(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037950
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】攪拌装置及びこれを利用した機械攪拌工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144795
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新町 修一
(72)【発明者】
【氏名】木下 尊義
(72)【発明者】
【氏名】山根 千学
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BA02
2D040BA08
2D040CA01
2D040CB03
2D040EA16
2D040EA18
(57)【要約】
【課題】地盤形成土と改良材とを効率よく攪拌し、施工速度を向上させる。
【解決手段】攪拌装置10は、複数の切削刃16により地盤を攪拌する攪拌翼14を有し、改良材及び/又はエアを供給する吐出口が設けられた本体部12と、本体部12の攪拌翼14よりも後端側に、軸回転可能に取り付けられた補助翼20とを含み、補助翼20は、軸部22と軸部22の外周に設けられた補助羽根24とを含み、補助羽根24は、軸部22の回転方向に対し板面が同じ方向に傾いた複数の板羽根26、或いは、螺旋状に設置された1枚以上の板状部材で構成される。これにより、攪拌装置10の地盤への貫入時は、補助翼20の正方向回転による排土によって土圧が軽減され、地盤からの引き抜き時は、補助翼20の逆方向回転による攪拌翼への土砂の送り込みによって攪拌が促進されるため、地盤形成土と改良材とが効率よく攪拌され、施工速度を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置であって、
回転しながら複数の切削刃によって地盤を攪拌する攪拌翼が先端に取り付けられ、該攪拌翼の近傍に改良材及び/又はエアを供給するための吐出口が設けられたロッド状の本体部と、
該本体部の前記攪拌翼よりも後端側に、前記本体部の延在方向に沿って、軸回転可能に取り付けられた長尺の補助翼と、を含み、
該補助翼は、軸部と、該軸部の外周に沿って設けられた補助羽根とを含み、
該補助羽根は、前記軸部の回転方向に対し板面が上下方向及び左右方向について同じ方向に傾いた複数の板羽根、或いは、螺旋状に設置された1枚以上の板状部材で構成されることを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記軸部は、中空の管状をなし、その内部を通して先端から改良材又はエアを吐出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記攪拌翼は、前記本体部の中心軸を挟む態様で一対設けられ、
前記補助翼は、前記本体部の軸方向視で一対の前記攪拌翼に対応する位置に一対設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記重機が、油圧ショベル或いはリーダ付油圧式大口径削孔機であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の攪拌装置。
【請求項5】
重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置を利用して、地盤を改良する機械攪拌工法であって、
前記攪拌装置は、回転しながら複数の切削刃によって地盤を攪拌する攪拌翼が先端に取り付けられ、該攪拌翼の近傍に改良材及び/又はエアを供給するための吐出口が設けられたロッド状の本体部と、該本体部の前記攪拌翼よりも後端側に、前記本体部の延在方向に沿って、軸回転可能に取り付けられた長尺の補助翼と、を含み、
該補助翼は、軸部と、該軸部の外周に沿って設けられた補助羽根とを含み、
該補助羽根は、前記軸部の回転方向に対し板面が上下方向及び左右方向について同じ方向に傾いた複数の板羽根、或いは、螺旋状に設置された1枚以上の板状部材で構成され、
