(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037935
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】分岐器開通方向表示器
(51)【国際特許分類】
B61L 5/10 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
B61L5/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144777
(22)【出願日】2021-09-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年2月10日発行の第34回鉄道電気テクニカルフォーラム論文集 令和3年6月30日発行の鉄道と電気技術第32巻第7号
(71)【出願人】
【識別番号】590003825
【氏名又は名称】北海道旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 伸治
(72)【発明者】
【氏名】本間 輝
(72)【発明者】
【氏名】森岡 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秀一
(72)【発明者】
【氏名】江川 貴裕
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161SS22
(57)【要約】
【課題】雪害による破損を防止しながら、開通方向の認識し易さを向上する。
【解決手段】分岐器開通方向表示器10は、軸棒16に十字状に接続された4枚の表示板14A~14Dを有する表示部12と、軸棒16の下端から二股状に延びてU字状の切り欠き部22を形成し、第1回転位置と第2回転位置との間の90度の範囲で回転可能に保持されたクランク部20と、転換ローラ32を有し、リンク機構102の駆動時に転換ローラ32が切り欠き部22に遊嵌しながら移動して、クランク部20を第1回転位置又は第2回転位置へと回転させる表示用駆動機構30とを含む。これにより、2本の軌道の開通方向表示が、左右に並ぶ2枚の表示板14A、14C又は14B、14Dにより同時に表示されるため、開通方向の認識し易さを向上することができる。又、表示部12が軌間外に設置されるため、雪塊等が表示板14A~14Dへ衝突することを防止できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌間外で転てつ機から延びるリンク機構に接続されたクランク装置により、スイッチアジャスタを介して可動レールを移動させる分岐器のための分岐器開通方向表示器であって、
上下方向に延びる軸棒に対して、平面視で前記軸棒を中心とした十字状に配置される態様で端縁が接続された4枚の表示板を有し、該4枚の表示板の各々の少なくとも一方の面に、開通或いは非開通を示す表示が設けられ、軌間外に設置される表示部と、
前記軸棒の下端に接続され、平面視でU字状の切り欠き部を形成するように前記軸棒から二股状に延び、前記軸棒を回転軸として該軸棒と共に、第1回転位置と第2回転位置との間の90度の範囲で回転可能に保持されたクランク部と、
前記切り欠き部に遊嵌する大きさの転換ローラを有し、前記転てつ機により前記リンク機構が駆動される際に、前記転換ローラが前記切り欠き部に遊嵌しながら移動して、前記クランク部を前記第1回転位置又は前記第2回転位置へと回転させるように、前記リンク機構に接続された表示用駆動機構と、を含むことを特徴とする分岐器開通方向表示器。
【請求項2】
前記表示用駆動機構は、一端側の上方面に前記転換ローラが取り付けられたフラットバーと、前記転換ローラが直線的に移動するように前記フラットバーを案内する複数のガイドローラと、一端が前記フラットバーの他端側に対して回動可能にピン接続されると共に、他端が前記リンク機構に対して回動可能にピン接続された長尺状の伝達部と、を含み、
前記転換ローラは、前記リンク機構が前記転てつ機により最小ストロークまで移動されるとき、前記切り欠き部に遊嵌しながら前記クランク部を前記第1回転位置へと回転させた後、前記切り欠き部から抜け出し、且つ、前記リンク機構が前記転てつ機により最大ストロークまで移動されるとき、前記切り欠き部に遊嵌しながら前記クランク部を前記第2回転位置へと回転させた後、前記切り欠き部から抜け出すように、直線的に移動することを特徴とする請求項1記載の分岐器開通方向表示器。
【請求項3】
前記表示部は、前記4枚の表示板のうち、平面視で互いに直交する位置関係にある2枚の表示板の表裏面に開通を示す表示が設けられると共に、残りの2枚の表示板の表裏面に非開通を示す表示が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の分岐器開通方向表示器。
【請求項4】
前記クランク部は、直線的に移動する転換ローラによって回転され、
前記表示部及び前記クランク部は、平面視で、前記軸棒が前記転換ローラの移動軌跡から離れた位置に設置されることで、前記表示用駆動機構に対してオフセットした位置に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の分岐器開通方向表示器。
【請求項5】
前記表示部及び前記クランク部は、平面視で、前記転換ローラの移動方向と直交する方向を対称軸とした線対称形状ないし略線対称形状を有すると共に、前記表示用駆動機構から分割可能な構成を有し、
前記表示部及び前記クランク部は、前記表示用駆動機構と組み付けられる際、前記軸棒の延在方向と平行な回転軸で180度回転されて向きが切り替えられることにより、前記転換ローラの移動軌跡を縦方向とした平面視で、前記軸棒が前記転換ローラの移動軌跡から右側に離れた位置に設置されて、前記表示用駆動機構に対して右側にオフセットした位置に組み付けられるか、或いは、前記軸棒が前記転換ローラの移動軌跡から左側に離れた位置に設置されて、前記表示用駆動機構に対して左側にオフセットした位置に組み付けられることを特徴とする請求項4記載の分岐器開通方向表示器。
【請求項6】
前記表示部、前記クランク部及び前記表示用駆動機構を覆うカバー部材を含み、
該カバー部材は、軌道の長手方向に対向する位置で前記表示部を覆う部位が、透明の材料で形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の分岐器開通方向表示器。
【請求項7】
前記リンク機構を覆っている防雪カバー内に前記表示用駆動機構の一部が配置される態様で、前記防雪カバーに対して取り付けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の分岐器開通方向表示器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐器開通方向表示器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主に鉄道の保守用車両により確認される、鉄道軌道の分岐器のための分岐器開通方向表示器には、様々な種類のものがある。例えば
図9に示す分岐器開通方向表示器120は、転てつ機100によりリンク機構102及びクランク装置104、106を介して駆動される、可動レール112を移動させるためのスイッチアジャスタ108、110のうち、一方のスイッチアジャスタ110に接続されたものである。すなわち、分岐器開通方向表示器120は、スイッチアジャスタ110にリンク機構122を介して接続された2枚の表示板124、126が、転てつ機100によるスイッチアジャスタ110の
図9における左右方向の移動に伴い、90度回転されて各々の表示内容が切り替えられるようになっている。一方、特許文献1、2には、
図9の例と異なる方式で分岐器の開通方向を表示する表示器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3028525号公報
