(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037947
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】削り節製造装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/28 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
B26D3/28 630G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144792
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】517429112
【氏名又は名称】株式会社千客万来
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】波田野 勇治
(57)【要約】
【課題】魚節を回転鉋盤に押し付けるための押送板を付勢するバネの交換が可能であり、また、削り出し面の変更が可能な削り節製造装置を提供することを課題とする。
【解決手段】支持脚に立設される基板4と、前記基板の背面側に設置されるモータと、前記基板の正面側に設置されて、本体カバーが被せられる削り出し機構とから成り、前記削り出し機構は、前記基板の正面側に配置されて、前記モータにより回転駆動される回転鉋盤6と、魚節を受け入れて回転鉋盤に向けて付勢するガイド枠8とを含み、ガイド枠8は、正面下部同士が連結された一対の側板9と、側板9間に下端部が軸支され、背後からバネ17で付勢されて魚節40を回転鉋盤6に接圧させる押送板15により構成され、バネ17は随時交換可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持脚と、前記支持脚に立設される基板と、前記基板の背面側に設置されるモータと、前記基板の正面側に設置されて、本体カバーが被せられる削り出し機構とから成り、
前記削り出し機構は、前記基板の正面側に配置されて、前記モータにより回転駆動される回転鉋盤と、魚節を受け入れて回転鉋盤に向けて付勢するガイド枠とを含み、
前記ガイド枠は、正面下部同士が連結された一対の側板と、前記側板間に下端部が軸支され、背後からバネで付勢されて前記魚節を前記回転鉋盤に接圧させる押送板により構成され、前記バネは随時交換可能であることを特徴とする削り節製造装置。
【請求項2】
前記基板にバネ挿入孔が形成されると共に、前記基板の背面に、前記バネ挿入孔を開閉するストッパーが設置され、前記ストッパーを開いた状態で前記基板の背面側から前記バネ挿入孔に対して前記バネの挿脱が可能である、請求項1に記載の削り節製造装置。
【請求項3】
前記各側板の上端部に、前記魚節の傾斜度を変更するための調整棒を落とし込むための縦溝が下向きに形成され、前記縦溝の複数箇所に、前記調整棒を導入するための案内溝が斜め横向きに形成されている、請求項1又は2に記載の削り節製造装置。
【請求項4】
支持脚と、前記支持脚に立設される基板と、前記基板の背面側に設置されるモータと、前記基板の正面側に設置されて、本体カバーが被せられる削り出し機構とから成り、
前記削り出し機構は、前記基板の正面側に配置されて、前記モータにより回転駆動される回転鉋盤と、魚節を受け入れて回転鉋盤に向けて付勢するガイド枠とを含み、
前記ガイド枠は、正面下部同士が連結された一対の側板と、前記側板間に下端部が軸支され、背後からバネで付勢されて前記魚節を前記回転鉋盤に接圧させる押送板により構成され、前記各側板には、その上端部に、前記魚節の傾斜度を変更するための調整棒を落とし込むための縦溝が下向きに形成され、前記縦溝の複数箇所に、前記調整棒を導入するための案内溝が斜め横向きに形成されていることを特徴とする削り節製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削り節製造装置に関するものであり、より詳細には、かつお節に代表される魚節を削り出して削り節を製造するための、コンパクトな構成の削り節製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
うどん店やそば店においては、鰹の削り節が大量に用いられる。言うまでもなく、削り節は削りたてが一番香り豊かでおいしいため、削りたてのものを客に提供する店が少なくない。かつお節の削り出しは一般に、鉋形状のかつお節削り器を用いて手作業により行われるが、上記のように大量の削り節を用い、しかも、削りたてのものを提供しようとする店においては、その都度手作業で削り出すことは非効率的で実際的ではない。そこで、自動的に削り節を削出する電動の削り節製造装置が求められる。
【0003】
電動の削り節製造装置としては、従来より種々のものが提案されているが、その多くは削り節製造会社に設置されるような、大型且つ複雑な構成で高価なものであり、うどん店やそば店等のようにスペース的に余裕のない店舗に設置するには適さず、また、客の目に晒されるような態様での使用には不向きである。
【0004】
そこで、コンパクトな構成であって、大型機器の設置スペースのない店舗に設置するのに適し、店頭において客の面前に晒されても特に違和感のない外観を呈し、しかも、刃に加わる負荷に対する対応が十分で、刃先の微妙な露出量調整が可能な削り節製造装置が提唱され、実用化されている(特許第5913152号)。しかし、この提案に係る削り節製造装置の場合は、種類の異なる削り節(削り幅の異なるものや、振りかけに適する細かなもの等)の削成に対応していない点や、魚節を最後まで無駄なく削れないといった点が指摘され、その改良が求められていた。
