記非登録車と識別したとき、前記充電器は前記第2充電モードには移行しないことを特徴とする、充電ステーション。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の充電ステーションであって、
前記充電器が前記第1充電モードであって、前記操作部が充電中の車両とは異なる電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記車両識別部が前記充電中の車両とは異なる電気自動車を前記非登録車と識別したとき、前記第1充電モードが完了したあと、前記第2充電モードに移行することを特徴とする、充電ステーション。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の充電ステーションであって、
前記充電器はさらに切替手段を備え、前記充電器が前記第1充電モードに移行するとき、前記切替手段は前記電力変換手段の出力の接続先を第1接続手段に切り替え、前記充電器が前記第2充電モードに移行するとき、前記切替手段は前記電力変換手段の出力の接続先を第2接続手段に切り替えることを特徴とする、充電ステーション。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の充電ステーションであって、
前記充電器は、さらに表示部を有し、前記充電器が前記第1充電モードであるとき、前記表示部は前記非登録車が充電できないことを表示し、前記充電器が待機モードであるとき、前記表示部は前記非登録車が充電できることを表示することを特徴とする、充電ステーション。
【請求項6】
請求項5に記載の充電ステーションであって、
前記充電器は、前記充電器の予約情報を参照し、前記表示部は、前記予約情報から計算された予約のない時間帯を表示することを特徴とする、充電ステーション。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の充電ステーションであって、
前記充電器は、前記第1接続手段の少なくとも一部を格納する第1格納部分と、前記第2接続手段の少なくとも一部を格納する第2格納部分を有し、前記第1格納部分は、前記第1接続手段の取り出しを制限する第1ロック機構を有し、前記第2格納部分は、前記第2接続手段の取り出しを制限する第2ロック機構を有し、前記充電器が前記待機モードから前記第1充電モードに移行するとき、前記第1ロック機構のロックを解除し、前記充電器が前記待機モードから前記第2充電モードに移行するとき、前記第2ロック機構のロックを解除することを特徴とする、充電ステーション。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の充電ステーションであって、
前記充電器は、前記系統電源接続手段と前記電力変換手段を収納する第1の筐体と、切替手段と前記第1接続手段と前記第2接続手段を収納する第2の筐体で構成されたことを特徴とする、充電ステーション。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の充電ステーションであって、
前記系統電源接続手段と、前記電力変換手段と、切替手段は1つの筐体の中に配置されたことを特徴とする、充電ステーション。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の充電ステーションであって、
前記充電器は、複数の前記電力変換手段と、複数の切替手段と、複数の前記第1接続手段と、複数の前記第2接続手段を具備したことを特徴とする、充電ステーション。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項の充電ステーションであって、
前記充電ステーションは、少なくとも1つの前記充電器と、前記充電器とは異なる少なくとも1つの充電器と、一列に並んだ少なくとも3つの駐車空間を有し、前記充電器は、前記一列に並んだ少なくとも3つの駐車空間の何れかの末端に最も近い2つの駐車空間に駐車した電気自動車を充電することを特徴とする、充電ステーション。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項の充電ステーションであって、