前記攪拌装置の貫入時に、周囲の土砂が上方へ移動される方向へ前記補助翼を軸回転させ、前記攪拌装置の引き抜き時に、周囲の土砂が下方へ移動される方向へ前記補助翼を軸回転させることを特徴とする機械攪拌工法。
【請求項6】
中空の管状をなす前記軸部を用い、該軸部の内部を通して先端から改良材又はエアを吐出することを特徴とする請求項5記載の機械攪拌工法。
【請求項7】
前記攪拌翼を、前記本体部の中心軸を挟む態様で一対設け、
前記補助翼を、前記本体部の軸方向視で一対の前記攪拌翼に対応する位置に一対設けることを特徴とする請求項5又は6記載の機械攪拌工法。
【請求項8】
前記重機として、油圧ショベル或いはリーダ付油圧式大口径削孔機を用いることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項記載の機械攪拌工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置と、これを利用した機械攪拌工法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な建築物を構築するにあたり、現地の地盤が軟弱な場合には地盤改良が行なわれる。地盤改良には種々の工法が存在し、その中の1つである機械攪拌工法では、スラリー化したセメント系固化材などの改良材を供給しながら、モータやチェーン駆動などにより攪拌翼を回転させ、その攪拌翼によって地盤形成土と改良材とを混合攪拌し、地中に改良体を造成する。そのような攪拌翼を備えた攪拌装置は、通常、重機に装着して使用される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、攪拌装置による掘削時には、地盤内に吐出されたセメントスラリーなどの多量の改良材が、掘削された土砂と共に地盤内に溜まると、土圧が高くなって掘削速度に悪影響がでることがあった。また、攪拌された土塊が、吐出されたセメントスラリーなどにより押し上げられる事象に起因して、改良が未熟な土塊部分が生じてしまう結果、引き抜き時の再攪拌や羽根切り回数の増加が必要となり、施工時間が長くなってしまうことがあった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地盤形成土と改良材とを効率よく攪拌し、施工速度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置であって、回転しながら複数の切削刃によって地盤を攪拌する攪拌翼が先端に取り付けられ、該攪拌翼の近傍に改良材及び/又はエアを供給するための吐出口が設けられたロッド状の本体部と、該本体部の前記攪拌翼よりも後端側に、前記本体部の延在方向に沿って、軸回転可能に取り付けられた長尺の補助翼と、を含み、該補助翼は、軸部と、該軸部の外周に沿って設けられた補助羽根とを含み、該補助羽根は、前記軸部の回転方向に対し板面が上下方向及び左右方向について同じ方向に傾いた複数の板羽根、或いは、螺旋状に設置された1枚以上の板状部材で構成される攪拌装置(請求項1)。
【0007】
本項に記載の攪拌装置は、重機の作業機に取り付けられて使用されるものであって、本体部及び補助翼を含んでいる。本体部はロッド状をなし、その先端に、複数の切削刃を有する攪拌翼が取り付けられている。すなわち、本体部は、その後端側が重機の作業機に取り付けられた状態で、先端側の攪拌翼が回転されることで、地盤に貫入されながら複数の切削刃によって地盤を掘削するようになっている。更に、本体部は、攪拌翼の近傍に改良材及び/又はエアを供給するための吐出口が設けられており、その吐出口から改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を掘削することで、地盤形成土と改良材及び/又はエアとが混合攪拌されるものである。
【0008】
補助翼は、本体部の攪拌翼よりも後端側の位置に、本体部の延在方向に沿って取り付けられる長尺状のものであり、このとき、軸回転可能に本体部に取り付けられる。また、補助翼は、軸部と、この軸部の外周に沿って設けられた補助羽根とを含み、補助羽根が、複数の板羽根又は1枚以上の板状部材で構成される。具体的に、補助羽根が複数の板羽根により構成される場合、それら複数の板羽根は、軸部の回転方向に対し、板面が上下方向及び左右方向について同じ方向に傾いた状態で、軸部の外周に設けられる。すなわち、複数の板羽根は、軸部の延在方向が上下方向となる状態で、軸部の外周面に向かって各々が正面視されたときに、2つの板面が左上方向及び右下方向へ向く態様、或いは、2つの板面が左下方向及び右上方向へ向く態様で、全て同じ方向に傾いている。
