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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003801
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】熱媒体温調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/32 20180101AFI20230110BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230110BHJP
   F24F 11/85 20180101ALI20230110BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20230110BHJP
   F25B 29/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
F24F11/32
F25B1/00 399Y
F24F11/85
B60H1/00 101B
F25B29/00 361B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105091
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 宣伯
(72)【発明者】
【氏名】高沢 修
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正亮
【テーマコード(参考)】
3L211
3L260
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA60
3L211DA26
3L211FA42
3L211GA26
3L260BA51
3L260DA10
3L260FB17
(57)【要約】
【課題】システム異常が生じた場合であっても、複数の温調対象に対して熱媒体による温調を可能にする。
【解決手段】熱媒体温調システムは、熱源との熱交換で温度管理された熱媒体を循環させる熱媒体回路を備え、熱媒体回路が熱媒体を圧送するポンプを備えると共に温調対象との間で熱交換する複数の温調対象熱交換器を備え、熱媒体回路は、システム異常時に、ポンプと複数の温調対象熱交換器を繋ぐ直列流路を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源との熱交換で温度管理された熱媒体を循環させる熱媒体回路を備え、前記熱媒体回路が熱媒体を圧送するポンプを備えると共に温調対象との間で熱交換する複数の温調対象熱交換器を備える熱媒体温調システムであって、
前記熱媒体回路は、システム異常時に、前記ポンプと前記複数の温調対象熱交換器を繋ぐ直列流路を形成することを特徴とする熱媒体温調システム。
【請求項2】
前記直列流路は、前記熱媒体回路が備える流路切替装置の非通電状態で形成されることを特徴とする請求項1記載の熱媒体温調システム。
【請求項3】
前記熱媒体回路は、前記流路切替装置によって複数の独立回路を形成し、
前記独立回路毎に、前記ポンプと前記温調対象熱交換器が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の熱媒体温調システム。
【請求項4】
複数の冷媒熱媒体熱交換器を有する冷媒回路を備え、
前記独立回路の各々には、少なくとも1つの前記冷媒熱媒体熱交換器が設けられることを特徴とする請求項3記載の熱媒体温調システム。
【請求項5】
前記直列流路は、
熱媒体と外気とが熱交換する外部熱交換器、前記冷媒熱媒体熱交換器の1つである蒸発器、前記温調対象熱交換器の1つである室内空調装置のクーラーコア、他の前記温調対象熱交換器である温調対象物用熱交換器の順に熱媒体を流すことを特徴とする請求項4記載の熱媒体温調システム。
【請求項6】
前記直列流路は、
前記冷媒熱媒体熱交換器の1つである凝縮器、前記温調対象熱交換器の1つである室内空調装置のヒーターコア、前記外部熱交換器の順に熱媒体を流すことを特徴とする請求項5記載の熱媒体温調システム。
【請求項7】
前記直列流路は、
前記ヒーターコアの入口側に熱媒体を加熱する補助熱源を設けることを特徴とする請求項6記載の熱媒体温調システム。
【請求項8】
前記冷媒回路は、少なくとも3つ以上の前記冷媒熱媒体熱交換器のうち2つ以上を選択して、選択した前記冷媒熱媒体熱交換器の一部を凝縮器とし他部の蒸発器とすることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項記載の熱媒体温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体回路を備えた熱媒体温調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱媒体回路(例えば、水回路)を備える温調システムは、温調対象の管理温度に応じて独立した熱媒体回路を形成し、ヒートポンプなどの熱源との熱交換で所定の温度に調整された熱媒体を循環させている。この際、熱媒体回路に切替弁を設けて、独立した熱媒体回路を直列に繋ぐことで、循環する熱媒体の温度調整などを行っている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-505796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した熱媒体回路を備える温調システムは、前述した切替弁や熱源となるヒートポンプの故障といったシステム異常が生じると、熱媒体回路を流れる熱媒体は、温度管理ができない状態で独立した流路を循環することになり、複数の温調対象が存在する場合には、熱媒体による温度管理ができないものが生じてしまう問題があった。
【0005】
本発明は、熱媒体温調システムにおいて、このような問題に対処することが課題であり、システム異常が生じた場合であっても、多くの温調対象に対して、温度管理された熱媒体を循環させて温調を可能にすること、が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明の熱媒体温調システムは、以下の構成を具備するものである。
熱源との熱交換で温度管理された熱媒体を循環させる熱媒体回路を備え、前記熱媒体回路が熱媒体を圧送するポンプを備えると共に温調対象との間で熱交換する複数の温調対象熱交換器を備える熱媒体温調システムであって、前記熱媒体回路は、システム異常時に、前記ポンプと前記複数の温調対象熱交換器を繋ぐ直列流路を形成することを特徴とする熱媒体温調システム。
【発明の効果】
【0007】
このような特徴を備えた熱媒体温調システムは、システム異常が生じた場合であっても、ポンプと複数の温調対象熱交換器を繋ぐ直列流路を形成することで、直列流路に繋がる多くの温調対象に対して温度管理された熱媒体による温調が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る熱媒体温調システムの構成例(切替弁V1~V4がデフォルト状態)を示した説明図。
