(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037995
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】測定装置、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/30 20150101AFI20230309BHJP
G01S 19/23 20100101ALI20230309BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20230309BHJP
【FI】
H04B17/30
G01S19/23
H04B17/29 200
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144856
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古木 敦
(72)【発明者】
【氏名】石塚 康二
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 伸一
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062AA13
5J062DD03
5J062DD24
(57)【要約】
【課題】極めて高い時刻確度・精度を要求される各場所の被測定機器を対象とする測定に際し、マルチバンドの受信異常が発生した場合の再測定に対する迅速な対応が可能で、信頼性が高くかつ高精度の測定に繋げることが可能な測定装置、及び測定方法を提供する。
【解決手段】ネットワーク測定装置50は、マルチバンドの信号の送出元の例えば単一のGNSSを設定する設定制御部61と、移動先の機器例えばバウンダリクロックに接続し、アンテナ入力端子51に例えば既設GNSSアンテナ28bを接続した状態で、送出元のGNSSから送出されるマルチバンドの信号の既設GNSSアンテナ28bと受信処理による受信信号情報に基づきマルチバンド受信異常を検出するマルチバンド異常検出部65と、マルチバンド受信異常が検出された場合、マルチバンド受信異常が発生した旨を警告報知する警告報知制御部66と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる場所に配置された複数の機器(21、30、31、32)の配置場所まで移動し、該移動先の前記機器のいずれかに接続後、任意のGNSSを構成するGNSS衛星(10a、10b、10c)から送出されるそれぞれ異なる周波数帯の信号のうちから所望する複数の周波数帯の信号をマルチバンドとして受信処理し、該受信処理により取得された位置または時刻の情報に基づいて前記移動先の前記機器の測定を行う可搬型の測定装置(50)であって、
前記GNSSから送信される信号を受信するGNSSアンテナ(28a、28b)を接続可能なアンテナ入力端子(51)と、
前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の送出元の前記GNSSを選択的に設定するマルチバンド設定手段(61)と、
前記移動先の前記機器のいずれかに接続し、前記アンテナ入力端子に前記GNSSアンテナを接続した状態で、前記送出元の前記GNSSから送出される前記信号の前記GNSSアンテナと前記受信処理による受信信号情報に基づき前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の受信異常を検出する受信異常検出手段(65)と、
前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の受信異常が検出された場合、マルチバンド受信異常が発生した旨を警告報知する警告報知手段(66)と、
を具備することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記アンテナ入力端子は、前記測定装置に付属する付属GNSSアンテナ(28a)に替えて、前記複数の機器のうち既設のGNSSアンテナ(28b)を接続可能とされ、
前記アンテナ入力端子に前記既設のGNSSアンテナを接続したうえで、前記送出元の前記GNSSから送出される前記信号の前記既設のGNSSアンテナと、前記受信処理による受信信号情報に基づき前記測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記警告報知手段は、前記警告報知に合わせ、前記送出元の前記GNSSの設定を、前記マルチバンドを受信処理するための設定から1つの周波数帯の信号であるシングルバンドを受信処理するための設定への切り替えを促す旨をさらに報知することを特徴とする請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記警告報知手段は、前記警告報知を、警告報知メッセージの表示、または警告音の鳴動の少なくとも一方により行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記受信異常検出手段は、前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号を対象に、前記送出元の前記GNSSから送信される前記信号を捕捉し、該捕捉した前記信号の信号品質が、設定された前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の所定の信号品質を満たすか否かを判定する捕捉手段を有し、
前記警告報知手段は、前記捕捉手段により捕捉された前記信号の信号品質が前記所定の信号品質を満たさない場合、マルチバンド受信が不能である旨を報知することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記捕捉手段は、前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号間のレベル差を検出するレベル差検出手段を有し、
前記警告報知手段は、前記レベル差検出手段により検出された前記レベル差が予め設定した所定の値を超えている場合、異常である旨を報知することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記捕捉手段は、同一のGNSSから送出される前記マルチバンドに対応する少なくとも2つの周波数帯の信号から疑似距離を算出する算出手段を有し、
前記警告報知手段は、前記算出手段により算出された前記疑似距離が、前記所定の信号品質として予め設定した前記疑似距離が正であるとの条件を満たす場合、異常である旨を報知することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記任意のGNSSから取得された基準時刻情報に時刻同期して前記複数の機器が動作する被測定ネットワーク(1)を測定対象とし、所望の前記場所に移動して前記機器のいずれかに接続した後、前記送出元である前記GNSSからの受信信号情報に基づき当該場所での測位を開始し、前記送信元の前記GNSSとの時刻同期を図ったうえで前記被測定ネットワークの性能を測定するネットワーク測定装置であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の単一のGNSSを前記送信元として設定し、該単一のGNSSから前記複数の周波数帯の信号を受信することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の複数のGNSSを組み合わせて前記送信元として設定し、該複数のGNSSから前記複数の周波数帯の信号を受信することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の測定装置(50)を用いて前記機器の測定を行う測定方法であって、
それぞれ異なる場所に配置された前記複数の機器の配置場所まで移動し、前記移動先の前記機器のいずれかに接続し、かつ、前記アンテナ入力端子に前記既設のGNSSアンテナを接続する接続ステップ(S3)と、
前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の送出元の前記GNSSを選択的に設定するマルチバンド設定ステップ(S5)と、
前記送出元の前記GNSSから送出される前記信号の前記既設のGNSSアンテナと前記受信処理による受信信号情報に基づき前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の受信異常を検出する受信異常検出ステップ(S8)と、
前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の受信異常が検出された場合、マルチバンド受信異常が発生した旨を警告報知する警告報知ステップ(S9)と、
を含むことを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意のGNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)から提供される複数のバンド(周波数帯)の複数の衛星情報を受信し、測位や時刻同期を行い、それらの値を用いて被測定対象の測定を行う可搬型の測定装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GNSSから受信される衛星情報(受信信号情報)を処理する受信機において、例えば、GPS衛星及びGLONASS衛星の両方をベースとして信号受信及び位置計算を行うマルチGNSS技術が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ネットワークの性能を測定する測定システムとしては、被測定対象となるネットワーク(被測定ネットワーク)に接続されたサーバ測定装置、複数のクライアント測定装置を備え、サーバ測定装置は、あるクライアント測定装置が現在起動中のアプリケーションを所定のアプリケーションに切り替えて、そのクライアント測定装置と協働して被測定ネットワークの特性を測定する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11-513796号公報
【特許文献2】特開2018-157375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載される測定システムの構成例については、例えば、特許文献1に記載されるマルチGNSS技術を適用し、複数のGNSSからそれぞれ異なるバンドの複数の衛星情報を受信して測位や時刻同期を行い、それらの値を用いて被測定ネットワークの測定を行う測定装置(ネットワーク測定装置)が考えられる。
【0006】
さらにこの場合は、可搬型の測定装置を用い、該測定装置を、被測定ネットワーク内の分散配置される各クライアントの配置場所に必要に応じて移動させ、移動先のそれぞれの場所でクライアントに接続し、任意のGNSSから送出される複数のバンド(マルチバンド)の受信信号情報に基づいて被測定ネットワークが正しく動作しているかを測定する運用も想定され得る。
【0007】
可変型の測定装置の測定対象とされるネットワークの構成、及び該ネットワーク内における可搬型の測定装置8の配置態様の例を
図11に示している。このネットワークは、マスタとして動作する機器(グランドマスタクロック:Grandmaster Clock)5と、スレーブとして動作する機器(バウンダリクロック:Boundary Clock)6と、該機器6をマスタとしてスレーブの動作を行う複数の機器7a、7b、7c、7dが所定の通信規格の通信路により接続された構成を有している。このネットワークでは、例えば、GNSSから受信した時刻情報(基準時刻)の提供元である機器5が機器6とPTP(Precision Time Protocol)に基づく通信を行って機器6が基準時刻に同期するとともに、機器6と、機器7a、7b、7c、7dとがPTPに基づく通信を行って該機器7a、7b、7c、7dが基準時刻に同期することで、機器7a、7b、7c、7dがグランドマスタクロックに同期して動作するようになっている。
