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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037981
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/30 20060101AFI20230309BHJP
   G01H 1/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01D11/30 S
G01H1/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144838
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA04
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BA07
2G064BA08
2G064BA21
2G064BD18
(57)【要約】
【課題】強風が吹くような環境下においても高精度な計測が可能な計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置は、振動プローブ105、温度プローブ106、およびプローブケースを備える。振動プローブ105および温度プローブ106は、それぞれが長尺状の部材であって、一端105a,106aがスチーム配管の表面に当接するように配されている。振動プローブ105は、他端に振動センサを有する。プローブケースは、振動プローブ105および温度プローブ106が挿通する部分に貫通孔が設けられた底部材103を有する。振動プローブ105および温度プローブ106のそれぞれは、底部材103の貫通孔を囲む周面に直に当接する状態で、底部材103に対して固定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の部材であって、一端が計測対象物に当接するように配され、他端に振動の強度を計測する振動センサを有する振動プローブと、
長尺状の部材であって、一端が前記計測対象物に当接するように配され、前記計測対象物の表面温度を計測する温度プローブと、
前記振動プローブにおける前記一端を含む一部と、前記温度プローブにおける前記一端を含む一部とのそれぞれを外部に延出させた状態で、前記振動プローブにおける前記振動センサを含む残りの部分と、前記温度プローブにおける残りの部分とのそれぞれを内方に収容するプローブケースと、
を備え、
前記プローブケースは、前記振動プローブおよび前記温度プローブが挿通する部分に貫通孔が設けられた底部材を有し、
前記振動プローブおよび前記温度プローブのそれぞれは、前記貫通孔を囲む周面に直に当接する状態で、前記底部材に対して固定されている、
計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置において、
前記底部材は、前記振動プローブおよび前記温度プローブが挿通する方向に対して交差する方向に延び、前記貫通孔に連続する2つのネジ孔を有し、
該計測装置は、前記2つのネジ孔に螺合する2本の雄ネジをさらに備え、
前記振動プローブおよび前記温度プローブのそれぞれは、前記2つのネジ孔に対して螺合する前記2本の雄ネジの各ネジ先端からの押圧を受けて前記底部材に固定されている、
計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の計測装置において、
前記プローブケースは、前記振動プローブおよび前記温度プローブの外側方を囲み、内周面が円断面形状で構成された筒状のケース部材をさらに有し、
前記底部材を前記振動プローブおよび前記温度プローブが延びる方向から平面視する場合に、当該底部材の外周は、前記ケース部材の前記内周面に当接するとともに互いに対向する2つの円弧部と、前記ケース部材の前記内周面から内側に離間するとともに互いに対向する2つの弦部とにより構成されている、
計測装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の計測装置において、
前記振動プローブは、前記一端と前記振動センサとの間に介挿されるとともに、前記一端から入力される前記計測対象物の振動を伝達可能であって、且つ、前記一端から伝わってくる前記計測対象物の熱を断熱する断熱部材をさらに有する、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関し、特に蒸気や復水が流れるスチームトラップやスチーム配管等を計測対象とする計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備から復水(ドレン)のみを排出する用途に用いられるスチームトラップが知られている。また、当該スチームトラップやその入り口部分のスチーム配管の振動の強度および表面温度を計測し、それらの相互関係から蒸気漏れの有無を診断することが行われている。このような診断には、スチームトラップ等の振動の強度を計測するための振動プローブと、スチームトラップ等の表面温度を計測するための温度プローブとを備える計測装置が用いられる。
