(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003800
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20230110BHJP
F28F 3/04 20060101ALI20230110BHJP
F28D 1/03 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28F3/04 A
F28D1/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105090
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA11
3L103AA37
(57)【要約】
【課題】熱交換部材を複数積層した熱交換器において、熱交換効率を向上させること、熱交換部材の撓みを抑制すること、及び、熱交換部材間の間隔を一定に保持する。
【解決手段】複数の熱交換部材が積層され、前記熱交換部材内に設けられた熱媒体流路を流通する内部熱媒体と前記熱交換部材の外表面を流通する外部熱媒体とを熱交換させる熱交換器において、前記熱媒体流路は、内部熱媒体を分流させる分流部と、前記分流部によって分流された内部熱媒体を合流させる第1合流部と、を備え、前記分流部は、前記熱交換部材の外側に突出し、前記外部熱媒体の流通方向に沿って配列される複数の分流流路を有し、前記第1合流部は、複数の前記分流流路と連通し、前記外部熱媒体の流通方向に亘って前記熱交換部材の外側に突出する第1凸部と、前記第1凸部から更に外側に突出する第2凸部とを有する、熱交換器を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱交換部材が積層され、前記熱交換部材内に設けられた熱媒体流路を流通する内部熱媒体と前記熱交換部材の外表面を流通する外部熱媒体とを熱交換させる熱交換器において、
前記熱媒体流路は、内部熱媒体を分流させる分流部と、前記分流部によって分流された内部熱媒体を合流させる第1合流部と、を備え、
前記分流部は、前記熱交換部材の外側に突出し、前記外部熱媒体の流通方向に沿って配列される複数の分流流路を有し、
前記第1合流部は、複数の前記分流流路と連通し、前記外部熱媒体の流通方向に亘って前記熱交換部材の外側に突出する第1凸部と、前記第1凸部から更に外側に突出する第2凸部とを有する、熱交換器。
【請求項2】
隣り合う前記熱交換部材の前記第2凸部が互いに当接するように複数の前記熱交換部材が積層されている、請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第2凸部は、前記第1凸部において、前記外部熱媒体の流通方向に沿って複数設けられている請求項1又は請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記分流流路は、前記熱交換部材の厚さ方向の一方側と他方側に前記外部熱媒体の流通方向に沿って交互に配列されている請求項1から請求項3のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項5】
前記熱媒体流路において、前記分流部と前記第1合流部とが、前記内部熱媒体の流通方向に交互に配置されている請求項1から請求項4のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第1合流部を挟んで一方側と他方側に配置される2つの前記分流部は、一方側の分流流路の配列位置と他方側の分流流路の配列位置とが、前記内部熱媒体の流通方向において前記外部熱媒体の流通方向に沿って互いにずれている請求項1から請求項5のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項7】
前記熱媒体流路は、前記内部熱媒体の流通方向に前記分流部及び前記第1合流部と並んで配置される第2合流部をさらに備え、
前記第2合流部は、複数の前記分流流路と連通し、前記外部熱媒体の流通方向に亘って前記熱交換部材の外側に突出している、請求項1から請求項6のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項8】
