(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037926
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】光デバイス及び光通信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20230309BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/12 363
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144765
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147BA05
2H147BB02
2H147BD01
2H147BE01
2H147BE22
2H147CA01
2H147CB01
2H147CD04
2H147DA12
2H147EA05A
2H147EA05C
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147GA28
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA00
2K102DA04
2K102DB04
2K102DB05
2K102DB08
2K102DC04
2K102DC07
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA25
2K102EB11
2K102EB22
(57)【要約】
【課題】安定した分岐比を確保できる光デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】光デバイスは、変調器と、タップカプラとを有する。変調器は、薄膜LN(Lithium Niobate)基板で形成され、光が通過する光導波路と、前記光導波路に電圧を印加する電極と、を有し、前記電圧に応じた前記光導波路内の電界に応じて通過する前記光の位相を変調する。タップカプラは、前記薄膜LN基板で少なくとも一部が形成され、前記光導波路内を通過する前記光の一部を分岐する。前記タップカプラは、前記光導波路から前記タップカプラ内部を通過する前記光の位相差に応じた分岐比で、通過する前記光の一部を分岐する遅延干渉計を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜LN(Lithium Niobate)基板で形成され、光が通過する光導波路と、前記光導波路に電圧を印加する電極と、を有し、前記電圧に応じた前記光導波路内の電界に応じて通過する前記光の位相を変調する変調器と、
前記薄膜LN基板で少なくとも一部が形成され、前記光導波路内を通過する前記光の一部を分岐するタップカプラと、
を有し、
前記タップカプラは、
前記光導波路から前記タップカプラ内部を通過する前記光の位相差に応じた分岐比で、通過する前記光の一部を分岐する遅延干渉計を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記遅延干渉計は、
前記光導波路からの前記光を入力し、入力した前記光を分岐する第1のカプラと、
前記薄膜LN基板で形成され、前記第1のカプラから分岐した一方の光を通過させる第1の導波路と、
前記薄膜LN基板で形成され、前記第1のカプラから分岐した他方の光を通過させ、前記第1の導波路に比較して光出力を遅延させる第2の導波路と、
前記第1の導波路からの前記一方の光と、前記第2の導波路からの前記他方の光とを合波し、合波後の位相差のある光を当該位相差に応じた分岐比で分岐する第2のカプラと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第1の導波路は、
前記第2の導波路の光学長と異なる光学長を有することを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第1の導波路は、
前記第2の導波路の導波路長と異なる導波路長を有することを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記第2の導波路は、