【0008】
図11において、(a)は1PPS TE(One Pulse Per Second Time Eeror)測定を行うときの測定装置8の配置態様を示し、(b)はパケット TE(Packet Time Error)測定を行うときの測定装置8の配置態様を示している。1PPS TE測定とパケット TE測定は、後述するように、被測定ネットワーク(機器7a)の時刻同期に関する測定(時刻同期誤差測定)に包含されるものである。1PPS TE測定においては、
図11(a)に示すように、可搬型の測定装置8を、例えば、上記構成を有するネットワーク(被測定ネットワーク)の末端部の例えば機器7aの場所まで移動して該機器7aに接続し、当該場所でGNSSからの受信信号情報に基づいて生成された基準1PPS信号と、機器7aが出力している信号(被測定1PPS信号)とを比較する1PPS TE測定を行う。基準1PPS信号と被測定1PPS信号との位相の比較結果に基づき被測定ネットワーク(機器7a)の時刻同期に関する測定(例えば、時刻同期誤差測定)を行うことが可能となる。1PPS TE測定は、必要に応じて機器7b、7c、7dの場所まで移動し、当該機器7b、7c、7dに測定装置8を接続して各場所で上記同様の時刻同期誤差測定を行うことができるようになっている。
【0009】
パケット TE測定については、
図11(b)に示すように、例えば機器7aの場所まで移動して該機器7aに替えて測定装置8を被測定ネットワークに接続(機器7aを測定装置8と置換)したうえ、機器7aに対するマスタとしての機器6がさらにその上位の機器5から受信しているPTPパケット(Precision Time Protocol Packet)のパケットタイムエラー(パケット TE)を測定するようになっている。この場合も、必要に応じて機器7b、7c、7dの場所まで移動し、機器7b、7c、7dに替えて測定装置8を接続したうえで上記同様のパケット TE測定を実施することができる。
【0010】
このように、被測定ネットワークでの時刻同期誤差測定は、1PPS TE測定とパケット TE測定を包含し、同期元となるグランドマスタクロックからネットワークへ正確な時刻を配信していることを確認するために、可搬型の測定装置8を被測定ネットワークの各場所間で移動させ、当該各場所の被測定用の機器に接続したうえで、それぞれの場所ごとに時刻同期誤差測定を実施するようになっている。通常、グランドマスタクロックの配信する時刻は、GNSSに同期しており、誤差の測定に際しては測定装置8自身もGNSSに同期している必要がある。ここで測定装置8は、特許文献1に記載されるGNSS技術、すなわち、それぞれ異なるバンドの複数の信号(マルチバンド)の受信に対応するものにあっては、1つのバンドの信号を受信処理するシングルバンドを利用するものに比べて上述した時刻同期誤差測定の測定精度の向上が見込める。
【0011】
図11に示す構成を有する被測定ネットワークの代表的な例としては、GNSSからの受信信号情報に基づき生成した基準時刻を異なる場所にそれぞれ配置される複数の局、例えば基地局に転送し、コンピュータネットワーク全体でクロックを同期させるPTP(Precision Time Protocol)を使って各局、例えば基地局を同期的に動作させる、所謂、PTPネットワークシステム(
図1参照)が知られている。
【0012】
近年、技術開発が急速に進展しつつある5G NR規格の通信を行うネットワーク(5Gネットワーク)は、PTPネットワークシステムによって実現されるものであり、PTPを使うことで、同一の同期ネットワーク内のデバイス間においてマイクロ秒以下の精度のクロック同期を達成することが可能となっている。
【0013】
ところで、5Gネットワークについては、通信の高速化を実現すべく移動局と通信する基地局を通信中に切り替える、所謂、ハンドオーバー(Hand Over)を確実に行うためには高精度の同期確立が必要とされている。また、ネットワークの要求精度が高くなってきているため、測定誤差を減らす観点からも、測定装置のGNSSに対する時刻同期確度・精度の向上が求められている。
【0014】
こうした高精度の時刻同期確度・精度への要求に対応すべく、5Gネットワークを被測定対象とする従来の可搬型の測定装置(
図11の測定装置8参照)の運用にあたっては、ホールドオーバー(Holdover)などの別手法による運用ではGNSS同期確度・精度等の要求精度が運用上満たせないことがあるため、当該ネットワーク測定装置を使用する場所(Location:ロケーション)に移動させ、測定対象となる機器に接続したうえで、GNSSから、例えば、マルチバンドの衛星情報を受信させて測位や時刻同期を行い、それらの値を用いて被測定対象の機器に関する測定を行う方法もあった。
【0015】
上記測定に際してマルチバンドを受信するには、例えば、移動先の場所の被測定対象の機器に対応して設けられている既設(常設)のGNSSアンテナ(衛星測位システム受信アンテナ)での受信信号情報を入力する方法、自装置に付属している付属GNSSアンテナを接続して用いる等の方法があった。
【0016】
ここで移動先の場所の被測定対象の機器を取り巻くアンテナ環境は、例えば、既設のGNSSアンテナがマルチバンドに対応しているか否か不明であったり、GNSSアンテナやアンプ、ブースター、ケーブル、フィルタなどの不調がある、GNSSアンテナの設置条件が悪いなど、マルチバンドのGNSSを良好に受信できない環境であることが少なくない。
【0017】
上述したマルチバンド対応、かつ、可搬型のネットワーク測定装置では、このような環境下で運用された場合、GNSSのマルチバンドでの受信を選択指定しているときに、所望より少ない数のバンド(例えば、1つのバンド)しか捕捉できない状況や、複数のバンドの位相などを含めた、信号品質が悪化する状況が発生する可能性があり、ひいては被測定ネットワークの時刻同期誤差測定の確度・精度が低下するおそれがあった。
【0018】
この種の従来のネットワーク測定装置では、捕捉バンド数の不足、各バンドの信号品質の悪化、測定異常等のマルチバンドの受信異常を報知する機能を有していなかった。このため従来のネットワーク測定装置では、上述したマルチバンドの受信異常をユーザが認知することが困難であり、ユーザが認知できないうちに時刻同期誤差測定の確度・精度が低下していると、被測定ネットワークが通信規格を満たしているか否かの判定を誤り、信頼性が低下する可能性があった。また、マルチバンドの受信異常を報知する機能を有しない従来のネットワーク測定装置では、マルチバンドの受信異常に対する迅速な対応が困難であり、例えば、測定結果が異常で再測定が必要な場合においては大幅な時間ロスを招来するという問題点があった。
【0019】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、極めて高い時刻確度・精度を要求される各場所の被測定機器を対象とする測定に際し、マルチバンドの受信異常が発生した場合の再測定に対する迅速な対応が可能であり、信頼性が高くかつ高精度の測定に繋げることが可能な測定装置、及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る測定装置は、それぞれ異なる場所に配置された複数の機器(21、30、31、32)の配置場所まで移動し、該移動先の前記機器のいずれかに接続後、任意のGNSSを構成するGNSS衛星(10a、10b、10c)から送出されるそれぞれ異なる周波数帯の信号のうちから所望する複数の周波数帯の信号をマルチバンドとして受信処理し、該受信処理により取得された位置または時刻の情報に基づいて前記移動先の前記機器の測定を行う可搬型の測定装置(50)であって、前記GNSSから送信される信号を受信するGNSSアンテナ(28a、28b)を接続可能なアンテナ入力端子(51)と、前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の送出元の前記GNSSを選択的に設定するマルチバンド設定手段(61)と、前記移動先の前記機器のいずれかに接続し、前記アンテナ入力端子に前記GNSSアンテナを接続した状態で、前記送出元の前記GNSSから送出される前記信号の前記GNSSアンテナと前記受信処理による受信信号情報に基づき前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の受信異常を検出する受信異常検出手段(65)と、前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の受信異常が検出された場合、マルチバンド受信異常が発生した旨を警告報知する警告報知手段(66)と、を具備することを特徴とする。
【0021】
この構成により、本発明の請求項1に係る測定装置は、それぞれ異なる場所の被測定機器を対象とする測定に際し、送出元として設定した任意のGNSSから所望のマルチバンドを正常に受信できないときには、その旨の警告報知を受けて再設定等に迅速に対処でき、極めて高い時刻確度・精度を要求される被測定機器を対象に、マルチバンド受信異常が発生した旨を確実に把握できるため、精度の低い測定結果の採用を未然に防止することが可能となるうえ、受信異常の対策へのアクションがとれることで、高精度の測定に繋げることが可能となる。
【0022】
また、本発明の請求項2に係る測定装置において、前記アンテナ入力端子は、前記測定装置に付属する付属GNSSアンテナ(28a)に替えて、前記複数の機器のうち既設のGNSSアンテナ(28b)を接続可能とされ、前記アンテナ入力端子に前記既設のGNSSアンテナを接続したうえで、前記送出元の前記GNSSから送出される前記信号の前記既設のGNSSアンテナと、前記受信処理による受信信号情報に基づき前記測定を行う構成としてもよい。
【0023】
この構成により、本発明の請求項2に係る測定装置は、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の受信信号情報に基づく測定を行うにあたり、測定装置メーカの提供するマルチバンド対応が確かな付属GNSSアンテナに替えて、マルチバンド対応が不確かな既設のGNSSアンテナであっても、マルチバンド受信異常が発生したことを報知することができ、またマルチバンドに対応可能なアンテナか否か確認することができ、マルチバンドに非対応のアンテナの場合は対応するアンテナを手配したり接続するアクションをとれることで、高精度の測定に繋げることが可能となる。
【0024】
また、本発明の請求項3に係る測定装置において、前記警告報知手段は、前記警告報知に合わせ、前記送出元の前記GNSSの設定を、前記マルチバンドを受信処理するための設定から1つの周波数帯の信号であるシングルバンドを受信処理するための設定への切り替えを促す旨をさらに報知する構成としてもよい。
【0025】
この構成により、本発明の請求項3に係る測定装置は、所望のマルチバンドを正常に受信できないときでも、シングルバンドの設定に切り替えることで、測定が不可能になる事態を回避でき、また測定を継続することができる。
【0026】
また、本発明の請求項4に係る測定装置において、前記警告報知手段は、前記警告報知を、警告報知メッセージの表示、または警告音の鳴動の少なくとも一方により行う構成であってもよい。
【0027】
この構成により、本発明の請求項4に係る測定装置は、警告報知メッセージの表示、または警告音の鳴動によってマルチバンド受信異常を確実にユーザに知らせることができ、警告報知の認知性を保つことができる。
【0028】