前記第1合流部と前記第2合流部は、前記分流部を挟んで前記内部熱媒体の流通方向に交互に設けられる請求項7記載の熱交換器。
【請求項9】
前記第2合流部を挟んで一方側と他方側に配置される2つの前記分流部は、一方側の分流流路の配列位置と他方側の分流流路の配列位置とが、前記内部熱媒体の流通方向において前記外部熱媒体の流通方向に沿って互いにずれている請求項7又は請求項8項記載の熱交換器。
【請求項10】
前記熱交換部材は、伝熱性を有する板状部材を加工して、前記板状部材の基準面から厚み方向に前記分流部と、前記第1合流部と、前記分流部及び前記第1合流部と並んで配置される第2合流部とに対応する打ち出し部を形成した2枚の伝熱プレートを重ね合わせて構成されている請求項1から請求項9のいずれか1項記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、特に、複数の熱交換部材を積層して構成される熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に熱媒体流路を有する扁平状の熱交換部材を複数積層して構成されるフィンレス熱交換器が知られている。フィンレス熱交換器では、熱交換部材を積層することで熱交換部材間に熱媒体流路と交差する空気流通路を形成し、各熱交換部材表面において、熱媒体流路を通過する熱媒体と、空気流通路を通過する空気とが熱交換を行うようになっている。このとき、熱媒体流路によって形成される熱交換部材表面の凹凸により空気流通路を通過する空気の直進を阻害することで熱媒体と空気との間の伝熱を促進させている。
一方、このようなフィンレス熱交換器では、各熱交換部材にコルゲートフィンなどのフィンが設けられていないことから、熱交換部材に撓みが生じる虞があり、撓みに起因して熱交換部材同士の間隔が一定に保持されない場合がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、熱媒体を流通させる連通流路を有する扁平状の熱交換部材を複数積層した熱交換器において、各熱交換部材の連通流路が形成されていない部位に複数の突出部(エンボス)を形成し、これらの突出部を、隣接する熱交換部材に当接させるものが開示されている。特許文献1の熱交換器では、一方の熱交換部材に形成された突出部を他方の熱交換部材に当接させることで、熱交換部材の撓みを抑制し、隣接する熱交換部材との間隔を所望の間隔に保持するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の熱交換器では、各熱交換部材における突出部は連通流路が形成されていない部位に設けられている。つまり、熱交換部材において、突出部が設けられた分だけ、連通流路(凸部)を形成することができないため、熱媒体部材表面に形成される凹凸の総数が少なくなる。この結果、空気流通路において空気の流れの方向を変更させて空気の直進を阻害する凸部の数が十分でなく、熱交換器における熱交換効率を向上させることができない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱交換部材を複数積層した熱交換器において、熱交換効率を向上させること、熱交換部材の撓みを抑制すること、及び、熱交換部材間の間隔を一定に保持すること、等を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、複数の熱交換部材が積層され、前記熱交換部材内に設けられた熱媒体流路を流通する内部熱媒体と前記熱交換部材の外表面を流通する外部熱媒体とを熱交換させる熱交換器において、前記熱媒体流路は、内部熱媒体を分流させる分流部と、前記分流部によって分流された内部熱媒体を合流させる第1合流部と、を備え、前記分流部は、前記熱交換部材の外側に突出し、前記外部熱媒体の流通方向に沿って配列される複数の分流流路を有し、前記第1合流部は、複数の前記分流流路と連通し、前記外部熱媒体の流通方向に亘って前記熱交換部材の外側に突出する第1凸部と、前記第1凸部から更に外側に突出する第2凸部とを有する、熱交換器を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱交換部材を複数積層した熱交換器において、熱交換効率を向上させること、熱交換部材の撓みを抑制すること、及び、熱交換部材間の間隔を一定に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱交換器の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材の概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材の概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材を示す図であり、