前記第1の導波路の前記光の伝播方向と異なる伝播方向の部分を含む曲線状の導波路であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記第2の導波路が、前記第1の導波路の前記光の伝播方向と同一方向で、かつ、前記第1の導波路の幅と異なるようにした状態で、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が前記薄膜LN基板で形成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記第1の導波路の前記光の伝播方向が前記光導波路の前記光の伝播方向に対して略直交する方向に向くように、前記タップカプラが配置されたことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記光導波路の前記光の伝播方向が前記薄膜LN基板のLN結晶のZ軸方向である場合に、前記第1の導波路の前記光の伝播方向が前記LN結晶のY軸方向であることを特徴とする請求項7に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記第1のカプラ及び前記第2のカプラの前記光の伝播方向が前記第1の導波路及び前記第2の導波路の前記光の伝播方向と直交するように、前記第1のカプラ、前記第2のカプラ、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が配置されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記第1のカプラ及び前記第2のカプラは、
MMI(Multi Mode Interference)カプラであることを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項11】
電気信号に対する信号処理を実行するプロセッサと、
光を発生させる光源と、
薄膜LN(Lithium Niobate)基板で形成され、前記光が通過する光導波路と、前記光導波路に電圧を印加する電極と、を有し、前記電圧に応じた前記光導波路内の電界に応じて通過する前記光の位相を変調する変調器と、
前記薄膜LN基板で少なくとも一部が形成され、前記光導波路内を通過する前記光の一部を分岐するタップカプラと、
を有し、
前記タップカプラは、
前記光導波路から前記タップカプラ内部を通過する前記光の位相差に応じた分岐比で、通過する前記光の一部を分岐する遅延干渉計を有することを特徴とする光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光変調器は、例えば、基板上に設けられた光導波路及び、その近傍に設けられた変調部で構成される。変調部は、信号電極と、接地電極とを有し、信号電極に電圧を与えると、光導波路内に電界が発生し、光導波路内の電界によって光導波路の屈折率が変化し、光の位相が変化する。光導波路はマッハツェンダ干渉計を構成し、光導波路間の光の位相の差により光出力が変化する。
【0003】
光変調器では、例えば、4チャネルのマッハツェンダ変調器が集積されている。各マッハツェンダ干渉計には、RF(Radio Frequency)変調部とDC(Direct Current)変調部とがある。RF変調部の電極には、例えば、数10GHzの帯域を有する高周波信号を入力し、高速変調を行う。また、DC変調部の電極には、バイアス電圧を印加し、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整する。
【0004】
光変調器の光導波路は、例えば、マッハツェンダ干渉計を構成し、平行に配置された複数の光導波路間の光の位相差により、例えば、XY偏波多重されるIQ信号を出力する。そして、4チャネルの出力を2チャネルずつ合波して2つのIQ信号とし、その一つを偏波回転して偏波ビームコンバイナで偏波多重化して出力することになる。
【0005】
一方、光導波路は、例えば、チタン等の金属を基板表面から拡散することにより、信号電極と重ならない位置に形成される拡散光導波路がある。
図9は、従来のDC変調部100の一例を示す略断面図である。
図9に示すDC変調部100は、LN(Lithium Niobate:ニオブ酸リチウム:LiNbO
3)結晶のLN基板101と、LN基板101表面に形成された拡散光導波路102とを有する。更に、DC変調部100は、LN基板101上の拡散光導波路102を被覆するバッファ層103と、バッファ層103上に積層された電極104とを有する。電極104は、信号電極104Aと、一対の接地電極104Bとを有する。
【0006】
