IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用空調装置 図1
  • 特開-車両用空調装置 図2
  • 特開-車両用空調装置 図3
  • 特開-車両用空調装置 図4
  • 特開-車両用空調装置 図5
  • 特開-車両用空調装置 図6
  • 特開-車両用空調装置 図7
  • 特開-車両用空調装置 図8
  • 特開-車両用空調装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003802
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20230110BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20230110BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B60H1/00 102L
B60H1/00 102E
B60H1/22 651A
B60H1/22 671
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105092
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺内 宏太
(72)【発明者】
【氏名】松村 尭之
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
(72)【発明者】
【氏名】増田 真一
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA14
3L211BA02
3L211BA03
3L211BA23
3L211BA32
3L211CA04
3L211CA18
3L211DA04
3L211DA08
3L211DA28
3L211DA41
(57)【要約】
【課題】車載機器、特に、バッテリ、モータ及びインバータ等を含む駆動系の車載機器の廃熱を利用することで効率的な熱利用を可能とする。
【解決手段】吸熱用熱交換器30と、吸熱用熱交換器の送風流路下流側に設けられる放熱用熱交換器40を具備する室内空調ユニットを備え、放熱用熱交換器は、車載機器から廃熱を回収した熱媒体を放熱させる熱交換器であり、室内空調ユニットは、放熱用熱交換器を通過した風を車外に放出する放熱用送風流路50を備える車両用空調装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱用熱交換器と、該吸熱用熱交換器の送風流路下流側に設けられる放熱用熱交換器を具備する室内空調ユニットを備え、
前記放熱用熱交換器は、車載機器から廃熱を回収した熱媒体を放熱させる放熱用の熱交換器であり、
前記室内空調ユニットは、前記放熱用熱交換器を通過した風を車外に放出する放熱用送風流路を備える
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記放熱用送風流路は、前記放熱用熱交換器の送風流路下流側に設けたダンパを開放することによって形成され、
前記ダンパを閉止することで前記放熱用熱交換器を通過する風を車室内に送ることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記放熱用送風流路は、前記放熱用熱交換器の送風流路上流側にて外気を導入する外気導入流路を備える請求項1又は2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記外気導入流路は、前記室内空調ユニットに外付けされることを特徴とする請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記外気導入流路は、前記室内空調ユニット内で前記吸熱用熱交換器を迂回する流路が設けられる請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記吸熱用熱交換器を通過した冷風を前記放熱用熱交換器に送ることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記放熱用熱交換器は、車載機器の廃熱回収を行う熱媒体回路の放熱用の熱交換器である請求項1から請求項6の何れか1項記載の車両用空調装置。
【請求項8】
空調用の冷媒回路を循環する冷媒と前記車載機器から廃熱を回収した熱媒体とを熱交換させるための冷媒-熱媒体熱交換器を備え、