複数の前記駐車空間は、前記登録車を駐車するための第1の駐車空間と、前記非登録車を駐車するための第2の駐車空間に分類され、前記第1の駐車空間と前記第2の駐車空間との間に、前記第1接続手段と前記第2接続手段を配置し、前記第1接続手段は前記第2接続手段よりも前記第1の駐車空間に近いことを特徴とする、充電ステーション。
【請求項13】
電気自動車を充電する充電器と、電気自動車を駐車するための駐車空間を備える充電ステーションであって、
前記充電器は、系統電源接続手段と、前記系統電源接続手段の出力と電気的に接続される電力変換手段と、前記電力変換手段の出力と電気的に接続される接続手段を備え、
前記充電器は、充電をしていない状態において、前記電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記電気自動車を登録車と識別したとき、前記接続手段によって前記登録車を充電し、
前記充電器は、充電をしていない状態において、前記電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記電気自動車を非登録車と識別したとき、前記接続手段によって前記非登録車を充電し、
前記充電器は、前記非登録車の充電時に、充電中の車両とは異なる電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記充電中の車両とは異なる電気自動車を前記登録車と識別したとき、前記非登録車の充電を中断して前記登録車の充電を行うことを特徴とする、充電ステーション。
【請求項14】
請求項13に記載の充電ステーションであって、
前記充電器は、前記登録車の充電時に、充電中の車両とは異なる電気自動車に対する充電要求を受け取り、前記充電中の車両とは異なる電気自動車を前記非登録車と識別したとき、前記登録車の充電完了まで、前記前記非登録車の充電を行わないことを特徴とする、充電ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルを達成するためには、人為的な二酸化炭素の排出をできるだけ抑える必要があり、その有効な手段の一つとして、内燃機関による自動車から電気自動車(EV)への転換が注目されている。しかし、充電設備の不足等の懸念から、現状、電気自動車が十分に普及しているとは言い難い。
【0003】
一方、カーボンニュートラル目標を経営計画に掲げる企業が増えてきており、今後、商用車を電気自動車に転換する動きが加速することが予想される。しかし、電気自動車を導入する際の初期投資は小さくなく、そのことが導入の障壁となっている。一般に、車載電池の容量が大きいほど走行可能距離が長くなるが、その反面、車両価格が高くなる傾向にある。
【0004】
したがって、初期投資を抑えるためには、車載電池の容量を小さくし、充電ステーションで継ぎ足し充電することが効果的である。しかし、充電ステーションのすべての充電器が使用中である場合や、充電が終了しているにも関わらず、充電コネクタが自動車に接続されたまま放置されているような場合には、他の充電ステーションを探しに行くか、その場で待機する必要がある。
【0005】
このような問題を解決する充電ステーションの運用方法に関する技術として、例えば、以下に挙げる特許文献に記載される技術が提案されている。特許文献1には、電力供給状況及び各電気自動車の公共性に応じて、各電気自動車のバッテリへの電力供給を制御する技術が記載されており、電気自動車の公共性を識別して公共性の高い電気自動車の充電を優先する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、充電器が複数の充電コネクタを有し、充電器が他の電気自動車を充電中であっても残っている充電コネクタを電気自動車に接続すれば、充電できる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-110173号公報
【特許文献2】特開2020-48375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている方法によれば、複数の充電器で構成された充電ステーションにおいて、1基の充電器に対して1台の電気自動車が割り当てられ、公共性の高い電気自動車の充電が優先される。しかし、充電ステーションのすべての充電器が使用中である場合には、後から来た電気自動車の公共性がいかに高かったとしても、何れかの充電器が空くまでは充電を開始することができない。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術によれば、1基の充電器から複数の電気自動車を同時に充電できるため、充電可能性は高まるが、すべての充電コネクタが電気自動車に接続されている場合、すなわち、充電コネクタに空きがない場合には、何れかの充電コネクタが空くまで充電を開始することができない。また、充電コネクタが空いたとしても、先に充電コネクタを接続して待機している電気自動車の充電が優先されるため、待ち時間が発生する場合がある。