図2】熱媒体回路における流路切替装置の説明図。
図3】切替弁V1~V4の切り替え状態を示した説明図((a)がデフォルト状態、(b)が非デフォルト状態)。
図4】切替弁V5,V6の切り替え状態を示した説明図((a)がデフォルト状態、(b)が非デフォルト状態)。
図5】本発明の実施形態に係る熱媒体温調システムの構成例(切替弁V1~V4が非デフォルト状態)を示した説明図。
図6】冷媒回路制御装置の説明図。
図7】異常動作時の冷媒回路の動作モードを示す説明図((a),(d)が2段階減圧の例、(b),(c)が1段階減圧の例)
図8】異常動作時の室内空調装置のエアミックスドアの状態を示す説明図((a)がヒーターコア上流側を遮断する例、(b)がクーラーコアの単独送風流路を遮断する例)。
図9】熱媒体温調システムの異常動作モードと運転モードを纏めた表。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
図1において、本発明の実施形態に係る熱媒体温調システム1は、熱媒体回路100を備えている。この熱媒体温調システム1は、一例としては、EV(Electric Vehicle)などの車両用熱管理システムを構築するものである。
【0011】
熱媒体回路100は、熱源となる冷媒回路1Uとの熱交換で温度管理された熱媒体を循環させるものであり、熱媒体を圧送するポンプP1,P2,P3と、複数の温調対象熱交換器を備えている。図示の例によると、複数の温調対象熱交換器は、室内空調装置50のヒーターコア51とクーラーコア52、温調対象物であるバッテリー、インバーター、モーター、パワーコントロールユニットなどを温調するための温調対象物用熱交換器60,61,62,63を備える。
【0012】
また、熱媒体回路100は、切替弁V1,V2,V3,V4,V5,V6を備えている。これらの切替弁V1~V6は、図2に示すように、切替弁V1~V6を切り替え制御する制御装置200と共に、流路切替装置100Aを構成している。
【0013】
流路切替装置100Aは、切替弁V1~V6を切り替えるに際して、図3及び図4の(a)に示したデフォルト状態と図3及び図4の(b)に示した非デフォルト状態の切り替えがなされる。ここでデフォルト状態とは、システム異常時に切り替えられる(初期状態に戻る)状態であり、例えば、流路切替装置100Aの非通電状態がデフォルト状態になる。
【0014】
図1は、流路切替装置100Aがデフォルト状態である熱媒体回路100において、熱媒体が流れる流路を太線で示し、流れの方向を矢印で示している。
【0015】
ここで、デフォルト状態の切替弁V1は、流路110から流入する熱媒体を流路112側に流出すると共に、流路102から流入する熱媒体を流路111側に流出する。また、非デフォルト状態の切替弁V1は、流路110から流入する熱媒体を流路111側に流し、流路102側から流入する熱媒体を流路112側に流す。
【0016】
デフォルト状態の切替弁V2は、流路120から流入する熱媒体を流路122側に流出すると共に、流路123から流入する熱媒体を流路121側に流出する。また、非デフォルト状態の切替弁V2は、流路120から流入する熱媒体を流路121側に流出すると共に、流路123から流入する熱媒体を流路122側に流出する。
【0017】
デフォルト状態の切替弁V3は、流路130から流入する熱媒体を流路131側に流出すると共に、流路133から流入する熱媒体を流路132側に流出する。また、非デフォルト状態の切替弁V3は、流路130から流入する熱媒体を流路132側に流出すると共に、流路133から流入する熱媒体を流路131側に流出する。
【0018】
デフォルト状態の切替弁V4は、流路132から流入する熱媒体を流路142側に流出すると共に、流路140から流入する熱媒体を流路141側に流出する。また、非デフォルト状態の切替弁V4は、流路132から流入する熱媒体を流路141側に流出すると共に、流路140から流入する熱媒体を流路142側に流出する。
【0019】
デフォルト状態の切替弁V5は、流路131から流入する熱媒体を流路150側に流出し、非デフォルト状態の切替弁V5は、流路131から流入する熱媒体を流路150を介することなく流路151を介して合流部150Aに流す。また、デフォルト状態の切替弁V6は、流路103から流入する熱媒体を流路160側に流出し、非デフォルト状態の切替弁V6は、流路103から流入する熱媒体を流路160に流すことなく流路161を介して合流部161Aに流す。
【0020】
このような流路切替装置100Aのデフォルト状態では、熱媒体回路100は、ポンプP1,P2,P3と複数の温調対象熱交換器(ヒーターコア51,クーラーコア52、温調対象物熱交換器60,61,62,63)を繋ぐ直列流路100Tを形成する。すなわち、熱媒媒体回路100における直列流路100Tを循環する熱媒体は、複数のポンプP1,P2,P3と複数の温調対象熱交換器(ヒーターコア51,クーラーコア52、温調対象物熱交換器60,61,62,63)を全て経由して循環する。
【0021】
図1に示した直列流路100Tでは、ポンプP1から出た熱媒体は、冷媒回路1Uにおける冷媒熱媒体熱交換器11を通る流路101を介して、ヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、流路110を介して切替弁V1に入る。切替弁V1を出た熱媒体は、流路112を介してタンク6に入り、タンク6を出た熱媒体は、流路120を介して切替弁V2に入る。
【0022】
切替弁V2を出た熱媒体は、流路122を介して、外気と熱交換する外部熱交換器5に入り、外部熱交換器5を出た熱媒体は、流路133を介して切替弁V3に入り、切替弁V3を出た熱媒体は、流路132を介して切替弁V4に入り、切替弁V4を出た熱媒体は、流路142を介してポンプP3に入る。
【0023】
ポンプP3を出た熱媒体は、冷媒回路1Uにおける冷媒熱媒体熱交換器13を通過する流路103を介して切替弁V6に入り、切替弁V6を出た熱媒体は、流路160を介してクーラーコア52に入り、クーラーコア52を出た熱媒体は、流路140を介して切替弁V4に入る。
【0024】
切替弁V4を出た熱媒体は、流路141、合流部161A、流路123を介して、切替弁V2に入り、切替弁V2を出た熱媒体は、流路121、バッテリー温調用の温調対象物熱交換器60、流路130を介して切替弁V3に入る。切替弁V3を出た熱媒体は、流路131を介して切替弁V5に入る。切替弁V5を出た熱媒体は、温調対象物用熱交換器63,61,62を通過する流路150、合流部150Aを介してポンプP2に入る。
【0025】
ポンプP2を出た熱媒体は、冷媒回路1Uにおける冷媒熱媒体熱交換器12を通過する流路102を介して切替弁V1に入る。そして、切替弁V1を出た熱媒体は、流路111を介してポンプP1に戻る。流路102には、必要に応じて、熱媒体を加熱する補助熱源7が設けられる。