また、本発明の請求項5に係る測定装置において、前記受信異常検出手段は、前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号を対象に、前記送出元の前記GNSSから送信される前記信号を捕捉し、該捕捉した前記信号の信号品質が、設定された前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の所定の信号品質を満たすか否かを判定する捕捉手段を有し、前記警告報知手段は、前記捕捉手段により捕捉された前記信号の信号品質が前記所定の信号品質を満たさない場合、マルチバンド受信が不能である旨を報知する構成であってもよい。
【0029】
この構成により、本発明の請求項5に係る測定装置は、捕捉された信号の信号品質が、設定されたマルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の所定の信号品質を満たさない場合、マルチバンド受信が不能であることを確実に認識でき、迅速な対処が可能となる。
【0030】
また、本発明の請求項6に係る測定装置において、前記捕捉手段は、前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号間のレベル差を検出するレベル差検出手段を有し、前記警告報知手段は、前記レベル差検出手段により検出された前記レベル差が予め設定した所定の値を超えている場合、異常である旨を報知する構成であってもよい。
【0031】
この構成により、本発明の請求項6に係る測定装置は、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号間のレベル差が所定の値を超えている原因となるマルチバンドに非対応のアンテナの使用をはじめとするマルチバンドの受信のアンテナ系統の異常を確実に認識することができる。
【0032】
また、本発明の請求項7に係る測定装置において、前記捕捉手段は、同一のGNSSから送出される前記マルチバンドに対応する少なくとも2つの周波数帯の信号から疑似距離を算出する算出手段を有し、前記警告報知手段は、前記算出手段により算出された前記疑似距離が、前記所定の信号品質として予め設定した前記疑似距離が正であるとの条件を満たす場合、異常である旨を報知する構成であってもよい。
【0033】
この構成により、本発明の請求項7に係る測定装置は、疑似距離が正であった場合に、マルチバンドの受信のアンテナ系統の異常を容易に認識することができる。
【0034】
また、本発明の請求項8に係る測定装置は、任意のGNSSから取得された基準時刻情報に同期して前記複数の機器が動作する被測定ネットワーク(1)を対象とし、所望の前記場所に移動して該移動先の場所の前記機器のいずれかに接続した後、前記送出元である前記GNSSからの受信信号情報に基づき当該場所での測位を開始し、前記送信元の前記GNSSとの同期を図ったうえで前記被測定ネットワークの性能を測定するネットワーク測定装置であってもよい。
【0035】
この構成により、本発明の請求項8に係る測定装置は、各機器として、例えば、複数の基地局、バウンダリクロック等が配置され、GNSSから取得された基準時刻情報に同期してこれらの機器が動作する5Gネットワークを被測定ネットワークとして、マルチバンドを用いた高精度の測定が行えるようになる。
【0036】
また、本発明の請求項9に係る測定装置は、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の単一のGNSSを前記送信元として設定し、該単一のGNSSから前記複数の周波数帯の信号を受信する構成であってもよい。
【0037】
この構成により、本発明の請求項9に係る測定装置は、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の単一のGNSSを送信元として設定することでマルチバンドを用いた高精度の測定を実現できる。
【0038】
また、本発明の請求項10に係る測定装置は、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の複数のGNSSを組み合わせて前記送信元として設定し、該複数のGNSSから前記複数の周波数帯の信号を受信する構成であってもよい。
【0039】
この構成により、本発明の請求項10に係る測定装置は、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の複数のGNSSを組み合わせてマルチバンドの送出元として設定することで、多くのGNSSを有効に活用したマルチバンド受信処理、及びマルチバンド受信異常報知を確実に実施することができる。
【0040】
上記課題を解決するために、本発明の請求項11に係る測定方法は、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の測定装置(50)を用いて前記機器の測定を行う測定方法であって、 請求項1ないし10のいずれか一項に記載の測定装置(50)を用いて前記機器の測定を行う測定方法であって、それぞれ異なる場所に配置された前記複数の機器の配置場所まで移動し、前記移動先の前記機器のいずれかに接続し、かつ、前記アンテナ入力端子に前記既設のGNSSアンテナを接続する接続ステップ(S3)と、前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の送出元の前記GNSSを選択的に設定するマルチバンド設定ステップ(S5)と 前記送出元の前記GNSSから送出される前記信号の前記既設のGNSSアンテナと前記受信処理による受信信号情報に基づき前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の受信異常を検出する受信異常検出ステップ(S8)と、前記マルチバンドに対応する前記複数の周波数帯の信号の受信異常が検出された場合、マルチバンド受信異常が発生した旨を警告報知する警告報知ステップ(S9)と、を含むことを特徴とする。
【0041】
この構成により、本発明の請求項11に係る測定方法は、請求項1ないし10のいずれかに記載の測定装置を用いることで、それぞれ異なる場所の被測定機器を対象とする測定に際し、送出元として設定した任意のGNSSから所望のマルチバンドを正常に受信できないときには、その旨の警告報知を受けて再設定等に迅速に対処でき、極めて高い時刻確度・精度を要求される被測定機器を対象に、マルチバンド受信異常が発生した旨を確実に把握できるため、精度の低い測定結果の採用を未然に防止することが可能となるうえ、受信異常の対策へのアクションがとれることで、高精度の測定に繋げることが可能となる。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、極めて高い時刻確度・精度を要求される各場所の被測定機器を対象とする測定に際し、マルチバンドの受信異常が発生した場合の再測定に対する迅速な対応が可能であり、信頼性が高くかつ高精度の測定に繋げることが可能な測定装置、及び測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置の測定対象とされる5Gネットワークの要部構成を示す概念図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置の時刻同期誤差測定に係るロケーション情報設定画面の構成例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置の時刻同期誤差測定の制御動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図4のステップS9におけるマルチバンド受信異常警告報知処理で用いるマルチバンド受信異常警告報知メッセージの表示例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置における2つのバンドの信号の疑似距離情報の算出手順及びマルチバンド受信異常判定手順を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置のOWD/パケット TE測定に係る制御手順を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置の時刻同期誤差測定での1PPS測定に係る位相誤差の定義を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置の時刻同期誤差測定の試験結果表示画面の構成例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置の時刻同期誤差測定での1PPS TEに関する特性を示す図であり、(a)はタイムエラーの変動特性を示し、(b)はフィルタTEの変動特性を示している。
【
図11】可搬型の測定装置の測定対象とされるPTPネットワークの構成、及び可搬型の測定装置の配置態様の例を示す図であり、(a)は1PPS TE測定を行うときの、(b)はパケット TE測定を行うときの測定装置の配置態様をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係る測定装置、及び測定方法の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0045】
本発明に係る測定装置の一実施形態として、被測定ネットワークの性能を測定するネットワーク測定装置を例に挙げて説明する。ネットワーク測定装置は、それぞれ異なる場所に配置される複数の機器(例えば、
図1における基地局30、31、32、バウンダリクロック21)が、任意のGNSSから取得された基準時刻情報に時刻同期して動作する被測定ネットワークを対象とし、所望の場所に移動して該移動先の場所の機器のいずれかに接続した後、任意のGNSSからの受信信号情報に基づき当該場所での測位を開始し、情報取得元のGNSSとの時刻同期を図ったうえで被測定ネットワークの性能を測定するものである。特に、本実施形態に係るネットワーク測定装置は、情報送信元の任意のGNSSから送信される複数の周波数帯の信号(マルチバンド)の受信に対応したものである。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置50が測定対象とする5Gネットワーク1の要部構成を示す概念図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置50の機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、本発明の測定装置を構成する。
【0047】
図1に示すように、5Gネットワーク1は、グランドマスタクロック20と、バウンダリクロック21と、複数の基地局30、31、32(上述した複数の機器に相当)と、を、例えば、イーサネット(登録商標)などの所定の通信規格の通信手段を介して通信可能に接続して構成されている。5Gネットワーク1において、グランドマスタクロック2、バウンダリクロック21、基地局30、31、32等の各機器は、例えば、GPS(Global Positioning System)、QZSS、Galileo等のGNSSからの衛星情報を受信できるようになっている。これら各GNSSは、上述した情報送信元としての任意のGNSSとなり得るものであり、それぞれ、GNSS衛星10a、10b、10cを有している。
図1において、GNSS衛星10a、10b、10cは、それぞれ、例えば、GPS、QZSS、Galileoを構成するGNSS衛星であり、単一の(シングル)GNSSで、複数の周波数帯(マルチバンド)の信号を送出可能な構成を有している。なお、本発明は、5Gネットワークに限らず、
図11に示すネットワークやこれを構成する機器類を被測定対象とすることができる。この場合、複数の基地局30、31、32は、それぞれネットワークの機器類やこれが設置されたデータセンタ等に置き換わる。