前記放熱用熱交換器は、前記冷媒-熱媒体熱交換器を循環した前記冷媒を放熱させる放熱用の熱交換器である請求項1から請求項6の何れか1項記載の車両用空調装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される車両用空調装置であって、特に、バッテリやモータ等の温度を調整すると共にこれらの廃熱を空調等に利用する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリから供給される電力によって駆動するモータを走行用の動力源として用いるハイブリッド自動車や電気自動車等の車両が普及している。このような車両では、バッテリやモータの冷却又は暖機を行う温度調整システムが備えられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示された温度調整システムでは、液体を溜めるリザーブタンクに、モータ及びインバータに液体を循環させる第1循環路と、バッテリに液体を循環させる第2循環路とが接続され、第1循環路又は第2循環路を切り替えることで、モータの冷却又はバッテリの温度調整を行う。つまり、モータやインバータの冷却時は、リザーブタンクから液体を第1循環路のラジエータに圧送し、ラジエータで冷却された液体をモータ及びインバータに循環させて熱交換させることでモータ及びインバータの冷却を行っている。また、バッテリの温度調整時は、リザーブタンクから第2循環路に液体を循環させ、液体とバッテリとの間で熱交換を行わせることで、バッテリの温度調整を行っている。この時、リザーブタンクから圧送された液体の温度がモータ及びインバータの廃熱で温められてバッテリの温度より高くなっている場合にはバッテリが暖機され、液体の温度がバッテリの温度より低い場合にはバッテリが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-58241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1の温度調整システムでは、モータやインバータでの廃熱の一部がバッテリの温度調整に用いられているものの、大部分は廃棄されている。一方で、車室内の暖房には別途エネルギーを要することになる。すなわち、このような車両に適用される車両用空調装置や車両全体として、効率的な熱利用が行われているとは言い難いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車載機器、特に、バッテリ、モータ及びインバータ等を含む駆動系の車載機器の廃熱を利用することで効率的な熱利用を可能とすること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、吸熱用熱交換器と、該吸熱用熱交換器の送風流路下流側に設けられる放熱用熱交換器を具備する室内空調ユニットを備え、前記放熱用熱交換器は、車載機器から廃熱を回収した熱媒体を放熱させる放熱用の熱交換器であり、前記室内空調ユニットは、前記放熱用熱交換器を通過した風を車外に放出する放熱用送風流路を備える車両用空調装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車載機器、特に、バッテリ、モータ及びインバータ等を含む駆動系の車載機器の廃熱を利用することで効率的な熱利用を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の室内空調ユニットの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置を制御する空調ECUの概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の暖房運転時の室内空調ユニットの状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において温調対象物を自然冷却する場合の室内空調ユニットの状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において温調対象物を自然冷却しながら、冷房運転を行う場合の室内空調ユニットの状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において温調対象物を強制冷却する場合の室内空調ユニットの状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において温調対象物を強制冷却しつつ、冷房運転を行う場合の室内空調ユニットの状態を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の室内空調ユニットにおいてヒーターコアに冷媒が循環する例を示す概略構成を示す図である。
