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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038042
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】屋根の防水断熱構造とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 12/00 20060101AFI20230309BHJP
   E04D 5/10 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
E04D12/00 P
E04D5/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144933
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】521393188
【氏名又は名称】株式会社保田建築板金工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保田 幸蔵
(72)【発明者】
【氏名】保田 篤男
(57)【要約】
【課題】防水性だけでなく断熱性にも優れ、低コストで極めて容易に施工することができる屋根の防水断熱構造10とその施工方法を提供すること。
【解決手段】建築物の屋根葺き材5と屋根下地材4との間に設けられる屋根の防水断熱構造10であって、屋根下地材4上に形成され、複数の帯状の第一ルーフィングシート(11a、11b)をその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設して成る第一防水層1と、この第一防水層1上に形成され、複数の帯状の第二ルーフィングシート(21a、21b)をその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設して成る第二防水層2とを備え、第二ルーフィングシートの敷設方向と各第一ルーフィングシートの敷設方向とを直交させ、各ルーフィングシートの側縁端部の段差を起点とした断熱空間部(13、24)を形成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根葺き材と屋根下地材との間に設けられる屋根の防水断熱構造であって、
前記屋根下地材上に形成され、複数の帯状の第一ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設して成る第一防水層と、
前記第一防水層上に形成され、複数の帯状の第二ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設して成る第二防水層と、
を備え、
前記第二防水層の前記各第二ルーフィングシートの敷設方向と前記第一防水層の前記各第一ルーフィングシートの敷設方向とが直交しており、
前記第二防水層と前記第一防水層との間に、前記各第二ルーフィングシートの側縁端部及び前記各第一ルーフィングシートの側縁端部に生じる段差を起点とした断熱空間部が形成されていることを特徴とした屋根の防水断熱構造。
【請求項2】
前記第一防水層の前記各第一ルーフィングシートが、屋根の勾配方向に対し直交する方向に沿って敷設され、
前記第二防水層の前記各第二ルーフィングシートが、屋根の勾配方向に沿って敷設されていることを特徴とした請求項1に記載の屋根の防水断熱構造。
【請求項3】
前記第一ルーフィングシート及び前記第二ルーフィングシートが、アスファルトフェルトから成ることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の屋根の防水断熱構造。
【請求項4】
前記第二防水層上に、複数の帯状の第三ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設して成る第三防水層が形成されており、
前記第三防水層の前記各第三ルーフィングシートの敷設方向と前記第二防水層の前記各第二ルーフィングシートの敷設方向とが直交しており、
前記第三防水層と前記第二防水層との間に、前記各第三ルーフィングシートの側縁端部及び前記各第二ルーフィングシートの側縁端部に生じる段差を起点とした断熱空間部が形成されていることを特徴とした請求項1~請求項3のいずれかに記載の屋根の防水断熱構造。
【請求項5】
前記第三防水層の前記第三ルーフィングシート同士の重ね合わせ部の敷設位置が、前記第一防水層の前記第一ルーフィングシート同士の重ね合わせ部の敷設位置と一致していることを特徴とした請求項4に記載の屋根の防水断熱構造。
【請求項6】
前記屋根葺き材が板金から成ることを特徴とした請求項1~請求項5のいずれかに記載の屋根の防水断熱構造。
【請求項7】
建築物の屋根葺き材と屋根下地材との間に設けられる屋根の防水断熱構造の施工方法であって、