【0048】
かかる構成を有する5Gネットワーク1において、グランドマスタクロック20は、例えば、GPSを構成するGNSS衛星10aから受信した時刻情報に基づいて、PTPのパケットを送出する。バウンダリクロック21は、このPTPのパケットを受けて同期し、その同期に基づいて基地局30、31、32に時刻同期を行う。このようにして、基地局30、31、32がそれぞれグランドマスタクロック20に同期することで5Gネットワークが同期するようになっている。
【0049】
5Gネットワーク1は、例えば、
図11に示すシステム構成に代表されるように、GNSS(例えば、GPS)から取得した時刻情報に基づくPTPパケットを、マスタからスレーブ、さらには該スレーブをマスタとしたときの当該マスタからその配下の複数のスレーブへと転送する構成を有するPTPネットワークで実現されている。
【0050】
本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、
図1に示す5Gネットワーク1を構成するバウンダリクロック21、または基地局30、31、32に必要に応じて接続され、当該5Gネットワーク1が5G通信規格を満たしているかどうかに関する種々の測定を行う通信テスタとして運用される。ネットワーク測定装置50における5Gネットワーク1を対象とする測定の例として、例えば、時刻同期誤差測定(時刻同期誤差試験)が挙げられる。時刻同期誤差測定は、パケット TE測定と1PPS TE測定を包含している。
【0051】
パケット TE測定においては、例えば、バウンダリクロック21におけるグランドマスタクロック20から受信するPTPパケットのエラーを測定する(
図11(b)参照)。パケット TE測定を行う場合、ネットワーク測定装置50のネットワーク測定用端子58(
図2参照)を、バウンダリクロック21の外部接続ポート(図示せず)に接続したうえでアンテナ入力端子51に、例えば、ネットワーク測定装置50に付属する持ち運び可能な付属GNSSアンテナ28aに替えて、バウンダリクロック21の傍に設備された既設GNSSアンテナ28bを接続することができるようになっている。なお、本発明でいう既設GNSSアンテナ28bとは、GNSSアンテナ本体、ケーブル、受信アンプ、フィルタ等を含む受信アンテナ系統を指す。
【0052】
1PPS TE測定は、例えば、基地局30、31、32がグランドマスタクロック20に同期しているどうかを判定するための試験である(
図11(a)参照)。1PPS TE測定を行う場合、ネットワーク測定装置50は、1PPS測定用端子59(
図2参照)に対して基地局30、31、32のいずれかを接続する一方で、アンテナ入力端子51に対し、当該ネットワーク測定装置50に付属する持ち運び可能な付属GNSSアンテナ28aまたは、当該基地局30、31、32の傍に設備された既設GNSSアンテナ28bを接続する必要がある。なお、
図1に示す構成において、基地局31、32については、基地局30のように、その脇(傍)に既設GNSSアンテナ28bが存在してもよいし、存在しなくてもよい。5Gネットワーク1は、本発明の被測定ネットワークを構成し、バウンダリクロック21、基地局30、31、32は、本発明の機器を構成する。また、上述した付属GNSSアンテナ28a、既設GNSSアンテナ28bは、本発明のGNSSアンテナを構成する。
【0053】
ネットワーク測定装置50は、パケット TE測定の実施場所(バウンダリクロック21の配置場所)、または時刻同期誤差測定の実施場所(基地局30、31、32の配置場所(試験場所))に必要に応じて移動可能な可搬型のもので実現される。以下、バウンダリクロック21の配置場所、基地局30、31、32の配置場所、を試験場所ということがある。
【0054】
ネットワーク測定装置50は、移動先の試験場所でGNSS衛星10a、10b、10c等によって構成される任意のGNSSのうちのマルチバンドとして予めユーザが設定した複数の信号(周波数帯がそれぞれ異なる)の送信元GNSS(例えば、GNSS衛星10aの異なる周波数帯の信号)に対する時刻同期を図ったうえで、バウンダリクロック21を対象とする時刻同期誤差測定、例えば、パケット TE測定、または基地局30、31、32を対象とする時刻同期誤差測定、例えば、1PPS TE測定を実施する。パケット TE測定、1PPS TE測定の開始に先立ち、ネットワーク測定装置50は、当該試験場所に対応するロケーション情報を設定し、該設定されたロケーション情報をベース(測位開始ロケーション情報)として測位を実行し、上記送信元GNSSとの同期を図るための同期制御を実施する。ロケーション情報としては、バウンダリクロック21の配置場所、及び基地局30、31、32の配置場所(試験場所)にそれぞれ対応する、緯度、経度、高度の情報が設定されるようになっている。
【0055】
なお、ネットワーク測定装置50での前述した同期制御等に使用する時刻情報の取得元であるGNSS衛星10a、10b、10c等は、複数の航法衛星から地上に向けて送信される電波を受信することで位置や速度方位の算出及び高精度な時刻の取得を実現可能とするGNSSの一部を構成する。ここで例えばGNSS衛星10aの属するGNSSとしては、GPSを利用することができる。また、GNSS衛星10b、10cの属するGNSSとしては、それぞれ例えば、GLONASS、Galileoを利用することができる。利用可能なGNSSとしては、この他、BeiDou、QZSS(準天頂衛星システム)など、種々のものが挙げられる。
【0056】
上記時刻誤差同期測定、例えば、1PPS TE測定において、ネットワーク測定装置50では、前述した同期制御によってマルチバンドの送信元GNSSと、例えば同期を継続した時間が予め設定した所定の時間を過ぎる(同期が図られる)と、このときに送信元GNSSから取得される時刻情報に基づき生成される基準時刻情報(基準1PPS信号)と、時刻同期誤差測定の対象である基地局30、31、32が送信元GNSSの一つである例えばGNSS衛星10aから上位の機器(グランドマスタクロック20、バウンダリクロック21)経由で取得している時刻情報に基づいて出力する被測定基準時刻情報(被測定1PPS信号)と、を比較することで、ネットワークが例えば所望の安定性や同期確度を満たしているか否かの判定が行われる。
【0057】
本実施形態において、ネットワーク測定装置50は、複数のGNSS衛星10a、10b、10cから送信(提供)される複数のバンド(マルチバンド)の信号を受信して被測定対象であるバウンダリクロック21、基地局30、31、32の測定を行うマルチバンド方式に対応している。これを実現すべく、ネットワーク測定装置50は、
図1に示す5Gネットワーク1の構成において、マルチバンドの信号を提供可能な複数のGNSS衛星10a、10b、10cに対向し、設定により、これらGNSS衛星10a、10b、10cから送出されるバンドのうちの予め設定した任意の数のバンド(マルチバンド)を選択的に受信可能な構成となっている。ここでGNSS衛星10a、10b、10cは、例えば、複数のバンドを送出可能な構成であり、上述したマルチバンドの設定に際しては、GNSSの中の1つの衛星(GNSS衛星10a、10b、10c)から送出される複数のバンドのうち1または複数のバンドを選択して設定できるようになっている。
【0058】
具体的に、ネットワーク測定装置50では、例えば、測定に先立ってロケーション情報を設定する際、後述するロケーション情報設定画面70(
図3参照)を用い、シングルバンドかマルチバンドかを選択的に設定できるようになっている。シングルバンドが設定された場合、ネットワーク測定装置50は、その設定された単一の(シングル)GNSS、例えば、GPSを構成するGNSS衛星10aが送出する1つの周波数帯の信号(シングルバンド)を受信処理して位置情報、時刻情報等を算出する処理を実施する。
【0059】
これに対し、マルチバンドが設定された場合、ネットワーク測定装置50は、その設定された複数のバンド(周波数帯)の信号を送出しているGNSS、例えば、GPSを構成するGNSS衛星10aが送出する複数の周波数帯の信号(マルチバンド)をそれぞれ受信し、該受信したマルチバンドの信号を用いて、シングルバンド時よりも高い精度で位置情報、時刻情報等を算出する処理を実施する。
【0060】
以上の概略説明を踏まえ、以下、本実施形態に係るネットワーク測定装置50の構成について
図2及び
図3を参照して詳細に説明する。
【0061】
図2に示すように、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、アンテナ入力端子51、GNSS受信機52、信号処理装置53、測定モジュール54、表示操作部55、記憶部56、制御部57、ネットワーク測定用端子58、1PPS測定用端子59を有して構成されている。
【0062】
アンテナ入力端子51は、GNSS衛星10a、10b、10cから送信される信号を受信するためのGNSSアンテナによる受信信号を入力する端子である。ネットワーク測定装置50は、アンテナ入力端子51に対してGNSSアンテナを着脱可能な構成を有している。ネットワーク測定装置50は、例えば、パケット TE測定に際し、アンテナ入力端子51に対して、付属GNSSアンテナ28aに替えて、バウンダリクロック21の傍に設備された既設GNSSアンテナ28bを接続することができるようになっている。なお、ネットワーク測定用端子58は、パケット TE測定に際し、被測定対象である、例えば、バウンダリクロック21の外部接続ポート(図示せず)との接続を行うために用いられる端子である。
【0063】
また、ネットワーク測定装置50は、1PPS TE測定に際し、アンテナ入力端子51には、上記GNSSアンテナとして、当該ネットワーク測定装置50に付属する付属GNSSアンテナ28a、または5Gネットワーク1の基地局30、31、32の傍に設備された既設GNSSアンテナ28bを、それぞれ、接続することが可能となっている。なお、1PPS測定用端子59は、1PPS TE測定に際し、被測定対象である、例えば、基地局30、31、32等が出力する被測定信号(例えば、被測定1PPS信号等)を入力するための端子である。
【0064】
このように、アンテナ入力端子51は、GNSS衛星10a、10b、10cから送信される信号(マルチバンド)を受信するために、付属GNSSアンテナ28aを接続できるのは勿論、該付属GNSSアンテナ28aに替えて、基地局30、31、32の傍に設備された既設GNSSアンテナ28b、バウンダリクロック21の傍に設備された既設GNSSアンテナ28bを接続可能な構成を有している。
【0065】
GNSS受信機52は、バウンダリクロック21、あるいは基地局30、31、32の各機器に接続した既設GNSSアンテナ28b、あるいは付属GNSSアンテナ28aにより受信されてアンテナ入力端子51より入力される信号を入力し、GNSS衛星10a、10b、10cの受信信号情報として信号処理装置53、及び測定モジュール54に出力するものである。GNSS受信機52は、複数のGNSS衛星10a、10b、10cが送出可能な複数の周波数帯(マルチバンド)の信号の受信処理に対応可能な機能構成である。
【0066】
信号処理装置53は、GNSS受信機52が出力するGNSS衛星10a、10b、10cからの受信信号情報を入力し、該受信信号情報に基づく各種の信号処理を実施し、その処理結果を表示操作部55に送出する機能部である。信号処理装置53は、上記受信信号情報に基づいて、例えば、当該場所の緯度、経度、高度等の情報を算出する測位処理を実行し、これらの各情報を測位情報として出力する。信号処理装置53は、表示操作部55によってマルチバンドが設定されている場合には、設定されたマルチバンドに含まれる各バンドの信号を使用して測位情報を算出するようになっている。信号処理装置53は、本発明の信号処理部を構成する。