図4(A)は側面図、
図4(B)は正面図、
図4(C)は背面図である。
【
図5】
図5(A)~(D)は
図4(B)に示す熱交換部材の断面図であり、
図5(A)はA-A断面図、
図5(B)はB-B断面図、
図5(C)C-C断面図、
図5(D)はD-D断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材が複数積層された状態を示す図であり、
図6(A)は側面図、
図6(B)は正面図である。
【
図7】
図7(A)~(D)は
図6(B)に示す熱交換部材の断面図であり、
図7(A)はA-A断面図、
図7(B)はB-B断面図、
図7(C)C-C断面図、
図7(D)はD-D断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材の第1伝熱プレートを示す図であり、
図8(A)は側面図、
図8(B)は正面図、
図8(C)は背面図である。
【
図9】
図9(A)~(D)は、
図8(B)に示す第1伝熱プレートの断面図であり、
図9(A)はA-A断面図、
図9(B)はB-B断面図、
図9(C)はC-C断面図、及び、
図9(D)はD-D断面図を示す。
【
図10】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材の第2伝熱プレートを示す図であり、
図10(A)は側面図、
図10(B)は正面図、
図10(C)は背面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材における、第1合流部の変形例を示す断面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材における、第1合流部の変形例を示す断面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る熱交換器を構成する熱交換部材に設定したパラメータ及びその値に係る表である。
【
図16】
図14の表に示すパラメータを用いて設計した熱交換器についての解析結果を示すグラフである。
【
図17】
図14のパラメータから得られたL1と熱交換量との関係を示すグラフである。
【
図18】
図14のパラメータから得られたL3と熱交換量との関係を示すグラフである。
【
図19】伝熱プレートの熱貫流率と熱交換量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
図1に、本発明の実施形態に係る熱交換器1の概略構成を示す。熱交換器1は、例えば、車両用空調装置などに適用され、
図1に示すように、内部熱媒体を流通させる複数の熱交換部材11を備えるコア部10と、コア部10の両端に配置される第1サイドプレート20A及び第2サイドプレート20Bと、第1サイドプレート20Aを介してコア部10に設けられ、内部熱媒体の流入口及び流出口となる第1パイプ30A及び第2パイプ30Bとを備えている。
【0012】
熱交換器1は、第1パイプ30Aを介してコア部10の複数の熱交換部材11の熱媒体流路14に流入した内部熱媒体と、熱交換部材11表面を流通する外部熱媒体との間で熱交換を行わせ、第2パイプ30Bを介して内部熱媒体をコア部10から流出させる。このとき、熱交換部材11内の熱媒体流路14を流通する内部熱媒体の流通方向と、熱交換部材11表面を流通する外部熱媒体の流通方向が交差(本実施形態においては直交)するようになっている。
【0013】
コア部10は、
図1及び
図2に示すように、等間隔に配置された複数の熱交換部材11を備えている。各熱交換部材11は、金属製の板状部材に対してプレス加工などによって凹凸を形成した第1伝熱プレート41及び第2伝熱プレート42を重ね合わせて構成されている(
図3)。第1伝熱プレート41及び第2伝熱プレート42については後述する。
【0014】
図3及び