【0005】
この要望に応えるものとして、支持脚と、前記支持脚に立設される基板の裏面側に設置されるモータと、前記基板の正面側に設置されて、本体カバーにカバーされる削り出し機構とから成り、前記削り出し機構は、前記基板の正面側に配置される回転鉋盤と、魚節を受け入れるガイド枠とを含み、前記回転鉋盤は、前記基板から突出する前記モータの出力軸が挿入される軸筒を有し、前記軸筒は前記出力軸に係脱可能であることを特徴とする削り節製造装置が提案されている(特開2019-98497号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5913152号公報
【特許文献2】特開2019-98497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記提案に係る削り節製造装置によれば、投入された魚節は、常時押送板によって押圧されて回転鉋盤に押し付けられるため、削られて小さくなっても確実に被削され続けるので、無駄なく効率のよい削り出しが可能である。しかし、その装置の場合は、常時押送板を付勢するバネのバネ圧が強いと、特に、刃が新しい場合や魚節の硬度が低い場合に、刃が過剰に魚節に食い込んで、削り過ぎ現象が起きるという問題がある。また、削り出しが進むにつれ、刃が当たる魚節の削り出し面が広がっていき、角が無くなっていくため、削り出し効率が低下してくるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記提案に係る削り節製造装置におけるこのような問題を解決するためになされたもので、魚節を回転鉋盤に押し付けるための押送板を付勢するバネの交換が可能で、魚節の種類、特に硬軟に応じて所望のバネ圧のバネを選択使用することで、過剰な削り出しを抑制することができ、また、削り出しが進んで刃が当たる魚節の削り出し面が広がることにより、削り出し効率が低下することがない削り節製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、支持脚と、前記支持脚に立設される基板と、前記基板の背面側に設置されるモータと、前記基板の正面側に設置されて、本体カバーが被せられる削り出し機構とから成り、
前記削り出し機構は、前記基板の正面側に配置されて、前記モータにより回転駆動される回転鉋盤と、魚節を受け入れて回転鉋盤に向けて付勢するガイド枠とを含み、
前記ガイド枠は、正面下部同士が連結された一対の側板と、前記側板間に下端部が軸支され、背後からバネで付勢されて前記魚節を前記回転鉋盤に接圧させる押送板により構成され、前記バネは随時交換可能であることを特徴とする削り節製造装置である。
【0010】
一実施形態においては、前記基板にバネ挿入孔が形成されると共に、前記基板の背面に、前記バネ挿入孔を開閉するストッパーが設置され、前記ストッパーを開いた状態で前記基板の背面側から前記バネ挿入孔に対して前記バネの挿脱が可能である。また、一実施形態においては、前記各側板の上端部に、前記魚節の傾斜度を変更するための調整棒を落とし込むための縦溝が下向きに形成され、前記縦溝の複数箇所に、前記調整棒を導入するための案内溝が斜め横向きに形成されている。
【0011】
上記課題を解決するための請求項4に記載の発明は、支持脚と、前記支持脚に立設される基板と、前記基板の背面側に設置されるモータと、前記基板の正面側に設置されて、本体カバーが被せられる削り出し機構とから成り、
前記削り出し機構は、前記基板の正面側に配置されて、前記モータにより回転駆動される回転鉋盤と、魚節を受け入れて回転鉋盤に向けて付勢するガイド枠とを含み、
前記ガイド枠は、正面下部同士が連結された一対の側板と、前記側板間に下端部が軸支され、背後からバネで付勢されて前記魚節を前記回転鉋盤に接圧させる押送板により構成され、前記各側板には、その上端部に、前記魚節の傾斜度を変更するための調整棒を落とし込むための縦溝が下向きに形成され、前記縦溝の複数箇所に、前記調整棒を導入するための案内溝が斜め横向きに形成されていることを特徴とする削り節製造装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る削り節製造装置は上記のとおりであって、魚節を回転鉋盤に押し付ける押送板を付勢するバネの交換が可能で、魚節の硬軟、種類等に応じて所望のバネ圧のバネを選択することで、過剰な削り出しを抑制することができ、また、削り出しの進行に対応して刃が当たる魚節の削り出し面の変更が可能であるため、削り出し効率が低下することがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る削り節製造装置の一実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明に係る削り節製造装置の一実施形態の分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る削り節製造装置の一実施形態の本体カバー及び回転鉋盤を外した状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る削り節製造装置の一実施形態におけるガイド枠の構成を示す縦断面図である。
【
図5】本発明に係る削り節製造装置の一実施形態におけるガイド枠の構成を示す縦断面図である。
【
図6】本発明に係る削り節製造装置の一実施形態におけるバネ交換方法を示す斜視図である。
【
図7】本発明に係る削り節製造装置の一実施形態におけるバネ交換方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態につき、添付図面に依拠して説明する。