【0067】
測定モジュール54は、時刻同期誤差測定(1PPS測定、パケット TE測定を含む)等の各種測定動作を実施する機能部である。測定モジュール54は、例えば、既設GNSSアンテナ28b、または付属GNSSアンテナ28aから入力する受信信号に基づきGNSS受信機52が出力する同期信号、例えば、基準1PPS信号に対しての、5Gネットワーク1の基地局30、31、32から取り込まれる信号(被測定1PPS信号)の位相を比較する1PPS TE測定を行う。測定モジュール54はまた、バウンダリクロック21の傍に設備された既設GNSSアンテナ28bでの受信信号情報に基づきGNSS受信機52が出力する基準信号(基準10MHz信号)に対するPTPパケット時刻の比較を行い、片方向遅延量(One Way Delay:OWD)およびパケット TEを測定するOWD/パケット TE測定などの測定を行う。
【0068】
表示操作部55は、表示機能及び入力操作機能及び兼用するタッチパネルから構成される。表示操作部55の表示機能は、後述するロケーション情報設定画面70(
図3参照)、受信異常警告報知メッセージ76(
図5参照)など、種々の画面あるいは情報の表示を行う。表示操作部55の入力操作機能は、ロケーション情報設定画面70を用いたロケーション情報の設定操作などの各種設定操作、あるいは指令の入力などの各種指示操作を受け付ける。
【0069】
記憶部56は、5Gネットワーク1の性能を測定するために必要な各種制御情報、後述する制御部57における設定制御部61、測位制御部62、測定制御部63、表示制御部64、マルチバンド異常検出部65、警告報知制御部66の各機能を実現するために実行するプログラム等、種々の情報を記憶するものである。
【0070】
制御部57は、ネットワーク測定装置50全体を制御するものであり、設定制御部61、測位制御部62、測定制御部63、表示制御部64、マルチバンド異常検出部65、警告報知制御部66を有している。
【0071】
設定制御部61は、表示操作部55の入力操作機能による設定操作を受け付けて該設定操作に対応する各種の情報を設定する処理機能部である。設定制御部61は、例えば、ロケーション情報設定画面70を用いたマルチバンド及び、シングルバンド等の設定処理の他、パケット TE測定、時刻同期誤差測定等に係る各種の設定を行う機能部である。設定制御部61は、本発明のマルチバンド設定手段を構成する。
【0072】
測位制御部62は、ロケーション情報設定画面70を用いて設定された当該試験場所に対応するロケーション情報を用いた測位のための制御を行う機能部である。本実施形態において、測位制御部62は、選択(設定)された測位開始ロケーション情報に基づき、バウンダリクロック21に接続されたネットワーク測定装置50の傍に設備された例えば既設GNSSアンテナ28bにより受信された受信信号情報に基づいて当該場所(バウンダリクロック21の配置場所)での測位を実行するパターンと、基地局30、31、32の傍に設備された既設GNSSアンテナ28b、または付属GNSSアンテナ28aによる受信信号情報に基づいて当該場所(基地局30、31、32の各配置場所)での測位を実行するパターンと、がある。ここでバウンダリクロック21への接続時、及び基地局30、31、32への接続時に既設GNSSアンテナ28bにより受信された受信信号情報をまとめて第1の受信信号情報というものとする。
【0073】
測定制御部63は、設定制御部61での設定に基づく5Gネットワーク1の各種の測定、例えば、1PPS TE測定、OWD/パケット TE測定などの測定動作を実行させる機能部である。
【0074】
表示制御部64は、設定制御部61により設定された情報、測位制御部62による測位情報、測定制御部63の測定制御に基づく測定結果等、種々の情報を表示操作部55の表示機能部に表示させる制御を行う。また、表示制御部64は、上述したロケーション情報設定画面70(
図3参照)、受信異常警告報知メッセージ76(
図5参照)などの表示制御も行う。
【0075】
マルチバンド異常検出部65は、アンテナ入力端子51に対し、付属GNSSアンテナ28a若しくは既設GNSSアンテナ28bを、直接、接続した状態で、付属GNSSアンテナ28a、既設GNSSアンテナ28bによる受信信号情報に基づきマルチバンドに関する受信異常を検出する機能部である。マルチバンド異常検出部65は、本発明の受信異常検出手段を構成している。
【0076】
警告報知制御部66は、マルチバンドに関する受信異常が検出された場合、当該受信異常が発生した旨の警告報知を行う機能部である。警告報知制御部66は、本発明の警告報知手段を構成する。
【0077】
次に、本発明の一実施形態に係るネットワーク測定装置50における時刻同期誤差測定の制御動作について
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
図4においては、特に、5Gネットワーク1におけるバウンダリクロック21を対象としてパケット TE(OWD/パケット TE)測定を行うときの制御動作について説明する。なお、ここではその詳しい動作説明を省略しているが、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、5Gネットワーク1を対象とする時刻同期誤差測定について、基地局30、31、32を対象とする1PPS TEを行うことも可能であることはいうまでもない。
【0078】
本実施形態に係るネットワーク測定装置50によるパケット TEの測定環境については、例えば、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSが存在していることが前提とされる。これらのGNSSは、それぞれ、複数の周波数帯の信号を送出する機能を有している。
図1においては、例えばGPS、QZSS、Galileoの各GNSSが存在し、GPSを構成しているGNSS衛星10a、QZSSを構成しているGNSS衛星10b、Galileoを構成しているGNSS衛星10cが、それぞれ、マルチバンドの信号を送信している測定環境が明示されている。
【0079】
このような測定環境において、本実施形態に係るネットワーク測定装置50では、例えば、単一のGNSSを送信元として設定し、そのGNSSを構成するGNSS衛星から送信されるマルチバンドの受信処理を行う場合を想定している。特に、
図4においては、例えばGPSという単一のGNSSを送信元として設定し、該GPSを構成するGNSS衛星10aから送出されるマルチバンドの受信処理を行ってパケット TE測定を行う場合の制御動作について説明する。
【0080】
本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、例えば、
図1に示す5Gネットワーク1におけるバウンダリクロック21の配置場所(試験場所)まで移動し、バウンダリクロック21に接続した後、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等の各GNSS(ここではGPSとする)に対する同期を図ったうえで、該GPSを構成するGPS衛星(ここではGNSS衛星10a)から送出され、既設GNSSアンテナ28bで受信されてアンテナ入力端子51より入力する衛星信号(マルチバンド)に基づく当該バウンダリクロック21を対象とするパケット TE測定を実施する。なお、本発明は、5Gネットワーク1に限らず、
図11に示すネットワークやこれを構成する機器類を被測定対象とすることができる。この場合、バウンダリクロック21は、それぞれネットワークの機器類やこれが設置されたデータセンタ等に置き換わる。
【0081】
ネットワーク測定装置50において、パケット TE測定を開始するには、試験場所である、例えば、バウンダリクロック21の配置場所まで移動する(ステップS1)。ここで移動手段として例えば車両を利用する場合等においては、移動中、ネットワーク測定装置50の電源をオンにし(ステップS2)、試験場所に到着するまでの間にGNSS受信機52に備わっている図示しない基準周波数発信器の動作を安定化させておくことが望ましい。
【0082】
基準周波数発信器は、アンテナ入力端子51から入力する受信信号に基づいて上述した基準1PPS信号を出力するものである。基準周波数発生器は、上記各GNSSのうちの事前に指定されたGNSSを構成しているGNSS衛星(10a、10b、10c)から供給されるシングルバンド、あるいはマルチバンドのいずれの信号の受信に対しても基準1PPS信号を出力できるようになっている。
【0083】
試験場所(現地)に到着すると、ネットワーク測定装置50を被測定対象であるバウンダリクロック21に接続する。具体的には、バウンダリクロック21の外部接続ポートをネットワーク測定装置50のネットワーク測定用端子58に接続するとともに、アンテナ入力端子51に対して、例えばバウンダリクロック21の傍に設備された既設GNSSアンテナ28bを接続する(ステップS3)。これにより、ネットワーク測定装置50では、上記各GNSSから送出される信号を既設GNSSアンテナ28bで受信し、アンテナ入力端子51を介してGNSS受信機52に入力させる一方で、バウンダリクロック21の外部接続ポートから出力される信号を、ネットワーク測定用端子58を介して測定モジュール54に入力させる測定準備が整う。
【0084】
これ以後、ネットワーク測定装置50は、表示操作部55での所定のロケーション情報設定画面呼出操作を受け付けることにより、表示制御部64が、表示操作部55にロケーション情報設定画面70を表示する(ステップS4)。
【0085】
ロケーション情報設定画面70は、例えば、
図3に示すように、GNSS選択ツール71と、仰角指定ツール72と、固定位置指定ツール73を有している。GNSS選択ツール71は、スクロールボタン71aの操作に応じてGNSS種別欄71bをスクロールして表示させながら所望のGNSS種別が選択できるようになっている。GNSS選択ツール71としては、必要に応じてシングルバンド、またはマルチバンドを選択することができるマルチバンド選択ツール71cがさらに設けられている。マルチバンド選択ツール71cは、チェック欄にチェックを入れることでマルチバンドを選択することができ、チェック欄内のチェックを解くことでシングルバンドを選択することができるようになっている。
【0086】
仰角指定ツール72は、アンテナ入力端子51に接続されているGNSSアンテナ(付属GNSSアンテナ28a、既設GNSSアンテナ28b等)の仰角を数字で指定するようになっている。
【0087】
固定位置指定ツール73は、試験場所の固定位置を指定するためのツールであり、ロケーション名指定ツール73aに関連付けて、スクロール欄73b、緯度欄73c、経度欄73d、高度欄73e、編集ボタン73fを配置して構成されている。固定位置指定ツール73では、ロケーション名指定ツール73a内にチェックを入れ、スクロール欄73b内をスクロールさせてロケーション名を選択し、緯度欄73c、経度欄73d、高度欄73eのそれぞれ適宜な値を入力することにより、ロケーション名(場所を識別する識別情報)に対応してロケーション情報を直接入力(設定)できるようになっている。編集ボタン73fは、上述の如く設定されたロケーション情報の編集を指示するための機能ボタンである。
【0088】
上記ステップS4でロケーション情報設定画面70が表示された後、設定制御部61は、該ロケーション情報設定画面70上でのGNSS種別、バンド種別(マルチバンドまたはシングルバンド)、アンテナ入力端子51に接続されているGNSSアンテナの仰角、ロケーション名及びロケーション情報等の設定を受け付ける(ステップS5)。なお、
図3に示すロケーション情報設定画面70は、GNSS種別としてGPSと、QZSS及びGalileoの組み合わせ、すなわちマルチGNSSを設定したときの例である。