拡散光導波路102は、信号電極104A及び一対の接地電極104Bと重ならない位置に配置されるものである。バッファ層103は、DCドリフト(印加されたバイアス電圧に起因して起きる出射光の経時変化)を抑制するために抵抗値が低くなるように組成及び膜厚を決める。
【0007】
しかしながら、この拡散光導波路102は光の閉じ込めが弱いため、電界の印加効率が悪く、そのため、駆動電圧が高くなる。そこで、LN結晶の薄膜を用いた光導波路が信号電極と重ならない位置に形成される薄膜光導波路がある。薄膜光導波路は、金属を拡散させる拡散光導波路よりも光の閉じ込めを強くすることができ、電界の印加効率を改善し、駆動電圧を低減できる。
【0008】
図10は、従来のDC変調部200の一例を示す略断面図である。
図10に示すDC変調部200は、Si(シリコン)等の支持基板201と、支持基板201上に積層された中間層202とを有する。更に、DC変調部200は、中間層202上に積層された薄膜LN基板203と、薄膜LN基板203上に積層されたSiO
2のバッファ層204とを有する。
【0009】
薄膜LN基板203は、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路206である。薄膜光導波路206は、リブ206Aと、リブ206Aの両脇に形成されたスラブ206Bとを有するリブ型導波路である。そして、リブ206A及びスラブ206Bは、バッファ層204によって被覆され、バッファ層204の表面にコプレーナ(CPW:Coplanar Waveguide)構造の信号電極205A(205)及び一対の接地電極205B(205)が配置される。つまり、バッファ層204上には、信号電極205Aと、信号電極205Aを挟む一対の接地電極205Bとが配置されている。尚、バッファ層204は、薄膜光導波路206を伝搬する光が信号電極205A及び接地電極205Bで吸収されるのを防止できる。
【0010】
信号電極205Aと接地電極205Bとの間に位置する薄膜LN基板203には、凸形状の薄膜光導波路206が形成されている。更に、信号電極205Aと接地電極205Bとの間に位置するバッファ層204にも、凸形状の薄膜光導波路206全体を被覆する段差部204Aがある。
【0011】
このような薄膜光導波路206によれば、信号電極205Aにバイアス電圧を印加して電界を発生させ、薄膜光導波路206の屈折率を変化させることにより、薄膜光導波路206を伝搬する光を変調することができる。
【0012】
DC変調部200では、薄膜光導波路206の出力光の一部をモニタ光としてタップカプラで分岐し、分岐されたモニタ光の光強度に基づき、信号電極205Aに印加するバイアス電圧を調整するフィードバック回路がある。フィードバック回路に使用するタップカプラは、薄膜光導波路206に配置された2本の導波路による方向性結合器で構成する。フィードバック回路では、光の強度を正確にモニタするために、タップカプラの分岐比を安定化させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭61-28925号公報
【特許文献2】特開2020-134874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
薄膜LN結晶で形成した薄膜光導波路206では、光の閉じ込めが強くなるため、光が一部に集中することになる。しかしながら、薄膜光導波路206に隣接するタップカプラの導波路では、薄膜光導波路206の光が伝搬する方向性結合が弱くなる。しかも、タップカプラの分岐比はタップカプラ内の導波路の幅に大きく依存することになるため、タップカプラでは、導波路の幅の製造誤差による影響で分岐比が大きく変化してしまう。その結果、導波路の幅の製造誤差によってタップカプラで分岐するモニタ光の値のバラツキが大きくなってしまう。
【0015】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、安定した分岐比を確保できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願が開示する光デバイスは、1つの態様において、変調器と、タップカプラとを有する。変調器は、薄膜LN(Lithium Niobate)基板で形成され、光が通過する光導波路と、前記光導波路に電圧を印加する電極と、を有し、前記電圧に応じた前記光導波路内の電界に応じて通過する前記光の位相を変調する。タップカプラは、前記薄膜LN基板で少なくとも一部が形成され、前記光導波路内を通過する前記光の一部を分岐する。前記タップカプラは、前記光導波路から前記タップカプラ内部を通過する前記光の位相差に応じた分岐比で、通過する前記光の一部を分岐する遅延干渉計を有する。