【0010】
ところで、電気自動車の属性に着目すると、レジャー目的の自家用車の場合、充電の待ち時間が多少発生することはそれほど大きな問題にはならない。しかし、ルート配送のような分刻みで移動する商用車の場合には、業務の合間を縫って充電する必要があるため、予定通り充電できなければ業務に支障をきたすおそれがある。そのような商用車のために専用の充電器を設置することもできるが、専用であるが故に充電器の稼働率は低くなり、充電器の投資回収がままならない。
【0011】
そこで本発明の目的は、商用車をはじめとする時間的余裕のない電気自動車が、充電ステーションに到着するや否や、待ち時間なく確実に充電することができ、かつ、充電器の稼働率を向上可能な充電ステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の充電ステーションは、「電気自動車を充電する充電器と、電気自動車を駐車するための駐車空間を備える充電ステーションであって、充電器は、系統電源接続手段と、系統電源接続手段の出力と電気的に接続される電力変換手段と、電力変換手段の出力と電気的に接続される第1接続手段および第2接続手段と、操作部と、車両識別部を備え、充電器が充電をしていない待機モードにおいて、操作部が電気自動車に対する充電要求を受け取り、車両識別部が電気自動車を登録車と識別したとき、充電器は待機モードから第1接続手段によって登録車を充電する第1充電モードへと移行し、充電器が待機モードにおいて、操作部が電気自動車に対する充電要求を受け取り、車両識別部が電気自動車を非登録車と識別したとき、充電器は前記待機モードから第2接続手段によって非登録車を充電する第2充電モードへと移行し、充電器が第2充電モードにおいて、操作部が充電中の車両とは異なる電気自動車に対する充電要求を受け取り、車両識別部が充電中の車両とは異なる電気自動車を登録車と識別したとき、充電器は第2充電モードを中断して第1充電モードへと移行することを特徴とする、充電ステーション。」としたものである。
【0013】
また本発明は、「電気自動車を充電する充電器と、電気自動車を駐車するための駐車空間を備える充電ステーションであって、充電器は、系統電源接続手段と、系統電源接続手段の出力と電気的に接続される電力変換手段と、電力変換手段の出力と電気的に接続される接続手段を備え、充電器は、充電をしていない状態において、電気自動車に対する充電要求を受け取り、電気自動車を登録車と識別したとき、接続手段によって登録車を充電し、充電器は、充電をしていない状態において、電気自動車に対する充電要求を受け取り、電気自動車を非登録車と識別したとき、接続手段によって非登録車を充電し、充電器は、非登録車の充電時に、充電中の車両とは異なる電気自動車に対する充電要求を受け取り、充電中の車両とは異なる電気自動車を登録車と識別したとき、登録車の充電を中断して前登録車の充電を行うことを特徴とする、充電ステーション。」としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、商用車をはじめとする時間的余裕のない電気自動車が、充電ステーションに到着するや否や、待ち時間なく確実に充電することができる。
【0015】
また本発明の実施例によれば、充電器の稼働率を高い水準で維持し、充電ステーションの効率的な運営を実現できる。その結果、充電ステーションを普及させ、それによって経路充電に対する懸念が解消され、自家用車、商用車ともに電気自動車への転換が進む好循環を創出できる。
【0016】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】比較例の充電ステーション90の構成を示す図。
【
図2】本発明の実施例1に係る充電ステーション90の構成例を示す図。
【
図6】
図3における点線で囲んだ領域Aの内部構成を示す図。
【
図7】本発明の実施例2に係る充電ステーション90の構成例を示す図。