前記屋根下地材上に複数の帯状の第一ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設することによって第一防水層を形成する第一防水層形成工程と、
前記第一防水層上に複数の帯状の第二ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で、かつ、当該各第二ルーフィングシートの敷設方向と前記第一防水層の前記各第一ルーフィングシートの敷設方向とを直交させるように並列させて敷設することによって第二防水層を形成する第二防水層形成工程と、
を備え、
前記第二防水層形成工程において、前記第二防水層と前記第一防水層との間に、前記各第二ルーフィングシートの側縁端部及び前記各第一ルーフィングシートの側縁端部に生じる段差を起点とした断熱空間部を形成することを特徴とした屋根の防水断熱構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の防水断熱構造とその施工方法、より詳しくは、建築物の屋根葺き材と屋根下地材との間に設けられる防水性及び断熱性に優れた屋根の防水断熱構造とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家屋等の建築物においては、瓦、スレート、板金等の屋根葺き材と、野地板、シージングボード等の屋根下地材との間に、例えばアスファルトフェルト、アスファルトルーフィング、粘着層付アスファルトルーフィング等の各種ルーフィングシートを敷設することによって、屋根の雨漏りを防ぐ防水層を形成することが一般的に行われている。このように屋根葺き材によって屋根の一次防水を図り、ルーフィングシートによって屋根の二次防水を図っている。
【0003】
ところが、このルーフィングシートは、防水性に優れているものの、それ自体は断熱性が十分でなく、例えば冬期間の外冷気によってルーフィングシートの下面側に結露が発生し、屋根下地材が腐食する原因となることがあった。
【0004】
そこで、現在までに、ルーフィングシートと屋根下地材との間、或いは、ルーフィングシートと屋根葺き材との間に、合成樹脂発泡体から成る断熱層を形成する屋根の断熱構造が提案されている(例えば、下記特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この断熱構造は、合成樹脂発泡体を敷設する分、コスト高を招き、また、その施工に手間がかかる難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-222985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の屋根の断熱構造に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、防水性だけでなく断熱性にも優れており、しかも、低コストで極めて容易に施工することができる屋根の防水断熱構造とその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、建築物の屋根葺き材と屋根下地材との間に設けられる屋根の防水断熱構造であって、
前記屋根下地材上に形成され、複数の帯状の第一ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設して成る第一防水層と、前記第一防水層上に形成され、複数の帯状の第二ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設して成る第二防水層と、を備え、
前記第二防水層の前記各第二ルーフィングシートの敷設方向と前記第一防水層の前記各第一ルーフィングシートの敷設方向とが直交しており、
前記第二防水層と前記第一防水層との間に、前記各第二ルーフィングシートの側縁端部及び前記各第一ルーフィングシートの側縁端部に生じる段差を起点とした断熱空間部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、前記第一防水層の前記各第一ルーフィングシートが、屋根の勾配方向に対し直交する方向に沿って敷設され、前記第二防水層の前記各第二ルーフィングシートが、屋根の勾配方向に沿って敷設されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記第一ルーフィングシート及び前記第二ルーフィングシートが、アスファルトフェルトから成ることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記第二防水層上に、複数の帯状の第三ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設して成る第三防水層が形成されており、前記第三防水層の前記各第三ルーフィングシートの敷設方向と前記第二防水層の前記各第二ルーフィングシートの敷設方向とが直交しており、前記第三防水層