図9】本発明の実施形態の変形例に係る車両用空調装置の室内空調ユニットの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。なお、本明細書において、冷媒とは、ヒートポンプ(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)における状態変化を伴う冷媒回路の循環媒体であり、熱媒体とは、このような状態変化を伴わないで熱交換によって吸放熱を行う媒体(水などを含む)である。
【0011】
本発明の実施形態に係る車両用空調装置は、例えば、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)やエンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車などの車両に適用することができる。このような車両は、バッテリ(例えば、リチウム電池)が搭載され、外部電源からバッテリに充電された直流の電力をインバータにより交流の電力に変換して走行用のモータを含むモータユニットに供給することでモータを駆動し走行する。車両用空調装置1も、バッテリから供給される電力によって駆動する。
【0012】
本実施形態に係る車両用空調装置1は、冷媒回路Rと、冷媒回路Rを循環する冷媒と熱交換を行う送風空気の流通路を形成する室内空調ユニット10を備えている。
冷媒回路Rは、循環する冷媒を圧縮、凝縮、膨張、蒸発させる回路であり、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から出た冷媒を凝縮、膨張、蒸発させて圧縮機に戻す冷媒循環流路を備えている。車両用空調装置1では、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転を行い、室内空調ユニット10によって冷媒と熱交換した送風を車室内に供給することにより車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び除霜)を行う。
【0013】
室内空調ユニット10は、車内外から取り込んだ風(空気)を車室内に送風する送風流路20と、送風流路20の上流側に設けられる吸熱用熱交換器としてのクーラーコア30と、送風流路20の下流側に設けられる放熱用熱交換器としてのヒーターコア40と、ヒーターコア40を通過した風を車外に放出する放熱用送風流路50を備えている。
【0014】
送風流路20には、外気吸込口と内気吸込口を含む吸込口25と、吸込口25に設けられた吸込切換ダンパ26とが設けられている。吸込切換ダンパ26は、車内の空気である内気(内気循環)と、車外の空気である外気(外気導入)とを適宜切り換えて吸込口25から送風流路20内に導入する。吸込切換ダンパ26の送風流路下流側には、導入した内気や外気を送風流路20の下流に配備されたクーラーコア30やヒーターコア40に送風するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0015】
送風流路20は、送風流路20内に取り込まれた風を、ヒーターコア40を通過させて車内外に流通させる第1送風流路21と、ヒーターコア40を通過させずに車室内に供給する第2送風流路22とを含んでいる。
【0016】
送風流路20におけるクーラーコア30の送風流路下流側、かつ、ヒーターコア40の送風流路上流側には、エアミックスダンパ28が設けられている。エアミックスダンパ28は、その開度を制御することにより、クーラーコア30を通過した後の送風流路20内の空気(内気又は外気)を第1送風流路21又は第2送風流路22の何れかに流通させるように切り替え、又は、第1送風流路21及び第2送風流路22に通風させる割合を調整する。
【0017】
第1送風流路21には、ヒーターコア40の送風流路下流側に第1送風流路21を流通してきた空気を外部に吹出す外部吹出口23が設けられている。外部吹出口23には、外部吹出口23を開閉する吹出ダンパ24が設けられている。吹出ダンパ24を開閉することで、空気を外部吹出口23から車外に吹き出す、又は、車室内吹出口29から車室内へ吹き出すよう選択的に制御することができる。つまり、吹出ダンパ24を開放することで、放熱用送風流路50が形成される。一方、吹出ダンパ24を閉止することでヒーターコア40を通過した風を車室内に送風することができる。
【0018】
送風流路20において、ヒーターコア40の送風流路上流側(本実施形態においては、第1送風流路21のヒーターコア40の送風流路上流側)には、外気導入口63が設けられ、外気導入口63を介して、外気を導入する外気導入流路60が設けられている。外気導入流路60の送風流路上流側には、外気吸込口61と外気吸込口61から導入した外気を、外気導入流路60内を通過させて第1送風流路21内まで送給するための外気導入ファン62が設けられている。
【0019】