【特許文献2】特開2010-260511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、
図9に示した従来の分岐器開通方向表示器120は、軌道内に設置されているため、比較的寒い地方で使用される場合、列車の通過に伴って飛散する雪塊等が表示板124、126に激突し、表示板124、126が破損する虞がある。これを回避するために、冬季は表示板124、126等を取り外し、春季になると再設置することが行われていたが、取り外している期間は開通方向表示が確認できないのは勿論のこと、取り外しや再設置に手間がかかっていた。これに対し、特許文献1、2の分岐器開通方向表示器は、何れも表示部分が軌間外に設置されるものであって、この点では雪害が起こり難いが、開通方向の表示方法に改善の余地がある。すなわち、特許文献1の分岐器開通方向表示器は、間隔を空けて設置された2枚の反射板と、それらの何れかの反射板に隣接する如く見えるように移動される1枚の反射板との組み合わせにより、開通方向を表示するものであるため、天気等の条件に応じて何れの軌道が開通しているのかを認識することが困難な場合がある。又、特許文献2の分岐器開通方向表示器は、その表示部分が分岐する2本の軌道の両側に分かれて設置され、何れか一方の表示部分が視認されるように双方の表示部分を移動させることで、開通方向を表示するものであるため、表示部分が見えるか否かを結局双方について確認しなければならず、提示される開通方向も直感的に分かり難いものであった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、雪害による破損を防止しながら、開通方向の認識し易さを向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)軌間外で転てつ機から延びるリンク機構に接続されたクランク装置により、スイッチアジャスタを介して可動レールを移動させる分岐器のための分岐器開通方向表示器であって、上下方向に延びる軸棒に対して、平面視で前記軸棒を中心とした十字状に配置される態様で端縁が接続された4枚の表示板を有し、該4枚の表示板の各々の少なくとも一方の面に、開通或いは非開通を示す表示が設けられ、軌間外に設置される表示部と、前記軸棒の下端に接続され、平面視でU字状の切り欠き部を形成するように前記軸棒から二股状に延び、前記軸棒を回転軸として該軸棒と共に、第1回転位置と第2回転位置との間の90度の範囲で回転可能に保持されたクランク部と、前記切り欠き部に遊嵌する大きさの転換ローラを有し、前記転てつ機により前記リンク機構が駆動される際に、前記転換ローラが前記切り欠き部に遊嵌しながら移動して、前記クランク部を前記第1回転位置又は前記第2回転位置へと回転させるように、前記リンク機構に接続された表示用駆動機構と、を含む分岐器開通方向表示器。
【0008】
本項に記載の分岐器開通方向表示器は、表示部、クランク部、及び表示用駆動機構を含み、表示部は、軌間外に設置されるものであり、開通方向を表示するための表示板を4枚有している。4枚の表示板は、上下方向に延びる軸棒に対して接続され、この際、平面視で軸棒を中心とした十字状に配置されるように、4枚の表示板の各々の端縁が軸棒に接続される。又、これら4枚の表示板の各々は、少なくとも一方の面に、開通或いは非開通を示す表示が設けられている。開通を示す表示が設けられる表示板及びその面と、非開通を示す表示が設けられる表示板及びその面とは、適用先の分岐器において分岐器開通方向表示器として適切に機能するように、少なくとも後述する表示内容の条件を満たす範囲で、任意に設定される。
【0009】
クランク部は、上記のように4枚の表示板が接続された軸棒の下端に接続され、平面視でU字状の切り欠き部を形成するように軸棒から二股状に延びている。又、クランク部は、軸棒を回転軸としてこの軸棒と共に回転するように保持されており、この際、第1回転位置と第2回転位置との間の90度の範囲で回転するように保持されている。従って、クランク部が回転すると、軸棒に接続された4枚の表示板も、軸棒を回転軸として同時に回転することになり、クランク部と同様に90度の範囲で回転される。これにより、クランク部が第1回転位置にあるときに所定方向から正面視される2枚の表示板は、クランク部が第2回転位置へ回転されると、所定方向に面さずに所定方向と平行になるため、所定方向から視認されなくなる。これに替えて、クランク部が第1回転位置にあるときには所定方向から視認されなかった別の2枚の表示板が、クランク部が第2回転位置へ回転されると、所定方向から視認されるようになる。このため、上述した4枚の表示板の表示内容の条件は、クランク部が第1回転位置にあるときに所定方向から正面視される2枚の表示板によって左右に表示される内容と、クランク部が第2回転位置にあるときに同じ所定方向から正面視される別の2枚の表示板によって左右に表示される内容とが、左右で開通と非開通とが逆になることである。
【0010】
一方、表示用駆動機構は、クランク装置及びスイッチアジャスタを介して可動レールを移動させるために、クランク装置に接続されたリンク機構が転てつ機により駆動される際、そのリンク機構の動きを利用してクランク部を回転させるように、リンク機構に接続されている。すなわち、表示用駆動機構は、クランク部に形成された切り欠き部に遊嵌する大きさの転換ローラを有しており、転てつ機によりリンク機構が駆動される際のリンク機構の動きを受けて、転換ローラを移動させる。このとき、転換ローラをクランク部の切り欠き部に遊嵌させながら移動させることで、クランク部を第1回転位置又は第2回転位置へと回転させる。これにより、軌道の開通方向が切り替えられる際のリンク機構の駆動に伴って、クランク部が第1回転位置又は第2回転位置へと回転するため、リンク機構の駆動の前後で、所定方向から視認される表示部の開通方向表示が、上述したように左右で反対に切り替えられることになる。
【0011】
従って、上記の所定方向が軌道の向きに合うように表示部が設置されることで、軌道を進む車両に対して、上述したように適切に切り替えられる開通方向表示が提示されるものとなる。しかも、分岐する2本の軌道の開通方向表示が、左右に並ぶ2枚の表示板により同時に表示されることから、直感的に認識され、開通方向の認識し易さが向上されるものである。又、表示板を有する表示部が軌間外に設置されるため、列車の通過に伴って飛散する雪塊等が表示板へ衝突して破損することが防止され、更に、表示板の直下に位置するクランク部と、軌間外に設置されるリンク機構とクランク部とを接続する表示用駆動機構との双方も、必然的に軌間外に設置されることになる。このため、冬季に取り外す手間や春季に再設置する手間等が省かれるものとなる。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記表示用駆動機構は、一端側の上方面に前記転換ローラが取り付けられたフラットバーと、前記転換ローラが直線的に移動するように前記フラットバーを案内する複数のガイドローラと、一端が前記フラットバーの他端側に対して回動可能にピン接続されると共に、他端が前記リンク機構に対して回動可能にピン接続された長尺状の伝達部と、を含み、前記転換ローラは、前記リンク機構が前記転てつ機により最小ストロークまで移動されるとき、前記切り欠き部に遊嵌しながら前記クランク部を前記第1回転位置へと回転させた後、前記切り欠き部から抜け出し、且つ、前記リンク機構が前記転てつ機により最大ストロークまで移動されるとき、前記切り欠き部に遊嵌しながら前記クランク部を前記第2回転位置へと回転させた後、前記切り欠き部から抜け出すように、直線的に移動する分岐器開通方向表示器。
【0013】