と前記第二防水層との間に、前記各第三ルーフィングシートの側縁端部及び前記各第二ルーフィングシートの側縁端部に生じる段差を起点とした断熱空間部が形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記第三防水層の前記第三ルーフィングシート同士の重ね合わせ部の敷設位置が、前記第一防水層の前記第一ルーフィングシート同士の重ね合わせ部の敷設位置と一致していることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、前記屋根葺き材が板金から成ることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、建築物の屋根葺き材と屋根下地材との間に設けられる屋根の防水断熱構造の施工方法であって、
前記屋根下地材上に複数の帯状の第一ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて敷設することによって第一防水層を形成する第一防水層形成工程と、前記第一防水層上に複数の帯状の第二ルーフィングシートをその側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で、かつ、当該各第二ルーフィングシートの敷設方向と前記第一防水層の前記各第一ルーフィングシートの敷設方向とを直交させるように並列させて敷設することによって第二防水層を形成する第二防水層形成工程と、を備え、
前記第二防水層形成工程において、前記第二防水層と前記第一防水層との間に、前記各第二ルーフィングシートの側縁端部及び前記各第一ルーフィングシートの側縁端部に生じる段差を起点とした断熱空間部を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る屋根の防水断熱構造とその施工方法によれば、複数の帯状のルーフィングシートから成る複数の防水層が形成されるので、その防水性に優れており、屋根の雨漏り等を確実に防ぐことができると共に、これら複数の防水層間に断熱空間部が形成されるので、その断熱性にも優れており、冬期間の外冷気による結露の発生を有効に防ぐことができる。
【0016】
しかも、これら防水層間の断熱空間部を、例えばスペーサー等の別部材を使用せずに、各ルーフィングシートの側縁端部の厚みによる段差を利用して形成することができるので、コスト高を招くこともなく、極めて容易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の屋根の防水断熱構造を適用した屋根構造を示す、屋根の勾配方向Xに沿った要部断面図である。
図2図1中のS1-S1線矢視要部断面図である。
図3】本実施形態の屋根の防水断熱構造の施工方法の第一防水層形成工程を説明する部分斜視図である。
図4】同第一防水層形成工程を説明する、屋根の勾配方向Xに沿った要部断面図である。
図5図4中のS2-S2線矢視要部断面図である。
図6】本実施形態の屋根の防水断熱構造の施工方法の第二防水層形成工程を説明する部分斜視図である。
図7】同第二防水層形成工程を説明する、屋根の勾配方向Xに対し直交する方向Yに沿った要部断面図である。
図8図7中のS3-S3線矢視要部断面図である。
図9】本実施形態の屋根の防水断熱構造の施工方法の第三防水層形成工程を説明する部分斜視図である。
図10】同第三防水層形成工程を説明する、屋根の勾配方向Xに沿った要部断面図である。
図11図10中のS4-S4線矢視要部断面図である。
図12】本発明に係る屋根の防水断熱構造の実施変形例を説明する部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態の屋根の防水断熱構造10は、建築物の屋根下地材4上に形成された第一防水層1と、この第一防水層1上に形成された第二防水層2と、この第二防水層2上に形成された第三防水層3とから構成されており、建築物の屋根葺き材5と屋根下地材4との間に設けられる。
【0019】
第一防水層1は、複数の帯状の第一ルーフィングシート11(11a、11b)を、各第一ルーフィングシート11の側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて屋根下地材4上に敷設することによって形成されている。同様に、第二防水層2は、複数の帯状の第二ルーフィングシート21(21a、21b)を、各第二ルーフィングシート21の側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて第一防水層1上に敷設することによって形成されており、第三防水層3は、複数の帯状の第三ルーフィングシート31(31a、31b)を、各第三ルーフィングシート31の側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で並列させて第二防水層2上に敷設することによって形成されている。
【0020】