図4のフローチャートにおいて、例えばGPS単一の衛星情報を対象とするマルチバンドの受信処理を行う場合のロケーション情報設定画面70においては、GNSS種別としてはGPS、バンドの種別についてはマルチバンドの入力(設定)をそれぞれ受け付けることになる。
【0089】
設定の受付が完了すると、測位制御部62は、設定されたバンド種がマルチバンドであるか否かをチェックする(ステップS6)。ここで設定されたバンド種別がシングルバンドであることが検出された場合(ステップS6でNO)、ステップS10へ移行するように制御する。
【0090】
これに対して、設定されたバンド種別がマルチバンドであることが検出された場合(ステップS6でYES)、次いでマルチバンド異常検出部65は、GPSを構成するGNSS衛星10aから送出され、既設GNSSアンテナ28bにより受信されて外部接続ポートを経由してアンテナ入力端子51から入力する衛星信号(マルチバンド)を対象とするマルチバンド受信異常判定のための処理を実行し(ステップS7)、さらにその処理結果に基づいてマルチバンド受信異常が発生したか否かの判定を行う(ステップS8)。ステップS7で実施されるマルチバンド受信異常判定のための処理は、例えば、後述する<捕捉マルチバンド数>、<バンド間のレベル差>、<GNSS受信値による各衛星の疑似距離>、<GNSS受信アンテナ系統の異常>等の各項目についてその値、状態を求める処理に相当する。ステップS8では、上記各項目の値、状態に応じてマルチバンド受信異常が発生したか否かを判定する。
【0091】
ここでマルチバンド異常検出部65は、上記ステップS5で設定を受け付けたGPSを送信元とし、該GPSを構成するGNSS衛星10aから送出されたマルチバンドの信号が正常に(例えば、設定したマルチバンドの数だけ)受信されていることを検出した場合(ステップS8でNO)、ステップS10へ移行させるように制御する。
【0092】
これに対して、マルチバンド異常検出部65によって上記マルチバンドの信号が正常に受信されていない(マルチバンド受信異常である)ことが検出されると(ステップS8でYES)、警告報知制御部66は、マルチバンドの受信が異常である旨の警告報知を行う(ステップS9)。ステップS9での警告報知は、例えば、表示操作部55に対する受信異常警告報知メッセージ76(
図5参照)の表示、または警告音の鳴動等の方法により行うことができる。
【0093】
また、ステップS9において、警告報知制御部66は、上記表示または音による警告報知に合わせ、設定制御部60による上記設定について、マルチバンドを受信処理するための設定からシングルバンドを受信処理するための設定への切り替え(以下、単に「マルチバンドからシングルバンドへの切り替え」という)を促す旨を合わせて報知するようにしてもよい。
【0094】
ここでマルチバンドからシングルバンドへの切り替えを促す旨の報知が行われた場合、ユーザは、例えば、上記ステップS4まで戻り、ステップS5にて再度、ロケーション情報設定画面70を表示させ、マルチバンドからシングルバンドへの設定変更を行うことができる。なお、測定精度の低下を許容できる場合には、ステップS9でマルチバンド受信異常の警告報知を受けながらも、そのままマルチバンドによる測定動作を継続(ステップS10へ移行)するようにしてもよい。
【0095】
上記ステップS9でマルチバンドからシングルバンドへの切り替えを促す旨を報知し、ユーザがシングルバンドへの切り替え設定を行った場合には、それ以後の処理中、ステップS6において、設定されたバンド種別がマルチバンドではないことが検出される(ステップS6でNO)ことで、ステップS10へ移行する制御が実施される。
【0096】
ステップS10に移行すると、測位制御部62は、ステップS5で設定されたGPSを構成するGNSS衛星10aを送信元とするバンド(シングルバンドまたはマルチバンド)を捕捉して測位を実行させるように、GNSS受信機52、信号処理装置53を駆動制御する(ステップS10)。ここでの測位に際しては、設定制御部61は、ステップS5で設定を受け付けたロケーション情報をその時点におけるネットワーク測定装置50の測位情報としてGNSS受信機52に設定する。
【0097】
ここで信号処理装置53は、ステップS5でシングルバンドが設定されている場合には、上記各GNSS中の当該シングルバンドの信号の送信元の単一のGNSS(例えば、GPS)から当該シングルバンドに対応する周波数帯の信号を受信して位置情報、及び時刻情報を算出する。また、ステップS5でマルチバンドが設定されている場合、信号処理装置53は、そのマルチバンド中の各バンドの送信元であるGPSを構成するGNSS衛星10aから当該マルチバンドに対応する各周波数帯の複数の信号を受信して位置情報、及び時刻情報を算出する。
【0098】
ステップS10での測位の実行中、測位制御部62は、送信元GNSS(GPS)から受信されたシングルバンド、またはマルチバンドの信号に基づいて測位して得た位置情報と上述した設定済みの測位情報(ロケーション情報)とに基づいて送信元GNSS(GPS)に対する同期を継続した時間が予め設定した所定の時間を過ぎているか否か(同期を図るうえで十分とされる時間が経過したか否か)を判定する(ステップS11)。
【0099】
ここで所定の時間が過ぎていないと判定されると(ステップS11でNO)、ステップS10以降の処理を続行して同期制御を繰り返し実施し、その間、所定の時間が過ぎていると判定された場合には(ステップS11でYES)、時刻同期誤差測定処理を実行する(ステップS12)。時刻同期誤差測定は、1PPS TE測定とパケット TE測定を含む。この例においては、時刻同期誤差測定処理として、例えば、パケット TE測定を実行する。
【0100】
ネットワーク測定装置50において時刻同期誤差測定、例えばパケット TE測定が開始されると、測定制御部63は、送信元GNSS(GPS)から既設GNSSアンテナ28bによって受信され、アンテナ入力端子51に入力する、シングルバンド、またはマルチバンドの信号をGNSS受信機52に入力するように制御する。一方で、測定制御部63は、ネットワーク測定用端子58から入力するPTPパケットを取り込み、当該PTPパケットを測定モジュール54に入力するように制御する。
【0101】
ここで測定モジュール54は、GNSS受信機52から入力する信号(アンテナ入力端子51からの入力信号)と、その比較対象としてネットワーク測定用端子58から入力する信号(PTPパケット)と、に基づいてグランドマスタクロック20から受信するPTPパケットのエラーを測定するパケット TE測定を実施する。
【0102】
ステップS12におけるパケット TE測定が終了すると、表示制御部64は、それまでの試験結果を表す試験結果表示画面55aを表示操作部55に表示させるように制御する(ステップS13)。試験結果表示画面55aの一例を
図9に示している。この試験結果表示画面55aは、上記ステップS12において、上述したパケット TE測定とともに、1PPS TE測定が行われたときの試験結果の表示例を示している。
図9に示すように、試験結果表示画面55aには、時刻同期誤差測定のサマリ(要約)が表示される。表示された試験結果表示画面55aからはそれぞれ所定の操作により各項目に特化した試験結果画面に遷移することができる。
【0103】
上述した画面の遷移の実行中、測定制御部63は表示操作部55で測定終了の操作を受け付けたか否かをチェックする(ステップS14)。ここで測定終了の操作を受け付けていないと判定した場合(ステップS14でNO)、ステップS12以降の処理を続行する。そして、この間に測定終了の操作を受け付けたと判定された場合(ステップS14でYES)、上述した一連の時刻同期誤差測定処理を終了させる。
【0104】
次に、
図4のステップS9におけるマルチバンド受信異常の警告報知の具体例について説明する。本実施形態では、例えば、以下に示す代表的な4つの項目に着目した異常の検出と警告報知を想定している。
【0105】
<捕捉マルチバンド数>
マルチバンドが設定されている場合(
図4のステップS5参照)に、
図4のステップS7におけるマルチバンド受信異常判定のための処理として、送信元GNSS(例えばGPS)から送信されるマルチバンドに対応する信号を捕捉する制御を実施し、その際に捕捉されたマルチバンド数が、設定されたマルチバンド数より少ないときにマルチバンドの受信異常と判定し、警告を報知する方法である。
【0106】
この方法の適用に当たっては、例えば、マルチバンド異常検出部65が、捕捉したバンド数が設定したバンド数に達しているか否かを検出するマルチバンド数検出機能を有する必要がある。すなわち、この方法を適用する場合において、マルチバンド異常検出部65は本発明の捕捉手段を構成する。
【0107】
かかる構成を有するマルチバンド異常検出部65を備えるネットワーク測定装置50において、上記マルチバンド数検出機能は、例えば、
図4のステップS8において、ステップS7で捕捉されたマルチバンド数が、設定されたマルチバンド数に達しているか否かをチェックする。警告報知制御部66は、捕捉されたマルチバンド数が、設定されたマルチバンド数に達していない(捕捉されたマルチバンド数が、設定されたマルチバンド数よりも少ない)ことが検出された場合、マルチバンドが不能である旨を報知するようになっている。
【0108】
ここでの具体的警報報知例として、
図5には、受信情報捕捉結果画面75を用いて受信異常警告報知メッセージ76を表示する場合の例を挙げている。ここで表示される受信異常警告報知メッセージ76は、例えば、「Multi-band Alert:Multiband is invalid(GPS,GLONASS)」という内容である。この受信異常警告報知メッセージ76において、括弧内には、例えば、各GNSSの2バンドの状態を確認して1バンドしか捕捉できていないGNSSが表示されている。受信異常警告報知メッセージ76は、本発明の警告報知メッセージに相当する。なお、
図5に示す受信情報捕捉結果画面75は、マルチバンドの送信元としてGPSとGLONASSを設定したときの例である。
図4で想定しているように、マルチバンドの送信元として単一のGNSS(GPS)を設定したときの受信情報捕捉結果画面75においては、マルチバンドの設定数に満たない数のバンドしか捕捉できていないGNSSとしてGPSが表示されることとなる。
【0109】
この方法を適用する可搬型のネットワーク測定装置50において、ユーザは、例えば、上述した受信異常警告報知メッセージ76を確認することで、GNSS(GPS)のマルチバンドでの受信を選択設定しているときに、所望より少ないバンドしか捕捉できていない場合に、その旨を明確に知ることができる。このため、ユーザは、その後、シングルバンドに切り替え設定せずに測定を続ける場合であっても、5Gネットワーク1の同期誤差測定の確度・精度の低下を許容したうえで測定できる。また、このネットワーク測定装置50によれば、ユーザが使用する環境でのマルチバンド受信が可能となる何等かの対策をとることで、同期誤差測定の確度・精度を向上させることが可能となり、5Gネットワーク1が通信規格を満たすか否かの判定の信頼性を向上させることができる。
【0110】
<バンド間のレベル差>
GNSS(例えば、GPS)を構成するGNSS衛星(同、GNSS衛星10a)から取得した信号品質(衛星情報)が期待値と異なるときに警告を報知する場合の一例であり、期待値の項目としてバンド間のレベル差を用いる。具体的には、マルチバンドが設定され(
図4のステップS5参照)、
図4のステップS7のマルチバンド受信異常判定のための処理において、その全てのバンドの信号が捕捉されている状況においてさらに各バンドの信号間のレベル差をチェックし、レベル差が予め設定した所定の値を超えている状態をマルチバンドの受信異常と判定し、警告を報知する方法である。
【0111】