図4に示すように、熱交換部材11には、熱交換器の一方側に位置する第1ヘッダ部12と、熱交換器の他方側に位置する第2ヘッダ部13と、第1ヘッダ部12と第2ヘッダ部13との間に形成され、第1ヘッダ部12及び第2ヘッダ部13と連通し内部熱媒体を流通させる熱媒体流路14とが設けられている。
【0015】
図4(A)~(C)に、熱交換部材11の側面図、正面図、及び背面図を示す。また、
図5(A)~(D)に、
図4(B)のA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図、及び、D-D断面図を示す。
図6(A)及び(B)に、複数の熱交換部材11が積層された状態を示す側面図及び正面図を示す。
図7(A)~(D)に、
図6(B)のA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図、及び、D-D断面図を示す。
【0016】
図4~
図7に示すように、熱媒体流路14には、分流部15と合流部16とが内部熱媒体の流通方向に並んで設けられている。本実施形態において、分流部15は、第1分流部15Aと第2分流部15Bとを含み、合流部16は、第1合流部16Aと第2合流部16Bとを含んでいる。
【0017】
第1分流部15Aは、熱交換部材11に流入した内部熱媒体を分流させる複数の流路15aを備えている。複数の流路15aは、熱交換部材11の長手方向(図中x方向)に沿い、熱交換部材11の厚さ方向(図中z方向)外側に突出するように設けられている。隣接する流路15aの間は平坦部15cとなっている。複数の流路15aは、熱交換部材11の外表面を流通する外部熱媒体(空気)の流通方向(図中y方向)に沿って配列され、熱交換部材11の厚さ方向の一方側と他方側に交互に設けられている。すなわち、第1分流部15Aにおいて、熱交換部材11の厚さ方向の一方側の流路15aに対応する厚さ方向の他方側には、平坦部15cが位置している。
【0018】
第2分流部15Bは、第1分流部15Aで分流され合流部16において合流した内部熱媒体を再び分流させる複数の流路15bを備えている。複数の流路15bは、熱交換部材11の長手方向(図中x方向)に沿い、熱交換部材11の厚さ方向(図中z方向)外側に突出するように設けられている。隣接する流路15bの間は平坦部15cとなっている。複数の流路15bは、熱交換部材11の外表面を流通する外部熱媒体(空気)の流通方向(図中y方向)に沿って配列され、熱交換部材11の厚さ方向の一方側と他方側に交互に設けられている。すなわち、第1分流部15Bにおいて、熱交換部材11の厚さ方向の一方側の流路15bに対応する厚さ方向の他方側には、平坦部15cが位置している。
【0019】
第1分流部15Aの流路15aと第2分流部15Bの流路15bとは、熱交換部材11の厚さ方向の一方側において、外部熱媒体の流通方向における配列位置が互いにずれている。同様に、第1分流部15Aの流路15aと第2分流部15Bの流路15bとは、熱交換部材11の厚さ方向の他方側において、外部熱媒体の流通方向における配列位置が互いにずれている。
【0020】
つまり、合流部16を挟んで一方側に設けられる第1分流部15Aの流路15aの配列位置と他方側に設けられる第2分流部15Bの流路15bの配列位置とが、内部熱媒体の流通方向において互いにずれている。言い換えると、熱交換部材11では、図中y方向において流路15aの位相と流路15bの位相とが異なるように配列されている。これにより、内部熱媒体は、流通方向(図中x方向)への直進が阻害され、流路15aの位相と流路15bの位相とがずれた分だけ図中y方向に迂回しながら図中x方向に流通する。
【0021】
合流部16は、本実施形態において、第1合流部16Aと第2合流部16Bとを含んでいる。第1合流部16Aは、第1分流部15A及び第2分流部15Bと連通し、熱交換部材11の幅方向、すなわち、熱交換部材11の外表面を流通する空気(外部熱媒体)の流通方向(図中y方向)に亘って設けられ、第1分流部15Aの各流路15aから流入した内部熱媒体を合流させる。
【0022】
第1合流部16Aは、熱交換部材11の厚み方向外側に(図中z方向)2段以上の段差を有するように突出している。つまり、第1合流部16Aは、熱交換部材11の外側に突出する第1凸部16aと、第1凸部16aから更に外側に突出する第2凸部16bとを有している。
【0023】