【0026】
これに対して、流路切替装置100Aの切替弁V1~V4が非デフォルト状態に切り替えられると、熱媒体回路100は、図5に示すように、ポンプP1,P2,P3毎に複数の独立回路が形成され、独立回路毎にポンプP1,P2,P3の何れかが設けられ、独立回路毎に温調対象熱交換器の何れかが設けられる。
【0027】
図5においては、ポンプP1を出た熱媒体は、冷媒回路1Uの冷媒熱媒体熱交換器11を通る流路101、ヒーターコア51、流路110、切替弁V1、流路111を介してポンプP1に戻る第1の独立回路を形成する。
【0028】
また、ポンプP2を出た熱媒体は、冷媒回路1Uの冷媒熱媒体熱交換器12を通る流路102、切替弁V1、流路112、タンク6、流路120、切替弁V2、流路121、温調対象物用熱交換器60、流路130、切替弁V3、流路132、切替弁V4、流路141、合流部161A、流路123、切替弁V2、流路122、外部熱交換器5、流路133、切替弁V3、流路131、切替弁V5、流路150(温調対象物用熱交換器63,61,62)、合流部150Aを介してポンプP2に戻る第2の独立回路を形成する。
【0029】
更に、ポンプP3を出た熱媒体は、冷媒回路1Uの冷媒熱媒体熱交換器13を通る流路103、切替弁V6、流路160、クーラーコア52、流路140、切替弁V4、流路142を介してポンプP3に戻る第3の独立回路を形成する。
【0030】
図1における冷媒回路1Uについて説明する。冷媒回路1Uは、冷媒を圧縮する圧縮機10と、圧縮機10から出た冷媒を凝縮、膨張、蒸発させて圧縮機10に戻す冷媒循環流路を備えている。
【0031】
冷媒回路1Uにおいては、圧縮機10の下流に設けられる冷媒熱媒体熱交換部11と、その下流に設けられる冷媒熱媒体熱交換器12と、圧縮機10の上流側に設けられる冷媒熱媒体熱交換器13が、熱媒体回路100の熱媒体と冷媒が熱交換する熱交換器になる。前述した熱媒体回路100の独立回路の各々には、少なくとも1つの冷媒熱媒体熱交換器が設けられている。
【0032】
冷媒回路1Uは、図示の例では3つの熱交換器(冷媒熱媒体熱交換器11,12,13)を備えているが、必要に応じて、さらに4つ以上の熱交換器を備えることができる。冷媒回路1Uは、少なくとも3つの熱交換器のうち2つ以上を選択して、選択した熱交換器の一部を凝縮器、他部を蒸発器として機能させる。
【0033】
図1に示した例では、開閉弁31V,32Vを開閉してバイパス冷媒流路31,32を選択的に開閉することで、前述した熱交換器の選択を行い、圧縮機10の下流側における圧縮機10に近い熱交換器を凝縮器として機能させ、圧縮機10の下流側における圧縮機10から遠い熱交換器を蒸発器として機能させる。
【0034】
図1において、冷媒回路1Uは、圧縮機10の出口に一端が接続され冷媒熱媒体熱交換部11の入口に他端が接続される冷媒流路20と、冷媒熱媒体熱交換部11の出口に一端が接続され冷媒熱媒体熱交換部12の入口に他端が接続される冷媒流路21と、冷媒熱媒体熱交換部12の出口に一端が接続され冷媒熱媒体熱交換部13の入口に他端が接続される冷媒流路22と、冷媒熱媒体熱交換部の出口に一端が接続され圧縮機10の入口に他端が接続される冷媒流路23とを備えている。
【0035】
また、冷媒回路1Uは減圧部14A,14Bを備えている。減圧部14A,14Bは、圧縮機10で圧縮された高圧の冷媒を所定の圧力まで減圧させるものであり、図1の例では、冷媒熱媒体熱交換部11と冷媒熱媒体熱交換部12の間の冷媒流路21に減圧部14Aが設けられ、冷媒熱媒体熱交換部12と冷媒熱媒体熱交換部13との間の冷媒流路22に減圧部14Bが設けられている。減圧部14Aと減圧部14Bは個別に調整可能であり、全開状態から全閉状態までを任意に調整することで、圧縮した冷媒を所定圧までの減圧状態にすることができる。
【0036】
図1の冷媒回路1Uにおいて、バイパス冷媒流路31,32は、冷媒熱媒体熱交換部12と冷媒熱媒体熱交換部13のいずれかを選択的に迂回可能に設けられている。図示の例では、バイパス冷媒流路31が冷媒熱媒体熱交換部12を迂回可能にし、バイパス冷媒流路32が冷媒熱媒体熱交換部13を迂回可能にしている。
【0037】
バイパス冷媒流路31は、分岐部31Aが冷媒流路21に設けられ、合流部31Bが冷媒流路22に設けられており、分岐部31Aは、減圧部14Aの上流側に設けられ、合流部31Bは減圧部14Bの上流側に設けられている。
【0038】
バイパス冷媒流路32は、分岐部32Aが冷媒流路22に設けられ、合流部32Bが冷媒流路23に設けられており、分岐部32Aは、バイパス冷媒流路31の合流部31Bの上流側に設けられている。これにより、バイパス冷媒流路31の合流部31Bは、バイパス冷媒流路32の分岐部32Aと冷媒熱媒体熱交換部13との間に設けられている。
【0039】
また、バイパス冷媒流路32の分岐部32Aは、減圧部14Bとバイパス冷媒流路31の合流部31Bより上流側に設けられ、バイパス冷媒流路32の分岐部32Aとバイパス冷媒流路31の合流部31Bとの間には、逆流防止手段(例えば逆止弁)15が設けられている。
【0040】
このような冷媒回路1Uは、図6に示すような、冷媒回路制御装置1Aにより、圧縮機10、減圧部14A,14B、開閉弁31V,32Vを制御することで、熱媒体回路100の熱源として、様々な温度帯の熱媒体を生成することができ、また、前述した熱媒体回路100の流路切替装置100Aの切り替えと組み合わせることで、後述する異常動作モードや各種の運転モードを実行することができる。また、冷媒回路1Uは、バイパス冷媒流路31,32を含めた冷媒循環流路を図示一点破線で示したユニットU内に収めることができ、コンパクトにユニット化した冷媒回路1Uを得ることができる。
【0041】
このような熱媒体温調システム1においては、システム異常が生じた場合に、流路切替装置100Aがデフォルト状態になることで、熱媒体回路100が図1に示すような直列流路100Tを形成する。直列流路100Tが形成されると、例えば、ポンプP1,P2,P3の中の何れかに不具合が生じた場合であっても、ポンプP1,P2,P3の中の1つが動作すれば、直列流路100Tに温度管理された熱媒体を循環させることができ、直列流路100Tによって直列的に繋がっている温調対象に対して、必要な温調を行うことができる。
【0042】
流路切替装置100Aがデフォルト状態になるシステム異常時の動作モードにおいては、冷媒回路1Uが動作している場合には、冷媒回路1Uは、冷媒回路制御装置1Aの制御により、図7(a)~(d)に示す動作モードの選択を行い、室内空調装置50は、図8(a),(b)に示すような送風流路の切り替えを行うことによって、冷房動作(異常動作モード1)と暖房動作(異常動作モード2)を行うことができる。
【0043】
冷房動作(異常動作モード1)は、冷媒回路1Uにおいて、図7(a),(b),(c)に示す動作モードを実行し、室内空調装置50は、図8(a)に示すように、ヒーターコア51を通過する送風流路を遮断する。
【0044】