外気導入流路60の送風流路下流側が第1送風流路21におけるヒーターコア40の送風流路上流側に位置する外気導入口63と接続されている。外気導入口63には、外気導入をする又はしないを切り替える外気導入ダンパ64が設けられている。外気導入流路60は、外気導入ダンパ64が開いた状態において、外気吸込口61から取り込んだ空気を外気導入ファン62により外気導入口63を介して第1送風流路21に送給する。つまり、外気導入流路60は、クーラーコア30を通過させずに外気を第1送風流路21に送給する。このように、本実施形態においては、外気導入流路60は、室内空調ユニットに外付けされている。
【0020】
クーラーコア30は、冷媒回路Rの一部を構成し、冷媒回路Rから流入する冷媒と送風流路20を通過する風(空気)とを熱交換させる熱交換器である。クーラーコア30では、冷房時や除湿時において、冷媒回路Rを循環してクーラーコア30に流入した冷媒と車室内外から送風流路20に取り込んだ空気とを熱交換(冷媒に吸熱)させることで車内に供給する空気を冷却している。
【0021】
ヒーターコア40は、本実施形態において、後述する機器温度調整回路(熱媒体回路)80の一部を構成し、機器温度調整回路80を循環する熱媒体とヒーターコア40を通過する風とを熱交換させて、車載機器の廃熱回収を行う熱交換器である。ヒーターコア40において熱媒体と空気とが熱交換し、熱交換後の熱媒体を再び機器温度調整回路80に還流させることで機器温度調整回路80の温調対象物82の温度を調整すると共に、熱媒体から吸熱して加熱された風を車内外に送風する。
【0022】
機器温度調整回路80は、バッテリ、インバータ、モータ、パワーコントロールユニットなどの温調対象物82(車載機器)に直接又は間接的に熱媒体を循環させ、温調対象物82の温度を調整する。機器温度調整回路80は、ヒーターコア40を経由する熱媒体流路81と、熱媒体流路81に設けられる温調対象物82(図の例ではモータ)と、熱媒体流路81に熱媒体を循環させる循環ポンプ83とを備えている。
【0023】
機器温度調整回路80は、温調対象物82を経由した熱媒体がヒーターコア40を経由し、ヒーターコア40を通過する空気と温調対象物82を経由した熱媒体とが熱交換を行うように構成されている。機器温度調整回路80で使用される熱媒体としては、例えば、水、HFO-1234yfのような冷媒、クーラント等の液体、空気等の気体が採用可能である。
【0024】
なお、上記した機器温度調整回路80では、機器温度調整回路80を循環する熱媒体が、温調対象物82の内部を直接循環して温調対象物の温度調整している。機器温度調整回路80では、例えば、温調対象物82に設けられた温調対象物用熱交換器に熱媒体を循環させて、温調対象物用熱交換器を介して温調対象物82の温度調整を行う構成とすることもできる。
【0025】
図2に、車両用空調装置1の制御装置としての空調ECU100の概略構成を示す。空調ECU100は、走行を含む車両全般の制御を司る車両コントローラ90とCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークにより相互に通信可能に接続され、情報の送受信を行う。空調ECU100及び車両コントローラ90には何れもプロセッサを備えたコンピュータの一例としてのマイクロコンピュータを適用することができる。
【0026】
空調ECU100には、以下の各センサや検出器が接続され、これらの各センサや検出器等の出力が入力される。なお、図2及び以下の説明では、本実施形態に直接関係のないセンサや検出器については記載及び説明を省略している。
【0027】
具体的には、空調ECU100には、車両の外気温度Tamを検出する外気温度センサ71、吸込口25から送風流路20に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ72、車室内の空気の温度Tinを検出する内気温度センサ73、車室内吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ74、ヒーターコア40の温度TCIを検出するヒーターコア温度センサ75、クーラーコア30の温度Teを検出するクーラーコア温度センサ76、クーラーコア30の冷媒圧力を検出するクーラーコア圧力センサ77、機器温度調整回路80を循環する熱媒体の温度Twを検出する熱媒体温度センサ78、及び、設定温度や空調運転の切り換えを設定するための空調操作部79が接続されている。
【0028】
一方、空調ECU100の出力には、吸込切換ダンパ26、ブロワファン27、エアミックスダンパ28、吹出ダンパ24、外気導入ダンパ64及び、循環ポンプ83が接続されている。空調ECU100は各センサの出力と空調操作部78にて入力された設定、車両コントローラ90からの情報に基づいてこれらを制御する。
【0029】