第1合流部16Aの外表面は、突出方向の高さが互いに異なる第1凸部16aと第2凸部16bとが交互に設けられた凹凸面となっている。複数の熱交換部材11を積層した場合に、隣接する熱交換部材11の第2凸部16b同士を当接させることで熱交換部材11同士が等間隔に配置され、かつ、各熱交換部材11の撓みを抑制することができるので、熱交換部材11同士の間隔を一定に保持することができる。なお、第2凸部16bの数や、第2凸部16bの配置位置は適宜定めることができる。また、複数の第2凸部16bを等間隔に設けることで、より効果的に熱交換部材11の撓みを抑制することができる。
【0024】
第2合流部16Bは、熱交換部材11の外表面を流通する空気(外部熱媒体)の流通方向(図中y方向)に亘って設けられ、第2分流部15Bの各流路15bから流入した内部熱媒体を合流させる。第2合流部16Bは、熱交換部材11の外側に、例えば、第1凸部16aと突出方向の高さがほぼ同一となるように突出している。したがって、複数の熱交換部材11を積層した場合に、隣接する熱交換部材11の第2合流部16B同士が接しないようになっている。
【0025】
上述の通り、各熱交換部材11は、例えば、金属等の伝熱性を有する板状部材に対してプレス加工などによって凹凸を形成した第1伝熱プレート41及び第2伝熱プレート42を重ね合わせて構成されている。
【0026】
図8(A)~(C)に、第1伝熱プレート41の側面図、正面図、及び背面図を示す。
図9(A)~(D)に、
図8(B)のA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図、及び、D-D断面図を示す。
【0027】
図8及び
図9に示すように、第1伝熱プレート41には、第1伝熱プレートの基準面(平坦部15c)から突出するように、第1ヘッダ部12、第2ヘッダ部13、第1分流部15A、第2分流部15B、第1合流部16A及び第2合流部16Bに対応する打ち出し部が形成されている。
【0028】
より具体的には、第1伝熱プレート41には、第1分流部15Aの流路15aを形成する打ち出し部45a、第1合流部16Aを形成する打ち出し部46a、第2分流部15Bの流路15bを形成する打ち出し部45b、及び第2合流部16Bを形成する打ち出し部46bがそれぞれ形成されている。
【0029】
図10(A)~(C)に、第2伝熱プレート42の側面図、正面図、及び背面図を示す。
図11(A)~(D)に、
図11(B)のA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図、及び、D-D断面図を示す。
【0030】
図10及び
図11に示すように、第2伝熱プレート42には、第2伝熱プレートの基準面(平坦部15c)から突出するように、第1ヘッダ部12、第2ヘッダ部13、第1分流部15A、第2分流部15B、第1合流部16A及び第2合流部16Bに対応する打ち出し部が形成されている。
【0031】
より具体的には、第2伝熱プレート42には、第1分流部15Aの流路15aを形成する打ち出し部45a、第2分流部15Bの流路15bを形成する打ち出し部45b、第1合流部16Aを形成する打ち出し部46a、及び第2合流部16Bを形成する打ち出し部46bがそれぞれ形成されている。
【0032】
第1伝熱プレート41と第2伝熱プレート42とは重ね合わされたときに、第1伝熱プレート41又は第2伝熱プレート42の一方の打ち出し部45aは他方の平坦部15cと対向して流路15aを構成し、一方の打ち出し部45bは他方の平坦部15cと対向して流路15bを構成する。また、第1伝熱プレート41及び第2伝熱プレート42の打ち出し部46aは互いに対向して第1合流部16Aを構成する。同様に、第1伝熱プレート41及び第2伝熱プレート42の打ち出し部46bも互いに対向して第2合流部16Bを構成する。
【0033】
なお、例えば、
図12及び
図13に示すように、第1合流部16Aについて、熱交換部材11の厚み方向の一方側又は他方側のいずれか一方のみを、突出方向の高さが互いに異なる第1凸部16aと第2凸部16bとが交互に設けられた凹凸面としてもよい。
【0034】
このように構成された熱交換器について、熱交換部材11の寸法に係る複数のパラメータを設定して熱交換量についての解析を行った。
【0035】
具体的には、