本項に記載の分岐器開通方向表示器は、表示用駆動機構が、転換ローラに加えて、フラットバー、複数のガイドローラ、及び長尺状の伝達部を含むものである。フラットバーは、その一端側の上方面に転換ローラが取り付けられており、他端側が長尺状の伝達部に接続されている。複数のガイドローラは、転換ローラが直線的に移動するようにフラットバーを案内するものであって、転換ローラの移動方向に沿ってフラットバーを挟み込む位置に配置される。長尺状の伝達部は、全体として長尺状を成すものであり、その一端が上述したようにフラットバーの他端側に接続され、このとき、フラットバーの他端側に対して回動可能にピン接続される。又、長尺状の伝達部の他端も、転てつ機から延びるリンク機構に対して回動可能にピン接続され、これにより、転てつ機によって駆動される際のリンク機構の動きが、ピン接続による可動部分を有する長尺状の伝達部及び複数のガイドローラを介して、フラットバー及びこれに取り付けられた転換ローラの直線運動に変換されて伝達される。
【0014】
そして、転換ローラは、リンク機構が転てつ機により最小ストロークまで移動されるとき、クランク部に設けられた切り欠き部に遊嵌しながらクランク部を第1回転位置へと回転させた後、切り欠き部から抜け出すまで直線的に移動する。更に、転換ローラは、リンク機構が転てつ機により最大ストロークまで移動されるとき、クランク部の切り欠き部に遊嵌しながらクランク部を第2回転位置へと回転させた後、切り欠き部から抜け出すまで直線的に移動する。従って、リンク機構の大きなストロークは、転換ローラが切り欠き部から抜けて移動し続けることでクランク部には伝達されないため、大きなストロークから必要な運動量のみが利用されてクランク部が90度回転されるものとなる。又、複数の分岐器に対して、同じ大きさの部材が使用された表示用駆動機構等が適用されるものとなり、更に軌間外に設置されることから軌道の形状等に応じて部材の大きさが変わることはないため、部材の共通化によりコストが低減されるものである。
【0015】
(3)上記(1)(2)項において、前記表示部は、前記4枚の表示板のうち、平面視で互いに直交する位置関係にある2枚の表示板の表裏面に開通を示す表示が設けられると共に、残りの2枚の表示板の表裏面に非開通を示す表示が設けられている分岐器開通方向表示器。
本項に記載の分岐器開通方向表示器は、表示部の4枚の表示板のうち、平面視で互いに直交する位置関係にある2枚の表示板の表裏面に、開通を示す表示が設けられ、同じく平面視で互いに直交する位置関係にある、残りの2枚の表示板の表裏面に、非開通を示す表示が設けられたものである。このため、4枚の表示板のうち何れの表示板を正面或いは裏面から視た場合でも、その表示板と平行に配置されたもう1枚の表示板も同時に視認され、しかも、それら同時に視認される2枚の表示板に、開通を示す表示と非開通を示す表示との、互いに異なる表示が設けられることになる。従って、上記(1)項に記載した4枚の表示板の表示内容の条件を容易に満たすものとなり、更に、4枚の表示板の各々は、表裏面で同じ表示内容が設けられているため、軌道の前後何れの方向に進む車両に対しても、同じ内容の開通方向表示が提示されるものとなる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)項において、前記クランク部は、直線的に移動する転換ローラによって回転され、前記表示部及び前記クランク部は、平面視で、前記軸棒が前記転換ローラの移動軌跡から離れた位置に設置されることで、前記表示用駆動機構に対してオフセットした位置に配置される分岐器開通方向表示器。
本項に記載の分岐器開通方向表示器は、クランク部が直線的に移動する転換ローラによって回転され、この際の転換ローラの移動方向は、転換ローラにより上下方向に延びる軸棒を回転軸としてクランク部を回転させることから、水平面に沿った方向となる。そして、このようなクランク部及び表示部は、平面視で、軸棒が転換ローラの直線的な移動軌跡から離れた位置に設置されることで、表示用駆動機構に対してオフセットした位置に配置される。
【0017】
すなわち、平面視で転換ローラの移動方向と直交する当該方向について、軸棒が転換ローラの移動軌跡から離れた位置にあるため、軸棒の下端に接続されたクランク部と、軸棒に平面視で十字状に接続された4枚の表示板を有する表示部とは、転換ローラの移動軌跡の位置を当該方向の中心と仮定した場合の表示用駆動機構に対して、当該方向についてオフセットした位置に配置されることになる。これにより、当該方向が軌道の幅方向と一致するように設置されることで、クランク部を挟んで表示用駆動機構の上側に位置することとなる表示部が、表示用駆動機構よりも軌道から離れた位置に設置されるため、軌道の建築限界に容易に対応するものとなる。
【0018】
(5)上記(4)項において、前記表示部及び前記クランク部は、平面視で、前記転換ローラの移動方向と直交する方向を対称軸とした線対称形状ないし略線対称形状を有すると共に、前記表示用駆動機構から分割可能な構成を有し、前記表示部及び前記クランク部は、前記表示用駆動機構と組み付けられる際、前記軸棒の延在方向と平行な回転軸で180度回転されて向きが切り替えられることにより、前記転換ローラの移動軌跡を縦方向とした平面視で、前記軸棒が前記転換ローラの移動軌跡から右側に離れた位置に設置されて、前記表示用駆動機構に対して右側にオフセットした位置に組み付けられるか、或いは、前記軸棒が前記転換ローラの移動軌跡から左側に離れた位置に設置されて、前記表示用駆動機構に対して左側にオフセットした位置に組み付けられる分岐器開通方向表示器。
【0019】
本項に記載の分岐器開通方向表示器は、表示部及びクランク部が、平面視で、直線的に移動する転換ローラの移動方向と直交する方向を対称軸とした、線対称形状ないし略線対称形状を有しているものである。これにより、表示部及びクランク部は、軸棒の延在方向(上下方向)と平行な回転軸で180度回転されると、転換ローラの移動方向を基準として左右が反転するような構成となる。更に、表示部及びクランク部は、表示用駆動機構から分割可能な構成を有しており、上記のように180度回転される前後の2つの向きで、表示用駆動機構に対して組み付けられるようになっている。
【0020】
すなわち、一方の向きでは、転換ローラの移動軌跡を縦方向とした平面視で、軸棒が転換ローラの移動軌跡から右側に離れた位置に設置されて、表示部及びクランク部が、表示用駆動機構に対して右側にオフセットした位置に組み付けられる。又、もう一方の向きでは、同じく転換ローラの移動軌跡を縦方向とした平面視で、軸棒が転換ローラの移動軌跡から左側に離れた位置に設置されて、表示部及びクランク部が、表示用駆動機構に対して左側にオフセットした位置に組み付けられる。これにより、転てつ機やリンク機構等が軌道の右側或いは左側の何れにあっても、表示部及びクランク部の向きが上記のように180度切り替えられることで、各部位を構成する部材が変更されることなく、建築限界に対応しながら設置されるものとなる。
【0021】
(6)上記(1)から(5)項において、前記表示部、前記クランク部及び前記表示用駆動機構を覆うカバー部材を含み、該カバー部材は、軌道の長手方向に対向する位置で前記表示部を覆う部位が、透明の材料で形成されている分岐器開通方向表示器。
本項に記載の分岐器開通方向表示器は、更に、表示部とクランク部と表示用駆動機構とを覆うカバー部材を含むものであり、これにより、降雪時に表示板や可動部分に雪が付着することが防止されると共に、雪害対策がより万全なものとなり、更に風雨等の影響による劣化も防止されるものである。しかも、カバー部材は、表示部を覆っている部位のうち軌道の長手方向に対向する部位が、透明の材料で形成されているため、表示部の表示板による開通方向表示がカバー部材により妨げられることはなく、軌道を進む車両に対して良好に提示されるものである。
【0022】
(7)上記(1)から(6)項において、前記リンク機構を覆っている防雪カバー内に前記表示用駆動機構の一部が配置される態様で、前記防雪カバーに対して取り付けられる分岐器開通方向表示器。