以下、このように構成された車両用空調装置1の室内空調ユニットの動作について説明する。本実施形態における空調ECU100は、吹出ダンパ24、外気導入ダンパ64、及びエアミックスダンパ28を制御して開度や開閉を調節することで空気の流通路を選択する。これにより、機器温度調整回路80を循環する熱媒体により温調体調物の温度を調整すると共に、温調対象物82の廃熱を車室内の空調(暖房)に用いる。
【0030】
(1)暖房運転時
図3は、車両用空調装置1の暖房運転時の室内空調ユニット10の状態を示している。空調ECU100は、エアミックスダンパ28を制御して第2送風流路22を閉鎖して、送風流路20から第2送風流路22への空気の流入を遮断する。これにより、吸込口25からブロワファン27により送給されて送風流路20に取り込まれた空気は、クーラーコア30を通過して第1送風流路21に送給され、第2送風流路22には送給されない。
【0031】
また、空調ECU100は、外気導入ダンパ64によって外気導入口63を閉じるよう制御して外気導入流路60から第1送風流路21への外気の導入を遮断し、かつ、吹出ダンパ24によって外部吹出口23を閉じるように制御して外部吹出口23から車外への空気の吹出を遮断する。
【0032】
これにより、温調対象物82の熱を吸熱した熱媒体が、熱媒体流路81を循環してヒーターコア40を経由し、ヒーターコア40において第1送風流路21を通過する空気と熱交換する。ヒーターコア40において熱媒体から吸熱して暖められた空気は、車室内吹出口29より車室内へ供給され、車室内の暖房に利用される。なお、暖房運転時において、吸込口25からブロワファン27により送給された空気は、クーラーコア30において冷媒と熱交換することなく通過する。
【0033】
このように、ヒーターコア40において、機器温度調整回路80を循環して温調対象物82の廃熱を吸熱した熱媒体と、第1送風流路を通過する空気とを熱交換させ、熱媒体を機器温度調整回路80に還流させる。これにより、第1送風流路を通過する空気によって温調対象物82を冷却することができると共に、温調対象物82によって暖められた空気を車室内に供給することで暖房に利用することができる。
【0034】
(2)温調対象物の自然冷却
図4は、車両用空調装置1において、温調対象物82を自然冷却する場合の室内空調ユニット10の状態を示している。図4において、空調ECU100は、エアミックスダンパ28を制御して第2送風流路22を閉鎖し、送風流路20から第2送風流路22への空気の流入を遮断する。
【0035】
空調ECU100は、外気導入ダンパ64を開状態となるように制御して、送風流路20から第1送風流路21への空気の流入を遮断すると共に、外気導入流路60から第1送風流路21へ外気を導入させる。また、空調ECU100は、吹出ダンパ24によって外部吹出口23を開放するように制御して放熱用送風流路50を形成し、ヒーターコア40を通過した風を外部吹出口23から車外へ吹き出す。このとき、空調ECU100は、ブロワファン27を作動させず、内気又は外気は、吸込口25から送風流路20に取り込まれない。
【0036】
これにより、外気導入流路60を介して第1送風流路21に取り込んだ外気と、温調対象物82の熱を吸熱した熱媒体とが、ヒーターコア40において熱交換する。ヒーターコア40において熱媒体から吸熱した空気は、外部吹出口23より車外へ吹き出す。すなわち、機器温度調整回路80を循環して温調対象物82の廃熱を吸熱した熱媒体は、ヒーターコア40を通過する外気に放熱して冷却され、再び熱媒体流路81に還流して温調対象物82に流入する。これにより、温調対象物82が自然冷却される。つまり、ヒーターコア40がラジエータとして機能させることができる。
【0037】
このように、第1送風流路21及び第2送風流路22を設けたことにより、第1送風流路21を利用して温調対象物82を自然冷却させながら、第2送風流路22を遮断することで、温調対象物82の廃熱を車室内に導入しないようにすることができる。
【0038】
(3)温調対象物の自然冷却及び冷房運転
図5は、車両用空調装置1において、温調対象物82を自然冷却しながら、冷房運転を行う場合の室内空調ユニット10の状態を示している。図5において、空調ECU100は、エアミックスダンパ28を制御して、第2送風流路22に空気を流入させ、送風流路20から第1送風流路21への空気の流入を遮断する。
【0039】
空調ECU100は、外気導入ダンパ64を開状態となるように制御して、外気導入流路60から第1送風流路21へ外気を導入させる。また、空調ECU100は、吹出ダンパ24によって外部吹出口23を開放するように制御して放熱用送風流路50を形成し、ヒーターコア40を通過した風を外部吹出口23から車外へ流出させる。
【0040】