図1,2は、本発明に係る削り節製造装置の一実施形態の斜視図(組図及び分解図)で、そこに示されるように本装置は、一対の支持脚1と、アングル材2を介して支持脚1間に固定される基板4と、基板4に組付けられる削り出し機構とから成る。
【0015】
削り出し機構は、基板4の背面側に設置される減速機付きモータ5と、基板4の正面側に設置されてモータ5により回転駆動される回転鉋盤6とを含む。また、削り出し機構は、基板4の正面側端部に、かつお節、鯖節等の魚節40を、常時回転鉋盤6の背面に向かうようにガイドするガイド枠8を含む(
図2,3参照)。ガイド枠8は、後端が基板4に固定され、前端の下部同士が連結板10によって連結された一対の側板9,9により構成され、その上面開口が魚節40の投入口となる。
【0016】
また、側板9,9の上端面から、調整棒14を落とし込むための縦溝11が下向きに形成され、縦溝11の上部と下端部に、調整棒14をずらし移動するための横溝12,13が斜め横向きに形成される(
図3~5)。調整棒14は、後述するように、削り出しの進行に伴って魚節40が短くなってきた場合にその取り付け位置を変えることで、魚節40を適切に支持し、その削り部位を変えるために用いられるものである。
【0017】
押送板15は、下端部が側板9,9間の下部において枢軸16に軸支され、その裏面と基板4間に配置されたバネ17により背後から付勢され、投入口から投入された魚節40が、常時回転鉋盤6の背面に接圧するように押圧する。バネ17は、その先端部が押送板15の背面に突設された係合突子18に係合することで支持されて、その横ずれが防止される。
【0018】
魚節40は、押送板15によって常時回転鉋盤6の背面に押し付けられるが、魚節40の硬度は一定ではなく、魚の種類等によって硬軟がある。そして、比較的柔らかな魚節40の場合は、バネ17のバネ圧が強過ぎると、刃が過剰に魚節に食い込んで削り過ぎ現象が起き、削り厚さが不均一、不安定となる。また、刃が新しくて鋭利な場合にも同様の現象が起きる。
【0019】
このような状況に鑑み、本発明においては、バネ17は、削り出し対象の魚節40の種類、硬軟等に応じ、基板4の背面側から、所望のバネ圧のバネ17に交換可能にされる。即ち、基板4にバネ挿入孔19が形成され、基板4の背面に、バネ挿入孔19を開閉するストッパー20が枢着される。ストッパー20は、例えば、溝20aを有する打掛錠のような形態のものであり、溝20aに蝶ナット21をねじ付けたネジ軸を、蝶ナット21を緩めた状態で進入させ、蝶ナット21を締めることで、ロックできるようになっている(
図6)。そして、蝶ナット21を緩めてストッパー20を上方に回動させるとバネ挿入孔19が露見し、その状態でバネ17の装脱が可能となる(
図7)。バネ17は、バネ挿入孔19内に押し縮めるようにして押し込むが、ストッパー20を閉じることでその抜けを防止することができる。
【0020】
モータ5の出力軸22は、基板4を貫いて正面側に出され、そこに回転鉋盤6が取り付けられる。回転鉋盤6には複数の刃取り付け孔が放射状に開設され、そこに刃ユニット24が設置される。図示した例においては、刃ユニット24は90度おきに4つ配置されている。本体カバー7は、その正面に透視可能な透視窓31を備えていて、削り状況を視認できるようになっている。また、本体カバー7の上面に、ガイド枠8が収まる切欠き部32が形成される。本体カバー7は、基板4に対して脱着自在である。
【0021】
上記構成の削り節製造装置を使用するに当たっては、先ず、調整棒14を縦溝11に落とし込み、上側の横溝13にずらし入れておく(
図4)。そして、押送板15をバネ17のバネ圧に抗して後方に引き戻して投入口を広げ、そこに魚節40を投入すると、魚節40は、自重で押送板15に沿って下降する(
図4の仮想線参照)。その状態において押送板15から手を離すと、魚節40は、常時バネ17によって付勢されている押送板15に押され、その前面側の下部が側板9,9間から露出して回転鉋盤6に押し付けられ、以後その状態を維持する。
【0022】
そこで、始動スイッチをオンにすると、モータ5の出力がモータ軸23から回転鉋盤6に伝達され、回転鉋盤6は、刃ユニット24の刃先を先行させて垂直方向に回転する。かくして魚節40は、次々と到来する刃ユニット24によって、削り出されていく。削り出された削り節は、本体カバー7の下面開口から、その下に配置される回収ボックス41内に落ちて回収される。削り節の薄さは、刃ユニット24の刃先の出具合を調整することで任意に設定することができる。
【0023】
削り出しの進行に伴って魚節40が短くなってきたら、調整棒14を下側の横溝13に移す(
図5)。そのようにすることで、魚節40の支持位置が中心寄りになって、より安定した支持が可能となり、同時に、削り出し部位が変わることで、効率のよい削り出しが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る削り節製造装置は上記のとおりであって、魚節を回転鉋盤に押し付ける押送板を付勢するバネの交換が可能で、魚節の硬軟、種類等に応じて所望のバネ圧のバネを選択することで、過剰な削り出しを抑制することができ、また、削り出しの進行に対応して刃が当たる魚節の削り出し面の変更が可能であるため、削り出し効率が低下することがないという効果のあるものであって、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0025】
1 支持脚
2 アングル材
4 基板
5 モータ
6 回転鉋盤
7 本体カバー
8 ガイド枠
9 側板
10 連結板
11 縦溝
12, 13 横溝
14 調整棒
15 押送板
16 枢軸
17 バネ
18 係合突子
19 バネ挿入孔
20 ストッパー
21 蝶ナット
24 刃ユニット