【0003】
ここで、計測装置としては、作業者が携帯する可搬タイプのものと、スチームトラップ等に振動プローブや温度プローブが固定された設置タイプのものとがある。特許文献1には、設置タイプの計測装置が開示されている。特許文献1に開示の計測装置は、間にブロック状の座金が介挿された状態でスチーム配管に対してプローブが固定されている。特許文献1では、円環断面を有するスチーム配管に対してブロック状の座金を隙間なく密着させ、且つ、座金の反対側にプローブの先端を隙間なく当接させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6389098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の構造では、スチーム配管等の振動の強度および表面温度を正確に計測することが困難である、と考えられる。即ち、スチームトラップ等における蒸気漏れの有無を診断するためには、10kHz付近の振動の強度を得ることが重要となるが、上記特許文献1に開示の構造では、スチーム配管の表面とプローブの先端との間に座金が介挿されているために、当該座金の容積が原因で10kHz付近の共振周波数を得ることができない。よって、正確な振動の強度を計測することは困難である。
【0006】
本願発明者は、上記のような問題の解決を図ろうと鋭意研究を行い、図5に示すような構造の計測装置を開発した。なお、図5では、計測装置9の構成の内のプローブ部90だけを図示している。
【0007】
図5に示すように、計測装置9は、振動プローブ94および温度プローブ95を収容してなるプローブ部90を備える。プローブ部90は、筒形状を有するケース部材91と、ケース部材91の開口を塞ぐ蓋部材92および底部材93を有する。振動プローブ94および温度プローブ95は、その一部が底部材93の貫通孔93a,93bを挿通しており、先端94a,95aがスチーム配管950の表面950aに直に当接している。なお、温度プローブ95の先端95aは、弾性部95bによりスチーム配管950の表面950aに弾性付勢されている。
【0008】
振動プローブ94および温度プローブ95のそれぞれは、ケース部材91における蓋部材92の側の部分に台座部96,97を有し、当該台座部96,97でケース部材91の内壁面に固定されている。振動プローブ94は、台座部96に隣接した箇所に振動センサ94bを有している。
【0009】
ところで、図5の矢印B1,B2で指し示すように、振動プローブ94および温度プローブ95は、底部材93と非接触状態とされている。そして、矢印B3,B4で指し示すように、振動プローブ94および温度プローブ95は、底部材93から蓋部材92の側に離間した他端に近い箇所でケース部材91に固定されている。このため、例えば強風が吹くような環境下において、振動プローブ94および温度プローブ95の各先端94a,95aが振れてしまうという事態が生じ得る。このように振動プローブ94および温度プローブ95の各先端94a,95aが振れてしまった場合には、振動の強度および表面温度を正確に計測することができないことになる。よって、図5に示す構造に対しては、より高精度な計測を行うことができるように改良の余地があると考えられる。
【0010】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、強風が吹くような環境下においても高精度な計測が可能な計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る計測装置は、振動プローブと、温度プローブと、プローブケースとを備える。前記振動プローブは、長尺状の部材であって、一端が計測対象物に当接するように配され、他端に振動の強度を計測する振動センサを有する。前記温度プローブは、長尺状の部材であって、一端が前記計測対象物に当接するように配され、前記計測対象物の表面温度を計測する。前記プローブケースは、前記振動プローブにおける前記一端を含む一部と、前記温度プローブにおける前記一端を含む一部とのそれぞれを外部に延出させた状態で、前記振動プローブにおける前記振動センサを含む残りの部分と、前記温度プローブにおける残りの部分とのそれぞれを内方に収容する。
【0012】
本態様に係る計測装置において、前記プローブケースは、前記振動プローブおよび前記温度プローブが挿通する部分に貫通孔が設けられた底部材を有する。また、前記振動プローブおよび前記温度プローブのそれぞれは、前記貫通孔を囲む周面に直に当接する状態で、前記底部材に対して固定されている。
【0013】