【発明の効果】
【0017】
本願が開示する光デバイス等の1つの態様によれば、安定した分岐比を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施例の光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1の光変調器の構成の一例を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は、タップカプラの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図4】
図4は、第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図5】
図5は、実施例2のタップカプラの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図6】
図6は、実施例3のタップカプラの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図7】
図7は、実施例4の光変調器の構成の一例を示す平面模式図である。
【
図8】
図8は、実施例5のタップカプラの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図9】
図9は、従来のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図10】
図10は、従来のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願が開示する光デバイス等の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例0020】
図1は、実施例1の光通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す光通信装置1は、出力側の光ファイバ2A(2)及び入力側の光ファイバ2B(2)と接続する。光通信装置1は、DSP(Digital Signal Processor)3と、光源4と、光変調器5と、光受信器6とを有する。DSP3は、デジタル信号処理を実行する電気部品である。DSP3は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、送信データを含む電気信号を生成し、生成した電気信号を光変調器5に出力する。また、DSP3は、受信データを含む電気信号を光受信器6から取得し、取得した電気信号の復号等の処理を実行して受信データを得る。
【0021】
光源4は、例えば、レーザダイオード等を備え、所定の波長の光を発生させて光変調器5及び光受信器6へ供給する。光変調器5は、DSP3から出力される電気信号によって、光源4から供給される光を変調し、得られた光送信信号を光ファイバ2Aに出力する光デバイスである。光変調器5は、例えば、LN(Lithium Niobate:ニオブ酸リチウム:LiNbO3)光導波路と変調部とを備えるLN光変調器等の光デバイスである。LN導波路は、LN結晶の基板で形成される。光変調器5は、光源4から供給される光がLN導波路を伝搬する際に、この光を変調部へ入力される電気信号によって変調することで、光送信信号を生成する。
【0022】
光受信器6は、光ファイバ2Bから光信号を受信し、光源4から供給される光を用いて受信光信号を復調する。そして、光受信器6は、復調した受信光信号を電気信号に変換し、変換後の電気信号をDSP3に出力する。
【0023】
図2は、実施例1の光変調器5の構成の一例を示す平面模式図である。
図2に示す光変調器5は、入力側に光源4からの光ファイバ4Aを接続し、出力側に送信信号送出用の光ファイバ2Aを接続する。光変調器5は、入力部11と、変調部12と、出力部13と、電極14と、RF入力部15と、RF終端部16とを有する。
【0024】
入力部11は、光ファイバ4Aと接続する1本のLN導波路11Aと、第1の分岐部11Bとを有する。LN導波路11Aは、光ファイバ4Aと接続する1本のLN導波路である。第1の分岐部11Bは、LN導波路11Aと変調部12内のLN導波路21Aとの間を光結合し、LN導波路11Aからの光を1:1で光分岐する。