【0009】
これに対し、補助羽根が1枚以上の板状部材により構成される場合、板状部材は、1枚のときは連続する螺旋状に軸部の外周に設置され、2枚以上のときは断続する螺旋状に軸部の外周に設置される。すなわち、この場合においても、1枚以上の板状部材は、軸部の延在方向が上下方向となる状態で、軸部の外周面に向かって任意の位置から正面視されたときに、2つの板面が左上方向及び右下方向へ向く、或いは、2つの板面が左下方向及び右上方向へ向く態様で、一様に傾いている。これにより、補助翼が一方向(正方向)に軸回転されると、傾いた補助羽根によって上向き(後端向き)の力が周囲に作用し、補助翼が他方向(逆方向)に軸回転されると、傾いた補助羽根によって下向き(先端向き)の力が周囲に作用するようになる。
【0010】
従って、本項に記載の攪拌装置は、地盤へ貫入される掘削時に、補助翼が正方向へ軸回転されることで、攪拌翼によって掘削された本体部の先端近傍に位置する土砂が、攪拌翼の後端側に位置する補助翼の補助羽根によって地面の方へと排出される。これにより、地盤内の土圧が軽減されるため、掘削効率が高められるものとなる。また、地盤からの引き抜き時には、補助翼が逆方向へ軸回転されることで、補助翼の周囲の土砂が、強制的に攪拌されながら攪拌翼の方へと送り込まれ、攪拌翼により攪拌されることになる。これによって、改良が未熟な土塊部分が生じ難くなるため、密実な固化体が造成されるものである。更に、再攪拌や羽根切り回数の増加の必要がなくなり、地盤形成土と改良材とが効率よく攪拌されることから、施工速度が向上されるものとなる。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記軸部は、中空の管状をなし、その内部を通して先端から改良材又はエアを吐出するように構成されている攪拌装置(請求項2)。
本項に記載の攪拌装置は、補助翼の軸部が中空の管状をなすものであり、例えば軸部の後端にスイベルが設置されて改良材又はエアが供給されることで、軸部の内部を通して軸部の先端から改良材又はエアを吐出するように構成されている。これにより、本体部からの改良材やエアの吐出に加え、補助翼の軸部からも改良材やエアが吐出されることになるため、地盤形成土と改良材などとがより効率的に攪拌されると共に、軸部からの攪拌翼へ向けた吐出によって、攪拌翼への土砂などの付着が抑制されるものである。
【0012】
(3)上記(1)(2)項において、前記攪拌翼は、前記本体部の中心軸を挟む態様で一対設けられ、前記補助翼は、前記本体部の軸方向視で一対の前記攪拌翼に対応する位置に一対設けられる攪拌装置(請求項3)。
本項に記載の攪拌装置は、攪拌翼と補助翼との双方が一対設けられるものであって、一対の攪拌翼は、本体部の中心軸を挟む態様で設けられ、また、一対の補助翼は、本体部の軸方向視で、一対の攪拌翼に対応する位置に設けられる。すなわち、本体部の軸方向視で、一方の攪拌翼と一方の補助翼とが少なくとも一部で重なり、他方の攪拌翼と他方の補助翼とが少なくとも一部で重なるような位置関係で設けられる。これにより、本体部の中心軸を挟んだ位置で、一対の攪拌翼によってバランスよく掘削及び攪拌が行われると共に、それぞれの攪拌翼に対応した位置で、一対の補助翼によって排土や攪拌翼への土砂の送り込みが行われる。このため、地盤形成土の掘削や、地盤形成土と改良材との攪拌が、より効率よく行われるものとなる。
【0013】
(4)上記(1)から(3)項において、前記重機が、油圧ショベル或いはリーダ付油圧式大口径削孔機である攪拌装置(請求項4)。