この方法の適用に当たっては、例えば、マルチバンド異常検出部65が、マルチバンドの各バンドの信号間のレベル差が所定の値を超えているか否かを検出するレベル差検出手段を有する必要がある。
【0112】
かかる構成を有するマルチバンド異常検出部65を備えるネットワーク測定装置50において、上記レベル差検出手段は、マルチバンドとして設定されている各バンドの信号間のレベル差を検出する。警告報知制御部66は、上記レベル差検出手段により検出された各バンドの信号間のレベル差が上記所定の値を超えていることが検出された場合、異常である旨を報知する構成としてもよい。
【0113】
<GNSS受信値による各衛星の疑似距離>
GNSS(例えば、GPS)から取得した信号(衛星情報)が期待値と異なるときに警告を報知する場合の他の例であり、期待値の項目としてGNSS受信値による各衛星の疑似距離を用いる。具体的には、マルチバンドが設定され(
図4のステップS5参照)、
図4のステップS7のマルチバンド受信異常判定のための処理において、該設定されている、例えば、2つのバンドの信号が捕捉されている状況下で、さらに、当該2つの信号から取得した情報に基づいて各衛星の疑似距離情報を算出する。ここで2つの信号の送出元の各衛星間の疑似距離情報の比較結果が通常とは異なる結果を呈する場合に、マルチバンドの受信異常と判定し、警告を報知する方法である。
【0114】
この方法の適用に当たっては、例えば、マルチバンド異常検出部65が、2つのバンドの信号の送出元の各衛星間の疑似距離情報を算出する算出手段と、算出された2つのバンドの信号の送出元の各衛星間の疑似距離情報を比較する比較手段を有する必要がある。
【0115】
かかる構成を有するマルチバンド異常検出部65を備えるネットワーク測定装置50において、上記算出手段は、2つのバンドの信号の送出元の各衛星間の疑似距離情報を算出し、さらに上記比較手段は、算出された2つのバンドの信号の送出元の各衛星間の疑似距離情報を比較する処理を行う。
【0116】
具体例を挙げると、例えば、
図6に示す例においては、同一の衛星(
図1におけるGNSSのうちの例えばGPSを構成するGNSS衛星10a)から送出される1つ目の周波数帯の成分を有する信号L1(実線で示す)の疑似距離Length(衛星・受信機)@L1と2つ目の周波数帯の成分を有する信号L2(点線で示す)の疑似距離Length(衛星・受信機)@L2とをまず算出する。ここで、Length(衛星・受信機)は、衛星と受信機(例えば、GNSS受信機52)間の距離を指している。次いで、上記比較手段は、1つ目の信号L1の疑似距離Length(衛星・受信機)@L1距離と2つ目の信号L2の疑似距離Length(衛星・受信機)@L2とに基づいて下式により信号L1、L2間の疑似距離の差(比較結果)を算出し、算出された疑似距離の差が正か負かを判定する。ただし、信号L1の周波数帯は、信号L2の周波数帯よりも高い周波数帯の成分を有することとする。なお、通常は低い周波数帯のほうが電離層等の影響により伝搬遅延時間が大きくなる。
疑似距離の差
=Length(衛星・受信機)@L1- Length(衛星・受信機)@L2 ・・・ (1)
【0117】
そのうえで、警告報知制御部66は、上記比較手段による式(1)に関する疑似距離の差(比較結果)が負の場合、すなわち、
Length(衛星・受信機)@L1- Length(衛星・受信機)@L2<0
を満たす場合には正常と判断し、異常の報知は行わない。
【0118】
これに対し、上記比較手段による式(1)に関する疑似距離の差(比較結果)が正の場合、すなわち、
Length(衛星・受信機)@L1- Length(衛星・受信機)@L2>0
を満たす場合には、警告報知制御部66は、異常である旨を報知する構成としてもよい。なお、信号品質のうち、本例は複数の信号間の遅延量の説明となる。
【0119】
<GNSS受信アンテナ系統の異常>
図4のステップS7のマルチバンド受信異常判定のための処理において、本測定装置(ネットワーク測定装置1)の外側に繋がるGNSS受信アンテナ系統の異常を検出し、マルチバンドが設定されている場合(
図4のステップS5参照)に、捕捉バンド数が不足している場合、あるいは各バンドの信号品質を満たさない場合等においては、マルチバンドの受信異常と判定し、警告を報知する方法である。
【0120】
かかる構成を有するマルチバンド異常検出部65を備えるネットワーク測定装置50において、警告報知制御部66は、例えば、
図4のステップS3以降のタイミングにおいて、捕捉バンド数の不足、各バンドの信号品質の低下等がマルチバンド異常検出部65により検出された場合、異常(GNSS受信アンテナ系統の異常)である旨を報知する構成としてもよい。これにより、既設GNSSアンテナ28bを構成するGNSSアンテナ本体、ケーブル、受信アンプ、フィルタ等を含む受信アンテナ系統の異常を認知することが可能となる。
【0121】
次に、
図4のステップS12における測定処理(OWD/パケット TE測定)、及びステップS13における測定結果表示処理について
図7~
図10を参照して説明する。
【0122】
図4のステップS12で実施するOWD/パケット TE測定においては、例えば、
図7に示す制御手順に沿って行うことができる。まず、ステップS31において、被測定物(基地局30、31、32)がネットワーク測定装置50にSyncメッセージを送信する。Syncメッセージを送信したときの被測定物のタイムスタンプをT1とする。Follow Upメッセージ(ステップS32参照)を使用しない場合は、SyncメッセージでスレーブクロックにT1が通知される。ネットワーク測定装置50がSyncメッセージを受信したときのネットワーク測定装置50のタイムスタンプをτ2とする。
【0123】
ステップS32で被測定物がFollow Upメッセージを送信する場合は、Follow Upメッセージでネットワーク測定装置にT1が通知される。
【0124】
ステップS33では、ネットワーク測定装置50が被測定物に対してDelay Requestメッセージを送信する。Delay Requestメッセージを送信したときのネットワーク測定装置のタイムスタンプをτ3とする。被測定物がDelay Requestメッセージ受信したときの 被測定物のタイムスタンプをT4とする。
【0125】
ステップS34では、被測定物がネットワーク測定装置50にDelay Requestメッセージを送信し、ネットワーク測定装置50にT4を通知する。
【0126】
ネットワーク測定装置50は、上記手順で得たデータに基づいてOWD、及びパケット TEを算出することができる。一例を挙げるとSync OWDは(τ2-T1)の式で求めることができ、Delay Request OWDは(T4-τ3)の式で求めることができる。
【0127】
図4のステップS12で実施する測定処理においては、上述したOWD/パケット TE測定の他、時刻同期誤差測定(1PPS測定)を行うこともできる。1PPS測定では、基準1PPS信号に対しての被測定1PPS信号の位相比較を行い、両者の位相誤差、偏差、及びフィルタ TEを測定する。位相誤差は、例えば、
図8に示すように、基準1PPS信号に対しての被測定1PPS信号の時間差に相当する。基準1PPS信号が被測定1PPS信号よりも進んでいるときは負の値になり、被測定1PPS信号が基準1PPS信号よりも進んでいるときは正の値になる。
【0128】
図4のステップS13では、上述したOWD/パケット TE測定(
図4のステップS12参照)、及び1PPS測定の測定結果が、例えば、
図9に示す試験結果表示画面55aを用いて表示される。試験結果表示画面55aには、時刻同期誤差測定のサマリが表示される。サマリを構成する情報のうち、TEは、基準1PPS信号と被測定1PPS信号の位相誤差(時間差)を示すものであり、例えば、cTE(constant Time Erorr)、dTE(dynamic Time Erorr)、max|TE|などの種別がある。ここで、cTEは、位相誤差の平均値(
図10)(a)参照)を示す。dTEはフィルタTEの平均値からのずれ量(
図10(b)参照)を示す。max|TE|は絶対値で表示した位相誤差の最大値を示す。試験結果表示画面55aは、1PPSボタン55a1、OWDボタン55a2、Packet TEボタン55a3を備え、該1PPSボタン55a1、OWDボタン55a2、Packet TEボタン55a3を押下することで、それぞれ、1PPS、OWD、パケット TEに関する詳細な測定結果の表示に切り替えることができるようになっている。
【0129】
図4においては、ネットワーク測定装置50において、単一のGNSS(例えば、GPS)を送信元として設定し、そのGNSSを構成するGNSS衛星(例えば、GNSS衛星10a)から送信されるマルチバンドの受信処理を行う場合を例に挙げてパケット TE測定の制御動作について説明した。
【0130】
QZSSという単一のGNSSを送信元として設定し、GNSS衛星10bから送出されるマルチバンドの受信処理を行う場合、及びGalileoという単一のGNSSを送信元として設定し、GNSS衛星10cから送出されるマルチバンドの受信処理を行う場合のいずれにおいても、同様(
図4参照)にしてパケット TE測定を実施できることはいうまでもない。
【0131】
さらに本実施形態に係るネットワーク測定装置50では、上述したGPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSがマルチGNSSとして採用される環境にあって、該マルチGNSSのうちの任意の複数のGNSSを組み合わせてマルチバンドの送信元として設定し、該複数のGNSSを構成する各GNSS衛星から送出されるマルチバンドの受信処理を行ってパケット TE測定を実施することができるようになっている。
【0132】
この場合、ユーザは、ロケーション情報設定画面70を用いて送信元とすべき複数のGNSSの組み合わせを設定する必要がある。例えば、GPSと、QZSS及びGalileoの組み合わせを設定する場合のロケーション情報設定画面70上でのGNSS種別欄71bのスクロール態様は、例えば、
図3に示すような態様となる。
【0133】
このように、本実施形態では、マルチバンド受信処理中にマルチバンド受信異常を検出してその旨を警告報知することを特徴とするものであり、単一のGNSSからマルチバンドを受信する受信動作を軸にしつつも、マルチGNSS中の任意の複数のGNSSからマルチバンドを受信する受信動作にもさらに対応可能な構成を有するものである。
【0134】
以上説明したように、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、複数の基地局30、31、32、あるいはバウンダリクロック21等の各機器のそれぞれの配置場所まで移動し、移動先の機器のいずれかに接続後、任意のGNSSを構成するGNSS衛星10a、10b、10cから送出されるそれぞれ異なる周波数帯の信号のうちから所望する複数の周波数帯の信号をマルチバンドとして受信処理し、該受信処理により取得された位置または時刻の情報に基づいて当該移動先の機器の測定を行う可搬型の測定装置である。
【0135】
このネットワーク測定装置50は、任意のGNSSを構成するGNSS衛星10a、10b、10cから送信される信号を受信するGNSSアンテナ、すなわち、当該ネットワーク測定装置50に付属する付属GNSSアンテナ28a、各基地局30、31、32、バウンダリクロック21の傍にそれぞれ設備された既設GNSSアンテナ28bを接続可能なアンテナ入力端子51と、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の送出元のGNSS(GNSS衛星10a、10b、10cによって構成される)を選択的に設定する設定制御部61と、移動先の機器のいずれかに接続し、アンテナ入力端子51に上記GNSSアンテナ(付属GNSSアンテナ28a、または既設GNSSアンテナ28b)を接続した状態で、送出元のGNSSから送出される信号(マルチバンド)の上記GNSSアンテナと、上記受信処理による受信信号情報に基づきマルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の受信異常を検出するマルチバンド異常検出部65と、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の受信異常が検出された場合、マルチバンド受信異常が発生した旨を警告報知する警告報知制御部66と、を具備して構成されている。