【
図8】本発明の実施例3に係る充電ステーション90の構成例を示す図。
【
図9】本発明の実施例4に係る充電ステーション90の構成例を示す図。
【
図10】本発明の実施例5に係る充電ステーション90の構成例を示す図。
【
図11】本発明の実施例6に係る充電ステーション90の登録車予約システムを示す図。
【
図12】充電ステーションS1の充電器50における表示部23が表示する画面の一例を示す図。
【
図13】充電ステーションS1の充電器50における表示部23が表示する画面の別を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0019】
はじめに、
図1を用いて比較例の充電ステーション90を説明する。充電ステーション90は、電気自動車12が有するバッテリ14のエネルギーを補充するための電力を供給する充電器51と、充電するための駐車スペース80で構成される。
【0020】
充電器51は、充電器本体30と、充電ケーブル17、および充電ケーブル17の末端に接続された充電コネクタ16で構成される。充電器本体30は、電源系統40の電圧を変換するトランス31と、トランス31が出力する交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ32と、AC/DCコンバータ32が出力する直流電力を、充電に適した直流電力に変換するDC/DCコンバータ33で構成され、DC/DCコンバータ33が出力する直流電力は充電ケーブル17、および充電コネクタ16を介して電気自動車12へと供給される。また、充電器本体30は、操作部35、および制御部34を有する。
【0021】
充電器51のユーザーは、駐車スペース80に電気自動車12を駐車するとともに、充電ケーブル17を取り回して充電コネクタ16を電気自動車12の給電ポート15に接続し、操作部35から電気自動車12への充電を指示する。充電器51の制御部34は、操作部35から受けた指令に従い、AC/DCコンバータ32、DC/DCコンバータ33と、図示しない充電器本体30内の各被制御装置を制御し、電気自動車12に供給する電力を制御する。
【0022】
また、制御部34は、充電ケーブル17内の信号線を介して電気自動車12の制御部(ECU)13とバッテリ14の充電状態等に関するデータのやり取りを行い、それらの結果に基づき、バッテリ14への充電電力を制御する。例えば、Controller Area Network(CAN)通信により、充電器51の情報を電気自動車12に送り、電気自動車12から充電器51に充電許可信号を送り、さらに電気自動車12から充電器51に充電指令値を送る、という情報交換を経て、充電器51から電気自動車12に対して直流電力を供給する。
【0023】
このように
図1に示した比較例の充電ステーション90によれば、充電器51は、電気自動車12から時々刻々と送られてくる情報に従って直流電力を電気自動車12へと供給する。そして、バッテリ14の蓄電エネルギーが所定の値になったとき、または操作部35が充電の停止指示を受け取ったとき、または充電時間が所定の値を超過したときなどに、充電器51はバッテリ14に直流電力を供給することを停止し、充電を完了する。
【0024】
これに対し、本発明の実施例1に係る充電ステーション90は、以下のように構成されて充電を行う。本発明の実施例1の充電ステーション90について、
図2から
図6を参照して説明する。
【0025】
ここで、以下に述べる本発明においては、充電ステーション90で充電を行う電気自動車を登録車と非登録車に区別して定義する。登録車とは例えば公共性の高い電気自動車、あるいはルート配送のような分刻みで移動する商用車などであり、非登録車とはレジャー目的の自家用車である。但し、どのような電気自動車を登録車に定義するのかは、適宜の定義に従えばよく、本発明では定義の仕方を限定するものではない。例えば高電価の対価として登録車としての扱いを受けるものであってもよい。
【0026】
本発明では係る定義の下で、充電ステーションに来訪した電気自動車が登録車であるか否かを判別し、かつ登録車の充電を非登録車の充電に優先させる点に特徴を有する充電ステーションを提案する。
【0027】
図2は実施例1に係る充電ステーション90の構成例を示す図である。充電ステーション90は、充電器50、駐車スペース80A、駐車スペース80Bで構成される。駐車スペース80Aは登録車10が、駐車スペース80Bは非登録車11が、駐車するためのスペースである。