本項に記載の攪拌装置は、取り付け先の重機が油圧ショベル或いはリーダ付油圧式大口径削孔機であり、重機が油圧ショベルであると、主に浅層の地盤を対象とした施工で多く用いられるようになり、また、油圧ショベルは小回りが利くため、様々な条件の現場での施工に対応するものとなる。これに対し、重機がリーダ付油圧式大口径削孔機である場合は、様々な深度での施工に対応するものとなり、更に、リーダ付油圧式大口径削孔機のリーダが攪拌装置のガイドとして作用し、鉛直方向の施工精度の向上が期待されるものである。
【0014】
(5)重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置を利用して、地盤を改良する機械攪拌工法であって、前記攪拌装置は、回転しながら複数の切削刃によって地盤を攪拌する攪拌翼が先端に取り付けられ、該攪拌翼の近傍に改良材及び/又はエアを供給するための吐出口が設けられたロッド状の本体部と、該本体部の前記攪拌翼よりも後端側に、前記本体部の延在方向に沿って、軸回転可能に取り付けられた長尺の補助翼と、を含み、該補助翼は、軸部と、該軸部の外周に沿って設けられた補助羽根とを含み、該補助羽根は、前記軸部の回転方向に対し板面が上下方向及び左右方向について同じ方向に傾いた複数の板羽根、或いは、螺旋状に設置された1枚以上の板状部材で構成され、前記攪拌装置の貫入時に、周囲の土砂が上方へ移動される方向へ前記補助翼を軸回転させ、前記攪拌装置の引き抜き時に、周囲の土砂が下方へ移動される方向へ前記補助翼を軸回転させる機械攪拌工法(請求項5)。
【0015】
(6)上記(5)項において、中空の管状をなす前記軸部を用い、該軸部の内部を通して先端から改良材又はエアを吐出する機械攪拌工法(請求項6)。
(7)上記(5)(6)項において、前記攪拌翼を、前記本体部の中心軸を挟む態様で一対設け、前記補助翼を、前記本体部の軸方向視で一対の前記攪拌翼に対応する位置に一対設ける機械攪拌工法(請求項7)。
【0016】
(8)上記(5)から(7)項において、前記重機として、油圧ショベル或いはリーダ付油圧式大口径削孔機を用いる機械攪拌工法(請求項8)。
そして、(5)から(8)項に記載の機械攪拌工法は、各々、上記(1)から(4)項の攪拌装置を用いて実行されることで、上記(1)から(4)項の攪拌装置に対応する同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のような構成であるため、地盤形成土と改良材とを効率よく攪拌し、施工速度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る攪拌装置の側面図及び正面図である。
【
図2】
図1の攪拌装置を用いて地盤を改良する際の、地盤への貫入時の様子を示す施工イメージ図である。
【
図3】
図1の攪拌装置を用いて地盤を改良する際の、地盤からの引き抜き時の様子を示す施工イメージ図である。
【
図4】
図1の攪拌装置と異なる補助翼の補助羽根の形態を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る攪拌装置10の構成を模式的に示している。図示のように、本発明の実施の形態に係る攪拌装置10は、先端に一対の攪拌翼14(14A、14B)が取り付けられた本体部12、一対の補助翼20(20A、20B)、及び取付部50を含んでいる。
【0020】
本体部12は、攪拌装置10の本体部分を構成するものであって、中空のロッド状をなし、その外側や内側に複数の部材が取り付けられている。例えば本体部12には、地盤改良のための改良材やエアを供給するための配管(図示省略)が取り付けられ、その配管が鋼製のカバー54などにより覆われた状態で、一対の攪拌翼14の近傍まで延びている。そして、その配管の後端側に接続された改良材やエアの供給元から、配管の内部を通して改良材やエアが供給され、配管の先端の吐出口から、改良材及び/又はエアが吐出されるようになっている。なお、このような配管は、改良材とエアとを別々に供給するように2本備えられてもよく、1本の配管から改良材とエアとを同時に、或いは供給元の切り替えにより別々に供給するものであってもよい。
【0021】
一対の攪拌翼14は、本体部12の中心軸を挟む態様で、一方の攪拌翼14Aが
図1(b)における左側に、他方の攪拌翼14Bが