上記態様に係る計測装置では、振動プローブの一端および温度プローブの一端がそれぞれ計測対象物の表面に直に当接する。よって、上記態様に係る計測装置では、プローブと計測対象物との間に座金が介挿された上記特許文献1に開示の構造よりも高精度に振動の強度および表面温度の計測が可能である。
【0014】
また、上記態様に係る計測装置では、振動プローブおよび温度プローブが底部材に対して固定されているので、仮に強風が吹くような環境下においても振動プローブおよび温度プローブの各一端を計測対象物の表面にしっかり当接させた状態を維持することができる。即ち、振動プローブおよび温度プローブのそれぞれの固定箇所は各一端から距離が短く、例え強風が吹いて各一端が振れたとしても、その振れ幅は図5で示した構造よりも小さく抑えられる。よって、上記態様に係る計測装置では、強風が吹くような環境下においても高精度な計測が可能である。
【0015】
上記態様に係る計測装置において、前記底部材は、前記振動プローブおよび前記温度プローブが挿通する方向に対して交差する方向に延び、前記貫通孔に連続する2つのネジ孔を有してもよく、該計測装置は、前記2つのネジ孔に螺合する2本の雄ネジをさらに備えてもよい。そして、上記態様に係る計測装置において、前記振動プローブおよび前記温度プローブのそれぞれは、前記2つのネジ孔に対して螺合する前記2本の雄ネジの各ネジ先端からの押圧を受けて前記底部材に固定されていてもよい。
【0016】
上記態様に係る計測装置では、ネジ孔に螺合する雄ネジのネジ先端からの押圧により振動プローブおよび温度プローブが底部材に固定されているので、振動プローブおよび温度プローブのプローブケースからの延出長を調整した上でそれぞれを底部材に固定することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、振動プローブの一端および温度プローブの一端を確実に計測対象物に対して直に当接させることができ、高精度な計測を行うのに好適である。
【0017】
上記態様に係る計測装置において、前記プローブケースは、前記振動プローブおよび前記温度プローブの外側方を囲み、内周面が円断面形状で構成された筒状のケース部材をさらに有してもよい。また、前記底部材を前記振動プローブおよび前記温度プローブが延びる方向から平面視する場合に、当該底部材の外周は、前記ケース部材の前記内周面に当接するとともに互いに対向する2つの円弧部と、前記ケース部材の前記内周面から内側に離間するとともに互いに対向する2つの弦部とにより構成されていてもよい。
【0018】
上記態様に係る計測装置では、底部材の外周が対向する2つの弦部を有しているので、2つの弦部を用いて底部材を万力で押さえた上で、底部材に振動プローブおよび温度プローブを固定することができ、高い組み立て性を実現するのに好適である。
【0019】
上記態様に係る計測装置において、前記振動プローブは、前記一端と前記振動センサとの間に介挿されるとともに、前記一端から入力される前記計測対象物の振動を伝達可能であって、且つ、前記一端から伝わってくる前記計測対象物の熱を断熱する断熱部材をさらに有してもよい。
【0020】
上記態様に係る計測装置では、振動プローブにおける上記一端と振動センサとの間に断熱部材が介挿されているので、計測対象物から上記一端を介して振動プローブに熱が伝達されてきても、振動センサまで熱が達するのを抑制することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、高い耐熱性を有する高価な振動センサを採用しなくても計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができる。
【0021】
なお、断熱部材は、上記一端から入力された計測対象物の振動を振動センサに伝達可能であるので、計測対象物の振動の強度を高精度に計測することができる。
【発明の効果】
【0022】
上記の各態様に係る計測装置では、強風が吹くような環境下においても高精度な計測が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る計測装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】プローブ部の構成を示す断面図である。
図3】プローブ部の底部材を示す断面図である。
図4】振動プローブの構成を示す断面図である。
図5】先行して開発した計測装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0025】
1.計測装置1の構成
本発明の実施形態に係る計測装置1の構成について、図1を用いて説明する。
【0026】