【0028】
充電器50は、充電器本体30、切替装置20、充電ケーブル17A、充電ケーブル17B、充電コネクタ16A、充電コネクタ16Bで構成される。また、切替装置20は、切替器18、操作部21、制御部22、表示部23、車両識別部24で構成される。
【0029】
実施例1に係る充電ステーション90の上記構成で特徴的な点は、例えば車両識別部24を備えたことであり、ここで充電ステーションに来訪した電気自動車が登録車であるか否かを判別し、以後の充電対応に優先性を与えることである。
【0030】
充電器本体30のDC/DCコンバータ33の出力端子は、切替器18の入力端子iと接続される。また、切替器18は2つの出力端子a、bを有し、出力端子aは充電ケーブル17Aの端子と、出力端子bは充電ケーブル17Bの端子とそれぞれ接続される。さらに、充電ケーブル17A、充電ケーブル17Bの残る片方の端子は、それぞれ充電コネクタ16A、充電コネクタ16Bと接続される。
【0031】
切替装置20内の操作部21は、充電器50のユーザーからの操作を受け、その内容を制御部22に送信する。制御部22は、操作部21から受け取った信号を処理して表示部23に情報を送信して表示するとともに、充電器本体30の制御部34と必要な情報を交換する。また、制御部22は、インターネットを介して充電ステーション90を統括するシステムと必要なデータを送受信するものであってもよい。
【0032】
切替器18は、制御部22からの指令を受けて、入力端子iを出力端子a、bのどちらに電気的に接続するかを切り替える。具体的には、入力端子iと出力端子aが電気的に接続されているとき、入力端子iと出力端子bは電気的に切り離されている。同様に、入力端子iと出力端子bが電気的に接続されているとき、入力端子iと出力端子aは電気的に切り離されている。つまり、出力端子a、bが同時に入力端子iと電気的に接続することはない。
【0033】
図2に示す切替器18は、入力端子iを共通端子、出力端子a、bをそれぞれノーマリオン端子、ノーマリオフ端子とした機械式リレーであってもよいし、半導体スイッチで構成してもよい。また、大電流を扱うために複数のリレーを並列に接続させて切替器18を構成してもよい。
【0034】
なお、電源系統40は、例えば、商用交流電源、太陽光発電システム、風力発電システム、直流配電系統などが用いられる。電源系統40が直流である場合には、トランス31、AC/DCコンバータ32は不要であり、かわりにDC/DCコンバータ33の入力側を電源系統40に接続するか、電源系統40の電圧を変換するDC/DCコンバータを追加し、そのDC/DCコンバータの入力側を電源系統40に接続し、出力側をDC/DCコンバータ33の入力側に接続してもよい。
【0035】
充電器本体30は汎用的な構成であり、大量生産されていることから、安価に調達することができる。このことから、充電器本体30と切替装置20を分離させて充電器50を構成することで、充電器本体30には汎用的な充電器を適用することができ、安価に充電器50を提供することができる。また、充電器本体30に比べて切替装置20はコンパクトに構成できることから、切替装置20を駐車スペースの近傍に設置し、充電器本体30を駐車スペースから離れた位置に設置することで、充電ステーション90の設置の自由度を向上できるほか、ユーザーが触れる必要のない充電器本体30にいたずらするリスクを低減できる。
【0036】
図3は、切替装置20の外観構成を示す図である。切替装置20は、正面に操作部21、表示部23を有する。また、切替装置20の両側面は、充電ケーブル17を保持するケーブル保持部36、充電ケーブル17を切替装置20の内部から外部に取り出すケーブル出口37をそれぞれ有する。
【0037】
充電ケーブル17の長さは3m~5m程度であり、かつ、利用者の操作上の負担を軽減する工夫がなされているので、給電ポート15の設置位置が、電気自動車のフロント部分、リア部分、あるいは、サイドの何れであっても、ユーザーは支障なく充電を行うことができる。
【0038】