図7(a)に示す動作モードでは、図1に示すように開閉弁31V,32Vを閉にして、冷媒熱媒体熱交換器11と冷媒熱媒体熱交換器12を凝縮器として機能させ、冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器として機能させる。この際、図示のように、減圧部14Aと減圧部14Bで2段階の減圧を行う場合には、冷媒熱媒体熱交換器11と冷媒熱媒体熱交換器12は段階的に冷媒の放熱を行うが、減圧部14Aを全開にして、冷媒熱媒体熱交換器11と冷媒熱媒体熱交換器12で放熱を行い、減圧部14Bで1段階の減圧を行って、冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器として機能させるようにしてもよい。
【0045】
図7(b)に示す動作モードでは、開閉弁31Vを開(開閉弁32Vは閉)にして冷媒熱媒体熱交換器12を迂回するバイパス冷媒流路31に冷媒を流し、冷媒熱媒体熱交換器11を凝縮器として機能させ、冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器として機能させる。この際の減圧は減圧部14Bでの1段階の減圧になる。
【0046】
図7(c)に示す動作モードでは、開閉弁31V,32Vを共に開にして、バイパス冷媒流路31,32に冷媒を流すことで、冷媒熱媒体熱交換器12,13に冷媒を並列に流し、冷媒熱媒体熱交換器11を凝縮器として機能させ、冷媒熱媒体熱交換器12,13を並列的に蒸発器として機能させる。この際の減圧は、減圧部14A,14Bで1段階の減圧になる。
【0047】
そして、熱媒体回路100における直列流路100Tは、熱媒体と外気とが熱交換する外部熱交換器5、蒸発器として機能する冷媒熱媒体熱交換器13、クーラーコア52、温調対象物用熱交換器60,63,61,62の順に熱媒体を流す。
【0048】
これによると、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11或いは冷媒熱媒体熱交換器12を通過することで加熱された熱媒体は、外部熱交換器5にて熱を外部に放出した後、冷媒熱媒体熱交換器11に入る。そして、蒸発器として機能する冷媒熱媒体熱交換器13にて吸熱された低温の熱媒体は、流路103、切替弁V6、流路160を介してクーラーコア52に送られ、室内空調装置50にて室内空気と熱交換して冷房に供される。
【0049】
また、クーラーコア52から出た熱媒体は、流路140、切替弁V4、流路141、合流部161A、流路123、切替弁V2、流路121、温調対象物用熱交換器60、流路130、切替弁V3、流路131、切替弁V5、温調対象物用熱交換器63,61,62を通過する流路150を流れることで、温調対象物(バッテリー、パワーコントロールユニット、インバーター、モーターなど)の冷却(温調)に供される。
【0050】
この際、熱媒体は、流路102と流路101を流れることで、凝縮器として機能する冷媒熱媒体熱交換器12と冷媒熱媒体熱交換器11での放熱で加熱され、ヒーターコア51に送られるが、図8(a)に示すように、室内空調装置50において、ヒーターコア51の送風流路上流側に設けられるエアミックスドア53を閉じることで、ヒーターコア51による冷房時の空気の加熱を抑えることができる。また、エアミックスドア53の開度を調整することによって、冷房温度の調整が可能になる。ヒーターコア51を出た熱媒体は、前述したように、外部熱交換器5にて放熱した後、蒸発器である冷媒熱媒体熱交換器13に送られる。
【0051】
これに対して、暖房動作(異常動作モード2)は、冷媒回路1Uにおいて、図7(b),(c),(d)に示す動作モードを実行し、室内空調装置50は、図8(b)に示すように、クーラーコア52のみを通過して車室内に流れる送風流路を遮断する。
【0052】
冷媒回路1Uにおける図7(d)に示す動作モードでは、冷媒熱媒体熱交換器11を凝縮器として機能させ、冷媒熱媒体熱交換器12と冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器として機能させる。この際、図示のように、減圧部14Aと減圧部14Bで2段階の減圧を行う場合には、冷媒熱媒体熱交換器12と冷媒熱媒体熱交換器13では段階的な吸熱が行われるが、減圧部14Bを全開にして、冷媒熱媒体熱交換器11を凝縮器として機能させ、減圧部14Aで1段階の減圧を行い、冷媒熱媒体熱交換器12と冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器として機能させるようにしてもよい。図7(b),(c)に示す動作モードは、前述したとおりである。
【0053】
そして、熱媒体回路100の直列回路100Tは、凝縮器として機能する冷媒熱媒体熱交換器11、ヒーターコア51、外部熱交換器5の順に熱媒体を流す。これによると、凝縮器として機能する冷媒熱媒体熱交換器11での放熱で加熱された熱媒体は、流路101を介してヒーターコア51に送られ、室内空調装置50にて室内空気と熱交換して暖房に供される。そして、外部熱交換器5にて放熱された後冷媒熱媒体熱交換器13で吸熱された熱媒体がクーラーコア52に送られる。冷媒回路1Uは、冷媒熱媒体熱交換器12と冷媒熱媒体熱交換器13で段階的な吸熱を行うが、冷媒熱媒体熱交換器13の入口側の直列流路100Tには外部熱交換器5が設けられ、冷媒熱媒体熱交換器12の入口側の直列流路100Tには温調対象物用熱交換器60,63,61,62が設けられる。
【0054】
これにより、外部熱交換器5で外気と熱交換した熱媒体が有する熱を冷媒熱媒体熱交換器13にて冷媒に吸熱させることができ、温調対象物用熱交換器60,63,61,62にて温調対象と熱交換した熱媒体が有する熱を冷媒熱媒体熱交換器12にて冷媒に吸熱させることができる。このようにして、冷媒回路1Uの作動で熱を生成し、冷媒熱媒体熱交換器11にてヒーターコア51に送る熱媒体を加熱して、暖房運転を行うことができる。
【0055】
この際、蒸発器として機能する冷媒熱媒体熱交換器13には、ヒーターコア51を出て、外部熱交換器5にて熱交換した熱媒体が流入するため、冷媒熱媒体熱交換器13から出る熱媒体の温度を、図5のような、ヒーターコア51、外部熱交換器5、冷媒熱媒体熱交換器13の順に熱媒体が流れない回路に比べて、比較的高い温度にすることができる。これにより、クーラーコア52に供させる熱媒体の温度が下がりすぎることを抑制することができ、暖房時の快適性への影響を抑えることができる。
【0056】
また、温調対象物用熱交換器60,63,61,62 にて熱交換した熱媒体が冷媒熱媒体熱交換器12に流入するため、冷媒熱媒体熱交換器12を蒸発器として機能させることができ、図7(c)や図7(d)のような冷媒回路の動作モードに切り替えることが可能となる。また、図7(c)や図7(d)の冷媒回路の動作モードに切り替えることで、冷媒熱媒体熱交換器13で冷媒が吸熱する吸熱量が図7(b)の動作モードの場合に比べて少なくなるため、図7(b)に比べて、図7(c)や図7(d)の動作モードの方がよりクーラーコア52に供させる熱媒体の温度が下がりすぎることを抑制することができ、暖房時の快適性への影響を抑えることができる。