【0025】
変調部12は、第1の往路部21と、第1の折り返し部22と、第1の復路部23と、第2の折り返し部24と、第2の往路部25と、第3の折り返し部26と、第2の復路部27と、を有する。
【0026】
第1の往路部21は、入力部11と第1の折り返し部22とを光結合する部位である。第1の往路部21は、2本のLN導波路21Aと、2個の第2の分岐部21Bと、4本のLN導波路21Cと、4個の第3の分岐部21Dと、8本のLN導波路21Eと、4個の第1のDC(Direct Current)変調部21Fとを有する。LN導波路21Aは、入力部11内の第1の分岐部11Bと第2の分岐部21Bとの間を光結合するLN導波路である。第2の分岐部21Bは、1本のLN導波路21Aと2本のLN導波路21Cとの間を光結合し、LN導波路21Aからの光を1:1で光分岐する。LN導波路21Cは、第2の分岐部21Bと第3の分岐部21Dとの間を光結合するLN導波路である。第3の分岐部21Dは、LN導波路21Cと2本のLN導波路21Eとの間を光結合し、LN導波路21Cからの光を1:1で光分岐する。
【0027】
第1のDC変調部21Fは、子側MZ(Mach-Zehnder)干渉計で構成する。第1のDC変調部21Fは、2本のLN導波路21Eと、電極14とを有する。電極14は、第1のDC信号電極14A1と、一対の第1のDC接地電極14B1とを有する。尚、LN導波路21Eは、例えば、薄膜LN基板53を用いて形成されるリブ型の光導波路である。薄膜LN基板53は、LN結晶の結晶軸のZ方向で自発分極を有するため、薄膜LN結晶内に内部電界を有することになる。LN導波路21Cの光伝播方向は、薄膜LN結晶のY軸方向である。第1のDC変調部21Fは、電極14から各LN導波路21Eへの電圧印加に応じて各LN導波路21E内に電界を発生させ、電界に応じて各LN導波路21Eの屈折率を調整する。更に、第1のDC変調部21Fは、各LN導波路21Eの屈折率の調整に応じて各LN導波路21Eを通過する光の位相を調整し、光の位相差に応じて光を変調する。
【0028】
第1の折り返し部22は、第1の往路部21と第1の復路部23とを光結合する部位である。第1の折り返し部22は、8本のLN導波路22Aを有する。尚、LN導波路22Aの光伝播方向は、薄膜LN結晶の略Z軸方向である。
【0029】
第1の復路部23は、第1の折り返し部22と第2の折り返し部24とを光結合する部位である。第1の復路部23は、8本のLN導波路23Aと、4個のRF(Radio Frequency)変調部23Bとを有する。
【0030】
RF変調部23Bは、2本のLN導波路23Aと、電極14とを有する。電極14は、RF信号電極14A2と、一対のRF接地電極14B2とを有する。尚、LN導波路23Aは、例えば、薄膜LN基板53を用いて形成されるリブ型の光導波路である。薄膜LN基板53は、LN結晶の結晶軸のZ方向で自発分極を有するため、薄膜LN結晶内に内部電界を有することになる。LN導波路23Aの光伝播方向は、薄膜LN結晶のY軸方向である。RF変調部23Bは、電極14から各LN導波路23Aへの電圧印加に応じて各LN導波路23A内に電界を発生させ、電界に応じて各LN導波路23Aの屈折率を調整する。更に、RF変調部23Bは、各LN導波路23Aの屈折率の調整に応じて各LN導波路23Aを通過する光の位相を調整し、光の位相差に応じて光を変調する。
【0031】
RF入力部15は、RF変調部23B内のRF信号電極14A2と接続し、RF信号電極14A2に電圧(高周波信号)を印加する。RF終端部16は、RF変調部23B内のRF接地電極14B2と接続し、RF信号電極14A2の終端に接続され、RF信号電極14A2によって伝送される高周波信号の不要な反射を防止する。
【0032】
第2の折り返し部24は、第1の復路部23と第2の往路部25とを光結合する部位である。第2の折り返し部24は、8本のLN導波路24Aを有する。尚、LN導波路24Aの光伝播方向は、薄膜LN結晶の略Z軸方向である。
【0033】
第2の往路部25は、第2の折り返し部24と第3の折り返し部26とを光結合する部位である。第2の往路部25は、4個の第1の合波部25Aと、4本のLN導波路25Bと、2個の第2のDC(Direct Current)変調部25Cと、2個の第2の合波部25Dとを有する。第1の合波部25Aは、2本のLN導波路24Aと1本のLN導波路25Bとの間を光結合し、LN導波路24Aからの光を合波する。