本項に記載の分岐器開通方向表示器は、転てつ機から延びるリンク機構が、雪害対策等のために防雪カバーによって覆われている場合に適合したものであり、その防雪カバー内に表示用駆動機構の一部が配置される態様で、防雪カバーに対して取り付けられるものである。すなわち、表示用駆動機構は、リンク機構に接続されるものであるため、少なくともその接続部分がリンク機構を覆う防雪カバー内に配置されることで、リンク機構から表示用駆動機構へと問題なく力が伝達されるものとなる。更に、上記(6)項に記載したように、分岐器開通方向表示器がカバー部材を含む場合は、このカバー部材ごと防雪カバーに対して取り付けられ、リンク機構と共に適切な雪害対策が施されることとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上記のような構成であるため、雪害による破損を防止しながら、開通方向の認識し易さを向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器を周辺の分岐器と共に示した平面図である。
【
図2】
図1の分岐器開通方向表示器の周辺を拡大した平面図である。
【
図3】
図1の分岐器開通方向表示器の斜視図であり、(a)と(b)とで異なる角度から図示している。
【
図4】
図1の分岐器開通方向表示器を表示部及びクランク部と表示用駆動機構とに分割したイメージ図である。
【
図5】
図4の状態のクランク部を裏側から示すイメージ図である。
【
図6】
図1の分岐器開通方向表示器の動作イメージを、カバー部材を透過して模式的に示したイメージ斜視図であり、(a)は表示用駆動機構のフラットバーが押し込まれていない状態、(b)は表示用駆動機構のフラットバーが途中まで押し込まれた状態、(c)は表示用駆動機構のフラットバーが最大まで押し込まれた状態である。
【
図7】
図6(c)の状態にある分岐器開通方向表示器及びその周辺の平面図である。
【
図8】表示部及びクランク部が180度回転されて表示用駆動機構に組み付けられた状態の、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器の周辺の平面図である。
【
図9】従来の分岐器開通方向表示器を示しており、(a)は分岐器周辺の平面図、(b)は(a)における上方から視た正面イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は同一符号で示している。又、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略する。
図1には、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10の設置例を示しており、分岐器開通方向表示器10が適用された分岐器の周辺が図示されている。
図1の分岐器は、転てつ機100により可動レール112を移動させるものであって、それらの間にリンク機構102、クランク装置104、106、及びスイッチアジャスタ108、110が介在している。すなわち、軌道の進路が転換される際には、転てつ機100によりリンク機構102を介してクランク装置104、106が駆動され、これによってクランク装置104、106がスイッチアジャスタ108、110を
図1の左右方向に移動させることで、可動レール112が
図1の左右方向に切り替えられるものである。
【0026】
リンク機構102は、転てつ機100により主に
図1の上下方向に駆動され、
図1では、
図1の下側へ駆動された最小ストロークの状態にある。この状態では、可動レール112が
図1の左側へ移動されており、
図1の右側の軌道が開通し、左側の軌道が非開通の状態である。又、リンク機構102の
図1における上側の一部は、クランク装置106と共に防雪カバー96で覆われており、
図1ではこの防雪カバー96の上面を透過して図示している。なお、リンク機構102全体、クランク装置104、及び転てつ機100等が防雪カバー96で覆われていてもよい。そして、上記のような分岐器に適用された分岐器開通方向表示器10は、軌間外でリンク機構102に接続されて設置されている。
【0027】
図2は、
図1の分岐器開通方向表示器10周辺を拡大して示しており、
図3は、分岐器開通方向表示器10単体を斜視図で示している。なお、
図2には、後述するカバー部材50の上面板62が透過された状態の分岐器開通方向表示器10が、単体で
図2の左側に図示されると共に、後述するカバー部材50のクランクケース70までが透過された状態の分岐器開通方向表示器10が、リンク機構102に接続されて
図2の右側に図示されている。
図2及び
図3に示されるように、分岐器開通方向表示器10は、表示部12、クランク部20、表示用駆動機構30、及びカバー部材50を含んでいる。カバー部材50は、表示部12を覆う表示部ケース52と、クランク部20を覆うクランクケース70と、表示用駆動機構30を覆う駆動機構ケース80とで大略構成されている。
【0028】
表示部12は、上下方向に延びる軸棒16に接続された4枚の表示板14A~14Dを含み、4枚の表示板14A~14Dは、特に
図2で確認できるように、平面視で十字状に配置されるように軸棒16へ接続されている。本実施形態では、4枚の表示板14A~14Dのうち、平面視で直交する位置関係にある2枚の表示板14A及び14Bの表裏面に、開通を示す表示が設けられており、残りの2枚の表示板14C及び14Dの表裏面に、非開通を示す表示が設けられている。表示板14A~14Dの各々に設けられた表示内容については、
図6で良く確認できる。表示板14A~14Dの各々は、軌道を走る車両の前照灯から照らされたときに、光を反射する素材で形成されている。
【0029】
又、本実施形態では、2枚の表示板14A及び14Bが2段階で直角に折り曲げられた1枚の板材で形成され、2枚の表示板14C及び14Dが2段階で直角に折り曲げられた1枚の板材で形成されているが、これに限定されず、4枚の表示板14A~14Dの全てが別個の板材で形成されていてもよい。軸棒16は、クランクケース70等によって、軸棒16自体を回転軸として回転可能に保持されており、軸棒16を回転軸として4枚の表示板14A~14Dも回転するようになっている。なお、詳しくは後述するが、
図3に示されている表示部12は、
図2の表示部12と異なる回転位置にある状態で図示されている。
【0030】
上記のような構成の表示部12を覆うカバー部材50の表示部ケース52は、対向部54、56、側面板58、60、上面板62、及び下面板64を含んでいる。対向部54、56は、分岐器開通方向表示器10が
図1に示すように軌道に沿って設置された状態で、軌道の長手方向に対向する部位であり、例えばアクリル等の透明の材料で、本実施形態では湾曲して形成されている。側面板58、60は、表示部12の側方を覆う部位であり、上面板62は、表示部12の上方を覆う部位である。表示部ケース52は、同じくカバー部材50のクランクケース70に対して固定されており、この際、表示部12の位置に合わせて、特に
図2で確認できるように、クランクケース70よりも軌道から離れる方向(
図2における左方向)にオフセットされた位置に固定されている。このため、表示部ケース52は、クランクケース70よりも
図2の左側へ突出しており、この突出した部分の底面を下面板64が覆っている。なお、下面板64は
図5にも示されている。側面板58とクランクケース70との双方に接続されて、補強板92が設けられている。
【0031】
クランク部20は、
図6で確認できるように、軸棒16の下端に接続されており、4枚の表示板14A~14Dとクランク部20との間には、
図6での図示は省略しているクランクケース70の上面部72が介在し、軸棒16がクランクケース70の上面部72を貫通して延びている。又、クランク部20は、所謂エスケープクランクと呼ばれるものであって、