【0057】
なお、外部熱交換器5へ外気を送風する送風ファン(図示省略)を停止したりラジエータシャッタ(図示省略)を閉めたりすることで、外部熱交換器5で熱媒体が外気と熱交換することを抑制することができる。これによると、ヒーターコア51を出た温かい熱媒体を蒸発器である冷媒熱媒体熱交換器13へ直接送ることができる。これによっても、冷媒熱媒体熱交換器13を出てクーラーコア52に送られる熱媒体の温度が低くなりすぎるのを抑えることができるが、この場合は、外部熱交換器5にて熱媒体と外気を熱交換させている時より暖房運転時の吹き出し温度を高くすることができる。
【0058】
この際、室内空調装置50におけるエアミックスドア53は、図8(b)に示すように、送風が全てヒーターコア51を通過するように切り替えられる。また、暖房温度の調整は、ヒーターコア51の入口側(例えば、ポンプP1の上流側など)に温度調整可能な補助熱源7を設けることによって行うことができる。
【0059】
流路切替装置100Aがデフォルト状態になるシステム異常時の動作モードとして、冷媒回路1Uが動作しない(圧縮機10の故障など)場合には、直列流路100Tでの熱媒体の循環で、適宜の動作モードを実現する。
【0060】
その際の動作モードの1つ(異常動作モード3)は、直列流路100Tにおけるヒーターコア51の入口側(例えば、ポンプP1の上流側など)に温度調整可能な補助熱源7を設けることを前提して、暖房動作とバッテリー加熱を行うことができる。
【0061】
その際、直列流路100Tを循環する熱媒体の温度を、ヒーターコア51での放熱により、ヒーターコア51の出口温度60℃にし、ヒーターコア51の下流側に設けられる外部熱交換器5での放熱で、外部熱交換器5の出口温度50℃にし、外部熱交換器5の下流側に設けられるクーラーコア52での放熱で、クーラーコア52の出口温度40℃にする。これにより、ヒーターコア51での暖房動作を行いながら、クーラーコア52の下流側に設けたバッテリー用の温調対象物用熱交換60での熱媒体温度を、バッテリー加熱に適した温度帯に下げることができる。
【0062】
冷媒回路1Uが動作しない場合の他の動作モード(異常動作モード4)は、直列流路100Tにおける熱媒体の循環による温調対象物(バッテリー、パワーコントロールユニット、インバーター、モーターなど)の放熱である。この場合、補助熱源7は不使用(作動停止)であり、直列流路100Tに設けた外部熱交換器5により温調対象物の放熱を行う。この際、室内空調装置50の送風を止めることで、室内への熱放出を抑止することができる。
【0063】
図9に示した表には、熱媒体温調システム1の異常動作モードと運転モードを纏めて示している。表内の「a」は、切替弁V1~V6がデフォルト状態であることを示しており、「b」は、切替弁V1~V6が非デフォルト状態であることを示している。
【0064】
熱媒体回路100の流路切替装置100Aにおける切替弁V1~V6が全てデフォルト状態である異常動作モード1~4については、前述したとおりであるが、熱媒体温調システム1は、流路切替装置100Aと冷媒回路制御装置1Aを適宜制御することで、表に示した運転モード1~13を実行することができる。
【0065】
運転モード1の熱媒体回路100は、切替弁V3を非デフォルト状態にし、他の切替弁V1,V2,V4~V6はデフォルト状態にすることで、ポンプP3を含む独立回路と、ポンプP1とポンプP2を直列にした独立回路を形成する。
【0066】
運転モード1の冷媒回路1Uは、開閉弁31V,32Vを共に閉にし、減圧部14A,14Bの減圧量が適宜調整され、減圧部14Aは略全開、減圧部14Bにて所望の減圧を行う。この冷媒回路1Uでは、冷媒熱媒体熱交換器11と冷媒熱媒体熱交換器12が凝縮器(放熱側)として機能し、冷媒熱媒体熱交換器13が蒸発器(吸熱側)として機能する。
【0067】
運転モード1は、熱媒体回路100におけるポンプP3の独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13、クーラーコア52、バッテリー用の温調対象物用熱交換器60が設けられ、室内冷房とバッテリー冷却が行われる。また、熱媒体回路100におけるポンプP1,P2の独立回路には、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11,12、ヒーターコア51、タンク6、外部熱交換器5、温調対象物用熱交換器63,61,62が設けられ、放熱先が、タンク6での蓄熱、外部熱交換器5での外気放出、温調対象物用熱交換器63,61,62での温調などに分散される。これによると、室内冷房とバッテリー冷却を積極的に行ったことによる吸熱を各所で分散して放熱することで、効率的な熱利用が可能になる。
【0068】
運転モード2の熱媒体回路100は、切替弁V3,V4を非デフォルト状態にし、他の切替弁V1,V2,V5,V6はデフォルト状態にすることで、ポンプP3を含む独立回路と、ポンプP1とポンプP2を直列にした独立回路を形成する。運転モード2の冷媒回路1Uは運転モード1と同様である。運転モード1との違いは、バッテリーの冷却を止めて、室内空調装置50を冷房運転する。
【0069】
運転モード3の熱媒体回路100は、切替弁V3,V6を非デフォルト状態にし、他の切替弁V1,V2,V4,V5をデフォルト状態にすることで、ポンプP3を含む独立回路と、ポンプP1とポンプP2を直列にした独立回路を形成する。運転モード3の冷媒回路1Uは運転モード1,2と同様である。運転モード3は、運転モード1における室内空調装置50の冷房運転を止めて、バッテリーの冷却を積極的に行っており、ポンプP3の独立回路には、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13とバッテリー用の温調対象物用熱交換器60のみを設けている。
【0070】
運転モード4の熱媒体回路100は、切替弁V1,V3を非デフォルト状態にし、他の切替弁V2,V4~V6をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路と、ポンプP3を含む独立回路を形成する。運転モード4の冷媒回路1Uは運転モード1~3と同様であるが、減圧部14A,14Bの減圧を減圧部14Aと減圧部14Bとで段階的に行っている。
【0071】
この運転モード4の熱媒体回路100は、ポンプP1を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11とヒーターコア51が設けられ、ポンプP2を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器12とタンク6と外部熱交換器5と温調対象物用熱交換器63,61,62が設けられ、ポンプP3を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13とクーラーコア52とバッテリー用の温調対象物用熱交換器60が設けられる。