図14の表に示すように、熱交換部材11の寸法に関するパラメータとして、熱交換部材11間のピッチTp、熱交換部材11の高さ(厚さ)Th、熱交換部材11を構成する第1伝熱プレート及び第2伝熱プレートの厚さ(肉厚)Tt、流路15aの中心間のピッチCp、流路15aの幅Cw、流路15aの数Cn、流路15aの鉛直部角度Fa、流路15a角部Rを設定した(
図15)。このうち、第1伝熱プレート及び第2伝熱プレートの肉厚Ttと流路数Cnを一定とし、その他のパラメータについてそれぞれ3つの値(設定値1~設定値3)を設定した。
【0036】
また、隣接する流路15aの基端部同士の距離をL1、流路15aの頂面の幅をL2とし、隣接する熱交換部材11の流路15aの頂部間の距離(隣接する熱交換部材11同士の最短距離)をL3とする。
なお、L1、L2及びL3については、上記パラメータに基づいて数式(1)、(2)及び(3)に従って決定することができる。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
図16に、このようにパラメータ及び数値を設定した熱交換部材11を積層した熱交換器について解析を行い、その結果をプロットしたグラフを示す。
図16(A)は、通気抵抗(Pa)と熱交換量(W)との関係を示し、
図16(B)は、通気抵抗(Pa)と体積当たりの熱交換量(kW/m
3)との関係を示している。
【0041】
また、
図17に、上記パラメータから算出したL1と、
図16の解析結果から得られる熱交換量との関係を示す。具体的には、
図17(A)に、L1(mm)と体積当たりの熱交換量(kW/m
3)との関係を示し、
図17(B)にL1(mm)と通気抵抗当たりの熱交換量(W/Pa)との関係を示す。
【0042】
図17(A)では、L1以外のパラメータによる最大値と最小値を実線で示している。また、中央部の灰色の帯は一般的な従来の熱交換器の体積当たりの熱交換能力の範囲を示している。
【0043】
図17(A)から、L1が増加するほど体積当たりの熱交換量が減少する傾向にあることがわかる。従来の熱交換器と同等の能力を確保するために、L1≦1.3mmであることが好ましい。また、L1=0とすると、熱交換部材11の第1分流部15Aの流路15a及び第2分流部15Bの流路15bが連通してしまうか、又は、各流路間の肉厚が薄くなってしまい耐圧性能が確保できなくなる。このため、体積当たりの能力の観点からは0.1mm≦L1≦1.3mmがより好ましい。また、0.1mm≦L1≦0.75mmとすることで、従来の熱交換器以上の能力とすることができる。
【0044】
図17(B)では、L1以外のパラメータによる最大値と最小値を実線、平均値を破線で示している。灰色の帯は一般的な従来の熱交換器の通気抵抗当たりの熱交換能力の範囲を示している。
図17(B)から、L1が増加するほど通気抵抗当たりの熱交換量が増加する傾向にあることがわかる。平均値に注目すると、従来の熱交換器と同等以上の能力を確保するためには、少なくとも0.25≦L1となることが好ましい。
【0045】
図17(A)及び
図17(B)から、L1の範囲は、0.1mm≦L1≦1.3mmであることが好ましく、0.25mm≦L1≦0.75mmであることがさらに好ましいということができる。
【0046】
続いて、
図18(A)L3(mm)と体積当たりの熱交換量(kW/m
3)との関係を示し、
図18(B)にL3(mm)と通気抵抗当たりの熱交換量(W/Pa)との関係を示す。
【0047】
図18(A)では、L3以外のパラメータによる最大値と最小値を実線、平均値を破線で示している。中央部の灰色の帯は一般的な従来の熱交換器の体積当たりの熱交換能力の範囲を示している。
図18(A)から、L3が減少するほど体積当たりの熱交換量が増加する傾向にあることがわかる。従来の熱交換器と同等の能力を確保するために、L3≦0.8mmであることが好ましい。また、L3≦0.52mmとすることで、従来の熱交換器以上の能力とすることができる。
【0048】
図18(B)では、L3以外のパラメータによる最大値と最小値を実線で示している。灰色の帯は一般的な従来の熱交換器の通気抵抗当たりの熱交換能力の範囲を示している。
図18(B)から、L3が減少するほど通気抵抗当たりの熱交換量が減少する傾向にあることがわかる。従来の熱交換器と同等の能力を確保するためには、0.18mm≦L3である必要がある。また、0.32mm≦L3とすることで、従来の熱交換器以上の能力とすることができる。