これにより、外気導入流路60を介して第1送風流路21に取り込んだ外気と、温調対象物82の熱を吸熱した熱媒体とが、ヒーターコア40において熱交換する。ヒーターコア40において熱媒体から吸熱した空気は、外部吹出口23より車外へ吹き出す。すなわち、機器温度調整回路80を循環して温調対象物82の廃熱を吸熱した熱媒体は、温調対象物82の熱を外気に放熱して冷却され、再び熱媒体流路81に還流して温調対象物82に流入する。これにより、温調対象物82が自然冷却される。つまり、ヒーターコア40がラジエータとして機能させることができる。
【0041】
一方、空調ECU100は、ブロワファン27を作動させ、内気又は外気は、吸込口25から取り込んだ内気又は外気を送風流路20に取り込み、クーラーコア30に流入する冷媒回路Rの冷媒と熱交換させる。クーラーコア30での熱交換により冷却された空気は、送風流路20から第2送風流路22に流入し、車室内吹出口29から吹き出して車室内の冷房に利用される。
【0042】
このように、第1送風流路21及び第2送風流路22を設けたことにより、第1送風流路21を利用して温調対象物82を自然冷却させながら、第2送風流路22を利用してクーラーコア30によって冷却された空気を導入して車室内の冷房に利用することができる。つまり、
【0043】
(4)温調対象物の強制冷却
図6は、車両用空調装置1において、温調対象物82を強制冷却する場合の室内空調ユニット10の状態を示している。図6において、空調ECU100は、エアミックスダンパ28を制御して第2送風流路22を閉鎖し、送風流路20から第2送風流路22への空気の流入を遮断する。これにより、吸込口25からブロワファン27により送給されて送風流路20に取り込まれた空気は、クーラーコア30を通過して第1送風流路21に送給され、第2送風流路22には送給されない。
【0044】
また、空調ECU100は、外気導入ダンパ64によって外気導入口63を閉じるよう制御して外気導入流路60から第1送風流路21への外気の導入を遮断する。空調ECU100は、吹出ダンパ24によって外部吹出口23を開放するように制御して放熱用送風流路50を形成し、ヒーターコア40を通過した風を外部吹出口23から車外へ流出させる。
【0045】
空調ECU100は、ブロワファン27を作動させ、吸込口25から取り込んだ内気又は外気をクーラーコア30に取り込み、クーラーコア30に流入する冷媒回路Rの冷媒と熱交換させる。クーラーコア30での熱交換により冷却された空気は、送風流路20から第1送風流路21に流入し、ヒーターコア40において機器温度調整回路80を循環する熱媒体と熱交換する。
【0046】
すなわち、機器温度調整回路80を循環する熱媒体は、クーラーコア30で冷却されて第1送風流路21を通過する空気によって冷却され、再び熱媒体流路81に還流して温調対象物82に流入する。これにより、温調対象物82が強制冷却される。熱媒体から吸熱して温度が上昇した空気は、外部吹出口23から車外へ吹き出される。
【0047】
(5)温調対象物の強制冷却及び冷房運転
図7は、車両用空調装置1において、温調対象物82を強制冷却しつつ、冷房運転を行う場合の室内空調ユニット10の状態を示している。図7において、空調ECU100は、エアミックスダンパ28を制御して、第1送風流路21及び第2送風流路22のいずれにも、送風流路20からの空気が流入する開度とする。
【0048】
なお、空調ECU100は、エアミックスダンパ28の開度を、第1送風流路21及び第2送風流路22に通風させる割合が、冷房の要求温度又は温調対象物82の温度等に応じた割合となるように適宜定める。吸込口25からブロワファン27により送給されて送風流路20に取り込まれた空気は、クーラーコア30を通過し、エアミックスダンパ28の開度に応じて第1送風流路21及び第2送風流路22に送給される。
【0049】
また、空調ECU100は、外気導入ダンパ64によって外気導入口63を閉じるよう制御して外気導入流路60から第1送風流路21への外気の導入を遮断する。空調ECU100は、吹出ダンパ24によって外部吹出口23を開放するように制御して放熱用送風流路50を形成し、ヒーターコア40を通過した風を外部吹出口23から車外へ流出させる。
【0050】
空調ECU100は、ブロワファン27を作動させ、吸込口25から取り込んだ内気又は外気をクーラーコア30に取り込み、クーラーコア30に流入する冷媒回路Rの冷媒と熱交換させる。クーラーコア30での熱交換により冷却された空気は、送風流路20から第1送風流路21及び第2送風流路22にエアミックスダンパ28の開度に応じた割合で流入する。
【0051】