図2に示されているように、平面視でU字状の切り欠き部22を形成するように、軸棒16から二股状に延びている。切り欠き部22の開口側には、切り欠き部22から連続してガイド面24、26が広がるように延びており、ガイド面24、26は互いに直交する位置関係にある。クランク部20の二股に分かれる根元近傍に位置する規制面27、28も、互いに直交する位置関係にある。
【0032】
又、クランク部20は、軸棒16の下端に接続されていることで、クランクケース70により、軸棒16を回転軸として回転可能に保持されている。クランク部20が回転する範囲は、
図2に示されている第1回転位置と、後に参照する
図7に示されている第2回転位置との間の、90度の範囲に制限されている。本実施形態では、クランク部20と後述する転換ローラ32との位置関係や、クランク部20とクランクケース70との形状の関係等を利用して、クランク部20の回転範囲を制限しているが、これに限定されるものではなく、クランクケース70等に設けられる規制部材といったものを利用して、クランク部20の回転範囲を制限してもよい。
【0033】
上記のような構成のクランク部20を覆うカバー部材50のクランクケース70は、上面部72の両側下方に側面部74、76が接続されて断面コの字状を成しており、上面部72の上方に表示部ケース52が固定されている。ここで、表示部12及びこれを覆う表示部ケース52と、クランク部20及びこれを覆うクランクケース70とは、表示用駆動機構30及びこれを覆う駆動機構ケース80から分割可能な構成を有している。
図4には、そのように分割された様子が図示されており、
図5には、分割後のクランクケース70の裏面側が図示されている。
図5に示すように、クランクケース70の上面部72の表示部ケース52とは反対の裏面に、上面部72を貫通する軸棒16を介してクランク部20が取り付けられている。すなわち、駆動機構ケース80からクランクケース70が取り外されることのみで、上記のような分割が行われるようになっている。更に、クランクケース70は、詳しくは後述するが、クランク部20の回転範囲を制限する役割も担っている。なお、表示部ケース52の下面板64とクランクケース70の側面部76との双方に接続されて、補強板94が設けられている。
【0034】
表示用駆動機構30は、
図2及び
図3に示されるように、転換ローラ32、フラットバー34、複数のガイドローラ36、及び長尺状の伝達部38を含んでいる。転換ローラ32は、クランク部20の切り欠き部22に遊嵌する大きさのものであって、フラットバー34の一端側の上方面に回転可能に取り付けられている。フラットバー34の他端側には、ピン40を介して長尺状の伝達部38の一端が接続されており、長尺状の伝達部38の他端は、ジョーピン42を介してリンク機構102へ接続されている。このため、フラットバー34と長尺状の伝達部38との間、及び、長尺状の伝達部38とリンク機構102との間は、ピン40及びジョーピン42を介して回転可能になっている。
【0035】
複数のガイドローラ36は、転換ローラ32が直線的に移動するようにフラットバー34を案内するものである。本実施形態では、フラットバー34を挟み込む1対のガイドローラ36がフラットバー34を案内する方向に間隔を空けて3箇所に、合計で6個のガイドローラ36が配置されているが、これに限定されるものではなく、ガイドローラ36の数量や設置位置は任意である。このような構成により、表示用駆動機構30は、リンク機構102が駆動される際のリンク機構102の動きを、ピン接続された長尺状の伝達部38を介して受け、複数のガイドローラ36により案内されるフラットバー34の直線運動に変換することで、転換ローラ32を直線的に移動させるものである。
【0036】
上記のような構成の表示用駆動機構30を覆うカバー部材50の駆動機構ケース80は、平面視矩形の有底無蓋の箱型に、接合板82と側下板86、88とが接続された形状を有している。接合板82は、箱型の前面(
図2における下側の面)に接続されてその面よりも大きく広がっており、この広がった部位に設けられた取付穴が利用されて、リンク機構102等を覆う防雪カバー96に対してボルト等で固定される。又、接合板82には開口部84が設けられており、この開口部84から箱型の底を成す底板90が突出していると共に、開口部84を通ってフラットバー34及び長尺状の伝達部38がリンク機構102まで延びている。すなわち、防雪カバー96にも開口部84に対応した開口が形成されており、防雪カバー96内に底板90の一部やフラットバー34及び長尺状の伝達部38が突出している。上述した複数のガイドローラ36は、底板90に回転可能に取り付けられており、底板90に沿ってフラットバー34が案内される。なお、クランクケース70は、その側面部74、76により駆動機構ケース80の箱型を両側方から挟み込む態様で、駆動機構ケース80に対して組み付けられる。
【0037】
次に、
図6を参照して、軌道進路の転換の際のリンク機構102の動きを利用した、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10の表示切替動作について説明する。なお、
図6では、表示内容を分かり易く示すために、表示板14A~14Dの一部を網掛けして図示している。まず、
図6(a)は、リンク機構102が
図1や
図2に示した最小ストロークの状態にあるときに対応したものであって、この状態では、
図2も参照して、フラットバー34が駆動機構ケース80から最大に引き出され、転換ローラ32がクランク部20の切り欠き部22から抜けて離れた位置にある。転換ローラ32にはクランク部20のガイド面24が接触しており、これによって、
図2における反時計回り方向へのクランク部20の回転が規制されている。又、
図2の状態では、クランク部20がクランクケース70に対して
図5に示すような回転位置にあり、クランク部20の一方の規制面27がクランクケース70の側面部76に近接していることで、
図5における反時計回り方向であって
図2における時計回り方向への、クランク部20の回転が規制されている。このように双方向への回転が規制されることで、
図6(a)及び
図2のクランク部20は、第1回転位置に保持されている。
【0038】
そして、クランク部20が第1回転位置にあるとき、クランク部20と軸棒16を介して接続された4枚の表示板14A~14Dは、
図6(a)の左下側や
図1及び
図2の下側から視た状態、換言すれば、軌道が分岐する方向へ進む車両から視た状態で、以下のようになっている。すなわち、開通を示す表示が設けられた表示板14Aは、視線方向の右側において正面を向いているため、表示部ケース52の透明の材料で形成された対向部54を通して視認される。同様に、非開通を示す表示が設けられた表示板14Cは、視線方向の左側において正面を向いているため、対向部54を通して視認される。これに対し、開通を示す表示が設けられた表示板14Bは、表示板14A、14Cの裏側にあるため視認されず、非開通を示す表示が設けられた表示板14Dは、その表裏面が視線方向と平行になっているため、少なくともその表示内容が視認されることはない。従って、この状態で軌道が分岐する方向へ進む車両から視認される開通方向表示は、
図1の右側の軌道が開通して左側の軌道が非開通である、
図1の軌道の開通状態に対応している。
【0039】
一方、
図6(a)の右上側や
図1及び
図2の上側から視た状態、換言すれば、軌道が合流する方向へ進む車両から視た状態で、4枚の表示板14A~14Dは、以下のようになっている。すなわち、開通を示す表示が設けられた表示板14Aは、視線方向の左側において正面を向いているため、表示部ケース52の透明の材料で形成された対向部56を通して視認され、非開通を示す表示が設けられた表示板14Cは、視線方向の右側において正面を向いているため、対向部56を通して視認される。これに対し、開通を示す表示が設けられた表示板14Bは、その表裏面が視線方向と平行になっているため、少なくともその表示内容が視認されることはなく、非開通を示す表示が設けられた表示板14Dは、表示板14A、14Cの裏側にあるため視認されない。従って、この状態で軌道が合流する方向へ進む車両から視認される開通方向表示も、