【0072】
運転モード4は、除湿冷房(放熱温調)を行う運転モードであり、運転モード1と同様に、吸熱側の独立回路で室内空調装置50を冷房運転しながらバッテリーの冷却を行い、放熱側の独立回路にヒーターコア51を設けることで除湿を行う。この運転モード4では、吸熱側で冷房除湿とバッテリー冷却を行いながら、放熱側では、ポンプP1の独立回路を流れる高温の熱媒体で目標吹出温度への空調を行い、ポンプP2の独立回路を流れる低温の熱媒体で各所の温調を行うことができる。
【0073】
運転モード5の熱媒体回路100は、切替弁V1,V3,V4を非デフォルト状態にし、切替弁V2,V5,V6をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路と、ポンプP3を含む独立回路を形成する。運転モード5の冷媒回路1Uは、開閉弁31V,32Vを共に開にして、圧縮機10から冷媒熱媒体熱交換器11、バイパス冷媒流路31、冷媒熱媒体熱交換器13を経由して圧縮機10に戻る(冷媒熱媒体熱交換器12を迂回する)第1系統の冷媒回路と、圧縮機10から冷媒熱媒体熱交換器11、冷媒熱媒体熱交換器12、バイパス冷媒流路32を経由して圧縮機10に戻る(冷媒熱媒体熱交換器13を迂回する)第2系統の冷媒回路を構成している。
【0074】
運転モード5の冷媒回路1Uでは、冷媒熱媒体熱交換器11は、凝縮器(放熱側)として機能し、冷媒熱媒体熱交換器12は、第2系統の冷媒回路での蒸発器(吸熱側)として機能し、冷媒熱媒体熱交換器13は、第1系統の冷媒回路での蒸発器(吸熱側)として機能する。
【0075】
運転モード5における熱媒体回路100は、ポンプP1を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11とヒーターコア51が設けられ、ポンプP2を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器12、タンク6、外部熱交換器5、温調対象物用熱交換器63,61,62が設けられ、ポンプP3を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13とクーラーコア52が設けられる。
【0076】
この運転モード5は、除湿暖房(吸熱温調)を行う運転モードであり、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11を流れる熱媒体をヒーターコア51に限定して流すことで暖房運転を行い、吸熱側が冷媒熱媒体熱交換器12を有する独立回路と冷媒熱媒体熱交換器13を有する独立回路に分かれて、暖房運転に必要な熱を各所から吸熱する。また、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13を有する独立回路にクーラーコア51を単独で設けることで、車室内の除湿を効果的に行っている。
【0077】
運転モード6の熱媒体回路100は、切替弁V1,V2,V5,V6を非デフォルト状態にし、他の切替弁V3,V4をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路と、ポンプP3を含む独立回路を形成する。運転モード6の冷媒回路1Uは、開閉弁31V,32Vを何れも閉にして、運転モード4と同様に、冷媒熱媒体熱交換器11と冷媒熱媒体熱交換器12を凝縮器(放熱側)とし、冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器(吸熱側)とし、減圧部14A,14Bの減圧量を調整して、冷媒熱媒体熱交換器11と冷媒熱媒体熱交換器12とで段階的な放熱を行う。
【0078】
運転モード6の熱媒体回路100は、ポンプP1を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11とヒーターコア51を設け、ポンプP2を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器12、タンク6、温調対象物用熱交換器60を設け、ポンプP3を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13、外部熱交換器5を設けている。
【0079】
この運転モード6は、外気吸熱を行って、室内空調装置50を暖房運転しながら、バッテリーの加熱(暖機)を行う運転モードであり、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11を流れる高温の温水をヒーターコア51に流して、室内空調装置50の暖房運転を行い、もう一つの放熱側の冷媒熱媒体熱交換器12を流れる比較的低温の温水を温調対象物用熱交換器60に流してバッテリーの加熱を行う。これによると、冷媒回路1Uにより異なる温度帯の熱媒体を生成することで、熱効率よく所望の温度で暖房とバッテリー加熱を行うことができる。
【0080】
運転モード7の熱媒体回路100は、切替弁V1,V2,V6を非デフォルト状態にし、他の切替弁V3,V4,V5をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路と、ポンプP3を含む独立回路を形成する。運転モード7の冷媒回路1は、開閉弁31Vを開、開閉弁32Vを閉にし、減圧部14Aを閉止することで、圧縮機10から冷媒熱媒体熱交換器11、バイパス冷媒流路31、冷媒熱媒体熱交換器13を経由して圧縮機10に戻る(冷媒熱媒体熱交換器12を迂回した)回路が構成されている。
【0081】
運転モード7の熱媒体回路100は、ポンプP1を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11とヒーターコア51を設け、ポンプP2を含む独立回路に、冷媒と熱交換しない冷媒熱媒体熱交換器12、タンク6、温調対象物用熱交換器60,61,62,63を設け、ポンプP3を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13と外部熱交換器5を設けている。
【0082】
この運転モード7は、外気吸熱を行って、室内空調装置50を暖房運転しながら、バッテリー等の温調対象物の蓄廃熱を行う運転モードであり、外気吸熱によって室内空調装置50の暖房運転を行いながら、温調対象物用熱交換器60,61,62,63を流れる熱媒体を冷媒回路1Uから切り離した回路にし、その回路に蓄熱用又は廃熱用のタンク6を設けている。これによると、バッテリー等の温調対象物の熱を効率的に蓄廃熱することができる。
【0083】
運転モード8の熱媒体回路100は、切替弁V1,V2,V6を非デフォルト状態にし、他の切替弁V3,V4,V5をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路と、ポンプP3を含む独立回路を形成する。運転モード8の冷媒回路1Uは、開閉弁31V,32Vを開にして、運転モード5と同様に、冷媒熱媒体熱交換器12を迂回する第1系統の冷媒回路と冷媒熱媒体熱交換器13を迂回する第2系統の冷媒回路を構成している。