【0049】
図18(A)及び
図18(B)から、L3の範囲は、0.18mm≦L3≦0.8mmであることが好ましく、0.32≦L3≦0.52mmであることがさらに好ましいということができる。
【0050】
上述した第1伝熱プレート41及び第2伝熱プレート42は、例えば、アルミニウム製の板材に樹脂コーティングを施したものや、熱可塑性樹脂、性質の異なる複数の樹脂を重ね合わせたものを適用することもできる。
【0051】
一方で、このような形態の熱交換器の場合、伝熱プレートの熱伝導率や肉厚が熱交換能力に対して大きな影響を及ぼす。
図19に示すように、伝熱プレートの肉厚方向の熱伝導率をλW/(m・K)、肉厚をt(m)とし、肉厚方向の熱貫流率(U値)をλ/tとしたとき、熱貫流率(U値)が300W/(m
2・K)以下になると、急激に能力が低下することがわかる。したがって、第1伝熱プレート及び第2伝熱プレートの熱貫流率(U値)が300W/(m
2・K)以上であることが好ましい。
【0052】
このように構成された熱交換器1によれば、熱交換部材11には、互いに連通する第1ヘッダ部12、熱媒体流路14、及び第2ヘッダ部13が設けられ、熱交換部材11に流入した内部熱媒体は、第1ヘッダ部12から熱媒体流路14を経て第2ヘッダ部13まで流通する。このとき、内部熱媒体と、熱交換部材11の外部を流通する外部熱媒体とが熱交換を行う。内部熱媒体の流通方向と外部熱媒体の流通方向とが交差(本実施形態では直交)しているため、通常は、外部熱媒体の温度は外部熱媒体の流通方向に対して増加または減少する。すなわち、外部熱媒体の流通方向に対して、内部熱媒体と外部熱媒体との温度差にムラが生じる。
【0053】
これに対し、本実施形態では、第1分流部15Aと第2分流部15Bとの間に、第1合流部16A又は第2合流部16Bのいずれかを設けている。従って、外部熱媒体の上流側に位置する流路15a又は流路15bを流通する内部熱媒体と下流側に位置する流路15a又は流路15bを流通する内部熱媒体とが、第1合流部16A又は第2合流部16Bで合流して混合されて、内部熱媒体の温度が均一化される。これにより、内部熱媒体と熱交換を行う外部熱媒体の温度のムラが抑制され、熱交換効率を向上させることができる。
【0054】
また、第1分流部15Aの流路15aの配列位置と第2分流部15Bの流路15bの配列位置とが、内部熱媒体の流通方向において互いにずれているため、内部熱媒体の下流における流れの発達や温度境界層の発達を抑制することができ、外部熱媒体と内部熱媒体との熱交換効率を向上させることができる。
【0055】
さらに、熱交換部材11の第1合流部16Aは、第1凸部16aから更に外側に突出する第2凸部16bを備え、隣接する熱交換部材11は第2凸部同士が互いに当接するので、熱交換部材11の撓みが抑制され、複数の熱交換部材11の間隔が一定の間隔に保持される。そして、隣接する熱交換部材11と当接する第2凸部を、内部熱媒体の流路である第1合流部に一体的に設けていることから、内部熱媒体の流通路を遮ることがない。
【0056】
第1分流部15A及び第2分流部15Bには、隣接する熱交換部材11と接触させるためのエンボスや凸部を設ける必要がないことから、第1分流部15A及び第2分流部15Bに流路15a,15bと流路の間の平坦部15cとを設けることにより、熱媒体流路14の外表面であって外部熱媒体の流通経路上に十分な凹凸を設けることができる。
【0057】
このように、熱交換部材11では、熱媒体流路14の外表面に形成される凹凸により外部熱媒体の直進を阻害し、熱媒体流路14の表面の凹凸に沿って外部熱媒体の流れの方向を変更させながら熱交換部材11表面を通過させることで内部熱媒体と外部熱媒体との伝熱促進を図ることができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1:熱交換器、10:コア部、11:熱交換部材、12:第1ヘッダ部、13:第2ヘッダ部、14:熱媒体流路、15:分流部、15A:第1分流部、15B:第2分流部、15a,15b:流路、15c:平坦部、16:合流部、16A:第1合流部、16B:第2合流部、16a:第1凸部、16b:第2凸部、20A:第1サイドプレート、20B:第2サイドプレート、30A:第1パイプ、30B:第2パイプ、41:第1伝熱プレート、42:第2伝熱プレート、45a,45b,46a,46b:打ち出し部