図1の軌道の開通状態に対応している。
【0040】
さて、
図6(a)の状態から、リンク機構102が最小ストロークから最大ストロークに向けて、転てつ機100により
図2の主に上方へと駆動されると、リンク機構102の動きを受けて、フラットバー34が、複数のガイドローラ36に案内されながら、
図6(a)における右上側へと移動する。すると、フラットバー34の先端に取り付けられた転換ローラ32が、クランク部20のガイド面24に沿って直線的に移動し、そのままクランク部20の切り欠き部22に遊嵌する。そして、更にフラットバー34が移動し続けることで、転換ローラ32は、切り欠き部22に遊嵌した状態で、クランク部20を平面視で反時計回り方向に回転させながら移動する。
図6(b)は、そのようにしてクランク部20が回転されている途中の状態を示したものであって、クランク部20の回転に伴い、クランク部20と軸棒16を介して接続された4枚の表示板14A~14Dも、平面視で反時計回り方向に回転している。
【0041】
又、
図6(b)の状態から、フラットバー34が
図6(b)における右上側へと更に移動すると、転換ローラ32は、
図6(a)の状態からの比較で、クランク部20を平面視で反時計回り方向に90度回転させた後、クランク部20の切り欠き部22から抜け出る。そして、更にフラットバー34が移動し続けることで、転換ローラ32は、クランク部20のガイド面26に沿って直線的に移動し、やがてリンク機構102の移動が終わってフラットバー34が停止するため、
図6(c)及び
図7に示すような位置で停止する。すなわち、
図6(c)及び
図7は、リンク機構102が最大ストロークの状態にあるときに対応したものであって、この状態では、フラットバー34が駆動機構ケース80内へ最大に押し込まれ、転換ローラ32がクランク部20の切り欠き部22から抜けて離れた位置にある。
【0042】
転換ローラ32にはクランク部20のガイド面26が接触しており、これによって、
図7における時計回り方向へのクランク部20の回転が規制されている。又、
図7の状態では、クランク部20が
図5に示された状態から
図5における時計回り方向に90度回転された位置にあり、クランク部20の他方の規制面28がクランクケース70の側面部76に近接していることで、
図5における時計回り方向であって
図7における反時計回り方向への、クランク部20の回転が規制されている。このように双方向への回転が規制されることで、
図6(c)及び
図7のクランク部20は、第2回転位置に保持されている。なお、
図3に示した分岐器開通方向表示器10は、フラットバー34が駆動機構ケース80内へ最大に押し込まれ、クランク部20が第2回転位置にある状態に対応したものである。
【0043】
そして、クランク部20が第2回転位置にあるとき、クランク部20と軸棒16を介して接続された4枚の表示板14A~14Dは、
図6(c)の左下側や
図7の下側から視た状態、換言すれば、軌道が分岐する方向へ進む車両から視た状態で、以下のようになっている。すなわち、非開通を示す表示が設けられた表示板14Dは、視線方向の右側において正面を向いているため、表示部ケース52の対向部54を通して視認される。同様に、開通を示す表示が設けられた表示板14Bは、視線方向の左側において正面を向いているため、対向部54を通して視認される。これに対し、開通を示す表示が設けられた表示板14Aは、表示板14B、14Dの裏側にあるため視認されず、非開通を示す表示が設けられた表示板14Cは、その表裏面が視線方向と平行になっているため、少なくともその表示内容が視認されることはない。従って、この状態で軌道が分岐する方向へ進む車両から視認される開通方向表示は、
図1の状態から軌道の開通方向が転換された、
図1の右側の軌道が非開通で左側の軌道が開通した場合に対応している。
【0044】
一方、
図6(c)の右上側や
図7の上側から視た状態、換言すれば、軌道が合流する方向へ進む車両から視た状態で、4枚の表示板14A~14Dは、以下のようになっている。すなわち、非開通を示す表示が設けられた表示板14Dは、視線方向の左側において正面を向いているため、表示部ケース52の対向部56を通して視認され、開通を示す表示が設けられた表示板14Bは、視線方向の右側において正面を向いているため、対向部56を通して視認される。これに対し、開通を示す表示が設けられた表示板14Aは、その表裏面が視線方向と平行になっているため、少なくともその表示内容が視認されることはなく、非開通を示す表示が設けられた表示板14Cは、表示板14B、14Dの裏側にあるため視認されない。従って、この状態で軌道が合流する方向へ進む車両から視認される開通方向表示も、
図1の状態から軌道の開通方向が転換された場合に対応している。
【0045】
なお、上記では、リンク機構102が最小ストロークから最大ストロークへと駆動される場合の、分岐器開通方向表示器10の表示切替動作について説明したが、リンク機構102が最大ストロークから最小ストロークへと駆動される場合の表示切替動作は、単に上記の動作の説明が逆になったものである。簡単に説明すると、
図6(c)及び
図7に示すようにクランク部20が第2回転位置にある状態から、フラットバー34が駆動機構ケース80から引き出される方向へ直線的に移動すると、転換ローラ32もクランク部20のガイド面26に沿って直線的に移動し、そのまま切り欠き部22に遊嵌する。そして、転換ローラ32は、切り欠き部22に遊嵌した状態で、クランク部20を平面視で時計回り方向に回転させながら移動し、
図6(b)のような状態になる。更に、転換ローラ32は、
図6(c)の状態からの比較で、クランク部20を平面視で時計回り方向に90度回転させた後、クランク部20の切り欠き部22から抜け出る。その後、転換ローラ32は、クランク部20のガイド面24に沿って直線的に移動して、やがてフラットバー34と共に停止し、このとき、
図6(a)及び
図2に示すように、クランク部20は第1回転位置まで回転されている。
【0046】
ここで、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、
図2~
図5で確認できるように、表示部12及びこれを覆う表示部ケース52と、クランク部20及びこれを覆うクランクケース70とが、平面視で、転換ローラ32の移動方向(すなわち軌道の長手方向)と直交する方向を対称軸とした、線対称形状ないし略線対称形状を有している。更に、
図4に示したように、表示部12及び表示部ケース52と、クランク部20及びクランクケース70とは、表示用駆動機構30及び駆動機構ケース80から分割可能な構成を有している。このため、表示部12、表示部ケース52、クランク部20、及びクランクケース70は、
図2及び
図3に示した状態から、軸棒16の延在方向と平行な回転軸で180度回転されて向きが切り替えられても、表示用駆動機構30及び駆動機構ケース80に対して組み付けられる。
【0047】
具体的に、
図2及び
図3に示した分岐器開通方向表示器10は、軌道の
図2における左側に転てつ機100やリンク機構102が設置されている場合に対応するものであり、軸棒16が転換ローラ32の移動軌跡から
図2の左側に離れた位置に設置されることで、表示部12が表示用駆動機構30に対して左側にオフセットした位置に組み付けられている。これに対し、上述したように180度回転されて向きが切り替えられて、
図4に示すような向きの状態で、表示部12、表示部ケース52、クランク部20、及びクランクケース70が、表示用駆動機構30及び駆動機構ケース80に組み付けられると、