そして、建築物の屋根下地材4と第一防水層1との間には、断熱空間部13が形成され、第一防水層1と第二防水層2との間には、断熱空間部(23・24)が形成され、第二防水層2と第三防水層3との間には、断熱空間部(33・34)が形成され、第三防水層3と屋根葺き材5との間には、断熱空間部35が形成されている。
【0021】
本実施形態の屋根の防水断熱構造10は、これら複数の第一防水層1、第二防水層2、及び第三防水層3により屋根の防水を行うともに、複数の断熱空間部(13、23、24、33、34、35)によって屋根の断熱を行う。
【0022】
以下、本実施形態の屋根の防水断熱構造10の施工工程(図3図11)を順に説明しながら、屋根の防水断熱構造10の各構成について詳しく説明する。
【0023】
まず、図3図5に示すように、建築物の屋根下地材4上に第一防水層1を形成する第一防水層形成工程を行う。即ち、図3に示すように、屋根の勾配方向Xに対して直交する方向Yに沿って、長尺帯状の第一ルーフィングシート11をロールRから巻き解きながら敷設し、複数の第一ルーフィングシート11を、その側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で屋根の勾配方向Xに並列させることによって、屋根下地材4の上面全体に亘って第一防水層1を形成する。
【0024】
本実施形態では、第一ルーフィングシート11として、フェルト原紙にアスファルトを含侵させて成る幅100cm、厚み約1mmのアスファルトフェルトを使用し、その側縁部同士を約10cm分、重ね合わせている。また、屋根下地材4は、図4に示すように、構造用合板から成る野地板41と、耐水剤を塗布した木質繊維板から成る防水性、透湿性、吸音性に優れたシージングボード42とを積層して構成されており、第一ルーフィングシート11はその側縁部において、屋根下地材4の野地板41に対してステープル留めされている。勿論、屋根下地材4が構造用合板から成る野地板41のみで構成されていてもよい。
【0025】
これら複数の第一ルーフィングシート11は、屋根の軒先43側から屋根勾配の上方へ向かって順に敷設されて並列しており、図4に示すように、勾配下方側の第一ルーフィングシート11aの上側の側縁部の上に、勾配上方側の第一ルーフィングシート11bの下側の側縁部が重なっている。こうして、隣り合う第一ルーフィングシート11同士が重なり合った重ね合わせ部12が、方向Yと平行に複数列、形成される。
【0026】
この第一防水層形成工程によって、第一防水層1と屋根下地材4との間には、勾配下方側の第一ルーフィングシート11aの上側の側縁端部111によって生じる段差を起点とした断熱空間部13が形成される。アスファルトフェルト等の各種ルーフィングシートは、その防水性を確保するのに必要な所定の厚みを有している。また、その施工性を確保するのに必要な柔軟性を有しているものの、所定の曲げこわさを有している。したがって、この勾配下方側の第一ルーフィングシート11aの側縁端部111の厚みによる段差を利用して形成された断熱空間部13は、施工時にこれを積極的に潰さない限り、勾配上方側の第一ルーフィングシート11bの中央部へ拡がって形成される。
【0027】
しかも、本実施形態では、第一ルーフィングシート11として、粘着層をもたないアスファルトフェルトを使用し、その側縁部のみをステープル留めしているので、第一ルーフィングシート11は、その下面の大部分が屋根下地材4に密着することなく、屋根下地材4の上面との間に不図示の隙間が存在している。本実施形態では、この隙間と連続した広範囲に及ぶ断熱空間部13が形成される。
【0028】
次に、図6図8に示すように、第一防水層1上に第二防水層2を形成する第二防水層形成工程を行う。即ち、図6に示すように、屋根の勾配方向Xに沿って、長尺帯状の第二ルーフィングシート21をロールRから巻き解きながら敷設し、複数の第二ルーフィングシート21を、その側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で方向Yに並列させることによって、第一防水層1の上面全体に亘って第二防水層2を形成する。第二防水層2の各第二ルーフィングシート21の敷設方向は、第一防水層1の各第一ルーフィングシート11の敷設方向と直交している。
【0029】
本実施形態では、上記第一ルーフィングシート11と同様に、第二ルーフィングシート21として、フェルト原紙にアスファルトを含侵させて成る幅100cm、厚み約1mmのアスファルトフェルトを使用し、その側縁部同士を約10cm分、重ね合わせている。そして、各第二ルーフィングシート21の側縁部のみが、屋根下地材4の野地板41に対してステープル留めされている。
【0030】