図1(b)における右側に位置するように、本体部12の先端部12aを挟んで互いに反対向きに取り付けられている。これら一対の攪拌翼14A、14Bの各々は、外周に複数の切削刃16が設けられており、後述するモータによって回転されるようになっている。また、一対の攪拌翼14A、14Bは、各々の回転軸が本体部12の延在方向(
図1における上下方向)と直交或いは略直交するように、本体部12の先端部12aに取り付けられている。
図1の実施形態では、各々の回転軸と本体部12の延在方向との間で成される角度が、本体部12の先端側(図中下側)へ向けて90°よりも小さくなるように、僅かに傾斜した状態になっている。
【0022】
一対の攪拌翼14A、14Bは、それぞれモータ(図示省略)を内蔵している。これらのモータは、例えば重機70(
図2及び
図3参照)から供給される動力(油圧など)を利用して、攪拌翼14A、14Bの各々を回転させるものであり、本体部12の内部を通して動力が供給されるようになっている。また、これらのモータは、攪拌翼14の回転方向、回転数、及び回転トルクなどを、個別に制御するようになっていてもよい。このような構成により、攪拌装置10を用いた施工時に、各々が内蔵するモータによって一対の攪拌翼14A、14Bが回転され、攪拌翼14A、14Bの外周に沿って回転移動する複数の切削刃16により、地盤G(
図2及び
図3参照)が掘削及び攪拌されることになる。
【0023】
一対の補助翼20は、一対の攪拌翼14に対応した位置に設けられており、
図1(b)に示すように、一方の攪拌翼14Aの上方に一方の補助翼20Aが設けられ、他方の攪拌翼14Bの上方に他方の補助翼20Bが設けられている。すなわち、本体部12の軸方向視で、一方の攪拌翼14Aと一方の補助翼20Aとが重なる位置関係にあり、他方の攪拌翼14Bと他方の補助翼20Bとが重なる位置関係にある。一対の補助翼20A、20Bの各々は、本実施形態では、中空の管状をなす軸部22と、軸部22の外周に設けられた補助羽根24とを有している。
【0024】
また、一対の補助翼20A、20Bの各々は、本体部12の延在方向に沿って本体部12に、軸回転可能に取り付けられている。具体的には、補助翼20A、20Bは、本体部12の上方(後端側)に設置されたベース部40から、攪拌翼14の近傍まで下方(先端側)へと延び、その中途部分が本体部12に接続された支持部材42によって回転可能に軸支されている。ベース部40には、例えば重機70から供給される油圧などの動力によって回転する2つのモータ34が設置されており、これら2つのモータ34によって、一対の補助翼20A、20Bが個別に軸回転するようになっている。モータ34の各々は、補助翼20の軸回転方向が制御可能になっており、回転数や回転トルクなども制御するようになっていてもよい。なお、一対の補助翼20A、20Bは、本体部12に対して着脱可能に取り付けられることが好ましい。
【0025】
各補助翼20の軸部22は、上述したように中空の管状をなしており、例えば後端に接続されたスイベルを介して、本体部12の配管と同様に改良材やエアの供給元と接続される。そして、軸部22の内部を通して供給された改良材及び/又はエアが、軸部22の先端の吐出口36から、各補助翼20が対応する攪拌翼14へ向けて吐出される。なお、各補助翼20の軸部22からは、改良材とエアとの何れか一方を供給してもよく、改良材とエアとを混合して同時に供給してもよく、或いは、供給元の切り替えによって改良材とエアとの選択された一方が供給されるようになっていてもよい。
【0026】
各補助翼20の補助羽根24は、本実施形態では複数の板羽根26により構成されている。例えば、
図1(b)において一方の補助翼20Aを確認すると、10枚の板羽根26が軸部22の外周に設けられている。それら10枚の板羽根26は、軸部22の外周から図中右側へ突出し、図中手前側に向かって下方へ傾斜した板羽根26と、軸部22の外周から図中左側へ突出し、図中奥側に向かって下方へ傾斜した板羽根26とが、軸部22に沿って上下方向に交互に設けられている。より詳しくは、
図1(b)における右側へ突出した板羽根26の各々は、
図1(b)における右方向からの正面視で、一方の板面が左上方向へ向き、その反対の他方の板面が右下方向へ向いている。これら5枚の板羽根26は、
図1(a)では破線で図示されており、