図8に示すような形態になる。
【0048】
すなわち、軸棒16が転換ローラ32の移動軌跡から
図8の右側に離れた位置に設置されることで、表示部12が表示用駆動機構30に対して右側にオフセットした位置に組み付けられ、この形態は、軌道の
図8における右側に転てつ機100やリンク機構102が設置されている場合に対応するものとなる。この形態であっても、リンク機構102の駆動を受けて、クランク部20が第1回転位置及び第2回転位置まで回転され、表示部12による開通方向表示が切り替えられることは、理解されるであろう。参考として、
図8の左図及び右上図には、クランク部20が第1回転位置にある状態を示し、
図8の右下図には、クランク部20が第2回転位置にある状態を示している。
【0049】
なお、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、
図1~
図8に示したような構成に限定されるものではなく、適用先の軌道や分岐器の条件等に応じて、上述した構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成であってもよい。例えば、表示部12は、軌道を分岐方向に進む車両に対してのみ開通方向表示を提示するものであってもよく、4枚の表示板14A~14Dも、適用先の分岐器において分岐器開通方向表示器として適切に機能するように、各々の少なくとも一方の面に開通或いは非開通を示す表示が設けられていればよい。又、表示用駆動機構30は、転換ローラ32を利用してクランク部20を第1回転位置及び第2回転位置へと回転させるものであれば、任意の構成を採用してよい。更に、カバー部材50は、表示部12、クランク部20、及び表示用駆動機構30の少なくとも一部を覆うものであれば、それらの構成及び形状に応じた任意の構成及び形状のものであってよく、極端には、各部位の機能を発揮し得える必要最低限の筐体部分のみの構成であってもよい。又、リンク機構102が防雪カバー96により覆われていない場合は、リンク機構102に対する位置決めの必要精度が確保できる任意の部材を介して、分岐器開通方向表示器10を設置すればよい。
【0050】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、
図1に示すように、軌間外で転てつ機100から延びるリンク機構102に接続されたクランク装置104、106により、スイッチアジャスタ108、110を介して可動レール112を移動させる分岐器に適用されるものである。具体的に、分岐器開通方向表示器10は、
図2及び
図3に示すように、表示部12、クランク部20、及び表示用駆動機構30を含み、表示部12は、軌間外に設置されるものであり、開通方向を表示するための4枚の表示板14A~14Dを有している。4枚の表示板14A~14Dは、上下方向に延びる軸棒16に対して接続され、この際、平面視で軸棒16を中心とした十字状に配置されるように、4枚の表示板14A~14Dの各々の端縁が軸棒16に接続される。又、これら4枚の表示板14A~14Dの各々は、少なくとも一方の面に、開通或いは非開通を示す表示が設けられている。
【0051】
クランク部20は、上記のように4枚の表示板14A~14Dが接続された軸棒16の下端に接続され、平面視でU字状の切り欠き部22を形成するように軸棒16から二股状に延びている。又、クランク部20は、軸棒16を回転軸としてこの軸棒16と共に回転するように保持されており、この際、
図2及び
図6(a)に示すような第1回転位置と、
図7及び
図6(c)に示すような第2回転位置との間の、90度の範囲で回転するように保持されている。従って、クランク部20が回転すると、軸棒16に接続された4枚の表示板14A~14Dも、軸棒16を回転軸として同時に回転することになり、クランク部20と同様に90度の範囲で回転される。
【0052】
これにより、クランク部20が
図2のように第1回転位置にあるときに
図2の下方から正面視される2枚の表示板14A、14Cは、クランク部20が
図7のように第2回転位置へ回転されると、
図7の下方に面さずに下方からの視線と平行になるため、
図7の下方から視認されなくなる。これに替えて、クランク部20が
図2のように第1回転位置にあるときには
図2の下方から視認されなかった別の2枚の表示板14B、14Dが、クランク部20が
図7のように第2回転位置へ回転されると、
図7の下方から視認されるようになる。そして、クランク部20が第1回転位置にあるときに正面視される2枚の表示板14A、14Cによって左右に表示される内容と、クランク部20が第2回転位置にあるときに同じ方向から正面視される別の2枚の表示板14B、14Dによって左右に表示される内容とは、左右で開通と非開通とが逆になっている。
【0053】
一方、表示用駆動機構30は、可動レール112を移動させるためにリンク機構102が転てつ機100により駆動される際、そのリンク機構102の動きを利用してクランク部20を回転させるように、リンク機構102に接続されている。すなわち、表示用駆動機構30は、クランク部20に形成された切り欠き部22に遊嵌する大きさの転換ローラ32を有しており、転てつ機100によりリンク機構102が駆動される際のリンク機構102の動きを受けて、転換ローラ32を移動させる。このとき、
図6に示すように、転換ローラ32をクランク部20の切り欠き部22に遊嵌させながら移動させることで、クランク部20を第1回転位置又は第2回転位置へと回転させる。これにより、軌道の開通方向が切り替えられる際のリンク機構102の駆動に伴って、クランク部20が第1回転位置又は第2回転位置へと回転するため、リンク機構102の駆動の前後で、例えば
図2及び
図7の下方から視認される表示部12の開通方向表示を、上述したように左右で反対に切り替えることができる。
【0054】
従って、
図2及び
図7のように軌道の向きに合わせて表示部12を設置することで、軌道を進む車両に対して、上述したように適切に切り替えられる開通方向表示を提示することができる。しかも、分岐する2本の軌道の開通方向表示が、左右に並ぶ2枚の表示板14A及び14C或いは14B及び14Dにより同時に表示されることから、直感的に認識することができ、開通方向の認識し易さを向上することが可能となる。又、表示板14A~14Dを有する表示部12が軌間外に設置されるため、列車の通過に伴って飛散する雪塊等が表示板14A~14Dへ衝突して破損することを防止することができ、更に、表示板14A~14Dの直下に位置するクランク部20と、軌間外に設置されるリンク機構102とクランク部20とを接続する表示用駆動機構30との双方も、必然的に軌間外に設置されることになる。このため、冬季に取り外す手間や春季に再設置する手間等を省くことができる。
【0055】
又、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、
図2及び
図3に示すように、表示用駆動機構30が、転換ローラ32に加えて、フラットバー34、複数のガイドローラ36、及び長尺状の伝達部38を含むものである。フラットバー34は、その一端側の上方面に転換ローラ32が取り付けられており、他端側が長尺状の伝達部38に接続されている。複数のガイドローラ36は、転換ローラ32が直線的に移動するようにフラットバー34を案内するものであって、転換ローラ32の移動方向に沿ってフラットバー34を挟み込む位置に配置される。長尺状の伝達部38は、全体として長尺状を成すものであり、その一端が上述したようにフラットバー34の他端側に接続され、このとき、フラットバー34の他端側に対してピン40により回動可能にピン接続される。又、長尺状の伝達部38の他端も、転てつ機100から延びるリンク機構102に対してジョーピン42により回動可能にピン接続される。これにより、転てつ機100によって駆動される際のリンク機構102の動きを、ピン接続による可動部分を有する長尺状の伝達部38及び複数のガイドローラ36を介して、フラットバー34及びこれに取り付けられた転換ローラ32の直線運動に変換して伝達することができる。