【0084】
運転モード8の熱媒体回路100は、ポンプP1を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11とヒーターコア51を設け、ポンプP2を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器12、タンク6、温調対象物用熱交換器60,61,62,63を設け、ポンプP3を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13と外部熱交換器5を設けている。
【0085】
運転モード8は、外気吸熱を行って、室内空調装置50を暖房運転しながら、バッテリー等の温調対象物の蓄熱を利用する運転モードであり、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器12は、前述した運転モード6においてタンク6やバッテリー等の温調対象物に蓄熱された熱を吸熱することで、外気吸熱と合わせて、暖房に必要な熱を調達している。
【0086】
運転モード9の熱媒体回路100は、切替弁V1,V2を非デフォルト状態にし、他の切替弁V3~V6をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路を形成している。また、ここではポンプP3は停止させる。運転モード9の冷媒回路1Uは、開閉弁31Vを閉、開閉弁32Vを開、減圧部14B閉にすることで、冷媒熱媒体熱交換器13を迂回する冷媒回路を構成している。この際、冷媒熱媒体熱交換器13は冷媒回路1から外れており、冷媒熱媒体熱交換器13を経由する流路103とクーラーコア52に熱媒体を流す流路は不使用状態になる。
【0087】
運転モード9の熱媒体回路100は、ポンプP1を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11とヒーターコア51を設け、ポンプP2を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器12、タンク6、温調対象物用熱交換器60,61,62,63を設けている。
【0088】
この運転モード9は、蓄熱利用によって室内空調装置50を暖房運転させる運転モードであり、冷媒回路1Uは、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器12を有する独立回路において、運転モード6でタンク6やバッテリー等の温調対象物に蓄熱された熱を吸熱して暖房運転を行う。
【0089】
運転モード10の熱媒体回路100は、切替弁V1,V3,V5,V6を非デフォルト状態にし、他の切替弁V2,V4をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路と、ポンプP3を含む独立回路を形成する。運転モード10の冷媒回路1Uは、運転モード4などと同様に、開閉弁31V,32Vを共に閉にして、冷媒熱媒体熱交換器11と冷媒熱媒体熱交換器12を凝縮器(放熱側)として機能させ、冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器(吸熱側)として機能させている。
【0090】
運転モード10の熱媒体回路100は、ポンプP1を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11とヒーターコア51を設け、ポンプP2を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器12、タンク6、外部熱交換器5を設け、ポンプP3を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13とバッテリー用の温調対象物用熱交換器60を設けている。
【0091】
この運転モード10は、蓄熱利用によって停車中の除霜暖房を行う運転モードであり、バッテリーに蓄熱された熱を冷媒熱媒体熱交換器13にて吸熱して冷媒回路1Uを動作させ、冷媒熱媒体熱交換器12にて放出された熱とタンク6に蓄熱された熱によって加熱された熱媒体を外部熱交換器5に流すことで、外部熱交換器5の除霜を行う。
【0092】
運転モード11の熱媒体回路100は、切替弁V1,V3,V6を非デフォルト状態にし、他の切替弁V2,V4,V5をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路と、ポンプP3を含む独立回路を形成する。運転モード11は、蓄熱利用によって走行中の除霜暖房を行う運転モードであり、切替弁V5の切り替え状態以外は運転モード10と同じである。この運転モード11では、運転中に発生する温調対象物(インバーター、モーター、パワーコントロールユニットなど)の熱と冷媒熱媒体熱交換器12の放熱とタンク6の蓄熱を、外部熱交換器5の除霜に利用する。
【0093】
運転モード12の熱媒体回路100は、切替弁V1,V2,V5を非デフォルト状態にし、他の切替弁V3,V4,V6をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路を形成し、ポンプP3を停止させる。
【0094】
運転モード12は、補助熱源7の熱を吸熱して冷媒回路1Uを動作することで、室内空調装置50を暖房運転しながらバッテリーの加熱を行っている。この運転モード12は、切替弁V5の切り替え以外は運転モード9と同様である。
【0095】
運転モード12では、補助熱源7にて付加された熱が冷媒熱媒体熱交換器12にて冷媒に吸熱され、また、温調対象物用熱交換器60では、補助熱源7にて付加された熱とタンク6に蓄積された熱でバッテリーが加熱される。この際、バッテリー加熱に利用される熱媒体の温度は、補助熱源7の発熱量で適宜調整することができるので、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11を有する独立回路を流れる熱媒体の温度とは異なる温度帯に調整することができ、適正な温度で暖房運転を行いながらバッテリー加熱が可能になる。
【0096】
運転モード13の熱媒体回路100は、切替弁V1,V2,V4を非デフォルト状態にし、他の切替弁V3,V5,V6をデフォルト状態にすることで、ポンプP1を含む独立回路と、ポンプP2を含む独立回路と、ポンプP3を含む独立回路を形成する。運転モード13の冷媒回路1Uは、運転モード8と同様であり、開閉弁31V,32Vを共に開にして、冷媒熱媒体熱交換器12を迂回する第1系統の冷媒回路と、冷媒熱媒体熱交換器13を迂回する第2系統の冷媒回路を構成している。
【0097】
運転モード13の熱媒体回路100は、ポンプP1を含む独立回路に、放熱側の冷媒熱媒体熱交換器11とヒーターコア51を設け、ポンプP2を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器12、補助熱源7、タンク6、温調対象物用熱交換器60,61,62,63を設け、ポンプP3を含む独立回路に、吸熱側の冷媒熱媒体熱交換器13とクーラーコア52を設けている。