図1(a)は
図1(b)における左方向から視た図であるため、2つの板面の向きが上記とは左右反対に示されている。
【0027】
また、
図2(b)における左側へ突出した板羽根26の各々は、
図2(b)における左方向からの正面視(
図1(a)に相当)で、一方の板面が左上方向へ向き、その反対の他方の板面が右下方向へ向いている。これら5枚の板羽根26は、
図1(a)において、上記の通りの板面の向きで、実線で図示されている。すなわち、10枚の板羽根26は、何れも、軸部22の外周へ向けた各々の正面視では、2つの板面が左上方向及び右下方向へ向いている。このような構成の補助羽根24を有する補助翼20Aは、
図1における上方から視て反時計回りに軸回転されると、傾斜した板羽根26によって
図1における上方への力が周囲に作用し、時計回りに軸回転されると、傾斜した板羽根26によって
図1における下方への力が周囲に作用する。
【0028】
これに対し、他方の補助翼20Bは、
図1(b)で確認できるように、10枚の板羽根26が、一方の補助翼20Aと左右対称に設けられている。すなわち、補助翼20Bの10枚の板羽根26は、何れも、軸部22の外周へ向けた各々の正面視で、2つの板面が右上方向及び左下方向へ向いている。このため、補助翼20Bは、
図1における上方から視て時計回りに軸回転されると、傾斜した板羽根26によって
図1における上方への力が周囲に作用し、反時計回りに軸回転されると、傾斜した板羽根26によって
図1における下方への力が周囲に作用する。従って、攪拌装置10を用いた施工時に、一対の補助翼20は、モータ34によって任意の方向に軸回転され、それによって回転移動する複数の板羽根26により、周囲の土砂が攪拌及び移動されることになる。
【0029】
一方、取付部50は、上記のような構成の本体部12を、
図2及び
図3に示すように、本実施形態における重機70としての油圧ショベル70Aの、作業機72に対して取り付けるためのものである。より詳しくは、取付部50は、油圧ショベル70Aの前方(図中手前側)において本体部12の先端が下方を向き、かつ、一対の攪拌翼14A、14B及び一対の補助翼20A、20Bが、油圧ショベル70Aの側方向の左側及び右側(図中左側及び右側)に位置するように、本体部12を作業機72に取り付ける。このように油圧ショベル70Aに取り付けられた攪拌装置10は、作業機72の操作によって上下方向に移動され、作業機72の旋回によって旋回移動されるものとなる。
【0030】
次に、
図2及び
図3を参照して、上述したような構成を有する攪拌装置10を使用して地盤Gを攪拌して改良する、本発明の実施の形態に係る機械攪拌工法について説明する。なお、攪拌装置10の構成については、適宜、
図1を参照されたい。
まず、
図2(a)に示すように、重機70(油圧ショベル70A)の作業機72へ、取付部50を介して攪拌装置10を取り付ける。そして、一対の攪拌翼14を回転させながら、作業機72の操作により攪拌装置10を下方へ移動させることで、地盤Gの掘削を開始する。また、一対の攪拌翼14の回転と共に、本体部12の図示しない吐出口から改良材やエアを供給して、地盤Gの形成土とそれらとを混合攪拌する。
【0031】
また、遅くとも一対の補助翼20の先端が地盤G内へ進入するタイミングで、モータ34により一対の補助翼20を軸回転させる。このときの軸回転の方向は、
図2(b)に示すように、一対の補助翼20A、20Bの双方の補助羽根24により、周囲の土砂が上方へ押し上げられる回転方向(正方向)である。更に、状況に応じて、一対の補助翼20の吐出口36から、改良材やエアを供給する。そして、
図2(b)のように地盤Gへの攪拌装置10の貫入を続け、
図2(c)に示すように、設計深度まで攪拌装置10を貫入する。この貫入作業の間、一対の攪拌翼14の回転、本体部12からの改良材やエアの供給、一対の補助翼20の正方向の軸回転、及び一対の補助翼20からの改良材やエアの供給などを継続的に行う。
【0032】
続いて、
図3(a)に示すように、モータ34による一対の補助翼20の軸回転の方向を、一対の補助翼20A、20Bの双方の補助羽根24により、周囲の土砂が下方へ押し下げられる回転方向(逆方向)へと切り替える。そして、作業機72の操作により攪拌装置10を上方へ移動させ、地盤Gからの攪拌装置10の引き抜きを開始する。引き続き、