【0056】
そして、転換ローラ32は、リンク機構102が転てつ機100により最小ストロークまで移動されるとき、
図6(a)に示すように、クランク部20に設けられた切り欠き部22に遊嵌しながらクランク部20を第1回転位置へと回転させた後、切り欠き部22から抜け出すまで直線的に移動する。更に、転換ローラ32は、リンク機構102が転てつ機100により最大ストロークまで移動されるとき、
図6(c)に示すように、クランク部20の切り欠き部22に遊嵌しながらクランク部20を第2回転位置へと回転させた後、切り欠き部22から抜け出すまで直線的に移動する。従って、リンク機構102の大きなストロークは、転換ローラ32が切り欠き部22から抜けて移動し続けることでクランク部20には伝達されないため、大きなストロークから必要な運動量のみを利用してクランク部20を90度回転させることができる。又、複数の分岐器に対して、同じ大きさの部材を使用した表示用駆動機構30等を適用することができ、更に軌間外に設置されることから軌道の形状等に応じて部材の大きさが変わることはないため、部材の共通化によりコストを低減することが可能となる。
【0057】
更に、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、
図6で確認できるように、表示部12の4枚の表示板14A~14Dのうち、平面視で互いに直交する位置関係にある2枚の表示板14A及び14Bの表裏面に、開通を示す表示が設けられ、同じく平面視で互いに直交する位置関係にある、残りの2枚の表示板14C及び14Dの表裏面に、非開通を示す表示が設けられたものである。このため、4枚の表示板14A~14Dのうち何れの表示板を正面或いは裏面から視た場合でも、その表示板と平行に配置されたもう1枚の表示板も同時に視認させることができ、しかも、それら同時に視認される2枚の表示板により、開通を示す表示と非開通を示す表示との、互いに異なる表示を提示することができる。更に、4枚の表示板14A~14Dの各々は、表裏面で同じ表示内容が設けられているため、軌道の前後何れの方向に進む車両に対しても、同じ内容の開通方向表示を提示することが可能となる。
【0058】
又、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、
図2及び
図7に示すように、クランク部20が直線的に移動する転換ローラ32によって回転され、この際の転換ローラ32の移動方向は、転換ローラ32により上下方向に延びる軸棒16を回転軸としてクランク部20を回転させることから、水平面に沿った方向となる。そして、このようなクランク部20及び表示部12は、平面視で、軸棒16が転換ローラ32の直線的な移動軌跡から離れた位置に設置されることで、表示用駆動機構30に対してオフセットした位置に配置される。
【0059】
すなわち、平面視で転換ローラ32の移動方向と直交する当該方向(
図2及び
図7における左右方向、軌道の幅方向)について、軸棒16が転換ローラ32の移動軌跡から離れた位置にあるため、軸棒16の下端に接続されたクランク部20と、軸棒16に平面視で十字状に接続された4枚の表示板14A~14Dを有する表示部12とを、転換ローラ32の移動軌跡の位置を当該方向の中心と仮定した場合の表示用駆動機構30に対して、当該方向についてオフセットした位置に配置することができる。これにより、クランク部20を挟んで表示用駆動機構30の上側に位置することとなる表示部12を、表示用駆動機構30よりも軌道から離れた位置に設置することができるため、軌道の建築限界に容易に対応することが可能となる。
【0060】
更に、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、表示部12及びクランク部20が、
図2及び
図7のような平面視で、直線的に移動する転換ローラ32の移動方向と直交する方向(
図2及び
図7おける左右方向)を対称軸とした、線対称形状ないし略線対称形状を有しているものである。これにより、表示部12及びクランク部20は、軸棒16の延在方向(
図2及び
図7おける紙面と直交する方向)と平行な回転軸で180度回転されると、転換ローラ32の移動方向(
図2及び
図7おける上下方向)を基準として左右が反転するような構成となる。更に、表示部12及びクランク部20は、
図4に示すように、表示用駆動機構30から分割可能な構成を有しており、上記のように180度回転される前後の2つの向きで、表示用駆動機構30に対して組み付けられるようになっている。
【0061】
すなわち、一方の向きでは、
図2及び
図7のような平面視で、軸棒16を転換ローラ32の移動軌跡から左側に離れた位置に設置することで、表示部12及びクランク部20を、表示用駆動機構30に対して左側にオフセットした位置に組み付けることができる。又、もう一方の向きでは、
図8のような平面視で、軸棒16を転換ローラ32の移動軌跡から右側に離れた位置に設置することで、表示部12及びクランク部20を、表示用駆動機構30に対して右側にオフセットした位置に組み付けることができる。これにより、転てつ機100やリンク機構102等が軌道の右側或いは左側の何れにあっても、表示部12及びクランク部20の向きを上記のように180度切り替えることで、各部位を構成する部材を変更することなく、建築限界に対応しながら設置することが可能となる。
【0062】
又、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、
図2及び
図3に示すように、更に、表示部12を覆う表示部ケース52と、クランク部20を覆うクランクケース70と、表示用駆動機構30を覆う駆動機構ケース80とを有する、カバー部材50を含むものである。これにより、降雪時に表示板14A~14Dや可動部分に雪が付着することを防止することができると共に、雪害対策をより万全なものとすることができ、更に風雨等の影響による劣化も防止することが可能となる。しかも、カバー部材50は、表示部12を覆う表示部ケース52の軌道の長手方向に対向する対向部54、56が、透明の材料で形成されているため、表示部12の表示板14A~14Dによる開通方向表示がカバー部材50により妨げられることはなく、軌道の前後何れの方向に進む車両に対しても良好に提示することができる。
【0063】
加えて、本発明の実施の形態に係る分岐器開通方向表示器10は、
図1及び
図2に示すように、転てつ機100から延びるリンク機構102が、雪害対策等のために防雪カバー96によって覆われている場合に適合したものであり、その防雪カバー96内に表示用駆動機構30の一部が配置される態様で、防雪カバー96に対して取り付けられるものである。すなわち、表示用駆動機構30は、リンク機構102に接続されるものであるため、少なくともその接続部分である長尺状の伝達部38やフラットバー34等がリンク機構102を覆う防雪カバー96内に配置されることで、リンク機構102から表示用駆動機構30へと問題なく力を伝達することができる。更に、分岐器開通方向表示器10がカバー部材50を含むことで、このカバー部材50ごと接合板82を介して防雪カバー96に対して取り付けることができ、リンク機構102と共に適切な雪害対策を施すことができる。
【符号の説明】
【0064】
10:分岐器開通方向表示器、12:表示部、14A~14D:表示板、16:軸棒、20:クランク部、22:切り欠き部、30:表示用駆動機構、32:転換ローラ、34:フラットバー、36:ガイドローラ、38:長尺状の伝達部、50:カバー部材、54、56:対向部、96:防雪カバー、100:転てつ機、102:リンク機構、104、106:クランク装置、108、110:スイッチアジャスタ、112:可動レール