操作部21は、プッシュスイッチであってもよいし、タッチパネルであってもよい。また、表示部23はLEDのような点灯手段であってもよいし、液晶パネルのような画像表示手段であってもよい。操作部21がプッシュスイッチであれば、ユーザーは直感的に操作でき、操作ミスが少ない。また、表示部23が点灯手段であれば、ユーザーは即座に充電器50の状況を確認できる。さらに、操作部21がプッシュスイッチであって、表示部23が点灯手段である場合には、自然災害またはユーザーの故意、過失による衝撃に対する堅牢性を向上できる。一方、操作部21をタッチパネルとした場合、画像表示手段で構成した表示部23に操作部21の機能を含めることができ、切替装置20の意匠を簡素化できる。また、表示部23を画像表示手段で構成した場合は、広告を含む様々な情報をユーザーに提供でき、充電器の付加価値を向上できる。
【0039】
図2の車両識別部24は、充電を要求する車両が登録車10であるか、非登録車11であるかを識別する。車両識別部24は、カードによる識別、ワンタイムパスワードによる識別、画像認識による識別の何れかまたはその組み合わせであってもよい。カードによる識別は、ユーザーにとって特別な知識が不要で操作が簡便である。ワンタイムパスワードによる識別は、簡便であることに加え、紛失する恐れがない。画像認識による識別は、例えば切替装置20に付属する画像認識装置を用いて登録車10の外観、ナンバープレート、車体に貼付した二次元バーコードを読み取ってもよい。この方法によれば、ユーザーは識別するための物や情報を忘れたり、紛失したりする心配がないため、充電ステーション90に到着したときに確実に登録車10を充電することができる。画像認識装置は、例えばカメラや、バーコードリーダーである。また、充電ステーション90に設置した監視カメラを用いてもよく、その場合には切替装置20に画像識別装置を設置する必要がないため、充電ステーション90を安価に構成できる。
【0040】
図4は、充電器50の状態遷移図である。充電器50の状態は、大別すると待機モード111、登録車充電モード222、非登録車充電モード333、非登録車充電阻止モード334がある。以下に、モードの移行条件について説明する。
【0041】
登録車10、非登録車11ともに充電中でない場合、充電器50は登録車10または非登録車11からの充電要求を待つ待機モード111の状態にある。そして、待機モード111である充電器50が「a:登録車10に対する充電要求」を受け取ると登録車充電モード222に移行し、その後、「c:登録車10の充電完了」すると待機モード111に戻る。同様に、待機モード111である充電器50が「b:非登録車11に対する充電要求」を受け取ると非登録車充電モード333に移行し、「d:非登録車11の充電が完了」すると待機モード111に戻る。
【0042】
一方、充電器50が登録車充電モード222であるときには、「e:登録車10に対する充電要求あり、または登録車10充電中」により、充電器50は非登録車11を充電停止状態である非登録車充電阻止モード334に移行し、仮に非登録車11に対する充電要求(b)を受け取っても、非登録車11の充電は開始されず、登録車10の充電が継続される。
【0043】
またこれにより、充電器50が非登録車充電モード333であるときに、登録車10に対する充電要求を受け取ると非登録車11の充電を中断して登録車充電モード222に移行する。
【0044】
そして、「f:登録車10の充電が完了」したあと、まだ非登録車11が充電コネクタ16Bを接続した状態で待機している場合には、非登録車充電阻止モード334から非登録車充電モード333に戻って非登録車11の充電を再開する。このように、充電器50の登録車充電モード222と非登録車充電モード333の移行関係は不可逆的である。
【0045】
充電器50による登録車10と非登録車11の充電方法について、
図5を用いてさらに詳細に説明する。
図5は、充電器50に関するフローチャートである。充電器50が充電要求を受け取ると(ステップS11)、充電器50は充電対象が登録車10であるかを確認する(ステップS12)。充電対象が登録車10であるならば(Yes)、ステップS13に移行し、充電対象が登録車10ではない、すなわち、充電対象が非登録車11ならば(No)、ステップS18に移行する。ステップS13では、充電器50は非登録車11が充電中であるかを確認する。非登録車11が充電中でないならば(No)、ステップS15へと移行する。非登録車11が充電中であるならば(Yes)、非登録車11の充電を中断し(ステップS14)、切替器18は入力端子iと出力端子aを電気的に接続して登録車10の充電を開始する(ステップS15)。そして、登録車10の充電が完了すると(ステップS16)、充電器50は非登録車11が充電待機中であるかを確認する(ステップS17)。非登録車11が充電待機中でないならば(No)、ステップS20に移行する。非登録車11が充電待機中であるならば(Yes)、切替器18は入力端子iと出力端子bを電気的に接続して非登録車の充電を開始(再開)する(ステップS18)。そして、非登録車の充電が完了すると(ステップS19)、充電器50は待機モードに移行する(ステップS20)。