図1に示すように、計測装置1は、プローブ部10と、接続部11と、本体部12とを備える。プローブ部10は、腕状に形成されたステー部101を有し、当該ステー部101を挿通するU字ボルト13とナット14との螺合によりスチーム配管(計測対象物)500に固定されている。接続部11は、外装がフレキシブルパイプにより形成されており、本体部12の姿勢を所定の状態で維持可能である。接続部11の内部には、プローブ部10から本体部12へと延びるリード線が収容されている。
【0027】
なお、図1では図示を省略しているが、プローブ部10は振動プローブおよび温度プローブを備えている。振動プローブと温度プローブとは、スチーム配管500の管軸Ax500に沿って並び、且つ、各一端がスチーム配管500の表面500aに直に当接している。なお、振動プローブおよび温度プローブは、各一端(スチーム配管500に当接する先端)がスチーム配管500の管軸を指向するように配されている。
【0028】
なお、本実施形態に係る計測装置1は、スチームトラップの入り口部分に位置するスチーム配管500に固定されている。
【0029】
2.プローブ部10の構成
プローブ部10の構成について、図2を用いて説明する。
【0030】
図2に示すように、プローブ部10は、ケース部材100、蓋部材102、底部材103、振動プローブ105、および温度プローブ106を備える。ケース部材100は、円筒形状の部材であって、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)から形成されている。蓋部材102は、円板形状を有する部材であって、ケース部材100の一方の開口(スチーム配管500から遠い側に開口)を閉じる部材である。蓋部材102も、例えば、ABS樹脂から形成されている。底部材103は、ケース部材100のもう一方の開口(スチーム配管500側の開口)を閉じる部材であって、金属材料(例えば、ステンレス鋼)から形成されている。なお、図1に示したステー部材101は、ケース部材100における外周面に固定されている。
【0031】
底部材103は、複数(例えば、2本)のビス104によりケース部材100の底部に固定されている。底部材103は、2つの貫通孔103a,103bを有する。貫通孔103a,103bは、底部材103の厚み方向を貫通するように設けられている。
【0032】
振動プローブ105は、長尺状の部材であって、一端105aを含む一部が底部材103の貫通孔103aを挿通して外部に延出し、残りの部分がケース部材100の内空間100aに収容されている。振動プローブ105は、底部材103の貫通孔103aを挿通する部分で当該底部材103に固定され(矢印A1)、上記残りの部分はケース部材100に対して非接触の状態で配されている(矢印A3)。振動プローブ105は、他端から延出するリード線105bを有する。リード線105bは、蓋部材102を挿通して、接続部11から本体部12へと配策されている。振動プローブ105は、一端105aが当接するスチーム配管500の振動の強度を計測する。
【0033】
温度プローブ106は、長尺状の部材であって、一端106aを含む一部が底部材103の貫通孔103bを挿通して外部に延出し、残りの部分がケース部材100の内空間100aに収容されている。温度プローブ106は、底部材103の貫通孔103bを挿通する部分で当該底部材103に固定され(矢印A2)、上記残りの部分はケース部材100および振動プローブ105に対して非接触の状態で配されている(矢印A4)。温度プローブ106は、他端から延出するリード線106bを有する。リード線106bは、蓋部材102を挿通して、接続部11から本体部12へと配策されている。温度プローブ106は、一端106aが当接するスチーム配管500の表面500aの温度を計測する。
【0034】
3.底部材103の構造
底部材103の構造について、図3を用いて説明する。
【0035】
図3に示すように、底部材103をケース部材100の筒軸に直交する方向から下面視した場合に、互いに対向する2つの円弧部103i,103jと、互いに対向する2つの弦部103g,103hとで外周が構成されている。弦部103gと弦部103hとは、互いに並行する。円弧部103i,103jは、円環断面を有するケース部材100の内周面100bに隙間なく当接する。
【0036】
底部材103は、4つのネジ孔103c~103fを有する。ネジ孔103cは、弦部103g,103hが延びる方向に平行な中心軸Ax1を有し、貫通孔103aに連続する。ネジ孔103dは、弦部103g,103hが延びる方向に平行な中心軸Ax2を有し、貫通孔103bに連続する。ネジ孔103eは、弦部103g,103hが延びる方向に対して直交する中心軸Ax3を有し、貫通孔103aに連続する。ネジ孔103fは、弦部103g,103hが延びる方向に直交する中心軸Ax4を有し、貫通孔103bに連続する。
【0037】