【0136】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、それぞれ異なる場所の被測定機器を対象とする測定に際し、送出元として設定した任意のGNSSから所望のマルチバンドを正常に受信できないときには、その旨の警告報知を受けて再設定等に迅速に対処できる。このため、精度の低い測定結果の採用を未然に防止することが可能となるうえ、受信異常の対策へのアクションがとれることで、高精度の測定に繋げることが可能となる。また、既設GNSSアンテナ28bを構成するGNSSアンテナ本体、ケーブル、受信アンプ、フィルタ等を含む受信アンテナ系統の異常を認知することが可能となる。
【0137】
本実施形態に係るネットワーク測定装置50において、アンテナ入力端子51は、当該ネットワーク測定装置50に付属する付属GNSSアンテナ28aに替えて、複数の機器のうち既設GNSSアンテナ28bを接続可能とされ、アンテナ入力端子51に既設GNSSアンテナ28bを接続したうえで、送出元のGNSSから送出される信号の既設GNSSアンテナ28bと、受信処理による受信信号情報に基づき測定を行う構成を有している。
【0138】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の受信信号情報に基づく測定を行うにあたり、測定装置メーカの提供するマルチバンド対応が確かな付属GNSSアンテナ28aに替えて、マルチバンド対応が不確かな既設のGNSSアンテナ28bであっても、マルチバンド受信異常が発生したことを報知することができ、またマルチバンドに対応可能なアンテナか否か確認することができ、マルチバンドに非対応のアンテナの場合は対応するアンテナを手配したり接続するアクションをとれることで、高精度の測定に繋げることが可能となる。
【0139】
また、本実施形態に係るネットワーク測定装置50において、警報報知制御部66は、警告報知に合わせ、送出元のGNSSの設定を、マルチバンドを受信処理するための設定から1つの周波数帯の信号であるシングルバンドを受信処理するための設定への切り替えを促す旨をさらに報知する構成である。
【0140】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、所望のマルチバンドを正常に受信できないときでも、シングルバンドの設定に切り替えることで、測定が不可能になる事態を回避でき、また測定を継続することができる。
【0141】
また、本実施形態に係るネットワーク測定装置50において、警告報知制御部66は、警告報知を、受信異常警告報知メッセージ76の表示、または警告音の鳴動の少なくとも一方により行う構成である。
【0142】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、受信異常警告報知メッセージ76の表示、または警告音の鳴動によってマルチバンド受信異常を確実にユーザに知らせることができ、警告報知の認知性を保つことができる。
【0143】
また、本実施形態に係るネットワーク測定装置50において、マルチバンド異常検出部65は、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号を対象に、送出元のGNSSから送信される信号を捕捉し、該捕捉した前記信号の信号品質が、設定されたマルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の所定の信号品質を満たすか否かを判定する捕捉手段を有し、警告報知制御部66は、捕捉手段により捕捉された信号の信号品質が所定の信号品質を満たさない場合、マルチバンド受信が不能である旨を報知する構成を有する。
【0144】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、捕捉された信号の信号品質が、設定されたマルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の所定の信号品質を満たさない場合、マルチバンド受信が不能であることを確実に認識でき、迅速な対処が可能となる。
【0145】
また、本実施形態に係るネットワーク測定装置50において、マルチバンド異常検出部65の上記捕捉手段は、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号間のレベル差を検出するレベル差検出手段を有し、警告報知制御部66は、レベル差検出手段により検出されたレベル差が予め設定した所定の値を超えている場合、異常である旨を報知する構成である。
【0146】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号間のレベル差が所定のレベルを超えている原因(マルチバンドに非対応のアンテナの使用等)となるマルチバンドの受信のアンテナ系統の異常を確実に認識することができる。
【0147】
また、本実施形態に係るネットワーク測定装置50において、マルチバンド異常検出部65の上記捕捉手段は、同一のGNSSから送出されるマルチバンドに対応する少なくとも2つの周波数帯の信号から疑似距離を算出する算出手段を有し、警告報知制御部66は、算出手段により算出された疑似距離が、所定の信号品質として予め設定した疑似距離が正であるとの条件を満たす場合、異常である旨を報知する構成を有している。
【0148】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、疑似距離が正であった場合に、マルチバンドの受信のアンテナ系統の異常を容易に認識することができる。
【0149】
また、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、複数の基地局30、31、32、あるいはバウンダリクロック21等の各機器が、任意のGNSS(それぞれがGNSS衛星10a、10b、10cによって構成される)から取得された基準時刻情報に同期して動作する5Gネットワーク1を対象とし、所望の場所に移動して該移動先の場所の機器のいずれかに接続した後、送出元のGNSSからの受信信号情報に基づき当該場所での測位を開始し、送信元GNSSとの同期を図ったうえで5Gネットワーク1の性能を測定するものである。
【0150】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、複数の基地局30、31、32、バウンダリクロック21等の各機器が配置され、GNSSから取得された基準時刻情報に同期して各機器が動作する5Gネットワークを被測定ネットワークとして、マルチバンドを用いた高精度の測定が行えるようになる。
【0151】
また、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の単一のGNSSを送信元として設定し、該単一のGNSSから複数の信号を受信する構成である。
【0152】
この構成により、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の単一のGNSSを信元として設定することでマルチバンドを用いた高精度の測定を実現できる。
【0153】
また、本実施形態に係るネットワーク測定装置50は、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の複数のGNSSを組み合わせて送信元として設定し、該複数のGNSSから複数の周波数帯の信号を受信する構成である。
【0154】
この構成を有するネットワーク測定装置50によれば、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS等のGNSSのうちの任意の複数のGNSSを組み合わせてマルチバンドの送出元として設定することで、多くのGNSSを有効に活用したマルチバンド受信処理、及びマルチバンド受信異常報知を確実に実施することができる。
【0155】
また、本実施形態に係る測定方法は、上記構成を有するネットワーク測定装置50を用いて複数の基地局30、31、32、あるいはバウンダリクロック21等の各機器の測定を行う測定方法であって、それぞれ異なる場所に配置された複数の機器の配置場所まで移動し、該移動先の機器のいずれかに接続し、かつ、アンテナ入力端子51にGNSSアンテナ(付属GNSSアンテナ28a、または既設GNSSアンテナ28b)を接続する接続ステップ(S3)と、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の送出元のGNSS(それぞれがGNSS衛星10a、10b、10cによって構成される)を選択的(任意)に設定するマルチバンド設定ステップ(S5)と、送出元のGNSSから送出される信号(マルチバンド)のGNSSアンテナ(付属GNSSアンテナ28a、または既設GNSSアンテナ28b)と、上記受信処理による受信信号情報に基づきマルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の受信異常を検出する受信異常検出ステップ(S8)と、マルチバンドに対応する複数の周波数帯の信号の受信異常が検出された場合、マルチバンド受信異常が発生した旨を警告報知する警告報知ステップ(S9)と、を含む構成である。
【0156】
この構成により、本実施形態に係る測定方法は、上記構成を有するネットワーク測定装置50を用いることで、それぞれ異なる場所の被測定機器を対象とする測定に際し、送出元として設定した任意のGNSSから所望のマルチバンドを正常に受信できないときには、その旨の警告報知を受けて再設定等に迅速に対処でき、極めて高い時刻確度・精度を要求される被測定機器を対象に、マルチバンド受信異常が発生した旨を確実に把握できる。このため、精度の低い測定結果の採用を未然に防止することが可能となるうえ、受信異常の対策へのアクションがとれることで、高精度の測定に繋げることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
以上のように、本発明に係る測定装置、及び測定方法は、極めて高い時刻確度・精度を要求される各場所の被測定機器を対象とする測定に際し、マルチバンドの受信異常が発生した場合の再測定に対する迅速な対応が可能であり、信頼性が高くかつ高精度の測定に繋げることが可能であるという効果を奏し、マルチバンド対応、かつ、可搬型の測定装置、及び測定方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0158】
1 5Gネットワーク(被測定ネットワーク)
10a、10b、10c GNSS衛星(GNSSの一部)
21 バウンダリクロック(機器)
28a 付属GNSSアンテナ(GNSSアンテナ)
28b 既設GNSSアンテナ(GNSSアンテナ、ケーブル、受信アンプ、フィルタ等を含む受信アンテナ系統)
30、31、32 基地局(機器)
50 ネットワーク測定装置(測定装置)
51 アンテナ入力端子
52 GNSS受信機
58 ネットワーク測定用端子
59 1PPS測定用端子
61 設定制御部(マルチバンド設定手段)
65 マルチバンド異常検出部(受信異常検出手段)
66 警告報知制御部(警告報知手段)