【0034】
第2のDC変調部25Cは、親側MZ(Mach-Zehnder)干渉計で構成する。第2のDC変調部25Cは、2本のLN導波路25Bと、電極14とを有する。電極14は、第2のDC信号電極14A3と、一対の第2のDC接地電極14B3とを有する。尚、LN導波路25Bは、例えば、薄膜LN基板53を用いて形成されるリブ型の光導波路である。薄膜LN基板53は、LN結晶の結晶軸のZ方向で自発分極を有するため、薄膜LN結晶内に内部電界を有することになる。LN導波路25Bの光伝播方向は、薄膜LN結晶のY軸方向である。第2のDC変調部25Cは、電極14から各LN導波路25Bへの電圧印加に応じて各LN導波路25B内の電界を発生させ、電界に応じて各LN導波路25Bの屈折率を調整する。更に、第2のDC変調部25Cは、各LN導波路25Bの屈折率の調整に応じて各LN導波路25Bを通過する光の位相を調整し、光の位相差に応じて光を変調する。第2の合波部25Dは、2本のLN導波路25Bと1本のLN導波路26Aとの間を光結合し、各LN導波路25Bからの光を合波する。
【0035】
第3の折り返し部26は、第2の往路部25と第2の復路部27とを光結合する部位である。第3の折り返し部26は、2本のLN導波路26Aを有する。尚、LN導波路26Aの光伝播方向は、薄膜LN結晶の略Z軸方向である。LN導波路26Aは、第2の往路部25内の第2の合波部25Dと第2の復路部27内のLN導波路27Aとの間を光結合する導波路である。
【0036】
第2の復路部27は、第3の折り返し部26と出力部13とを光結合する部位である。第2の復路部27は、2本のLN導波路27Aを有する。尚、LN導波路27Aの光伝播方向は、薄膜LN結晶のY軸方向である。LN導波路27Aは、第3の折り返し部26内のLN導波路26Aと出力部13との間を光結合する導波路である。
【0037】
出力部13は、2本のLN導波路13Aと、PR(Polarization Rotator)13Bと、PBC(Polarization Beam Combiner:偏波ビームコンバイナ)13Cとを有する。PR13Bは、一方の第2のDC変調部25Cから入力したI信号若しくはQ信号を90度回転して90度回転後の垂直偏波の光信号を得る。そして、PR13Bは、垂直偏波の光信号をPBC13Cに入力する。PBC13Cは、PR13Bからの垂直偏波の光信号と、他方の第2のDC変調部25Cから入力した水平偏波の光信号とを合波して偏波多重信号を出力する。
【0038】
第2の復路部27内のLN導波路27Aと出力部13内のLN導波路13Aとの間にタップカプラ30を配置する。タップカプラ30は、LN導波路27AとLN導波路13Aとの間に配置し、LN導波路27Aから入力した光の一部をモニタ光として出力すると共に、残りの光を出力部13内のLN導波路13Aに出力する。タップカプラ30は、LN導波路27Aからタップカプラ30内を通過する光の位相差に応じた分岐比で、LN導波路27A内を通過する光の一部を分岐する遅延干渉計300を有する。
【0039】
図3は、タップカプラ30の構成の一例を示す平面模式図である。
図3に示すタップカプラ30の遅延干渉計300は、第1のカプラ31と、第2のカプラ32と、第1のカプラ31と第2のカプラ32との間を光結合する第1の導波路33及び第2の導波路34と、モニタ35とを有する。
【0040】
第1のカプラ31は、LN導波路27Aからの光を入力し、入力した光を第1の導波路33及び第2の導波路34に分岐出力するMMI(Multi Mode Interference)カプラである。尚、カプラは、例えば、方向性結合カプラと、MMIカプラとの2種類がある。方向性結合カプラの分岐比は、導波路の幅の依存性が高く、導波路の幅の製造誤差で分岐比が変化してしまう。これに対して、MMIカプラの分岐比は、導波路の幅の依存性が低く、導波路の幅に製造誤差が生じた場合でも分岐比の変動は小さくて済む。従って、第1のカプラ31はMMIカプラを採用した。第1のカプラ31は、2入力及び2出力のMMIカプラである。
【0041】
第1の導波路33は、薄膜LN基板53で形成され、第1のカプラ31から分岐した一方の光を第2のカプラ32に入力する導波路である。第2の導波路34は、薄膜LN基板53で形成され、第1のカプラ31から分岐した他方の光を第2のカプラ32に入力する導波路である。第2の導波路34は、第1の導波路33に比較して光学長を長くして遅延部を構成することになる。例えば、第2の導波路34は、第1の導波路33の光の伝播方向(結晶軸のY軸方向)と異なる光の伝播方向(結晶軸の略Z軸方向)の部分を含む曲線状の導波路である。つまり、第2の導波路34は、例えば、第1の導波路33の導波路長に比較して長くした。その結果、第1の導波路33の通過する一方の光と第2の導波路34を通過する他方の光との間に位相差が生じることになる。