底部材103は、ケース部材100の端部開口に対して、2本のビス(雄ネジ)104により固定されている。具体的に、ケース部材100には、底部材103を装着した際にネジ孔103c,103dに連続する通し孔100c,100dが形成されている。それぞれのビス104は、通し孔100c,100dを挿通してネジ孔103c,103dの雌ネジに螺合している。底部材103は、ケース部材100に対して、ネジ孔103c,103dへのビス104の螺合により固定されている。
【0038】
振動プローブ105は、貫通孔103aに一端105a側の一部が挿通された状態で、イモネジ(雄ネジ)107のネジ先端からの押圧を受けて貫通孔103aの内周面に外周面の一部が押し付けられて当接している。振動プローブ105は、ネジ孔103eの雌ネジとイモネジ107との締結力により底部材103に固定されている。
【0039】
温度プローブ106は、貫通孔103bに一端105a側の一部が挿通された状態で、イモネジ(雄ネジ)107のネジ先端からの押圧を受けて貫通孔103bの内周面に外周面の一部が押し付けられて当接している。温度プローブ106は、ネジ孔103fの雌ネジとイモネジ107との締結力により底部材103に固定されている。なお、本実施形態で用いるイモネジ107とは、「六角穴付き止めネジ」のことを指す。
【0040】
4.振動プローブ105の詳細構造
振動プローブ105の詳細構造について、図4を用いて説明する。
【0041】
図4に示すように、振動プローブ105は、探触棒1050、台座部1051、断熱部材1052、振動センサ1053、およびビス1054を有している。探触棒1050は、金属材料(例えば、ステンレス鋼)から形成された円筒状または円柱状の部材である。探触棒1050の先端が振動プローブ105の一端105aであり、外凸の曲面で構成されている。
【0042】
台座部1051は、金属材料(例えば、ステンレス鋼)から形成された円柱状の部材であって、振動プローブ105の中心軸Ax105上に形成されたネジ孔1051bを有する。断熱部材1052は、アルミナセラミックスから形成された部材であって、円筒状を有する。断熱部材1052には、一方端側から探触棒1050の他端が嵌入され、他方端側から台座部1051が嵌入されている。
【0043】
断熱部材1052に嵌入された探触棒1050と台座部1051とは、互いの端面1050a,1051a同士の間に隙間SPが空くように配されている。なお、詳細な図示を省略しているが、断熱部材1052と探触棒1050および台座部1051とは、中心軸Ax105に対して交差する方向の外方からのビスなどにより固定される。
【0044】
振動センサ1053は、圧電素子として圧電型セラミックスが使用された圧電型加速度センサからなる。振動センサ1053は、ビス1054と台座部1051におけるネジ孔1051bの雌ネジとの螺合をもって台座部1051に隙間なく固定されている。
【0045】
ここで、振動プローブ105のサイズ設定方法について、説明する。
【0046】
蒸気および復水(ドレン)の何れか一方が流れるスチームトラップ等の計測対象物においてその振動を計測した場合、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かによって、特定の周波数成分が大きく異なり、特に、10kHz付近の振動周波数を調べることで、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かを比較的高い精度で判別できることが知られている(特開2016-11904号公報)。そのため、スチームトラップ等の蒸気漏れの有無の診断を行う場合に使用する計測装置1の振動プローブ105については、10kHz付近の振動の強度を高精度に計測することができるように形成することが重要となる。
【0047】
以上のような知見を基として、探触棒1050、台座部1051、および断熱部材1052のサイズ設定がなされている。具体的に、上記の流れの音響特性かの共振周波数をf、探触棒1050、台座部1051、および断熱部材1052の振動加速度をC、一端105aから台座部1051における振動センサ1053の取付面までの長さをL、一端105aから台座部1051における振動センサ1053の取付面までの断面サイズをDとするとき、次に関係を満たすようにサイズ設定がなされている。
f=C×(D/L) ・・(式1)
上記関係式において、共振周波数fが10kHz付近としてサイズ設定がなされる。
【0048】
5.効果
本実施形態に係る計測装置1では、振動プローブ105の一端105aおよび温度プローブ106の一端106aがそれぞれスチーム配管(計測対象物)500の表面500aに直に当接する。よって、計測装置1では、プローブと計測対象物との間に座金が介挿された上記特許文献1に開示の構造よりも高精度に振動の強度および表面温度の計測が可能である。
【0049】