図3(b)のように地盤Gからの攪拌装置10の引き抜きを続け、
図3(c)に示すように、一対の攪拌翼14が地面の近傍に達するまで攪拌装置10を引き抜く。この引き抜き作業の間、一対の攪拌翼14の回転、本体部12からの改良材やエアの供給、一対の補助翼20の逆方向の軸回転、及び一対の補助翼20からの改良材やエアの供給などを継続的に行う。これによって、地盤G内に改良土Sが形成される。
【0033】
ここで、本発明の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図1~
図3の構成に限定されるものではなく、別の構成を取り得るものである。例えば、補助翼20の補助羽根24は、
図1よりも多い或いは少ない枚数の板羽根26で構成されていてもよく、各板羽根26が正面視で同じ方向へ傾いていれば、各々の傾斜角度、軸部22の延在方向に隣接する板羽根26間の距離、軸部22の軸方向視での軸部22からの突出方向などは任意である。更に、補助翼20の補助羽根24は、
図4に示すように、軸部22の周囲に螺旋状に設置された板状部材28で構成されていてもよく、このような板状部材28が断続的に2枚以上設けられていてもよいものである。また、攪拌装置10は、重機70としてのリーダ付油圧式大口径削孔機に装着されて使用されてもよく、この場合は、リーダ付油圧式大口径削孔機の作業機のリーダに沿って上下方向に移動するように取り付けられる。
【0034】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図2及び
図3に示すように、重機70の作業機72に取り付けられて使用されるものであって、
図1に示すように、本体部12及び補助翼20を含んでいる。本体部12はロッド状をなし、その先端に、複数の切削刃16を有する攪拌翼14が取り付けられている。すなわち、本体部12は、その後端側が重機70の作業機72に取り付けられた状態で、先端側の攪拌翼14が回転されることで、地盤Gに貫入されながら複数の切削刃16によって地盤Gを掘削するようになっている。更に、本体部12は、攪拌翼14の近傍に改良材及び/又はエアを供給するための吐出口が設けられており、その吐出口から改良材及び/又はエアを供給しながら地盤Gを掘削することで、地盤Gの形成土と改良材及び/又はエアとを混合攪拌することができる。
【0035】
補助翼20は、本体部12の攪拌翼14よりも後端側の位置に、本体部12の延在方向に沿って取り付けられる長尺状のものであり、このとき、軸回転可能に本体部12に取り付けられる。また、補助翼20は、軸部22と、この軸部22の外周に沿って設けられた補助羽根24とを含み、補助羽根24が、複数の板羽根26又は1枚以上の板状部材28(
図4参照)で構成される。具体的に、補助羽根24が複数の板羽根26により構成される場合、それら複数の板羽根26は、軸部22の回転方向に対し、板面が上下方向及び左右方向について同じ方向に傾いた状態で、軸部22の外周に設けられる。すなわち、複数の板羽根26は、軸部22の延在方向が上下方向となる状態で、軸部22の外周面に向かって各々が正面視されたときに、2つの板面が左上方向及び右下方向へ向く態様、或いは、2つの板面が左下方向及び右上方向へ向く態様で、全て同じ方向に傾いている。
【0036】
これに対し、
図4に示すように、補助羽根24が1枚以上の板状部材28により構成される場合、板状部材28は、1枚のときは連続する螺旋状に軸部22の外周に設置され、2枚以上のときは断続する螺旋状に軸部22の外周に設置される。すなわち、この場合においても、1枚以上の板状部材28は、軸部22の延在方向が上下方向となる状態で、軸部22の外周面に向かって任意の位置から正面視されたときに、2つの板面が左上方向及び右下方向へ向く、或いは、2つの板面が左下方向及び右上方向へ向く態様で、一様に傾いている。これにより、補助翼20を一方向(正方向)に軸回転させると、傾いた補助羽根24によって上向き(後端向き)の力を周囲に作用させることができ、補助翼20を他方向(逆方向)に軸回転させると、傾いた補助羽根24によって下向き(先端向き)の力を周囲に作用させることができる。