【0042】
第2のカプラ32は、第1の導波路33から入力した一方の光と、第2の導波路34から入力した他方の光とを合波し、合波後の位相差のある光を当該位相差に応じた分岐比で分岐する。第2のカプラ32は、合波した光の一部をモニタ光としてモニタ35に出力すると共に、残りの光をLN導波路13Aに出力する。第2のカプラ32は、MMIカプラである。モニタ35は、第2のカプラ32で分岐したモニタ光を受光し、モニタ光の光強度をモニタ結果としてDSP3に出力する。DSP3は、モニタ35のモニタ結果に基づき、第1のDC変調部12F、RF変調部23B及び第2のDC変調部25Cに印加する駆動電圧を調整する。
【0043】
次に、実施例1の光変調器5の構成について、具体的に説明する。
図4は、第1のDC変調部21Fの一例を示す略断面図である。尚、説明の便宜上、
図2に示す第1のDC変調部21Fは4個のMZ干渉計で構成する場合を例示したが、
図4の略断面図では1個のMZ干渉計で説明する。また、第2のDC変調部25Cも、2個のMZ干渉計で構成する場合を例示したが、MZ干渉計単位では、第1のDC変調部21Fと同一の構成であるため、同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
図4に示す第1のDC変調部21Fは、支持基板51と、支持基板51上に積層された中間層52とを有する。更に、第1のDC変調部21Fは、中間層52に積層された、薄膜LN結晶の薄膜LN基板53と、薄膜LN基板53上に積層されたバッファ層54と、電極とを有する。電極14は、第1のDC信号電極14A1及び一対の第1のDC接地電極14B1を有する。
【0044】
支持基板51は、例えば、Si又はLN等の基板である。中間層52は、例えば、SiO2又はTiO2等の屈折率がLNに比較して低い透明材からなる層である。同様に、バッファ層54は、例えば、SiO2又はTiO2等の屈折率がLNに比較して低い透明材からなる層である。
【0045】
薄膜LN基板53は、上方へ突起する突条の薄膜光導波路60である。薄膜光導波路60は、第1のDC変調部21FのLN導波路21Eである。薄膜光導波路60は、リブ60Aと、リブ60Aの両脇にあるスラブ60Bとを有するリブ型の光導波路である。リブ60Aは、リブ60Aの上面と、リブ60Aの側壁面とを有する。尚、薄膜光導波路60は、例えば、LN導波路11A、21A、21C、21E、22A、23A、24A、25B、26A、27A、13A等である。そして、薄膜光導波路60がバッファ層54によって被覆されている。バッファ層54は、薄膜光導波路60を伝搬する光が電極14で吸収されるのを防ぐために設けられる。
【0046】
バッファ層54は、薄膜光導波路60のリブ60Aの上面を被覆すると共に、薄膜光導波路60のスラブ60Bを被覆する。第1のDC信号電極14A1及び一対の第1のDC接地電極14B1は、バッファ層54上に配置されることになる。
【0047】
第1のDC信号電極14A1と第1のDC接地電極14B1との間に位置する薄膜光導波路60は、薄膜光導波路60内のリブ60Aである。第1のDC信号電極14A1及び第1のDC接地電極14B1が位置する薄膜光導波路60は、薄膜光導波路60内のスラブ60Bである。
【0048】
中間層52とバッファ層54との間には、厚みが0.5~3μmの薄膜LN基板53の薄膜光導波路60が挟まれている。薄膜光導波路60となるリブ60Aの幅は、例えば、1~8μm程度である。
【0049】
第1のDC信号電極14A1は、例えば、金や銅等の金属材料からなり、幅が2~10μm、厚みが1~20μmの電極である。第1のDC接地電極14B1は、例えば、金や銅等の金属材料からなり、厚みが1μm以上の電極である。DSP3から出力される電気信号に応じたバイアス電圧が第1のDC信号電極14A1に印加することで、第1のDC信号電極14A1から第1のDC接地電極14B1へ向かう方向の電界が発生し、この電界が薄膜光導波路60に印加される。その結果、薄膜光導波路60への電界印加に応じて薄膜光導波路60の屈折率が変化し、薄膜光導波路60を伝搬する光を変調することが可能となる。