また、本実施形態に係る計測装置1では、振動プローブ105および温度プローブ106が底部材103に対して固定されているので、仮に強風が吹くような環境下においても振動プローブ105および温度プローブ106の各一端105a,106aをスチーム配管500の表面500aにしっかり当接させた状態を維持することができる。即ち、振動プローブ105および温度プローブ106のそれぞれの固定箇所は各一端105a,106aから距離が短いく、例え強風が吹いて各一端105a,106aが振れたとしても、その振れ幅は図5で示した構造よりも小さく抑えられる。よって、計測装置1では、強風が吹くような環境下においても高精度な計測が可能である。
【0050】
ここで、振動プローブ105を底部材103に固定した場合に計測できる振動の共振周波数を確認したところ、6kHz付近、10kHz付近、15kHz付近の3つの共振ピークがあった。蒸気漏れの有無を診断する場合に重要となる10kHz付近にもピークを有するため、高精度な計測が可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る計測装置1では、底部材103のネジ孔103e,103fに螺合するイモネジ(雄ネジ)107のネジ先端からの押圧により振動プローブ105および温度プローブ106が底部材103に固定されているので、振動プローブ105および温度プローブ106の底部材103からの延出長を調整した上でそれぞれを底部材103に固定することができる。よって、計測装置1では、振動プローブ105の一端105aおよび温度プローブ106の一端106aを確実にスチーム配管500の表面500aに対して直に当接させることができ、高精度な計測を行うのに好適である。
【0052】
また、本実施形態に係る計測装置1では、底部材103の外周が対向する2つの弦部103g,103hを有しているので、2つの弦部103g,103hを用いて底部材103を万力で押さえた上で、底部材103に振動プローブ105および温度プローブ106を固定することができ、高い組み立て性を実現するのに好適である。
【0053】
また、本実施形態に係る計測装置1では、振動プローブ105における一端105aと振動センサ1053との間(探触棒1050と台座部1051との間)に断熱部材1052が介挿されているので、スチーム配管500から一端105aを介して探触棒1050に熱が伝達されてきても、振動センサ1053まで熱が達するのを抑制することができる。よって、計測装置1では、高い耐熱性を有する高価な振動センサを採用しなくてもスチーム配管500からの熱に起因する振動センサ1053の故障・破損を抑制することができる。
【0054】
なお、断熱部材1052は、一端105aから入力されたスチーム配管500の振動を振動センサ1053に伝達可能であるので、スチーム配管500の振動の強度を高精度に計測することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る計測装置1では、強風が吹くような環境下においても高精度な計測が可能である。
【0056】
[変形例]
振動プローブ105の探触棒1050については、中実の円柱体とすることも、中空の円筒体とすることも可能である。また、横断面形状(中心軸Ax105に直交する方向の断面形状)は、円形に限定されず、多角形や長円形(楕円形を含む。)とすることも可能である。
【0057】
上記実施形態では、探触棒1050をステンレス鋼などの金属材料から形成し、断熱部材1052をアルミナセラミックスから形成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、探触棒1050をアルミナセラミックスから形成することや、断熱材料1052を樹脂材料から形成することも可能である。
【0058】
上記実施形態では、振動プローブ105および温度プローブ106をイモネジ107を用いて底部材103に固定することとしたが、本発明では、頭を有するビスやボルトを用いて振動プローブ105および温度プローブ106を底部材103に固定してもよい。また、リベット止めや溶接、さらにはロウ付けなどを用いてもよい。
【0059】
上記実施形態では、互いに別部材であるケース部材100と底部材103とを接合することとしたが、本発明では、ケース部材と底部材とが一体形成された構成を採用することも可能である。
【0060】
上記実施形態では、底部材103において、振動プローブ105が挿通する貫通孔103aと、温度プローブ106が挿通する貫通孔103bとを別々に設けることとしたが、本発明では、1つの貫通孔に振動プローブ105および温度プローブ106を挿通させることとしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 計測装置
10 プローブ部
100 ケース部材
103 底部材
103a,103b 貫通孔
103g,103h 弦部
103i,103j 円弧部
105 振動プローブ
106 温度プローブ
107 イモネジ(雄ネジ)
1050 探触棒
1051 台座部
1052 断熱部材
1053 振動センサ
図1
図2
図3
図4
図5