【0046】
以上要するに、登録車10は待機モード111の状態において充電開始可能であり、また非登録車充電モード333の状態において非登録車充電を中断して非登録車充電阻止モード334とし、これに代えて充電開始可能とされている。これは非登録車11の充電は、登録車10が充電状態でないことを条件として行うことを意味している。
【0047】
図6は、
図3の点線で囲んだ領域Aの内部構成を示す図である。
図6に示すように、切替装置20は、切替装置20の両側面から充電コネクタ16A、16Bを差し込んで保持する空間を有するとともに、充電コネクタ16A、16Bの取り出しをそれぞれ制限するロック機構38A、38Bを有する。
図6では一例として、ロック機構38Aがロックを解除した状態、ロック機構38Bがロックしている状態を模式的に示している。すなわち、この場合には充電コネクタ16Aは取り出すことができるが、充電コネクタ16Bは取り出すことができない。
【0048】
充電器50が待機モード111であるとき、ロック機構38A、38Bはともにロック状態であり、充電コネクタ16A、16Bを取り出すことはできないが、登録車充電モード222に移行するときには、ロック機構38Aのロックを解除し、充電コネクタ16Aを取り出せるようにする。また、非登録車充電モード333に移行するときには、ロック機構38Bのロックを解除し、充電コネクタ16Bを取り出せるようにする。
【0049】
さらに、切替装置20は、充電コネクタ16A、16Bがそれぞれ差し込んで保持する空間に収納されたことを確認する手段を有する。切替装置20が、充電コネクタ16Aが保持する空間に差し込まれたことを確認すると、ロック機構38Aをロック状態として充電コネクタ16Aの取り出しを制限する。同様に、切替装置20が、充電コネクタ16Bが保持する空間に差し込まれたことを確認すると、ロック機構38Bをロック状態として充電コネクタ16Aの取り出しを制限する。このようにすることで、ユーザーが誤った充電コネクタを取り出すことを防ぎ、ユーザーの利便性を向上できるほか、充電ケーブル17が不必要に取り回され、傷つくことを防止できる。
【0050】
このように、本発明の実施例1の充電ステーション90は、登録車10が充電中であるときに非登録車11に対する充電を要求しても登録車10への充電が継続される一方、非登録車11が充電中であるときに登録車10に対する充電を要求すると、非登録車11への充電を中断して登録車10の充電を開始するので、登録車10に対して待ち時間なく確実に充電することができる。また、登録車10に対して充電していない間は、非登録車11に対して充電できるので、充電器50の稼働率を向上できる。さらに、登録車10の充電が完了したとき、非登録車11が充電待機中であれば、充電器50は自動的に非登録車11への充電を開始(再開)するので、充電器50の稼働率をさらに向上できる。
充電ステーション90は、充電器50、駐車スペース80A、駐車スペース80Bで構成される。このうち、充電器50は、充電器本体39、充電ケーブル17A、充電ケーブル17B、充電コネクタ16A、16Bを含んで構成される。また充電器本体39は、トランス31、AC/DCコンバータ32、DC/DCコンバータ33、切替器18、操作部21、制御部22、表示部23、車両識別部24を含んで構成される。
このように充電器本体39に、充電対象を切り替えるのに必要な切替器18、操作部21、制御部22、表示部23、車両識別部24を含むことで、充電器50を一体的に構成でき、シンプルかつコンパクトな充電ステーション90を提供できる。
また、実施例1の充電ステーション90では、充電器本体30と切替装置20にそれぞれ操作部と制御部があったが、実施例2の充電ステーション90では、充電器50を一体構成とすることで操作部と制御部を共通化できる。これにより、ハード的な故障の可能性を低減できるほか、ソフトウェアの構成を簡素化できる。