【0098】
運転モード13は、補助熱源7の熱を付加しながら、車室内の熱と温調対象物の廃熱・蓄熱を吸熱する冷媒回路1Uの動作で室内空調装置50の暖房運転を行っている。運転モード13では、第1系統の蒸発器として機能する冷媒熱媒体熱交換器13において、クーラーコア52を介して回収された車室内の熱が冷媒に吸熱され、第2系統の冷媒回路で蒸発器として機能する冷媒熱媒体熱交換器12において、補助熱源7で付加された熱やタンク6の蓄熱、バッテリー等の温調対象物の蓄廃熱が冷媒に吸熱される。
【0099】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る熱媒体温調システム1は、熱媒体回路100が、システム異常時に、ポンプP1,P2,P3と複数の温調対象熱交換器(ヒーターコア51、クーラーコア52、外部熱交換器5、温調対象物用熱交換器60,61,62,63など)を繋ぐ直列流路100Tを形成するので、システム異常があっても、熱媒体回路100の直列流路100T全体に温調管理した熱媒体を循環させることができ、直列流路100Tに繋がる多くの温調対象に対して所望の温調を行うことができる。
【0100】
そして、直列流路100Tが流路切替装置100Aにおける非通電時のデフォルト状態で形成されることで、システム異常時に流路切替装置100Aが非通電になると自動的に前述した直列流路100Tが形成される構成にすることができ、フェールセーフの実現が可能になる。
【0101】
また、熱媒体回路100は、流路切替装置100Aによって複数の独立回路を形成し、独立回路毎にポンプ(P1,P2,P3)と温調対象熱交換器(ヒーターコア51、クーラーコア52、外部熱交換器5、温調対象物用熱交換器60,61,62,63など)を備えているので、独立回路毎に異なる温度帯で熱媒体を流すことができ、複数の温度帯で温調対象を温度管理することができる。
【0102】
また、熱媒体温調システム1は、熱源として、複数の冷媒熱媒体熱交換器(11,12,13)を有する冷媒回路1Uを備えており、前述した独立回路の各々には、少なくとも1つの冷媒熱媒体熱交換器(11,12,13)が設けられている。これによると、各冷媒熱媒体熱交換器(11,12,13)の吸放熱機能によって、独立回路を流れる熱媒体の温度帯を適宜設定することできる。
【0103】
特に、冷媒回路1Uが、少なくとも3つ以上の冷媒熱媒体熱交換器のうち2つ以上を選択して、選択した冷媒熱媒体熱交換器の一部を凝縮器とし他部の蒸発器とすることで、前述した冷媒回路1Uの各種動作モードを実現することができる。これにより、室内空調装置50のヒーターコア51とクーラーコア52を有する直列流路100Tに対して、室内空調装置50における送風流路の切り替えを加えることで、システム異常時であっても暖房運転と冷房運転の切り替えを行うことができる。
【0104】
この際、熱媒体温調システム1は、直列流路100Tが、熱媒体と外気とが熱交換する外部熱交換器5、冷媒熱媒体熱交換器の1つである蒸発器、温調対象熱交換器の1つであるクーラーコア52、他の温調対象熱交換器である温調対象物用熱交換器(60,61,62,63)の順に熱媒体を流すようにしている。
【0105】
これは、冷房時はクーラーコア52の要求温度が温調対象物用熱交換器(60,61,62,63)の要求温度よりも低いため、外部熱交換器5、蒸発器、クーラーコア52、温調対象物用熱交換器(60,61,62,63)の順で熱媒体を流すことで、冷房運転時に直列流路100Tになった場合であっても、外部熱熱交換器5で熱媒体の熱を放熱した後に蒸発器で熱媒体を冷却できるようになる。そのため、冷房運転の快適性への影響を抑えつつ、温調対象物の冷却ができ、走行停止などの事態を回避することが可能になる。
【0106】
また、熱媒体温調システム1では、直列流路100Tが、冷媒熱媒体熱交換器の1つである凝縮器、温調対象熱交換器の1つであるヒーターコア51、外部熱交換器5の順に熱媒体を流すようにしている。これによると、凝縮器、ヒーターコア51、外部熱交換器5の順で熱媒体を流すことで、暖房時にはヒーターコア51で放熱し、冷房時にはエアミクスドア53等でヒーターコア51での熱交換を抑制しつつ、外部熱交換器5で放熱できるようになる。
【0107】
その際、外気熱交換器5の下流側は、前述したように、外部熱交換器5、蒸発器、クーラーコア52、温調対象物用熱交換器(60,61,62,63)の順で熱媒体が流れることで、冷房時に凝縮器で熱交換した熱媒体が、外部熱交換器5で放熱された後に蒸発器に流れるため、直接蒸発器に流れることがなくなり、空調運転時の影響を抑えることができる。また、外部熱交換器5の下流側に設けられる温調対象物用熱交換器(60,61,62,63)にも、凝縮器で加熱された熱媒体が直接流れることがなくなるため、ヒーターコア52で利用されるような高い温度帯の熱媒体が温調対象物用熱交換器(60,61,62,63)へ流れることを防ぎ、温調対象の温度が高くなりすぎることを防ぐことができる。
【0108】
さらに、暖房時にはヒーターコア52から出た熱媒体を外部熱交換器5、蒸発器の順で流せるため、ヒーターコア52から出た熱媒体の熱を外部熱交換器5の除霜や蒸発器の熱源として利用することが可能になる。
【0109】
そして、熱媒体温調システム1は、直列流路100Tが、必要に応じて、ヒーターコア52の入口側に熱媒体を加熱する補助熱源7を設けているので、この補助熱源7を、異常時暖房運転における温調熱源や冷媒回路1U不作動時の暖房やバッテリー加熱の熱源とすることができ、また、前述したように、ヒーターコア52から出た熱媒体の熱を外部熱交換器5の除霜や蒸発器の熱源として利用する場合の熱付加に利用することができる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0111】
1:熱媒体温調システム,
1U:冷媒回路,1A:冷媒回路制御装置,31,32:バイパス冷媒流路,
5:外部熱交換器,6:タンク,7:補助熱源,10:圧縮機,
11,12,13:冷媒熱媒体熱交換器,14A,14B:減圧部,
15:逆流防止手段,20,21,22,23:冷媒流路,
31A,32A:分岐部,31B,32B:合流部,
31V,32V:開閉弁,50:室内空調装置,
51:ヒーターコア,52:クーラーコア,
60,61,62,63:温調対象物用熱交換器,
100:熱媒体回路,100A:流路切替装置,100T:直列流路,
101,102,103,110,111,112,120,121,122,123,130,131,132,133,140,141,142,150,151,160,161:流路,
150A,160A,161A:合流部,
200:制御装置,
V1,V2,V3,V4,V5,V6:切替弁,
U:ユニット,P1,P2,P3:ポンプ
図1
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図9