【0037】
従って、本発明の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図2に示すように、地盤Gへ貫入される掘削時に、補助翼20が正方向へ軸回転されることで、攪拌翼14によって掘削された本体部12の先端近傍に位置する土砂を、攪拌翼14の後端側に位置する補助翼20の補助羽根24によって地面の方へと排出することができる。これにより、地盤G内の土圧を軽減することができるため、掘削効率を高めることが可能となる。また、
図3に示すように、地盤Gからの引き抜き時には、補助翼20が逆方向へ軸回転されることで、補助翼20の周囲の土砂を、強制的に攪拌しながら攪拌翼14の方へと送り込み、攪拌翼14により攪拌することができる。これによって、改良が未熟な土塊部分が生じ難くなるため、密実な固化体を造成することができる。更に、再攪拌や羽根切り回数の増加の必要がなくなり、地盤Gの形成土と改良材とを効率よく攪拌することができることから、施工速度を向上させることが可能となる。
【0038】
また、本発明の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図1に示すように、補助翼20の軸部22が中空の管状をなすものであり、例えば軸部22の後端にスイベルが設置されて改良材又はエアが供給されることで、軸部22の内部を通して軸部22の先端の吐出口36から、改良材又はエアを吐出するように構成されている。これにより、本体部12からの改良材やエアの吐出に加え、補助翼20の軸部22からも改良材やエアを吐出することができるため、地盤Gの形成土と改良材などとをより効率的に攪拌することができると共に、軸部22の吐出口36からの攪拌翼14へ向けた吐出によって、攪拌翼14への土砂などの付着を抑制することもできる。
【0039】
更に、本発明の実施の形態に係る攪拌装置10は、攪拌翼14と補助翼20との双方が一対設けられるものであって、一対の攪拌翼14A、14Bは、本体部12の中心軸を挟む態様で設けられ、また、一対の補助翼20A、20Bは、本体部12の軸方向視で、一対の攪拌翼14A、14Bに対応する位置に設けられる。すなわち、本体部12の軸方向視で、一方の攪拌翼14Aと一方の補助翼20Aとが少なくとも一部で重なり、他方の攪拌翼14Bと他方の補助翼20Bとが少なくとも一部で重なるような位置関係で設けられる。これにより、本体部12の中心軸を挟んだ位置で、一対の攪拌翼14A、14Bによってバランスよく掘削及び攪拌を行うことができると共に、それぞれの攪拌翼14A、14Bに対応した位置で、一対の補助翼20A、20Bによって排土や攪拌翼14A、14Bへの土砂の送り込みを行うことができる。このため、地盤Gの形成土の掘削や、地盤Gの形成土と改良材との攪拌を、より効率よく行うことが可能となる。
【0040】
加えて、本発明の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図2及び
図3に示すように、取り付け先の重機70が油圧ショベル70Aであると、主に浅層の地盤Gを対象とした施工で多く用いることができ、また、油圧ショベル70Aは小回りが利くため、様々な条件の現場での施工に対応することができる。これに対し、取り付け先の重機70がリーダ付油圧式大口径削孔機である場合は、様々な深度での施工に対応することができ、更に、リーダ付油圧式大口径削孔機のリーダが攪拌装置10のガイドとして作用するため、鉛直方向の施工精度の向上を期待することができる。
他方、本発明の実施の形態に係る機械攪拌工法は、上述したような本発明の実施の形態に係る攪拌装置10を用いて実行されることで、攪拌装置10に対応する同等の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0041】
10:攪拌装置、12:本体部、14(14A、14B):攪拌翼、16:切削刃、20(20A、20B):補助翼、22:軸部、24:補助羽根、26:板羽根、28:板状部材、70:重機、70A:油圧ショベル、72:作業機、G:地盤