【0050】
タップカプラ30内の第1のカプラ31は、薄膜光導波路60からの光を第1の導波路33及び第2の導波路34に分岐する。第2のカプラ32は、第1の導波路33からの一方の光と、第2の導波路34からの他方の光とを合波し、位相差に応じた分岐比で合波後の光を分岐し、モニタ光をモニタ35に出力すると共に、残りの光を薄膜光導波路60(LN導波路13A)に出力する。
【0051】
モニタ35は、第2のカプラ32からの分岐比に応じたモニタ光を受光し、モニタ光の光強度に応じて第1のDC変調部21F、第2のDC変調部25C、RF変調部23Bの駆動電圧を調整する。
【0052】
実施例1のタップカプラ30は、第1のカプラ31と第2のカプラ32との間に第1の導波路33及び第2の導波路34を配置し、第1の導波路33と第2の導波路34との光学長差に応じて光の位相差が生じ、その位相差に応じた分岐比を設定する。つまり、タップカプラ30の分岐比は第1の導波路33と第2の導波路34との間の光学長の差で決まるため、従来技術のような導波路の幅の製造誤差による影響を受けにくい。その結果、光の閉じ込めの強い薄膜光導波路60であって、タップカプラ30内の導波路幅の製造誤差があった場合でも、タップカプラ30の分岐比を安定化できる。
【0053】
タップカプラ30は、薄膜光導波路60からタップカプラ30内部を通過する光の位相差に応じた分岐比で、通過する光の一部を分岐する遅延干渉計300を有する。その結果、光の閉じ込めの強い薄膜光導波路60であって、タップカプラ30内の導波路幅の製造誤差があった場合でも、タップカプラ30の分岐比を安定化できる。
【0054】
遅延干渉計300内の第2のカプラ32は、第1の導波路33からの一方の光と、第2の導波路34からの他方の光とを合波し、合波後の位相差のある光を当該位相差に応じた分岐比で分岐する。その結果、タップカプラ30の分岐比を安定化できる。
【0055】
また、タップカプラ30の第1のカプラ31及び第2のカプラ32はMMIカプラを採用したので、導波路の幅に製造誤差が生じた場合でも分岐比の変動を小さくできる。
【0056】
尚、実施例1のタップカプラ30では、第1の導波路33及び第2の導波路34を通過する光の位相差を調整すべく、第1の導波路33及び第2の導波路34の光学長を変える場合を例示した。そして、第1の導波路33及び第2の導波路34の光学長を変える方法として、第2の導波路34の導波路長を第1の導波路33の導波路長に比較して長くして曲線状にする場合を例示した。しかしながら、曲線状に限定されるものではなく、第2の導波路34の導波路長を第1の導波路33に比較して長くすればよく、適宜変更可能である。
【0057】
また、タップカプラ30は、2本の導波路33,34の長さに差をつけることで分岐比を設定する場合を例示したが、例えば、導波路33,34の長さではなく、導波路に印加する駆動電圧を調整して位相差を変えて分岐比を設定しても良く、適宜変更可能である。
【0058】
尚、実施例1のタップカプラ30内の第1のカプラ31は、2入力及び2出力のMMIカプラを例示したが、1入力及び2出力のMMIカプラでもよく、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
1入力及び2出力の第1のカプラ31Aの導波路長のサイズは、2入力及び2出力の第1のカプラ31に比較して物理的に短い。第1のカプラ31の入力は、薄膜光導波路60と光結合し、薄膜光導波路60からの光を第1の導波路33及び第2の導波路34に分岐する。
実施例2のタップカプラ30Aは、2入力×2出力の第1のカプラ31の代わりに、1入力及び2出力の第1のカプラ31Aを使用したので、実施例1のタップカプラ30に比較して光伝播方向のサイズを小型化できる。その結果、光通信装置1の小型化に貢献できる。
尚、実施例1のタップカプラ30では、第1のカプラ31と第2のカプラ32との間を接続する第2の導波路34が遅延部を構成すべく曲線状にする場合を例示した。しかしながら、第2の導波路34の形状を曲線状にした場合、曲線状の第2の導波路34の電界の向きが結晶軸のZ軸方向からそれるため、自発分極の内部電界の向き(Z軸方向)と遅延干渉計300の第2の導波路34内の電界の向きとが異なる。自発分極の内部電界の向き(Z軸方向)と遅延干渉計300の第2の導波路34内の電界の向きとを同一にするタップカプラ30の実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。