これら複数の第二ルーフィングシート21は、屋根の一方のケラバ側から他方のケラバ44側へ向かって順に敷設されて並列しており、図7に示すように、屋根の勾配上方に向かって見たとき、左側の第二ルーフィングシート21aの右側の側縁部の上に、右側の第二ルーフィングシート21bの左側の側縁部が重なっている。こうして、隣り合う第二ルーフィングシート21同士が重なり合った重ね合わせ部22が、屋根の勾配方向Xと平行に複数列、形成される。なお、各第二ルーフィングシート21同士の重ね方として、屋根の勾配上方に向かって見たとき、右側の第二ルーフィングシートの左側の側縁部の上に、左側の第二ルーフィングシートの右側の側縁部を重ねるようにしてもよい。屋根の東西南北方向等を考慮して適宜選択することができる。
【0031】
この第二防水層形成工程によって、第二防水層2と第一防水層1との間には、図7に示すように、左側の第二ルーフィングシート21aの右側の側縁端部211の厚みにより生じる段差を起点とした断熱空間部23が形成されると同時に、図8に示すように、勾配上方側の第一ルーフィングシート11bの下側の側縁端部111の厚みにより生じる段差を起点とした断熱空間部24が形成される。これら断熱空間部23と断熱空間部24とは、第二防水層2の重ね合わせ部22と第一防水層1の重ね合わせ部12との交差部の近傍で互いに連通し合う。このことで、第二防水層2と第一防水層1との間には、建築物の屋根面全体に亘って格子状に延びる断熱空間部(23・24)が形成されるのである。なお、これら断熱空間部(23・24)についても、上述した断熱空間部13と同様に、各ルーフィングシートの側縁端部の段差を起点として、隣り合う他のルーフィングシートの中央部へ拡がって広範囲に形成される。
【0032】
次に、図9図11に示すように、第二防水層2上に第三防水層3を形成する第三防水層形成工程を行う。即ち、図9に示すように、屋根の勾配方向Xに対し直交する方向Yに沿って、長尺帯状の第三ルーフィングシート31をロールRから巻き解きながら敷設し、複数の第三ルーフィングシート31を、その側縁部同士を互いに重ね合わせた状態で屋根の勾配方向Xに並列させることによって、第二防水層2の上面全体に亘って第三防水層3を形成する。第三防水層3の各第三ルーフィングシート31の敷設方向は、第二防水層2の各第二ルーフィングシート21の敷設方向と直交し、第一防水層1の各第一ルーフィングシート11の敷設方向と平行になる。
【0033】
本実施形態では、上記第一ルーフィングシート11と同様に、第三ルーフィングシート31として、フェルト原紙にアスファルトを含侵させて成る幅100cm、厚み約1mmのアスファルトフェルトを使用し、その側縁部同士を約10cm分、重ね合わせている。そして、各第三ルーフィングシート31の側縁部のみが、屋根下地材4の野地板41に対してステープル留めされている。
【0034】
これら複数の第三ルーフィングシート31は、屋根の軒先43側から屋根勾配の上方へ向かって順に敷設されて並列しており、図10に示すように、勾配下方側の第三ルーフィングシート31aの上側の側縁部の上に、勾配上方側の第三ルーフィングシート31bの下側の側縁部が重なっている。こうして、隣り合う第三ルーフィングシート31同士が重なり合った重ね合わせ部32が、方向Yと平行に複数列、形成される。本実施形態では、第三防水層3の重ね合わせ部32の敷設位置と、第一防水層1の重ね合わせ部12の敷設位置とを一致させている。
【0035】
この第三防水層形成工程によって、第三防水層3と第二防水層2の間には、図10に示すように、勾配下方側の第三ルーフィングシート31aの上側の側縁端部311の厚みにより生じる段差を起点とした断熱空間部33が形成されると同時に、図11に示すように、屋根の勾配上方に向かって見たとき、右側の第二ルーフィングシート21bの左側の側縁端部211の厚みにより生じる段差を起点とした断熱空間部34が形成される。これら断熱空間部33と断熱空間部34とは、第三防水層3の重ね合わせ部32と第二防水層2の重ね合わせ部22との交差部の近傍で互いに連通し合う。このことで、第三防水層3と第二防水層2の間には、建築物の屋根面全体に亘って格子状に延びる断熱空間部(33・34)が形成される。そして、これら断熱空間部(33・34)についても、上述した断熱空間部13と同様に、各ルーフィングシートの側縁端部の段差を起点として、隣り合う他のルーフィングシートの中央部へ拡がって広範囲に形成される。
【0036】
これら第一防水層形成工程~第三防水層形成工程を順に実施することによって本実施形態の屋根の防水断熱構造10が屋根下地材4上に施工される。
【0037】
その後、図1及び図2に示すように、本実施形態の屋根の防水断熱構造10の第三防水層3の上に、瓦、スレート、板金等の各種の屋根葺き材5を敷設することによって建築物の屋根が構築される。なお、本実施形態では、屋根葺き材5として、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板から成る帯状の板金を使用し、複数の板金を屋根の勾配方向Xに沿って立平葺きしている。
【0038】