第1送風流路21に流入した冷却後の空気は、ヒーターコア40において機器温度調整回路80を循環する熱媒体と熱交換する。すなわち、機器温度調整回路80を循環する熱媒体は、クーラーコア30で冷却されて第1送風流路21を通過する空気によって冷却され、再び熱媒体流路81に還流して温調対象物82に流入する。これにより、温調対象物82が強制冷却される。熱媒体から吸熱して温度が上昇した空気は、外部吹出口23から車外へ吹き出される。
一方、第2送風流路22に流入した冷却後の空気は、車室内吹出口29から吹き出して車室内の冷房に利用される。
【0052】
このように、第1送風流路21設けて放熱用送風流路を形成することにより、クーラーコア30によって冷却された空気を、第1送風流路21に流通させることで機器温度調整回路80の熱媒体と熱交換させて温調対象物82の強制冷却に利用することができる。一方で、第1送風流路21とは別の第2送風流路22を設け、クーラーコア30によって冷却された空気を第2送風流路22に流通させるか否かを選択することで、同時に冷房運転を実施するかしないかを選択することができる。
【0053】
上記した実施形態において、ヒーターコア(放熱用熱交換器)40では温調対象物82を循環した熱媒体と放熱用送風流路を通過する空気との間で熱交換を行わせる構成について説明した。この他にも、例えば、図8に示すように、冷媒回路Rを循環する冷媒と、熱媒体回路80を循環して温調対象物82から廃熱を回収した熱媒体とを熱交換させるための冷媒-熱媒体熱交換器88を設け、冷媒-熱媒体熱交換器88を循環した冷媒をヒーターコア40において放熱させるように構成することができる。
【0054】
この場合、冷媒-熱媒体熱交換器88において、温調対象物82から廃熱を回収した熱媒体と冷媒-熱媒体熱交換器88を通過する冷媒とを熱交換させる。つまり、冷媒-熱媒体熱交換器88を通過する冷媒が、熱媒体回路80を循環して温調対象物82の廃熱を回収した熱媒体から吸熱する。そして、ヒーターコア40に冷媒-熱媒体熱交換器88を循環した冷媒を通過させ、ヒーターコア40において冷媒を放熱させる。
【0055】
なお、この他、冷媒-熱媒体熱交換器88に代えて、熱媒体-熱媒体熱交換器を設けることもできる。この場合、他の熱媒体回路80とは別の熱媒体回路を循環する熱媒体と熱媒体回路80の熱媒体との間で、つまり、熱媒体同士で熱交換をさせ、温調対象物82の廃熱を回収する。
【0056】
また、上記した実施形態では、吸熱用熱交換器の一例としてクーラーコアを、放熱用熱交換器の一例としてヒーターコアを適用した例について説明したが、「吸熱用熱交換器」は冷媒を含む各種熱媒体に対して吸熱作用を有する熱交換器であればよく、同様に、「放熱用熱交換器」は冷媒を含む各種熱媒体に対して放熱作用を有する熱交換器であればよく、種類や名称は問わない。
【0057】
〔変形例〕
図9に、上述した実施形態の変形例に係る車両用空調装置の室内空調ユニット11の概略構成を示す。
変形例に係る室内空調ユニット11は、第1送風流路21及び第2送風流路22の上流側に、外気導入流路60が設けられている。外気導入流路60は、吸込口25から内気又は外気を取り込み、クーラーコア30を通過せずに第1送風流路21と連通するようになっている。すなわち、室内空調ユニット11内で、クーラーコア30を迂回して第1送風流路21に送風することができる。
【0058】
この場合において、外気導入ダンパ64を開いた状態とし、かつエアミックスダンパ28によって第1送風流路21を開放し、吸込切換ダンパ26を制御して吸込口25から外気を導入することで、第1送風流路21に外気を送風することができる。また、吹出ダンパ24を開放することで放熱用送風流路50を形成して、ヒーターコア40を通過した外気を車外へ吹き出させる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1:車両用空調装置、10:室内空調ユニット、11:室内空調ユニット、20:送風流路:、23:外部吹出口、24:吹出ダンパ、25:吸込口、26:吸込切換ダンパ、27:室内送風機(ブロワファン)、27:ブロワファン、28:エアミックスダンパ、29:車室内吹出口、30:クーラーコア、40:ヒーターコア、50:放熱用送風流路、60:外気導入流路、61:外気吸込口、62:外気導入ファン、63:外気導入口、64:外気導入ダンパ、71:外気温度センサ、72:HVAC吸込温度センサ、73:内気温度センサ、74:吹出温度センサ、75:ヒーターコア温度センサ、76:クーラーコア温度センサ、77:クーラーコア圧力センサ、78:熱媒体温度センサ、78:空調操作部、79:空調操作部、80:機器温度調整回路、81:熱媒体流路、82:温調対象物、83:循環ポンプ、88:冷媒-熱媒体熱交換器、90:車両コントローラ、100:空調ECU

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9