なお、本実施形態の屋根の防水断熱構造10は、第一防水層1の重ね合わせ部12と第二防水層2の重ね合わせ部22と第三防水層3の重ね合わせ部32との三重交差部において、防水層の総厚みが最も大きくなっており、第三防水層3の上面の、三重交差部以外の部分には凹部が形成される。したがって、第三防水層3上に屋根葺き材5を敷設したとき、図1及び図2に示すように、屋根葺き材5と第三防水層3との間には、三重交差部以外の部分に、互いに連通し合う断熱空間部35が形成される。
【0039】
このように本実施形態の屋根の防水断熱構造10によれば、複数の帯状のルーフィングシートから成る複数の第一防水層1、第二防水層2、及び第三防水層3が形成されているので、その防水性に極めて優れており、屋根の雨漏り等を確実に防ぐことができると共に、屋根下地材4と第一防水層1との間、第一防水層1と第二防水層2との間、第二防水層2と第三防水層3との間、及び第三防水層3と屋根葺き材5との間に、複数の断熱空間部(13、23、24、33、34、35)が形成されているので、その断熱性にも優れており、冬期間の外冷気による結露の発生を有効に防ぐことができる。
【0040】
しかも、本実施形態の屋根の防水断熱構造10によれば、これら第一防水層1、第二防水層2、及び第三防水層3間の断熱空間部(23、24、33、34)を、例えばスペーサー等の別部材を使用せずに、各ルーフィングシートの側縁端部の厚みによる段差を利用して形成することができるので、従来品のようにコスト高を招くこともなく、極めて容易に施工することができる。
【0041】
以上、本実施形態の屋根の防水断熱構造10について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0042】
例えば、上記実施形態では、第三防水層3の重ね合わせ部32の敷設位置を、第一防水層1の重ね合わせ部12の敷設位置に合わせているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、図12に示すように、第三防水層3の重ね合わせ部32の敷設位置を、第一防水層1の重ね合わせ部12の敷設位置と異ならせてもよい。このことで、第三防水層3の重ね合わせ部32に沿って形成される断熱空間部33と、第一防水層1の重ね合わせ部12に沿って形成される断熱空間部13との形成位置をずらすことができ、各断熱空間部(33、13)を屋根面全体に亘ってより一様に形成することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、第一防水層1の第一ルーフィングシート11を屋根の勾配方向Xに対し直交する方向Yに沿って敷設し、第二防水層2の第二ルーフィングシート21を屋根の勾配方向Xに沿って敷設し、第三防水層3の第三ルーフィングシート31を屋根の方向Yに沿って敷設しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、第一防水層1の第一ルーフィングシート11を屋根の勾配方向Xに沿って敷設し、第二防水層2の第二ルーフィングシート21を屋根の方向Yに沿って敷設し、第三防水層3の第三ルーフィングシート31を屋根の勾配方向Xに沿って敷設してもよい。これら各ルーフィングシートの敷設方向は、例えば、屋根葺き材5の種類やその敷設方向等を考慮して適宜設計変更することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、第一ルーフィングシート11、第二ルーフィングシート21及び第三ルーフィングシート31として、全て同じアスファルトフェルトを採用しているが、本発明は勿論これに限定されるものではなく、例えばアスファルトルーフィング、粘着層付アスファルトルーフィング等の各種ルーフィングシートを適宜、採用することができる。また、第一防水層1、第二防水層2及び第三防水層3の各防水層において、帯状ルーフィングシートの種類、幅、厚み等を異ならせてもよい。
【0045】
また、本発明に係る屋根の防水断熱構造は、第一防水層1及び第二防水層2のみから成る二層構造で構成されていてもよく、四層以上の防水層から構成されていてもよい。
【0046】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 屋根の防水断熱構造
1 第一防水層
11 第一ルーフィングシート
111(第一ルーフィングシートの)側縁端部
12 (第一ルーフィングシート同士の)重ね合わせ部
13 断熱空間部
2 第二防水層
21 第二ルーフィングシート
211(第二ルーフィングシートの)側縁端部
22 (第二ルーフィングシート同士の)重ね合わせ部
23、24 断熱空間部
3 第三防水層
31 第三ルーフィングシート
311(第三ルーフィングシートの)側縁端部
32 (第三ルーフィングシート同士の)重ね合わせ部
33、34、35 断熱空間部
4 屋根下地材
5 屋根葺き材
X 屋根の勾配方向
Y 屋根の勾配方向に対し直交する方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12